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第四章

あの日救われた命だから

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 メルクリアを引率もとい連れて村長の家の前に立つ。

 すみません、迷子をお連れしました。

 なんて感じの見た目だなこりゃ。

 もしくは非行少女をおうちまで連行中とか。

 非行はしそうにないか。

「イナバですがニッカさんは御在宅でしょうか。」

 ドアを叩きしばらく待つ。

 あれ、返事がない。

「おられないようね。」

「そのようですね、お昼前に商店に来ていましたからもう戻っていてもいいと思うんですが。」

「村長さんとお話ができないならさっきの話はなかったことにさせてもらうわよ。」

 まぁそれは構わないんだけど。

 ここまで来た手前どうしたもんか。

 と、ちょうどそこに村人が通りかかった。

 聞いてみるか。

「こんにちは、ニッカさんはどこにいるかご存知ですか?」

「イナバ様!村長でしたら北の畑に行く姿をお見掛けしましたよ。」

「ありがとうございます。」

 忙しい身だし家にじっとしているわけもないか。

「呼んできますのでメルクリアさんはしばらくお待ちください。」

「そうさせてもらうわ。」

 メルクリアと別れ村の北にある畑に向かう。

 モリモリ開拓中の場所と違って静かなものだが、青々とした麦の世話でこちらも忙しそうだ。

 さて村長はどこだ。

 見回してみるが姿が見えない。

 はて、おかしいな。

「すみません、村長はどこに行ったかご存知ですか?」

 わからないなら聞いてみればいい。

「イナバ様!開店おめでとうございます。村長でしたら先ほどドリスさんと一緒に伐採中の森の方へ向かわれましたよ。」

「ありがとうございます。」

 入れ違いになったか。

 村長って聞くと偉そうに椅子にふんぞり返っているようなイメージがあるけど、ニッカさんはそんな感じ一切ないよな。

 常に動いてあれこれ考えている。

 本当にこの村が大切なんだろうなぁ。

 なんて考えながら斧の音が響き渡る森に到着する。

 が、村長らしき姿はなしっと。

「お、兄ちゃんじゃないか。店の方はほったらかしていていいのか?」

「オッサンだけですか、村長知りませんか?」

「オッサンだけとは随分な言い方だなぁ、ニッカさんならさっき家に戻ったぞ。」

「ここでも入れ違いか。」

「なんでもお客さんが来てるとかで村のやつが呼びに来ていたからな。」

 メルクリアの事だろう。

 誰かが気を利かせて呼んでくれたらしい。

 なんだ、これなら動き回らなくてもよかったじゃないか。

「今度店に買い物行くからサービスしてくれよ。」

「お待ちしてますよ。」

 ドリスと別れを告げていそうで村長の家に向かう。

 家の前に姿がないという事はもう中に入ったんだろう。

 とはいえ許可なく中に入るのはあれなのでちゃんとドアをノックしますよ。

「失礼します、イナバですが御在宅でしょうか。」

「どうぞイナバ様お入りください。」

 許可も出たので中に入るとしよう。

 家の中ではちょうどメルクリアに村長お手製のお茶がふるまわれるところだった。

「申し訳ありませんイナバ様、随分と探していただいたようで。」

「こちらこそお忙しい中申し訳ありません。皆さん随分と忙しそうですね。」

「おかげ様でこのまま行けば畑の方は昨年の倍近くの収穫が見込めそうです。伐採中の森も次の住居を作るぐらいには広がりましたので冬までにはメドがつくかと思います。」

「それはよかった、後は水路だけですね。」

 ウェリス達がずいぶんと頑張ってくれているようだ。

 畑の方も特にトラブルなく育っているようだし、春先のアリ事件が嘘のような復興ぶりだな。

「そちらの方もメドが立ちそうです。それで、今日はどのようなご用件でしょうか。」

 俺の前にお茶を出し終えると村長も席に着く。

 メルクリアは黙って聞いているだけのようだ。

 さて、本題に入るとしようか。

「今日はニッカさんにお願いがあって参りました。この村にとってとても重要でそして大切なお話です。」

「随分と大きなお話のようですね、わかりましたどうぞお話しください。」

 ニッカさんが姿勢を正してこちらをしっかりと見つめて来る。

 いつもの優しいだけの目じゃない、真剣な仕事をする目だ。

「今日商店が開店したのはご存知の通りです、素敵な物をありがとうございました。今日ここに来たのは私の置かれている状況の説明とそれに対するご提案についてです。」

「イナバ様の状況ですか。」

「まずはこちらの紹介からさせていただきましょうか、横にいますのはダンジョンスマート商店連合所属人事総括部ならびに採用本部部長メルクリア・フィフティーヌ様です。エミリアの直属の上司という事になります。」

「改めまして、メルクリアと申します。この度は開店をお祝いいただきありがとうございました。」

 メルクリアが立ち上がり村長に一礼する。

「ご丁寧にありがとうございます。この村の長をしておりますニッカと申します。イナバ様エミリア様の上司という事ですが、ここにおられるという事は先ほどの件に深くかかわっておられるという事ですね。」

「その通りです。現在私はこの方の下で商店を運営する立場にあるのですが、商店とダンジョンの管理だけではなくもう一つの命を受けています。それは、街の開発です。」

「街の開発ですか・・・。」

 よくわからないという顔をしているな。

 そりゃそうだ。

 畑違い過ぎてどうくっつけて考えればいいのかわからないのだろう。

「ちょっと話が大雑把でしたね。簡単な流れでお話しすると、ダンジョンを大きくすると冒険者がやってきます。冒険者はダンジョンに潜りつつ商店にもお金を落とします。ではダンジョンが大きくなるとどうなるのか、より多くの冒険者がやってくることになります。そこで、ダンジョンを大きくする傍ら彼らが滞在するための町も一緒に作ってしまえばダンジョン以外の部分でも商売をすることができる。そういう流れを我々は考えています。」

「なるほど、確かに人が来れば滞在する場所が必要になる。滞在する場所を確保する為にはそこに住まい人たちの衣食住から作り上げなければならない。それで街の開発というわけですか。」

「その通りです、さすがニッカさんですね。」

「いえいえ、イナバ様の説明がわかりやすいからですよ。」

 気心の知れた人間に対するプレゼンはプレッシャーが少なくて助かる。

 まぁそこにいる幼女からひしひしと別のプレッシャーを感じはするが・・・。

「私のもう一つの命をご理解いただいた所で私は考えました。このまま商店の近くに村を作り開発していくとどうなるのか。大きくなればいずれこの村を吸収することになる。もしくは大きくなる前にこの村に吸収されてしまうのではないか、と。正直に言いましてダンジョンの近くに街を作るとなるとこの村があまりにも近すぎるのです。」

 せめて2刻程離れていれば。

 もしくはサンサトローズとのちょうど中間にこの村があれば特に問題はなかった。

 お互い喧嘩することなくそれぞれが大きくなっていくことができただろう。

 しかし現実はそれを許さなかった。

 このまま開発を続ければ必ず衝突してしまう。

 それぐらいにお互いの距離は近すぎるのだ。

「開発を進めていけばいずれどこかで衝突してしまうわけですね。」

「争い合っているわけではありませんので、お互いが近づいて行けばいずれ一つになるでしょう。その時にどちらがどちらを吸収する形となるのかそれは私にもわかりません。」

「どちらか大きい方に組みこまれることになる。食糧事情なども考えるとそうならざるを得ないでしょう。」

「最初こそお互いに大変な目にあいましたが、見ず知らずの私に村の皆さんは優しくしてくれます。空気や村の雰囲気、そして何より村そのものが私は好きです。その村が私が作った街のせいで消えてしまうなんてことを私は考えたくありません。そこで、ニッカさんにお願いがあるんです。今行われている村の拡張開発。それに私たち商店連合を加えていただけないかと。」

 この村が無くなるくらいなら、この村そのものを大きくしてしまえばいい。

 そうすれば村は無くなる事無くいつまでも残り続けることができる。

 それが俺の考えついた答えだ。

「なんとなく話は分かりました。しかし、商店連合が私の村の開発を手伝うというのはどういう事でしょうか。」

「話は最初に戻りますが、私が雇われた時の条件に街の開発があります。その開発をこの村を中心に行わせていただきたいのです。新たに街を興すのではなく今あるこの村を大きくする。そうすることで商店連合の目的とも合致し村と村との合体という問題も起こりえません。私の身勝手なお願いではあるのですが、お考えいただくことはできませんでしょうか。」

 俺の身勝手なお願い。

 この一言に尽きる。

 村長からしたら寝耳に水の話だし、いきなりそんなことを言われても困るという所だろう。

 なんせこの開発を指示しているのは領主様なわけで、それに商店連合を勝手に組み込んでもいいかとなると村長一人では決めれない。

 その無理を承知でお願いしているわけだから、俺が村長の立場なら非常にめんどくさいと思うに違いない。

「イナバ様はこの村を大きくすることでご自身の使命を果たすことができる。そして私達としても村を大きくすることでより豊かな生活をおくれるようになるという事ですか。」

「村が大きくなることが直接豊かさにつながるとは思っていません。私の元いた国は豊かではありましたが幸せではありませんでした。村が街になることでたくさんの問題も起こることでしょう。」

「確かにそうですね、豊かかどうかはそこに暮らす人が判断することです。いくら潤っていても心が荒んでしまっては住みよい街になるとは思えない。」

「ですが村が大きくなれば生活が潤います。生活が潤えば心に余裕が生まれます。村の子供たちにも村で生きる以外の選択肢を与えてあげることができる。私はただ大きく豊かになってほしいのではありません。大好きなこの村のまま大きく豊かになってほしい。その為に商店連合を利用していただきたいのです。」

 利用するはちょっと言い過ぎたかもしれない。

 何せ横に利用される商店連合のおえらさんがいるわけだから。

 まぁ、口から出てしまった言葉を消すことはできないので後は野となれ山となれだ。

「仮に私がこのお話を断った場合、イナバ様はどうなるのでしょうか。」

「私がですか?」

 なんで俺の話が出て来るんだろう。

「その通りです。私が断りイナバ様がご自身で街を作っていくとなった場合、イナバ様にどうされるのでしょうか。」

「私は私の命に従い独自に村を興すことでしょう。もちろん、この村に害をなすことなく少しずつですが大きくしていくつもりです。」

「ですが私と違い商店連合という組織に組しているわけですから、どれだけ時間をかけても構わないというわけではないのでしょう?」

「まぁ確かに期限はありますが・・・。」

 それを言うわけにはいかない。

 それを言えば村長は断れなくなってしまう。

 そんなことを許してはならない。

「ですから断った場合イナバ様にはどんな不利益が起こるのかと聞いているのです。」

「それを申し上げるわけにはいきません。」

「それはなぜですか。」

「私は私個人の問題でこの話の答えを出してほしくない。この村を大切にしているニッカさんの立場で決めていただければと思っています。」

「イナバ様はお優しいのですね。」

 優しくはないよ。

 むしろ図々しくて腹黒いです。

 もう真っ黒です。

「仮に答えがどうであれ、私は私の持ちうる全てを使って最善を尽くすまでです。」

「ではイナバ様ではなく別の方に聞きましょう。メルクリア様、イナバ様がもしご自身の開発に失敗された場合あの方はどうなるのでしょうか。」

 そこでなんでそっちに聞いちゃうかなニッカさん。

 俺の状況を聞かないで答えを出してって言ったのに。

「答えてよろしいのかしら。」

「イナバ様にお答えいただけない以上その上司に聞くのが筋ではないでしょうか。」

「・・・確かにそうですわね。」

 俺にはそれを止める権利はない。

「では改めてお聞きします。イナバ様が開発に失敗された場合はあの方はどのような処罰をうけるのでしょうか。」

「イナバシュウイチはその命をもってその責を負うことになります。」

「・・・やはりそのように重たい責を負っておられましたか。」

 いや、まぁ確かにそうなんですけど。

 動機が不純というかなんというか。

 話の流れでそうなったと言いますか。

「私が口を出すのはどうかとおもいましたが、この話は決して悪い話ではないと思いますわ。商店連合としてはこの村の住環境を整えるだけの資材を提供する用意があります。それさえあればこの冬を待たずに快適な生活を送れるようになることをお約束いたします。」

 ここで貴女がプレゼンしてどうするのよ。

 俺の首をかけて説得しろって言ってたんじゃなかったっけ?

「具体的に商店連合は私達の村をどう開発するおつもりですか?」

「私たちはあくまでも共同開発者として村の開発に参加いたします。決定権は村長様にあり私達はそのお手伝いをするまでです。例えば住居を作るのであればその資材を、畑を拡張するのであれば資材と人員を用意いたします。その代わりとして1年以内に住民を倍増し冒険者が滞在できる宿を誘致させていただく。私達が開発に参加する条件はこの二つだけですわ。」

「つまりはそれがイナバ様に求められている条件というわけですか。」

「あくまでも仮のお話です。彼のこの話はまだ私達商店連合本部の許可を得ていません。しかし、村が開発に賛同していただけるのであれば、それを手土産として持っていくつもりではあります。」

 それ何て脅しですか。

 許可しなければこいつの命はないぞと言っているようなものではないのか。

 そもそもメルクリアはこの話に賛同していなかったと思うんだけど。

 どういう風の吹き回しだろうか。

「話だけ聞いていれば確かに私達に悪いところはなさそうですね。」

「そう思っていただけたなら何よりです。」

「あとは村人全員に意見を聞いてから、と言いたいところですが・・・。」

 言いたいところですが?

 全員に聞くとなるとすぐに答えは出ないよなぁ。

 一人一人聞いていくわけだし。

 一週間ぐらい待てば答えが出るだろう。

 問題はそこまで待ってくれるかだけど。

「そこは聞くまでもないと思いますよ。」

 え、聞かないの?

「どういう事でしょうかニッカさん。」

「やれやれ、イナバ様は本当に何もわかっておられないのですね。」

 どうもすみません、わかりません。

 そんなにがっかりして肩を落とさなくてもいいと思うんだけどな。

 確かに俺は鈍感だけどさぁ。

「私にもわかるようにご説明頂けると助かりますわ。」

「そうですね。実際に見ていただければわかると思いますよ。」

 そう言ってニッカさんは立ち上がった。

「どうぞそのまま外に行きましょうか。」

 ニッカさんに促されて家の外へと出る。

 そして近くにいた村人に一言二言話すとそのまま南門の広場へと向かっていった。

 ここも随分と片付いたものだ。

 塀は全部撤去されたが堀は残ったまま。

 ここでアリと戦ったんだよなぁ。

 広場で待つように言われて村長は別の場所へと去って行った。

 残されたのは俺とメルクリアだけ。

 何が起こるのやら。

「何が起こると思っていますの?」

「さぁなんでしょう。さすがに見当もつきませんよ。」

 拳と拳で語り合おうとか言わないよね。

 話を通したければワシを倒してから行くがよい!

 とかなんとか。

 そんな武闘派じゃなかったと思うけど。

 少し待っていると村中から人が集まってきた。

 おいおいまさか本当に全員集めたんじゃないよね。

 確かに50人やそこらだから集めようと思ったらすぐ来るけどさ。

 作業中の人もいるわけでして。

 なんだかんだ考えているうちにあっという間に広場は人でいっぱいになった。

 そして一番最後に村長がやってくる。

「いったい何をするつもりですか?」

「イナバ様はご自身の立場がよくわかっておられないようですので、いい機会ですから知っていただこうと思います。」

 どんな立場かって、ただの商人ですがなにか。

「忙しいところ集まってもらって感謝します。この村がどんどんと大きくなろうとしているのは皆が知っての通りだと思いますが、それは全てイナバ様のおかげであり、彼無しではあの騒動からここまで復興することなどできなかったと私は思っています。」

 いったい何を言い出すんだ。

 確かに俺は手伝いをしたけど復興したのはここに居るみんなの力があってこそだ。

 俺なんて即戦力外だったし。

「これからこの村はさらに大きくなるでしょう。人も増え、それに伴って今までのようなゆっくりとした生活は出来なくなるかもしれない。見知らぬ住人達との諍いやそれ以外の問題ももちろん起こることでしょう。」

 それが村を大きくするという事の現実だ。

 大きくなったから豊かになった、よかったね。

 なんて簡単に済む話ではない。

「今彼は大きな問題に直面しています。この村を大きくすることで彼はその問題から解放される。しかし我々が今までの生活を求め、彼の問題から目を背ければイナバ様は問題にとらわれ命を失うでしょう。」

 命を失うと聞いた瞬間に村人全員が騒めきだした。

 そりゃそうだ。

 いきなり俺が死ぬって言うんだから。

 驚かないわけがない。

「村長、村が大きくなればイナバ様は助かるのか?」

「その通りです。彼はこの村を大きくするという使命を与えられて今日ここに来ました。しかし彼は自分の問題を棚に上げ、大きくするかどうかを私達の好きにしていいと言ってきました。」

「大きくなれば生活は豊かになるんでしょうか。」

「なるでしょう。豊かになりゆとりができる私はそう考えています。」

 村人から上がる質問にニッカさんは一つずつ丁寧に答えていく。

 それから村人から出る多くの質問に答え、質問が途絶えたころにもう一度ニッカさんは話し出した。

「今一度皆に問います。村が大きくなれば問題が増える。しかし大きくなれば村は豊かになり何より彼の命は助かる。彼の求めるまま村を大きくしていいと思いますか?」

「それでイナバ様が助かるなら大きくすればいいじゃないか。」

「そうだそうだ、豊かになるなら困ることだって少なくなるじゃないか。」

「問題だって、話し合えば今までの通り何とかなるんじゃないか。」

「困ったことがあればイナバ様だっているんだから問題ないだろう。」

 いや俺がいても何とかならないことだってあるんだよ?

 神様じゃないんだから。

「イナバ様に助けられた命、今こそお返しするべき時だと思う者は手を上げてほしい。」

 俺が助けた命。

 あの日あの時、皆で助け合った命。

 決して俺が助けたわけではない。

 ないのだが・・・。

 何の迷いもなくその場に集まった全員が村長の問いかけに手を上げた。

「イナバ様、これが私達の総意ですよ。」

 誰もが俺の為に手を上げている。

 村が豊かになるとか村長が言ったからとかじゃない。

 俺が助かるのなら、全員が喜んで手を貸すと言ってくれているんだ。

 それを見て思わず目頭が熱くなった。

 俺はこんなに大勢の人に信頼してもらっていたのか。

 俺はあの時、こんなに多くの人に喜んでもらっていたのか。

 それを今この瞬間に教えてもらった。

 全員が笑顔で俺を見ている。

 俺を信じてくれている。

 なら俺はどうすればいい。

 俺の命の為に村を変えてもいいと言ってくれているこの人たちにどう恩返しすればいい。

 答えは一つだ。

 みんなが喜ぶように大きくしよう。

 みんなが納得する街にしよう。

 みんなのために、できることをしよう。

「みんな、本当にありがとうございます。」

「皆いつかイナバ様に恩返しをしようと願っていたんです。もちろんこの一件ですべて返せたとは誰も思っていません。私達はいつまでも貴方の恩に報いるつもりです。」

「私にできるすべてで村を大きく、より良くしていきます。どうか力を貸してください。」

 全員に向かって頭を下げる。

 涙が一粒だけ地面に落ちた。

 嬉しかった。

 俺がすることは決して無駄じゃなかった。

 そしてこれからもそうありたい。

 みんなに喜んでもらえる人間でありたい。

 その為に、努力をしよう。

 その為に、できることをしよう。

 がんばろう。

「さぁ、答えは出ました。私達はイナバ様の願いに賛同いたします。後はメルクリア様お任せしましたよ。」

「これだけの物を見せられてはできませんでしたとは言えませんわね。」

 顔を上げるとメルクリアがやれやれと肩をすくめていた。

「あとはお任せしますよ、メルクリアさん。」

「仕方ないですが貴方の意見通してみましょう。」

 差し出した手をメルクリアは握り返してきた。

 後は任せた。

 今日も他力本願100%で通常運行です。

 なんせ村人全員が俺の味方なんだから。
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