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第一章

番外編~ある日のメルクリア~

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 久しぶりの休日、メルクリアは人を待っていた。

「遅いわね、あの子が遅刻するなんて何かあったのかしら。」

 ドラークの町、噴水広場カニの像前に10刻。

 現在、10刻を少し過ぎたところ。

 ドラークの町はこの界隈では一番の歓楽街であり、食の宝庫でもあった。

 海が近く、名物は後ろにそびえるカニだ。

 なにも名物だからってこんな石像を作る必要があったのだろうか。

 大きい。

 メルクリアが5人は乗れるのではないだろうか。

 乗ってみたいと思うような年ではもうないが、思わないわけでもない。

 つまりそんな微妙なお年頃なのだ。

 え、おいくつですか。

 女性に年齢を聞くのは野暮ってものですよ、旦那。

 メルクリアが待つのは自分の一番かわいがっている後輩。

 仕事の要領も良く、趣味も合う。

 今日待ち合わせをしているのも、この町にある有名なスイーツを食べに行くためだ。

 時間に厳しく、いつもは10分前には待ち合わせ場所に来ているはずの後輩が今日は遅刻している。

 何かあったのではないか。

 そう不安になる。

 例えば、ここに来るまでに悪漢に襲われてしまったのかもしれない。

 例えば、ここに来る途中で馬車にぶつかってしまったのかもしれない。

 例えば、ここに来ると有で財布を落として途方に暮れているのかもしれない。

 メルクリアは心配性なのだ。

 いつもは完全無欠の女上司としてバリバリ仕事をこなし、次期当主としての自覚をもって過ごしている。

 しかしながら、イナバシュウイチに鬼女と称された彼女は非常に可愛らしい女性でもあるのだ。

 ついでに、心配性でもある。

「何かあったとしたらすぐに連絡するように言っているのに。もしかしたら、病気になって動けないとしたら!」

 悪い方悪い方に考えてしまうのがこのタイプの癖だ。

 メルクリアが負のスパイラルに落ちようとしていたときだった。

「お待たせしましたフィフティーヌ様!」

 メルクリアの元にエミリアが駆けてくる。

 そう、待ち合わせの相手はエミリアだった。

「貴女が遅刻だなんて珍しいわね、どうかしたの。」

 さも心配してませんでしたと言うように声をかける。

 内心、無事現れたエミリアにホッとしているメルクリアであった。

「すみません、すごい人を見つけてしまい調べていましたらこの時間になってしまいました。」

「あら、貴女が時間を忘れて調べ上げるなんてよっぽどの人なのね。」

「はい!これまでにない逸材です。この人であればきっとあの計画も実行に移せるかと思います。」

 興奮した様子で説明するエミリア。

 それを嬉しそうに聞くメルクリア。

 さて、ここで問題です。

 この二人、特にメルクリアがエミリアに抱く感情は次のうちどれ。

 1、可愛い後輩が楽しそうにしている。可愛い。

 2、頼もしい後輩が楽しそうにしている。可愛い。

 答えはいつもの宛先までご応募してください。

 たくさんのご応募お待ちしております。

「それじゃあ、その素晴らしい逸材とやらをおいしいケーキと一緒に聞かせてもらおうかしら。」

「あ、今日はケーキのお店なんですね楽しみです。」

「今日は遅刻したエミリアのおごりよ。」

「えぇぇぇ、今日は給料日前なのでそんなに持ち合わせがなくて・・・。」

「冗談よ、私が誘ったんだから気にしなくてもいいわ。」

 あきれた、と言わんばかりにため息をつくメルクリア。

 えへへ、とはにかんで笑うエミリア。

 この物語の始まりは、こんな二人のやり取りから始まったのであった。

 そんな、他愛もない休日のお話し。
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