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第十五章
切実なお願い
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竣工の儀は終わり、多少の高揚感は残っているものの村はいつもの姿に戻った。
黒煙は白煙に変わり細々と夕闇迫る空へと昇っている。
陽が長くなったとはいえまだまだ夜は早いな。
「イナバ様今日はありがとうございました。」
「こちらこそいい物を見させていただきました。ここまでしていただければ宿も店も安泰ですね。」
「そうなっていただけるとよいのですが・・・。」
「大丈夫ですよ、必ずうまくいきます。」
「イナバ様にそう言っていただけるのであれば安心です。我々も精一杯お応えさせていただきます。」
「備品の搬入などはどうされるんですか?」
「それがですな・・・。」
なんだろう珍しく村長が言葉を濁している。
いいにくいことでもあるんだろうか。
「何かお手伝いできることがあるなら遠慮なく仰ってください。」
「いや、ひとまず今日は持ち帰って考えてみます。また必要であればお声をかけます故その時はお願いいたします。」
「そうですか、わかりました。」
そこまで言うのであれば何も言うまい。
必要があれば声をかけてくださるだろう。
「そう言えばシルビアの姿が見えませんな。」
「あれ、さっきまで近くにいたんですけど・・・。」
周りを見渡してみてもシルビアの姿はない。
おかしいなぁ、先に帰ることはしないから村のどこかにいるとは思うんだけど・・・。
「この時間です、すぐに戻って来るでしょう。」
「そうですね。」
「では私はこの辺で失礼致します。」
深々とお辞儀をして村長が戻っていく。
とりあえずこの辺をうろうろしておくか。
夕暮れの村を一人散策するなんて久々だな。
ひとまず西門を抜けて村へと戻る。
ここから見える風景も随分変わったなぁ。
前までは質素な門それと堀と塀しか見えなかったのに、今では後ろに村一番の宿がそびえ村の中も建物が増えている。
あれは障害物競走の時に新築した倉庫だし、あそこの家はもっとこじんまりしていた。
そして何より目の前を通り過ぎる村の人たちの顔に余裕がある。
ここに来たときはアリに襲われていてみんな余裕がなかったもんなぁ・・・。
ちょうど一年前ぐらいの話なのか。
歳をとると一年が早いっていうけれどそれでも早すぎる気がする。
いや、この一年が濃厚過ぎるのか。
色々ありすぎて何があったのか思い出すのも大変だ。
色んな人にも出会ったし、大変な目にも遭ってきたけれど、今思えばそれもいい思い出。
これまでの一年。
そしてこれからの一年。
まだまだ終わりじゃないんだから感傷的になるのもおかしな話だ。
まずは次の春節。
残すノルマは売り上げのみ。
それを目指して頑張っていくしかないだろう。
売上げ減を補えるだけの施策をまた考えないといけないな。
「お、シュウイチこんな所でどうしたんだ?」
「シルビアの姿が見えないので探していたんです。」
「それは済まなかった、ティオに自主訓練の仕方を教えていたら思った以上に時間がかかってな。」
「ティオ君熱心ですね。」
「成長している事を実感できるのがうれしいのだろう。昨日できなかったことが今日出来る、若いというのは羨ましいな。」
「何を言ってるんですか、シルビアも十分若いですよ。」
「おいおい28、いやもう29になるのか。この歳の女に言う言葉ではないぞ。」
29だって?十分若いじゃないか。
だってまだ20代、こちとらもう30台も半ばが迫ってるんですよ?
若い若い。
「それでも私よりも若い事に変わり在りません、それに出会った時よりも綺麗になっています。」
「そうやって今までの女にも言ってきたのだろう?]
[まさか、こんなこと言うのシルビアかエミリアだけです。」
「そういう事にしておいてやろう・・・、っとそうだシャルからも相談を受けていたのだった。」
「相談ですか?」
「店の完成を機にセレン殿の家から引っ越す予定なのだが、その手伝いをしてほしいそうだ。」
なんだそんなことか。
さっきの村長の件もあってもっと深刻な事なのかと勘ぐってしまった。
安心した。
「そういう事でしたらお安い御用です。セレンさんはいよいよですし無理はさせられませんからね。」
「シュウイチならそう言ってくれると思っていた。荷造りはほぼほぼ終わっているようだから明日一日あれば大丈夫だろう。」
「明日は定期便もないですし構いませんよ。二人で終わらせてしまいましょう。」
「シュウイチも手伝ってくれるのか、助かる。」
「乗り掛かった舟です最後までお付き合いしますよ。」
人手は多い方がいいだろう。
宿の方がひと段落したとはいえ水路の方の工事もあるし、部下の皆さんの手を煩わせるわけにはいかない。
あ、ウェリスにはガンガン働いてもらうので三人もいれば大丈夫、なはずだ。
「それとな、店の方でもお前に相談したいことがあるそうだ。それはまた明日聞いてやってくれ。」
「お店の、ですか。」
「それに関しては私よりもお前の方が適役だからな、深く聞いてないのだ。」
「それも明日本人に聞く事にします。そろそろ帰りましょうか。」
「そうだな今から出れば日が暮れる前に到着するだろう。」
お店の件ねぇ。
俺よりもニケさんやエミリアの方が聞きやすいと思うんだけど、俺の方がいい理由がるんだろう。
ま、それも明日分かるさ。
薄暗くなる森を急ぎ足で商店へと戻る。
一年前と違うのは横にいる人、そしてその人との関係。
もちろん商店で待つ人達もまた一年前には縁のなかった人たちだ。
あ、エミリアは除く。
一年前この世界に来たときはまさかこんな関係になるとは微塵も思っていなかったなぁ・・・。
そう言う意味ではこの一年が人生で一番良い一年だったのかもしれない。
いや、来年はもっといい年になる。
してみせる。
だからその為に出来る事は何でもしよう。
「昨日はエミリアだったからな、今日は私の番だぞ。」
「楽しみにしています。」
「明日の件もあるが・・・、よろしく頼む。」
恥ずかしいのかこちらを見ないシルビア様。
だが手は熱く夕闇に照らされる以上に横顔が真っ赤になっている。
ギャップ萌えってやつですか?
いつものシルビア様とは違う様子にこれまた惚れ直してしまうのだった。
まる。
そして翌朝。
清々しい気分とやる気に満ちた俺はルンルン気分で村への道を進んでいた。
一人で。
前に一人で外出させないという決まりが出来たけれど、何があったのかはあえて言うまい。
色々と諸事情があるのだよ。
決してやましい事でも喧嘩でもないのは誤解のないように先にお伝えしておこう。
って誰にだよ。
うむノリツッコミも今日は冴えているな。
よきかな。
なんて気分よく道を進んでいた時だった。
強い風が正面から吹き付け、思わず目を閉じる。
風はすぐに止み、再び目を開けた俺の目に飛び込んできたのはいつもの森の中・・・。
ではなくあの日見ただだっ広い草原だった。
おいおい嘘だろ。
あれ、夢じゃなかったのかよ。
何で白昼堂々夢の中に潜り込まなきゃいけないんだ?
俺は森の中を歩いていただけで・・・。
先程の様に強い風が俺を襲う。
再び目を閉じ再び開けたら元の森に戻っていると期待したのだけど、絵の前に広がるのは前と同じ何もない草原。
一つ違うとすれば、足元がちゃんと踏み固められているという事だ。
ベースキャンプは維持されているのか。
益々意味が分からない。
この前はシルビアに起こしてもらえたからよかったけど、この状況でどうやって戻ればいいんだよ。
何もない草原。
目の前にはこの前進んだ水場へと道が続いている。
とりあえず・・・いくしかないか。
このままここに居ても埒が明かない。
一先ず水を確保するべく俺は水場へと足を進めた。
それからしっかり1596歩で前回と同じ小川に到着する。
さて、右を見ても左を見ても同じような景色だ。
川幅2m、飛び越えれるかどうか微妙な所だ。
走り幅跳びって苦手なんだよね。
前に飛べばいいのについつい上に飛んでしまって距離を稼げない。
普通にやればイケるんだろうけど、何十年と走り幅跳びなんてやってないからなぁ・・・。
仮に飛び越えられず川にハマったとしても泳げないわけではないしまぁ大丈夫か。
20m程後ろに下がり助走距離を確保して身をかがめる。
クラウチングスタートの格好で目指すは川の向こう側。
位置について、よーい、ドン!
スタートは成功。
それからどんどんと加速して、踏み込むのは川のギリギリ手前。
この歩数なら勢いを殺さずいける!
そう確信したその時だった。
突然川のど真ん中に黒くて大きな影が浮かび上がったのが見えた。
それを見た途端ものすごく嫌な予感を感じ慌てて走るのをやめ、たたらを踏むようにして何とか勢いを殺して川岸の二歩手前で前のめりでこけた時、奴が俺の気の前に現れた。
大きい大きい魚だった。
この小川のどこに隠れていたのかと言わんばかりの巨大な魚が水面から飛び出し、弧を描くように再び小川へと戻って行く。
危なかった。
あのまま飛び越えていたら間違いなくあの大きな口に挟まれ、川の中に引きずり込まれていただろう。
一体どうやってタイミングを合わせたのかはわからない。
でも絶妙のタイミングで奴は俺が飛び越える瞬間を狙っていた。
あんな魚がいるんじゃ飛び越えるのは無理だ。
奴一匹だと確証があるのならいい。
でも二匹以上いるならば仮にタイミングをずらしたとしても同じようにやられてしまう事だろう。
くそ、向こう側は無理か。
となると川上か川下どちらかに行くしかないな。
なら選択肢は一つ。
俺は川の流れに逆らうように川沿いを歩き始める。
さっきと違って草が生い茂っていないので比較的歩きやすい。
ちなみに川上を選んだ理由はただ一つ、上に上がっていくと川幅が狭くなっている可能性が高いからだ。
もしそう言った場所があればさっきの魚は出てこれないだろうし、飛び越えるのも楽になる。
得体のしれない環境で怪我をするのは流石にまずいからね、出来るだけリスクは減らさないと。
途中地面に印をつけながらひたすら川上へ向かって歩き続けたが、草原と同様に同じような景色が延々と続くだけだった。
まずいなぁ。
もし、前回と同じ状況が続くのだとしたらもうすぐあれがやって来る。
俺の体温を奪い、命を刈り取ろうとした冷たい悪魔。
そう、あの雨と風が再び襲って来るかもしれないんだ。
何故そう思うのかって?
真っ黒い雲がこちらに迫って来てるからだよ。
くそ、何かないか。
また同じようになった時、シルビアみたいに起こしてくれる人がいなかったら本当に凍え死んでしまう。
さっきまで俺がいたのは街道のど真ん中。
今日は定期便が来ないから冒険者が声をかけてくれる可能性も限りなく低い。
ましてや村の人が来ることなんてないし・・・。
万事休すだ。
前と同じく風が強くなり空が暗くなる。
急ぎ足が駆け足になりひたすら川をさかのぼっていくも景色は一向に変わらない。
そしてついに雨が俺を襲ってきた。
いやだ。
こんな所でまたあんな目に合うなんて。
俺がいったい何をしたっていうんだろうか。
そもそも誰が何のために俺をこんな目に合わせて・・・!
悪態をついても状況は変わらず冷たい雨と風によって急激に体温が奪われていくのが分かる。
前と違うのは多少体を動かしていたのでまだ体が温かい事。
でもそれも時間の問題だろう。
一度歩みを止めたら最後、一気に体温を奪われそこで俺の命は終わる。
だから最後の最後まで体を動かさないと。
「こんな所で死んでたまるか!」
大声を出して自分を鼓舞し、ただひたすらに走り続ける。
そんな危機的状況に変化が現れたのは諦めそうになったその時だった。
何の変化もなかった川辺の景色に突然小高い丘が現れた。
最後の力を振り絞って駆け寄るとそこにあったのは小さな穴。
大人が一人何とか入れるかと言ったその小さな穴を見つけた俺は、中を確認する事も無くその穴に飛び込んだ。
罠かもしれない。
そんなことは一切考えなかった。
この状況から脱出できるなら何でもいい、そんな気持ちで飛び込んだ穴の中は思ったよりも広く小高い丘の下が丸々洞穴のようになっているようだ。
風は入ってこず、熱を奪う雨も降りこまない。
最高の場所だ。
ホッと一息ついた俺だったが今度は急激な睡魔が襲って来る。
くそ、やっぱり罠か?
そんな事を一瞬考えるも安堵と疲れから来る急激な眠りは瞬く間に俺の意識を刈り取ろうとして来る。
あぁ、眠い。
まるで冬眠するクマのように丸くなり、俺は最後の抵抗を諦めて意識を手放した・・・。
「イナバ様、イナバ様起きてください。」
「ん・・・?」
「こんな所でどうしたんですか?風邪をひいてしまいますよ。」
聞き覚えのある声に起こされて俺はゆっくりと目を開けた。
そこはあの洞窟でも草原でもない。
見覚えのあるいつもの森の中だった。
ボーっとする意識を無理やりたたき起こし、慌てて飛び出した俺がいたのは大きな樹の洞の中だった。
「メッシュさん?」
「もうすぐ春ですけどここで寝るのはちょっと早くないですかね。」
「どうしてこんな所に・・・。」
「覚えていないんですか?」
「街道を歩いていたのは覚えているんですけど、急に意識が無くなって気付けばこんな所に・・・。すみません何を言っているかわかりませんよね。」
「そんなことありません。幻覚の出る薬草を食べるとそうなったりもしますから。でもそんなもの食べていませんよね?」
「もちろんです。」
俺はただ村に向かって歩いていただけだ。
それなのになぜこんな所にいるだろうか。
分からない。
「いつものように薬草を集めていると、突然女の子の声が聞こえてきたんです。イナバ様がこの近くにいるから起こしてくれって。」
「女の子の声ですか。」
「姿は拝見できませんでいたが恐らくあれが森の精霊様なのですね。」
おそらくそうなのだろう。
もしかするとドリちゃんが助けてくれたのかもしれないな。
声は聞こえる。
そう言っていたし、あの時叫んだ声を聴いてくれていたのかもしれない。
ほんと何でこんなことになってるんだろう。
誰が何のために・・・?
「あの、ここはどこですか?」
「街道の西側の森です。私の家はすぐそこ、村もあとちょっとの所ですよ。」
「あぁ、あの辺ですか。」
「何が起きているのか存じませんが、もしお力になれることがあったら仰ってください。」
「私にもよくわかりませんが、もし同じようなことがあればどうかお願いします。」
もちろんこんなことは二度と御免だけど、また起きる可能性は十分にある。
こりゃ戻ったら皆に説明していたほうがよさそうだなぁ。
「それでは私は散策に戻りますイナバ様も道中お気をつけて。」
「ありがとうございました。」
メッシュさんと別れて森を少し進むとすぐに街道に戻ってこれた。
それから少し行けば新しくできた宿とお店、そして村の門が見えて来る。
何とかたどり着けたか。
近くまで行くとシャルちゃんが今か今かとこちらの方を見つめていた。
大きく手を振ると俺に気付きシャルちゃんも手を振り返してくれる。
良かったシルビアがまだ来ていないという事はそんなに時間は経っていないという事だ。
ほんと何だったんだろう。
「おはよう、お待たせシャルちゃん。」
「おはようございます。お忙しいのにごめんなさい。」
「定期便もないし大丈夫だよ。引越しの手伝いをって聞いているけど、その様子じゃもう終わったのかな?」
「朝のうちにウェリスさんと皆さんが全部やってくれたんです。」
そうなのか。
なら別に俺が来なくても良かったんじゃないかな。
でもセレンさんを送って来たウェリスは何も言ってなかったし・・・。
あれか?戻ってからやったのか?
「それはよかったね。それで、他にも何か聞きたいことがあるんだったよね。」
「はい・・・。」
おや、急にしょんぼりしてしまったぞ。
恥ずかしいのかそれとも申し訳ないのか。
さっきまでとは随分雰囲気が違うな。
「言いにくい事なのかな?もしよかったらお店の方でも話を聞くけど・・・。」
「あ、あの・・・その・・・。」
モジモジと手を前で交差させて言いだそうとしてはやめるを繰り返している。
こんな時せかすのは問題外だ。
向こうが言い出すまでじっと耐える。
そうすれば自分のタイミングで言いだしてくれるだろう。
ほら、こんな感じで。
顔を上げ意を決したように俺を見つめて来るシャルちゃん。
「あ、あの!お金を貸してください!」
そう言うと膝で頭を打つんじゃないかってぐらいに深々と頭を下げたのだった。
黒煙は白煙に変わり細々と夕闇迫る空へと昇っている。
陽が長くなったとはいえまだまだ夜は早いな。
「イナバ様今日はありがとうございました。」
「こちらこそいい物を見させていただきました。ここまでしていただければ宿も店も安泰ですね。」
「そうなっていただけるとよいのですが・・・。」
「大丈夫ですよ、必ずうまくいきます。」
「イナバ様にそう言っていただけるのであれば安心です。我々も精一杯お応えさせていただきます。」
「備品の搬入などはどうされるんですか?」
「それがですな・・・。」
なんだろう珍しく村長が言葉を濁している。
いいにくいことでもあるんだろうか。
「何かお手伝いできることがあるなら遠慮なく仰ってください。」
「いや、ひとまず今日は持ち帰って考えてみます。また必要であればお声をかけます故その時はお願いいたします。」
「そうですか、わかりました。」
そこまで言うのであれば何も言うまい。
必要があれば声をかけてくださるだろう。
「そう言えばシルビアの姿が見えませんな。」
「あれ、さっきまで近くにいたんですけど・・・。」
周りを見渡してみてもシルビアの姿はない。
おかしいなぁ、先に帰ることはしないから村のどこかにいるとは思うんだけど・・・。
「この時間です、すぐに戻って来るでしょう。」
「そうですね。」
「では私はこの辺で失礼致します。」
深々とお辞儀をして村長が戻っていく。
とりあえずこの辺をうろうろしておくか。
夕暮れの村を一人散策するなんて久々だな。
ひとまず西門を抜けて村へと戻る。
ここから見える風景も随分変わったなぁ。
前までは質素な門それと堀と塀しか見えなかったのに、今では後ろに村一番の宿がそびえ村の中も建物が増えている。
あれは障害物競走の時に新築した倉庫だし、あそこの家はもっとこじんまりしていた。
そして何より目の前を通り過ぎる村の人たちの顔に余裕がある。
ここに来たときはアリに襲われていてみんな余裕がなかったもんなぁ・・・。
ちょうど一年前ぐらいの話なのか。
歳をとると一年が早いっていうけれどそれでも早すぎる気がする。
いや、この一年が濃厚過ぎるのか。
色々ありすぎて何があったのか思い出すのも大変だ。
色んな人にも出会ったし、大変な目にも遭ってきたけれど、今思えばそれもいい思い出。
これまでの一年。
そしてこれからの一年。
まだまだ終わりじゃないんだから感傷的になるのもおかしな話だ。
まずは次の春節。
残すノルマは売り上げのみ。
それを目指して頑張っていくしかないだろう。
売上げ減を補えるだけの施策をまた考えないといけないな。
「お、シュウイチこんな所でどうしたんだ?」
「シルビアの姿が見えないので探していたんです。」
「それは済まなかった、ティオに自主訓練の仕方を教えていたら思った以上に時間がかかってな。」
「ティオ君熱心ですね。」
「成長している事を実感できるのがうれしいのだろう。昨日できなかったことが今日出来る、若いというのは羨ましいな。」
「何を言ってるんですか、シルビアも十分若いですよ。」
「おいおい28、いやもう29になるのか。この歳の女に言う言葉ではないぞ。」
29だって?十分若いじゃないか。
だってまだ20代、こちとらもう30台も半ばが迫ってるんですよ?
若い若い。
「それでも私よりも若い事に変わり在りません、それに出会った時よりも綺麗になっています。」
「そうやって今までの女にも言ってきたのだろう?]
[まさか、こんなこと言うのシルビアかエミリアだけです。」
「そういう事にしておいてやろう・・・、っとそうだシャルからも相談を受けていたのだった。」
「相談ですか?」
「店の完成を機にセレン殿の家から引っ越す予定なのだが、その手伝いをしてほしいそうだ。」
なんだそんなことか。
さっきの村長の件もあってもっと深刻な事なのかと勘ぐってしまった。
安心した。
「そういう事でしたらお安い御用です。セレンさんはいよいよですし無理はさせられませんからね。」
「シュウイチならそう言ってくれると思っていた。荷造りはほぼほぼ終わっているようだから明日一日あれば大丈夫だろう。」
「明日は定期便もないですし構いませんよ。二人で終わらせてしまいましょう。」
「シュウイチも手伝ってくれるのか、助かる。」
「乗り掛かった舟です最後までお付き合いしますよ。」
人手は多い方がいいだろう。
宿の方がひと段落したとはいえ水路の方の工事もあるし、部下の皆さんの手を煩わせるわけにはいかない。
あ、ウェリスにはガンガン働いてもらうので三人もいれば大丈夫、なはずだ。
「それとな、店の方でもお前に相談したいことがあるそうだ。それはまた明日聞いてやってくれ。」
「お店の、ですか。」
「それに関しては私よりもお前の方が適役だからな、深く聞いてないのだ。」
「それも明日本人に聞く事にします。そろそろ帰りましょうか。」
「そうだな今から出れば日が暮れる前に到着するだろう。」
お店の件ねぇ。
俺よりもニケさんやエミリアの方が聞きやすいと思うんだけど、俺の方がいい理由がるんだろう。
ま、それも明日分かるさ。
薄暗くなる森を急ぎ足で商店へと戻る。
一年前と違うのは横にいる人、そしてその人との関係。
もちろん商店で待つ人達もまた一年前には縁のなかった人たちだ。
あ、エミリアは除く。
一年前この世界に来たときはまさかこんな関係になるとは微塵も思っていなかったなぁ・・・。
そう言う意味ではこの一年が人生で一番良い一年だったのかもしれない。
いや、来年はもっといい年になる。
してみせる。
だからその為に出来る事は何でもしよう。
「昨日はエミリアだったからな、今日は私の番だぞ。」
「楽しみにしています。」
「明日の件もあるが・・・、よろしく頼む。」
恥ずかしいのかこちらを見ないシルビア様。
だが手は熱く夕闇に照らされる以上に横顔が真っ赤になっている。
ギャップ萌えってやつですか?
いつものシルビア様とは違う様子にこれまた惚れ直してしまうのだった。
まる。
そして翌朝。
清々しい気分とやる気に満ちた俺はルンルン気分で村への道を進んでいた。
一人で。
前に一人で外出させないという決まりが出来たけれど、何があったのかはあえて言うまい。
色々と諸事情があるのだよ。
決してやましい事でも喧嘩でもないのは誤解のないように先にお伝えしておこう。
って誰にだよ。
うむノリツッコミも今日は冴えているな。
よきかな。
なんて気分よく道を進んでいた時だった。
強い風が正面から吹き付け、思わず目を閉じる。
風はすぐに止み、再び目を開けた俺の目に飛び込んできたのはいつもの森の中・・・。
ではなくあの日見ただだっ広い草原だった。
おいおい嘘だろ。
あれ、夢じゃなかったのかよ。
何で白昼堂々夢の中に潜り込まなきゃいけないんだ?
俺は森の中を歩いていただけで・・・。
先程の様に強い風が俺を襲う。
再び目を閉じ再び開けたら元の森に戻っていると期待したのだけど、絵の前に広がるのは前と同じ何もない草原。
一つ違うとすれば、足元がちゃんと踏み固められているという事だ。
ベースキャンプは維持されているのか。
益々意味が分からない。
この前はシルビアに起こしてもらえたからよかったけど、この状況でどうやって戻ればいいんだよ。
何もない草原。
目の前にはこの前進んだ水場へと道が続いている。
とりあえず・・・いくしかないか。
このままここに居ても埒が明かない。
一先ず水を確保するべく俺は水場へと足を進めた。
それからしっかり1596歩で前回と同じ小川に到着する。
さて、右を見ても左を見ても同じような景色だ。
川幅2m、飛び越えれるかどうか微妙な所だ。
走り幅跳びって苦手なんだよね。
前に飛べばいいのについつい上に飛んでしまって距離を稼げない。
普通にやればイケるんだろうけど、何十年と走り幅跳びなんてやってないからなぁ・・・。
仮に飛び越えられず川にハマったとしても泳げないわけではないしまぁ大丈夫か。
20m程後ろに下がり助走距離を確保して身をかがめる。
クラウチングスタートの格好で目指すは川の向こう側。
位置について、よーい、ドン!
スタートは成功。
それからどんどんと加速して、踏み込むのは川のギリギリ手前。
この歩数なら勢いを殺さずいける!
そう確信したその時だった。
突然川のど真ん中に黒くて大きな影が浮かび上がったのが見えた。
それを見た途端ものすごく嫌な予感を感じ慌てて走るのをやめ、たたらを踏むようにして何とか勢いを殺して川岸の二歩手前で前のめりでこけた時、奴が俺の気の前に現れた。
大きい大きい魚だった。
この小川のどこに隠れていたのかと言わんばかりの巨大な魚が水面から飛び出し、弧を描くように再び小川へと戻って行く。
危なかった。
あのまま飛び越えていたら間違いなくあの大きな口に挟まれ、川の中に引きずり込まれていただろう。
一体どうやってタイミングを合わせたのかはわからない。
でも絶妙のタイミングで奴は俺が飛び越える瞬間を狙っていた。
あんな魚がいるんじゃ飛び越えるのは無理だ。
奴一匹だと確証があるのならいい。
でも二匹以上いるならば仮にタイミングをずらしたとしても同じようにやられてしまう事だろう。
くそ、向こう側は無理か。
となると川上か川下どちらかに行くしかないな。
なら選択肢は一つ。
俺は川の流れに逆らうように川沿いを歩き始める。
さっきと違って草が生い茂っていないので比較的歩きやすい。
ちなみに川上を選んだ理由はただ一つ、上に上がっていくと川幅が狭くなっている可能性が高いからだ。
もしそう言った場所があればさっきの魚は出てこれないだろうし、飛び越えるのも楽になる。
得体のしれない環境で怪我をするのは流石にまずいからね、出来るだけリスクは減らさないと。
途中地面に印をつけながらひたすら川上へ向かって歩き続けたが、草原と同様に同じような景色が延々と続くだけだった。
まずいなぁ。
もし、前回と同じ状況が続くのだとしたらもうすぐあれがやって来る。
俺の体温を奪い、命を刈り取ろうとした冷たい悪魔。
そう、あの雨と風が再び襲って来るかもしれないんだ。
何故そう思うのかって?
真っ黒い雲がこちらに迫って来てるからだよ。
くそ、何かないか。
また同じようになった時、シルビアみたいに起こしてくれる人がいなかったら本当に凍え死んでしまう。
さっきまで俺がいたのは街道のど真ん中。
今日は定期便が来ないから冒険者が声をかけてくれる可能性も限りなく低い。
ましてや村の人が来ることなんてないし・・・。
万事休すだ。
前と同じく風が強くなり空が暗くなる。
急ぎ足が駆け足になりひたすら川をさかのぼっていくも景色は一向に変わらない。
そしてついに雨が俺を襲ってきた。
いやだ。
こんな所でまたあんな目に合うなんて。
俺がいったい何をしたっていうんだろうか。
そもそも誰が何のために俺をこんな目に合わせて・・・!
悪態をついても状況は変わらず冷たい雨と風によって急激に体温が奪われていくのが分かる。
前と違うのは多少体を動かしていたのでまだ体が温かい事。
でもそれも時間の問題だろう。
一度歩みを止めたら最後、一気に体温を奪われそこで俺の命は終わる。
だから最後の最後まで体を動かさないと。
「こんな所で死んでたまるか!」
大声を出して自分を鼓舞し、ただひたすらに走り続ける。
そんな危機的状況に変化が現れたのは諦めそうになったその時だった。
何の変化もなかった川辺の景色に突然小高い丘が現れた。
最後の力を振り絞って駆け寄るとそこにあったのは小さな穴。
大人が一人何とか入れるかと言ったその小さな穴を見つけた俺は、中を確認する事も無くその穴に飛び込んだ。
罠かもしれない。
そんなことは一切考えなかった。
この状況から脱出できるなら何でもいい、そんな気持ちで飛び込んだ穴の中は思ったよりも広く小高い丘の下が丸々洞穴のようになっているようだ。
風は入ってこず、熱を奪う雨も降りこまない。
最高の場所だ。
ホッと一息ついた俺だったが今度は急激な睡魔が襲って来る。
くそ、やっぱり罠か?
そんな事を一瞬考えるも安堵と疲れから来る急激な眠りは瞬く間に俺の意識を刈り取ろうとして来る。
あぁ、眠い。
まるで冬眠するクマのように丸くなり、俺は最後の抵抗を諦めて意識を手放した・・・。
「イナバ様、イナバ様起きてください。」
「ん・・・?」
「こんな所でどうしたんですか?風邪をひいてしまいますよ。」
聞き覚えのある声に起こされて俺はゆっくりと目を開けた。
そこはあの洞窟でも草原でもない。
見覚えのあるいつもの森の中だった。
ボーっとする意識を無理やりたたき起こし、慌てて飛び出した俺がいたのは大きな樹の洞の中だった。
「メッシュさん?」
「もうすぐ春ですけどここで寝るのはちょっと早くないですかね。」
「どうしてこんな所に・・・。」
「覚えていないんですか?」
「街道を歩いていたのは覚えているんですけど、急に意識が無くなって気付けばこんな所に・・・。すみません何を言っているかわかりませんよね。」
「そんなことありません。幻覚の出る薬草を食べるとそうなったりもしますから。でもそんなもの食べていませんよね?」
「もちろんです。」
俺はただ村に向かって歩いていただけだ。
それなのになぜこんな所にいるだろうか。
分からない。
「いつものように薬草を集めていると、突然女の子の声が聞こえてきたんです。イナバ様がこの近くにいるから起こしてくれって。」
「女の子の声ですか。」
「姿は拝見できませんでいたが恐らくあれが森の精霊様なのですね。」
おそらくそうなのだろう。
もしかするとドリちゃんが助けてくれたのかもしれないな。
声は聞こえる。
そう言っていたし、あの時叫んだ声を聴いてくれていたのかもしれない。
ほんと何でこんなことになってるんだろう。
誰が何のために・・・?
「あの、ここはどこですか?」
「街道の西側の森です。私の家はすぐそこ、村もあとちょっとの所ですよ。」
「あぁ、あの辺ですか。」
「何が起きているのか存じませんが、もしお力になれることがあったら仰ってください。」
「私にもよくわかりませんが、もし同じようなことがあればどうかお願いします。」
もちろんこんなことは二度と御免だけど、また起きる可能性は十分にある。
こりゃ戻ったら皆に説明していたほうがよさそうだなぁ。
「それでは私は散策に戻りますイナバ様も道中お気をつけて。」
「ありがとうございました。」
メッシュさんと別れて森を少し進むとすぐに街道に戻ってこれた。
それから少し行けば新しくできた宿とお店、そして村の門が見えて来る。
何とかたどり着けたか。
近くまで行くとシャルちゃんが今か今かとこちらの方を見つめていた。
大きく手を振ると俺に気付きシャルちゃんも手を振り返してくれる。
良かったシルビアがまだ来ていないという事はそんなに時間は経っていないという事だ。
ほんと何だったんだろう。
「おはよう、お待たせシャルちゃん。」
「おはようございます。お忙しいのにごめんなさい。」
「定期便もないし大丈夫だよ。引越しの手伝いをって聞いているけど、その様子じゃもう終わったのかな?」
「朝のうちにウェリスさんと皆さんが全部やってくれたんです。」
そうなのか。
なら別に俺が来なくても良かったんじゃないかな。
でもセレンさんを送って来たウェリスは何も言ってなかったし・・・。
あれか?戻ってからやったのか?
「それはよかったね。それで、他にも何か聞きたいことがあるんだったよね。」
「はい・・・。」
おや、急にしょんぼりしてしまったぞ。
恥ずかしいのかそれとも申し訳ないのか。
さっきまでとは随分雰囲気が違うな。
「言いにくい事なのかな?もしよかったらお店の方でも話を聞くけど・・・。」
「あ、あの・・・その・・・。」
モジモジと手を前で交差させて言いだそうとしてはやめるを繰り返している。
こんな時せかすのは問題外だ。
向こうが言い出すまでじっと耐える。
そうすれば自分のタイミングで言いだしてくれるだろう。
ほら、こんな感じで。
顔を上げ意を決したように俺を見つめて来るシャルちゃん。
「あ、あの!お金を貸してください!」
そう言うと膝で頭を打つんじゃないかってぐらいに深々と頭を下げたのだった。
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