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第四章
導き出された答え
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準備するに当たり何が必要になるのか考えてみる。
時間・・・は正直無いが徹夜すれば問題ないだろう。
奴らがここに来た後に中に誘い込むわけだから時間が必要なのは主に罠の準備のほうだ。
罠・・・使用可能な罠の選別をする必要と自前の罠だけでは足りないからそれを準備する必要はあるのか。
「エミリア、罠は商店連合から仕入れることが出来ましたよね?」
「ダンジョン用の罠は商店連合の窓口で購入可能です。大きさにもよりますが簡単な物でしたら明日には商店に持ってきてくれます。」
明日届くのであれば即日配送のエミリア急便を使用するほどでもないか。
となると後は予算だな。
「支払いは前回のように給料天引きって出来ましたっけ。」
「もちろん可能です。」
金額にもよるが今度の催し用と思って思い切って大量購入してしまってもいいかもしれない。
経費としては落ちないし、足りない分はこの罠に引っかかるであろう奴らからせしめた分で支払えば良い。
催しの準備と思ってやればこの作戦も無駄にはならない。
「罠の種類はどうするんだ?」
「先ほどもお話したように足止めを目的とした非殺傷系の罠にするつもりです。」
「足止めか、魔物はどうするんだ。」
「魔物は今回使用せず、最下層に集合させておけば問題ないと考えています。私はいいですが、博士に何かあると困りますから。まぁ、私より強いので大丈夫だと思いますけどね。」
なんせ位が30もあるんだからここの魔物なんて敵ではないだろう。
だが、せっかく数少ない魔力で召喚した魔物が居なくなってしまうというのは些かもったいない。
あ、ついでだからダンジョンに入ってから帰って貰うことにしよう。
魔力の補充にご協力をお願いいたします。
「奴らが中に入り、エミリアからの合図をもらい次第我々が捕縛のために突入するんだったな。」
「その通りです。あまり情報は無いでしょうが口を割らせるためにも殺さずに捕縛して頂ければ助かります。特にガルスという主犯格には色々と聞かなければ成らないことがありますので。」
どこで今回の魔石を知れたのかや、横流しグループとの接触方法など聞き出さなければいけない情報は多い。
貴重な情報源に死んでもらうわけには行かないのだ。
「抵抗された場合はこちらの身の安全を最優先に行動させて貰うぞ。」
「もちろんです。」
とはいえ出来れば無抵抗でお願いしたいわけでして。
でもむりだよなぁ。
「その間ほかの冒険者が来た場合はお断りする形でいいですか?」
「せっかくきていただいたところ申し訳ないですがそうせざるを得ないと思います。」
「聖日あけに来てくださいとお伝えしても問題ないですか?」
「出来るだけ具体的な日をお伝えするのは避けたいところですが、そのような感じで大丈夫です。」
せっかくの罠を破壊されても困るので冒険者には来て欲しいが今回はお帰りいただくしかない。
今回はダンジョンの維持を最優先にする必要がある。
来週またお願いしたいところだ。
まぁ正直なところ来週になっても誰も来ない可能性もあるわけで。
そこはもう神のみぞ知るという奴ですよ。
「ならばここで決めることはもうなさそうだな。」
「そうですね、後は私とユーリで頑張る感じになるでしょう。」
「私もお手伝いしますので遠慮なく仰ってください。」
「おそらく手が足りなくなるのでお願いすることになると思います。」
猫の手も借りたくなるなるだろうからエミリアにも手伝って貰わなければならない。
主に店のほうを丸投げする感じになるとおもう。
開店してからまともに仕事したのって1日だけじゃないのかな・・・。
まだ3日しかたってないけどさ。
まぁいっか。
今後頑張ります。
「私は騎士団に戻り次第捕縛の際に帯同させる騎士団員を選別しておこう。」
「出来るだけ怪しい人物や組織と接触していそうに無い人でおねがいします。」
「保障は出来ないが善処しよう。」
騎士団員全てのプライベートを把握することは無理だから致し方ない。
だが今回の件から横流しグループに悪い情報が流れるのだけは避けたいので、ここはシルビア様の目利きにかけるしかないよな。
「魔術師ギルドにはミド博士のほうから報告して貰えるようにしておきます。今日持って帰っていただく情報を元に横流しグループの全容解明に向けて動いて貰わなければなりませんので。」
「魔石はお持ち帰りいただきますか?」
「ひとまずこちらで保管しておきます。もし何かあったとしても現物があれば再鑑定できますから。」
帰り道に襲われない保証はどこにも無い。
もちろん帰り道もシルビア様と村で控えている騎士団員の皆さんが一緒だから問題は無いと思うけれど、リスクは分散させておくに越したことは無い。
急に彼らが魔石を帰せと言い出さない保証も無いしね。
そうなったら返すからダンジョンに来いとおびき出しても良い。
なるほど、これはありかもしれない。
候補に入れておこう。
「本当にこの問題はどれだけ大きいんでしょうか。」
「わかりませんね、国家事業の不正がそれこそ全国規模で行われていた可能性があるわけですからとてつもなく大きな問題であるとしかいえません。」
「そんな簡単な話ではないんですけど。そもそも魔石は我が国の主要な輸出品のひとつであり、それが横流しされていたとなれば国の財産を横領していたに等しいんです。」
話の途中に博士が入ってきた。
貴方魔石の鑑定してたんじゃなかったんですか?
もしかしてもう飽きたとか?
「もう終わられたんですか?」
「いや、飽きたので面白そうな話だから加わってみたんだ。」
やっぱり飽きたんかーい。
でも確かに博士の言う通りだ。
国家レベルでの問題になるし、それが不正に輸出されていたとなったら今度は国際問題にも発展してくるだろう。
その魔石をどこの国が買っていただの、この横流しを指示していたのはお前だだの、国同士の争いになるかもしれない。
そうなれば今度は何だ、国際問題からの戦争か?
「随分と大きな問題に手を出してしまいましたね。」
「成り行きとはいえいたしかたないだろう。それにこの問題を無視できなかったという事は我々の正義感は腐っていなかったというわけだからそこは誇りに思うべきだろうな。」
「そうですね。」
人の命を無視することになるわけだからさすがにそれは無理だなぁ。
「ですが、国レベルの問題に私のような小さな商人が絡んでいくというのも些か問題があると思いますけど。」
「それは別に問題にはないとおもいますよ。むしろこれほどの事案が今の今まで気付かれずに行われていたことの方が問題でしょう。それに今回の件に関しては、発見した君達には罰ではなくそれなりの報酬が与えられるべきだとおもいます。」
報酬ですか。
確かに真実を突き止めたのならそれなりの報酬があって然りだとは思う。
その内容が国家レベルでの重要案件ならばなおさらだ。
だが俺たちは報酬が欲しくてこの問題の解決を目指しているわけではないから、いざ報酬をあげますといわれても困るよな。
俺たちが関与してるってバレて、逆恨みで襲われるとか考えたくないし。
「報酬をいただくのは嬉しいですが、その先のことを考えると怖くて受け取れませんね。」
「横流しグループに逆恨みを受けるかもしれないわけか。」
「そうです。私達はただ大人しく商売が出来ればそれだけで十分なんですけど。」
「随分と欲の無い男ですね、君は。」
「欲はありますよ、それはもうたくさん。」
食欲に睡眠欲に性欲に、人間の三大欲求は常に求めていますから。
でも出世欲はあまりないかもしれない。
健康で文化的な生活がおくれればそれで十分です。
「そうは見えないがな。」
「見えないだけで腹の中ではそれはもうすごい欲が蠢いています。それは博士も同じなのでは?」
「確かにその通りだ、欲の無い男などいるはずもないか。」
二人して目をあわせ笑いあう。
男なんてそんなもんですよ。
「博士、急がないと日が暮れてしまいますよ!」
「すまないすぐに取り掛かろう。」
はやくもイラーナ助手の尻に敷かれているミド博士。
あー、でも俺も似たようなものか。
性格的に亭主関白って言うのはどうも苦手だ。
奥さんが強いほうが夫婦は長持ちするって言うし。
べ、別に草食系だからなんかじゃないんだからね!
その後博士の鑑定を待ちながら作戦の詰めを話しているうちに時間はあっという間に過ぎていった。
「待たせたね、全ての鑑定と分類わけが終了したよ。」
「お疲れ様でした。」
「予想していた通り魔石は各鉱山から産出された物がまざっていたよ。若干偏りはあるものの国内全ての鉱山から産出された魔石であることは間違いない、予備鉱山もやはりまざっていた。」
「となると、横流しの規模はやはり全国規模というわけですね。」
「そのようだな。魔石の数としては一番多かったのは40個、最小は8個ほどだ。100個全てが国内の魔石鉱山からのものであることから、別々の商人からこれらを買い付けて数を集めたとは考えにくいだろう。国内には他国の魔石も多数流入しているし、一つも入っていないというのは考えにくい。」
となれば、この見本はやはり横流しグループから仕入れた物と考えて間違いないだろう。
どこかで接触して買い付けを行った。
その際にどういう会話をしていたかは縛り上げないと分からないな。
口を割るかどうかは別として。
「ありがとうございました。この情報はギルドに戻り次第フェリス様にご報告をお願いいたします。」
「これを聞いて苦笑いをする顔が目に浮かぶよ。」
「また仕事が増えたとため息もつくでしょうね。」
話は想像していていたよりも大きく複雑なようだ。
あの書類の山に横流し関係の報告書が追加されていくとなると処理しきれないような気もするが、まぁそこは本人の問題なので俺は知らない。
今度あったときに小言を言われるぐらいだ。
「お疲れのところ申し訳ありませんが、そろそろ戻らねば日が暮れてしまいます。夏節に入り日は長くなりましたが日暮れ以降は危険が多くなりますので。」
「長居は無用だすぐ戻るとしよう。」
「荷物の準備は終わっていますのでいつでも出られますよ。」
「さすがイラーナだな。」
「それが仕事ですから。」
何だかんだいってお似合いの二人だ。
是非ゴールインして頂きたい。
頑張れイラーナ助手、玉の輿は眼の前だ!
「ではシュウイチまた聖日に博士たちを連れてこよう。」
「シルビアも道中くれぐれも気をつけて。」
「今日は他の団員もいるから問題ないだろう。」
「こちらのことはお任せください。」
「エミリアもシュウイチをくれぐれも頼む。危険なことをしそうになったら手段を選ばず止めてくれ。」
ちょっと、手段を選ばずってどういうことですか。
そんなに信頼ない?
確かにいつも一人で動いちゃうけどさぁ・・・。
うん。
思い当たる節がありすぎてなんかすみません。
「シュウイチさん冗談ですよ?」
あまりにもへこんでいたのかエミリアがフォローを入れてくれた。
冗談にきこえないんだよ二人とも。
「そうだ、これを渡すのを忘れていました。」
大事な物を渡し忘れるところだった。
先ほど準備した書簡をシルビア様に託す。
あ、書いたのはエミリアです。
「コッペンへの書簡だな。」
「彼らと連絡を取れるのはコッペンだけですからね、聖日の昼の中休みの頃に来るようにと書いてあります。博士とシルビアの到着は昼頃でも構いませんのでよろしくおねがいいたします。」
「確かに預かった。」
コッペンから奴らに情報が渡り、後は来るのを待つだけとなる。
どこからか情報が漏れて感付かれるのが先か、それとも上手くおびき寄せて捕縛するのが先か。
後ろに控えている組織があまりにも巨大すぎてどういう対応を取ってくるのか見当も付かない。
出来れば何事もなく穏便にその日を迎えられますように。
準備期間は後2日、罠の手配を考えれば実質1日か。
ま、時間が無いのはいつものことだしやれるだけのことをやるだけだ。
「では皆さんお気をつけて。」
「それではまた、行きましょうか博士。」
「道中よろしく頼みます。」
エミリアと共に三人を見送る。
村までついていく事も考えたけど魔石を置きっぱなしにも出来ないので今日はここでお見送りだ。
「大変な1日でしたね。」
「そうですね、でもまだ終わりじゃないんですよ。」
「ユーリたちにお店任せたままでした、すぐに戻りましょう。」
「では私は魔石を店に持って行きます。家に置いておくのは不安なので店の地下に隠しておこうと思います。」
「あそこなら安全ですしね。」
エミリアは商店に、俺は魔石を取りに家に戻る。
綺麗に分類わけされた魔石にはそれぞれ紙が張られており、読むことは出来ないがおそらく産出先を記入してあるのだろう。
大きい山と小さい山があることから、これが先ほど言っていた産出先の偏りという奴なのかな。
せっかく分けてくれているんだし何か袋に入れて混ざらないようにしておくか。
台所を漁り、大小口の縛れる袋を探す。
こんな時ビニール袋があれば便利なんだけど、そんなものあるわけ無いしな。
お、野菜の入った袋がちょうどいい感じだ。
野菜には申し訳ないがちょっとそこに転がっておいてくれ。
後で別の器に入れるから。
食べ物は大切にしないとね。
それぞれを混ざらないように袋に移し、上に乗っていた紙を最後に入れる。
これで開けたらすぐ分かるだろう。
分類わけされた魔石は合計6つ。
つまりは6箇所鉱山があるという事か。
これって結構な数じゃないかな。
主要な輸出品って言ってたしどこかに鉱山都市とかあるのかもしれない。
サンサトローズしか知らないからまた別の町も見てみたい。
せっかく異世界にきているんだからいつの日か世界を旅してみたいなぁ。
みんなと一緒に。
今度は魔石を入れていた器に野菜を移しかえる。
これでよしっと。
「さて、店に戻りますかね。」
木箱に魔石の入った袋を入れて蓋を閉める。
あとは地下に持っていけばおわりっと。
腰を痛めないように気をつけながら木箱を持ち上げる。
昔一度痛めてから重たい物を持つときは慎重に準備をして持ち上げるようにしている。
だってあんな苦痛二度と経験したくないし。
箱を持ち上げてよろよろと家の外に運び出す。
さぁこれが終わったらユーリと詳しい打ち合わせだ。
作戦に失敗はできない。
だからこそ、できることをただするだけだ。
さぁ忙しくなるぞ!
時間・・・は正直無いが徹夜すれば問題ないだろう。
奴らがここに来た後に中に誘い込むわけだから時間が必要なのは主に罠の準備のほうだ。
罠・・・使用可能な罠の選別をする必要と自前の罠だけでは足りないからそれを準備する必要はあるのか。
「エミリア、罠は商店連合から仕入れることが出来ましたよね?」
「ダンジョン用の罠は商店連合の窓口で購入可能です。大きさにもよりますが簡単な物でしたら明日には商店に持ってきてくれます。」
明日届くのであれば即日配送のエミリア急便を使用するほどでもないか。
となると後は予算だな。
「支払いは前回のように給料天引きって出来ましたっけ。」
「もちろん可能です。」
金額にもよるが今度の催し用と思って思い切って大量購入してしまってもいいかもしれない。
経費としては落ちないし、足りない分はこの罠に引っかかるであろう奴らからせしめた分で支払えば良い。
催しの準備と思ってやればこの作戦も無駄にはならない。
「罠の種類はどうするんだ?」
「先ほどもお話したように足止めを目的とした非殺傷系の罠にするつもりです。」
「足止めか、魔物はどうするんだ。」
「魔物は今回使用せず、最下層に集合させておけば問題ないと考えています。私はいいですが、博士に何かあると困りますから。まぁ、私より強いので大丈夫だと思いますけどね。」
なんせ位が30もあるんだからここの魔物なんて敵ではないだろう。
だが、せっかく数少ない魔力で召喚した魔物が居なくなってしまうというのは些かもったいない。
あ、ついでだからダンジョンに入ってから帰って貰うことにしよう。
魔力の補充にご協力をお願いいたします。
「奴らが中に入り、エミリアからの合図をもらい次第我々が捕縛のために突入するんだったな。」
「その通りです。あまり情報は無いでしょうが口を割らせるためにも殺さずに捕縛して頂ければ助かります。特にガルスという主犯格には色々と聞かなければ成らないことがありますので。」
どこで今回の魔石を知れたのかや、横流しグループとの接触方法など聞き出さなければいけない情報は多い。
貴重な情報源に死んでもらうわけには行かないのだ。
「抵抗された場合はこちらの身の安全を最優先に行動させて貰うぞ。」
「もちろんです。」
とはいえ出来れば無抵抗でお願いしたいわけでして。
でもむりだよなぁ。
「その間ほかの冒険者が来た場合はお断りする形でいいですか?」
「せっかくきていただいたところ申し訳ないですがそうせざるを得ないと思います。」
「聖日あけに来てくださいとお伝えしても問題ないですか?」
「出来るだけ具体的な日をお伝えするのは避けたいところですが、そのような感じで大丈夫です。」
せっかくの罠を破壊されても困るので冒険者には来て欲しいが今回はお帰りいただくしかない。
今回はダンジョンの維持を最優先にする必要がある。
来週またお願いしたいところだ。
まぁ正直なところ来週になっても誰も来ない可能性もあるわけで。
そこはもう神のみぞ知るという奴ですよ。
「ならばここで決めることはもうなさそうだな。」
「そうですね、後は私とユーリで頑張る感じになるでしょう。」
「私もお手伝いしますので遠慮なく仰ってください。」
「おそらく手が足りなくなるのでお願いすることになると思います。」
猫の手も借りたくなるなるだろうからエミリアにも手伝って貰わなければならない。
主に店のほうを丸投げする感じになるとおもう。
開店してからまともに仕事したのって1日だけじゃないのかな・・・。
まだ3日しかたってないけどさ。
まぁいっか。
今後頑張ります。
「私は騎士団に戻り次第捕縛の際に帯同させる騎士団員を選別しておこう。」
「出来るだけ怪しい人物や組織と接触していそうに無い人でおねがいします。」
「保障は出来ないが善処しよう。」
騎士団員全てのプライベートを把握することは無理だから致し方ない。
だが今回の件から横流しグループに悪い情報が流れるのだけは避けたいので、ここはシルビア様の目利きにかけるしかないよな。
「魔術師ギルドにはミド博士のほうから報告して貰えるようにしておきます。今日持って帰っていただく情報を元に横流しグループの全容解明に向けて動いて貰わなければなりませんので。」
「魔石はお持ち帰りいただきますか?」
「ひとまずこちらで保管しておきます。もし何かあったとしても現物があれば再鑑定できますから。」
帰り道に襲われない保証はどこにも無い。
もちろん帰り道もシルビア様と村で控えている騎士団員の皆さんが一緒だから問題は無いと思うけれど、リスクは分散させておくに越したことは無い。
急に彼らが魔石を帰せと言い出さない保証も無いしね。
そうなったら返すからダンジョンに来いとおびき出しても良い。
なるほど、これはありかもしれない。
候補に入れておこう。
「本当にこの問題はどれだけ大きいんでしょうか。」
「わかりませんね、国家事業の不正がそれこそ全国規模で行われていた可能性があるわけですからとてつもなく大きな問題であるとしかいえません。」
「そんな簡単な話ではないんですけど。そもそも魔石は我が国の主要な輸出品のひとつであり、それが横流しされていたとなれば国の財産を横領していたに等しいんです。」
話の途中に博士が入ってきた。
貴方魔石の鑑定してたんじゃなかったんですか?
もしかしてもう飽きたとか?
「もう終わられたんですか?」
「いや、飽きたので面白そうな話だから加わってみたんだ。」
やっぱり飽きたんかーい。
でも確かに博士の言う通りだ。
国家レベルでの問題になるし、それが不正に輸出されていたとなったら今度は国際問題にも発展してくるだろう。
その魔石をどこの国が買っていただの、この横流しを指示していたのはお前だだの、国同士の争いになるかもしれない。
そうなれば今度は何だ、国際問題からの戦争か?
「随分と大きな問題に手を出してしまいましたね。」
「成り行きとはいえいたしかたないだろう。それにこの問題を無視できなかったという事は我々の正義感は腐っていなかったというわけだからそこは誇りに思うべきだろうな。」
「そうですね。」
人の命を無視することになるわけだからさすがにそれは無理だなぁ。
「ですが、国レベルの問題に私のような小さな商人が絡んでいくというのも些か問題があると思いますけど。」
「それは別に問題にはないとおもいますよ。むしろこれほどの事案が今の今まで気付かれずに行われていたことの方が問題でしょう。それに今回の件に関しては、発見した君達には罰ではなくそれなりの報酬が与えられるべきだとおもいます。」
報酬ですか。
確かに真実を突き止めたのならそれなりの報酬があって然りだとは思う。
その内容が国家レベルでの重要案件ならばなおさらだ。
だが俺たちは報酬が欲しくてこの問題の解決を目指しているわけではないから、いざ報酬をあげますといわれても困るよな。
俺たちが関与してるってバレて、逆恨みで襲われるとか考えたくないし。
「報酬をいただくのは嬉しいですが、その先のことを考えると怖くて受け取れませんね。」
「横流しグループに逆恨みを受けるかもしれないわけか。」
「そうです。私達はただ大人しく商売が出来ればそれだけで十分なんですけど。」
「随分と欲の無い男ですね、君は。」
「欲はありますよ、それはもうたくさん。」
食欲に睡眠欲に性欲に、人間の三大欲求は常に求めていますから。
でも出世欲はあまりないかもしれない。
健康で文化的な生活がおくれればそれで十分です。
「そうは見えないがな。」
「見えないだけで腹の中ではそれはもうすごい欲が蠢いています。それは博士も同じなのでは?」
「確かにその通りだ、欲の無い男などいるはずもないか。」
二人して目をあわせ笑いあう。
男なんてそんなもんですよ。
「博士、急がないと日が暮れてしまいますよ!」
「すまないすぐに取り掛かろう。」
はやくもイラーナ助手の尻に敷かれているミド博士。
あー、でも俺も似たようなものか。
性格的に亭主関白って言うのはどうも苦手だ。
奥さんが強いほうが夫婦は長持ちするって言うし。
べ、別に草食系だからなんかじゃないんだからね!
その後博士の鑑定を待ちながら作戦の詰めを話しているうちに時間はあっという間に過ぎていった。
「待たせたね、全ての鑑定と分類わけが終了したよ。」
「お疲れ様でした。」
「予想していた通り魔石は各鉱山から産出された物がまざっていたよ。若干偏りはあるものの国内全ての鉱山から産出された魔石であることは間違いない、予備鉱山もやはりまざっていた。」
「となると、横流しの規模はやはり全国規模というわけですね。」
「そのようだな。魔石の数としては一番多かったのは40個、最小は8個ほどだ。100個全てが国内の魔石鉱山からのものであることから、別々の商人からこれらを買い付けて数を集めたとは考えにくいだろう。国内には他国の魔石も多数流入しているし、一つも入っていないというのは考えにくい。」
となれば、この見本はやはり横流しグループから仕入れた物と考えて間違いないだろう。
どこかで接触して買い付けを行った。
その際にどういう会話をしていたかは縛り上げないと分からないな。
口を割るかどうかは別として。
「ありがとうございました。この情報はギルドに戻り次第フェリス様にご報告をお願いいたします。」
「これを聞いて苦笑いをする顔が目に浮かぶよ。」
「また仕事が増えたとため息もつくでしょうね。」
話は想像していていたよりも大きく複雑なようだ。
あの書類の山に横流し関係の報告書が追加されていくとなると処理しきれないような気もするが、まぁそこは本人の問題なので俺は知らない。
今度あったときに小言を言われるぐらいだ。
「お疲れのところ申し訳ありませんが、そろそろ戻らねば日が暮れてしまいます。夏節に入り日は長くなりましたが日暮れ以降は危険が多くなりますので。」
「長居は無用だすぐ戻るとしよう。」
「荷物の準備は終わっていますのでいつでも出られますよ。」
「さすがイラーナだな。」
「それが仕事ですから。」
何だかんだいってお似合いの二人だ。
是非ゴールインして頂きたい。
頑張れイラーナ助手、玉の輿は眼の前だ!
「ではシュウイチまた聖日に博士たちを連れてこよう。」
「シルビアも道中くれぐれも気をつけて。」
「今日は他の団員もいるから問題ないだろう。」
「こちらのことはお任せください。」
「エミリアもシュウイチをくれぐれも頼む。危険なことをしそうになったら手段を選ばず止めてくれ。」
ちょっと、手段を選ばずってどういうことですか。
そんなに信頼ない?
確かにいつも一人で動いちゃうけどさぁ・・・。
うん。
思い当たる節がありすぎてなんかすみません。
「シュウイチさん冗談ですよ?」
あまりにもへこんでいたのかエミリアがフォローを入れてくれた。
冗談にきこえないんだよ二人とも。
「そうだ、これを渡すのを忘れていました。」
大事な物を渡し忘れるところだった。
先ほど準備した書簡をシルビア様に託す。
あ、書いたのはエミリアです。
「コッペンへの書簡だな。」
「彼らと連絡を取れるのはコッペンだけですからね、聖日の昼の中休みの頃に来るようにと書いてあります。博士とシルビアの到着は昼頃でも構いませんのでよろしくおねがいいたします。」
「確かに預かった。」
コッペンから奴らに情報が渡り、後は来るのを待つだけとなる。
どこからか情報が漏れて感付かれるのが先か、それとも上手くおびき寄せて捕縛するのが先か。
後ろに控えている組織があまりにも巨大すぎてどういう対応を取ってくるのか見当も付かない。
出来れば何事もなく穏便にその日を迎えられますように。
準備期間は後2日、罠の手配を考えれば実質1日か。
ま、時間が無いのはいつものことだしやれるだけのことをやるだけだ。
「では皆さんお気をつけて。」
「それではまた、行きましょうか博士。」
「道中よろしく頼みます。」
エミリアと共に三人を見送る。
村までついていく事も考えたけど魔石を置きっぱなしにも出来ないので今日はここでお見送りだ。
「大変な1日でしたね。」
「そうですね、でもまだ終わりじゃないんですよ。」
「ユーリたちにお店任せたままでした、すぐに戻りましょう。」
「では私は魔石を店に持って行きます。家に置いておくのは不安なので店の地下に隠しておこうと思います。」
「あそこなら安全ですしね。」
エミリアは商店に、俺は魔石を取りに家に戻る。
綺麗に分類わけされた魔石にはそれぞれ紙が張られており、読むことは出来ないがおそらく産出先を記入してあるのだろう。
大きい山と小さい山があることから、これが先ほど言っていた産出先の偏りという奴なのかな。
せっかく分けてくれているんだし何か袋に入れて混ざらないようにしておくか。
台所を漁り、大小口の縛れる袋を探す。
こんな時ビニール袋があれば便利なんだけど、そんなものあるわけ無いしな。
お、野菜の入った袋がちょうどいい感じだ。
野菜には申し訳ないがちょっとそこに転がっておいてくれ。
後で別の器に入れるから。
食べ物は大切にしないとね。
それぞれを混ざらないように袋に移し、上に乗っていた紙を最後に入れる。
これで開けたらすぐ分かるだろう。
分類わけされた魔石は合計6つ。
つまりは6箇所鉱山があるという事か。
これって結構な数じゃないかな。
主要な輸出品って言ってたしどこかに鉱山都市とかあるのかもしれない。
サンサトローズしか知らないからまた別の町も見てみたい。
せっかく異世界にきているんだからいつの日か世界を旅してみたいなぁ。
みんなと一緒に。
今度は魔石を入れていた器に野菜を移しかえる。
これでよしっと。
「さて、店に戻りますかね。」
木箱に魔石の入った袋を入れて蓋を閉める。
あとは地下に持っていけばおわりっと。
腰を痛めないように気をつけながら木箱を持ち上げる。
昔一度痛めてから重たい物を持つときは慎重に準備をして持ち上げるようにしている。
だってあんな苦痛二度と経験したくないし。
箱を持ち上げてよろよろと家の外に運び出す。
さぁこれが終わったらユーリと詳しい打ち合わせだ。
作戦に失敗はできない。
だからこそ、できることをただするだけだ。
さぁ忙しくなるぞ!
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『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す
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【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】
転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた!
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勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
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お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
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作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
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