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第九章
本当に敵に回しちゃいけない人は・・・
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俺は最後の力を振り絞って目の前にある椅子にゆっくりと腰掛けた。
やっと座れた。
座った瞬間に今までの疲れがドッとのしかかってきて、指一本動かすのがイヤになってしまう。
あぁ、椅子に根を張るというのはこういう事を言うのか。
もう一歩も動かない。
動かないからな。
欲を言えばこのまま目を閉じて意識を飛ばしてしまいたかったのだが、残念ながらそれは許されないようだ。
だってほら、彼らが目の前にいるんだから。
「イナバ様お疲れの所申し訳ないんだけど、もう少しだけ付き合ってもらうわね。」
「シュウイチ、辛いと思うが頑張ってくれ。」
「シュウイチさんお水飲みますか?」
美人妻二人が甲斐甲斐しくお世話してくれている。
仕方ない、頑張ろう。
今いるのは騎士団詰所。
俺の前にいるのはガスターシャ氏、シルビア様、エミリア、レティシャ王女。
そしてもう一人、最重要人物のストリさん。
ニケさんとユーリにはティナさんとカムリと共に事後処理に当ってもらっている。
あの後、レティシャ王女から事情を聞いたシルビア達がデアード邸に到着した時には全てが片付いていた。
犯人は全員拘束。
ほぼ全員怪我をしているが、命に別状は無い。
それだけならよかったのだが、問題はここからだ。
屋敷の二階部分は半壊。
正確に言えばリュカさんの受け持った階段付近は見るも無残な状況になっていた。
本人曰く、『複数人で襲ってきたから怖くなってつい出力を誤った。』
と言う事だが、あれは間違いなく嘘だ。
絶対に楽しくなってやりすぎたに違いない。
そうじゃないとあんなにスッキリとした顔をするはずないじゃないか。
当の本人は魔術師ギルドに呼ばれて勝手にどっかいっちゃうし。
ギルドには入れないんじゃなかったの!?
その後駆けつけた騎士団員に実行犯は連行され、俺達はその時点で解散。
・・・出来るわけがないですよね。
作戦を急に変更した責任を問われ、今の今まで事情聴取を受ける嵌めになった。
というわけだ。
その後、さぁ今度こそ解散!
となるわけもなく、今度はやってきたガスターシャ氏に連行されたというワケだ。
当初はププト様の館に集まる予定だったのだが、防犯の都合上騎士団でということになった。
時間は夕方。
いや、もう日暮れだし夜と言っても良いかもしれない。
ずっと俺の傍にいるエミリアも疲れているはずなのにそんなそぶりを見せないのは、やはり体力の関係だろうか。
ひ弱でどうもすみません。
「では改めて事情を伺うわね。今日の作戦自体は予定通り開始されたものの、途中でニケさんを囮にするのをやめてレティシャ王女御本人を馬車に乗せる事にした。それは全て事前に犯人が怪しいと知っていたから。というワケね。」
「その通りです。ストリさんがブレイズ家の執事では無いという事を聞き、また作戦開始前にレティシャ王女と直接お話をさせていただき確信しました。その後急遽作戦を変更して作戦の裏をかいてデアード様のお屋敷に賊が侵入するのを確認、王女様に扮したニケさんを発見させ命を狙っている言質を取りました。その後の事は騎士団から聞かれていると思います。」
「屋敷に侵入した賊をものの見事に撃退、そして捕獲。屋敷がひどいことになっていたけど、本当にああするしかなかったのよね?」
「リュカさんの話からするとそうなりますね。」
「デアード様といえばかなりの有力貴族よ?その御自宅をあんなことにして・・・。」
「それに関しては私が許可いたしましたのでどうぞ御安心を。デアードも私の命が救われたと聞けば許してくれますわ。」
ほら、一応王女様もこういってくださっているんだし許してくださいな。
とは口が裂けても言えない訳で。
こうなったのも全て俺達の前で拘束されているこの人のせいなんですけどね!
「王女様に何もなかったから良かったものの、作戦を変更するのに私達への連絡を怠ったのはどういうつもり?」
「何処から作戦が漏れるか分かりませんでしたので致し方なく秘密にしていました。安全だとわかっていればもちろんププト様も含めご連絡していましたよ。」
「本当に?」
「本当です。」
「ふ~ん、まぁいいわ。そういうことにしておいてあげる。」
ジーっと俺の顔を真剣な顔で見つめるガスターシャ氏。
口ではこういっているものの、信じてはいなさそうだ。
「それより問題なのはレティシャ王女の命を狙ったこいつの処遇だ。ストリ、あの日私達に近づいたのは何が目的なのだ?わざわざ王女暗殺の情報を流し、結果として自らの首を絞める形となったが・・・まだだんまりを続けるつもりか?」
全員の視線がストリさんへと向けられる。
部屋の真ん中で拘束される中年男性。
え?老人じゃなかったのかって?
どうやらこれが本当の姿で、老人の姿は俺達を欺く為・・・だと勝手に解釈している。
「殺すなら殺せ、私から言う事は何もない。」
「貴方には王女暗殺容疑のほかシルビア様への暗殺容疑もかけられているわ。だから簡単に死んでもらっちゃ困るのよ。白状しないのなら色んな方法で白状させちゃう事もできるけど、できるなら自分の口から話して欲しいのよね。」
「さっきも言ったように私は何も言わん。殺すなら殺せ。」
騎士団に連行された後もずっとこの調子だ。
依頼主の情報を流さないのがプロの暗殺者。
これ以上尋問しても口を割る事は無いだろう。
「そんな事言いながら自害しないのには何か理由があるのかしら?貴方の雇用主が助けてくれると思ってる?」
「何度も言わせるな、私は何も言わん。」
「もぅ、意固地なんだから。」
今の所お手上げ状態だ。
ストリさんが白状しない事には第二第三の暗殺が起きないとも限らない。
ここでしっかり黒幕を確認しなければ捕まえた意味がない。
「仲間はどんな感じですか?」
「向こうもダメだな、全員ストリに雇われたただの暗殺者だ。何を聞いても王女を殺せと依頼されただけだと言っている。」
「仮にそうだとしても王女様を暗殺するって普通は受けないと思うんですけど・・・。」
「よほど腕に自身があったのだろう。私への狙撃はこいつが彼らに教えた方法だったそうだ。まさか仲間が吹き飛ぶとは思っていなかったようだが、それしか方法がなかったと言っている。」
「口の軽い奴らめ。」
「金で人を雇うからこうなるのだ。人を動かしたいのなら金ではなく心を掴め。」
「ハハ、団員の命を小石のように使う騎士団長様の言葉とは思えんな。」
おもわず俺の拳に力が入る。
だがシルビア様は優しく微笑むとそれを優しく制した。
「私は常に団員と話すことを心掛けている、それは団員達を信じているからだ。だからこそ彼らは私の命令に応えてくれる。もっとも、私は元騎士団長で誰かに命令するような事はもうないがな。」
「自分だけ安全な所にいられると思うなよ。私をどうかしても次の暗殺者が必ず命を狙う。そこにいる王女だけじゃない、ここにいる全員をだ。」
「まぁ怖い。」
ガスターシャ氏がおどけてみせる。
絶対に怖いって思ってないだろ。
「まぁいい、時間をかけてゆっくりと吐いてもらうさ。誰に依頼され王女を殺そうとしたのか、それとどうやって魔術師ギルドから禁呪を盗んだのかもな。」
「確かにそうですね、あの魔法はいつの間にか魔術師ギルドから盗まれたって話でした。」
「そんな事俺が知るか。」
「これは私の推測ですが、誰かに変装して侵入したとかじゃないですかね。ほら、老人にも化けられるみたいですし案外フェリス様に化けて堂々と盗んだんじゃないですか?」
「まさか、いくらシュウイチの推理でもそんな単純な事は・・・。」
「な、何故それをお前が!」
「「「まさか!」」」
全員の声が綺麗にハモる。
え、ちょっとまってガチでそうなの?
それってあまりにも馬鹿すぎませんか?
「なんていうと思ったのか?俺の裏をかいた事で図に乗っているかもしれないが、所詮ただの商人だな。」
ですよねー。
っていうか、こいつ随分余裕だな。
捕まえられて殺されるかもしれないと言うのに、どうしてこんなに余裕でいられるんだ?
「私はただの商人です、それ以上でもそれ以下でもありません。」
「は、よく言うぜ。」
「貴方がどれだけ余裕をみせても貴方が自由になる事はありません。どんな圧力がかかろうと、貴方には罪を償ってもらいます。私の腕を動かなくした分も含めてね。」
こっちには王女様がいるんだ。
それに元老院の副参謀もいる。
生半可な圧力じゃ覆せないぞ。
「好きにしろ。」
それ以降ストリさんが口を開くことはなかった。
余裕がなくなったのかそれとも興味をなくしたのか。
まぁ俺は休めたら何でも良いや。
「これ以上は何も進展し無さそうだな。今日はもう遅い、続きは明日にしないか?」
「仕方ありませんね。」
「こいつは地下牢の特別室に入れておけ、あそこなら誰も近付けん。」
「かしこまりました!」
ストリさんを連行するために騎士団員が中に入ってくる。
やれやれやっと長い一日を終えられそう・・・。
「ちょっと待ちな!そいつにはまだ吐いてもらうことがあるんだよ。」
突然部屋の中に女性の声が響き渡る。
いきなりの出来事に全員があたりを見渡し、武器を手にした。
「なにを警戒しているんだい、私だよ私。」
オレオレ詐欺か何かだろうか。
いまどきそのネタは古くないですか?
「おかしいね、上手く道が開かないよ。ちょいと、あんたそこをどきな!」
突然俺の横に小さくて黒い空間が現れたかと思うと、そこから腕が伸び俺を追い払おうとする。
あれ、この声は。
「皆大丈夫です、武器を下ろしてください。」
俺は言われたとおりその場からはなれて様子を伺う。
すると、黒い空間は人が通れそうなぐらい大きくなり、心配していた人物がそこから現れた。
「「「フェリス様!」」」
「やれやれ久々に転移すると感覚が狂っちまったよ。これも全部あんたの祝福のせいだからね!」
「私ですか?」
「二精霊の祝福なんてもらうからそこの空間だけ座標が狂っちまうんだよ。まったく、迷惑な話しだねぇ。」
「それはどうもすみません・・・って今まで何処に行っていたんですか?連絡しても返事は無いし、エミリアがどれだけ心配したか。」
「おや、心配してくれたのかい。嬉しい話じゃないか。」
「本当に、本当にご無事でよかった。」
黒い空間から現れたのはあの日以来音信不通状態だったフェリス様だった。
特に怪我もなく元気そうだけど、どうしてここに?
「なんだいエミリア、泣くんじゃないよ。世界樹が元気なら私も元気だ、それを知らないアンタじゃないだろ。」
「エミリアはメルクリアさんに聞くまで知らなかったようですよ。」
「おや、そうだったかねぇ。それは心配かけたね、ごめんよ。」
「フェリス様が御無事でしたら大丈夫です。」
マジか、フェリス様が謝ったぞ。
こりゃ明日雨でも降るんじゃないか?
「なんだい、随分な目で私を見るじゃないか。言いたい事があるならハッキリ言いな。」
「まだ吐いてもらうことがあるってどういうことですか?」
「全くせっかちな男は嫌われるよ。って、そんな男が二人も美人を捕まえるんだから世の中わかんないもんだねぇ。」
「どうもすみません。」
「それで、こいつの利用方法だったね。あんたに一つだけ聞きたいんだけどいいかい?」
フェリス様が鋭い眼光でストリさんを睨む。
一瞬たじろぎはするものの、ストリさんはだんまりを決め込んだようだ。
「ダンマリって事は了承した事と同じさ。アンタ、ヒュッター家のシュリム氏は知ってるね。」
「・・・そんなやつ知らねぇ。」
「本当かい?」
「だから知らねぇって言ってるだろ。」
「そうかい。それはおかしな話しだ。」
「何がおかしいんですかフェリス様。」
何処のどなたか存じませんなぁ。
でもその人が今回の話しに関わっている事は間違いない。
しかも、かなり重要なポストで。
「いやねぇ、私が留守にしてたのがずばりそのヒュッター家に行ってたからさ。あんた達にブレイズ家の執事は違うって教えてからしばらく世話になっていたんだが、そこで面白い物を見つけてねぇ。」
そういいながらフェリス様が懐から何かを取り出す。
それは四つに折りたたまれた羊皮紙だった。
「フェリス様、私が読ませていただいてもよろしいかしら。」
「もちろんさ、これはアンタの為に取ってきたんだからね。」
「あら嬉しい、私への贈り物だなんて何かしら。」
それをガスターシャ氏が受け取り上から順に目を通していく。
下に読み進めば進むほど、その眼はどんどんと見開かれていった。
「一体何が書かれているのだ?」
「すっごいことよ。」
「もったいづけずに教えてやりな。」
「えっとねぇ『今回の件はストリという暗殺者が勝手に行なったもので我がフィッター家は無関係である事をここに証明する。ヒュッター家当主シュリム』だって。まぁ、当主様の血印まであるなんてよっぽどね。」
「血印があるとどうなるんですか?」
「血を付けるという事は命を賭けるのと同じ事さね。つまりはここに書かれている事に嘘偽りは無く、嘘であればこの命を差し出すと言う事さ。」
「つまり、命を懸けてでも証明したい内容ということですね。」
「すぐにバレる嘘に血印を使う馬鹿は居ないよ。それだけ自信があるからこそ、この血印に価値があるのさ。」
なるほどなぁ。
嘘だとわかれば自分の命を差し出さなければならない。
言い換えれば、これは命を賭けれる正しい内容だという証なのだ。
しかも下っ端ではなく当主自らの血印なのだからその価値は計り知れない。
なるほどねぇ。
「と、いう事ですが何か言いたい事はありますか?」
「嘘だ!俺は確かにこいつから依頼されたんだ!」
「おや、アンタさっき知らないっていわなかったかい?」
「あいつが俺に娘の婚姻の為にレティシャ王女を殺せって言われ・・・。」
おや、今とんでもない事を言ったような。
「何だって・・?」
「ぐっ・・・!」
「ここにはアンタが犯人だっていう大貴族の証明書があるんだ。これがある以上、アンタが犯人でないという明確な証拠がないのであればどれだけ抵抗してもアンタの罪になる。それがどういうことかわかるだろ?」
「つまりこの人が犯人として裁かれる?」
「その通り。まぁ、やったことがやったことだからね、裁判なしに即死刑判決だ。王族への反逆はそれだけ重い罪なのさ。」
問答無用で処刑か。
まぁ、王女暗殺未遂に騎士団長暗殺未遂も追加だ。
十分すぎる罪だろう。
「王族立会いの元であれば即結審、騎士団長が居れば当日にも処刑は実行される。幸いここにはそのどちらもいるからね、最後の夜をしっかりと楽しみな。」
「中々口を割らず困っていた所です、フェリス様ありがとうございました。」
「一番最初にこいつを疑ったのがアンタの旦那だ、お礼は本人に言うんだね。私も言われるまで気づかなかったが、やれやれ年は取るもんじゃないねぇ。」
「シュウイチは気付いていたのか?」
「えぇ、まぁ。」
あの時一人だけ覚めた目で作戦会議に参加しているのを俺は見逃さなかった。
だからこそ、すぐにフェリス様に助けを求めたのだ。
もっとも、ここまで明確な答えを出してくれるとは思ってもいなかったが。
「くそ、あいつはじめから俺の事を嵌めるつもりだったのか!」
「何だって?犯人が何かわめいてるよ。うるさいから連れて行っておくれ。」
「はっ!」
フェリス様の指示で騎士団員がストリさんの肩を荒々しく掴む。
「待ってくれ!」
それに抵抗するようにストリさんは両肩を震わすと勢い良く立ち上がった。
だが、すぐに取り押さえられる。
フェリス様の足元にすがるような格好になった。
「なんだい?」
「俺はシュリムさんに頼まれただけだ!犯人はあの人だ!」
「だがここに血印つきの証明書がある。証拠も無しにそんな事信じられないね。」
「証拠ならある!あの人に書いてもらった契約書がある、それを見れば俺が雇われただけだって分かるはずだ!」
「ほほぉ、それはどこにあるんだい?」
「右足の靴底の更に下に挟んでる!」
靴底の下って、それ擦り切れたりしませんか?
騎士団員がストリさんの靴を脱がせ、靴底をめくる。
すると中から一枚の薄い紙が落ちてきた。
「フェリス様こちらを。」
「なになに、『王女暗殺に成功した暁には金貨100枚を支払う。手段は選ぶな。フィッター家シュリム』なるほどねぇ。」
「これが何よりの証拠だ!俺はこの人に雇われただけで・・・。」
「雇われただけで悪くない?そんなはずないさ、実際アンタは王女様と騎士団長を暗殺しようとしている。いくら黒幕がいるからって白状しただけでその罪が消える事は無いさ。」
「俺の罪は俺の罪だ、だがこれであいつも一緒に死んだろ?そうなんだろ!?」
確かにさっきの血印が嘘なのであれば当主も裁かれることになるが・・・。
「あれ?フェリス様、先程のシュリム様の書類にまだ続きがありますよ。」
「おや、そうだったかね。読んでもらえるかい?」
「・・・『尚この書類はフェリス様に言われて作った書類であり、先ほどの内容は嘘である事を私フィッター家クリムが証明致します。追伸、次の晩餐会楽しみにしております。』どういうことですの?」
「あぁ、それかい?それはねフィッター家の長男坊に酒の席で作ってもらった書類さ。でも血印は本物だよ、先ほどの話は嘘だってことをしっかりと証明している。」
はぁ?
ちょっとまって、さっき確かに当主の血印があるって・・・。
あまりの内容に開いた口が塞がらない。
一体どういうことなんだ?
そう思っているのはストリさんも同じようで目が点になったまま焦点が定まっていない。
「それは嘘だってちゃんと書いてあるだろ?それよりも、こっちは随分と面白い事書いているね、まさか長男坊の父親が犯人だとは思いもしなかったよ。こりゃあすごいことになりそうだねぇ。」
うわぁ、無茶苦茶嘘臭い。
どう考えても犯人がわかっていながら長男に書かせたようにしか思えない。
いや、わかっていて長男に話を持ち掛け、父を失脚させる気だったのかも。
恐ろしい事をする人だ、このフェリスという人は。
敵に回しちゃいけない。
俺はそう肝に銘じた。
「それでだ、あんたが実行犯なのは分かったから詳しい話しを聞かせてもらおうじゃないか。」
フェリス様がにこにこと笑っている。
魔女だ。
この人は魔女だ。
「何言ってるんだい、私が魔女なのは当たり前だろ。」
そう言ってフェリス様は不敵に笑った。
やっと座れた。
座った瞬間に今までの疲れがドッとのしかかってきて、指一本動かすのがイヤになってしまう。
あぁ、椅子に根を張るというのはこういう事を言うのか。
もう一歩も動かない。
動かないからな。
欲を言えばこのまま目を閉じて意識を飛ばしてしまいたかったのだが、残念ながらそれは許されないようだ。
だってほら、彼らが目の前にいるんだから。
「イナバ様お疲れの所申し訳ないんだけど、もう少しだけ付き合ってもらうわね。」
「シュウイチ、辛いと思うが頑張ってくれ。」
「シュウイチさんお水飲みますか?」
美人妻二人が甲斐甲斐しくお世話してくれている。
仕方ない、頑張ろう。
今いるのは騎士団詰所。
俺の前にいるのはガスターシャ氏、シルビア様、エミリア、レティシャ王女。
そしてもう一人、最重要人物のストリさん。
ニケさんとユーリにはティナさんとカムリと共に事後処理に当ってもらっている。
あの後、レティシャ王女から事情を聞いたシルビア達がデアード邸に到着した時には全てが片付いていた。
犯人は全員拘束。
ほぼ全員怪我をしているが、命に別状は無い。
それだけならよかったのだが、問題はここからだ。
屋敷の二階部分は半壊。
正確に言えばリュカさんの受け持った階段付近は見るも無残な状況になっていた。
本人曰く、『複数人で襲ってきたから怖くなってつい出力を誤った。』
と言う事だが、あれは間違いなく嘘だ。
絶対に楽しくなってやりすぎたに違いない。
そうじゃないとあんなにスッキリとした顔をするはずないじゃないか。
当の本人は魔術師ギルドに呼ばれて勝手にどっかいっちゃうし。
ギルドには入れないんじゃなかったの!?
その後駆けつけた騎士団員に実行犯は連行され、俺達はその時点で解散。
・・・出来るわけがないですよね。
作戦を急に変更した責任を問われ、今の今まで事情聴取を受ける嵌めになった。
というわけだ。
その後、さぁ今度こそ解散!
となるわけもなく、今度はやってきたガスターシャ氏に連行されたというワケだ。
当初はププト様の館に集まる予定だったのだが、防犯の都合上騎士団でということになった。
時間は夕方。
いや、もう日暮れだし夜と言っても良いかもしれない。
ずっと俺の傍にいるエミリアも疲れているはずなのにそんなそぶりを見せないのは、やはり体力の関係だろうか。
ひ弱でどうもすみません。
「では改めて事情を伺うわね。今日の作戦自体は予定通り開始されたものの、途中でニケさんを囮にするのをやめてレティシャ王女御本人を馬車に乗せる事にした。それは全て事前に犯人が怪しいと知っていたから。というワケね。」
「その通りです。ストリさんがブレイズ家の執事では無いという事を聞き、また作戦開始前にレティシャ王女と直接お話をさせていただき確信しました。その後急遽作戦を変更して作戦の裏をかいてデアード様のお屋敷に賊が侵入するのを確認、王女様に扮したニケさんを発見させ命を狙っている言質を取りました。その後の事は騎士団から聞かれていると思います。」
「屋敷に侵入した賊をものの見事に撃退、そして捕獲。屋敷がひどいことになっていたけど、本当にああするしかなかったのよね?」
「リュカさんの話からするとそうなりますね。」
「デアード様といえばかなりの有力貴族よ?その御自宅をあんなことにして・・・。」
「それに関しては私が許可いたしましたのでどうぞ御安心を。デアードも私の命が救われたと聞けば許してくれますわ。」
ほら、一応王女様もこういってくださっているんだし許してくださいな。
とは口が裂けても言えない訳で。
こうなったのも全て俺達の前で拘束されているこの人のせいなんですけどね!
「王女様に何もなかったから良かったものの、作戦を変更するのに私達への連絡を怠ったのはどういうつもり?」
「何処から作戦が漏れるか分かりませんでしたので致し方なく秘密にしていました。安全だとわかっていればもちろんププト様も含めご連絡していましたよ。」
「本当に?」
「本当です。」
「ふ~ん、まぁいいわ。そういうことにしておいてあげる。」
ジーっと俺の顔を真剣な顔で見つめるガスターシャ氏。
口ではこういっているものの、信じてはいなさそうだ。
「それより問題なのはレティシャ王女の命を狙ったこいつの処遇だ。ストリ、あの日私達に近づいたのは何が目的なのだ?わざわざ王女暗殺の情報を流し、結果として自らの首を絞める形となったが・・・まだだんまりを続けるつもりか?」
全員の視線がストリさんへと向けられる。
部屋の真ん中で拘束される中年男性。
え?老人じゃなかったのかって?
どうやらこれが本当の姿で、老人の姿は俺達を欺く為・・・だと勝手に解釈している。
「殺すなら殺せ、私から言う事は何もない。」
「貴方には王女暗殺容疑のほかシルビア様への暗殺容疑もかけられているわ。だから簡単に死んでもらっちゃ困るのよ。白状しないのなら色んな方法で白状させちゃう事もできるけど、できるなら自分の口から話して欲しいのよね。」
「さっきも言ったように私は何も言わん。殺すなら殺せ。」
騎士団に連行された後もずっとこの調子だ。
依頼主の情報を流さないのがプロの暗殺者。
これ以上尋問しても口を割る事は無いだろう。
「そんな事言いながら自害しないのには何か理由があるのかしら?貴方の雇用主が助けてくれると思ってる?」
「何度も言わせるな、私は何も言わん。」
「もぅ、意固地なんだから。」
今の所お手上げ状態だ。
ストリさんが白状しない事には第二第三の暗殺が起きないとも限らない。
ここでしっかり黒幕を確認しなければ捕まえた意味がない。
「仲間はどんな感じですか?」
「向こうもダメだな、全員ストリに雇われたただの暗殺者だ。何を聞いても王女を殺せと依頼されただけだと言っている。」
「仮にそうだとしても王女様を暗殺するって普通は受けないと思うんですけど・・・。」
「よほど腕に自身があったのだろう。私への狙撃はこいつが彼らに教えた方法だったそうだ。まさか仲間が吹き飛ぶとは思っていなかったようだが、それしか方法がなかったと言っている。」
「口の軽い奴らめ。」
「金で人を雇うからこうなるのだ。人を動かしたいのなら金ではなく心を掴め。」
「ハハ、団員の命を小石のように使う騎士団長様の言葉とは思えんな。」
おもわず俺の拳に力が入る。
だがシルビア様は優しく微笑むとそれを優しく制した。
「私は常に団員と話すことを心掛けている、それは団員達を信じているからだ。だからこそ彼らは私の命令に応えてくれる。もっとも、私は元騎士団長で誰かに命令するような事はもうないがな。」
「自分だけ安全な所にいられると思うなよ。私をどうかしても次の暗殺者が必ず命を狙う。そこにいる王女だけじゃない、ここにいる全員をだ。」
「まぁ怖い。」
ガスターシャ氏がおどけてみせる。
絶対に怖いって思ってないだろ。
「まぁいい、時間をかけてゆっくりと吐いてもらうさ。誰に依頼され王女を殺そうとしたのか、それとどうやって魔術師ギルドから禁呪を盗んだのかもな。」
「確かにそうですね、あの魔法はいつの間にか魔術師ギルドから盗まれたって話でした。」
「そんな事俺が知るか。」
「これは私の推測ですが、誰かに変装して侵入したとかじゃないですかね。ほら、老人にも化けられるみたいですし案外フェリス様に化けて堂々と盗んだんじゃないですか?」
「まさか、いくらシュウイチの推理でもそんな単純な事は・・・。」
「な、何故それをお前が!」
「「「まさか!」」」
全員の声が綺麗にハモる。
え、ちょっとまってガチでそうなの?
それってあまりにも馬鹿すぎませんか?
「なんていうと思ったのか?俺の裏をかいた事で図に乗っているかもしれないが、所詮ただの商人だな。」
ですよねー。
っていうか、こいつ随分余裕だな。
捕まえられて殺されるかもしれないと言うのに、どうしてこんなに余裕でいられるんだ?
「私はただの商人です、それ以上でもそれ以下でもありません。」
「は、よく言うぜ。」
「貴方がどれだけ余裕をみせても貴方が自由になる事はありません。どんな圧力がかかろうと、貴方には罪を償ってもらいます。私の腕を動かなくした分も含めてね。」
こっちには王女様がいるんだ。
それに元老院の副参謀もいる。
生半可な圧力じゃ覆せないぞ。
「好きにしろ。」
それ以降ストリさんが口を開くことはなかった。
余裕がなくなったのかそれとも興味をなくしたのか。
まぁ俺は休めたら何でも良いや。
「これ以上は何も進展し無さそうだな。今日はもう遅い、続きは明日にしないか?」
「仕方ありませんね。」
「こいつは地下牢の特別室に入れておけ、あそこなら誰も近付けん。」
「かしこまりました!」
ストリさんを連行するために騎士団員が中に入ってくる。
やれやれやっと長い一日を終えられそう・・・。
「ちょっと待ちな!そいつにはまだ吐いてもらうことがあるんだよ。」
突然部屋の中に女性の声が響き渡る。
いきなりの出来事に全員があたりを見渡し、武器を手にした。
「なにを警戒しているんだい、私だよ私。」
オレオレ詐欺か何かだろうか。
いまどきそのネタは古くないですか?
「おかしいね、上手く道が開かないよ。ちょいと、あんたそこをどきな!」
突然俺の横に小さくて黒い空間が現れたかと思うと、そこから腕が伸び俺を追い払おうとする。
あれ、この声は。
「皆大丈夫です、武器を下ろしてください。」
俺は言われたとおりその場からはなれて様子を伺う。
すると、黒い空間は人が通れそうなぐらい大きくなり、心配していた人物がそこから現れた。
「「「フェリス様!」」」
「やれやれ久々に転移すると感覚が狂っちまったよ。これも全部あんたの祝福のせいだからね!」
「私ですか?」
「二精霊の祝福なんてもらうからそこの空間だけ座標が狂っちまうんだよ。まったく、迷惑な話しだねぇ。」
「それはどうもすみません・・・って今まで何処に行っていたんですか?連絡しても返事は無いし、エミリアがどれだけ心配したか。」
「おや、心配してくれたのかい。嬉しい話じゃないか。」
「本当に、本当にご無事でよかった。」
黒い空間から現れたのはあの日以来音信不通状態だったフェリス様だった。
特に怪我もなく元気そうだけど、どうしてここに?
「なんだいエミリア、泣くんじゃないよ。世界樹が元気なら私も元気だ、それを知らないアンタじゃないだろ。」
「エミリアはメルクリアさんに聞くまで知らなかったようですよ。」
「おや、そうだったかねぇ。それは心配かけたね、ごめんよ。」
「フェリス様が御無事でしたら大丈夫です。」
マジか、フェリス様が謝ったぞ。
こりゃ明日雨でも降るんじゃないか?
「なんだい、随分な目で私を見るじゃないか。言いたい事があるならハッキリ言いな。」
「まだ吐いてもらうことがあるってどういうことですか?」
「全くせっかちな男は嫌われるよ。って、そんな男が二人も美人を捕まえるんだから世の中わかんないもんだねぇ。」
「どうもすみません。」
「それで、こいつの利用方法だったね。あんたに一つだけ聞きたいんだけどいいかい?」
フェリス様が鋭い眼光でストリさんを睨む。
一瞬たじろぎはするものの、ストリさんはだんまりを決め込んだようだ。
「ダンマリって事は了承した事と同じさ。アンタ、ヒュッター家のシュリム氏は知ってるね。」
「・・・そんなやつ知らねぇ。」
「本当かい?」
「だから知らねぇって言ってるだろ。」
「そうかい。それはおかしな話しだ。」
「何がおかしいんですかフェリス様。」
何処のどなたか存じませんなぁ。
でもその人が今回の話しに関わっている事は間違いない。
しかも、かなり重要なポストで。
「いやねぇ、私が留守にしてたのがずばりそのヒュッター家に行ってたからさ。あんた達にブレイズ家の執事は違うって教えてからしばらく世話になっていたんだが、そこで面白い物を見つけてねぇ。」
そういいながらフェリス様が懐から何かを取り出す。
それは四つに折りたたまれた羊皮紙だった。
「フェリス様、私が読ませていただいてもよろしいかしら。」
「もちろんさ、これはアンタの為に取ってきたんだからね。」
「あら嬉しい、私への贈り物だなんて何かしら。」
それをガスターシャ氏が受け取り上から順に目を通していく。
下に読み進めば進むほど、その眼はどんどんと見開かれていった。
「一体何が書かれているのだ?」
「すっごいことよ。」
「もったいづけずに教えてやりな。」
「えっとねぇ『今回の件はストリという暗殺者が勝手に行なったもので我がフィッター家は無関係である事をここに証明する。ヒュッター家当主シュリム』だって。まぁ、当主様の血印まであるなんてよっぽどね。」
「血印があるとどうなるんですか?」
「血を付けるという事は命を賭けるのと同じ事さね。つまりはここに書かれている事に嘘偽りは無く、嘘であればこの命を差し出すと言う事さ。」
「つまり、命を懸けてでも証明したい内容ということですね。」
「すぐにバレる嘘に血印を使う馬鹿は居ないよ。それだけ自信があるからこそ、この血印に価値があるのさ。」
なるほどなぁ。
嘘だとわかれば自分の命を差し出さなければならない。
言い換えれば、これは命を賭けれる正しい内容だという証なのだ。
しかも下っ端ではなく当主自らの血印なのだからその価値は計り知れない。
なるほどねぇ。
「と、いう事ですが何か言いたい事はありますか?」
「嘘だ!俺は確かにこいつから依頼されたんだ!」
「おや、アンタさっき知らないっていわなかったかい?」
「あいつが俺に娘の婚姻の為にレティシャ王女を殺せって言われ・・・。」
おや、今とんでもない事を言ったような。
「何だって・・?」
「ぐっ・・・!」
「ここにはアンタが犯人だっていう大貴族の証明書があるんだ。これがある以上、アンタが犯人でないという明確な証拠がないのであればどれだけ抵抗してもアンタの罪になる。それがどういうことかわかるだろ?」
「つまりこの人が犯人として裁かれる?」
「その通り。まぁ、やったことがやったことだからね、裁判なしに即死刑判決だ。王族への反逆はそれだけ重い罪なのさ。」
問答無用で処刑か。
まぁ、王女暗殺未遂に騎士団長暗殺未遂も追加だ。
十分すぎる罪だろう。
「王族立会いの元であれば即結審、騎士団長が居れば当日にも処刑は実行される。幸いここにはそのどちらもいるからね、最後の夜をしっかりと楽しみな。」
「中々口を割らず困っていた所です、フェリス様ありがとうございました。」
「一番最初にこいつを疑ったのがアンタの旦那だ、お礼は本人に言うんだね。私も言われるまで気づかなかったが、やれやれ年は取るもんじゃないねぇ。」
「シュウイチは気付いていたのか?」
「えぇ、まぁ。」
あの時一人だけ覚めた目で作戦会議に参加しているのを俺は見逃さなかった。
だからこそ、すぐにフェリス様に助けを求めたのだ。
もっとも、ここまで明確な答えを出してくれるとは思ってもいなかったが。
「くそ、あいつはじめから俺の事を嵌めるつもりだったのか!」
「何だって?犯人が何かわめいてるよ。うるさいから連れて行っておくれ。」
「はっ!」
フェリス様の指示で騎士団員がストリさんの肩を荒々しく掴む。
「待ってくれ!」
それに抵抗するようにストリさんは両肩を震わすと勢い良く立ち上がった。
だが、すぐに取り押さえられる。
フェリス様の足元にすがるような格好になった。
「なんだい?」
「俺はシュリムさんに頼まれただけだ!犯人はあの人だ!」
「だがここに血印つきの証明書がある。証拠も無しにそんな事信じられないね。」
「証拠ならある!あの人に書いてもらった契約書がある、それを見れば俺が雇われただけだって分かるはずだ!」
「ほほぉ、それはどこにあるんだい?」
「右足の靴底の更に下に挟んでる!」
靴底の下って、それ擦り切れたりしませんか?
騎士団員がストリさんの靴を脱がせ、靴底をめくる。
すると中から一枚の薄い紙が落ちてきた。
「フェリス様こちらを。」
「なになに、『王女暗殺に成功した暁には金貨100枚を支払う。手段は選ぶな。フィッター家シュリム』なるほどねぇ。」
「これが何よりの証拠だ!俺はこの人に雇われただけで・・・。」
「雇われただけで悪くない?そんなはずないさ、実際アンタは王女様と騎士団長を暗殺しようとしている。いくら黒幕がいるからって白状しただけでその罪が消える事は無いさ。」
「俺の罪は俺の罪だ、だがこれであいつも一緒に死んだろ?そうなんだろ!?」
確かにさっきの血印が嘘なのであれば当主も裁かれることになるが・・・。
「あれ?フェリス様、先程のシュリム様の書類にまだ続きがありますよ。」
「おや、そうだったかね。読んでもらえるかい?」
「・・・『尚この書類はフェリス様に言われて作った書類であり、先ほどの内容は嘘である事を私フィッター家クリムが証明致します。追伸、次の晩餐会楽しみにしております。』どういうことですの?」
「あぁ、それかい?それはねフィッター家の長男坊に酒の席で作ってもらった書類さ。でも血印は本物だよ、先ほどの話は嘘だってことをしっかりと証明している。」
はぁ?
ちょっとまって、さっき確かに当主の血印があるって・・・。
あまりの内容に開いた口が塞がらない。
一体どういうことなんだ?
そう思っているのはストリさんも同じようで目が点になったまま焦点が定まっていない。
「それは嘘だってちゃんと書いてあるだろ?それよりも、こっちは随分と面白い事書いているね、まさか長男坊の父親が犯人だとは思いもしなかったよ。こりゃあすごいことになりそうだねぇ。」
うわぁ、無茶苦茶嘘臭い。
どう考えても犯人がわかっていながら長男に書かせたようにしか思えない。
いや、わかっていて長男に話を持ち掛け、父を失脚させる気だったのかも。
恐ろしい事をする人だ、このフェリスという人は。
敵に回しちゃいけない。
俺はそう肝に銘じた。
「それでだ、あんたが実行犯なのは分かったから詳しい話しを聞かせてもらおうじゃないか。」
フェリス様がにこにこと笑っている。
魔女だ。
この人は魔女だ。
「何言ってるんだい、私が魔女なのは当たり前だろ。」
そう言ってフェリス様は不敵に笑った。
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