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第七・五章
一人はみんなのために、みんなは一つの目的のために
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村長の家に集まったのは予定のメンバー。
それに加えてお久しぶりの人がいるのはなぜだろうか。
いや、関係者ではあるんですよ?
でもなんていうか、お久しぶりすぎて存在を忘れていたといいますか。
でもまぁ、きてくれるだけでありがたいので何も言いません。
「では全員揃いましたので打ち合わせを始めたいと思います。今日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございました。」
参加者6人全員がぺこりと頭を下げる。
「まず始めるにあたりまして、今回の催しに対して最大限の協力を申し出てくださったニッカ村長に最上級の感謝を申し上げます。この度はご協力いただきありがとうございました。」
「イナバ様には常日頃から感謝しきれないほどのご助力を賜っております、こんな時にご協力しない理由がございません。これは私だけでなく村人全員の総意でございます。」
「そう仰っていただけるだけで十分お返ししていただいております。これからもどうか我が商店共々よろしくお願いいたします。」
「こちらこそ、共に進む道が幸福でありますよう願っております。」
今回の催しは村の協力なくして成功はない。
多くの冒険者ならびに関係者をどこに集めるのか。
森の中にそれだけの空間を用意するには時間が足りなさすぎる。
もし村の協力が取り付けられなければ、この催しは始まる前に失敗していただろう。
村長を含め村の人たちには感謝の言葉しかない。
「今日話し合わなければならないの大きく分けて三つ。一つ目は今回の催しに参加する冒険者の宿泊ならびに待機場所について、二つ目は彼らへの飲食物の提供について、そして最後に防犯体制についてです。」
「参加する冒険者にはあらかじめ、待機場所での規範について説明を済ませております。しかしながら全ての冒険者を統率できるわけではありません、誠に申し訳ありませんが防犯体制についてはご助力賜る必要があるかと思います。」
参加者の一人、冒険者ギルドのギルド長ティナさんが発言する。
今回の催しに参加する冒険者は総勢150人。
この村の人口の約3倍だ。
それだけの人間を短期間ではあるが完全に統率するのは正直難しい。
もちろん全ての冒険者が悪事を働くわけではないが、お酒などが入るとどうしても素行の悪い部分が出てしまう。
その部分を含めてしっかりと管理していかなければならない。
「村の中を借りる以上、村への迷惑行為は断じて許されるものではありません。また、違反者には参加資格の没収などの厳しい態度で臨まなければならないでしょう。」
「周辺の巡回については男衆に任せてもらえば構わないが、正直に言って冒険者と俺達じゃ実力に差がありすぎる。何かあった時に対等に渡り合えるだけの抑止力は必要じゃないか?」
次に発言したのは村長の右腕ドリスだ。
ウェリスとドリス、この二人が村の実行部隊として活躍している。
今回の催しにも村長代理としてその手腕をふるってもらう予定だ。
「それに関しては我が騎士団からそれなりに腕の立つ者を派遣する予定だ。警護という名目ではあるが騎士団からも特別参加枠で参加させてもらうことになっている。」
俺の横に座ったシルビア様が発言する。
今日は騎士団の代表としてサンサトローズから来てくれた。
残念ながらまた戻ってしまうようだが、まぁ催し当日に会えるからいいか。
「騎士団から人を出してもらえるなら問題ない、シルビア様の推薦であれば問題ないだろう。」
「ギルドからも周辺警護の依頼を冒険者に出しております。中級ならびに上級冒険者が5人程参加予定です。」
「上級冒険冒険者も、ですか?」
「イナバ様もご存知の方が名乗りを上げられました。」
上級冒険者の知り合いと言えばあまり多くはない。
いや、むしろあの人しかいないか。
「当日会えるのを楽しみにしています。」
「積もる話もあるそうなので是非お話を聞いてあげてください。」
あの人に会うのは例の事件以来だ。
どんな話があるのか楽しみだな。
「次に、参加者の宿泊待機場所についてですが。」
「予定している待機場所は南中央広場、それと堀の南側をウェリスたちが拡張中だ。この短時間では整地が精一杯だからな、幕屋で我慢してくれ。」
「それは仕方ありません。そうなると参加者全員分の幕屋をどうするかですが・・・。」
「そこは私の出番のようですね。」
この集まりに登場していない最後の一人。
そう、彼女こそ呼ばれていないはずの参加者。
「貴女は、確か・・・。」
「ティナさんはご存じありませんでしたね。」
「ご挨拶が遅れました、ダンジョンスマート商店連合所属メルクリア=フィフティーヌと申します以後お見知りおきを。」
そう、我が上司メルクリア氏だ。
「メルクリア様、出番というのはどういう事でしょうか。」
「天幕の手配、我が商店連合が責任をもって手配させていただくという事です。」
「ですが商店連合は今回催しの許可を与えるのみとのことでしたが。」
「私の可愛い部下が困っているのに助けない上司がいると思いますか?あぁ、別に貴方を助けるつもりではありませんのでご心配なく。」
ですよねー。
相変らずというかなんというか。
俺ってこの人に何か悪いことをしたっけ?
別に何もしてないと思うんだけど。
酔ったときの事をまだ気にしているんだろうか。
「とりあえず人数分手配できるなら問題は解決だ、当日までには人数分の待機場所ぐらい確保できるだろ。」
「その辺りはウェリス達に頑張ってもらうしかないですね。」
「定期便のおかげで追加の労働力は確保できているからな、いざとなったら俺達も手伝うさ。」
村のことに限って言えばドリスの右に出る者はいない。
やるといったらやるオッサン、それがドリスだ。
「ならば後は滞在時の食事などについてだな。」
「食料品に関しては輸送ギルドより前日に搬入される予定です。時期が時期だけに日持ちしないものから順に使っていくことになりますが、問題は大量の食料を何処に搬入するかなんですよね。」
「村の倉庫じゃ足りないのか?」
「たった3日分とはいえ150人分ですからかなりの量になります。それに、協賛品として提供していただく食料品の量がかなり多いんですよ。」
協賛企業のほかにコッペンから大量の食料品を提供してもらえる事になっている。
予定よりもかなりの量になっているので、おそらくコッペンが裏で仕切っている何かが大当たりしているのだろう。
この辺については今度の聖日に説明してもらった方が良さそうだな。
裏で何をしてくれても迷惑がかからないなら構わないという約束だ。
だが、話が大きくなっているのであれば事情くらい聞いておいたほうがいいだろう。
八百長とかされても困るし、そのあたりも対策しておいた方がいいかもしれない。
「そうなると倉庫を増設する必要があるか。」
「日持ちするものはそれでいけると思いますが、生鮮食品は大型の魔石冷蔵庫が欲しい所ですね。」
「そんなものを手配する金が何処にあるんだよ。」
そうなんですよね。
どう考えてもものすごい高額だし、レンタルサービスがあるとも思えない。
置いといて損は無いけれど、準備するにはちょっと元手が足りないなぁ。
「催しの期間だけあれば問題ないのかしら。」
「前日を含めて四日ほどあれば十分だと思いますが・・・。」
「丁度納品前の冷蔵庫があるから融通してもらえるように手配しておくわ。」
「大丈夫なんですか?」
「汚すわけでも壊すわけでもないんだから別に構わないでしょ。」
さすがメルクリア様おっとこまえ~。
あ、いや女前?
どっちでもいいや。
「失礼ながらメルクリア殿、冷蔵庫が手配できても動かす魔石はどうするのだ?あれだけの物を動かすとなると通常のものではまかないきれんぞ。」
「私に出来るのは手配だけ、魔石に関してはこの男がどうにかするでしょう。」
「しっかり頼むぞ、お前にかかってんだからな。」
「確かにシュウイチなら何とかするか。」
皆さん俺を何だと思っているんでしょうか。
確かにツテはあるけれど、貸してくれるかどうかなんてわからないぞ?
ってかどのぐらいの魔石が必要なんだ?
誰か教えてよ。
「まぁ、善処はします。」
「あとは搬入された食料品をどう冒険者に提供するかですね。」
「さすがティナさん察しが良い。いくら材料があっても調理しなければお腹を満たすことは出来ませんから。問題はこれだけの人数分を誰が何処で調理するかという事なんです。」
「さすがに村の女衆だけでは難しいな。」
「そんなに凝った料理でなければ何とかなるでしょうが、三日間同じというわけにはいきません。」
俺は三日間カレーでも大丈夫だが、さすがに参加してくれている冒険者にそれを強制するわけには行かない。
「調理場に関しては広場の奥に簡易の調理場を作ればなんとかなるだろうが、作り手がいないことには始まらないぞ。」
「騎士団の調理場から何人か呼んでくることはできるが、それでは間に合わないだろうな。」
「そういうことでしたらギルドからも手配する事ができます。合計10人ほど手配できればなんとかなると思います。」
「もちろん調理班の皆さんには賃金をお支払いいたしますので御安心下さい。人選はそちらにお任せするという事でいいですか?」
「わかった、ティナ殿あとでお時間よろしいか?」
「大丈夫です。」
そっちは二人に任せるとしよう。
そんでもって俺は隠し玉を出すとしますかね。
「それと、今の話とは別に提案があるのですがいいですか?」
「貴方の事ですからまた面倒な事を考えているのではなくて?」
失礼な。
俺が毎回面倒なことばかり考えてるわけじゃないんだぞ?
ちゃんと冒険者や参加者の事を考えてだなぁ。
「まぁまぁイナバ様の事ですから色々と考えておいでしょう、お聞かせいただけますか?」
「ありがとうございます。我々で手配した調理班とは別にサンサトローズの飲食店から出店のような形で参加していただこうかと考えています。」
「あら、面白そうな話だったのね、詳しく聞かせてもらえるかしら。」
「簡単に言えば飲食店の出張所です。普段なかなか縁のない飲食店の方と冒険者の方との間を取り持つことが出来れば、催し後も冒険者の方々はそのお店を利用することでしょう。いわば宣伝という形で飲食の提供に協力いただくのです。」
「確かに普段食べられない料理が食えるのは魅力的だが、俺達が利用するのはまずいんだろ?」
「そんな事はありません。有料では
ありますが村の人にも是非利用していただきたいと思っています。」
普段縁が無いのはこの村の人も同じだ。
せっかくの催しなのだからお祭り感覚で利用して貰って構わない。
「だがそれでは我々が料理を手配する意味がないのでは無いか?」
「我々の料理は無料で提供します。通常の食事とは別に娯楽のような形で別の料理も楽しんでいただければと考えています。もちろん村の皆さんが無料の料理を楽しんでいただいても構いません。むしろ、村の皆さんにも消費していただかなければまずい量なんです。」
「そんな量だなんて聞いてないぞ?」
「はじめはそんなに多くなかったんですが、どんどんと協賛品が追加されてきたんです。有り難い話ではあるのですが、食べ物なので備蓄するわけにも行かなくてですね・・・。陰日ではありますが当日は聖日のような形で楽しんでいただければと考えています。」
「なぁ、倉庫一つで足りるのか?」
「・・・後一つ追加で間に合います?」
「間に合うもなにも人手も資材も足りねぇよ。」
ですよねー。
さてどうするかなぁ。
うちの倉庫も結構パンパンなんですよねー。
この気候だから炎天下に置くわけにもいかないし・・・。
森の泉で冷やすのにも限界があるぞ。
「面白そうな話だから資材は用意してあげるわ、その代わり人手はそっちで用意してもらえるかしら。」
「よろしいのですか?」
「儲からない話は嫌いだけど、この村には貴方を助けてもらったご恩があるんだからそれぐらい恩返ししなきゃね。それに、にぎやかなのは嫌いじゃないのよ。」
なるほどつまりはお祭りが大好きと。
そうこなくっちゃ。
「人手はギルドのほうで手配してみましょう。農村出の冒険者が多いですから土木作業の出来る初心者冒険者でしたらにすぐ集まると思います。」
「助かります。」
「なんだか随分と大きな話になってきたな。」
「最初はこじんまりとやるつもりだったんですが・・・でもまぁ、皆さんが楽しんでくださるのであればそれで良いかなと思ってきました。」
「おいおい、お前の店の催しじゃなかったのか?」
「それはそうなんですが、皆が楽しんでくれるのであればそれでいいかなと。」
「欲の無い男だなぁ。」
「とんでもない、頭の中は儲ける事でいっぱいですよ。」
「そんなやつが無料で料理なんか配るかよ。」
ドッと笑いが起きる。
元は俺の命を懸けた催しのはずだった。
だが、今は全員が楽しんで帰ってくれればそれで良い。
これは俺だけの催しじゃない。
参加者全員の催しなんだ。
「さすがイナバ様お心の広いお方だ。」
「とんでもありません、村の皆さんに頼りっきりで申し訳ないぐらいです。」
「昔は納涼の祭りを楽しんだものですがここ最近はその余裕も無く寂しいものでした。またこうして皆で楽しい時間がすごせるのなら村長としてこれ以上うれしい事はありません。」
「そういえば昔は広場で踊ったものだな。」
「シルビアも踊ったんですか?」
「あぁ、小さい頃にな。あの夏の事はこの年になっても良く思い出す。」
「今回もそういった形で何か出来ればいいですね。」
後夜祭的なイベントもするべきだろうか。
そうなると前夜祭も必要か?
「おい、あれこれやりすぎると本番に間に合わないぞ。」
「さすがに後四日で全て準備するのは冒険者の手を借りても難しいものがありますね。」
ですよねー。
何事も程々が一番。
やりたかったら来年やればいいさ。
来年生きていられる為に、今を全力で頑張ろう。
「今回はひとまず先ほど決めた内容で行きましょうか。後四日しかありませんが皆さんのお力をお借りできれば成功すると確信しております。どうか力のない私に皆さんの力をお貸し下さい、宜しくお願いします。」
やるとなれば全力だ。
そして全力で他力本願だ。
席を立ち全員の顔を見渡してから大きく頭を下げる。
全員が嫌な顔せず頷いてくれていた。
ありがとう。
頼りにしてます。
「そうと決まれば時間がねぇ、俺はウェリス達に事情を説明してくるぜ。」
「ではティナ殿先ほどの話だが。」
「料理の種類は多い方がいいでしょうからベテランの方のほうがいいですよね。」
「村長様、この度はうちのイナバが御無理を言いまして申し訳御座いませんでした。」
「何を仰います、イナバ様とメルクリア様がいなければこの村は寂しいままでした。こんなにも賑やかなのは全てお二人のおかげで御座います。」
各々がそれぞれの役目を全うする為に動き出す。
さぁ、俺もゆっくりしていられないぞ。
明後日の聖日に全て回る為にはスケジュール管理が必須だ、その辺しっかりつめておかないとな。
One for all, All for one
一人はみんなのために、みんなは一つの目的のために
これが本来の意味らしい。
まさに今の俺達を現している言葉だ。
さぁ、やるぞ!
頼りになる仲間を見ながら俺はグッと拳に力を入れた。
本番まで後3日と半日。
それに加えてお久しぶりの人がいるのはなぜだろうか。
いや、関係者ではあるんですよ?
でもなんていうか、お久しぶりすぎて存在を忘れていたといいますか。
でもまぁ、きてくれるだけでありがたいので何も言いません。
「では全員揃いましたので打ち合わせを始めたいと思います。今日はお忙しい中お集まりいただきありがとうございました。」
参加者6人全員がぺこりと頭を下げる。
「まず始めるにあたりまして、今回の催しに対して最大限の協力を申し出てくださったニッカ村長に最上級の感謝を申し上げます。この度はご協力いただきありがとうございました。」
「イナバ様には常日頃から感謝しきれないほどのご助力を賜っております、こんな時にご協力しない理由がございません。これは私だけでなく村人全員の総意でございます。」
「そう仰っていただけるだけで十分お返ししていただいております。これからもどうか我が商店共々よろしくお願いいたします。」
「こちらこそ、共に進む道が幸福でありますよう願っております。」
今回の催しは村の協力なくして成功はない。
多くの冒険者ならびに関係者をどこに集めるのか。
森の中にそれだけの空間を用意するには時間が足りなさすぎる。
もし村の協力が取り付けられなければ、この催しは始まる前に失敗していただろう。
村長を含め村の人たちには感謝の言葉しかない。
「今日話し合わなければならないの大きく分けて三つ。一つ目は今回の催しに参加する冒険者の宿泊ならびに待機場所について、二つ目は彼らへの飲食物の提供について、そして最後に防犯体制についてです。」
「参加する冒険者にはあらかじめ、待機場所での規範について説明を済ませております。しかしながら全ての冒険者を統率できるわけではありません、誠に申し訳ありませんが防犯体制についてはご助力賜る必要があるかと思います。」
参加者の一人、冒険者ギルドのギルド長ティナさんが発言する。
今回の催しに参加する冒険者は総勢150人。
この村の人口の約3倍だ。
それだけの人間を短期間ではあるが完全に統率するのは正直難しい。
もちろん全ての冒険者が悪事を働くわけではないが、お酒などが入るとどうしても素行の悪い部分が出てしまう。
その部分を含めてしっかりと管理していかなければならない。
「村の中を借りる以上、村への迷惑行為は断じて許されるものではありません。また、違反者には参加資格の没収などの厳しい態度で臨まなければならないでしょう。」
「周辺の巡回については男衆に任せてもらえば構わないが、正直に言って冒険者と俺達じゃ実力に差がありすぎる。何かあった時に対等に渡り合えるだけの抑止力は必要じゃないか?」
次に発言したのは村長の右腕ドリスだ。
ウェリスとドリス、この二人が村の実行部隊として活躍している。
今回の催しにも村長代理としてその手腕をふるってもらう予定だ。
「それに関しては我が騎士団からそれなりに腕の立つ者を派遣する予定だ。警護という名目ではあるが騎士団からも特別参加枠で参加させてもらうことになっている。」
俺の横に座ったシルビア様が発言する。
今日は騎士団の代表としてサンサトローズから来てくれた。
残念ながらまた戻ってしまうようだが、まぁ催し当日に会えるからいいか。
「騎士団から人を出してもらえるなら問題ない、シルビア様の推薦であれば問題ないだろう。」
「ギルドからも周辺警護の依頼を冒険者に出しております。中級ならびに上級冒険者が5人程参加予定です。」
「上級冒険冒険者も、ですか?」
「イナバ様もご存知の方が名乗りを上げられました。」
上級冒険者の知り合いと言えばあまり多くはない。
いや、むしろあの人しかいないか。
「当日会えるのを楽しみにしています。」
「積もる話もあるそうなので是非お話を聞いてあげてください。」
あの人に会うのは例の事件以来だ。
どんな話があるのか楽しみだな。
「次に、参加者の宿泊待機場所についてですが。」
「予定している待機場所は南中央広場、それと堀の南側をウェリスたちが拡張中だ。この短時間では整地が精一杯だからな、幕屋で我慢してくれ。」
「それは仕方ありません。そうなると参加者全員分の幕屋をどうするかですが・・・。」
「そこは私の出番のようですね。」
この集まりに登場していない最後の一人。
そう、彼女こそ呼ばれていないはずの参加者。
「貴女は、確か・・・。」
「ティナさんはご存じありませんでしたね。」
「ご挨拶が遅れました、ダンジョンスマート商店連合所属メルクリア=フィフティーヌと申します以後お見知りおきを。」
そう、我が上司メルクリア氏だ。
「メルクリア様、出番というのはどういう事でしょうか。」
「天幕の手配、我が商店連合が責任をもって手配させていただくという事です。」
「ですが商店連合は今回催しの許可を与えるのみとのことでしたが。」
「私の可愛い部下が困っているのに助けない上司がいると思いますか?あぁ、別に貴方を助けるつもりではありませんのでご心配なく。」
ですよねー。
相変らずというかなんというか。
俺ってこの人に何か悪いことをしたっけ?
別に何もしてないと思うんだけど。
酔ったときの事をまだ気にしているんだろうか。
「とりあえず人数分手配できるなら問題は解決だ、当日までには人数分の待機場所ぐらい確保できるだろ。」
「その辺りはウェリス達に頑張ってもらうしかないですね。」
「定期便のおかげで追加の労働力は確保できているからな、いざとなったら俺達も手伝うさ。」
村のことに限って言えばドリスの右に出る者はいない。
やるといったらやるオッサン、それがドリスだ。
「ならば後は滞在時の食事などについてだな。」
「食料品に関しては輸送ギルドより前日に搬入される予定です。時期が時期だけに日持ちしないものから順に使っていくことになりますが、問題は大量の食料を何処に搬入するかなんですよね。」
「村の倉庫じゃ足りないのか?」
「たった3日分とはいえ150人分ですからかなりの量になります。それに、協賛品として提供していただく食料品の量がかなり多いんですよ。」
協賛企業のほかにコッペンから大量の食料品を提供してもらえる事になっている。
予定よりもかなりの量になっているので、おそらくコッペンが裏で仕切っている何かが大当たりしているのだろう。
この辺については今度の聖日に説明してもらった方が良さそうだな。
裏で何をしてくれても迷惑がかからないなら構わないという約束だ。
だが、話が大きくなっているのであれば事情くらい聞いておいたほうがいいだろう。
八百長とかされても困るし、そのあたりも対策しておいた方がいいかもしれない。
「そうなると倉庫を増設する必要があるか。」
「日持ちするものはそれでいけると思いますが、生鮮食品は大型の魔石冷蔵庫が欲しい所ですね。」
「そんなものを手配する金が何処にあるんだよ。」
そうなんですよね。
どう考えてもものすごい高額だし、レンタルサービスがあるとも思えない。
置いといて損は無いけれど、準備するにはちょっと元手が足りないなぁ。
「催しの期間だけあれば問題ないのかしら。」
「前日を含めて四日ほどあれば十分だと思いますが・・・。」
「丁度納品前の冷蔵庫があるから融通してもらえるように手配しておくわ。」
「大丈夫なんですか?」
「汚すわけでも壊すわけでもないんだから別に構わないでしょ。」
さすがメルクリア様おっとこまえ~。
あ、いや女前?
どっちでもいいや。
「失礼ながらメルクリア殿、冷蔵庫が手配できても動かす魔石はどうするのだ?あれだけの物を動かすとなると通常のものではまかないきれんぞ。」
「私に出来るのは手配だけ、魔石に関してはこの男がどうにかするでしょう。」
「しっかり頼むぞ、お前にかかってんだからな。」
「確かにシュウイチなら何とかするか。」
皆さん俺を何だと思っているんでしょうか。
確かにツテはあるけれど、貸してくれるかどうかなんてわからないぞ?
ってかどのぐらいの魔石が必要なんだ?
誰か教えてよ。
「まぁ、善処はします。」
「あとは搬入された食料品をどう冒険者に提供するかですね。」
「さすがティナさん察しが良い。いくら材料があっても調理しなければお腹を満たすことは出来ませんから。問題はこれだけの人数分を誰が何処で調理するかという事なんです。」
「さすがに村の女衆だけでは難しいな。」
「そんなに凝った料理でなければ何とかなるでしょうが、三日間同じというわけにはいきません。」
俺は三日間カレーでも大丈夫だが、さすがに参加してくれている冒険者にそれを強制するわけには行かない。
「調理場に関しては広場の奥に簡易の調理場を作ればなんとかなるだろうが、作り手がいないことには始まらないぞ。」
「騎士団の調理場から何人か呼んでくることはできるが、それでは間に合わないだろうな。」
「そういうことでしたらギルドからも手配する事ができます。合計10人ほど手配できればなんとかなると思います。」
「もちろん調理班の皆さんには賃金をお支払いいたしますので御安心下さい。人選はそちらにお任せするという事でいいですか?」
「わかった、ティナ殿あとでお時間よろしいか?」
「大丈夫です。」
そっちは二人に任せるとしよう。
そんでもって俺は隠し玉を出すとしますかね。
「それと、今の話とは別に提案があるのですがいいですか?」
「貴方の事ですからまた面倒な事を考えているのではなくて?」
失礼な。
俺が毎回面倒なことばかり考えてるわけじゃないんだぞ?
ちゃんと冒険者や参加者の事を考えてだなぁ。
「まぁまぁイナバ様の事ですから色々と考えておいでしょう、お聞かせいただけますか?」
「ありがとうございます。我々で手配した調理班とは別にサンサトローズの飲食店から出店のような形で参加していただこうかと考えています。」
「あら、面白そうな話だったのね、詳しく聞かせてもらえるかしら。」
「簡単に言えば飲食店の出張所です。普段なかなか縁のない飲食店の方と冒険者の方との間を取り持つことが出来れば、催し後も冒険者の方々はそのお店を利用することでしょう。いわば宣伝という形で飲食の提供に協力いただくのです。」
「確かに普段食べられない料理が食えるのは魅力的だが、俺達が利用するのはまずいんだろ?」
「そんな事はありません。有料では
ありますが村の人にも是非利用していただきたいと思っています。」
普段縁が無いのはこの村の人も同じだ。
せっかくの催しなのだからお祭り感覚で利用して貰って構わない。
「だがそれでは我々が料理を手配する意味がないのでは無いか?」
「我々の料理は無料で提供します。通常の食事とは別に娯楽のような形で別の料理も楽しんでいただければと考えています。もちろん村の皆さんが無料の料理を楽しんでいただいても構いません。むしろ、村の皆さんにも消費していただかなければまずい量なんです。」
「そんな量だなんて聞いてないぞ?」
「はじめはそんなに多くなかったんですが、どんどんと協賛品が追加されてきたんです。有り難い話ではあるのですが、食べ物なので備蓄するわけにも行かなくてですね・・・。陰日ではありますが当日は聖日のような形で楽しんでいただければと考えています。」
「なぁ、倉庫一つで足りるのか?」
「・・・後一つ追加で間に合います?」
「間に合うもなにも人手も資材も足りねぇよ。」
ですよねー。
さてどうするかなぁ。
うちの倉庫も結構パンパンなんですよねー。
この気候だから炎天下に置くわけにもいかないし・・・。
森の泉で冷やすのにも限界があるぞ。
「面白そうな話だから資材は用意してあげるわ、その代わり人手はそっちで用意してもらえるかしら。」
「よろしいのですか?」
「儲からない話は嫌いだけど、この村には貴方を助けてもらったご恩があるんだからそれぐらい恩返ししなきゃね。それに、にぎやかなのは嫌いじゃないのよ。」
なるほどつまりはお祭りが大好きと。
そうこなくっちゃ。
「人手はギルドのほうで手配してみましょう。農村出の冒険者が多いですから土木作業の出来る初心者冒険者でしたらにすぐ集まると思います。」
「助かります。」
「なんだか随分と大きな話になってきたな。」
「最初はこじんまりとやるつもりだったんですが・・・でもまぁ、皆さんが楽しんでくださるのであればそれで良いかなと思ってきました。」
「おいおい、お前の店の催しじゃなかったのか?」
「それはそうなんですが、皆が楽しんでくれるのであればそれでいいかなと。」
「欲の無い男だなぁ。」
「とんでもない、頭の中は儲ける事でいっぱいですよ。」
「そんなやつが無料で料理なんか配るかよ。」
ドッと笑いが起きる。
元は俺の命を懸けた催しのはずだった。
だが、今は全員が楽しんで帰ってくれればそれで良い。
これは俺だけの催しじゃない。
参加者全員の催しなんだ。
「さすがイナバ様お心の広いお方だ。」
「とんでもありません、村の皆さんに頼りっきりで申し訳ないぐらいです。」
「昔は納涼の祭りを楽しんだものですがここ最近はその余裕も無く寂しいものでした。またこうして皆で楽しい時間がすごせるのなら村長としてこれ以上うれしい事はありません。」
「そういえば昔は広場で踊ったものだな。」
「シルビアも踊ったんですか?」
「あぁ、小さい頃にな。あの夏の事はこの年になっても良く思い出す。」
「今回もそういった形で何か出来ればいいですね。」
後夜祭的なイベントもするべきだろうか。
そうなると前夜祭も必要か?
「おい、あれこれやりすぎると本番に間に合わないぞ。」
「さすがに後四日で全て準備するのは冒険者の手を借りても難しいものがありますね。」
ですよねー。
何事も程々が一番。
やりたかったら来年やればいいさ。
来年生きていられる為に、今を全力で頑張ろう。
「今回はひとまず先ほど決めた内容で行きましょうか。後四日しかありませんが皆さんのお力をお借りできれば成功すると確信しております。どうか力のない私に皆さんの力をお貸し下さい、宜しくお願いします。」
やるとなれば全力だ。
そして全力で他力本願だ。
席を立ち全員の顔を見渡してから大きく頭を下げる。
全員が嫌な顔せず頷いてくれていた。
ありがとう。
頼りにしてます。
「そうと決まれば時間がねぇ、俺はウェリス達に事情を説明してくるぜ。」
「ではティナ殿先ほどの話だが。」
「料理の種類は多い方がいいでしょうからベテランの方のほうがいいですよね。」
「村長様、この度はうちのイナバが御無理を言いまして申し訳御座いませんでした。」
「何を仰います、イナバ様とメルクリア様がいなければこの村は寂しいままでした。こんなにも賑やかなのは全てお二人のおかげで御座います。」
各々がそれぞれの役目を全うする為に動き出す。
さぁ、俺もゆっくりしていられないぞ。
明後日の聖日に全て回る為にはスケジュール管理が必須だ、その辺しっかりつめておかないとな。
One for all, All for one
一人はみんなのために、みんなは一つの目的のために
これが本来の意味らしい。
まさに今の俺達を現している言葉だ。
さぁ、やるぞ!
頼りになる仲間を見ながら俺はグッと拳に力を入れた。
本番まで後3日と半日。
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時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す
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【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】
転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた!
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それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
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弟を取り戻すまで絶対諦めない、ド根性令嬢の冒険が始まる。
主人公が酷く虐げられる描写が苦手な方は、回避をお薦めします。そういう意味もあって、R15指定をしています。
追放令嬢ものに分類されるのでしょうが、追放後の展開はあまり類を見ないものになっていると思います。
2章立てになりますが、1章終盤から2章にかけては、「令嬢」のイメージがぶち壊されるかもしれません。不快に思われる方にはご容赦いただければと存じます。
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