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第九章

突撃!秘密の地下通路!

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昨日のようにフードをかぶって家を出る。

本日も晴天なり。

元の世界なら『絶好の行楽日和でしょう』なんて天気予報で言いそうな天気だ。

こんな日にバーベキューとかすると最高なんだろうなぁ。

なんて言うけれど、実際やったことは無いわけで。

そんなことする時間があったらゲームしていたインドア派です、どうもすみません。

でも外に出るのは好きでしたよ?

散歩も行くしたまには自転車で遠出もしてたし。

そういう意味ではアウトドア派なのか?

まぁどちらにしろボッチでしたけどね。

「大丈夫だとは思いますが何かあった場合はすぐに近くの建物に避難してください。」

「わかりました。」

今日はニケさんを先頭に騎士団へと向かう。

エミリアは俺に寄り添うような形で、ユーリは少しはなれて後ろを追いかけてくる。

こうする事で広い視点で警戒できるのだそうだ。

でも遠距離から狙撃されたら一緒だよね?

「シルビアは会ってくれるでしょうか。」

「朝食前に騎士団の方が来られたので、一応行きますとはお伝えしてます。」

「あー、もう伝えてあるんですね。」

「いけませんでしたか?」

「いえ問題は無いんですが、何かしら理由をつけて逃げられてしまいそうだなと思いまして。」

「シア奥様に限ってそんな事は無いと思いますが。」

俺もそう思うんだけど、いつものシルビア様じゃないからなぁ。

どう考えても俺は避けられている。

避けられているというかどんな顔をして会えばいいかわからないというか。

とにかくシルビアの中で何かが邪魔をしてしまっているのは確かだ。

そうじゃないと会いに来ない理由が見つからない。

「まぁ行けばわかるでしょう。」

何事も及ばざるが如し。

やる前からビビッてもしょうがないよな。

貴族街から中央の噴水を抜けて大きな通りを歩く。

今日もすごい賑わいだ。

でもあの日はもっとすごい人出だったなぁ。

その中であの事件を起こすんだからよっぽどの理由があるのだろう。

ただ暗殺するだけなら一人になるときを狙えばいい。

休暇で家に戻ってきている時なんか狙い放題だと思うんだけどな。

そこで狙わない理由が何かあったんだろうか。

「あれ、騎士団前に人だかりができていますね。」

先頭を行くニケさんが何かに気づいた。

良く見ると騎士団詰所の前に大勢の人が集まっている。

何かに並んでいるわけじゃない、詰所を取り囲むような感じで入口に集まっていた。

「何かあったんでしょうか。」

「とりあえず行ってみましょう。」

暴動とかそんな感じじゃない。

なんていうかアイドルの出待ちをしているファンのようだ。

集まっていたのは40人程。

年齢性別も様々だが冒険者の姿は無い。

全員街の住人のようだ。

「なにかあったんですか?」

ニケさんが後ろから中を覗き込んでいた中年の女性に声をかける。

「シルビア様が直接捜索に出るって言うんで見に来たんだよ。あの日以来お顔を拝見していないからね、やつれておられないのならいいんだけど。」

「じゃあ今日までずっと騎士団に?」

「そうさ、何処で命を狙われるかわかったもんじゃないからね。でも、直接出るって事は何か進展があったんだよきっと。」

「そうだといいですね。」

「シルビア様の退団を狙うなんて酷い奴さ。あそこでイナバ様にかばってもらわなきゃ大変な事になっていたよ。そういえばあの人も最近見ないねぇ・・・まぁ若いから大丈夫だろうけど。」

いや、あれは若さでどうにかなるような問題じゃないと思います。

吹き飛ばされた時に周りからどう見えたのかはわからないけど、いい感じに吹き飛んだのは覚えている。

おかげ様でこうやって出てこれるようになったから大丈夫といっていいのかもしれないけどね。

「すみませんありがとうございました。」

「お顔を拝見したいのなら近くで待ってなさいよ、私なんて店ほったらかしてきてるから出来れば早く出てきて欲しいもんだけどねぇ。」

「あはは・・・。」

店ほったらかして大丈夫なんだろうか。

シルビア人気恐るべしだ。

ひとまず人だかりから少しはずれて状況を整理する。

「聞いての通りです、どうしましょうこのままでは近づくことも出来ません。」

「それに無理やり行こうものならシュウイチさんがここにいることがばれてしまいます。これだけ人がいると暗殺者が隠れていた場合助けるのは難しくなります。」

「となると、正面から入るのは無理ですね。」

「ご主人様裏口はいかがでしょうか。」

「ここほどではないと思いますが、裏口もそれなりの人が集まっていると思います。」

別に悪い事をしているわけじゃないんだから堂々と正面から入ればいいんだろうけど、いろいろと危険が多すぎる。

それにもし何かあったとき、俺だけじゃなく他の人にも危害が及ぶ可能性がある。

無用な被害を出すわけにはかないからね。

「それでしたら私が連絡してきます。」

「リア奥様がですか?」

「私なら顔も知られていて入りやすいですし、もし何かあっても私一人なら魔壁で守ることも出来ますから。それに、シルビア様に話したいこともあるので。」

魔壁・・・、マジックバリア的なやつかな。

今の所エミリアの言うやり方ぐらいしか思いつかない。

でも、直接シルビア様に言いたい事っていったいなんだろう。

ある程度は予想付くんだけど、喧嘩とかしないよね?

ここは一つ穏便にお願いします。

「エミリアお願いできますか?」

「お任せ下さい。」

「私とユーリ様はイナバ様と一緒に近くで隠れています。その、頑張ってくださいエミリア様。」

「シア奥様に限って逃げ出すようなことは無いとは思いますが、その兆候が見られた場合は全力で阻止願いします。」

「がんばります。」

いや、あのさ、俺が来たって言いに行くだけだよね?

喧嘩売りに行くわけじゃないんだよね?

なのになんでそんなに三人とも臨戦態勢なの?

いくらシルビアでも逃げ出すような事はしないと思うんだけど・・・。

ひとまず騎士団の裏へ移動してみたがやはり裏口も人で溢れていた。

「ではエミリアお願いします。」

「はい、いってきます!」

「私達は少し離れましょう、エミリア様が来たとわかればイナバ様を探す人も出てきます。」

「そうですね。」

冒険者に囲まれるのはイヤではなかったが、それ以外の人に囲まれて何を話せばいいか分からない。

大人しく隠れていよう。

エミリアは人だかりを突っ切り、守衛に話しかけるとスムーズに騎士団の中へと消えていった。

ニケさんの言うとおりエミリアを見た人のうち何人かがキョロキョロと辺りを見渡したが、こちらに気づくことはなくすぐに裏口のほうに視線を戻した。

「上手く行くでしょうか。」

「リア奥様にお願いするしかありません。大丈夫です、ご主人様以上にシア奥様の事を分かっておられるのはリア奥様ですから。」

「そうですよ。エミリア様でしたらきっとシルビア様を説得してくださいます。」

説得?

うーん、俺が思っている以上にシルビアはこじれてしまっているのだろうか。

なんせ意識を失っていた二週間、何がどうなったのかさっぱり分からないからなぁ。

二人、いや四人の間に何か起きていても俺に教えてくれる事はない。

別段関係がこじれているとか、喧嘩しているとか、そんな空気は感じなかったけど女性はそういうの隠すのが上手いから。

実は大喧嘩をして絶交していましたとかそういうのは勘弁して欲しい。

って、これだけ悩んでいるのに普段漏れまくっている心の声はスルーですかユーリさん。

チラッとユーリのほうを向くも特に突っ込みを入れるような様子は無い。

普段あれだけ俺の心の声に反応するのに、実は漏れていないのか?

「ご主人様、心配は分かりますが今はお静かにお願いします。」

「やっぱり聞こえているじゃないですか。」

「聞こえていても全てに答えることなど不可能です。答えたくても答えられないこともございます、御理解下さい。」

「答えられないことですか。」

「私がご主人様をどう思っているかは喜んでお答えしますが、ニケ様や奥様方の気持ちを私がお答えするのはおかしな話です。しかし、どうしてもと言うのであれば皆様の本日の下着の色や形をお答えする事は出来ますが、いかがされますか?」

「・・・興味はありますが結構です。」

「ふふふ、イナバ様は正直ですね。」

「そりゃあこうなっても男ですから。」

動かなくなった右腕を左手で動かす。

どんな状態になってもエロイ事は大好きです!

特に全裸よりも着衣の方が・・・

「あれ、騎士団から誰かが向かってきます。」

俺がどれだけ下着が好きかと言う事を論じようとした所に邪魔が入ってしまった。

ってそうじゃない。

隠れている俺達に向かって一直線に向かってくる人が一人。

騎士団から出てきたはずなのに団員の鎧ではなく冒険者と同じようなブレストプレートを着用している。

冒険者かと思ったが、腰には騎士団と同じ長剣をぶら下げている。

顔は兜が邪魔をして良く見えないな。

騎士団から出てきたしとりあえずは騎士団関係者なのか?

うーむ分からん。

一体誰だろう。

その人は一度俺達の横を通り過ぎ、キョロキョロと辺りを確認するとクルリと反転してこちらを向いた。

「イナバ様お迎えに上がりました。」

「貴方は?」

声の感じから男性である事は間違いない。

どこかで聞いた事のある声なんだけど・・・。

冒険者かとも思ったが、歩き方はどう見ても騎士団員だし。

まるで騎士団員と冒険者を足したような感じだ。

「あれ、もうお忘れですか?」

そう言ってその人物が兜を外した。

「モア君!」

「よかった、忘れられたかと思いましたよ。」

「すみません騎士団から出てきたので関係者かと思ってしまいました。」

「半分当りです。一応冒険者のままですが、騎士団と冒険者ギルドを行き来して情報をやり取りする役をしてます。」

「モア君は冒険者ギルドも騎士団もどちらにも顔が利きますからうってつけですね。」

「こんな形で騎士団に戻ることになるとは思いませんでしたが、一応上手くやってます。」

元騎士団所属の冒険者。

こんな肩書きは彼ぐらいなものだろう。

「それで、どうしてここに?」

「エミリア様からお話をお伺いしてお迎えに上がりました。さすがにこのままあそこを通るわけには行きませんので、別の場所から中に向かいます。」

「いいんですか、そんなところに部外者である私を通して。」

「イナバ様でしたら誰も文句は言いません、それにそこを通るのが一番安全ですから。」

「わかりました宜しくお願いします。」

正面入口でも裏口でもない別の入口となると恐らくは地下を通るんだろう。

俗に言う隠し通路というやつだ。

そりゃそうか、一応軍事施設なんだし入口が二つしかないのもおかしな話しだ。

こういう街だし俺達が知らないだけで地下に隠し通路が張り巡らされていても不思議はないよな。

モア君に連れられて騎士団とは逆の方向に歩き始める。

何度も路地を曲がり、住宅街の奥へと進んでいった。

まるでコッペンの店に行く時のようだ。

体感的に5分ぐらい歩いただろうか、何処にでもあるような民家の前で立ち止まる。

「すみません、この辺りに鍋の蓋を売っている店はありませんか?」

モアくんはドアを三度ノックしてドア越しに尋ねた。

すると勢い良くドアが開き中から恰幅のいい女性がでてきた。

「鍋の蓋なら中央通りの金物屋だ、ここには鍋の中身しかないよ。」

「美味しそうですね、四人分いただけますか?」

「仕方ないね、ちょうど作りすぎて困ってたんだ食べて行きな。」

女性がやれやれと言う顔をして俺たちを中に案内する。

見た目はただのおばちゃんにしか見えない、しかしドアを閉めるときに鋭い視線で周りを伺っているのを俺は見逃さなかった。

なるほどね、合言葉って奴か。

「連絡は来てるよ、裏の部屋だ。」

「助かる。」

ノア君が部屋を突っ切って奥の部屋へと向かう。

部屋の中央には大きなベッド、壁には備え付けの大きなクローゼット。

小さな机には花瓶が飾られパッと見は何処にでもありそうな民家の一室だ。

ここに隠し通路があるとして、定番はベッドの下。

ついで隠し扉ってところか?

「こっちです。」

モア君が向かったのはクローゼットの前だった。

おもむろにクローゼットを開けると中にはたくさんの衣装が入っていて中を全部見る事はできない。

そこを抜けると向こうはナ〇ニアでしたとかそんな感じだ。

だが目的の場所はどうやら奥ではなく下にあるらしい。

下に置かれた大きな箱をどかすと、一人通れるぐらいの大きさのハッチが現れた。

取っ手を引っ張りつっかえ棒で固定するとあら不思議、あっという間に地下への入り口の出来上がりだ。

「先に行きます、30数えたら順番に降りてきてください。」

「わかりました。」

下を確認してモア君が備え付けられていた梯子を降りていく。

よかった、紐を持って滑り降りろとか言われたらどうしようかと思った。

梯子なら片手でもなんとかなりそうだ。

「ご主人様お先にどうぞ。」

「いえ、ユーリたちから先にお願いします。」

「よろしいのですか?」

「上を見ると見てはけない物が見えてしまいますので。」

今日に限って二人ともズボンではない。

ニケさんにいたってはヒラヒラとしたスカートなので中身がバッチリ見えてしまう。

「わかりました。」

「最初はユーリ、その後ニケさん、最後に私で行きましょう。」

「ではご主人様お先に失礼します。」

ゆっくり30を数えてからユーリが梯子に足をかける。

それを追いかけるようにニケさんが降りていった。

さぁ俺もと、梯子に足をかけたときだった。

人の気配を感じて顔を上げると、先程の女性が俺の前に立っていた。

「助かりました、ありがとうございます。」

「お礼を言うのはこっちの方だよ。引退したとはいえあの人は私達の象徴だ、助けてくれてありがとう。」

ぶっきらぼうにお礼を言われてしまった。

あの人というのはシルビア様の事だろう。

「シルビアは皆さんに慕われていたんですね。」

「引退しても私達はあの人の部下だ、何かあったら遠慮なく言うんだよ。さぁ、行った行った!」

恥ずかしそうにそっぽを向くと女性はクローゼットのドアを閉めてしまった。

真っ暗になった視界に慌てることなく、足の感覚と左手の感覚を頼りにゆっくりと梯子を降りていく。

幸い穴は狭く、背中をすりながら降りれば片手を使わなくてもいけそうだ。

ゆっくりと時間をかけて縦穴を降りていく。

しばらくするとオレンジ色の明かりが下から俺を照らしだした。

「イナバ様もう少しです。」

突然支えにしていた後ろの壁が無くなり落ちそうになる。

どうやら無事に地下通路まで降りてこれたみたいだ。

最後はニケさんとユーリに支えられながら着地する。

「やれやれ、お待たせしました。」

「聞いていた通り片手は使えないんですね。」

「えぇ、ですがモア君のように冒険者ではありませんので動かせなくても何とかなります。」

「こんな道しかなくて申し訳ありません。ここを行けばすぐに騎士団に着きますのでもう少しだけ頑張ってください。」

「大丈夫です行きましょう。」

松明をもつモア君を先頭に地下通路を行く。

通路は思っていたよりも天井が高かった。

武器を持って移動するのを考えているんだろう。

横幅も二人で並ぶ事はできないが一人で歩くには十分な余裕がある。

「街の地下にこんな道があるなんて知りませんでした。」

「この道を知っているのは騎士団でもごく少数の人間だけです。自分は今回特別に教えていただきました、他言無用でお願いします。」

「もちろんです。」

「ご主人様、いざという時を考えて店にも地下通路を作りましょう。」

「いやいやさすがにそこまでは必要ありません。作り終わる頃にはこの事件は解決していますよ。」

「その通りです。騎士団と冒険者が血眼になって犯人を捜しているんですから、イナバ様は安心してお待ち下さい。」

「頼りにしています。」

シルビアだけじゃなく多くの人が頑張ってくれているんだ、心配ない。

行きと違って真っ直ぐ地下通路を進むと、すぐに大きな扉が見えてきた。

重厚な扉だが良く見ると取っ手が無い。

構造的に押して開くのではなく引いて開くタイプのようだがこれじゃ開ける手段が無いぞ。

なんて思っていると、モア君が大きな扉を剣の柄で三度、二呼吸ほど開けてもう三度、また二呼吸あけて二度ドアを叩いた。

その途端、大きな音を立ててドアが開き始める。

そうか、取っ手が無いのは外から攻め込まれたときに中に侵入されないための工夫か!

なるほど、入るときは合図をしないと開けてくれないんだな。

平和な世の中とはいえ、こういった部分はちゃんとしている。

すごいなぁ。

「冒険者モア、イナバ様をお連れしました!」

「任務ご苦労!」

ドアの先には騎士団員が二人立っていた。

モア君の敬礼にその二人も答える。

最初は厳しい顔をしていたのに、敬礼が終わった瞬間にその二人の表情が崩れた。

「なんだ、もうすっかり冒険者じゃねぇかモア。」

「そうは言うけど敬礼は騎士団のまんまだぜ。冒険者なんて辞めてさっさと戻って来いよ、また可愛がってやるからさ。」

「勘弁してくださいよ、そんな事言っていつも雑用させるじゃないですか。」

「そうだったか?」

どうやら二人はモア君の知り合いのようだ。

三人が声を出して笑う。

なんとなく分かるなぁ、俺も昔いた配属先に顔を出した時に同じように先輩になじられたっけ。

「シュリアン商店のイナバと申します。この度は御迷惑をお掛けしました。」

「これはイナバ様、狭い道を通らせてしまい申し訳ありません。すぐにシルビア様の所にお連れします。」

「宜しくお願いします。」

俺に気づいた兵士が再びきりっとした表情に戻る。

「モアには別件で冒険者ギルドまで走ってもらう、イナバ様はこちらに任せておけ。」

「別件って、なにかあったんですか?」

「俺にもわからん、だが至急ティナギルド長に知らせて欲しいとの事だ。作戦本部に顔を出してすぐに向かえ。」

「わかりました。」

どうやらモア君とはここまでのようだ。

「モア君ありがとうございました。」

「すみませんイナバ様、失礼します。」

まぁ商店が再開すればダンジョンに来ることもあるだろう。

今生の別れというものでもない。

忙しいのはいい事だ。

でもティナギルド長へ急ぎの連絡って何かあったんだろうか。

「何かあったんでしょうか。」

「わかりません、ですがそれもシルビアに会えばわかるでしょう。」

「騎士団長は執務室でお待ちです、すぐに参りましょう。」

「馬鹿、騎士団長って言えばカムリ様だろうが。シルビア様は元騎士団長だよ。」

「申し訳ありません間違えました。」

すぐ騎士団に戻ったんだし間違えるのも仕方ない。

そうか、今の騎士団長はカムリだったな。

騎士団員に連れられて階段を上り会議室へと向かう。

すれ違う人すれ違う人が俺に気付いて敬礼してくる。

偉いわけじゃないのになんだか偉くなった気分だ。

「皆、シルビア様を救ってくださった事に感謝しているのです。」

「私は当たり前の事をしただけですよ。」

「それでもイナバ様がかばってくださらなければ私達は偉大な人を失う所でした。その、腕の事は大変申し訳ないのですが・・・。」

「腕一本でシルビアの命が救えたのなら安いものです、みなさんが気に病む事はありません。」

「そう仰っていただけると助かります。」

階段を上り、前に一度来たことのある場所へとやってくる。

あれ、ここは確か騎士団長の部屋では?

「失礼します、イナバ様をお連れしました。」

「入れ。」

聞こえてきたのはカムリの声だ。

ゆっくりとドアが開かれ、中へと誘導される。

大きく深呼吸をして1歩前に。

顔を上げたその先には、二週間以上ぶりの愛しい人の顔があった。
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