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第八章
思わぬ躓き
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身動きが取れない。
あまりの痛さに脳が追い付いてこない。
いったい何が起きた?
下腹部から全身に広がっていく鈍痛。
床に土下座するようにうずくまり状況を把握する。
メルクリアと話をして村長の家に行こうとしていた。
そのあとシルビアを呼んで来ようと思って・・・。
そうだ、思い出した。
そこで誰かに股間を蹴り上げられたんだ。
脂汗を浮かべながら周りを見渡す。
正面には驚いた顔のメルクリアがいる。
そりゃ驚くよな、いきなり悶えてうずくまってるんだもん。
正面じゃないとすると後ろか?
ゆっくりと体をねじって後ろを見る。
そこには顔を真っ赤にしたティオ君が仁王立ちしていた。
あれ、確かエミリアに連れられてパイを食べているはずじゃ・・・。
顔をよく見ると口の横に食べかすがついている。
食べていたのは間違いない様だ。
こんな時なのに思ったよりも観察できるんだな。
「姉ちゃんをいじめる奴は僕が許さないぞ!」
そういいながら再び俺の股間を狙ってくるティオ君。
もうやめて、そこのライフはもう0よ!
「おやめなさい、誰も貴方のお姉ちゃんを虐めてなんてないわよ。」
「嘘だ!だって姉ちゃんが泣いてる声が聞こえたもん、お前しかいないじゃないか!」
「どうして?」
「だってあいつらも姉ちゃんをいじめてたもん、こいつも一緒だよ!」
いや、一緒にしないでよ。
少しずつ引いてきた痛みに冷静になってくる。
おそらく死んだ前の主人たちがあの子を犯しているのをいじめていると思ったのだろう。
何をしているのか理解していない年でよかった。
もしわかっていたのなら3年待たずに彼らに襲い掛かり返り討ちにあっていたかもしれない。
そうなれば彼女の孤独な戦いが無駄になってしまう。
「どうしたのそんなに慌てて・・・シュウイチさんどうしたんですか!」
「こいつが姉ちゃんをいじめてたんだ!」
「シュウイチさんが?」
「そうだよ!だって姉ちゃん泣いてたもん、あいつらにいじめられても泣かなかったのにお前が悪いんだ!」
再び攻撃しようと身を屈めるティオ君。
まだ痛みが引かず体が思うように動かない。
土下座したままの格好ということは後ろから見ると股間ががら空きだ。
アカン、二度目はアカン。
潰れてしまう。
再び襲い来るであろう痛みに思わず目を閉じる。
だが、いつまでたってもその瞬間はやってこなかった。
恐る恐る顔を上げるとティオ君が固まっていた。
なんだ?
再び正面を見ると、そこには泣いていたはずのシャルちゃんがいた。
ものすごい顔でティオ君をにらんでいる。
泣いたばかりで目が真っ赤だ。
ウサ耳も相まって本当にウサギみたいだな。
「ティオ!あなたいったい何をしたかわかっているの!?」
「だ、だって姉ちゃんがこいつにいじめられていると思って・・・。」
「いじめられてないわよ!命の恩人になんてことをしたの!」
「でもこいつが。」
「こいつだなんて、お姉ちゃんそんな言い方教えてないよ!」
俺の上で繰り広げられる姉弟喧嘩。
もとい、一方的な姉からの叱責。
後ろは見えないがティオ君はたじろいでいるに違いない。
当事者を除きうちの女性陣は傍観をきめ込んでいるようだ。
その証拠に部屋から出てきたシルビア様とニケさんが口を出す感じはない。
それどころかメルクリア女史は必死に笑いをこらえている。
見世物じゃないんだぞ、こちとら股間蹴られて死にそうだったんだ。
男性が生理痛や出産の痛みを知ることができないように、女性がこの痛みを知ることはない。
どちらも痛くて苦しいものだ。
比べちゃいけないけど。
「でもでも、」
「謝りなさい今すぐに!」
仁王立ちのシャルちゃんがティオ君をしかりつける。
そんなに怒らなくてもいいよ、子供がやったことだし。
そう言いたいところだけど今はそんなこと言えるような空気じゃない。
さすが3年間地獄の苦しみに耐えてきただけはあるな。
迫力が違う。
しばしの沈黙が空間を支配する。
全員がティオ君の返事を待っていた。
「・・・やだ。」
「この人がいなかったら私たちあのお化けに殺されていたんだよ、わかってるの?」
「やだったらやだ!お姉ちゃんなんて嫌いだぁぁぁぁ!」
ティオ君の答えは拒絶だった。
俺の横を通り過ぎシャルちゃんの制止を振り切って階段を駆け降りていく。
「ユーリ!」
「お任せを。」
咄嗟の事で名前しか呼べなかったがユーリには意図が伝わったようだ。
一人にするとどこに行くかわからない。
それに比較的平和な森とはいえ魔物がいないわけではない。
せっかく助けたのに森の中で死んでいたなんて目覚めが悪いじゃないか。
その点ユーリならこの森は庭みたいなものだ。
迷子になることはないだろう。
こういう時何も言わずに意思疎通ができるっていうのは便利だな。
よろよろと小鹿のように立ち上がり一息つく。
「大変だったな。」
そんな俺の所にシルビア様とエミリアが駆け寄って来た。
「不意打ちで何もできませんでした。」
「汗がすごいですよ。」
エミリアが布で汗をぬぐってくれる。
暑くないのにこの汗の量。
痛みってすごいな。
「弟が本当に申し訳ありませんでした。」
ふと前を見るとシャルちゃんが深々と頭を下げていた。
ちゃんと大人と話すときの言葉遣いを使い分けれるってすごいよな。
さっきはほら、感情が表に出ちゃってコントロールできなかっただけで。
幼いんだし仕方ないよね。
「大丈夫ですよ。」
「助けていただいたのにあんなことをしてしまって・・・。」
「シュウイチはそんなことで怒りはしないさ。」
「そうですよ、だから心配しないでください。」
「ティオ君はユーリ様がみてくださいますから安心してくださいね。」
みんなが優しくフォローを入れる。
さすがにこんなことで怒ったりはしない。
だって大人だからね!
残念ながら世の中には大人子供というよくわからない生き物もいるので、大人が全員怒らないわけじゃないので注意しましょう。
「私も探しに行きます!」
「駄目よ、貴女にはパイを食べてもらうって約束だったでしょ?弟君のことは彼らに任せて貴女は部屋に戻りなさい。エミリア、この子の分もお願いね?」
「お部屋にもう準備してあります、ティオ君一気に二つも食べちゃったんですよ。」
「セレン殿のパイは格別だからな。」
「でも・・・。」
「いいからいうことを聞きなさい。貴女達の処遇についてはこれから話し合って決めます。夕刻には戻ってくるからそれまでここにいること、わかったわね?」
「はい・・・。」
あの、メルクリアさん。
ここは私の商店なんですけど。
なんで貴女が指揮を・・・。
俺の視線を感じたのかメルクリア女史がジロリと俺を睨む。
はい、すみませんでした。
静かにしてます。
「さぁ時間がないわよ。」
「シルビア準備はできていますか?」
「大丈夫だ。」
「では後は任せます、そろそろ休憩の札を外さないと冒険者が待ってますよ。」
「そうでした。」
利用しようと立ち寄った冒険者はびっくりしただろう。
イレギュラーなことなので許してくれ。
股間はまだ痛むが耐えられないほどじゃない。
シャルちゃんをエミリアとニケさんに任せて俺たちは村へと向かった。
本当は朝からの予定だったけど、仕方ないよな。
歩くこと半刻。
お昼だというのに随分と涼しくなったものだ。
前まであんなに暑かったのに、秋が近いんだなぁ。
森の中を通り過ぎる風が心地いい。
「ここはいつ来ても賑やかね。」
「定期便が運航してからたくさんの人が来てくれるようになりました。」
「冒険者の数も増えているようだし、貴方の首が遠のいて残念だわ。」
「まだまだ足りませんけどね。」
このペースでは魔力が足りず15階層まで拡張することは難しい。
10階層まではすぐに拡張できるが、その先は倍々で必要魔力が上がっていく。
ソシャゲでもそうだが施設の拡張ってなんでこんなにも素材を必要とするんだろう。
それに売り上げに関しても増えたとはいえまだまだ予算未達だ。
金貨は準備できても欲を言えば自分の売り上げで達成したい。
残る目標は宿の誘致か・・・。
「そういえばメルクリア殿はどうしてこちらに?」
「あら、聞いていなかったのね。」
「すみません、この二日は何かと忙しくて。」
「確か酪農を見学しにミジャーノ村に行ったとか?」
「その件なんですが事の発端は貴方ですか?」
「質問を質問で返されるのは好きじゃないんだけど、半分はずれで半分正解よ。」
「半分?」
てっきりこの人が犯人だと思ってたんだけど、まさか本当に監視対象になってる?
「確かにあの方とお話はしたけれど別に酪農がしたいとは一言も言っていないわ。ただ『酪農が盛んな場所』を聞いただけ、それだけでここまで話が大きくなるなんてさすが切れ者よね。」
「メルクリア殿はププト様とは随分と親しいんだな。」
「それに関してはこの前の催しのおかげかしら。ただ仕事が増えすぎてちょっと参ってしまうわ。」
「あぁ、なんとなくわかります。」
あの人と関わるといつも話が大きくなる。
それがお互いの為でもありそして実になるのは間違いないので、なかなか断ることができない。
欲を言えばもう少し余裕を持って話を振って来て欲しいな。
いつも急で困るよ。
「でも、おかげで随分と仕事がしやすくなったわ。それで、どうして来たかだったわね。」
「今日はこの村の測量と検地をしようと思っているのでその相談に来たんですよ。」
「ほぉ、測量と検地か。それはまた何故だ?」
「それに関してはニッカさんと御一緒にご説明させていただきます。」
村長の家は目の前だ。
自分の実家でもあるので慣れた手つきでシルビア様がドアを開ける。
え、ノックしないの?
実家だから?
まぁいいか。
「父上、シルビアが戻りました。シュウイチとメルクリア殿も一緒です。」
「これはこれは皆さまようこそおいで下さいました。シルビアも良く戻ったな。」
あ、今父親の顔に戻った。
やっぱり実の子供が戻ってくるとそうなるよね。
いつもは優しくにこやかな顔だが一瞬凛々しくなる。
俺も父親になると変わるんだろうか。
「お忙しい所申し訳ありません、お時間大丈夫でしょうか。」
「急ぎの仕事もありませんので大丈夫です、どうぞこちらへ今お茶をお出しします。」
「私も手伝おう。」
シルビア様がさっと台所へ向かう。
父と娘普段はあまり会う事は無いけれど、これからはこういう時間が増えるといいなぁ。
「親子で台所に立つなんてうらやましいわね。」
「ご一緒に料理とかは?」
「そんな事ありえないわ。いつも忙しくて一人で食事を取られるか会合に出ている人だから。」
現メルクリア家当主様。
お会いした事は無いが忙しい人だというのは娘を見てもなんとなく分かる。
この親あってこの子ありとはいうけれど、その逆だな。
ちなみに、ここで『じゃあ将来の子供と』なんて言おうものなら俺の首が今すぐ飛んでしまう。
妙齢の女性に向かってこの手の話題はタブーだ。
「お時間あるときにでもお誘いしてみてはどうですか?」
「どうかしら、お互いに料理が得意っていうワケじゃないから。」
「お待たせ致しました。」
「ありがとうございます。」
相変らずここの茶葉は良い香りがする。
良い葉を使っているだろう。
「それで本日はどのようなご用でしょうか。」
「今日お邪魔致しましたのは、村づくりをするにあたり今後何を念頭において開発していくのかという方向性を決める為です。詳しくは彼からお聞き下さい。」
え、俺?
自分でするんじゃないの?
上司が丸投げとかそれってどうなんでしょうか!
「この夏から定期便の運行も始まり、また御協力いただきました催しの成功もあって現在多くの人がこの村に来るようになっています。しかしながらその多くは素通り若しくは労働のみで帰られるばかりで、来る人の割には収入が伴っていない状況です。そこで、村に来る人が滞在若しくは消費を出来る環境を作っていかなければならないと思っています。」
酪農の方も重要だがまずは村の基礎をどうにかしなければならない。
今後どうして行きたいか。
そのビジョンがお互いにずれてしまっては良い開発になることは無い。
目先の利益にとらわれず長い目で村を見守っていけるのか。
それが一番重要だ。
「それに合わせて当初より予定していた宿の建設を行なうにあたり、村の測量ならびに検地を行なおうと考えています。」
「測量ですか。」
「はい。現在は南と西の森を切り開いて拡張を続けていますが、今後は来年の作付け増加を見越して北部の開発をしていく予定となっています。泉からの灌漑と平行して拡張を続けていくのですが、それにあたり具体的な作付け面積を把握しておくべきではないでしょうか。」
「村の地図を作ると考えていただければわかりやすいでしょう。」
「確かに無秩序に開発を続けるよりも設計図があるほうがわかりやすいが、それは今でなければならないのか?」
確かにシルビア様の言い分ももっともだ。
夏が終わればいよいよ収穫の時期が始まる。
また冬に向けて備蓄の準備も行なわなければならないし、収穫後も土地が痩せないように手を加えなければならない。
やらなければならないことが盛りだくさんの上に開発も行なわなければならない。
他所から労働力が来るとはいえ、畑関係は自分達で行なう必要がある。
そう考えると畑が大きくなる割りに使える労働力は少ないままだ。
そこに測量を行なうとなってまた人手がなくなるのは困るということだな。
「今やらなければならない理由は二つ、無策に開発すれば後々で収拾が付かなくなってしまうということ。もう一つは、今調べておけば作付け範囲に合わせて収穫量を把握する事ができるからです。もちろん多少の誤差はありますが、どの範囲を作付けすればどれだけの収穫を得ることが出来る、という目安を作ることが出来ます。これが出来れば作付けの段階で必要経費や税金を除いた手元に残るお金を計算する事ができるでしょう。」
「いかがでしょう、余裕のあるこの時期に終わらせておく方が良いとこちらでは判断しています。」
俺の説明をメルクリア女史が後押しをする。
決して悪い話ではないはずだ。
残るお金がわかれば初期投資にお金をかけることもできる。
もちろん不作で予定よりも少ない可能性だってあるが、そこもふまえて今後データを取っておけば不作の時と豊作時の差もわかるし事前に備える事もできるだろう。
シルビア様はなるほどというような顔をしているが、ニッカさんは難しい顔をしたままだ。
無言のまま時間が流れる事しばし。
ついに村長が重たい口を開いた。
「お話はわかりました。ですが測量の件は今回は見送らせてもらいたいと思います。」
ここに来てまさかの見送り発言。
いつもオッケーを貰ってきただけにまさかここで見送られるとは思っていなかった。
今後の開発を行なっていく上で重要になる測量。
はてさてどうなる事やら。
不穏な空気のまま打ち合わせは続いていく。
あまりの痛さに脳が追い付いてこない。
いったい何が起きた?
下腹部から全身に広がっていく鈍痛。
床に土下座するようにうずくまり状況を把握する。
メルクリアと話をして村長の家に行こうとしていた。
そのあとシルビアを呼んで来ようと思って・・・。
そうだ、思い出した。
そこで誰かに股間を蹴り上げられたんだ。
脂汗を浮かべながら周りを見渡す。
正面には驚いた顔のメルクリアがいる。
そりゃ驚くよな、いきなり悶えてうずくまってるんだもん。
正面じゃないとすると後ろか?
ゆっくりと体をねじって後ろを見る。
そこには顔を真っ赤にしたティオ君が仁王立ちしていた。
あれ、確かエミリアに連れられてパイを食べているはずじゃ・・・。
顔をよく見ると口の横に食べかすがついている。
食べていたのは間違いない様だ。
こんな時なのに思ったよりも観察できるんだな。
「姉ちゃんをいじめる奴は僕が許さないぞ!」
そういいながら再び俺の股間を狙ってくるティオ君。
もうやめて、そこのライフはもう0よ!
「おやめなさい、誰も貴方のお姉ちゃんを虐めてなんてないわよ。」
「嘘だ!だって姉ちゃんが泣いてる声が聞こえたもん、お前しかいないじゃないか!」
「どうして?」
「だってあいつらも姉ちゃんをいじめてたもん、こいつも一緒だよ!」
いや、一緒にしないでよ。
少しずつ引いてきた痛みに冷静になってくる。
おそらく死んだ前の主人たちがあの子を犯しているのをいじめていると思ったのだろう。
何をしているのか理解していない年でよかった。
もしわかっていたのなら3年待たずに彼らに襲い掛かり返り討ちにあっていたかもしれない。
そうなれば彼女の孤独な戦いが無駄になってしまう。
「どうしたのそんなに慌てて・・・シュウイチさんどうしたんですか!」
「こいつが姉ちゃんをいじめてたんだ!」
「シュウイチさんが?」
「そうだよ!だって姉ちゃん泣いてたもん、あいつらにいじめられても泣かなかったのにお前が悪いんだ!」
再び攻撃しようと身を屈めるティオ君。
まだ痛みが引かず体が思うように動かない。
土下座したままの格好ということは後ろから見ると股間ががら空きだ。
アカン、二度目はアカン。
潰れてしまう。
再び襲い来るであろう痛みに思わず目を閉じる。
だが、いつまでたってもその瞬間はやってこなかった。
恐る恐る顔を上げるとティオ君が固まっていた。
なんだ?
再び正面を見ると、そこには泣いていたはずのシャルちゃんがいた。
ものすごい顔でティオ君をにらんでいる。
泣いたばかりで目が真っ赤だ。
ウサ耳も相まって本当にウサギみたいだな。
「ティオ!あなたいったい何をしたかわかっているの!?」
「だ、だって姉ちゃんがこいつにいじめられていると思って・・・。」
「いじめられてないわよ!命の恩人になんてことをしたの!」
「でもこいつが。」
「こいつだなんて、お姉ちゃんそんな言い方教えてないよ!」
俺の上で繰り広げられる姉弟喧嘩。
もとい、一方的な姉からの叱責。
後ろは見えないがティオ君はたじろいでいるに違いない。
当事者を除きうちの女性陣は傍観をきめ込んでいるようだ。
その証拠に部屋から出てきたシルビア様とニケさんが口を出す感じはない。
それどころかメルクリア女史は必死に笑いをこらえている。
見世物じゃないんだぞ、こちとら股間蹴られて死にそうだったんだ。
男性が生理痛や出産の痛みを知ることができないように、女性がこの痛みを知ることはない。
どちらも痛くて苦しいものだ。
比べちゃいけないけど。
「でもでも、」
「謝りなさい今すぐに!」
仁王立ちのシャルちゃんがティオ君をしかりつける。
そんなに怒らなくてもいいよ、子供がやったことだし。
そう言いたいところだけど今はそんなこと言えるような空気じゃない。
さすが3年間地獄の苦しみに耐えてきただけはあるな。
迫力が違う。
しばしの沈黙が空間を支配する。
全員がティオ君の返事を待っていた。
「・・・やだ。」
「この人がいなかったら私たちあのお化けに殺されていたんだよ、わかってるの?」
「やだったらやだ!お姉ちゃんなんて嫌いだぁぁぁぁ!」
ティオ君の答えは拒絶だった。
俺の横を通り過ぎシャルちゃんの制止を振り切って階段を駆け降りていく。
「ユーリ!」
「お任せを。」
咄嗟の事で名前しか呼べなかったがユーリには意図が伝わったようだ。
一人にするとどこに行くかわからない。
それに比較的平和な森とはいえ魔物がいないわけではない。
せっかく助けたのに森の中で死んでいたなんて目覚めが悪いじゃないか。
その点ユーリならこの森は庭みたいなものだ。
迷子になることはないだろう。
こういう時何も言わずに意思疎通ができるっていうのは便利だな。
よろよろと小鹿のように立ち上がり一息つく。
「大変だったな。」
そんな俺の所にシルビア様とエミリアが駆け寄って来た。
「不意打ちで何もできませんでした。」
「汗がすごいですよ。」
エミリアが布で汗をぬぐってくれる。
暑くないのにこの汗の量。
痛みってすごいな。
「弟が本当に申し訳ありませんでした。」
ふと前を見るとシャルちゃんが深々と頭を下げていた。
ちゃんと大人と話すときの言葉遣いを使い分けれるってすごいよな。
さっきはほら、感情が表に出ちゃってコントロールできなかっただけで。
幼いんだし仕方ないよね。
「大丈夫ですよ。」
「助けていただいたのにあんなことをしてしまって・・・。」
「シュウイチはそんなことで怒りはしないさ。」
「そうですよ、だから心配しないでください。」
「ティオ君はユーリ様がみてくださいますから安心してくださいね。」
みんなが優しくフォローを入れる。
さすがにこんなことで怒ったりはしない。
だって大人だからね!
残念ながら世の中には大人子供というよくわからない生き物もいるので、大人が全員怒らないわけじゃないので注意しましょう。
「私も探しに行きます!」
「駄目よ、貴女にはパイを食べてもらうって約束だったでしょ?弟君のことは彼らに任せて貴女は部屋に戻りなさい。エミリア、この子の分もお願いね?」
「お部屋にもう準備してあります、ティオ君一気に二つも食べちゃったんですよ。」
「セレン殿のパイは格別だからな。」
「でも・・・。」
「いいからいうことを聞きなさい。貴女達の処遇についてはこれから話し合って決めます。夕刻には戻ってくるからそれまでここにいること、わかったわね?」
「はい・・・。」
あの、メルクリアさん。
ここは私の商店なんですけど。
なんで貴女が指揮を・・・。
俺の視線を感じたのかメルクリア女史がジロリと俺を睨む。
はい、すみませんでした。
静かにしてます。
「さぁ時間がないわよ。」
「シルビア準備はできていますか?」
「大丈夫だ。」
「では後は任せます、そろそろ休憩の札を外さないと冒険者が待ってますよ。」
「そうでした。」
利用しようと立ち寄った冒険者はびっくりしただろう。
イレギュラーなことなので許してくれ。
股間はまだ痛むが耐えられないほどじゃない。
シャルちゃんをエミリアとニケさんに任せて俺たちは村へと向かった。
本当は朝からの予定だったけど、仕方ないよな。
歩くこと半刻。
お昼だというのに随分と涼しくなったものだ。
前まであんなに暑かったのに、秋が近いんだなぁ。
森の中を通り過ぎる風が心地いい。
「ここはいつ来ても賑やかね。」
「定期便が運航してからたくさんの人が来てくれるようになりました。」
「冒険者の数も増えているようだし、貴方の首が遠のいて残念だわ。」
「まだまだ足りませんけどね。」
このペースでは魔力が足りず15階層まで拡張することは難しい。
10階層まではすぐに拡張できるが、その先は倍々で必要魔力が上がっていく。
ソシャゲでもそうだが施設の拡張ってなんでこんなにも素材を必要とするんだろう。
それに売り上げに関しても増えたとはいえまだまだ予算未達だ。
金貨は準備できても欲を言えば自分の売り上げで達成したい。
残る目標は宿の誘致か・・・。
「そういえばメルクリア殿はどうしてこちらに?」
「あら、聞いていなかったのね。」
「すみません、この二日は何かと忙しくて。」
「確か酪農を見学しにミジャーノ村に行ったとか?」
「その件なんですが事の発端は貴方ですか?」
「質問を質問で返されるのは好きじゃないんだけど、半分はずれで半分正解よ。」
「半分?」
てっきりこの人が犯人だと思ってたんだけど、まさか本当に監視対象になってる?
「確かにあの方とお話はしたけれど別に酪農がしたいとは一言も言っていないわ。ただ『酪農が盛んな場所』を聞いただけ、それだけでここまで話が大きくなるなんてさすが切れ者よね。」
「メルクリア殿はププト様とは随分と親しいんだな。」
「それに関してはこの前の催しのおかげかしら。ただ仕事が増えすぎてちょっと参ってしまうわ。」
「あぁ、なんとなくわかります。」
あの人と関わるといつも話が大きくなる。
それがお互いの為でもありそして実になるのは間違いないので、なかなか断ることができない。
欲を言えばもう少し余裕を持って話を振って来て欲しいな。
いつも急で困るよ。
「でも、おかげで随分と仕事がしやすくなったわ。それで、どうして来たかだったわね。」
「今日はこの村の測量と検地をしようと思っているのでその相談に来たんですよ。」
「ほぉ、測量と検地か。それはまた何故だ?」
「それに関してはニッカさんと御一緒にご説明させていただきます。」
村長の家は目の前だ。
自分の実家でもあるので慣れた手つきでシルビア様がドアを開ける。
え、ノックしないの?
実家だから?
まぁいいか。
「父上、シルビアが戻りました。シュウイチとメルクリア殿も一緒です。」
「これはこれは皆さまようこそおいで下さいました。シルビアも良く戻ったな。」
あ、今父親の顔に戻った。
やっぱり実の子供が戻ってくるとそうなるよね。
いつもは優しくにこやかな顔だが一瞬凛々しくなる。
俺も父親になると変わるんだろうか。
「お忙しい所申し訳ありません、お時間大丈夫でしょうか。」
「急ぎの仕事もありませんので大丈夫です、どうぞこちらへ今お茶をお出しします。」
「私も手伝おう。」
シルビア様がさっと台所へ向かう。
父と娘普段はあまり会う事は無いけれど、これからはこういう時間が増えるといいなぁ。
「親子で台所に立つなんてうらやましいわね。」
「ご一緒に料理とかは?」
「そんな事ありえないわ。いつも忙しくて一人で食事を取られるか会合に出ている人だから。」
現メルクリア家当主様。
お会いした事は無いが忙しい人だというのは娘を見てもなんとなく分かる。
この親あってこの子ありとはいうけれど、その逆だな。
ちなみに、ここで『じゃあ将来の子供と』なんて言おうものなら俺の首が今すぐ飛んでしまう。
妙齢の女性に向かってこの手の話題はタブーだ。
「お時間あるときにでもお誘いしてみてはどうですか?」
「どうかしら、お互いに料理が得意っていうワケじゃないから。」
「お待たせ致しました。」
「ありがとうございます。」
相変らずここの茶葉は良い香りがする。
良い葉を使っているだろう。
「それで本日はどのようなご用でしょうか。」
「今日お邪魔致しましたのは、村づくりをするにあたり今後何を念頭において開発していくのかという方向性を決める為です。詳しくは彼からお聞き下さい。」
え、俺?
自分でするんじゃないの?
上司が丸投げとかそれってどうなんでしょうか!
「この夏から定期便の運行も始まり、また御協力いただきました催しの成功もあって現在多くの人がこの村に来るようになっています。しかしながらその多くは素通り若しくは労働のみで帰られるばかりで、来る人の割には収入が伴っていない状況です。そこで、村に来る人が滞在若しくは消費を出来る環境を作っていかなければならないと思っています。」
酪農の方も重要だがまずは村の基礎をどうにかしなければならない。
今後どうして行きたいか。
そのビジョンがお互いにずれてしまっては良い開発になることは無い。
目先の利益にとらわれず長い目で村を見守っていけるのか。
それが一番重要だ。
「それに合わせて当初より予定していた宿の建設を行なうにあたり、村の測量ならびに検地を行なおうと考えています。」
「測量ですか。」
「はい。現在は南と西の森を切り開いて拡張を続けていますが、今後は来年の作付け増加を見越して北部の開発をしていく予定となっています。泉からの灌漑と平行して拡張を続けていくのですが、それにあたり具体的な作付け面積を把握しておくべきではないでしょうか。」
「村の地図を作ると考えていただければわかりやすいでしょう。」
「確かに無秩序に開発を続けるよりも設計図があるほうがわかりやすいが、それは今でなければならないのか?」
確かにシルビア様の言い分ももっともだ。
夏が終わればいよいよ収穫の時期が始まる。
また冬に向けて備蓄の準備も行なわなければならないし、収穫後も土地が痩せないように手を加えなければならない。
やらなければならないことが盛りだくさんの上に開発も行なわなければならない。
他所から労働力が来るとはいえ、畑関係は自分達で行なう必要がある。
そう考えると畑が大きくなる割りに使える労働力は少ないままだ。
そこに測量を行なうとなってまた人手がなくなるのは困るということだな。
「今やらなければならない理由は二つ、無策に開発すれば後々で収拾が付かなくなってしまうということ。もう一つは、今調べておけば作付け範囲に合わせて収穫量を把握する事ができるからです。もちろん多少の誤差はありますが、どの範囲を作付けすればどれだけの収穫を得ることが出来る、という目安を作ることが出来ます。これが出来れば作付けの段階で必要経費や税金を除いた手元に残るお金を計算する事ができるでしょう。」
「いかがでしょう、余裕のあるこの時期に終わらせておく方が良いとこちらでは判断しています。」
俺の説明をメルクリア女史が後押しをする。
決して悪い話ではないはずだ。
残るお金がわかれば初期投資にお金をかけることもできる。
もちろん不作で予定よりも少ない可能性だってあるが、そこもふまえて今後データを取っておけば不作の時と豊作時の差もわかるし事前に備える事もできるだろう。
シルビア様はなるほどというような顔をしているが、ニッカさんは難しい顔をしたままだ。
無言のまま時間が流れる事しばし。
ついに村長が重たい口を開いた。
「お話はわかりました。ですが測量の件は今回は見送らせてもらいたいと思います。」
ここに来てまさかの見送り発言。
いつもオッケーを貰ってきただけにまさかここで見送られるとは思っていなかった。
今後の開発を行なっていく上で重要になる測量。
はてさてどうなる事やら。
不穏な空気のまま打ち合わせは続いていく。
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【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
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お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
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作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
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