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第九章
作戦名:敵を欺くなら味方も一緒に!
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俺の耳打ちに一瞬だけ驚いた顔をするも何も言わずに頷くフェリス様。
これで懸案事項は一つ片付いたな。
今回の作戦は不確定要素しかなくて非常にもどかしい。
いつもならいくつかの可能性を考えてその対応策を準備するのだが、今回はそれができそうにない。
スケールが違いすぎるんだよな。
前回の魔石横流し事件も話しこそ大事だけど、実際に相手をしたのは末端の末端だったわけだし。
今までで一番スケールの大きかったことといえば・・・集団暴走事件ぐらいか。
失踪事件も加えたい所だけど結局あれは小さな事件という扱いになっちゃったしなぁ。
これでも頑張ったんですよ?
改めて自分が関わった事件を思い浮かべると、やっぱりもっと商店が大きくなっていてもおかしくないよね。
俺がそういった報酬を断ってきたからだけど、やっぱり勿体無かったかなぁ。
「シュウイチさん夕食は何がいいですか?」
「そうですね、折角の機会ですから高級な食べ物をと言いたいところですが何が高級かわからなくて、皆にお任せします。」
「なんだい勿体無いねぇ。」
「今思えばこの世界に来て高級な食べ物ってあまり食べてないんですよ。どちらかといえば冒険者向けの食事の方が多いかもしれません。」
「カーラザンギアーゲやソーラーメンなど変わった物も食べましたね。」
「あれは中々の味だったぞ。」
異世界に来て元の世界の食事を楽しめるとは思っていなかった。
味付けは違うけどどれも美味しかったなぁ。
「私はやはりセレン様の料理が一番ですね、あれに勝るものにはまだ出会っておりません。」
「先日の収穫祭の時に頂きましたが、うちの料理人にも勝るとも劣らない味でしたな。」
「あの味にたどり着くにはまだまだ修行が足りないようです。」
「弟子は師匠を超えるものです、ユーリもいずれそこまでたどり着けますよ。」
「そのためにもまだ知らぬ料理を是非味わいたいものです。」
ユーリは一体何処に行きたいんだろうか。
ダンジョン妖精のはずが気付けば放浪料理人になっていたりして。
そして数々のライバルと戦い世界最高の料理へと挑むのだ。
次回、妖精料理人ユーリ『まだ知らぬ味を求めて』お楽しみに!
とか次回予告を組み込めそうだ。
「ご主人様、私はあくまでダンジョン妖精です。」
「知ってますよ。」
今ユーリがいなくなったら誰がダンジョンを管理するんだ。
当分はお世話になります。
「料理はリュカに任せれば何とかするだろ、リュカ頼んだよ!」
「簡単なもので1刻で出来上がって人数分・・・任せて!」
さすがリュカさん、流行はバッチリ抑えているようだ。
精霊の加護もあってか文字通り飛ぶように降りて行った。
「そういえばさっきフェリス殿と何か話していたが、どうかしたのか?」
「別に問題ありません。私の腕のことをお伝えしただけです。」
「そうか。」
「せっかくの休憩時間ですからゆっくり休んでくださいね。」
「休める時に休めとシュウイチに言われたばかりだからな、そうさせてもらおう。」
「時間もありますし折角なので私は世界樹の中を見てきます。」
そういえばティナさんはここ初めてなんだっけ。
「私も行きたいです!」
「ではニケ様と私も御一緒しましょう。」
どうやらユーリとニケさんがついていくようだ。
ユーリは初めてじゃないし迷う事も無いだろう。
「私はイラーナさんにお祝いを渡しに行ってきます。」
「そういえば妊娠したそうだな。妊婦のお腹に触れると授かれると聞く、私も是非あやかりに行こう。」
エミリアとシルビア様はイラーナ助手の所か。
残されたのは俺とフェリス様それにストリさん・・・。
「なんだいその視線は。」
「いえ、なんでもありません。」
老人二人がなにやら難しい話しをしている。
捕まると長そうだし俺も別の場所に行って・・・。
「そうだイナバ様先程の件ですが。」「ちょいとアンタさっきの話しだけどね。」
二人でかぶしてくるとかマジですか。
どう考えても完全に逃げるタイミングを逃したみたいだ。
「あの、御飯の後じゃダメですか?」
「ダメだ。」「ダメです。」
仲良しかよ!
結局休憩時間の一刻まるまる、老人二人の相手をして過ごすのだった。
なんで歳を取ると話が長くなるんだろう。
勘弁して欲しいよ。
夕食を終え本日三度目の会議で何とか作戦の全容が決まった。
作戦の実行日は未定だが来期末を目安にじっくりと罠を張り巡らす。
「では復習をかねて作戦を確認しましょうか。エミリア最初は何をしますか?」
「まずは情報操作です、冒険者と騎士団両方にレティシャさん暗殺容疑の情報を流して犯人の動揺を誘います。」
「犯人を動揺させた後何をしますか?」
「我がブレイズ家にてレティシャ様の外出計画を立案する、本当に外出するという前提でしっかり作戦を考えなければならん。」
「その通りです、これが罠だと絶対に悟らせてはいけません。騎士団と冒険者を巻き込んで計画を立てるのでティナさんとシルビア様に無理をお願いする形になりますが、ストリさんと上手く連携して計画してください。」
「おまかせください。」「まかせておけ。」
ひとまずここまでが第一段階だ。
まずは敵を誘き出す。
「そういう意味では私達は楽だね、特に何もしなくていいんだから。」
「魔術師ギルドは直接作戦には関わりませんが、引き続き使用された魔法の分析と流出先の特定をお願いします。」
「流出先については望みは薄いが、まぁやってみるさ。」
何せ半年も前の事だ痕跡はとっくに消えてしまっている。
こっちはあまり期待しないでおこう。
「その次は外出が確定してから、ですね。」
「そうです。それが確定すれば犯人もそれを狙って動き出します。ここでボロを出せばありがたいのですが、おそらくそれは無いでしょうね。向こうの動向は読めませんが私達は自分たちの準備を進めるだけです。」
「計画が全て漏れているというのはやりにくくありませんか?」
「ユーリの心配ももっともですが逆を言えば情報の漏らし方次第で動きを調整できるというわけです。」
「なるほど、自分たちの都合のいいように情報を出していくわけですか、さすが御主人様です。」
向こうにアドバンテージがある状況でこちらが優位を取れるのはそこしかない。
情報は銀より重いとはよく言ったものだ。
「当日は我々騎士団と冒険者が合同で警護に当たるのだな。」
「事前に内通者が警護情報を漏洩させればそれを元に襲撃方法が決まるでしょう。当日不審な動きをする冒険者や騎士団員がいれば様子を見つつ襲撃が開始され次第そちらを拘束します。本当はすぐに拘束したいところですが、襲撃前に拘束してしまうと襲撃そのものが中止してしまう可能性がありますので、最悪誰が不審な動きをしたかを把握するだけで結構です。」
「冒険者に拘束させることもできますが大丈夫ですか?」
「誰が通じているかわからない以上無理はできません。絶対に大丈夫という人は私たち以外にいないと思ってください。」
ティナさんの言うように冒険者を使う事もできるが誰が敵かわからない状況では得策ではない。
絶対はない。
そう考えて動くべきだ。
ここまでが第二段階、舞台を整える。
「そして外出が始まると見せかけて私がレティシャさんと入れ替わる。」
「ニケさんには怖い思いをさせますが出来るだけ本人と似せた人を囮にしたいんです、よろしくおねがいします。」
「大丈夫です、皆さんが守ってくださると信じていますから。」
「外出方法は馬車がいいですね、中が見えず防衛にも向いています。自滅魔法を止めれるかは微妙な所ですがそこは私が体を張ってお守りしましょう。」
「そんなことはさせんさ、なんとしてでも犯人を見つけ出し拘束する。」
「その通りです、もうあんな思いしたくありません。」
俺だって二回も狙撃されるのは御免だ。
次に意識を失ったらガチで戻ってこれない可能性だってある。
俺の右肩に刺さっているコレがどんな悪さをするのかわかったもんじゃない。
「二人ともありがとうございます。そこで私たちの命を預けるべく当日の防御に関しては魔術師ギルドに頑張ってもらうつもりです。」
「人使いが荒い奴は嫌われるよ、よく覚えておきな。」
「魔法には魔法を、頼りにしていますよ。」
「ほんとミド博士の魔装具を馬車の防御に使うなんて贅沢よく思いつくね。」
「先日お渡ししたアレを使ういい機会だと思うんです、ミド博士には張り切ってもらいましょう。」
「坊やなら喜んで作るだろうよ。」
普通では止められない魔法も精霊の祝福があればできるのは身をもって証明済みだ。
そこで、精霊の力を宿したものでも同じことができるのではないかと考えたんだ。
そしてここには俺と同じく二種類の精霊の力を宿したものが置いてある。
研究するには最高の機会だと思うんだよね。
「それがうまくいけばご主人様は傷つかなくていいわけですね。」
「えぇ、ですがこれも相手にバレるわけにはいきません。博士には極秘裏に開発していただかなければなりませんので間に合う保証はありません。間に合えばよかった程度に思っていたほうがいいでしょう。」
「魔術師ギルドにも内通者がいるかもしれないもんね。」
「まったく迷惑な話だよ。見つけ次第私直々に燃やしてやるから覚悟しな。」
燃やすの!?
ちゃんと法で裁いてからにしてほしいなぁ。
「狙撃前に確保できるのが最高ですが狙撃に間に合わなかった場合は実行犯は死亡しているでしょう。その場合には内通者の確保を最優先に、近辺の捜索を一斉に開始します。犯人は現場にいるはずです、失敗したことに動揺している人物を見つけ出してください。」
「それが一番難しいですね。」
「そうだな、人海戦術が取れればいいが動けるのは私達だけだ。」
「そうならない様にしなければなりません、頑張りましょう。」
「自滅魔法は防げないけど捜索にはシルフィも加勢するからね、大丈夫絶対に見つかるよ。」
「リュカさんが一緒ですもんね。」
「ふふん、たまには活躍しないと。」
「たまにって自分で言うんじゃないよ。」
フェリス様ナイスツッコミ。
ここまでが最終段階。
これで犯人を捕まえられなかったら次はないだろう。
一回限りの大立ち回り。
え、これが商人のやる事かって?
そんな言葉聞き飽きましたよ。
商人だからやるんじゃないんです、俺だからやるんです。
大丈夫なんとかなる。
なんせここまでの99%が他力本願なんだから。
俺が商人かどうかなんて1%も関係ないってことだ。
「以上が作戦の流れになります。この部屋を出れば他言無用、各自それぞれの役割を全うしてください。頻繁にここで連絡を取り合うのは不自然ですので緊急の用事がある場合は商店までお越しください。ダンジョンの中であれば多少は敵の目も誤魔化せるでしょう。」
「次に集まる日を決めておくのはどうだ?」
「そうですね、欲を言えば来期すぐの聖日までに何か動きがあればいいのですが・・・。」
「そんなものやってみないとわからないさね。始める前にアンタが不安になるんじゃないよ。」
「その通りだ、シュウイチが考えた作戦であれば間違いなく成功する。これまでもそうであったように今回もそれは間違いない。」
「大丈夫ですよシュウイチさん。」
「そうです、何せ御主人様なのですから。」
いや、俺だからの意味が分からないんですけど。
相変らずのユーリ節、でもそれを聞くと何か安心するんだよな。
「だからイナバ様はいつもの様にしていてください。」
「あはは、お言葉に甘えさせていただきます。」
ほんとお世話になります。
ニケさんなんて一番危険な役目なのに俺の心配までしてくれて。
俺がしっかりしないといけないよな。
「ではギルドに戻り次第情報を流します、早い方がいいですよね。」
「そうだな早ければ早いほど相手は動揺するだろう。私も騎士団に戻り次第カムリに進言しよう。」
「よろしくお願いします。」
「それじゃあ私は坊やにお楽しみを伝えて来るかね。」
「あ、私も見にいこーっと。」
作戦はもう始まっている。
まずは第一弾の成功を祈ろう。
「皆様どうぞよろしくお願いいたします。」
「ストリさんもレティシャさんへよろしくお伝えください。もちろんこの作戦については秘密にしてくださいね。」
「もちろんですとも、何があっても他言いたしませぬ。」
「無理に内通者を探す必要もありません、いつものように過ごしていただければ結構です。」
「そうですな、いつものように、いつものように・・・。」
本当に大丈夫だろうか。
ストリさんがばらしたら全部が水の泡なんだけど・・・。
そこは信じるしかないよな。
「それで御主人様、私達はどうすればよいのですか?」
「私達ですか?」
「はい、私もニケ様も囮になるまではすることがありません。」
「皆さんが色々と策をめぐらせているのに私達だけ何もしていないような気がするんです。」
「もちろん私達にも大切な仕事がありますよ。」
俺達だけサボっているわけにはいかない。
みんなが頑張っている所で何もしないのは流石に気が引ける。
「それで、私達は何をすればいいんでしょうか。」
「私達は今まで通り商店を開店します。私が関わっていないと思わせる事、それが一番の役目なんです。」
狙撃されてなお生きている張本人。
狙撃犯を見た唯一の人物。
それが俺だ。
俺がこの街にいないことこそが作戦を成功させる秘訣だ。
「ではすぐに戻りますか?」
「今日はゆっくりして明日かえりましょう。せっかくの休息日です、やりたいこともありますしね。」
「なんだい結局遊んでるんじゃないかい。」
「あはは、それは言わないお約束ですよ。」
みんなが頑張っているときに一人遊ぶこの所業。
いいだろ、こっちは二週間も意識不明だったんだから!
みんなに笑われながら休息日二日目がふけていく。
そんな中、それを冷めた目で見ている瞳が二つ。
それに気づきながらも俺はあえて気づかないふりをしていた。
これで懸案事項は一つ片付いたな。
今回の作戦は不確定要素しかなくて非常にもどかしい。
いつもならいくつかの可能性を考えてその対応策を準備するのだが、今回はそれができそうにない。
スケールが違いすぎるんだよな。
前回の魔石横流し事件も話しこそ大事だけど、実際に相手をしたのは末端の末端だったわけだし。
今までで一番スケールの大きかったことといえば・・・集団暴走事件ぐらいか。
失踪事件も加えたい所だけど結局あれは小さな事件という扱いになっちゃったしなぁ。
これでも頑張ったんですよ?
改めて自分が関わった事件を思い浮かべると、やっぱりもっと商店が大きくなっていてもおかしくないよね。
俺がそういった報酬を断ってきたからだけど、やっぱり勿体無かったかなぁ。
「シュウイチさん夕食は何がいいですか?」
「そうですね、折角の機会ですから高級な食べ物をと言いたいところですが何が高級かわからなくて、皆にお任せします。」
「なんだい勿体無いねぇ。」
「今思えばこの世界に来て高級な食べ物ってあまり食べてないんですよ。どちらかといえば冒険者向けの食事の方が多いかもしれません。」
「カーラザンギアーゲやソーラーメンなど変わった物も食べましたね。」
「あれは中々の味だったぞ。」
異世界に来て元の世界の食事を楽しめるとは思っていなかった。
味付けは違うけどどれも美味しかったなぁ。
「私はやはりセレン様の料理が一番ですね、あれに勝るものにはまだ出会っておりません。」
「先日の収穫祭の時に頂きましたが、うちの料理人にも勝るとも劣らない味でしたな。」
「あの味にたどり着くにはまだまだ修行が足りないようです。」
「弟子は師匠を超えるものです、ユーリもいずれそこまでたどり着けますよ。」
「そのためにもまだ知らぬ料理を是非味わいたいものです。」
ユーリは一体何処に行きたいんだろうか。
ダンジョン妖精のはずが気付けば放浪料理人になっていたりして。
そして数々のライバルと戦い世界最高の料理へと挑むのだ。
次回、妖精料理人ユーリ『まだ知らぬ味を求めて』お楽しみに!
とか次回予告を組み込めそうだ。
「ご主人様、私はあくまでダンジョン妖精です。」
「知ってますよ。」
今ユーリがいなくなったら誰がダンジョンを管理するんだ。
当分はお世話になります。
「料理はリュカに任せれば何とかするだろ、リュカ頼んだよ!」
「簡単なもので1刻で出来上がって人数分・・・任せて!」
さすがリュカさん、流行はバッチリ抑えているようだ。
精霊の加護もあってか文字通り飛ぶように降りて行った。
「そういえばさっきフェリス殿と何か話していたが、どうかしたのか?」
「別に問題ありません。私の腕のことをお伝えしただけです。」
「そうか。」
「せっかくの休憩時間ですからゆっくり休んでくださいね。」
「休める時に休めとシュウイチに言われたばかりだからな、そうさせてもらおう。」
「時間もありますし折角なので私は世界樹の中を見てきます。」
そういえばティナさんはここ初めてなんだっけ。
「私も行きたいです!」
「ではニケ様と私も御一緒しましょう。」
どうやらユーリとニケさんがついていくようだ。
ユーリは初めてじゃないし迷う事も無いだろう。
「私はイラーナさんにお祝いを渡しに行ってきます。」
「そういえば妊娠したそうだな。妊婦のお腹に触れると授かれると聞く、私も是非あやかりに行こう。」
エミリアとシルビア様はイラーナ助手の所か。
残されたのは俺とフェリス様それにストリさん・・・。
「なんだいその視線は。」
「いえ、なんでもありません。」
老人二人がなにやら難しい話しをしている。
捕まると長そうだし俺も別の場所に行って・・・。
「そうだイナバ様先程の件ですが。」「ちょいとアンタさっきの話しだけどね。」
二人でかぶしてくるとかマジですか。
どう考えても完全に逃げるタイミングを逃したみたいだ。
「あの、御飯の後じゃダメですか?」
「ダメだ。」「ダメです。」
仲良しかよ!
結局休憩時間の一刻まるまる、老人二人の相手をして過ごすのだった。
なんで歳を取ると話が長くなるんだろう。
勘弁して欲しいよ。
夕食を終え本日三度目の会議で何とか作戦の全容が決まった。
作戦の実行日は未定だが来期末を目安にじっくりと罠を張り巡らす。
「では復習をかねて作戦を確認しましょうか。エミリア最初は何をしますか?」
「まずは情報操作です、冒険者と騎士団両方にレティシャさん暗殺容疑の情報を流して犯人の動揺を誘います。」
「犯人を動揺させた後何をしますか?」
「我がブレイズ家にてレティシャ様の外出計画を立案する、本当に外出するという前提でしっかり作戦を考えなければならん。」
「その通りです、これが罠だと絶対に悟らせてはいけません。騎士団と冒険者を巻き込んで計画を立てるのでティナさんとシルビア様に無理をお願いする形になりますが、ストリさんと上手く連携して計画してください。」
「おまかせください。」「まかせておけ。」
ひとまずここまでが第一段階だ。
まずは敵を誘き出す。
「そういう意味では私達は楽だね、特に何もしなくていいんだから。」
「魔術師ギルドは直接作戦には関わりませんが、引き続き使用された魔法の分析と流出先の特定をお願いします。」
「流出先については望みは薄いが、まぁやってみるさ。」
何せ半年も前の事だ痕跡はとっくに消えてしまっている。
こっちはあまり期待しないでおこう。
「その次は外出が確定してから、ですね。」
「そうです。それが確定すれば犯人もそれを狙って動き出します。ここでボロを出せばありがたいのですが、おそらくそれは無いでしょうね。向こうの動向は読めませんが私達は自分たちの準備を進めるだけです。」
「計画が全て漏れているというのはやりにくくありませんか?」
「ユーリの心配ももっともですが逆を言えば情報の漏らし方次第で動きを調整できるというわけです。」
「なるほど、自分たちの都合のいいように情報を出していくわけですか、さすが御主人様です。」
向こうにアドバンテージがある状況でこちらが優位を取れるのはそこしかない。
情報は銀より重いとはよく言ったものだ。
「当日は我々騎士団と冒険者が合同で警護に当たるのだな。」
「事前に内通者が警護情報を漏洩させればそれを元に襲撃方法が決まるでしょう。当日不審な動きをする冒険者や騎士団員がいれば様子を見つつ襲撃が開始され次第そちらを拘束します。本当はすぐに拘束したいところですが、襲撃前に拘束してしまうと襲撃そのものが中止してしまう可能性がありますので、最悪誰が不審な動きをしたかを把握するだけで結構です。」
「冒険者に拘束させることもできますが大丈夫ですか?」
「誰が通じているかわからない以上無理はできません。絶対に大丈夫という人は私たち以外にいないと思ってください。」
ティナさんの言うように冒険者を使う事もできるが誰が敵かわからない状況では得策ではない。
絶対はない。
そう考えて動くべきだ。
ここまでが第二段階、舞台を整える。
「そして外出が始まると見せかけて私がレティシャさんと入れ替わる。」
「ニケさんには怖い思いをさせますが出来るだけ本人と似せた人を囮にしたいんです、よろしくおねがいします。」
「大丈夫です、皆さんが守ってくださると信じていますから。」
「外出方法は馬車がいいですね、中が見えず防衛にも向いています。自滅魔法を止めれるかは微妙な所ですがそこは私が体を張ってお守りしましょう。」
「そんなことはさせんさ、なんとしてでも犯人を見つけ出し拘束する。」
「その通りです、もうあんな思いしたくありません。」
俺だって二回も狙撃されるのは御免だ。
次に意識を失ったらガチで戻ってこれない可能性だってある。
俺の右肩に刺さっているコレがどんな悪さをするのかわかったもんじゃない。
「二人ともありがとうございます。そこで私たちの命を預けるべく当日の防御に関しては魔術師ギルドに頑張ってもらうつもりです。」
「人使いが荒い奴は嫌われるよ、よく覚えておきな。」
「魔法には魔法を、頼りにしていますよ。」
「ほんとミド博士の魔装具を馬車の防御に使うなんて贅沢よく思いつくね。」
「先日お渡ししたアレを使ういい機会だと思うんです、ミド博士には張り切ってもらいましょう。」
「坊やなら喜んで作るだろうよ。」
普通では止められない魔法も精霊の祝福があればできるのは身をもって証明済みだ。
そこで、精霊の力を宿したものでも同じことができるのではないかと考えたんだ。
そしてここには俺と同じく二種類の精霊の力を宿したものが置いてある。
研究するには最高の機会だと思うんだよね。
「それがうまくいけばご主人様は傷つかなくていいわけですね。」
「えぇ、ですがこれも相手にバレるわけにはいきません。博士には極秘裏に開発していただかなければなりませんので間に合う保証はありません。間に合えばよかった程度に思っていたほうがいいでしょう。」
「魔術師ギルドにも内通者がいるかもしれないもんね。」
「まったく迷惑な話だよ。見つけ次第私直々に燃やしてやるから覚悟しな。」
燃やすの!?
ちゃんと法で裁いてからにしてほしいなぁ。
「狙撃前に確保できるのが最高ですが狙撃に間に合わなかった場合は実行犯は死亡しているでしょう。その場合には内通者の確保を最優先に、近辺の捜索を一斉に開始します。犯人は現場にいるはずです、失敗したことに動揺している人物を見つけ出してください。」
「それが一番難しいですね。」
「そうだな、人海戦術が取れればいいが動けるのは私達だけだ。」
「そうならない様にしなければなりません、頑張りましょう。」
「自滅魔法は防げないけど捜索にはシルフィも加勢するからね、大丈夫絶対に見つかるよ。」
「リュカさんが一緒ですもんね。」
「ふふん、たまには活躍しないと。」
「たまにって自分で言うんじゃないよ。」
フェリス様ナイスツッコミ。
ここまでが最終段階。
これで犯人を捕まえられなかったら次はないだろう。
一回限りの大立ち回り。
え、これが商人のやる事かって?
そんな言葉聞き飽きましたよ。
商人だからやるんじゃないんです、俺だからやるんです。
大丈夫なんとかなる。
なんせここまでの99%が他力本願なんだから。
俺が商人かどうかなんて1%も関係ないってことだ。
「以上が作戦の流れになります。この部屋を出れば他言無用、各自それぞれの役割を全うしてください。頻繁にここで連絡を取り合うのは不自然ですので緊急の用事がある場合は商店までお越しください。ダンジョンの中であれば多少は敵の目も誤魔化せるでしょう。」
「次に集まる日を決めておくのはどうだ?」
「そうですね、欲を言えば来期すぐの聖日までに何か動きがあればいいのですが・・・。」
「そんなものやってみないとわからないさね。始める前にアンタが不安になるんじゃないよ。」
「その通りだ、シュウイチが考えた作戦であれば間違いなく成功する。これまでもそうであったように今回もそれは間違いない。」
「大丈夫ですよシュウイチさん。」
「そうです、何せ御主人様なのですから。」
いや、俺だからの意味が分からないんですけど。
相変らずのユーリ節、でもそれを聞くと何か安心するんだよな。
「だからイナバ様はいつもの様にしていてください。」
「あはは、お言葉に甘えさせていただきます。」
ほんとお世話になります。
ニケさんなんて一番危険な役目なのに俺の心配までしてくれて。
俺がしっかりしないといけないよな。
「ではギルドに戻り次第情報を流します、早い方がいいですよね。」
「そうだな早ければ早いほど相手は動揺するだろう。私も騎士団に戻り次第カムリに進言しよう。」
「よろしくお願いします。」
「それじゃあ私は坊やにお楽しみを伝えて来るかね。」
「あ、私も見にいこーっと。」
作戦はもう始まっている。
まずは第一弾の成功を祈ろう。
「皆様どうぞよろしくお願いいたします。」
「ストリさんもレティシャさんへよろしくお伝えください。もちろんこの作戦については秘密にしてくださいね。」
「もちろんですとも、何があっても他言いたしませぬ。」
「無理に内通者を探す必要もありません、いつものように過ごしていただければ結構です。」
「そうですな、いつものように、いつものように・・・。」
本当に大丈夫だろうか。
ストリさんがばらしたら全部が水の泡なんだけど・・・。
そこは信じるしかないよな。
「それで御主人様、私達はどうすればよいのですか?」
「私達ですか?」
「はい、私もニケ様も囮になるまではすることがありません。」
「皆さんが色々と策をめぐらせているのに私達だけ何もしていないような気がするんです。」
「もちろん私達にも大切な仕事がありますよ。」
俺達だけサボっているわけにはいかない。
みんなが頑張っている所で何もしないのは流石に気が引ける。
「それで、私達は何をすればいいんでしょうか。」
「私達は今まで通り商店を開店します。私が関わっていないと思わせる事、それが一番の役目なんです。」
狙撃されてなお生きている張本人。
狙撃犯を見た唯一の人物。
それが俺だ。
俺がこの街にいないことこそが作戦を成功させる秘訣だ。
「ではすぐに戻りますか?」
「今日はゆっくりして明日かえりましょう。せっかくの休息日です、やりたいこともありますしね。」
「なんだい結局遊んでるんじゃないかい。」
「あはは、それは言わないお約束ですよ。」
みんなが頑張っているときに一人遊ぶこの所業。
いいだろ、こっちは二週間も意識不明だったんだから!
みんなに笑われながら休息日二日目がふけていく。
そんな中、それを冷めた目で見ている瞳が二つ。
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勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
全能で楽しく公爵家!!
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平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
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※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
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貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
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言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
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お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
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作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
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