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1375.転売屋は絵を転売する
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「失礼、ここは買取屋であっていたかな?」
8月。
少しずつ風が涼しくなってきたお昼前に新たな客がやってきた。
見た目にいかにも金持ちっぽい感じ全開の小太り中年男はいくつも金のアクセサリーを首や腕に見せびらかすように身に着け、昔の成金を彷彿とさせてくる。
なんだろうどの世界でもこういう感じの人は同じなんだな。
「あぁ間違いない、買取希望か?」
「金額に折り合いがつけばの話だが。」
「希望以下なら別に持って帰ってもらって構わない、うちは買取を強要するような店じゃないんでね。」
「それを聞いて安心したよ。」
まだ品物も見せてないのに男は満足げな顔で大きくうなずく。
自信があるのか用心深いのかよくわからないが客は客なので相手をしてやるとするか。
男はカウンターではなくそのまま奥の作業台へと向かい、そこに遅れてやってきた別の男が何か大きなものを慎重に置く。
何を勝手にと一瞬思ってしまったが確かにこのデカいのはカウンターに乗りそうもない。
ワイン色の上質な布に撒かれたそいつを男がドヤ顔しながら外していくと、その下から現れたのは一枚の大きな絵画だった。
爽やかな青空の下に白亜の王都が描かれている。
まるで実際に見ているような錯覚を覚えるほど鮮やかで、そして写実的な一枚の絵。
うーむ、このタッチはどこかで見たことあるんだが・・・。
「フェル=ジャン=メールの絵か。」
「ほぉ、よくわかったね。いかにも彼の作品しかもまだ若い頃に描いたものだ。」
「この雲の書き方なんかは今も同じだな。しかし若いころから見事な絵を描くもんだなぁ。」
「円熟味の出てきた最近の絵も嫌いじゃないがね、やはりこの頃の自信にあふれた描き方が一番魅力的だ。この絵の良さがわかるなんて、なかなかいい目をしているようだ。」
これまた一人で納得して大きくうなずく中年男。
なんだかよくわからないが認められたのは間違いなさそうだ。
しっかしこんな見事な絵なんていったいいくらぐらいするのか見当もつかないんだが?
昔画商ってやつが買い付けに来た時もかなりの値段を吹っ掛けてきたが、これだけ見事な絵ともなるとさらに高い値段になるのかもしれない。
生憎と俺にはそっちの知識もセンスもないのでここは一つ相場スキルにお願いするとしよう。
「触ってもかまわないか?」
「もちろん、だが慎重に頼むよ。これは世に二つとない貴重な物なんだから。」
「へいへい了解っと。」
一応査定なのでそれっぽい感じで絵を確認していくが、全く知識がないにもかかわらず価格に関してはさりげなく触れるだけでわかってしまうんだから相場スキルって便利だよなぁ。
『フェル=ジャン=メールの絵。王都に来て間もない絵師としてまだ駆け出しのころに書かれた一品。抜けるような青色は彼の代名詞とも言われおり、それを形作った一品。破れている。最近の平均取引価格は金貨57枚、最安値金貨19枚最高値金貨250枚、最終取引日は62日前と記録されています。』
贋作と表示されないということは本当にフェルさんの初期作品という事になる。
素晴らしい色遣いはこの頃から遺憾なく発揮されていたようで、カニバフラワーを描いた時のあの感じに近い物を感じる。
とても自由に、そして楽しそうに書いたんだろうなぁとなんとなくでもわかってしまうのが不思議な感じだ。
しかし気になるところが一点。
注意深く観察していくととある部分に違和感を感じた。
そこを確認しようと顔を近づけたその時、先ほど絵を搬入した男がそれを制した。
「なんだよ。」
「それぐらいでいいでしょう、正直これだけの品が世に出回ることはほとんどないんです。しかしながら私にも色々とありましてね、泣く泣く手放さなければならなくなったわけですが。これにいくらの値を付けますか?」
「確かにフェル=ジャン=メールの絵で間違いないようだ。色使いも筆の使い方も癖の通りだし、なによりこの王都と空の組み合わせが非常に気持ちがいい。これにいくらつけるという話なら・・・そうだな、金貨30枚って所か。」
「なっ何の冗談だね!?この絵の価値がそれっぽっちなわけがないだろう!彼の初期作ともなれば金貨50枚、いや100枚でも安いのだよ!」
余裕ぶっていた中年男がバンとカウンターを叩きながら立ち上がる。
まったく、ルカがいなかったからよかったもののそんな風に声を荒げられても困るんだが?
今度はこっちが余裕な表情を見せながら先ほど違和感を感じた部分を静かに指さした。
「これが完璧な状態だったのならその値段を付けたかもしれないが、あそこに破れがある以上相場通りの値段を出すことは出来ない。おそらく他所でも同じことを言われて断らたんだろうな、俺は別に破れていても気にしないが値段をつけるなら金貨30枚だ。その値段で納得できないのならさっさと持って行くんだな。もっとも、買ってくれる店が他にあるかは知らないけど。」
「くっ・・・。」
「良い絵じゃないか。こんな風に悪い部分を隠して人に売るぐらいなら自分の家にでも飾ればいい物を。」
「うるさい、お前のような若造に何がわかる。」
「若造だろうがそうじゃなかろうがわからないものはわからないっての。さぁどうするんだ?売るのか?売らないのか?売らないならさっさと出て行ってくれ、営業の邪魔だ。」
あの焦りようから察するに金に困っているっていうのは間違いないんだろう、他の買取屋の目は確かだしあんなに露骨に邪魔したら何かあるって思うのが普通だろう。
さんざん悩んだ挙句中年男は金貨30枚と引き換えに絵を置いて去っていった。
さ~て、買ったはいい物のこいつをどうするかなぁ。
ぶっちゃけ部屋に飾っておきたいぐらいに素晴らしい絵なので売らずにおいておこうかなとか思ってしまう。
絵を前にどうしたもんかと頭を悩ませていると、再びベルが鳴り客が店にやってきた。
「やぁ、今日も暑いね。近くまで来たものだから寄ってみた・・・。」
やってきたのはこの絵を描いたフェル=ジャン=メールご本人様。
いつものように気さくな感じで入って来たかと思ったら絵を見るなり真剣な表情になってしまった。
「よぉフェルさん、ちょうどいいとこに。」
「君の顔を見に来たはずなのにまさか昔の傷を抉られるとは思っていなかったよ。」
「やっぱり自分の昔の絵は見たくないのか?」
「見たくないというか気恥ずかしいというか、はぁ僕も若かったなぁ。」
自分の絵を見ながら盛大なため息をつくフェルさんをカウンターに案内しつつ閉店の札を出しておく、これで邪魔ものはもう入ってこないだろう。
それから香茶を淹れながらこの絵を手に入れたいきさつについて説明しておいた。
「なるほど、それで買い取ってくれたんだね。」
「カニバフラワーも好きだがこれもフェルさんらしくて気に入っているんだ。破れてるって言っても一部分だしパッと見じゃわからない部分だしな。」
「でもそこが問題なかったらもっと高値で売れるわけだろう?」
「まぁ、そういう事になるな。」
「ふむ、破れてる部分を後ろから補修しつつ上から補色すれば修繕は出来そうかな。確か当時はお金が無くて今とは違う顔料を使っていたはずだからそれを使えば何とかなるはず。それよりもあっちの絵から少し剥ぎ取っても同じようにできるか。」
「フェルさん?」
突然ブツブツと言いながら考え事を始めてしまった。
俺は別に補修とかせずにこのまま飾るので問題ないんだが、どうやらフェルさんの何かに火をつけてしまったらしい。
気付けば絵をガリガリと何かで削りながら一人で頷いたり、さらにはカンバスをひっくり返して裏から破れている部分を広げてみたりとやりたい放題し始める始末。
まぁ本人の絵だし、いざとなったら同じものを書いてもらえばいいだけなのでそれは別にいいんだけどさぁ。
結局その絵はフェルさんの手によって持ち帰られてしまったわけだが、次の日には完璧な状態で戻ってきた。
やり切った感たっぷりの顔がまるで子供みたいに見えてしまう。
『フェル=ジャン=メールの絵。王都に来て間もない絵師としてまだ駆け出しのころに書かれた一品。抜けるような青色は彼の代名詞とも言われおり、それを形作った一品。本人により補修済み。最近の平均取引価格は金貨57枚、最安値金貨19枚最高値金貨250枚、最終取引日は昨日と記録されています。』
「こりゃまた見事なもんだ。」
「あくまでも補修だけどそれなりの出来にはなったと思うよ。これなら相場通りの値段で売れるんじゃないかな。」
「え、わざわざ直したのを売るのか?」
「君が気に入ってくれたのは嬉しいけど、やっぱり僕にとってはあまり見たい物じゃないんだよね。今ならもっと上手に描く自信があるし何より君に渡すのなら納得のいくものを渡したいじゃないか。」
なるほど、フェルさん的にはうちに来るたびにこの絵を見せられるのは勘弁してほしいってことなんだろう。
あまりにも見事なので店にでも飾ろうかと思っていたのだが、ご本人がここまでしてくれたんだからそれに従ってもいいかもしれない。
っていうかそうすれば新しい絵をタダで描いてもらえるって事だろ?
今この人に絵を描かせたら金貨100枚なんて値段じゃ足りないぐらいだ、それを考えたら手放すぐらい全く問題ない。
「そういってもらえるのはありがたい限りだ。じゃあそのお言葉に甘えてこれと同じ絵を是非頼む。それとは別にとりあえずこれにかかった補修費用は別に教えてくれ、それを加えて売らせてもらうから。」
「別にいいのに。」
「むしろそれぐらい上乗せした方が話のネタになるだろ?なんなら裏に補修したサインも書いておいてもらえると助かる。」
「それはいい考えだね。そしてそれをネタに高く売るわけだ。」
「そういう事。本人が直接補修した初期作品、これで高く売れない理由はないだろ?」
金貨30枚で買い付けた絵を本人が補修して再度販売するとしたらいったいどのぐらいの値段をつけるべきなんだろうか。
これに関しては相場スキルは一切役に立たないので自分の感覚で何とかするしかない。
少なくとも倍、もしかすると三倍の値段がつくかもしれない。
新作は今後も生まれていくけれど初期の作品はもう増えることはないし、なによりそれに本人が手を加える可能性は限りなく低い。
恥ずかしくて見ていられないと言っている本人が新たな絵を補修するとは思えないからな。
本人了承の転売ってのも中々レアなケースだがせっかくの機会なので思い切り稼がせてもらうとしよう。
世界に一枚しかない貴重な絵、その価値は果たしていくらか。
楽しみになってきた。
8月。
少しずつ風が涼しくなってきたお昼前に新たな客がやってきた。
見た目にいかにも金持ちっぽい感じ全開の小太り中年男はいくつも金のアクセサリーを首や腕に見せびらかすように身に着け、昔の成金を彷彿とさせてくる。
なんだろうどの世界でもこういう感じの人は同じなんだな。
「あぁ間違いない、買取希望か?」
「金額に折り合いがつけばの話だが。」
「希望以下なら別に持って帰ってもらって構わない、うちは買取を強要するような店じゃないんでね。」
「それを聞いて安心したよ。」
まだ品物も見せてないのに男は満足げな顔で大きくうなずく。
自信があるのか用心深いのかよくわからないが客は客なので相手をしてやるとするか。
男はカウンターではなくそのまま奥の作業台へと向かい、そこに遅れてやってきた別の男が何か大きなものを慎重に置く。
何を勝手にと一瞬思ってしまったが確かにこのデカいのはカウンターに乗りそうもない。
ワイン色の上質な布に撒かれたそいつを男がドヤ顔しながら外していくと、その下から現れたのは一枚の大きな絵画だった。
爽やかな青空の下に白亜の王都が描かれている。
まるで実際に見ているような錯覚を覚えるほど鮮やかで、そして写実的な一枚の絵。
うーむ、このタッチはどこかで見たことあるんだが・・・。
「フェル=ジャン=メールの絵か。」
「ほぉ、よくわかったね。いかにも彼の作品しかもまだ若い頃に描いたものだ。」
「この雲の書き方なんかは今も同じだな。しかし若いころから見事な絵を描くもんだなぁ。」
「円熟味の出てきた最近の絵も嫌いじゃないがね、やはりこの頃の自信にあふれた描き方が一番魅力的だ。この絵の良さがわかるなんて、なかなかいい目をしているようだ。」
これまた一人で納得して大きくうなずく中年男。
なんだかよくわからないが認められたのは間違いなさそうだ。
しっかしこんな見事な絵なんていったいいくらぐらいするのか見当もつかないんだが?
昔画商ってやつが買い付けに来た時もかなりの値段を吹っ掛けてきたが、これだけ見事な絵ともなるとさらに高い値段になるのかもしれない。
生憎と俺にはそっちの知識もセンスもないのでここは一つ相場スキルにお願いするとしよう。
「触ってもかまわないか?」
「もちろん、だが慎重に頼むよ。これは世に二つとない貴重な物なんだから。」
「へいへい了解っと。」
一応査定なのでそれっぽい感じで絵を確認していくが、全く知識がないにもかかわらず価格に関してはさりげなく触れるだけでわかってしまうんだから相場スキルって便利だよなぁ。
『フェル=ジャン=メールの絵。王都に来て間もない絵師としてまだ駆け出しのころに書かれた一品。抜けるような青色は彼の代名詞とも言われおり、それを形作った一品。破れている。最近の平均取引価格は金貨57枚、最安値金貨19枚最高値金貨250枚、最終取引日は62日前と記録されています。』
贋作と表示されないということは本当にフェルさんの初期作品という事になる。
素晴らしい色遣いはこの頃から遺憾なく発揮されていたようで、カニバフラワーを描いた時のあの感じに近い物を感じる。
とても自由に、そして楽しそうに書いたんだろうなぁとなんとなくでもわかってしまうのが不思議な感じだ。
しかし気になるところが一点。
注意深く観察していくととある部分に違和感を感じた。
そこを確認しようと顔を近づけたその時、先ほど絵を搬入した男がそれを制した。
「なんだよ。」
「それぐらいでいいでしょう、正直これだけの品が世に出回ることはほとんどないんです。しかしながら私にも色々とありましてね、泣く泣く手放さなければならなくなったわけですが。これにいくらの値を付けますか?」
「確かにフェル=ジャン=メールの絵で間違いないようだ。色使いも筆の使い方も癖の通りだし、なによりこの王都と空の組み合わせが非常に気持ちがいい。これにいくらつけるという話なら・・・そうだな、金貨30枚って所か。」
「なっ何の冗談だね!?この絵の価値がそれっぽっちなわけがないだろう!彼の初期作ともなれば金貨50枚、いや100枚でも安いのだよ!」
余裕ぶっていた中年男がバンとカウンターを叩きながら立ち上がる。
まったく、ルカがいなかったからよかったもののそんな風に声を荒げられても困るんだが?
今度はこっちが余裕な表情を見せながら先ほど違和感を感じた部分を静かに指さした。
「これが完璧な状態だったのならその値段を付けたかもしれないが、あそこに破れがある以上相場通りの値段を出すことは出来ない。おそらく他所でも同じことを言われて断らたんだろうな、俺は別に破れていても気にしないが値段をつけるなら金貨30枚だ。その値段で納得できないのならさっさと持って行くんだな。もっとも、買ってくれる店が他にあるかは知らないけど。」
「くっ・・・。」
「良い絵じゃないか。こんな風に悪い部分を隠して人に売るぐらいなら自分の家にでも飾ればいい物を。」
「うるさい、お前のような若造に何がわかる。」
「若造だろうがそうじゃなかろうがわからないものはわからないっての。さぁどうするんだ?売るのか?売らないのか?売らないならさっさと出て行ってくれ、営業の邪魔だ。」
あの焦りようから察するに金に困っているっていうのは間違いないんだろう、他の買取屋の目は確かだしあんなに露骨に邪魔したら何かあるって思うのが普通だろう。
さんざん悩んだ挙句中年男は金貨30枚と引き換えに絵を置いて去っていった。
さ~て、買ったはいい物のこいつをどうするかなぁ。
ぶっちゃけ部屋に飾っておきたいぐらいに素晴らしい絵なので売らずにおいておこうかなとか思ってしまう。
絵を前にどうしたもんかと頭を悩ませていると、再びベルが鳴り客が店にやってきた。
「やぁ、今日も暑いね。近くまで来たものだから寄ってみた・・・。」
やってきたのはこの絵を描いたフェル=ジャン=メールご本人様。
いつものように気さくな感じで入って来たかと思ったら絵を見るなり真剣な表情になってしまった。
「よぉフェルさん、ちょうどいいとこに。」
「君の顔を見に来たはずなのにまさか昔の傷を抉られるとは思っていなかったよ。」
「やっぱり自分の昔の絵は見たくないのか?」
「見たくないというか気恥ずかしいというか、はぁ僕も若かったなぁ。」
自分の絵を見ながら盛大なため息をつくフェルさんをカウンターに案内しつつ閉店の札を出しておく、これで邪魔ものはもう入ってこないだろう。
それから香茶を淹れながらこの絵を手に入れたいきさつについて説明しておいた。
「なるほど、それで買い取ってくれたんだね。」
「カニバフラワーも好きだがこれもフェルさんらしくて気に入っているんだ。破れてるって言っても一部分だしパッと見じゃわからない部分だしな。」
「でもそこが問題なかったらもっと高値で売れるわけだろう?」
「まぁ、そういう事になるな。」
「ふむ、破れてる部分を後ろから補修しつつ上から補色すれば修繕は出来そうかな。確か当時はお金が無くて今とは違う顔料を使っていたはずだからそれを使えば何とかなるはず。それよりもあっちの絵から少し剥ぎ取っても同じようにできるか。」
「フェルさん?」
突然ブツブツと言いながら考え事を始めてしまった。
俺は別に補修とかせずにこのまま飾るので問題ないんだが、どうやらフェルさんの何かに火をつけてしまったらしい。
気付けば絵をガリガリと何かで削りながら一人で頷いたり、さらにはカンバスをひっくり返して裏から破れている部分を広げてみたりとやりたい放題し始める始末。
まぁ本人の絵だし、いざとなったら同じものを書いてもらえばいいだけなのでそれは別にいいんだけどさぁ。
結局その絵はフェルさんの手によって持ち帰られてしまったわけだが、次の日には完璧な状態で戻ってきた。
やり切った感たっぷりの顔がまるで子供みたいに見えてしまう。
『フェル=ジャン=メールの絵。王都に来て間もない絵師としてまだ駆け出しのころに書かれた一品。抜けるような青色は彼の代名詞とも言われおり、それを形作った一品。本人により補修済み。最近の平均取引価格は金貨57枚、最安値金貨19枚最高値金貨250枚、最終取引日は昨日と記録されています。』
「こりゃまた見事なもんだ。」
「あくまでも補修だけどそれなりの出来にはなったと思うよ。これなら相場通りの値段で売れるんじゃないかな。」
「え、わざわざ直したのを売るのか?」
「君が気に入ってくれたのは嬉しいけど、やっぱり僕にとってはあまり見たい物じゃないんだよね。今ならもっと上手に描く自信があるし何より君に渡すのなら納得のいくものを渡したいじゃないか。」
なるほど、フェルさん的にはうちに来るたびにこの絵を見せられるのは勘弁してほしいってことなんだろう。
あまりにも見事なので店にでも飾ろうかと思っていたのだが、ご本人がここまでしてくれたんだからそれに従ってもいいかもしれない。
っていうかそうすれば新しい絵をタダで描いてもらえるって事だろ?
今この人に絵を描かせたら金貨100枚なんて値段じゃ足りないぐらいだ、それを考えたら手放すぐらい全く問題ない。
「そういってもらえるのはありがたい限りだ。じゃあそのお言葉に甘えてこれと同じ絵を是非頼む。それとは別にとりあえずこれにかかった補修費用は別に教えてくれ、それを加えて売らせてもらうから。」
「別にいいのに。」
「むしろそれぐらい上乗せした方が話のネタになるだろ?なんなら裏に補修したサインも書いておいてもらえると助かる。」
「それはいい考えだね。そしてそれをネタに高く売るわけだ。」
「そういう事。本人が直接補修した初期作品、これで高く売れない理由はないだろ?」
金貨30枚で買い付けた絵を本人が補修して再度販売するとしたらいったいどのぐらいの値段をつけるべきなんだろうか。
これに関しては相場スキルは一切役に立たないので自分の感覚で何とかするしかない。
少なくとも倍、もしかすると三倍の値段がつくかもしれない。
新作は今後も生まれていくけれど初期の作品はもう増えることはないし、なによりそれに本人が手を加える可能性は限りなく低い。
恥ずかしくて見ていられないと言っている本人が新たな絵を補修するとは思えないからな。
本人了承の転売ってのも中々レアなケースだがせっかくの機会なので思い切り稼がせてもらうとしよう。
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楽しみになってきた。
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