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第六章

怪しい人について行くとどうなるのか

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ダンジョンの奥をただひたすらに進む。

俺はただ男の背を追いかけていくだけだ。

会話は無い。

先ほどの感じから道中も話しかけてくるかと思っていたが、どうやらおしゃべりなタイプではないらしい。

この男が人間なのかそれとも人間ではない別の何かなのかを確認するすべは俺には無いが、恐らくは人間ではないと思う。

俺は松明を持っているから足元と先を行く男ぐらいは見える。

だが男は松明の明かりもなしにダンジョン中を歩いている。

夜目が利くとかそういう問題ではない。

今この場で松明を消そうものなら間違い無く俺は前後不覚に陥るだろう。

たしか人は一定時間以上無音と暗闇の中に居ると発狂してしまうそうだ。

そうならない人ももちろん居るが、俺は発狂できる自信がある。

どう考えても無理でしょ。

それからどれだけ歩いたかわからないが、男が大きな壁の前で立ち止まった。

何も知らなければただの行き止まりにしか見えない。

ゲームなら次の道を探すべくさっさと引き返してしまう所だろう。

「ここが目的地なのだが、貴方には何かわかるかな?」

「さぁ、ただの行き止まりにしか見えませんけど実際はそうじゃないんでしょうね。」

「その通り。見た目にはただの行き止まりだけど一箇所だけわざと違和感があるように作ってある。そこを押せば美味しいお茶を御馳走できるわけだが・・・。」

「見つけられなければお茶は抜きということですか。」

「いやいや、察しの良い人は話が早くて助かるねぇ。」

いや、これは誰でもわかる流れですよ。

むしろここで見つけられなければ呼んだ価値無しとみなされて殺されるかもしれないわけで、そっちのリスクの方が恐ろしいんだけど。

とりあえずやるだけやってみますか。

壁は洞窟と質感も色も全くおんなじ。

継ぎ目も見当たらないし、さっきみたいに左右対称という感じも無い。

見るからにただの壁だ。

「触ってもかまいませんか?」

「どうぞ好きに。」

男はその場から動かず笑っているだけだ。

ヒントは一箇所だけ違和感があるように作っているという言葉だけ。

おそらく触るのは間違いだと思うけど何かヒントになるかもしれないし・・・。

とか何とか言い訳がましく近づいてみたんだけど全くわからないんだな、これが。

叩いても触っても他の場所と同じ。

本当に違いがあるのか?っていうレベルだ。

「いかがです、わかりましたか?」

その様子を目を開けずに笑いながら見ている男。

目をあけると視線がそこを見てしまうからだろうか。

さて困ったなぁ。

壁は全然問題ないわけだし・・・。

ん、壁は?

そういえば、ここを目的地とは言っていたけど一度も壁っていってなくないか?

という事は、違和感があるといっていた場所は壁じゃない?

俺は一度壁から離れ行き止まり全体に目を向けてみる。

壁じゃない場所。

天井は問題なし、側面も見た感じは問題ない。

という事は・・・。

「すみませんこちらに来ていただいてもよろしいですか?」

「何故です?」

「全体を見渡さなければ違和感を探し出す事はできませんから。」

「ふむ、確かにその通りだ。」

「すぐ終わりますよ。」

というか終わらせる。

だって残るはそこしかないんだから。

男が俺の横までやってきて先ほどと同じように笑っている。

さて、どこが違う?

男が立っていた場所。

一番くさいのはあそこだけど、探せと煽っておいて隠すような事はしないだろう。

こういうタイプはそんなせこい事はしない。

ちゃんと探せばわかるようにしているはずだ。

さっきみたいに左右対称で作ってくる事はなさそうだし、本当に違和感という感じなんだろうな。

窪んでいる場所、出っ張っている場所、色が違う場所。

ん?

俺は男が立っていた場所と壁までのちょうど真ん中辺りに一箇所だけ盛り上がった部分をみつけた。

本当に良く見なければそこが盛り上がっているようには見えない。

非常になだらかに時間をかけて盛り上がり、またおなじだけ下がっている。

だが、そのほかの場所と比べてみれば明らかにそこだけ高さが違う。

これだ。

近づいても微妙に壁との距離があり踏む事はまず無さそうな場所。

そして男がそこを隠さないまでも正面から踏まれないようにすることで、偶発的に見つかるリスクも避けられる場所だ。

「どうかな?」

「1つ質問ですが、その違和感に触れるとどうなるんですか?」

「そこを触ることによって私の研究所への道が開く、そう思ってくれてかまわない。」

「なるほど、つまりはこういうことですね。」

俺はゆっくりとその盛り上がった場所に近づき、中心らしき場所を強く踏みつけた。

するとカチリと何かを踏む感触と同時に壁の色が真っ黒に変わってしまった。

それはまるでダンジョンの入口のようにもみえる。

「素晴らしい、本当に素晴らしい!よくあの場所を見つけられたね!」

「貴方の発言と壁に惑わされなければ確かに違和感のある場所ですから。」

「いやいやこの状況で壁以外の場所に目を向ける事ができる大胆さ、そしてその場所を見極める洞察力、そしてなにより私を移動させる度胸。どこを取ってもただの人間とは思えない!」

「私はただの商人ですよ。」

「ただの商人、今はそういうことにしておきましょう。さぁどうぞ前に進んでください、私の研究所へ御招待させていただきますよ!」

俺が見つけたことに驚きテンションを上げ興奮する男。

どれ、研究所とやらに招待してもらおうじゃないか。

俺は壁の中に手を入れてみる。

黒い壁の向こうは何も見えず、引っこ抜けば元に戻ってくる。

ダンジョンと同じ構造だな。

そんじゃまぁ、進んだ先が落とし穴とかじゃない事だけを祈ろう。

目を瞑り大きく一歩を踏み出し黒い壁の中に身を進める。

なんともいえない感触の後すぐに感じたのは南国と間違うほどの暖かい空気の感触だった。

あまりの空気の違いに驚いて目を開ける。

そこには研究所という名前からは想像もつかない明るい森の中だった。

「ここは・・・。」

「ここは常霧の森の一番奥、霧も届かぬ常夏の森だよ。」

おかしい。

今は夜のはずだ。

なのに何故太陽があるんだ?

まさか朝になってしまったとか?

「何故この時間に太陽があるんでしょう。」

「あぁ、それは太陽じゃない、発光する魔石に大量の魔力を注ぎ込んで作った擬似太陽だ。」

「では厳密にここは森の中ではない?」

「正確に言えば森の中に作り上げた巨大な実験施設といった所かな。森が常に霧に包まれているおかげでどこから見てもここに気付く事はない秘密の場所さ。」

つまりは地球の反対だから朝みたいなノリではないらしい。

よかった、常霧の森っていうことは最悪帰れる場所にはあるということだ。

「それでどこでお茶を御馳走してくれるんでしょうか。」

「この状況でまだお茶にこだわるなんて本当に変わってる。」

「長い話になるのなら飲み物は必須でしょう。それとも、お客に出すお茶は無いんでしょうか。」

「自分をお客という図々しさにも感服するよ。」

図々しいというかそういう風に自分を仕向けなければこの空間この状況に屈してしまいそうだからだ。

少しでもいつもの自分と違う自分を演じなければ、この非現実的な状況に対応できそうに無い。

「商人は常に現金なものです。」

「ただの商人が私の傑作を二つも見破るなんて事実を私に信じろって言うのかな?でもまぁ約束は約束だ。美味しいお茶を御馳走しながら貴方が聞きたがっている話をしてあげようじゃないか。」

俺が聞きたがっている?

たしかにそうだがそんなこと一言もいってない。

ご褒美をあげるって言うのは言っていたと思うんだけど。

聞きたいことに答えるのがご褒美ということだろうか。

男が右手を前に伸ばすとぱちんと指を鳴らした。

すると先ほどまで何も無かった場所に一軒の家が現れた。

まさに現れたと表現するのが相応しいだろう。

別に下からせりあがってきたわけでも降ってきたわけでもない。

カーテンを開けたら初めからそこにあったものが見えたような感じだ。

音も衝撃も何もなくそこに現れた家。

光学迷彩で隠れていたとサイバーパンクなら言うだろう。

見た目は森の中のカントリーハウス。

木造で煙突が屋根からでている。

シルバニア○ァミリーにでてきそうなあれだ。

「光の反射で隠していた・・・?」

「本当に君は驚かせ甲斐の無い男だねぇ。」

「ということは正解でしたか。」

「頭の中がどうなっているのか一度見せてもらえないかな?」

「それは丁重にお断りさせていただきます。」

「それは非常に残念だ。」

この男なら本当に頭の中を見てしまいかねない。

正体が何者なのかはわからないが、危ないやつなのはわかる。

男はやれやれといった感じで首を左右に振りながら玄関のドアを開け、

「ここに来た人間は初めてだ、ようこそ我が研究所へ。」

恭しい仕草で挨拶をすると家の中へ招いた。

入ったが最後出られないという事もないだろう。

玄関を開けてまで招待されて断るのはおかしな話だ。

というか俺から催促しているんだから入らないわけには行かないな。

「初めて入ったと同時に初めて出ていった人間にもなりたいものです。」

一応釘だけはさしておいて・・・。

「それは貴方次第だね。」

あ、やっぱりそうですか。

恐る恐る玄関をくぐり周りを見渡してみる。

家の中は研究所という割には片付いており、ただの民家にしか見えない。

テーブルには花が飾られ、食器棚にはきちんと食器が入っている。

研究所らしい場所といえば壁際に積み上げられた大量の本とその横に置かれた荷物だらけの机ぐらいだろうか。

奥にももう一部屋あるようだがそこは固く閉ざされていた。

「そこの椅子に腰掛けてくれたまえ、すぐにお茶を用意しよう。」

テーブルとセットになった椅子だろうか、木目のキレイな椅子にクッションまで置いてある。

えっと、奥さんが出てきたりしないよね?

男はてきぱきとコンロに火をかけ、ちゃんとしたティーポットに茶葉を入れる。

手馴れた感じからいつも淹れているんだろう。

インスタントコーヒーなら任せてくれ。

最近はボタン1つで煎れてくれるのもあるけど、濃さを自分で調整できる方がなにかと都合が良いんだ。

仕事で寝れないときは濃い目、胃が痛いけどコーヒーを飲みたいときは薄目とかね。

そうこうしているうちにいつもと変わらない香茶らしきものが目の前に置かれた。

「待たせたね。」

「帰宅早々すみません。」

「なに、茶を出すと約束したのは私だ。それに話をするのにこれは必須なのだろう?」

「有意義な時間を過ごす為には美味しい飲み物が必須だとは思いませんか?」

「質問に質問で返されるのはあまり好きではないんだけど、それには非常に同意するね。有意義な時間を過ごせるのであればそれなりに手間と時間をかけた飲み物はあるべきだ。」

つまりはこれだけ準備したんだから有意義な時間を過ごさせろということか。

「私としてもそうであってほしいと思っています。」

「さぁ、まずはどこからはじめようか。私の傑作を二つ解いたご褒美にいくつか質問に答えてあげようじゃないか。」

机の上で両指を組み男がまっすぐに俺を見る。

先ほどまでのふざけたような感じが一切感じられなくなった。

「そうですね、ではまずは貴方が誰なのかから教えていただけますか?」

「おぉ、そうだった。お互い自己紹介もしていなかったね、これは私も気付かなかった。私はバルドント・ロギエン、気軽にバロンと呼んでくれてかまわないよ。」

バルドント・・・?

まぁバロンでいいか。

「私は商店を営んでおりますイナバシュウイチと申します。」

「イナバ君でかまわないかな?」

「お好きに呼んでいただいて結構です、バロン・・・。」

「呼び捨てで結構だ。」

「ではバロン、質問に回数はありますか?」

回数があるのであれば吟味しなければならない。

「そうだね、何個でもというのは芸が無い。5つまでなら答えてあげようか。」

5つか、結構少ないな。

今回の事件の犯人である事は間違いないだろうけど、それを上手く引き出すにはどうすればいいだろう。

悩むなぁ・・・。

「では一つ目。バロンは人間ではありませんね?」

「いきなりそれを聞いてくるなんてちょっと予想外だね。その通り私は人間ではない、君達の文化でいうところの魔族というものがそれに当てはまるだろうか。厳密に言えば私はそのどれにも属さないが分類上はそう呼んでいただいて結構だよ。」

魔族!

マジか本当に居るのか!

ファンタジー世界でおなじみの敵にしたくない種族ナンバー1じゃないですか。

ヤダー。

これ、機嫌損ねたら生きていけない奴じゃないでしょうか。

ちょっと口調とか気をつけたほうが良いのか?

「では二つ目、ダンジョンの中に拘束されていた魔物と冒険者。バロンはそれを使って何かをしようと考え実際行動に移した、それについておしえてくださいますか?」

「先ほどの質問から随分と角度が違うね。いかにも私は彼らを使って実験を行なっていた。それについて詳しく教える事はできないが、私の理論が正しいかどうかを証明する為に彼らには悪いが犠牲になってもらった。これで質問の答えになっているかな?」

答えにはなっている。

なっているが、これではなにが原因で今回の事件が起きたのかという事がわからない。

それでは何の解決にもならないわけで・・・。

そもそもこの実験は終了したのか?

成功失敗どちらにせよ終了していなければ第二第三の犠牲者が出てくるのではないだろうか。

それを防がなければ何の意味も無い。

「では三つ目、今回の実験は終了しているとして再度行なう予定はありますか?終了したのであれば彼らを元に戻し速やかに解放していただきたいのですが。」

「それは質問ではなく要望ではないのかな?」

「気に障ったのであれば訂正しますが。」

「いや、かまわないよ。終了したかどうかで言えば今回の実験は終了し二度と行なう事はないだろう。彼らを解放するということに関しては条件次第といったところかな。」

条件次第ねぇ。

これって解放する気はないっていう隠語じゃないのかなぁ。

出来もしない条件をだして、結果開放しませんみたいな。

解放してもらわないと話にならないんだけど、とりあえず二次被害は出ない事を歓ぶべきだろうか。

バロンは相変わらずまっすぐに俺を見たままだ。

空気が重い。

それに、一気にしゃべったから喉が渇いた。

俺はコップに手をのばしゆっくりと口を付ける。

得体の知れないものを飲む事に一瞬躊躇したが、今は緊張から来るこの喉の渇きを潤したかった。

美味しい。

「美味しいお茶ですね。」

「そうだろう久々のお客さんだからね、私の特製ブレンドを用意させてもらった。」

ほめられた事が嬉しいのかバロンの鼻が大きくなる。

「うちの奥さんが入れるお茶も美味しいですがこれもまたいいですね。」

「そういえば君達には結婚というよくわからない概念があったね、そもそもアレはなんなんだい?」

俺の質問タイムだがまぁいいか。

結婚とはなにか。

難しいこと聞いてくるなぁ。

愛だの恋だのいってもこの人には伝わりそうに無い。

もっと違う言葉で表現しなければ。

「他人との相互理解から来る相互扶助の関係でしょうか。」

「わざわざ知らない人と助け合うというのかい?」

「知らない人間だからこそ見える部分もある。手の内を知っている人間同士では手の届かない部分に気付く事はありませんよ。」

「確かに他人の意見を受け入れることで自分の知見が広がる事もある。なるほどそういう理由があるのか。」

自分の知らない部分を見つけるのは他人だけという事だ。

「御理解いただけましたか?」

「いやいや非常にわかりやすい答えだった。本当に君は人間なのかい?」

「どこをどうみてもただの人間ですよ。」

「それにしてはこの世界の人間が知らないような言葉を話すようだけど。」

「それは私が異世界から来た人間だからでしょう。」

「それはすごい!一度異世界人の頭を覗きたいと思っていたところなんだ。さっきも言ったけどちょっと頭の中を覗かせてはもらえないかなぁ。」

「それは丁重にお断りしたはずです。」

「ぐぬぬ。惜しい、この機会を逃せば一体いつになるのだろうか・・・。」

勘弁してくれ。

知らない人間に頭の中を覗き込まれるとか、俺の隠してきた黒歴史が全て暴露されてしまうじゃないか!

「では四つ目です、実験が終了したということであればこの地から立ち去るつもりはありますか?」

「僕がこの場所を離れる?それはいったいどうしてだい?」

「私はバロンが実験に使用した彼らの捜索と事件の全容解明の両方を任されています。魔族が彼らを実験に利用していたと伝えれば上の人間はどう思うでしょうか。」

「私に責任を取らせるもしくは討伐するなんてバカな事を考えるだろうね。」

「ならばその魔族が立ち去ったと伝えればそんなバカな事にはならないのではありませんか?」

「君が黙っていれば問題ないんじゃないかな。」

「人の口に戸は立てられませんから。」

俺が黙っていても常霧の森の中にある以上誰かがここを探し出すだろう。

そうなれば不要な争いが起こるだろう。

魔族が絶対に強いかどうかはわからないが、被害が大きい事は予想できる。

無用な被害が起きないのであればそれに越した事はない。

「そうだな、すぐにとはいかないだろうけど次の実験内容が決まったら立ち去る事もあるだろうね。」

「具体的には?」

「それは僕にもわからないよ。明日かもしれないし100年後かもしれない。あ、イナバ君が頭の中を見せてくれたらすぐにでも次の実験が思い浮かぶんだけど・・・。」

「そこまでして私の頭が見たいんですか?」

「もちろんだとも!そもそも今回の実験は魔物の行動操作を人間にも応用しようというものなんだ。魔物は図体のわりに頭が小さくてね命令よりも本能を優先してしまう気がある。私の命令を無視するからあの檻の中につないでおいたわけだが・・・。」

しゃべっている途中でバロンが大きく目を見開き、会話を中断する。

秘密を自分からバラしておいて、しまったって顔しないでくれよ。

俺だって聞きたくてそれを聞いたわけじゃないんだから。

「人間は行動操作を受け入れるだけの頭を持っていると思ったが実際は期待通りにはならなかった。ある程度の命令はこなす事ができたが求めている水準にはいたらなかった。」

「その通り、私の理論は実証されなかった。」

「なので普通と違う私の頭に興味があるというワケですね。」

「人間という生き物は不思議だな、魔物と違い生存本能が著しく低い。理性というたがを外してやったのに食事か生殖行為か睡眠をするしかしない。争う事もせずただひたすらに同じ事を繰り返している。それでいて地上には人間が溢れかえっているんだから不思議なものだ。」

人間の三大欲求にしたがっているだけだとおもうんだけど。

「女性の姿が見えませんでしたがアレは・・・。」

「あぁ、放っておくと手当たり次第に生殖行為に及ぶものだから隔離させてもらった。種は多いのに畑が少ないというのは厄介だな、優れた種を残す為に種同士を戦わせ生き残ったものを残そうとする。本能的に種の強い男がわかるのか何人かは干からびるまで犯されいたよ。」

つまりは男性『が』犯したんじゃなくて男性『を』犯したから隔離したのか。

確か哺乳類の中には女性の方が強い種が居たと思うけどその流れなのかな。

多くの女とセックスできて喜ぶべきか、はたまた種の為に搾取されるのを悲しむべきか。

「ちなみに彼女達はどこに?」

「イナバ君はハーレム主義者かい?それならやめたほうがいい。今の彼女達は飢えた獣だ、男を見れば手当たり次第に犯していくだろう。」

「それは恐ろしいですね・・・。」

まぁうちの家は俺が手を出していないだけでほぼハーレムみたいな構図なんだけど・・・。

エミリアたちが同じ状況になったら俺も犯されるのか?

それはちょっといやだなぁ。

「人間という生き物はもっと慎み深いと思っていたが、こういう部分だけは凶暴になるのだから不思議なものだ。」

「それに関しては人間として何もいえません。」

「質問は以上かな?」

「あぁそうでした。では最後に5つ目です。」

これで最後だ。

犯人はこの男で再犯の危険は無い、ただしいつ移動するかはわからないときたもんだ。

解放に関しては返事まち。

さて、最後に聞いていくことは・・・。

「魔物の集団暴走スタンビート、それについて何か知りませんか?」

集団暴走スタンビート?」

「えぇ、この世界では魔物の集団暴走スタンビートが頻繁ではないにしろ年に数回起きているそうですね。それについて魔族として知っている事はありませんか?」

「そんな事が聞きたいのかい?」

「先ほどもいいましたように我々だけで知りえる事のできる知識には限界がある。別の視点からの知識を頂戴できるのであれば、それはありがたいことです。」

「てっきり今回の件について追及してくるものと思っていたよ。」

「正直に言いまして今回の件について私はバロンを責めるつもりはありません。被害にあった冒険者には同情しますが、決して人間に対する悪意があって行なったわけではないのでしょう。むしろ好奇心を満たす為に行なっていたと考えています。再度同じ実験を行なわないとも話していましたし、起きてしまった事に対して後から文句を言うのは筋違いです。」

起きてしまった事はどうしようもない。

被害は甚大だし、けが人も多数出ている。

文句は言いたいが、バロンからしたらただ外野が騒いでいるとしか思わないだろう。

それならば気持ちよく立ち去ってもらう方が被害は少ないのではないか。

俺はそう思っている。

「今回の件については目をつぶるから、実験に使ったアレは返して欲しいとそういうことだね。」

「何をしたのかはわかりませんが、出来れば元の状態に戻していただきたいのですが・・・できますか?」

「脳を弄ったわけではなく一時的に意識を奪っているだけだから問題ないよ。」

無事に帰ってくるのならばそれで万事解決だ。

「それならば結構です。」

集団暴走スタンビートに関しては正直興味が無いから知らないんだ。だけど時間をもらえるのであれば私の力を使って調べられる情報を提供すると約束しよう。」

「わかりました。」

知らないものはしょうがない。

むしろ別ルートで調べてくれるというのであればそれはそれでありがたい申し出だ。

質問の答えとしては十分すぎるだろう。

「これで質問は以上だね。」

「5つという約束でしたから。」

「それを律儀に守るイナバ君もなかなかすごいね。」

「ご褒美を余分におねだりして上手くいった話を聞いた事がありません。」

今回の質問は彼の仕掛けを解決した御褒美ということになっている。

相手が自分より上の立場ならば相手の気を悪くしないに越した事ない。

「遠慮が無いわりには引き際も素晴らしい。ただの人間にしておくにはもったいない人材だね。」

「お褒めに預かり光栄です。」

「はじめは私の傑作を見破った人間に興味があっただけだったが、話しをすればするほど面白い人間だという事がわかった。どうだい、僕の下で一緒に研究する気はないかい?」

はい?

「言っている意味がよくわかりませんが。」

「頭を見せてくれと言っても見せてくれないだろう。ならば、対話から君という人間を観察しようと言っているんだ。寿命の方は問題ない、ちょっと人間を辞めてくれたらいくらでも伸ばしてあげられるよ。」

ここに来てまさかの人間やめろ宣言。

この人はいったい俺をどうしようというのだろうか。

まったくわからない。
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