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第九章
先の見えない不安
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結局眠たさに負け次に意識がハッキリしたのは外がオレンジ色に染まる頃だった。
人間どんなにつらい時でも眠たさには勝てないモノです。
あ、寝れなくなると病気の可能性もあるので一度受診をお勧めします。
その他にも急に涙が出て来るとか、大好きな物が美味しく感じなくなるなんていう症状も可能性ありです。
ココロのサインを見逃さないようにしましょうね。
そういう意味では俺はまだそこまでメンタルをやられていないようだ。
なんとかなるさ。
昔の俺だったらこんなにポジティブには思えていなかっただろうなぁ。
家族が増えたから。
仲間がいるから。
それが一番の理由だろう。
「あら、思ったよりも元気そうじゃない。」
突然の声に入り口の方を振り向くと、良く知った顔が安心したような顔をしてこちらを見ていた。
部屋には俺一人。
ニケさんはマヒロさんの手伝い、ユーリは買い物、エミリアはシルビア様の所に定時連絡に向かった。
「その節はご迷惑をおかけしました。」
「別に迷惑なんかじゃないわ、話を聞いた時はびっくりしたけど嫁を守って名誉の負傷なら仕方ないわよね。」
「そんなにカッコいい物じゃないですよ。」
「そういう時は素直に受け入れるものよ。横、いいかしら。」
「どうぞ。」
ベット横の椅子に案内し、ゆっくりと上体を起こす。
だが腹筋が随分落ちているのか自分一人の力では上がらず、結局手伝ってもらって起こすことができた。
「この調子です。」
「二週間も意識不明だったのよ、当然だわ。」
何だどうした。
鬼女こと我らがメルクリア女史が優しいぞ。
雨でも降るんだろうか。
「失礼ね、いくら私でも怪我人には優しいわよ。」
「あはは失礼しました。」
「それで、どこまで聞いているのかしら。」
「正体不明の暗殺者がシルビア様を狙撃するも俺の妨害で失敗。犯人は依然逃走中、現在騎士団が総力を挙げて捜索していますが情報は無し。狙撃場所に残されていた魔力残滓を魔術師ギルドが調査中と言ったところでしょうか。」
「そこまでわかっているのなら大丈夫ね。店の方はどう聞いているの?」
「現在臨時休業中、ダンジョンはユーリが定期便ごとに整備してくれています。早期再開したいところですが私がこの調子ですので頑張り次第ですね。」
「そこに関しては貴方に一任するわ。商店連合としては商店再開に向けて助力を惜しまないし、必要であれば人を出す用意もあります。貴方の場合は村の方もお願いしているのだからそちらも忙しくなるころでしょ?」
すっかり忘れてた。
もうすぐ収穫があるんだっけ。
連絡はしているだろうけどニッカさん心配しているだろうなぁ。
なんせ娘が狙撃されたんだ、普通でいられるわけがない。
「そういえばそんな時期でしたね。」
「収穫は次期だから大丈夫でしょうけど、その様子じゃ失念していたようね。まぁ仕方ないわ。」
「人出はユーリ達もいますので大丈夫だとは思いますが・・・。」
「残念ながら貴方の課題を延長することはできないの。一応掛け合ってはみたけれどダメだったわ。」
「聞いてくださっただけでもありがたいです。」
「貴方の場合問題なのはダンジョンの方でしょうから、そっちに重きを置けばなんとかなるでしょう。」
何とかなればいいけど・・・。
売り上げはまぁなんとでもなるし、宿は冬にならないと建設不可。
そういう意味では今回の休業で支障が出るのはダンジョンだけか。
10階層出来るだけの魔力は溜まっているからあと半年でどこまで人を増やせるかだな。
障害競走みたいな催しをもう一回できれば無理やり魔力を増やせるけど、人手も時間もかかりすぎる。
俺のこの腕じゃこの前みたいにうまく動く自信はないな。
俺は左手で動かなくなった右腕をそっと撫でる。
暖かいが動かない。
動かそうとしても微動だにしない。
まるでそこだけ電気が流れていない機械のようだった。
「腕、動かないんですってね。」
「外科的な所見では問題は無し、呪術的な方面で現在調査中だそうです。」
「触ってもいいかしら。」
「呪いが移るかもしれないですよ。」
「馬鹿ね呪術はかけた相手にのみ作用する物よ、触ったところでなにも起きないわ。」
そういう物なのね。
まぁ本当に呪いなのかもわかってないし、メルクリア女史は数少ない精霊使いでもある。
何かわかるかもしれないしな。
「お願いします。」
メルクリア女史が立ち上がり俺の方にそっと手を伸ばす。
と、突然バチっという音が部屋中に響いたかと思うと慌てて伸ばした手を戻した。
なんだ!?
「大丈夫ですか!?」
「え、えぇ大丈夫よ。」
「今までエミリア達に触られても何ともなかったんですが、いったい何が起こったんでしょう。」
「・・・貴方には見えないのね。」
「何がですか?」
「私は専門家じゃないから何とも言えないけど、その怪我思ったよりも複雑なものかもしれないわ。一応私の方からもフェリス様には報告しておきます。」
「よくわかりませんがお願いします。」
その後、仕事関係の話をいくつかすると足早にメルクリア女史は部屋を出て行った。
静かになった部屋で俺は先ほどの音をもう一度思い返してみる。
エミリア達が触っても何ともなかったのに、メルクリア女史が触ろうとしたら大きな音がした。
偶然かもしれない。
だけど彼女は隠していたつもりだろうがあの音の後、伸ばした方の手をずっと隠していたのを俺は見逃さなかった。
出せない何かがある。
それしかわからないが、そこからわかるのはただ一つ。
俺の怪我は普通じゃない。
誰もいない部屋で俺はその現実と向き合うしかできなかった。
「フィフティーヌ様が来られていたんですか?」
「えぇ、突然来たかと思ったらいくつか仕事の話をして慌ただしく帰っていきました。」
「確かに手が空いたら顔を出すとは伺っていましたが、お会いできなくて残念です。」
「エミリアの事を随分と気にしていましたよ。無理をさせないようにと釘をさされました。」
「もぅ、私は大丈夫だと連絡してあるのに。」
「それだけ心配しているという事です。私が言うのもなんですが、無理しないでください。」
「心配してくださってありがとうございます。」
そういいながらも無理をするのがエミリアだ。
まるで誰かさんみたいだな。
あれからしばらくしてエミリアが騎士団から帰って来た。
体を起こそうとする俺を制止して、今はベット左横に置かれた椅子に腰掛けている。
「シルビアの方はどうでしたか?」
「お忙しそうでしたがあまり進展はなさそうです。」
「今日もこちらには?」
「えぇ、戻らないそうです。戻ると決意が鈍ってしまうそうで・・・。」
「まったく、心配かけさせないつもりでしょうがそれが一番心配なんですよ。今度会ったらきつくお灸を据えてやらないと。」
「もしかしたらご自分で歩けるようになってほしいのかもしれませんよ?」
「そうだったらいいんですけどね。」
絶対に違う。
こうなった原因は自分にあると自分自身を責めているんだ。
それで会いたいのに会いに行けない。
これまた誰かさんみたいだ。
何でうちの嫁はわざわざ俺に似て来るんだろう。
俺が言えたことじゃないけどさぁ。
「一応シュウイチさんが会いたがっているとはお伝えしておきました。」
「明日も来なかったらこちらから出向きます。這ってでも行きますから止めないでくださいね。」
「そんなことしなくてもちゃんとお手伝いします。」
「あはは、よろしくお願いします。」
「でも、絶対に無理はしないと約束してください。これ以上シュウイチさんに何かあったら私・・・。」
先ほどまで笑顔で話していたエミリアの瞳から大粒の涙があふれていた。
今まで俺の前で怒りはすれど泣いたことがなかったエミリアだけに思わず狼狽えてしまう。
だがそこで何もしないのは男じゃない。
自分の妻が自分の事で涙を流しているんだ。
それを慰められるのもまた自分しかいない。
俺は弱弱しい体に鞭を打ち、横で涙を流すエミリアの腰をぎゅっと抱き寄せる。
突然伸びてきた手に一瞬驚くも、エミリアはそのまま上半身を倒し俺の頭を抱きしめる。
む、胸が当たる。
だがそんな事に気を取られている場合じゃない。
俺はエミリアが泣き止むまでその柔らかな髪を優しく撫で続ける。
言葉なんていらない。
今エミリアに必要なのは心細かった二週間を埋めるだけのスキンシップだ。
どれぐらいの時間そうしていただろうか、ゆっくりと体を起こしたエミリアは大きく息を吐くとそのままぷいっと反対を向いてしまった。
「どうしてそっちを向くんですか?」
「だって、絶対に可愛くない顔をしています。」
「どんな顔でもエミリアはエミリアです。今朝そう言ってくれたじゃありませんか。」
「でも、この顔はダメです。」
「ダメじゃありません。」
「ダメったらダメです。顔を洗って来るのでシュウイチさんはそこで待っていてください。」
「大丈夫、動けないのでここで待っています。」
マジで動けないので。
その言葉にふふっと笑い、エミリアは足早に部屋を出て行った。
これで少しぐらいは心の傷を癒せただろうか。
俺の意識が戻るまでの二週間。
エミリアの心にできた傷は俺の想像を超えるものだろう。
エミリアだけじゃない。
シルビア様の心にも大きな穴が開いたままだ。
もしかしたらエミリアよりも深刻なのはそっちかもしれない。
その穴を埋める事が出来るのはただ一人。
俺だけだ。
今日は流石に無理だけど早く歩けるようにならないと・・・。
「そんなこと言っていたらいつまでも歩く事などできません。今日出来ることは明日に持ち込まないのが仕事を滞留させないコツではないでしょうか。」
「ユーリ、いつから見ていたんですか?」
「えっと、お二人が抱きしめ合っている時からです。」
「ニケさんまで。声をかけて・・・っというのは流石に無理ですね。気を使ってもらってありがとうございます。」
「これもリア奥様の心の平穏の為です。」
なんだかんだ言いながらもこの二週間エミリアを支えてくれたのはこの二人だ。
二人にも何かお礼をしないといけないな。
「二人ともいつもありがとうございます。」
「それが私達の仕事ですから。」
「その通りです。ですが、ご主人様がどうしても何かしたいと仰るのであれば私達は喜んでそれをお受けいたします。」
「なんでしたら抱きしめてくださっても構いませんよ。」
「いや、さすがにそれは・・・。」
「私達の心の傷は埋めてくださらないんですか?」
「ユーリ、そこに座りなさい。」
まったく、俺の心の声が読めるというのも考え物だな。
動けないのを良い事に、わざと俺の手が届かない所まで歩いて来て挑発するようにその場に座ってジッと俺を見つめて来る。
よし、その挑発乗ってやろうじゃないか。
俺はゆっくりと上体を起こし、左腕を支えにして足をベッドサイドにもっていく。
普通の状態ならここまで持っていくのに10秒もかからないが、今の俺にはその10倍以上の時間がかかってしまう。
亀の様に遅い動きを二人は手を出さず黙って見守ってくれた。
これは俺の、俺にしかできない戦いだ。
ここで手を出しては何の意味もないことを二人はわかっている。
わかっているからこそ、思わず手が出そうになるのをぐっと耐えているのが申し訳なかった。
だがそれに付き合ってくれ。
渾身の力を込めてベットの端をグッと押して体を持ち上げる。
まるで産まれたての小鹿の様にプルプルと震える脚で何とか立ち上がることに成功した。
だがそこまでだ。
急に持ち上がった事で体のバランスを上手くとることができず、そんまま前につんのめるようにして倒れていく。
が、次の瞬間には二人がしっかりと俺の体を支えていた。
「偉そうに言いましたがここまでのようです。」
「いえ、ご主人様の頑張り確かに見届けました。」
「もぅユーリ様が無茶させるから。」
「こうでもしなければ御主人様は前に進みません。私の仕事にはダンジョンのメンテナンスだけではなく御主人様を支える事も含まれております。ですので、これからも甘やかしませんのでお覚悟ください。」
「お手柔らかにお願いします。」
二人がそっと俺を抱きしめる。
そうだよな、エミリアやシルビア様だけじゃなくてこの二人の心にも傷はついているんだよな。
雇用主としてそれを埋める義務が俺にはある。
あー、ちがう。
家族としてだ。
訂正します。
家族の心の傷は家長が責任を持って修復しなければならない。
それぐらいの覚悟で俺は二人を家族に迎え入れたんだ。
ただのダンジョン妖精と娼婦じゃない。
俺の大切な家族。
みんなに支えられているんだから、たまにはちゃんと恩返ししないと罰が当たるってもんですよ。
「シュウイチさん?」
と、二人に抱きしめられているタイミングでいつものように帰ってくるエミリア。
あ、ここまでがお決まりのパターンでしたね。
すっかり忘れていました。
「あ、エミリアお帰りなさい。」
しかし、ここでうろたえればいつもの俺だ。
ここはどっしりと構えて家長としての余裕を持って対応しよう。
「ただいま戻りました。」
「お帰りなさいませリア奥様、誤解のないようにお話しておきますがこれは御主人様の覚悟を確かめる為で決して他意はございません。」
「イナバ様は私達のためを思って頑張って下さったんです。」
あの、ニケさん。
せっかくユーリが良い感じで誤魔化してくれたのに、ここで話を複雑にする必要は無いんじゃないですかね。
「その頑張りがそうなったわけですね。」
「その通りです。決してやましい気持ちは無かったとここにご報告しておきます。」
「私たちもエミリア様のように抱きしめて欲しかっただなんてそんな事・・・。」
ほらまた!
そういうところですよ!?
「ど、どうしてそれを知っているんですか!外に出たときは誰も居なかったはずなのに・・・。」
「どうしてといわれましても、戻られたときには良い雰囲気でしたのでお邪魔するのは失礼かと思い隠れておりました。」
「泣いた顔なんて決して見てません!」
「シュウイチさんはそのままそこで待っていて下さい、二人ともちょっとお話がありますので横のお部屋に来ていただけますか?」
あ、エミリアの顔が変わった。
般若だ、夜叉だ、いやエミリアだ!
「ニケ様まずいです。」
「私もそう思います。」
「さぁ、二人ともこっちに。」
「この場を切り抜ける方法はただ一つ、御主人様失礼します!」
「ちょっ!?」
聞いて下さい。
二人に支えられていたと思った次の瞬間には、まるで振り子のように両手を引っ張られてエミリアへ体当たりさせられていました。
私は悪くありません。
囮に使われただけなんです。
その証拠にぶつけた本人たちは部屋の外に逃げてしまいました。
信じて下さい。
決して自分から押し倒した時に胸に顔をうずめ、両手で二つのふくらみを揉んだわけじゃないんです。
其のまま動かなかったのはそもそも動けなかったからだけで、至福だったからじゃありません。
信じて下さい。
信じて下さい。
信じて・・・。
「シュウイチさん、あとでゆっくりとお話したい事がありますのでどうぞ『自力で』ベッドに戻っていて下さいね。」
「は、はい分かりました。」
それだけ言うと二人を追いかけてあっという間にエミリアも部屋を出て行ってしまった。
笑っていた。
笑っていたのに何でこんなに寒気がするんだろう。
そうだ、寒いからだ。
大人しくベッドに戻って今あったことは忘れよう。
そうしよう。
そのほうが良いよ、絶対。
この後ユーリたちがどうなったのかは・・・もういいや。
そっとしておこう。
なんだかんだあったけれど、新しい目標は定まったわけだし。
それでいいじゃないか。
いつまでもここにいるわけには行けない。
前に進もう。
たとえわずかな距離でも、前に進めば道ができる。
霧のように前が見えなくても、その道をみんなに支えられながら一歩ずついこう。
そう思いながらも、先程のメルクリア女史の反応を誰にも相談できない自分がいた。
人間どんなにつらい時でも眠たさには勝てないモノです。
あ、寝れなくなると病気の可能性もあるので一度受診をお勧めします。
その他にも急に涙が出て来るとか、大好きな物が美味しく感じなくなるなんていう症状も可能性ありです。
ココロのサインを見逃さないようにしましょうね。
そういう意味では俺はまだそこまでメンタルをやられていないようだ。
なんとかなるさ。
昔の俺だったらこんなにポジティブには思えていなかっただろうなぁ。
家族が増えたから。
仲間がいるから。
それが一番の理由だろう。
「あら、思ったよりも元気そうじゃない。」
突然の声に入り口の方を振り向くと、良く知った顔が安心したような顔をしてこちらを見ていた。
部屋には俺一人。
ニケさんはマヒロさんの手伝い、ユーリは買い物、エミリアはシルビア様の所に定時連絡に向かった。
「その節はご迷惑をおかけしました。」
「別に迷惑なんかじゃないわ、話を聞いた時はびっくりしたけど嫁を守って名誉の負傷なら仕方ないわよね。」
「そんなにカッコいい物じゃないですよ。」
「そういう時は素直に受け入れるものよ。横、いいかしら。」
「どうぞ。」
ベット横の椅子に案内し、ゆっくりと上体を起こす。
だが腹筋が随分落ちているのか自分一人の力では上がらず、結局手伝ってもらって起こすことができた。
「この調子です。」
「二週間も意識不明だったのよ、当然だわ。」
何だどうした。
鬼女こと我らがメルクリア女史が優しいぞ。
雨でも降るんだろうか。
「失礼ね、いくら私でも怪我人には優しいわよ。」
「あはは失礼しました。」
「それで、どこまで聞いているのかしら。」
「正体不明の暗殺者がシルビア様を狙撃するも俺の妨害で失敗。犯人は依然逃走中、現在騎士団が総力を挙げて捜索していますが情報は無し。狙撃場所に残されていた魔力残滓を魔術師ギルドが調査中と言ったところでしょうか。」
「そこまでわかっているのなら大丈夫ね。店の方はどう聞いているの?」
「現在臨時休業中、ダンジョンはユーリが定期便ごとに整備してくれています。早期再開したいところですが私がこの調子ですので頑張り次第ですね。」
「そこに関しては貴方に一任するわ。商店連合としては商店再開に向けて助力を惜しまないし、必要であれば人を出す用意もあります。貴方の場合は村の方もお願いしているのだからそちらも忙しくなるころでしょ?」
すっかり忘れてた。
もうすぐ収穫があるんだっけ。
連絡はしているだろうけどニッカさん心配しているだろうなぁ。
なんせ娘が狙撃されたんだ、普通でいられるわけがない。
「そういえばそんな時期でしたね。」
「収穫は次期だから大丈夫でしょうけど、その様子じゃ失念していたようね。まぁ仕方ないわ。」
「人出はユーリ達もいますので大丈夫だとは思いますが・・・。」
「残念ながら貴方の課題を延長することはできないの。一応掛け合ってはみたけれどダメだったわ。」
「聞いてくださっただけでもありがたいです。」
「貴方の場合問題なのはダンジョンの方でしょうから、そっちに重きを置けばなんとかなるでしょう。」
何とかなればいいけど・・・。
売り上げはまぁなんとでもなるし、宿は冬にならないと建設不可。
そういう意味では今回の休業で支障が出るのはダンジョンだけか。
10階層出来るだけの魔力は溜まっているからあと半年でどこまで人を増やせるかだな。
障害競走みたいな催しをもう一回できれば無理やり魔力を増やせるけど、人手も時間もかかりすぎる。
俺のこの腕じゃこの前みたいにうまく動く自信はないな。
俺は左手で動かなくなった右腕をそっと撫でる。
暖かいが動かない。
動かそうとしても微動だにしない。
まるでそこだけ電気が流れていない機械のようだった。
「腕、動かないんですってね。」
「外科的な所見では問題は無し、呪術的な方面で現在調査中だそうです。」
「触ってもいいかしら。」
「呪いが移るかもしれないですよ。」
「馬鹿ね呪術はかけた相手にのみ作用する物よ、触ったところでなにも起きないわ。」
そういう物なのね。
まぁ本当に呪いなのかもわかってないし、メルクリア女史は数少ない精霊使いでもある。
何かわかるかもしれないしな。
「お願いします。」
メルクリア女史が立ち上がり俺の方にそっと手を伸ばす。
と、突然バチっという音が部屋中に響いたかと思うと慌てて伸ばした手を戻した。
なんだ!?
「大丈夫ですか!?」
「え、えぇ大丈夫よ。」
「今までエミリア達に触られても何ともなかったんですが、いったい何が起こったんでしょう。」
「・・・貴方には見えないのね。」
「何がですか?」
「私は専門家じゃないから何とも言えないけど、その怪我思ったよりも複雑なものかもしれないわ。一応私の方からもフェリス様には報告しておきます。」
「よくわかりませんがお願いします。」
その後、仕事関係の話をいくつかすると足早にメルクリア女史は部屋を出て行った。
静かになった部屋で俺は先ほどの音をもう一度思い返してみる。
エミリア達が触っても何ともなかったのに、メルクリア女史が触ろうとしたら大きな音がした。
偶然かもしれない。
だけど彼女は隠していたつもりだろうがあの音の後、伸ばした方の手をずっと隠していたのを俺は見逃さなかった。
出せない何かがある。
それしかわからないが、そこからわかるのはただ一つ。
俺の怪我は普通じゃない。
誰もいない部屋で俺はその現実と向き合うしかできなかった。
「フィフティーヌ様が来られていたんですか?」
「えぇ、突然来たかと思ったらいくつか仕事の話をして慌ただしく帰っていきました。」
「確かに手が空いたら顔を出すとは伺っていましたが、お会いできなくて残念です。」
「エミリアの事を随分と気にしていましたよ。無理をさせないようにと釘をさされました。」
「もぅ、私は大丈夫だと連絡してあるのに。」
「それだけ心配しているという事です。私が言うのもなんですが、無理しないでください。」
「心配してくださってありがとうございます。」
そういいながらも無理をするのがエミリアだ。
まるで誰かさんみたいだな。
あれからしばらくしてエミリアが騎士団から帰って来た。
体を起こそうとする俺を制止して、今はベット左横に置かれた椅子に腰掛けている。
「シルビアの方はどうでしたか?」
「お忙しそうでしたがあまり進展はなさそうです。」
「今日もこちらには?」
「えぇ、戻らないそうです。戻ると決意が鈍ってしまうそうで・・・。」
「まったく、心配かけさせないつもりでしょうがそれが一番心配なんですよ。今度会ったらきつくお灸を据えてやらないと。」
「もしかしたらご自分で歩けるようになってほしいのかもしれませんよ?」
「そうだったらいいんですけどね。」
絶対に違う。
こうなった原因は自分にあると自分自身を責めているんだ。
それで会いたいのに会いに行けない。
これまた誰かさんみたいだ。
何でうちの嫁はわざわざ俺に似て来るんだろう。
俺が言えたことじゃないけどさぁ。
「一応シュウイチさんが会いたがっているとはお伝えしておきました。」
「明日も来なかったらこちらから出向きます。這ってでも行きますから止めないでくださいね。」
「そんなことしなくてもちゃんとお手伝いします。」
「あはは、よろしくお願いします。」
「でも、絶対に無理はしないと約束してください。これ以上シュウイチさんに何かあったら私・・・。」
先ほどまで笑顔で話していたエミリアの瞳から大粒の涙があふれていた。
今まで俺の前で怒りはすれど泣いたことがなかったエミリアだけに思わず狼狽えてしまう。
だがそこで何もしないのは男じゃない。
自分の妻が自分の事で涙を流しているんだ。
それを慰められるのもまた自分しかいない。
俺は弱弱しい体に鞭を打ち、横で涙を流すエミリアの腰をぎゅっと抱き寄せる。
突然伸びてきた手に一瞬驚くも、エミリアはそのまま上半身を倒し俺の頭を抱きしめる。
む、胸が当たる。
だがそんな事に気を取られている場合じゃない。
俺はエミリアが泣き止むまでその柔らかな髪を優しく撫で続ける。
言葉なんていらない。
今エミリアに必要なのは心細かった二週間を埋めるだけのスキンシップだ。
どれぐらいの時間そうしていただろうか、ゆっくりと体を起こしたエミリアは大きく息を吐くとそのままぷいっと反対を向いてしまった。
「どうしてそっちを向くんですか?」
「だって、絶対に可愛くない顔をしています。」
「どんな顔でもエミリアはエミリアです。今朝そう言ってくれたじゃありませんか。」
「でも、この顔はダメです。」
「ダメじゃありません。」
「ダメったらダメです。顔を洗って来るのでシュウイチさんはそこで待っていてください。」
「大丈夫、動けないのでここで待っています。」
マジで動けないので。
その言葉にふふっと笑い、エミリアは足早に部屋を出て行った。
これで少しぐらいは心の傷を癒せただろうか。
俺の意識が戻るまでの二週間。
エミリアの心にできた傷は俺の想像を超えるものだろう。
エミリアだけじゃない。
シルビア様の心にも大きな穴が開いたままだ。
もしかしたらエミリアよりも深刻なのはそっちかもしれない。
その穴を埋める事が出来るのはただ一人。
俺だけだ。
今日は流石に無理だけど早く歩けるようにならないと・・・。
「そんなこと言っていたらいつまでも歩く事などできません。今日出来ることは明日に持ち込まないのが仕事を滞留させないコツではないでしょうか。」
「ユーリ、いつから見ていたんですか?」
「えっと、お二人が抱きしめ合っている時からです。」
「ニケさんまで。声をかけて・・・っというのは流石に無理ですね。気を使ってもらってありがとうございます。」
「これもリア奥様の心の平穏の為です。」
なんだかんだ言いながらもこの二週間エミリアを支えてくれたのはこの二人だ。
二人にも何かお礼をしないといけないな。
「二人ともいつもありがとうございます。」
「それが私達の仕事ですから。」
「その通りです。ですが、ご主人様がどうしても何かしたいと仰るのであれば私達は喜んでそれをお受けいたします。」
「なんでしたら抱きしめてくださっても構いませんよ。」
「いや、さすがにそれは・・・。」
「私達の心の傷は埋めてくださらないんですか?」
「ユーリ、そこに座りなさい。」
まったく、俺の心の声が読めるというのも考え物だな。
動けないのを良い事に、わざと俺の手が届かない所まで歩いて来て挑発するようにその場に座ってジッと俺を見つめて来る。
よし、その挑発乗ってやろうじゃないか。
俺はゆっくりと上体を起こし、左腕を支えにして足をベッドサイドにもっていく。
普通の状態ならここまで持っていくのに10秒もかからないが、今の俺にはその10倍以上の時間がかかってしまう。
亀の様に遅い動きを二人は手を出さず黙って見守ってくれた。
これは俺の、俺にしかできない戦いだ。
ここで手を出しては何の意味もないことを二人はわかっている。
わかっているからこそ、思わず手が出そうになるのをぐっと耐えているのが申し訳なかった。
だがそれに付き合ってくれ。
渾身の力を込めてベットの端をグッと押して体を持ち上げる。
まるで産まれたての小鹿の様にプルプルと震える脚で何とか立ち上がることに成功した。
だがそこまでだ。
急に持ち上がった事で体のバランスを上手くとることができず、そんまま前につんのめるようにして倒れていく。
が、次の瞬間には二人がしっかりと俺の体を支えていた。
「偉そうに言いましたがここまでのようです。」
「いえ、ご主人様の頑張り確かに見届けました。」
「もぅユーリ様が無茶させるから。」
「こうでもしなければ御主人様は前に進みません。私の仕事にはダンジョンのメンテナンスだけではなく御主人様を支える事も含まれております。ですので、これからも甘やかしませんのでお覚悟ください。」
「お手柔らかにお願いします。」
二人がそっと俺を抱きしめる。
そうだよな、エミリアやシルビア様だけじゃなくてこの二人の心にも傷はついているんだよな。
雇用主としてそれを埋める義務が俺にはある。
あー、ちがう。
家族としてだ。
訂正します。
家族の心の傷は家長が責任を持って修復しなければならない。
それぐらいの覚悟で俺は二人を家族に迎え入れたんだ。
ただのダンジョン妖精と娼婦じゃない。
俺の大切な家族。
みんなに支えられているんだから、たまにはちゃんと恩返ししないと罰が当たるってもんですよ。
「シュウイチさん?」
と、二人に抱きしめられているタイミングでいつものように帰ってくるエミリア。
あ、ここまでがお決まりのパターンでしたね。
すっかり忘れていました。
「あ、エミリアお帰りなさい。」
しかし、ここでうろたえればいつもの俺だ。
ここはどっしりと構えて家長としての余裕を持って対応しよう。
「ただいま戻りました。」
「お帰りなさいませリア奥様、誤解のないようにお話しておきますがこれは御主人様の覚悟を確かめる為で決して他意はございません。」
「イナバ様は私達のためを思って頑張って下さったんです。」
あの、ニケさん。
せっかくユーリが良い感じで誤魔化してくれたのに、ここで話を複雑にする必要は無いんじゃないですかね。
「その頑張りがそうなったわけですね。」
「その通りです。決してやましい気持ちは無かったとここにご報告しておきます。」
「私たちもエミリア様のように抱きしめて欲しかっただなんてそんな事・・・。」
ほらまた!
そういうところですよ!?
「ど、どうしてそれを知っているんですか!外に出たときは誰も居なかったはずなのに・・・。」
「どうしてといわれましても、戻られたときには良い雰囲気でしたのでお邪魔するのは失礼かと思い隠れておりました。」
「泣いた顔なんて決して見てません!」
「シュウイチさんはそのままそこで待っていて下さい、二人ともちょっとお話がありますので横のお部屋に来ていただけますか?」
あ、エミリアの顔が変わった。
般若だ、夜叉だ、いやエミリアだ!
「ニケ様まずいです。」
「私もそう思います。」
「さぁ、二人ともこっちに。」
「この場を切り抜ける方法はただ一つ、御主人様失礼します!」
「ちょっ!?」
聞いて下さい。
二人に支えられていたと思った次の瞬間には、まるで振り子のように両手を引っ張られてエミリアへ体当たりさせられていました。
私は悪くありません。
囮に使われただけなんです。
その証拠にぶつけた本人たちは部屋の外に逃げてしまいました。
信じて下さい。
決して自分から押し倒した時に胸に顔をうずめ、両手で二つのふくらみを揉んだわけじゃないんです。
其のまま動かなかったのはそもそも動けなかったからだけで、至福だったからじゃありません。
信じて下さい。
信じて下さい。
信じて・・・。
「シュウイチさん、あとでゆっくりとお話したい事がありますのでどうぞ『自力で』ベッドに戻っていて下さいね。」
「は、はい分かりました。」
それだけ言うと二人を追いかけてあっという間にエミリアも部屋を出て行ってしまった。
笑っていた。
笑っていたのに何でこんなに寒気がするんだろう。
そうだ、寒いからだ。
大人しくベッドに戻って今あったことは忘れよう。
そうしよう。
そのほうが良いよ、絶対。
この後ユーリたちがどうなったのかは・・・もういいや。
そっとしておこう。
なんだかんだあったけれど、新しい目標は定まったわけだし。
それでいいじゃないか。
いつまでもここにいるわけには行けない。
前に進もう。
たとえわずかな距離でも、前に進めば道ができる。
霧のように前が見えなくても、その道をみんなに支えられながら一歩ずついこう。
そう思いながらも、先程のメルクリア女史の反応を誰にも相談できない自分がいた。
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青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
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