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第七・五章
冒険者の噂話はどこから産まれるのか
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昼の鐘が鳴った。
という事はユーリ達が戻ってきているかもしれない時間だけど、これを終わらせない事には一息つけない。
申し訳ないが待ってもらうしかないな。
小腹が空いてきたが食べに行く時間も無い。
本当は道中にお店があればササッと済ませる予定だったのだが、残念ながらそんなお店も無かった。
まぁ、仕方ないよね。
お久しぶりの冒険者ギルドは相変らず人の出入りが盛んだ。
重厚な鎧を身に着けた人や、THE魔術師という見た目の人もいる。
ここだけはいつきてもファンタジーな気分にさせてくれるよな。
もちろん商店で働いていても扱っている道具からそういう気分にはなるんだけど、ここはやっぱり違う。
異世界に来たんだなぁとしみじみ思うよ。
「おい、あそこにいるのイナバさんじゃねぇか?」
「本当だイナバさんだ!」
「横にいるのは奥さんのエミリア様か。」
「いいなぁ、あんな奥さん俺も持ちてぇなぁ。」
「馬鹿野郎、イナバ様みたいに一人でダンジョン制覇できるようになったら言えよ。あの人は単身ダンジョンに飛び込んで大勢の冒険者を助けたんだぜ。」
「知ってるよ、お前の知り合いもその一人なんだろ?怪しい魔術師をぶっ倒して洗脳されかかってた奴を助けたって話だけど、あれは本当なのかよ?」
「本当も何も実際助けられた奴がいるんだから間違いないだろ。」
ギルドに入ると俺の存在に気付いた冒険者が噂話を始める。
俺がイナバさんなのはいいけどさ、何でエミリアが様付けなんだろう。
いや、わかるよ?
うちの天使が余りにも神々しくて様付けしたくなるのは。
それとさ、別に俺一人で制覇したわけじゃないし、助け出したわけじゃないんですよ。
噂は一人歩きするって言うけど、今回も随分と尾鰭背鰭がついたと見える。
まぁ、勝手に持ち上げてくれる分にはありがたいので別に訂正はしないけどさ。
俺に気付いた冒険者がどんどんと道を開けて行くので、モーゼの如く道が出来てしまった。
その道を進みカウンターまでたどり着く。
「冒険者ギルドへようこそ。」
「ティナギルド長にお繋ぎいただけますでしょうか。」
「申し訳御座いません、現在打ち合わせをしておりまして御予約の無いお客様にはお繋ぎできないんです。」
マジか。
ここにきて更に予定通り行かないと来たか。
呪われてるんじゃないの?
「急ぎの用なんですが何とかなりませんか?」
すかさずエミリアがフォローに入る。
ナイスタイミングです。
「失礼ですがお名前は・・・。」
ここにきて初めて受付嬢が俺の顔を見る。
それまでは作られた営業スマイルだけで俺の顔を見る事は無かった。
まぁいいんだけどねイケメンじゃないし。
でも受付嬢がそれってどうかと思うなぁ・・・。
「イ、イナバ様!大変失礼致しましたすぐお繋ぎいたします!」
俺に気付いた受付嬢が大慌てで裏へ走っていってしまった。
「おい見たか?イナバさんが目力だけで鉄壁のサリィちゃんを驚かせたぞ。」
「マジかよ!俺達がどれだけやっても表情一つ変えなかったサリィちゃんだぜ?」
「あの人に睨まれたら猪突猛進のボアだって道を譲るんだってよ。」
「俺も聞いたことある。先日の集団暴走、騎士団が殲滅したって話だけど実はイナバさんが魔物を谷から追い出したらしい。」
「魔物4000匹だろ?ランドドラゴンまでいてあの谷を騎士団が守り抜いたって話がおかしいんだよ。やっぱりイナバさんがいたからできたんだよな。」
「やっぱすげぇよあの人。」
「俺、後で握手してもらおうかな・・・。」
聞こえてる、聞こえてるぞ後ろの冒険者。
誰だよサリィちゃんて。
魔法使いかよ。
シャランラとか言うのか?
っていうか受付嬢にお前等何してるんだよ。
「すごい噂になってますね。」
「私が睨むだけで魔物が逃げるならこの前あんなに苦労しませんでしたよ。」
思い出されるコボレートとグレイウルフの集団暴走。
あの時モア君がいなかったら俺はここにいなかっただろう。
俺に目力あると思うか?普通。
「イナバ様!」
冒険者の噂話に聞き耳を立てていると奥からティナさんが走ってきた。
「お忙しい所申し訳御座いません、打ち合わせはよろしいのですか?」
「あの程度の話ならグランに任せて大丈夫です。それで、今日はどうしました?」
あの程度て。
こっちとしてはありがたいけど、先に来ていた人に申し訳ないなぁ。
とか思いつつも、予定が狂わなくてホッとしているわけで。
人間現金なものです。
「今回の催しについてなんですけど、少し問題がありまして・・・。」
「私達で何とかできる内容ですからここに来られたんですよね?遠慮なく仰ってください。」
「助かります。」
さすがティナギルド長、話が早い。
「実は、当日の朝に冒険者を運ぶ便が陰日の影響で手配できそうに無いんです。荷物をやりくりして必要便数を調整して入るのですが、それでも大型馬車1台分を手配する事ができません。」
「大型となると30人乗りですね。」
「そうなんです。そこで、参加費を減免するので冒険者の方に前日入りしてもらえないかなと考えています。ちょうど荷解きや天幕の設営などで人手が必要なのでそちらもお願いしたいんです。」
「そういうことでしたら初心者冒険者の中から募れるかもしれません。前日入りという事は明日現地に向かえばよろしいんですね?」
「明日は輸送ギルドより馬車を手配してもらえますのでそちらに乗っていただければ大丈夫です。参加費の減免ならびに当日の食事などはこちらで用意させていただきます。」
30人という事は10チーム分になる。
これだけの人手があれば前日の準備は何とかなるだろう。
報酬も用意したい所だが、さすがに元手が無いので参加費でなんとか我慢してもらいたい。
「わかりました、こちらで何とかしてみせます。他に何かお手伝いできる事はありませんか?」
「それだけしてもらえるだけで十分です。これで肩の荷が一つ下りました。」
「お力になれてよかったです。」
何処か嬉しそうなティナさん。
無理ばかり言って申し訳ないなぁ。
「シュウイチさんこの前のお礼を言わないと・・・。」
「そうでした!この前は素敵な贈り物をありがとうございました。」
「本当はもっと立派な物にするべきだったんですが、あれぐらいしか出来ず申し訳ありません。」
「とんでもない、冒険者の皆さんからの気持ちも嬉しかったです。」
助けた冒険者全員が入れてくれた硬貨。
勿体無くてあれだけは使えそうに無い。
どうしても、って時に使わせてもらうとしよう。
「皆さんイナバ様に直接お礼を言いたかったようですが、あのときはお忙しそうでしたので。」
「忙しかった。えぇ、忙しかったですね・・・。」
思い出したくない。
あの日は思い出したくないんだ。
ポーションが怖い。
自分の疲労度とは関係なく体力が回復していくあの違和感。
眠たいはずなのに眠気が何処かに行ってしまう感じ。
自分が自分で無くなるあの感じをなんと言えばいいんだろう。
「シュウイチさん・・・?」
「イナバ様・・・?」
遥か虚空を見つめ過去を思い出す。
いけない、これ以上思い出すと気分が重たくなる。
落ち着け。
落ち着け俺。
「すみません、思い出したくない過去を思い出してしまいました。」
「プロンプト様の下で働くと皆そうなるそうです。」
「イナバ様の心中お察しします。」
察してください。
そして今はそっとしておいてください。
と、その時。
「ご主人様ここにおられましたか。」
冒険者ギルド内に俺を呼ぶ声が響く。
俺をご主人様と呼ぶのは一人だけ、そうユーリだけだ。
と、いうことは・・・。
「エミリア様、イナバ様はどうされたんですか?」
「思い出したくない過去を思い出してしまったようです。」
「なるほど、それであのような顔をされているんですね。」
ユーリがいるという事はニケさんもいるということだ。
変な顔ってそんなに変な顔してる?
「えぇ、ものすごく変な顔をしています。」
そうか、元がこれだし仕方ないよな。
「ご主人様の元は決して悪くないと思うのですが。」
「・・・ユーリ、心の声で会話するのはやめてもらえませんか?」
「これは大変失礼しました。」
これで確証が取れた。
俺の心の声はユーリに駄々漏れのようだ。
「シュウイチさんどうしました?」
「いえ、何でもありません。」
「お疲れのようでしたら休憩されますか?」
「丁度昼の鐘が鳴ったところですから、昼食をとるべきかと思います。」
「とりたいのは山々なのですが・・・。そうだ、そちらの首尾はいかがでしたか?」
やらなければならない事がまだあるんだ。
休んでいるわけにはいかない。
「出店を依頼するお店には全て声をかけてきました。急なお願いですので中々良い返事をいただけませんでしたが、先日食べたソーラーメンの店主様とカーラザンギアーゲの店主様がご主人様の事を覚えておられまして、是非出店したいと仰ってくださっています。」
「それはありがたいですね、あのお店でしたら値段も高くありませんし何より話題性がある。後でお礼に伺いましょう。」
「それでしたらその時に出店方法も聞いたほうがいいかもしれません。村に機材を運ばれるのか、それとも現地の物を使うのかで荷物の量が変わると思います。」
「リア奥様の仰るとおりですね、その辺り失念していました。」
「食材にこだわっておられるのでしたらそこもお聞きした方がいいと思います。」
「ニケさんの言う通りですそこも聞いておくべきでしょう。」
あの2店舗なら料理的に機材も複雑じゃないし何とかなるだろう。
まさに出店にうってつけの料理だ。
「その他2店舗合計4店舗が今回の出店に了承を頂いております。」
「では引き続きユーリとニケさんにはその4店舗出店方法調理方法などを聞いてもらい、詰めのお話をお任せします。明日の夕刻までであれば輸送ギルドが荷物を運んでくれるはずです、こちらもバスタさんに事情を説明しておきます。」
「お任せ下さい。」
「がんばります。」
うちの女性陣は本当に頼りになる。
それに比べて俺はまだまだだなぁ。
頑張ろう。
「随分と魅力的なお話ですね。」
ティナさんが興味津々という顔で聞いてくる。
「聞かれてしまいましたか。」
「聞いてはいけない内容でしたら忘れます。」
「特に秘密ではありませんから大丈夫ですよ、ティナ様にはお世話になっていますし。」
「それにこの内容は先日の打ち合わせで話し合った内容ですから。」
隠し種がある事は先日話したばかりだ。
「噂では聞いたことあるんですが、どちらも王都で有名な料理ですよね?」
「非常に美味でした。」
「陰日はギルドに残るつもりでしたが、私も行こうかなぁ・・・。」
「よろしければ是非来てください。」
「いいんですか!?」
「お忙しくなければ、ですが。」
「仕事はグランに任せますので大丈夫です!」
いいのか?
本人いないんだけど大丈夫なのか?
「宿泊は宿をお使いください。ただ、人手不足でして冒険者関係でお仕事をお願いするかもしれませんがお許し下さい。」
「それぐらいお安いご用です。お話だけ聞いて楽しそうだなと思っていたので、まさか参加できるなんて夢のようです。」
「ティナ様が来て下さるのは心強いですね。」
「ご主人様が不甲斐無いばかりに御迷惑をお掛けしますが宜しくお願いいたします。」
「ユーリ、不甲斐無いのは聞き捨てなら無いですね。」
「違いますか?」
「いや、違わないですけど・・・。」
真剣に反論できないのが辛い。
どうせ俺は不甲斐無い店主ですよ。
「イナバ様は不甲斐無いことなんてないですよ。」
「いえ、いいんです。」
「ユーリ様、イナバ様が凹んでしまったじゃありませんか。」
「私は事実を述べたまでです。」
「えぇ、全て真実です。」
「シュウイチさんはすごい人ですよ、そんな顔しないで下さい。」
「慰めなくても大丈夫ですよエミリア。不甲斐無い店主ですみません。」
ユーリの容赦ない口撃にどんどんテンションが落ちてくる。
すると、後ろからそのやり取りを見ていた冒険者の声が聞こえてきた。
「おい、あのイナバさんが気落ちしてるぞ。」
「しかもあのティナギルド長がそれを見て慌てているぞ。」
「ウソだろ、氷河のティナギルド長だぞ?」
「誰にも媚びず表情一つ変えずに魔物を倒す姿から氷結の二つ名を持つティナギルド長が慌てるなんて。」
だからさ、一体誰に説明してるんだよ。
っていうかお前等一体何者なんだ?
噂知りすぎだろ。
冒険者なら冒険に出ろよ。
とか何とか思っていると、
「あんな美人に囲まれてやっぱイナバさんってすげぇな。」
「絶対でっかくなって俺もイナバさんみたいになるんだ。」
「お前みたいな奴がなれるわけ無いだろ。」
「うるせぇ、やってみないとわからないだろうが!」
「まずは中級冒険者になってからだろ。」
「言ったな、もしこの節中に中級に上がれたらお前酒おごれよ。」
「いくらでも奢ってやるよ、できるもんならな!」
という内容の声も聞こえてくる。
俺なんかにあこがれて中級目指すのか。
名も知らぬ冒険者よ、頑張ってくれ。
陰ながらに応援している。
「というのは冗談ですからご主人様も元気を出してください。」
「元気が出ると思いますか?」
「出るんじゃないでしょうか。」
「では逆に聞きますがどうすれば元気が出ると思いますか?」
ここまでテンションが落ちると自力で持ち直すのは不可能だ。
誰かオラに元気を分けてくれ。
「そうですね、こういうのはどうでしょうか。」
それだけ言うと突然ユーリが俺の顔を掴み、固定をする。
そしてゆっくりと自分の顔を近づけ始めた。
まさか、元気が出る方法って言うのは・・・!
「「「おぉぉぉぉ!!!」」」
ギルド中から冒険者の声があがる。
そして唇と唇が触れそうになったその瞬間、ピタッとユーリの顔が止まった。
「・・・これだけの観客がいるとさすがに恥ずかしいですね。」
「ユーリ!」
「リア奥様もお怒りですのでこの辺にしておきましょう。ご主人様、元気は出ましたか?」
「出るとか出ないとかどうでもよくなりました。」
「結果として元気が出たのであれば十分です。では私はこれで、ニケ様行きましょう。」
「イナバ様、後で私もしてあげますからね。」
「ニケさんまで!」
キャッキャする女性陣を見ているとなんだか自分がへこんでいるのなんてどうでもよくなってきた。
それに、怒ってるエミリアも可愛いですよ。
「イナバ様の所は賑やかでいいですね。」
「最近賑やか過ぎるような気もしますが、頼りになる仲間です。」
「うらやましいです。」
「ティナさんにもお世話になりっぱなしで、先ほどの件どうぞ宜しくお願いします。」
「ギルド長の名にかけてお任せ下さい。」
今回も他力本願全開で行きますよ。
後ろの冒険者がなにやら騒がしいがまぁいいか。
羨ましいだの、爆発しろだの聞こえてくるが気にしちゃいけない。
さぁ、俺もやることやりますよ!
と、意気込んだその時だった。
「シュウイチさん、リュカさんから念話が来ました!」
お、やっときたか。
ここにきて急に話が動き出した。
計画はズレてるけど、だめになったわけじゃない。
ズレたのなら戻せばいいだけだ。
さぁ、ここから巻き返していきますよ!
本番まで後一日と四分の一。
もう一人のギルド長との戦いにいきましょうか。
という事はユーリ達が戻ってきているかもしれない時間だけど、これを終わらせない事には一息つけない。
申し訳ないが待ってもらうしかないな。
小腹が空いてきたが食べに行く時間も無い。
本当は道中にお店があればササッと済ませる予定だったのだが、残念ながらそんなお店も無かった。
まぁ、仕方ないよね。
お久しぶりの冒険者ギルドは相変らず人の出入りが盛んだ。
重厚な鎧を身に着けた人や、THE魔術師という見た目の人もいる。
ここだけはいつきてもファンタジーな気分にさせてくれるよな。
もちろん商店で働いていても扱っている道具からそういう気分にはなるんだけど、ここはやっぱり違う。
異世界に来たんだなぁとしみじみ思うよ。
「おい、あそこにいるのイナバさんじゃねぇか?」
「本当だイナバさんだ!」
「横にいるのは奥さんのエミリア様か。」
「いいなぁ、あんな奥さん俺も持ちてぇなぁ。」
「馬鹿野郎、イナバ様みたいに一人でダンジョン制覇できるようになったら言えよ。あの人は単身ダンジョンに飛び込んで大勢の冒険者を助けたんだぜ。」
「知ってるよ、お前の知り合いもその一人なんだろ?怪しい魔術師をぶっ倒して洗脳されかかってた奴を助けたって話だけど、あれは本当なのかよ?」
「本当も何も実際助けられた奴がいるんだから間違いないだろ。」
ギルドに入ると俺の存在に気付いた冒険者が噂話を始める。
俺がイナバさんなのはいいけどさ、何でエミリアが様付けなんだろう。
いや、わかるよ?
うちの天使が余りにも神々しくて様付けしたくなるのは。
それとさ、別に俺一人で制覇したわけじゃないし、助け出したわけじゃないんですよ。
噂は一人歩きするって言うけど、今回も随分と尾鰭背鰭がついたと見える。
まぁ、勝手に持ち上げてくれる分にはありがたいので別に訂正はしないけどさ。
俺に気付いた冒険者がどんどんと道を開けて行くので、モーゼの如く道が出来てしまった。
その道を進みカウンターまでたどり着く。
「冒険者ギルドへようこそ。」
「ティナギルド長にお繋ぎいただけますでしょうか。」
「申し訳御座いません、現在打ち合わせをしておりまして御予約の無いお客様にはお繋ぎできないんです。」
マジか。
ここにきて更に予定通り行かないと来たか。
呪われてるんじゃないの?
「急ぎの用なんですが何とかなりませんか?」
すかさずエミリアがフォローに入る。
ナイスタイミングです。
「失礼ですがお名前は・・・。」
ここにきて初めて受付嬢が俺の顔を見る。
それまでは作られた営業スマイルだけで俺の顔を見る事は無かった。
まぁいいんだけどねイケメンじゃないし。
でも受付嬢がそれってどうかと思うなぁ・・・。
「イ、イナバ様!大変失礼致しましたすぐお繋ぎいたします!」
俺に気付いた受付嬢が大慌てで裏へ走っていってしまった。
「おい見たか?イナバさんが目力だけで鉄壁のサリィちゃんを驚かせたぞ。」
「マジかよ!俺達がどれだけやっても表情一つ変えなかったサリィちゃんだぜ?」
「あの人に睨まれたら猪突猛進のボアだって道を譲るんだってよ。」
「俺も聞いたことある。先日の集団暴走、騎士団が殲滅したって話だけど実はイナバさんが魔物を谷から追い出したらしい。」
「魔物4000匹だろ?ランドドラゴンまでいてあの谷を騎士団が守り抜いたって話がおかしいんだよ。やっぱりイナバさんがいたからできたんだよな。」
「やっぱすげぇよあの人。」
「俺、後で握手してもらおうかな・・・。」
聞こえてる、聞こえてるぞ後ろの冒険者。
誰だよサリィちゃんて。
魔法使いかよ。
シャランラとか言うのか?
っていうか受付嬢にお前等何してるんだよ。
「すごい噂になってますね。」
「私が睨むだけで魔物が逃げるならこの前あんなに苦労しませんでしたよ。」
思い出されるコボレートとグレイウルフの集団暴走。
あの時モア君がいなかったら俺はここにいなかっただろう。
俺に目力あると思うか?普通。
「イナバ様!」
冒険者の噂話に聞き耳を立てていると奥からティナさんが走ってきた。
「お忙しい所申し訳御座いません、打ち合わせはよろしいのですか?」
「あの程度の話ならグランに任せて大丈夫です。それで、今日はどうしました?」
あの程度て。
こっちとしてはありがたいけど、先に来ていた人に申し訳ないなぁ。
とか思いつつも、予定が狂わなくてホッとしているわけで。
人間現金なものです。
「今回の催しについてなんですけど、少し問題がありまして・・・。」
「私達で何とかできる内容ですからここに来られたんですよね?遠慮なく仰ってください。」
「助かります。」
さすがティナギルド長、話が早い。
「実は、当日の朝に冒険者を運ぶ便が陰日の影響で手配できそうに無いんです。荷物をやりくりして必要便数を調整して入るのですが、それでも大型馬車1台分を手配する事ができません。」
「大型となると30人乗りですね。」
「そうなんです。そこで、参加費を減免するので冒険者の方に前日入りしてもらえないかなと考えています。ちょうど荷解きや天幕の設営などで人手が必要なのでそちらもお願いしたいんです。」
「そういうことでしたら初心者冒険者の中から募れるかもしれません。前日入りという事は明日現地に向かえばよろしいんですね?」
「明日は輸送ギルドより馬車を手配してもらえますのでそちらに乗っていただければ大丈夫です。参加費の減免ならびに当日の食事などはこちらで用意させていただきます。」
30人という事は10チーム分になる。
これだけの人手があれば前日の準備は何とかなるだろう。
報酬も用意したい所だが、さすがに元手が無いので参加費でなんとか我慢してもらいたい。
「わかりました、こちらで何とかしてみせます。他に何かお手伝いできる事はありませんか?」
「それだけしてもらえるだけで十分です。これで肩の荷が一つ下りました。」
「お力になれてよかったです。」
何処か嬉しそうなティナさん。
無理ばかり言って申し訳ないなぁ。
「シュウイチさんこの前のお礼を言わないと・・・。」
「そうでした!この前は素敵な贈り物をありがとうございました。」
「本当はもっと立派な物にするべきだったんですが、あれぐらいしか出来ず申し訳ありません。」
「とんでもない、冒険者の皆さんからの気持ちも嬉しかったです。」
助けた冒険者全員が入れてくれた硬貨。
勿体無くてあれだけは使えそうに無い。
どうしても、って時に使わせてもらうとしよう。
「皆さんイナバ様に直接お礼を言いたかったようですが、あのときはお忙しそうでしたので。」
「忙しかった。えぇ、忙しかったですね・・・。」
思い出したくない。
あの日は思い出したくないんだ。
ポーションが怖い。
自分の疲労度とは関係なく体力が回復していくあの違和感。
眠たいはずなのに眠気が何処かに行ってしまう感じ。
自分が自分で無くなるあの感じをなんと言えばいいんだろう。
「シュウイチさん・・・?」
「イナバ様・・・?」
遥か虚空を見つめ過去を思い出す。
いけない、これ以上思い出すと気分が重たくなる。
落ち着け。
落ち着け俺。
「すみません、思い出したくない過去を思い出してしまいました。」
「プロンプト様の下で働くと皆そうなるそうです。」
「イナバ様の心中お察しします。」
察してください。
そして今はそっとしておいてください。
と、その時。
「ご主人様ここにおられましたか。」
冒険者ギルド内に俺を呼ぶ声が響く。
俺をご主人様と呼ぶのは一人だけ、そうユーリだけだ。
と、いうことは・・・。
「エミリア様、イナバ様はどうされたんですか?」
「思い出したくない過去を思い出してしまったようです。」
「なるほど、それであのような顔をされているんですね。」
ユーリがいるという事はニケさんもいるということだ。
変な顔ってそんなに変な顔してる?
「えぇ、ものすごく変な顔をしています。」
そうか、元がこれだし仕方ないよな。
「ご主人様の元は決して悪くないと思うのですが。」
「・・・ユーリ、心の声で会話するのはやめてもらえませんか?」
「これは大変失礼しました。」
これで確証が取れた。
俺の心の声はユーリに駄々漏れのようだ。
「シュウイチさんどうしました?」
「いえ、何でもありません。」
「お疲れのようでしたら休憩されますか?」
「丁度昼の鐘が鳴ったところですから、昼食をとるべきかと思います。」
「とりたいのは山々なのですが・・・。そうだ、そちらの首尾はいかがでしたか?」
やらなければならない事がまだあるんだ。
休んでいるわけにはいかない。
「出店を依頼するお店には全て声をかけてきました。急なお願いですので中々良い返事をいただけませんでしたが、先日食べたソーラーメンの店主様とカーラザンギアーゲの店主様がご主人様の事を覚えておられまして、是非出店したいと仰ってくださっています。」
「それはありがたいですね、あのお店でしたら値段も高くありませんし何より話題性がある。後でお礼に伺いましょう。」
「それでしたらその時に出店方法も聞いたほうがいいかもしれません。村に機材を運ばれるのか、それとも現地の物を使うのかで荷物の量が変わると思います。」
「リア奥様の仰るとおりですね、その辺り失念していました。」
「食材にこだわっておられるのでしたらそこもお聞きした方がいいと思います。」
「ニケさんの言う通りですそこも聞いておくべきでしょう。」
あの2店舗なら料理的に機材も複雑じゃないし何とかなるだろう。
まさに出店にうってつけの料理だ。
「その他2店舗合計4店舗が今回の出店に了承を頂いております。」
「では引き続きユーリとニケさんにはその4店舗出店方法調理方法などを聞いてもらい、詰めのお話をお任せします。明日の夕刻までであれば輸送ギルドが荷物を運んでくれるはずです、こちらもバスタさんに事情を説明しておきます。」
「お任せ下さい。」
「がんばります。」
うちの女性陣は本当に頼りになる。
それに比べて俺はまだまだだなぁ。
頑張ろう。
「随分と魅力的なお話ですね。」
ティナさんが興味津々という顔で聞いてくる。
「聞かれてしまいましたか。」
「聞いてはいけない内容でしたら忘れます。」
「特に秘密ではありませんから大丈夫ですよ、ティナ様にはお世話になっていますし。」
「それにこの内容は先日の打ち合わせで話し合った内容ですから。」
隠し種がある事は先日話したばかりだ。
「噂では聞いたことあるんですが、どちらも王都で有名な料理ですよね?」
「非常に美味でした。」
「陰日はギルドに残るつもりでしたが、私も行こうかなぁ・・・。」
「よろしければ是非来てください。」
「いいんですか!?」
「お忙しくなければ、ですが。」
「仕事はグランに任せますので大丈夫です!」
いいのか?
本人いないんだけど大丈夫なのか?
「宿泊は宿をお使いください。ただ、人手不足でして冒険者関係でお仕事をお願いするかもしれませんがお許し下さい。」
「それぐらいお安いご用です。お話だけ聞いて楽しそうだなと思っていたので、まさか参加できるなんて夢のようです。」
「ティナ様が来て下さるのは心強いですね。」
「ご主人様が不甲斐無いばかりに御迷惑をお掛けしますが宜しくお願いいたします。」
「ユーリ、不甲斐無いのは聞き捨てなら無いですね。」
「違いますか?」
「いや、違わないですけど・・・。」
真剣に反論できないのが辛い。
どうせ俺は不甲斐無い店主ですよ。
「イナバ様は不甲斐無いことなんてないですよ。」
「いえ、いいんです。」
「ユーリ様、イナバ様が凹んでしまったじゃありませんか。」
「私は事実を述べたまでです。」
「えぇ、全て真実です。」
「シュウイチさんはすごい人ですよ、そんな顔しないで下さい。」
「慰めなくても大丈夫ですよエミリア。不甲斐無い店主ですみません。」
ユーリの容赦ない口撃にどんどんテンションが落ちてくる。
すると、後ろからそのやり取りを見ていた冒険者の声が聞こえてきた。
「おい、あのイナバさんが気落ちしてるぞ。」
「しかもあのティナギルド長がそれを見て慌てているぞ。」
「ウソだろ、氷河のティナギルド長だぞ?」
「誰にも媚びず表情一つ変えずに魔物を倒す姿から氷結の二つ名を持つティナギルド長が慌てるなんて。」
だからさ、一体誰に説明してるんだよ。
っていうかお前等一体何者なんだ?
噂知りすぎだろ。
冒険者なら冒険に出ろよ。
とか何とか思っていると、
「あんな美人に囲まれてやっぱイナバさんってすげぇな。」
「絶対でっかくなって俺もイナバさんみたいになるんだ。」
「お前みたいな奴がなれるわけ無いだろ。」
「うるせぇ、やってみないとわからないだろうが!」
「まずは中級冒険者になってからだろ。」
「言ったな、もしこの節中に中級に上がれたらお前酒おごれよ。」
「いくらでも奢ってやるよ、できるもんならな!」
という内容の声も聞こえてくる。
俺なんかにあこがれて中級目指すのか。
名も知らぬ冒険者よ、頑張ってくれ。
陰ながらに応援している。
「というのは冗談ですからご主人様も元気を出してください。」
「元気が出ると思いますか?」
「出るんじゃないでしょうか。」
「では逆に聞きますがどうすれば元気が出ると思いますか?」
ここまでテンションが落ちると自力で持ち直すのは不可能だ。
誰かオラに元気を分けてくれ。
「そうですね、こういうのはどうでしょうか。」
それだけ言うと突然ユーリが俺の顔を掴み、固定をする。
そしてゆっくりと自分の顔を近づけ始めた。
まさか、元気が出る方法って言うのは・・・!
「「「おぉぉぉぉ!!!」」」
ギルド中から冒険者の声があがる。
そして唇と唇が触れそうになったその瞬間、ピタッとユーリの顔が止まった。
「・・・これだけの観客がいるとさすがに恥ずかしいですね。」
「ユーリ!」
「リア奥様もお怒りですのでこの辺にしておきましょう。ご主人様、元気は出ましたか?」
「出るとか出ないとかどうでもよくなりました。」
「結果として元気が出たのであれば十分です。では私はこれで、ニケ様行きましょう。」
「イナバ様、後で私もしてあげますからね。」
「ニケさんまで!」
キャッキャする女性陣を見ているとなんだか自分がへこんでいるのなんてどうでもよくなってきた。
それに、怒ってるエミリアも可愛いですよ。
「イナバ様の所は賑やかでいいですね。」
「最近賑やか過ぎるような気もしますが、頼りになる仲間です。」
「うらやましいです。」
「ティナさんにもお世話になりっぱなしで、先ほどの件どうぞ宜しくお願いします。」
「ギルド長の名にかけてお任せ下さい。」
今回も他力本願全開で行きますよ。
後ろの冒険者がなにやら騒がしいがまぁいいか。
羨ましいだの、爆発しろだの聞こえてくるが気にしちゃいけない。
さぁ、俺もやることやりますよ!
と、意気込んだその時だった。
「シュウイチさん、リュカさんから念話が来ました!」
お、やっときたか。
ここにきて急に話が動き出した。
計画はズレてるけど、だめになったわけじゃない。
ズレたのなら戻せばいいだけだ。
さぁ、ここから巻き返していきますよ!
本番まで後一日と四分の一。
もう一人のギルド長との戦いにいきましょうか。
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次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
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