37 / 520
第二章
信じていた光
しおりを挟む
どれぐらいの時間がたったのかわからない。
永遠とも感じる時間がたったのは間違いないが、それが5分なのか30分なのか1時間なのか確かめる方法がない。
ただ琥珀色の蜜玉を通してゆらゆらと揺れるランプの明かりを見るしかなかった。
縄がほどけるかと思い多少動かしてみたものの動くはずもなく。
下手に倒れて何か言われるのも嫌なので激しく動かすこともできない。
こんな状況だというのに、なんていうかすっごい暇だった。
いかん、このままでは寝てしまいそうだ。
自分の命がなくなるかもしれないという状況だというのに、どれだけ余裕なんだ。
それだけ助けに来てくれることを無意識に信じているという事はわかった。
そうだとしても、寝てしまったら様子を見に来た盗賊に不審がられること間違いない。
神経図太いな!とか思ってくれることはないだろう。
俺だったらビビるね。
こいつどうかしてんじゃないのって疑うね。
ただのバカかもしれないけどさ。
それにしても逐一情報が来ないというのはこんなに不便なことだとは思わなかった。
今思えば宅配の現在地確認とか当たり前だもんな。
荷物がどこにあるか見れるとか画期的なはずなのに今じゃそれが当たり前になりすぎてありがたみもなくなってしまった。
昔は送ってから届くのにものすごい時間かかったものだしそれが当たり前だったんだけど。
あ、でも簡易書留で送ったりするとなかなか届かないから不安になるな。
あれは確認しようもないし。
そうか、そういう意味では全部が全部便利になったわけではないのか。
今の状況も簡易書留が届かない状況と同じと考えれば納得がいく。
届くときは届く。
届かないときは届かない。
それだけだ。
簡易書留に落ち着かせてもらう日が来るとは思っていなかったな。
この世界ではもう受け取ることはないのだけれど、手紙とか出すといつ頃届くんだろう。
飛脚とかいるのかな。
村長の手紙が届いたって言ってたし、そういう職業の人がいても全くおかしくないのか。
文化レベルは江戸時代ぐらいと思った方がいいのかもしれない。
俺は江戸時代にいるのだ。
すっごいファンタジーの。
剣と魔法のある。
うん。
普通にファンタジー世界でいいや。
ちょん髷と武士の世界とか一緒になるとややこしいもんな。
「おい、本当にこいつで間違いないのか。」
1人ツッコミにふけっていると急にドアが開いて先ほどの男と別の男が入ってきた。
なんだなんだ、見世物じゃないんだぞ。
「この顔、間違いないです。昨日の昼間騎士団からこいつが出てくるのを俺は見ました。」
何の話だ。
騎士団から出てきたからどうだっていうんだ。
まさか、騎士団の作戦で動いていることがばれたのか。
「おい、お前に聞きたいことが二つできた。まずはお前が本当に商人なのかという事、もうひとつは昨日の昼間騎士団の詰所から出てきたのはお前かという事。返答次第では身代金に関係なくお前の首をこの短剣で切り落とすことになる。」
ダマスカス短剣の鞘を抜き首元に当てられる。
冷たい刀身が触れた瞬間切れたかと思った。
まずいぞ。
騎士団から出てきた場面を見られたのであれば下手に言い逃れはできない。
嘘だとばれれば首と体が離ればなれだ。
本当に話してもおそらく離ればなれだ。
方法は一つ。
ばれない嘘をつくしかない。
こいつはいつ俺を見た。
昼になってすぐか、それとも中休みの頃か。
どうする。
考えろ。
とりあえず時間を稼げ。
「本物の商人も何もこの見てくれで商人でない可能性がありますか。武器をふるえるほど筋肉はなく、かといって魔法が使えるような人間でもありません。口が達者で元気なだけが取り柄な奴は皆商人になるしかないんですよ。」
「そもそもヒューリンで商人っていうのがおかしい。普通はホビルトの十八番のはずだ。そこにわざわざお前のようなものが入っていけるはずがない。あいつらは同族は信頼するが他種族には厳しいからな、商売人には不向きなはずだ。」
なんだそんなことか。
そんなたらればで話されても何もこわくない。
「不向きであることは認めましょう。ただそうだからと言って私が商人ではない証明にはならないはずです。なんでしたらメルクリア家のご息女に連絡を取ってくださっても構いませんよ、私の知り合いですから身分を証明してくださるはずです。」
「メルクリア家ね。そんな誰でも知っている名前を出されたところで信頼に値しないが、確かにそれだけでは知り合いではないという証明にもならないというわけか。これで水かけは終わらんな。」
「商売は信頼が命です。信頼していただけないのであればそもそも同じ場所に立ってすらいない。そのような不均衡の状態でいい取引はできませんからね。」
信じるに足る情報をお互い出せていないのだ。
どの情報を信じていいかなんて答えのない数式を解いているのと一緒だ。
どんな仮説も立てれるが結果は見えてこない。
「では次だ。昨日の昼に騎士団詰め所から出てきたのはお前で間違いないんだな。」
「昨日の昼間。確かに私は詰所から出てきましたがそれがあなた方を怒らせることに関係があるのですか。」
わからないのであれば本人に答えを聞くまでだ。
「騎士団から出てきたことは認めるが理由はしらばっくれるわけか。まぁいいさ後でじっくり聞けばいい。それで、なんでそんなところから出てきたんだと聞いているんだ。」
どっちのタイミングかはわからない。
わからないが無難な方しかもう選びようがない。
一か八かだ。
「なんでも何も、昨日の昼前に盗賊の一団に襲われましてね。命からがら逃げきったのですが騎士団の皆さんの警告を無視してしまってその事情聴取を受けていたんですよ。」
「昨日の昼前ねぇ。確かにその日は一台の荷馬車を取り逃がしているな、積み荷はなんだ。」
「グレーウルフの毛皮にホワイトウルフの毛皮、それと燻製肉ですよ。まさかあの時の盗賊が目の前にいるなんて思いもしませんでした。あの時そちらが放った矢がホワイトウルフの毛皮に当たっていたら大損だったんですから。」
大損だったのはネムリなのだが、今はそれを十二分に使わせてもらおう。
「確かに荷馬車は毛皮だらけだったし、うちの矢は荷馬車のへりに当たっただけだ。間違いない。」
「まさか二日連続で同じ盗賊に襲われるなんて、さすがに想像していませんでしたよ。」
「俺たちもまさかその時の商人が金持ちだったなんて思いもしねぇよ。あの時はまだ金持ちじゃなかったんだっけか。」
話がそれた。
男は軽く笑うと首筋から短剣を離し鞘に戻す。
「お前の情報に間違いはなかった。そして騎士団から出てきた理由もわかった。この件についてはこちらの手違いのようだ許せ。」
「疑惑が晴れて何よりです、そしてまだ首と体がつながっていることにも感謝しますよ。」
「あとはお前の付き人が無事に身代金を渡していれば話は丸く収まるんだがな。」
まだ帰ってきていないのか。
騎士団がとっちめたか、はたまた支配人がじらしているのか。
まだ堪忍袋の緒は切れていないらしい。
「それに関しては私にはどうしようもありませんね。私はただ待つのみです。」
「お前のように口の回る商人がいれば俺たちの仕事も楽だっただろうに。どうだ、身代金を払ったら俺たちと一緒に仕事をする気はないか。」
おいおい、さっき首を落としてやろうかと脅してた人間を仕事に誘うなよ。
「盗賊の仲間になれという事でしょうか。」
「仲間になる必要はないさ、俺たちが用意した品を捌いてくれさえすればいい。それなりの分け前も用意するつもりだ。」
「身代金を取られた人間と仕事をすることはできませんよ。返していただけるのであれば別ですが。」
「それは無理な話だな。この金は俺たちが今すぐ必要な金であってお前に返す義理もない。むしろ儲け話を提供している俺たちに見返りがあってもいいぐらいじゃないのか。」
確かに一理ある。
儲け話を持ってきたのだからキックバックしろというわけだ。
「盗品を捌いて金儲けをしろというわけですか。しかし、同じようなことをしていた人間が消された事件がありましたね、市場で噂になっていましたが貴方たちの仕業ではないのですか。」
「よく知っているな。しかしあれは売上金を持ち逃げしようとした商人が悪い。ちゃんと俺たちに返してさえいれば命まで取ることはしなかったさ。」
「つまり私も同じようなことをすれば刺殺されるという事ですか。」
「商売は信頼が命、お前さんが言ったとおりの事だ。信頼を裏切るようなことをすれば命はなくなるというわけだな。」
いう事を聞き続ければうまい汁を吸わせてやる。
裏切れば命はない。
まさにマフィアの世界だな。
異世界に来てまでマフィアと手を組む誘いを受けるとは思わなかった。
「それで、それだけのお金を集めてあなた方は何をしようというのですか。ただ遊ぶ金ほしさにこんなことをしているのではないのでしょう。」
ここだ。
これが核心だ。
何故こいつらは砦を作っているのかという理由が聞きたい。
「俺たちは自分たちの国がほしいんだよ。誰にも邪魔されず、税金を搾り取られることもなく、生きるのにも困ることのない俺たちだけの国がな。その国を作るのには金が要る、だから金を集めているのさ。」
「そんな国が本当に作れるというのですか。夢物語ではなく現実に可能であると貴方は言うのでしょうか。」
「夢物語でもなければ嘘でもない、本当に実在するからこそ俺たちは危ない橋を渡っているのさ。この町から東に行った山沿いに俺たちの国はある。どうだ、俺たちの国で一緒に楽しくやる気はないか。」
東行った山沿い。
それがほしかった。
その情報さえあれば十分だ。
後はここからおさらばすれば問題ない。
蜜玉と短刀は返してもらうけどな。
エミリア信じてるよ。
「その要請を拒んだら私はどうなるんです。」
「話を聞いた以上生きて返すわけにはいかないな。俺たちの仕事に加わる気がないのなら首と胴がサヨナラするだけだ。ともに仕事をするのなら喜んで歓迎しよう。お前のように頭の切れるやつはどちらが得かすぐわかると思うがな。」
「少し、考えさせてもらえますか。」
「答えは身代金が届いたときに聞くとしよう。それまでその頭でしっかり考えるんだな。おい、行くぞお前ら。」
部屋は再び静かになった。
あの男は真剣に俺がほしいのだろう。
あ、薔薇的な意味じゃないからね。
敵とはいえ真剣に求められる気持ちは決して不快ではない。
むしろ光栄だ。
ただ残念なのはその相手が間もなくいなくなってしまうという事だろう。
できれば生きていてほしいが奴の事だ、生かされるぐらいなら死を選ぶに違いない。
少しの間話しただけだがそう言い切れる。
敵でなければうまい酒を呑めたかもしれないな。
身代金が届くのが先か。
それともエミリアが見つけてくれるのが先か。
おそらく後者だ。
間違いない。
なぜならすぐそこにエミリアの気配を感じるからだ。
この壁の向こうに恐らくエミリアがいる。
確証はない。
ただ、エミリアの気配だけはわかる。
これが愛の力という奴だろうか。
そもそも愛し合ったこともないんだけど。
信じていたからこそ分かったのかもしれない。
そしてエミリアがいるという事はシルビア達精鋭25人も同様にすぐそばにいるという事だ。
ここが戦場になるのも時間の問題か。
ならば逃げる準備をしなければいけないな。
椅子に座ったままの姿勢で立ち上がり部屋の隅の方へとヨチヨチ歩く。
へっぴり腰でよぼよぼの老人のような姿勢だが後ろ手に縛られた状態ではこれが精いっぱいだ。
部屋の隅に積み上げられた木箱のそばまで行き。角の部分で縄をこする。
縄が食い込み木箱がこすれて、動かす度に痛みが強くなる。
でも我慢できないほどではない。
たとえ血が出たとしても命さえあればまた治すこともできる。
つば付けとけば治るって昔はよく言われたっけ。
こすりつける摩擦熱で手首が熱くなってきた。
言い換えればそれだけ縄に抵抗が加えられているという事だろう。
漫画でよくある割れたガラスの破片とかがあれば一番なんだが、残念ながらそんな便利なものはこの部屋にはなかった。
なので別の漫画で得た知識を使って脱出しようと考えたのがこの方法だった。
オタクはいつも二次元からたくさんのものを学んでいるのさ。
どのぐらいこすり続けただろうか。
縄はほつれ、最後の一本が切れた瞬間に手が自由になった。
残りの縄をほどき久方ぶりの自由をかみしめる。
前屈、屈伸、背伸び、アキレス腱。
ラジオ体操の要領で体をほぐし、突入のタイミングを待つ。
おっと、蜜玉を忘れちゃいけないな。
あとはあの男から俺の短刀を取り返すだけ。
この部屋のドアは押して入るタイプだ。
つまり、開いたドアの後ろに隠れれば一瞬だが部屋の中の死角になる。
突入が始まれば真っ先にこの部屋に向かってくるはずだ。
そして飛び込んできた瞬間いるはずのない人間がいないことに一瞬のスキができる。
その隙を使って外に逃げるか攻撃するかどちらかを瞬時に選ばなければならない。
できれば戦いたくない。
だって勝てる自信ないし。
スポーツも満足にできないオタクがかなうわけないじゃないか。
得意な事。
それはすなわち逃げる事。
逃げ足だけは自信がある。
じっと身をひそめ待つこと数分。
兵士たちの怒号と共に爆発音が響き渡った。
始まった。
外から金属同士がぶつかる音、叫び声、うめき声、アリとの戦いのときには聞くことのなかった生々しい戦いの音が聞こえてきた。
不思議と怖くなかった。
命のやり取りをまさにすぐ隣でしているというのに、実感がなかったのかもしれない。
そして次の瞬間、勢い良くドアが開かれ誰かが部屋に飛び込んできた。
「な、いない!クソどこに行った。」
この声はあの男だ。
ほどかれた縄、倒れた椅子。
それだけを見れば逃げたと思うのも仕方がないだろう。
その隙を見逃さなかった。
霊長類最強の乙女が使う高速タックルのように素早く相手の腰に全体重をぶつけ、押し倒す。
とっさのことに反応できなかった男はそのままの勢いで部屋の中央まで吹き飛んでいく。
床に響く金属音。
黒く光る刀身を見つけ思わず手を伸ばした。
「貴様そんなところに!」
短剣を素早く手元に引き寄せ、相手に向かって水平に振りかざす。
とびかかろうとした男の眼前をダマスカスの刀身が引き裂いた。
動けなくなる2人。
背後から聞こえる戦いの音がフェードアウトしていき、静寂だけが二人を支配していた。
「この騒動、やはりお前の手引きだったのか。」
「私は何もしていませんよ。ただ、エサにくらいついてきたのは貴方たちだったという事だけです。」
「エサ、だって。俺たちをだましてここに潜入したっていうのか。」
「貴方たちが餌を自分の巣に運び入れ、そのエサを目指して別の獲物がここに来たただそれだけの事です。」
相手に突き付けた刀身が震える。
恐怖で震えているのではない。
この剣をどう収めていいのかわからないのだ。
「自分をエサにして仲間を引き入れるなんてな、やっぱりその頭脳俺たちのところで使うべきだった。」
「残念ながら私の頭は私のためだけに使うと決めているんです。他人のために使えるほど要領はよくないんですよ。」
「それじゃあ、今から俺が使ってやるとしようか!」
剣先にむかって男が動いた瞬間、その姿が目の前から消え今度は自分が宙を舞っていた。
壁にたたきつけられ、短剣を落としてしまう。
その隙を今度は男が逃さなかった。
「イナバ殿無事か!」
ドアを開け飛び込んできたシルビア様の目に映っていたのは、壁の前でうずくまる俺と、その俺に向かって剣を突きつけている男の姿だろう。
「これはこれはシルビア様、こんなところまでご苦労様です。」
「貴様は、騎士団にいたウェリスといったか。自分が何をしているのかわかっているのか。」
「わかっていますとも。男に剣を向け殺してやろうとしている所ですよ。」
シルビア様と男が視線を交差させる。
その隙に逃げるなんて、できるはずもなかった。
今動けば間違いなく殺される。
素人でもわかることだ。
「剣を下せば私の名前でそれなりの減刑を与えてやることもできる。情報を流せばより寛大な措置を得ることができるだろう。悪い話ではあるまい。」
司法取引という奴か。
情報を提供すれば刑を減免できるという奴だな。
「私は別に捕まるのを恐れているわけではないんですよ。この状況で生きて逃げられるとも思っていない。ならば、今目の前にいる貴女が助けようとしている男を道連れにすれば貴女にとって非常に悔しい結果になるのではと思っているんです。」
剣が、額に押し付けられる。
額に剣先がめり込み血が鼻の上を通り口の中に流れ込んだ。
鉄の味がした。
生きている者の命の味だ。
俺はまだ生きている。
そして、死ぬわけにはいかない。
絶対助けると約束してくれた彼女のためにも。
この命、くれてやるわけにはいかない。
「道連れに死んでやるなんて、ずいぶんと身勝手な事いうじゃないですか。」
額に剣先をめり込ませたまま立ち上がる。
出血が増えるが知ったこっちゃない。
頭蓋骨は随分と頑丈にできているそうだ。
これぐらいで貫通することはない。
たぶん。
「この命はね、そんな簡単にくれてやるわけにはいかないんですよ。死ぬなら一人で勝手に死にやがれ。」
「イナバ殿何を。」
「お前、自分が何をしているのかわかっているのか。」
「わかってるさ、生き残るための最後の悪あがきをしているんだよ。エミリア今だ!」
「はい、シュウイチさん!」
合図と共に俺の後ろの壁が崩れる。
崩れた壁に向かって後ろに倒れこんでいくとその先にエミリアがいた。
崩れた壁から信じていた光が差し込んでくる。
赤く燃え上がるその光はエミリアの構えた魔法の炎。
火球を構えて最高のタイミングを待ち構えていたのだ。
男が動き出すよりも早くエミリアの火球が俺の上を通り過ぎ、男の全身を包み込む。
爆発音が響き渡り、男の叫び声が聞こえてくる。
約束通りエミリアはやってきた。
必ず助けに来ると信じていた気持ちが報われた。
信じあっていた気持ちが通じ合った瞬間だった。
「待ってたよエミリア。」
「お待たせしましたシュウイチさん。」
最高の笑顔でエミリアが迎えてくれた。
本当によかった。
この笑顔が見れて本当に良かった。
こうして、他力本願100%作戦は無事達成されたのであった。
永遠とも感じる時間がたったのは間違いないが、それが5分なのか30分なのか1時間なのか確かめる方法がない。
ただ琥珀色の蜜玉を通してゆらゆらと揺れるランプの明かりを見るしかなかった。
縄がほどけるかと思い多少動かしてみたものの動くはずもなく。
下手に倒れて何か言われるのも嫌なので激しく動かすこともできない。
こんな状況だというのに、なんていうかすっごい暇だった。
いかん、このままでは寝てしまいそうだ。
自分の命がなくなるかもしれないという状況だというのに、どれだけ余裕なんだ。
それだけ助けに来てくれることを無意識に信じているという事はわかった。
そうだとしても、寝てしまったら様子を見に来た盗賊に不審がられること間違いない。
神経図太いな!とか思ってくれることはないだろう。
俺だったらビビるね。
こいつどうかしてんじゃないのって疑うね。
ただのバカかもしれないけどさ。
それにしても逐一情報が来ないというのはこんなに不便なことだとは思わなかった。
今思えば宅配の現在地確認とか当たり前だもんな。
荷物がどこにあるか見れるとか画期的なはずなのに今じゃそれが当たり前になりすぎてありがたみもなくなってしまった。
昔は送ってから届くのにものすごい時間かかったものだしそれが当たり前だったんだけど。
あ、でも簡易書留で送ったりするとなかなか届かないから不安になるな。
あれは確認しようもないし。
そうか、そういう意味では全部が全部便利になったわけではないのか。
今の状況も簡易書留が届かない状況と同じと考えれば納得がいく。
届くときは届く。
届かないときは届かない。
それだけだ。
簡易書留に落ち着かせてもらう日が来るとは思っていなかったな。
この世界ではもう受け取ることはないのだけれど、手紙とか出すといつ頃届くんだろう。
飛脚とかいるのかな。
村長の手紙が届いたって言ってたし、そういう職業の人がいても全くおかしくないのか。
文化レベルは江戸時代ぐらいと思った方がいいのかもしれない。
俺は江戸時代にいるのだ。
すっごいファンタジーの。
剣と魔法のある。
うん。
普通にファンタジー世界でいいや。
ちょん髷と武士の世界とか一緒になるとややこしいもんな。
「おい、本当にこいつで間違いないのか。」
1人ツッコミにふけっていると急にドアが開いて先ほどの男と別の男が入ってきた。
なんだなんだ、見世物じゃないんだぞ。
「この顔、間違いないです。昨日の昼間騎士団からこいつが出てくるのを俺は見ました。」
何の話だ。
騎士団から出てきたからどうだっていうんだ。
まさか、騎士団の作戦で動いていることがばれたのか。
「おい、お前に聞きたいことが二つできた。まずはお前が本当に商人なのかという事、もうひとつは昨日の昼間騎士団の詰所から出てきたのはお前かという事。返答次第では身代金に関係なくお前の首をこの短剣で切り落とすことになる。」
ダマスカス短剣の鞘を抜き首元に当てられる。
冷たい刀身が触れた瞬間切れたかと思った。
まずいぞ。
騎士団から出てきた場面を見られたのであれば下手に言い逃れはできない。
嘘だとばれれば首と体が離ればなれだ。
本当に話してもおそらく離ればなれだ。
方法は一つ。
ばれない嘘をつくしかない。
こいつはいつ俺を見た。
昼になってすぐか、それとも中休みの頃か。
どうする。
考えろ。
とりあえず時間を稼げ。
「本物の商人も何もこの見てくれで商人でない可能性がありますか。武器をふるえるほど筋肉はなく、かといって魔法が使えるような人間でもありません。口が達者で元気なだけが取り柄な奴は皆商人になるしかないんですよ。」
「そもそもヒューリンで商人っていうのがおかしい。普通はホビルトの十八番のはずだ。そこにわざわざお前のようなものが入っていけるはずがない。あいつらは同族は信頼するが他種族には厳しいからな、商売人には不向きなはずだ。」
なんだそんなことか。
そんなたらればで話されても何もこわくない。
「不向きであることは認めましょう。ただそうだからと言って私が商人ではない証明にはならないはずです。なんでしたらメルクリア家のご息女に連絡を取ってくださっても構いませんよ、私の知り合いですから身分を証明してくださるはずです。」
「メルクリア家ね。そんな誰でも知っている名前を出されたところで信頼に値しないが、確かにそれだけでは知り合いではないという証明にもならないというわけか。これで水かけは終わらんな。」
「商売は信頼が命です。信頼していただけないのであればそもそも同じ場所に立ってすらいない。そのような不均衡の状態でいい取引はできませんからね。」
信じるに足る情報をお互い出せていないのだ。
どの情報を信じていいかなんて答えのない数式を解いているのと一緒だ。
どんな仮説も立てれるが結果は見えてこない。
「では次だ。昨日の昼に騎士団詰め所から出てきたのはお前で間違いないんだな。」
「昨日の昼間。確かに私は詰所から出てきましたがそれがあなた方を怒らせることに関係があるのですか。」
わからないのであれば本人に答えを聞くまでだ。
「騎士団から出てきたことは認めるが理由はしらばっくれるわけか。まぁいいさ後でじっくり聞けばいい。それで、なんでそんなところから出てきたんだと聞いているんだ。」
どっちのタイミングかはわからない。
わからないが無難な方しかもう選びようがない。
一か八かだ。
「なんでも何も、昨日の昼前に盗賊の一団に襲われましてね。命からがら逃げきったのですが騎士団の皆さんの警告を無視してしまってその事情聴取を受けていたんですよ。」
「昨日の昼前ねぇ。確かにその日は一台の荷馬車を取り逃がしているな、積み荷はなんだ。」
「グレーウルフの毛皮にホワイトウルフの毛皮、それと燻製肉ですよ。まさかあの時の盗賊が目の前にいるなんて思いもしませんでした。あの時そちらが放った矢がホワイトウルフの毛皮に当たっていたら大損だったんですから。」
大損だったのはネムリなのだが、今はそれを十二分に使わせてもらおう。
「確かに荷馬車は毛皮だらけだったし、うちの矢は荷馬車のへりに当たっただけだ。間違いない。」
「まさか二日連続で同じ盗賊に襲われるなんて、さすがに想像していませんでしたよ。」
「俺たちもまさかその時の商人が金持ちだったなんて思いもしねぇよ。あの時はまだ金持ちじゃなかったんだっけか。」
話がそれた。
男は軽く笑うと首筋から短剣を離し鞘に戻す。
「お前の情報に間違いはなかった。そして騎士団から出てきた理由もわかった。この件についてはこちらの手違いのようだ許せ。」
「疑惑が晴れて何よりです、そしてまだ首と体がつながっていることにも感謝しますよ。」
「あとはお前の付き人が無事に身代金を渡していれば話は丸く収まるんだがな。」
まだ帰ってきていないのか。
騎士団がとっちめたか、はたまた支配人がじらしているのか。
まだ堪忍袋の緒は切れていないらしい。
「それに関しては私にはどうしようもありませんね。私はただ待つのみです。」
「お前のように口の回る商人がいれば俺たちの仕事も楽だっただろうに。どうだ、身代金を払ったら俺たちと一緒に仕事をする気はないか。」
おいおい、さっき首を落としてやろうかと脅してた人間を仕事に誘うなよ。
「盗賊の仲間になれという事でしょうか。」
「仲間になる必要はないさ、俺たちが用意した品を捌いてくれさえすればいい。それなりの分け前も用意するつもりだ。」
「身代金を取られた人間と仕事をすることはできませんよ。返していただけるのであれば別ですが。」
「それは無理な話だな。この金は俺たちが今すぐ必要な金であってお前に返す義理もない。むしろ儲け話を提供している俺たちに見返りがあってもいいぐらいじゃないのか。」
確かに一理ある。
儲け話を持ってきたのだからキックバックしろというわけだ。
「盗品を捌いて金儲けをしろというわけですか。しかし、同じようなことをしていた人間が消された事件がありましたね、市場で噂になっていましたが貴方たちの仕業ではないのですか。」
「よく知っているな。しかしあれは売上金を持ち逃げしようとした商人が悪い。ちゃんと俺たちに返してさえいれば命まで取ることはしなかったさ。」
「つまり私も同じようなことをすれば刺殺されるという事ですか。」
「商売は信頼が命、お前さんが言ったとおりの事だ。信頼を裏切るようなことをすれば命はなくなるというわけだな。」
いう事を聞き続ければうまい汁を吸わせてやる。
裏切れば命はない。
まさにマフィアの世界だな。
異世界に来てまでマフィアと手を組む誘いを受けるとは思わなかった。
「それで、それだけのお金を集めてあなた方は何をしようというのですか。ただ遊ぶ金ほしさにこんなことをしているのではないのでしょう。」
ここだ。
これが核心だ。
何故こいつらは砦を作っているのかという理由が聞きたい。
「俺たちは自分たちの国がほしいんだよ。誰にも邪魔されず、税金を搾り取られることもなく、生きるのにも困ることのない俺たちだけの国がな。その国を作るのには金が要る、だから金を集めているのさ。」
「そんな国が本当に作れるというのですか。夢物語ではなく現実に可能であると貴方は言うのでしょうか。」
「夢物語でもなければ嘘でもない、本当に実在するからこそ俺たちは危ない橋を渡っているのさ。この町から東に行った山沿いに俺たちの国はある。どうだ、俺たちの国で一緒に楽しくやる気はないか。」
東行った山沿い。
それがほしかった。
その情報さえあれば十分だ。
後はここからおさらばすれば問題ない。
蜜玉と短刀は返してもらうけどな。
エミリア信じてるよ。
「その要請を拒んだら私はどうなるんです。」
「話を聞いた以上生きて返すわけにはいかないな。俺たちの仕事に加わる気がないのなら首と胴がサヨナラするだけだ。ともに仕事をするのなら喜んで歓迎しよう。お前のように頭の切れるやつはどちらが得かすぐわかると思うがな。」
「少し、考えさせてもらえますか。」
「答えは身代金が届いたときに聞くとしよう。それまでその頭でしっかり考えるんだな。おい、行くぞお前ら。」
部屋は再び静かになった。
あの男は真剣に俺がほしいのだろう。
あ、薔薇的な意味じゃないからね。
敵とはいえ真剣に求められる気持ちは決して不快ではない。
むしろ光栄だ。
ただ残念なのはその相手が間もなくいなくなってしまうという事だろう。
できれば生きていてほしいが奴の事だ、生かされるぐらいなら死を選ぶに違いない。
少しの間話しただけだがそう言い切れる。
敵でなければうまい酒を呑めたかもしれないな。
身代金が届くのが先か。
それともエミリアが見つけてくれるのが先か。
おそらく後者だ。
間違いない。
なぜならすぐそこにエミリアの気配を感じるからだ。
この壁の向こうに恐らくエミリアがいる。
確証はない。
ただ、エミリアの気配だけはわかる。
これが愛の力という奴だろうか。
そもそも愛し合ったこともないんだけど。
信じていたからこそ分かったのかもしれない。
そしてエミリアがいるという事はシルビア達精鋭25人も同様にすぐそばにいるという事だ。
ここが戦場になるのも時間の問題か。
ならば逃げる準備をしなければいけないな。
椅子に座ったままの姿勢で立ち上がり部屋の隅の方へとヨチヨチ歩く。
へっぴり腰でよぼよぼの老人のような姿勢だが後ろ手に縛られた状態ではこれが精いっぱいだ。
部屋の隅に積み上げられた木箱のそばまで行き。角の部分で縄をこする。
縄が食い込み木箱がこすれて、動かす度に痛みが強くなる。
でも我慢できないほどではない。
たとえ血が出たとしても命さえあればまた治すこともできる。
つば付けとけば治るって昔はよく言われたっけ。
こすりつける摩擦熱で手首が熱くなってきた。
言い換えればそれだけ縄に抵抗が加えられているという事だろう。
漫画でよくある割れたガラスの破片とかがあれば一番なんだが、残念ながらそんな便利なものはこの部屋にはなかった。
なので別の漫画で得た知識を使って脱出しようと考えたのがこの方法だった。
オタクはいつも二次元からたくさんのものを学んでいるのさ。
どのぐらいこすり続けただろうか。
縄はほつれ、最後の一本が切れた瞬間に手が自由になった。
残りの縄をほどき久方ぶりの自由をかみしめる。
前屈、屈伸、背伸び、アキレス腱。
ラジオ体操の要領で体をほぐし、突入のタイミングを待つ。
おっと、蜜玉を忘れちゃいけないな。
あとはあの男から俺の短刀を取り返すだけ。
この部屋のドアは押して入るタイプだ。
つまり、開いたドアの後ろに隠れれば一瞬だが部屋の中の死角になる。
突入が始まれば真っ先にこの部屋に向かってくるはずだ。
そして飛び込んできた瞬間いるはずのない人間がいないことに一瞬のスキができる。
その隙を使って外に逃げるか攻撃するかどちらかを瞬時に選ばなければならない。
できれば戦いたくない。
だって勝てる自信ないし。
スポーツも満足にできないオタクがかなうわけないじゃないか。
得意な事。
それはすなわち逃げる事。
逃げ足だけは自信がある。
じっと身をひそめ待つこと数分。
兵士たちの怒号と共に爆発音が響き渡った。
始まった。
外から金属同士がぶつかる音、叫び声、うめき声、アリとの戦いのときには聞くことのなかった生々しい戦いの音が聞こえてきた。
不思議と怖くなかった。
命のやり取りをまさにすぐ隣でしているというのに、実感がなかったのかもしれない。
そして次の瞬間、勢い良くドアが開かれ誰かが部屋に飛び込んできた。
「な、いない!クソどこに行った。」
この声はあの男だ。
ほどかれた縄、倒れた椅子。
それだけを見れば逃げたと思うのも仕方がないだろう。
その隙を見逃さなかった。
霊長類最強の乙女が使う高速タックルのように素早く相手の腰に全体重をぶつけ、押し倒す。
とっさのことに反応できなかった男はそのままの勢いで部屋の中央まで吹き飛んでいく。
床に響く金属音。
黒く光る刀身を見つけ思わず手を伸ばした。
「貴様そんなところに!」
短剣を素早く手元に引き寄せ、相手に向かって水平に振りかざす。
とびかかろうとした男の眼前をダマスカスの刀身が引き裂いた。
動けなくなる2人。
背後から聞こえる戦いの音がフェードアウトしていき、静寂だけが二人を支配していた。
「この騒動、やはりお前の手引きだったのか。」
「私は何もしていませんよ。ただ、エサにくらいついてきたのは貴方たちだったという事だけです。」
「エサ、だって。俺たちをだましてここに潜入したっていうのか。」
「貴方たちが餌を自分の巣に運び入れ、そのエサを目指して別の獲物がここに来たただそれだけの事です。」
相手に突き付けた刀身が震える。
恐怖で震えているのではない。
この剣をどう収めていいのかわからないのだ。
「自分をエサにして仲間を引き入れるなんてな、やっぱりその頭脳俺たちのところで使うべきだった。」
「残念ながら私の頭は私のためだけに使うと決めているんです。他人のために使えるほど要領はよくないんですよ。」
「それじゃあ、今から俺が使ってやるとしようか!」
剣先にむかって男が動いた瞬間、その姿が目の前から消え今度は自分が宙を舞っていた。
壁にたたきつけられ、短剣を落としてしまう。
その隙を今度は男が逃さなかった。
「イナバ殿無事か!」
ドアを開け飛び込んできたシルビア様の目に映っていたのは、壁の前でうずくまる俺と、その俺に向かって剣を突きつけている男の姿だろう。
「これはこれはシルビア様、こんなところまでご苦労様です。」
「貴様は、騎士団にいたウェリスといったか。自分が何をしているのかわかっているのか。」
「わかっていますとも。男に剣を向け殺してやろうとしている所ですよ。」
シルビア様と男が視線を交差させる。
その隙に逃げるなんて、できるはずもなかった。
今動けば間違いなく殺される。
素人でもわかることだ。
「剣を下せば私の名前でそれなりの減刑を与えてやることもできる。情報を流せばより寛大な措置を得ることができるだろう。悪い話ではあるまい。」
司法取引という奴か。
情報を提供すれば刑を減免できるという奴だな。
「私は別に捕まるのを恐れているわけではないんですよ。この状況で生きて逃げられるとも思っていない。ならば、今目の前にいる貴女が助けようとしている男を道連れにすれば貴女にとって非常に悔しい結果になるのではと思っているんです。」
剣が、額に押し付けられる。
額に剣先がめり込み血が鼻の上を通り口の中に流れ込んだ。
鉄の味がした。
生きている者の命の味だ。
俺はまだ生きている。
そして、死ぬわけにはいかない。
絶対助けると約束してくれた彼女のためにも。
この命、くれてやるわけにはいかない。
「道連れに死んでやるなんて、ずいぶんと身勝手な事いうじゃないですか。」
額に剣先をめり込ませたまま立ち上がる。
出血が増えるが知ったこっちゃない。
頭蓋骨は随分と頑丈にできているそうだ。
これぐらいで貫通することはない。
たぶん。
「この命はね、そんな簡単にくれてやるわけにはいかないんですよ。死ぬなら一人で勝手に死にやがれ。」
「イナバ殿何を。」
「お前、自分が何をしているのかわかっているのか。」
「わかってるさ、生き残るための最後の悪あがきをしているんだよ。エミリア今だ!」
「はい、シュウイチさん!」
合図と共に俺の後ろの壁が崩れる。
崩れた壁に向かって後ろに倒れこんでいくとその先にエミリアがいた。
崩れた壁から信じていた光が差し込んでくる。
赤く燃え上がるその光はエミリアの構えた魔法の炎。
火球を構えて最高のタイミングを待ち構えていたのだ。
男が動き出すよりも早くエミリアの火球が俺の上を通り過ぎ、男の全身を包み込む。
爆発音が響き渡り、男の叫び声が聞こえてくる。
約束通りエミリアはやってきた。
必ず助けに来ると信じていた気持ちが報われた。
信じあっていた気持ちが通じ合った瞬間だった。
「待ってたよエミリア。」
「お待たせしましたシュウイチさん。」
最高の笑顔でエミリアが迎えてくれた。
本当によかった。
この笑顔が見れて本当に良かった。
こうして、他力本願100%作戦は無事達成されたのであった。
29
お気に入りに追加
202
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは
竹井ゴールド
ライト文芸
日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。
その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。
青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。
その後がよろしくない。
青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。
妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。
長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。
次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。
三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。
四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。
この5人とも青夜は家族となり、
・・・何これ? 少し想定外なんだけど。
【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】
【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】
【2023/6/5、お気に入り数2130突破】
【アルファポリスのみの投稿です】
【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】
【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】
【未完】
不貞の子を身籠ったと夫に追い出されました。生まれた子供は『精霊のいとし子』のようです。
桧山 紗綺
恋愛
【完結】嫁いで5年。子供を身籠ったら追い出されました。不貞なんてしていないと言っても聞く耳をもちません。生まれた子は間違いなく夫の子です。夫の子……ですが。 私、離婚された方が良いのではないでしょうか。
戻ってきた実家で子供たちと幸せに暮らしていきます。
『精霊のいとし子』と呼ばれる存在を授かった主人公の、可愛い子供たちとの暮らしと新しい恋とか愛とかのお話です。
※※番外編も完結しました。番外編は色々な視点で書いてます。
時系列も結構バラバラに本編の間の話や本編後の色々な出来事を書きました。
一通り主人公の周りの視点で書けたかな、と。
番外編の方が本編よりも長いです。
気がついたら10万文字を超えていました。
随分と長くなりましたが、お付き合いくださってありがとうございました!
転売屋(テンバイヤー)は相場スキルで財を成す
エルリア
ファンタジー
【祝!第17回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞!】
転売屋(テンバイヤー)が異世界に飛ばされたらチートスキルを手にしていた!
元の世界では疎まれていても、こっちの世界なら問題なし。
相場スキルを駆使して目指せ夢のマイショップ!
ふとしたことで異世界に飛ばされた中年が、青年となってお金儲けに走ります。
お金は全てを解決する、それはどの世界においても同じ事。
金金金の主人公が、授かった相場スキルで私利私欲の為に稼ぎまくります。
凡人がおまけ召喚されてしまった件
根鳥 泰造
ファンタジー
勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。
仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。
それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。
異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。
最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。
だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。
祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。
全能で楽しく公爵家!!
山椒
ファンタジー
平凡な人生であることを自負し、それを受け入れていた二十四歳の男性が交通事故で若くして死んでしまった。
未練はあれど死を受け入れた男性は、転生できるのであれば二度目の人生も平凡でモブキャラのような人生を送りたいと思ったところ、魔神によって全能の力を与えられてしまう!
転生した先は望んだ地位とは程遠い公爵家の長男、アーサー・ランスロットとして生まれてしまった。
スローライフをしようにも公爵家でできるかどうかも怪しいが、のんびりと全能の力を発揮していく転生者の物語。
※少しだけ設定を変えているため、書き直し、設定を加えているリメイク版になっています。
※リメイク前まで投稿しているところまで書き直せたので、二章はかなりの速度で投稿していきます。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる