182 / 519
第七章
確信へ近づく為に
しおりを挟む
必要な情報は仕入れることはできた。
少々強引な方法ではあったがシルビア様が言うように犯罪は犯していない。
決して脅迫とかじゃないので安心してほしい。
ちょっと調べたいことがあるので人を貸してほしいとお願いしただけだ。
本当は書類だけ見せてもらえれば十分なのだが、生憎俺には文字が読めない。
と、いうことで関係者の方にお願いして読んでいただくというスタイルを取ってみた。
これなら体裁は猫目館の関係者が書類を読んでいる所にたまたま俺が出くわしたようにできる。
いやぁ世の中何とかなるものだ。
HAHAHAHA。
少々現支配人の顔が引きつっていたように見えるが気のせいだろう。
後はエミリア達と合流してしまえば問題なしっと。
おや、向こうから何か声が聞こえるぞ。
猫目館を出て裏路地を進み、集合場所であるジルダ氏の自宅へと向かっていた時だった。
どこかで聞いたことのある声だ。
はて、なんだろう。
「ちょっと、まだ見つからへんの?」
「申し訳ありません、人員を割いてはおりますが有力な情報は上がっておりません。」
「こないちっぽけな街で娘っ子一人見つけられないなんて、おたくらちょっと府抜けてるんとちゃいます?」
「そ、そんなことはございません!」
「ウチは別にかまへんねんで?ど~しても書類室で書類破棄の仕事をしたいっていうんやったら休息日が明けたらそこに移ってもらっても。」
「あそこだけは勘弁してください!」
「ホンならさっさと探してウチの前にあの狐連れて来んかい!」
「し、失礼します!」
このしゃべり方。
間違いない、あの兄妹だ。
声の感じからすると妹の方だな。
えっと、マッカの方?
ジルダ氏と怪しいやり取りをしていた張本人がこんなところにいるなんて。
しかもご丁寧にトリシャさんを探している現場を目撃できるとは、これはついてるな。
マッカはトリシャさんを探している。
そしてそれを部下に指示して探させている。
トリシャさんを探している人間は、トリシャさんに俺を尾行させた人間と繋がっている。
つまり俺を尾行させた人間は商業ギルドの人間という方程式も成り立つ。
だが、最初の人間と最後の人間がつながっているのならばどうして最初にトリシャさんに依頼した時点で捕まえなかったのか。
もしかしてトリシャさんに依頼した人間は商業ギルドの人間ではあるがマッカの配下ではないとか。
となると、俺を締め出そうとしているのはマッカではない?
となれば兄のデンの方なんだけど・・・。
あの二人が別行動をしているという事にもなるわけで。
うーん、わからん。
もし兄妹が別行動でお互いにやっていることを共有していないのであれば、俺の集めた情報はマッカに使えてもエミリア達にお願いしている情報は使えないことになる。
その逆もしかりだ。
兄妹同時に潰しにかかるのは無理か。
何だかややこしいなぁ。
とりあえず戻ってみんなに相談できれば・・・。
「おい、お前何してる!」
ヤバッ。
考え事をし過ぎたせいで後ろから来ていた人間の気配に気づかなかった。
くそ、どうすればいい。
「すみません少し迷子になってしまって。」
「怪しい奴だちょっとこい!」
来いって言われてもどこに行くっていうんだよ。
「何や騒がしいなぁ!」
ってこのタイミングでお前までくるのかよ。
つまりは俺を後ろから捕まえようとしている奴は商業ギルドの関係者ってことになるじゃないか。
万事休すか?
ついさっきコッペンに何をするかわからないぞって言われたところなのに。
このまま拉致でもされたら抵抗できないぞ。
せめて誰か一緒だったら・・・。
下手に逃げれば怪しまれるしこのまま捕まってもまずい。
どうする。
どうすればいい。
「おたくさん、誰かと思ったらクソ商店の店主ですやん。」
「マッカ様お知り合いですか?」
「私を敵に回した馬鹿な店主がいったいこんなところで何をしてはりますのん。」
何をしているのって、お前を探ってたなんて言えるわけもなし。
かといってやり返そうとしているとも言えないして。
どうしよう。
「これは商業ギルドのマッカ様、妻たちを探していましたら道に迷ってしまいまして丁度いいところでお会いできました。」
「道に迷う?あぁ、あんな辺鄙な所で仕事をしとったら田舎もんにはこの街は広すぎますわなぁ。」
「お恥ずかしいながらその通り、物珍しさに歩いておりましたらこの通りです。」
「残念ながらアンタを連れていくほど良い関係ちゃうからね、せいぜい迷子になっとき。」
おや?
もしかして俺を追い出そうとしていることを知らない?
でもトリシャさんを探している人間は俺を追い出そうとしてたっていうし・・・。
もしかして商業ギルド関係者の中でリレーションが取れてないとか?
やってることは商業ギルドをとおしてやってるけど、仲間が何をしているかまでは知らない。
もしくは、上司であるこの兄妹に逐一情報を流していない。
だからこの妹は俺を探しているという事を知らないでいる。
ってこと?
それってあまりにもご都合過ぎない?
や、今はその方がありがたい。
ご都合主義最高!
「幸い城壁は見えますのでそちらを目指して通りへ出ようと思います。お恥ずかしい所をお見せしました。」
「田舎もんはさっさと家に帰って奥さんの乳でも吸わせてもらいはったらどうですか?アッハッハ。」
むしろ吸わせてもらえるなら大歓迎なんですが・・・。
「それでは失礼します。」
とりあえず今はこの場から離れるほうが最優先だ。
下手に刺激する必要はない。
攻撃手段がそろってからボコボコにしてやればいい。
敵前逃亡最高です。
ペコペコと頭を下げながら包囲を抜け、できるだけ遠くへ行こう。
このままトリシャさん達の待つところへ戻るわけにはいかない。
遠回りをしてそれこそ尾行されていないことを確認しながら・・・。
「ちょっと待ち。」
お願いだから早く解放して!
笑顔を絶やさぬようにゆっくりとマッカの方を振り返る。
鋭い目つきで俺の方を睨んでいた。
「いかがされましたか?」
「あんた・・・。」
あんた・・・逃げれるとおもったら大間違いやで、とか?
あんた・・・土下座してこの前の件謝らんかい!とか?
あんた・・・五体満足でいられると思うなよ!とか?
全部勘弁してください。
「あんた・・・白狐人ってしらん?」
「白狐人ですか・・・。」
ここでまさかのトリシャさん探してるパターンですか。
いくら俺が狙われている身とはいえ彼女を犠牲にして逃げるわけにはいかないし。
でもこのまま捕まれば開放することもできないわけで。
どうする~アイ〇ル~
「いや、ええわ。異世界から来たばっかりのアンタが知ってるわけないわな。」
「申し訳ありませんお力になれなくて。」
「はじめから頼りになんてしとらんし、さっさとどっか行き。」
「失礼します。」
敵前逃亡再び!
興味が失せたようにため息をつくマッカを背にしてできるだけ急いでその場を離れる。
後ろから部下へのきつい罵倒が聞こえるが、今は同情している暇もない。
とりあえず急いで逃げなければ・・・。
シナリオ途中で強制ラスボス登場イベントってよくあるけど、実際に経験すると勘弁してほしいってなるな。
大抵負けイベントだしさ。
やっぱりボスとやりあうなら装備マシマシで俺TUEE!が一番だよね。
あ、もちろん縛りプレイも好きですよ?
SM的な奴じゃなくてね。
マッカから逃げるようにその場を離れ、後ろを確認しながら路地裏をジグザグに進む。
わざと止まってみたり、隠れてみたりするも後ろから誰かが来る気配はない。
そのまま一度大通りへ出て、再び裏通りへと入り同じような方法を使いながらみんなの待つ家へ向かう。
到着したのは太陽が城壁の向こうに沈んでしまう頃だった。
家からは薄明かりが見える。
えっと、それバレない?
「ただいま戻りました。」
最後にもう一度周囲を確認して建物の中に入る。
手探りで裏口から進むと中央の部屋にみんな集まっていた。
「シュウイチさん!」
「シュウイチ無事だったか心配したぞ。」
「すみません情報収集に手間取りました、それと厄介な人間に見つかってしまって。」
「厄介な人間ですか?」
「えぇ、今回の騒動の当事者と思われる兄妹の妹の方と遭遇しました。」
「大丈夫だったんですか?」
「とりあえずは無事に戻ってこれました、尾行はなさそうですのでご心配なく。」
全員が俺の顔を見るなりホッとしたような顔をする。
「あまりにも御主人様の帰りが遅いので探しに行こうかと思っておりました。」
「本当は早く帰るつもりだったんですけどね、遠回りしないと帰れない状況だったモノですから。」
「尾行を巻くためか?」
「トリシャさんを探しているのはやはり彼女で間違いないようです。理由に関してもコッペンより情報を仕入れてきました。」
「商業ギルドがいったい何のために彼女を・・・。」
「恐らくはトリシャさんの件については彼女個人の問題のようです。その証拠にギルド関係者がトリシャさんと接触していましたがそちらはトリシャさんについて何も反応していませんでしたし。」
「確かにその通りです。ギルド全体で探しているのであればあの場で拘束されているはずです。」
仮にさらわれたとしてもウェリス達だけではどうすることもできなかっただろう。
あの時はトリシャさんが捜索されていると思っていなかった。
思っていなかったとはいえ、敵に差し出すような格好になったのは事実だ。
それを考えると非常に怖いことをしてしまった。
終わり良ければ全てよしというけれど、リスクが大きすぎる。
「トリシャさん、失礼ながら貴女の事について調べさせていただきました。ジルダさんとの関係や、追われていることについても大方予想がついています。しかしこれはあくまでも予想です、確信を得る為に質問させてもらいたいのですがいいですか?」
「それを聞いて貴方はどうするの?他の人みたいに私を売り払うつもりなんでしょ?」
「仮にこれを知ったところで私には貴女を売ることはできません。何故なら、ジルダさんが死去したとしても所有者は変わらないからです。」
「どうして!?ご主人様が死んだら奴隷は解放されるんでしょ!?」
「所有した状態で死去したのであればそうなります。ですが、ジルダ氏は生前かなりの借金を背負っており、その借金を返済する為に多くの債権者と生前契約を交わしていました。自分の死後所有する奴隷を譲渡するというものです。」
借金の肩代わりに奴隷を手放す。
トリシャさんが話していた他にいた奴隷というのはこうやって売られていったのだ。
「他の奴隷の方々の譲渡先に関しても調べはついています。転売された形跡はなく今の所譲渡先で暮らしている事だけはわかりました。この国では奴隷への虐待は禁止されておりますのでおそらくは無事でいると思われます。」
「無事でいたって結局は奴隷のままで自由でも何でもない・・・。」
「その通りです。解放されるかどうかは所有者の自由ですが債権の代わりとして譲渡されたのであれば難しいでしょう。」
「それで、私は誰に譲渡されたの?そいつが死ねば私は自由になれるんでしょ?」
確かに主人が死ねば奴隷は自由になる。
だが普通は死ぬ前に今回の様に譲渡先が決まってしまったり、家族に相続されてしまうので自由になれる可能性など皆無だ。
よほど急な死去かつ相続人がいない場合でないと解放されることはない。
ジルダ氏はまさにこの条件に合致しているのだが、残念なことに生前に譲渡先が決まっているパターンだった。
では、トリシャさんはどうなるのか。
「それがトリシャさんを追っている商業ギルドのマッカさんなんですね。」
「そう考えるのが筋だろうな、そうでなければ血眼になって探す理由がわからん。」
「そのマッカという奴が死ねば私は自由になれるの?」
「病死などでない限り奴隷による主人の殺害はいかなる理由でも死罪だ。自由になることはない。」
「じゃあ一生逃げ回って見せる、私はもう誰の物にもならないんだから!」
トリシャさんの悲痛な叫びが部屋中に響き渡った
俺達は自由だ。
当たり前の自由を謳歌している。
だが、トリシャさんやニケさんの様にその当たり前の自由を謳歌ができない人もいる。
ウェリスに関しては自己責任だが、二人には何の責任もない。
にもかかわらず奴隷という身分に落ちてしまった。
その悲痛な叫びは持っている者にきつく突き刺さってくる。
どうにかしたい。
どうにかしたいが、そのためにはあまりにもハードルが多い。
誰かの物を正当な理由なく奪う事が出来ないのはどの世界でも同じなのだ。
そう、正当な理由がなければ。
「トリシャさんの所有者ですが、確かに現在は商業ギルドのマッカ氏となっています。しかしながらトリシャさんの譲渡に関しては他の方と大きな違いがありました。」
「大きな違い、ですか?」
「ニケさん、奴隷の譲渡には所有者の許可が必要なんですよね。」
「はい。所有者が承諾しない限りは他人が勝手に奴隷を移動できないようになっています。これは移動先で奴隷が不利益を得ないよう所有者が移譲先を厳選する義務を負っているからです。」
奴隷を虐待してはならない。
この法は奴隷本人を守るためのものである。
もし移譲先の環境が劣悪であれば、奴隷の虐待されるリスクは高くなってしまう。
なのでそのような環境で奴隷を生活させないために所有者には相手を厳選する義務が生じるのだ。
もちろんそれを破れば罰則がある。
奴隷を売買するにはいくつものハードルを越えなければならないようになっている。
それができない相手はそもそも所有してはならない。
もちろん、売られた方が待遇が良くなるのであれば構わないわけだが。
「トリシャさんの元所有者であるジルダさんは、何故かトリシャさんだけは生前譲渡を行っておりませんでした。現在マッカ氏に所有権が移っているのは債権回収の為となっております。」
「それは妙な話だな。他に債権者はいなかったのか?」
「それに関しても調べを行いました。他に三人の債権者がいたようですが辞退もしくはマッカ氏より別の奴隷を譲渡されております。」
「他の三人に辞退させ、自分だけが回収できるよう仕向けたように聞こえますが。」
「ユーリの言う通りだとおもいます。ですが、それに関しては調べる時間がありませんでした。」
もし仮にユーリの言う通りであれば、トリシャさんの所有権の移動はかなりグレーな感じがしてくる。
「ひとつ質問なんだが、債権回収というのはどのように行われるのだ?」
「まず最初に現物資産が差し押さえられます。そして次に不動産、手形、権利書、最後に奴隷となっていますね。」
さすがエミリア頼りになります。
「つまり借金がなければ即解放、借金があったとしても今の順番で清算できれば所有者が死亡した場合解放されるわけですね。」
なるほど合理的だ。
「ならばマッカ殿を含めた4人の債権者もその順番で債権分の資産が振り分けられるわけだな。」
「そうなりますね。」
「御主人様、奴隷が最後なのは何故でしょう?」
「奴隷は所有者の死後解放される権利を持っていますので、順番が最後なんです。」
「ならばトリシャ殿の所有者が移譲したのは別の資産では賄えなかったという事か?」
そう、そこなんですよ。
今ここに居るこの家も古いが立派な資産だ。
それも含めて吐き出すだけ吐き出して足りなかったから奴隷を手放すことになった。
なら、もし仮に資産はあるのに奴隷を譲渡したとなったら。
おかしいよねぇ。
「ジルダ氏の負債総額についてはまだ調べがついていません。正確に言えば調べようがなかったという感じです。」
「確かに亡くなった方の負債は清算されていますので調べ直すのは難しいと思います。」
「なによりジルダ氏が他の奴隷は生前譲渡しておきながらトリシャさんだけしなかった理由がわかりません。絶対に何か理由があったはずなんです。それについてはトリシャさんが一番ご存知かとおもうのですが・・・。」
「私何も知らないよ。」
聞きたくても答えてくれないこの感じ。
うーん。
謎ばっかり増えて答えが見えない。
長いトンネルを明かりもなしに歩いている感じだ。
さてどうするべきか。
「あの、とりあえずご飯を食べに行きませんか?時間的にそろそろウェリスさんたちを迎えに行かなければ間に合わないと思います。」
話が煮詰まった瞬間にナイスタイミングなニケさんの提案。
「そう言えばそうだったな。」
「私としたことがすっかり忘れておりました!急ぎセレン様をお迎えに行ってまいります。」
何はともあれ腹が減っては戦はできぬってね。
「ではユーリとニケさんでウェリス達を呼んできてください。私達はトリシャさんと一緒に先に現地へ向かっておきます。」
「私もどこかへ行くの?」
キョトンとした顔で俺を見つめるトリシャさん。
「美味しいものはお好きですか?」
「うん!」
「難しい話ばかりもなんですからまずはお腹いっぱいになりましょう。話はそれからでも大丈夫です。」
「でも私お金なんてないよ。」
「そこはシュウイチに任せればいい。」
「そうです、誘ったのはシュウイチさんですから。」
そこはもうお任せください。
給料日明けで懐は潤ってますよ!
「じゃあ、行きます。」
「お任せください。」
「しかし現地まではどうする、トリシャ殿を探している連中がいるはずだが。」
「それに関してはご心配なく。猫目館で衣装をお借りしておりますので。」
「わ、私はもうあんな服着ませんよ!?」
「エミリアはこのままで大丈夫です。もちろん、着てもらえるのならうれしいですが。」
「シュウイチさんが着て欲しいというのなら・・・。」
マジですか。
着て欲しいって言ったらあんな服やそんな服まで着てくれるの?
もっと借りてくればよかった!
「シュウイチ話がずれているぞ。」
「すみません。」
「それにだ、シュウイチが着て欲しいというのならば私が着るのも吝かではない。」
おっと、まさかのシルビア様も参戦ですか?
美人奥様二人のコスプレ合戦だなんて、ご飯何杯でもお代わりできますよ!
「と、とりあえずその件は保留ということで。」
俺は猫目館で預かった衣装をトリシャさんに手渡す。
「こんな綺麗な服着たこと無い・・・。」
「これは考えたな。」
「確かにこれだと逆にわかりませんね。」
奥様二人の反応も中々よろしいようで。
え、どんな衣装かって?
一つ言えるのは、女性は化けれるということ。
綺麗は作れるんです。
女性って怖い・・・。
「では着替えが終わり次第行きましょうか。」
腹が減っては何とやら。
考えないといけない事はたくさんあるけれど、これからの時間だけはせめて現実を忘れて楽しんでくれますように。
少々強引な方法ではあったがシルビア様が言うように犯罪は犯していない。
決して脅迫とかじゃないので安心してほしい。
ちょっと調べたいことがあるので人を貸してほしいとお願いしただけだ。
本当は書類だけ見せてもらえれば十分なのだが、生憎俺には文字が読めない。
と、いうことで関係者の方にお願いして読んでいただくというスタイルを取ってみた。
これなら体裁は猫目館の関係者が書類を読んでいる所にたまたま俺が出くわしたようにできる。
いやぁ世の中何とかなるものだ。
HAHAHAHA。
少々現支配人の顔が引きつっていたように見えるが気のせいだろう。
後はエミリア達と合流してしまえば問題なしっと。
おや、向こうから何か声が聞こえるぞ。
猫目館を出て裏路地を進み、集合場所であるジルダ氏の自宅へと向かっていた時だった。
どこかで聞いたことのある声だ。
はて、なんだろう。
「ちょっと、まだ見つからへんの?」
「申し訳ありません、人員を割いてはおりますが有力な情報は上がっておりません。」
「こないちっぽけな街で娘っ子一人見つけられないなんて、おたくらちょっと府抜けてるんとちゃいます?」
「そ、そんなことはございません!」
「ウチは別にかまへんねんで?ど~しても書類室で書類破棄の仕事をしたいっていうんやったら休息日が明けたらそこに移ってもらっても。」
「あそこだけは勘弁してください!」
「ホンならさっさと探してウチの前にあの狐連れて来んかい!」
「し、失礼します!」
このしゃべり方。
間違いない、あの兄妹だ。
声の感じからすると妹の方だな。
えっと、マッカの方?
ジルダ氏と怪しいやり取りをしていた張本人がこんなところにいるなんて。
しかもご丁寧にトリシャさんを探している現場を目撃できるとは、これはついてるな。
マッカはトリシャさんを探している。
そしてそれを部下に指示して探させている。
トリシャさんを探している人間は、トリシャさんに俺を尾行させた人間と繋がっている。
つまり俺を尾行させた人間は商業ギルドの人間という方程式も成り立つ。
だが、最初の人間と最後の人間がつながっているのならばどうして最初にトリシャさんに依頼した時点で捕まえなかったのか。
もしかしてトリシャさんに依頼した人間は商業ギルドの人間ではあるがマッカの配下ではないとか。
となると、俺を締め出そうとしているのはマッカではない?
となれば兄のデンの方なんだけど・・・。
あの二人が別行動をしているという事にもなるわけで。
うーん、わからん。
もし兄妹が別行動でお互いにやっていることを共有していないのであれば、俺の集めた情報はマッカに使えてもエミリア達にお願いしている情報は使えないことになる。
その逆もしかりだ。
兄妹同時に潰しにかかるのは無理か。
何だかややこしいなぁ。
とりあえず戻ってみんなに相談できれば・・・。
「おい、お前何してる!」
ヤバッ。
考え事をし過ぎたせいで後ろから来ていた人間の気配に気づかなかった。
くそ、どうすればいい。
「すみません少し迷子になってしまって。」
「怪しい奴だちょっとこい!」
来いって言われてもどこに行くっていうんだよ。
「何や騒がしいなぁ!」
ってこのタイミングでお前までくるのかよ。
つまりは俺を後ろから捕まえようとしている奴は商業ギルドの関係者ってことになるじゃないか。
万事休すか?
ついさっきコッペンに何をするかわからないぞって言われたところなのに。
このまま拉致でもされたら抵抗できないぞ。
せめて誰か一緒だったら・・・。
下手に逃げれば怪しまれるしこのまま捕まってもまずい。
どうする。
どうすればいい。
「おたくさん、誰かと思ったらクソ商店の店主ですやん。」
「マッカ様お知り合いですか?」
「私を敵に回した馬鹿な店主がいったいこんなところで何をしてはりますのん。」
何をしているのって、お前を探ってたなんて言えるわけもなし。
かといってやり返そうとしているとも言えないして。
どうしよう。
「これは商業ギルドのマッカ様、妻たちを探していましたら道に迷ってしまいまして丁度いいところでお会いできました。」
「道に迷う?あぁ、あんな辺鄙な所で仕事をしとったら田舎もんにはこの街は広すぎますわなぁ。」
「お恥ずかしいながらその通り、物珍しさに歩いておりましたらこの通りです。」
「残念ながらアンタを連れていくほど良い関係ちゃうからね、せいぜい迷子になっとき。」
おや?
もしかして俺を追い出そうとしていることを知らない?
でもトリシャさんを探している人間は俺を追い出そうとしてたっていうし・・・。
もしかして商業ギルド関係者の中でリレーションが取れてないとか?
やってることは商業ギルドをとおしてやってるけど、仲間が何をしているかまでは知らない。
もしくは、上司であるこの兄妹に逐一情報を流していない。
だからこの妹は俺を探しているという事を知らないでいる。
ってこと?
それってあまりにもご都合過ぎない?
や、今はその方がありがたい。
ご都合主義最高!
「幸い城壁は見えますのでそちらを目指して通りへ出ようと思います。お恥ずかしい所をお見せしました。」
「田舎もんはさっさと家に帰って奥さんの乳でも吸わせてもらいはったらどうですか?アッハッハ。」
むしろ吸わせてもらえるなら大歓迎なんですが・・・。
「それでは失礼します。」
とりあえず今はこの場から離れるほうが最優先だ。
下手に刺激する必要はない。
攻撃手段がそろってからボコボコにしてやればいい。
敵前逃亡最高です。
ペコペコと頭を下げながら包囲を抜け、できるだけ遠くへ行こう。
このままトリシャさん達の待つところへ戻るわけにはいかない。
遠回りをしてそれこそ尾行されていないことを確認しながら・・・。
「ちょっと待ち。」
お願いだから早く解放して!
笑顔を絶やさぬようにゆっくりとマッカの方を振り返る。
鋭い目つきで俺の方を睨んでいた。
「いかがされましたか?」
「あんた・・・。」
あんた・・・逃げれるとおもったら大間違いやで、とか?
あんた・・・土下座してこの前の件謝らんかい!とか?
あんた・・・五体満足でいられると思うなよ!とか?
全部勘弁してください。
「あんた・・・白狐人ってしらん?」
「白狐人ですか・・・。」
ここでまさかのトリシャさん探してるパターンですか。
いくら俺が狙われている身とはいえ彼女を犠牲にして逃げるわけにはいかないし。
でもこのまま捕まれば開放することもできないわけで。
どうする~アイ〇ル~
「いや、ええわ。異世界から来たばっかりのアンタが知ってるわけないわな。」
「申し訳ありませんお力になれなくて。」
「はじめから頼りになんてしとらんし、さっさとどっか行き。」
「失礼します。」
敵前逃亡再び!
興味が失せたようにため息をつくマッカを背にしてできるだけ急いでその場を離れる。
後ろから部下へのきつい罵倒が聞こえるが、今は同情している暇もない。
とりあえず急いで逃げなければ・・・。
シナリオ途中で強制ラスボス登場イベントってよくあるけど、実際に経験すると勘弁してほしいってなるな。
大抵負けイベントだしさ。
やっぱりボスとやりあうなら装備マシマシで俺TUEE!が一番だよね。
あ、もちろん縛りプレイも好きですよ?
SM的な奴じゃなくてね。
マッカから逃げるようにその場を離れ、後ろを確認しながら路地裏をジグザグに進む。
わざと止まってみたり、隠れてみたりするも後ろから誰かが来る気配はない。
そのまま一度大通りへ出て、再び裏通りへと入り同じような方法を使いながらみんなの待つ家へ向かう。
到着したのは太陽が城壁の向こうに沈んでしまう頃だった。
家からは薄明かりが見える。
えっと、それバレない?
「ただいま戻りました。」
最後にもう一度周囲を確認して建物の中に入る。
手探りで裏口から進むと中央の部屋にみんな集まっていた。
「シュウイチさん!」
「シュウイチ無事だったか心配したぞ。」
「すみません情報収集に手間取りました、それと厄介な人間に見つかってしまって。」
「厄介な人間ですか?」
「えぇ、今回の騒動の当事者と思われる兄妹の妹の方と遭遇しました。」
「大丈夫だったんですか?」
「とりあえずは無事に戻ってこれました、尾行はなさそうですのでご心配なく。」
全員が俺の顔を見るなりホッとしたような顔をする。
「あまりにも御主人様の帰りが遅いので探しに行こうかと思っておりました。」
「本当は早く帰るつもりだったんですけどね、遠回りしないと帰れない状況だったモノですから。」
「尾行を巻くためか?」
「トリシャさんを探しているのはやはり彼女で間違いないようです。理由に関してもコッペンより情報を仕入れてきました。」
「商業ギルドがいったい何のために彼女を・・・。」
「恐らくはトリシャさんの件については彼女個人の問題のようです。その証拠にギルド関係者がトリシャさんと接触していましたがそちらはトリシャさんについて何も反応していませんでしたし。」
「確かにその通りです。ギルド全体で探しているのであればあの場で拘束されているはずです。」
仮にさらわれたとしてもウェリス達だけではどうすることもできなかっただろう。
あの時はトリシャさんが捜索されていると思っていなかった。
思っていなかったとはいえ、敵に差し出すような格好になったのは事実だ。
それを考えると非常に怖いことをしてしまった。
終わり良ければ全てよしというけれど、リスクが大きすぎる。
「トリシャさん、失礼ながら貴女の事について調べさせていただきました。ジルダさんとの関係や、追われていることについても大方予想がついています。しかしこれはあくまでも予想です、確信を得る為に質問させてもらいたいのですがいいですか?」
「それを聞いて貴方はどうするの?他の人みたいに私を売り払うつもりなんでしょ?」
「仮にこれを知ったところで私には貴女を売ることはできません。何故なら、ジルダさんが死去したとしても所有者は変わらないからです。」
「どうして!?ご主人様が死んだら奴隷は解放されるんでしょ!?」
「所有した状態で死去したのであればそうなります。ですが、ジルダ氏は生前かなりの借金を背負っており、その借金を返済する為に多くの債権者と生前契約を交わしていました。自分の死後所有する奴隷を譲渡するというものです。」
借金の肩代わりに奴隷を手放す。
トリシャさんが話していた他にいた奴隷というのはこうやって売られていったのだ。
「他の奴隷の方々の譲渡先に関しても調べはついています。転売された形跡はなく今の所譲渡先で暮らしている事だけはわかりました。この国では奴隷への虐待は禁止されておりますのでおそらくは無事でいると思われます。」
「無事でいたって結局は奴隷のままで自由でも何でもない・・・。」
「その通りです。解放されるかどうかは所有者の自由ですが債権の代わりとして譲渡されたのであれば難しいでしょう。」
「それで、私は誰に譲渡されたの?そいつが死ねば私は自由になれるんでしょ?」
確かに主人が死ねば奴隷は自由になる。
だが普通は死ぬ前に今回の様に譲渡先が決まってしまったり、家族に相続されてしまうので自由になれる可能性など皆無だ。
よほど急な死去かつ相続人がいない場合でないと解放されることはない。
ジルダ氏はまさにこの条件に合致しているのだが、残念なことに生前に譲渡先が決まっているパターンだった。
では、トリシャさんはどうなるのか。
「それがトリシャさんを追っている商業ギルドのマッカさんなんですね。」
「そう考えるのが筋だろうな、そうでなければ血眼になって探す理由がわからん。」
「そのマッカという奴が死ねば私は自由になれるの?」
「病死などでない限り奴隷による主人の殺害はいかなる理由でも死罪だ。自由になることはない。」
「じゃあ一生逃げ回って見せる、私はもう誰の物にもならないんだから!」
トリシャさんの悲痛な叫びが部屋中に響き渡った
俺達は自由だ。
当たり前の自由を謳歌している。
だが、トリシャさんやニケさんの様にその当たり前の自由を謳歌ができない人もいる。
ウェリスに関しては自己責任だが、二人には何の責任もない。
にもかかわらず奴隷という身分に落ちてしまった。
その悲痛な叫びは持っている者にきつく突き刺さってくる。
どうにかしたい。
どうにかしたいが、そのためにはあまりにもハードルが多い。
誰かの物を正当な理由なく奪う事が出来ないのはどの世界でも同じなのだ。
そう、正当な理由がなければ。
「トリシャさんの所有者ですが、確かに現在は商業ギルドのマッカ氏となっています。しかしながらトリシャさんの譲渡に関しては他の方と大きな違いがありました。」
「大きな違い、ですか?」
「ニケさん、奴隷の譲渡には所有者の許可が必要なんですよね。」
「はい。所有者が承諾しない限りは他人が勝手に奴隷を移動できないようになっています。これは移動先で奴隷が不利益を得ないよう所有者が移譲先を厳選する義務を負っているからです。」
奴隷を虐待してはならない。
この法は奴隷本人を守るためのものである。
もし移譲先の環境が劣悪であれば、奴隷の虐待されるリスクは高くなってしまう。
なのでそのような環境で奴隷を生活させないために所有者には相手を厳選する義務が生じるのだ。
もちろんそれを破れば罰則がある。
奴隷を売買するにはいくつものハードルを越えなければならないようになっている。
それができない相手はそもそも所有してはならない。
もちろん、売られた方が待遇が良くなるのであれば構わないわけだが。
「トリシャさんの元所有者であるジルダさんは、何故かトリシャさんだけは生前譲渡を行っておりませんでした。現在マッカ氏に所有権が移っているのは債権回収の為となっております。」
「それは妙な話だな。他に債権者はいなかったのか?」
「それに関しても調べを行いました。他に三人の債権者がいたようですが辞退もしくはマッカ氏より別の奴隷を譲渡されております。」
「他の三人に辞退させ、自分だけが回収できるよう仕向けたように聞こえますが。」
「ユーリの言う通りだとおもいます。ですが、それに関しては調べる時間がありませんでした。」
もし仮にユーリの言う通りであれば、トリシャさんの所有権の移動はかなりグレーな感じがしてくる。
「ひとつ質問なんだが、債権回収というのはどのように行われるのだ?」
「まず最初に現物資産が差し押さえられます。そして次に不動産、手形、権利書、最後に奴隷となっていますね。」
さすがエミリア頼りになります。
「つまり借金がなければ即解放、借金があったとしても今の順番で清算できれば所有者が死亡した場合解放されるわけですね。」
なるほど合理的だ。
「ならばマッカ殿を含めた4人の債権者もその順番で債権分の資産が振り分けられるわけだな。」
「そうなりますね。」
「御主人様、奴隷が最後なのは何故でしょう?」
「奴隷は所有者の死後解放される権利を持っていますので、順番が最後なんです。」
「ならばトリシャ殿の所有者が移譲したのは別の資産では賄えなかったという事か?」
そう、そこなんですよ。
今ここに居るこの家も古いが立派な資産だ。
それも含めて吐き出すだけ吐き出して足りなかったから奴隷を手放すことになった。
なら、もし仮に資産はあるのに奴隷を譲渡したとなったら。
おかしいよねぇ。
「ジルダ氏の負債総額についてはまだ調べがついていません。正確に言えば調べようがなかったという感じです。」
「確かに亡くなった方の負債は清算されていますので調べ直すのは難しいと思います。」
「なによりジルダ氏が他の奴隷は生前譲渡しておきながらトリシャさんだけしなかった理由がわかりません。絶対に何か理由があったはずなんです。それについてはトリシャさんが一番ご存知かとおもうのですが・・・。」
「私何も知らないよ。」
聞きたくても答えてくれないこの感じ。
うーん。
謎ばっかり増えて答えが見えない。
長いトンネルを明かりもなしに歩いている感じだ。
さてどうするべきか。
「あの、とりあえずご飯を食べに行きませんか?時間的にそろそろウェリスさんたちを迎えに行かなければ間に合わないと思います。」
話が煮詰まった瞬間にナイスタイミングなニケさんの提案。
「そう言えばそうだったな。」
「私としたことがすっかり忘れておりました!急ぎセレン様をお迎えに行ってまいります。」
何はともあれ腹が減っては戦はできぬってね。
「ではユーリとニケさんでウェリス達を呼んできてください。私達はトリシャさんと一緒に先に現地へ向かっておきます。」
「私もどこかへ行くの?」
キョトンとした顔で俺を見つめるトリシャさん。
「美味しいものはお好きですか?」
「うん!」
「難しい話ばかりもなんですからまずはお腹いっぱいになりましょう。話はそれからでも大丈夫です。」
「でも私お金なんてないよ。」
「そこはシュウイチに任せればいい。」
「そうです、誘ったのはシュウイチさんですから。」
そこはもうお任せください。
給料日明けで懐は潤ってますよ!
「じゃあ、行きます。」
「お任せください。」
「しかし現地まではどうする、トリシャ殿を探している連中がいるはずだが。」
「それに関してはご心配なく。猫目館で衣装をお借りしておりますので。」
「わ、私はもうあんな服着ませんよ!?」
「エミリアはこのままで大丈夫です。もちろん、着てもらえるのならうれしいですが。」
「シュウイチさんが着て欲しいというのなら・・・。」
マジですか。
着て欲しいって言ったらあんな服やそんな服まで着てくれるの?
もっと借りてくればよかった!
「シュウイチ話がずれているぞ。」
「すみません。」
「それにだ、シュウイチが着て欲しいというのならば私が着るのも吝かではない。」
おっと、まさかのシルビア様も参戦ですか?
美人奥様二人のコスプレ合戦だなんて、ご飯何杯でもお代わりできますよ!
「と、とりあえずその件は保留ということで。」
俺は猫目館で預かった衣装をトリシャさんに手渡す。
「こんな綺麗な服着たこと無い・・・。」
「これは考えたな。」
「確かにこれだと逆にわかりませんね。」
奥様二人の反応も中々よろしいようで。
え、どんな衣装かって?
一つ言えるのは、女性は化けれるということ。
綺麗は作れるんです。
女性って怖い・・・。
「では着替えが終わり次第行きましょうか。」
腹が減っては何とやら。
考えないといけない事はたくさんあるけれど、これからの時間だけはせめて現実を忘れて楽しんでくれますように。
23
お気に入りに追加
202
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
転生の果てに
北丘 淳士
ファンタジー
先天性の障害を持つ本条司は、闘病空しく命を落としてしまう。
だが転生した先で新しい能力を手に入れ、その力で常人を逸した働きを見せ始める。
果たして彼が手に入れた力とは。そしてなぜ、その力を手に入れたのか。
少しミステリ要素も絡んだ、王道転生ファンタジー開幕!
転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す
エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】
転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた!
元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。
相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ!
ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。
お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。
金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる