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1362.転売屋はドラゴンを追いかける
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一足先にダンジョンを出て王都へと帰還するセインさん達を見送り、俺達は別行動を開始した。
白龍ボルニュクストから聞いた話では北の大山脈で発見されたホワイトドラゴンが近くに逃げ込んでいるらしいという事だ。
最初の調査の際に三頭確認されそのうちの一頭はその場で倒されたものの残りは奥に飛んでいったため追いかける事が出来なかったらしい。
因みに討伐されたホワイトドラゴンは全身余すところなく利用され、総額金貨20枚程で売却されたとか。
血の一滴すら金になる生き物だけにそれを発見出来れば大儲け間違いなし、流石に血液まで持ち帰るのは難しいだろうけど血抜きをした肉は他の肉とは比べ物にならないぐらいに美味しいのでぜひとも持ち帰りたいところだ。
普通なら山奥で討伐した所で普通は持ち帰れないところだが、今回はバーンがいるのでどこにいたとしても確実に持ち帰ることができる。
なんせこっちにはホワイトドラゴンとタイマンを張れるだけの実力者がいるだけに探さないという選択肢はどこにもないわけで。
まったくこれだから戦闘狂は。
ダンジョンで大暴れするはずが空振りに終わってしまい色々と鬱憤的な物がたまっているんだろう。
氾濫が終わったとなればもう前のように戦う事も出来ないだろうし、戦い収め的な感じで考えているのかもしれない。
「しかし一気に二頭も倒して生態系的な物は大丈夫なのか?」
「そもそも近辺の魔物は全て逃げ出しちゃったわけだし、そこにホワイトドラゴンだけいても魔物が戻ってくるのに邪魔なだけよ。わざわざ危険な相手がいるところに戻りたいと思う?」
「思わないな。」
「そういう事、つまりこれはこの辺りの環境を整えるためにも必要な事なのよ。」
もっともらしい理由を力説してくれるエリザだが俺にはただ戦いたいだけにしか思えないんだよなぁ。
まぁ言いたいことはわかるし考えも間違っていないだろう。
ドラゴンを排除することでこの辺りに再び魔物や生き物が戻ってくるのであれば倒すしか選択肢はない。
「アティナ、そいつらの気配は今どのへんだ?」
「強い気配が一つ、この先から感じます。」
「この先って言っても崖しかないんだが?」
「トト!あそこに穴が開いてるよ!」
ダンジョンを出てからアティナの察知能力を駆使して歩くこと30分ほど。
北の大山脈に連なる巨大な崖の手前までやってきた俺達だったが、バーンの指さした先にぽっかりと穴が開いているのを発見した。
高さ20mぐらいはあるだろうか、フリークライミングをしないと登れないような断崖絶壁の中腹に見えるその穴は誰も寄せ付けないという雰囲気を醸し出している。
あそこなら空でも飛ばない限り魔物も冒険者も寄ってこないだろう、巣にするにはもってこいの場所ではあるのだが言い換えるとあそこしか居場所がないともいえる。
三頭の内一頭がやられたのを目の当たりにしているだけに他の場所では命の危険があると判断したんだろう。
確かに普通の方法ではたどり着けないかもしれないが、俺達にはバーンがいるわけで。
まずはアティナから続いてエリザを入り口まで運んでもらい、俺は岩陰で静かに待機する。
自分の嫁を捕まえてこんなこと言うのはあれだけどドラゴンとタイマン張ろうってのがそもそもおかしい話なんだよな。
本来であれば複数人の冒険者と連携しながら倒すような魔物であって、そんなやつに一人で戦いを挑むのは自殺行為に他ならない。
炎で焼かれるか爪で切り裂かれるか踏みつぶされるか、もちろん倒せばかなりの儲けになるけれどそれを命を天秤にかけた時に普通の冒険者なら戦わない方を選ぶだろう。
普通ならな。
「トトはいかない?」
「あぁ、もしもに備えて待機しておく。バーンはどうする?」
「じゃあトトと一緒にいる。エリザママとアティなら大丈夫。」
あんな逃げ場のない洞窟に突入するとか勘弁してほしいが、当の本人たちは今頃どっちが先に攻撃するかとか話し合っているんだろうなぁ。
過去にダンジョン内で戦ったことはあるけれど出来ればあぁいう狭い場所で戦いたくない魔物ではある。
「相手はあのドラゴンだぞ?それを簡単に倒せると思うあたりどうかしてるよな。」
「トトも倒せるよ?」
「いやいや、絶対に無理だから。俺なんかが戦いを挑もうもんならすぐに殺されるのがおちだ。」
「そんなことない!大丈夫、僕が守るから!」
可愛い息子に守ると言ってもらえるなんて父親冥利に尽きるじゃないか。
なんてことを考えていると洞窟の奥深くから悲鳴にも雄叫びにも似た声が響いてくる、どうやら接敵したらしい。
中がどうなっているかはわからないがダンジョンのようになっていないという事はかなり狭い空間で戦っているという事だ。
不安はある、だがそれ以上に二人なら何とかしてしまうだろう安心感の方が強いのは何故だろうか。
次第に声は小さくなりそして何も聞こえなくなった。
どうやら戦いは終わったらしい。
「終わったかな。」
「おそらくな、無事ならどっちかが出てくると思うんだが。」
「おーい、終わったわよ~!」
そういうや否や、エリザが穴から顔を出して討伐したことを教えてくれた。
流石というかなんというか死闘を繰り広げたような雰囲気を一切感じさせないお気楽な声に思わず笑みがこぼれてしまう。
別におかしいから笑っているんじゃない、このドラゴンを売るだけでどれだけの金が転がりこんでいるのかそんな皮算用をしてついニヤけてしまっただけだ。
その場で解体してから運び出すのが一般的ではあるのだがいっその事そのまま縛り上げてバーンに運んでもらった方がめんどくさくもないし金になるんじゃないだろうか。
一頭丸々ともなれば金貨20枚、いやそれ以上の値段も十分にあり得る。
もしそうするのならあそこから死骸を引きずり出さないといけないわけで、無邪気にこちらに手を振るエリザに向かって手を振り返した、その時だった。
「了解すぐに・・・、エリザもどれ!」
「え?」
エリザの後ろ、空の上から白い何かが急降下してくるのが視界の端に移った。
慌てて声をかけるのとほぼ同じタイミングでその何かが穴の入り口付近に落下、土煙と衝撃で視界を奪われてしまう。
突然のことに色々なことを考えてしまったが、それで思考がフリーズするよりも早く俺は声を発していた。
「バーン!」
「まかせて!」
突然腕を掴まれそのまま空高く放り投げられたのは間違いない、目の前は真っ暗で視界はくるくると回っているけれど不思議と心配は感じなかった。
放り投げられたベクトルがなくなり代わりに重力に従うように今度は落下が始まると、落ちるよりも早く自分が何かの上に乗ったのがわかった。
恐る恐る目を開けると、土煙がなくなり青空が視界一杯に広がっている。
バーンにしがみつきながら身を乗り出すようにして下を見ると、先ほどの穴の前に白い何かが丸くなっているのが見えた。
エリザの姿は確認できないが・・・大丈夫だと信じるしか今はできない。
「急降下だ、後ろからぶちかませ!」
「任せて!」
恐らくというか間違いなく残った方のホワイトドラゴンだろう。
片割れの悲鳴を聞き付けて戻ってきたに違いない、無防備な背中めがけてバーンに体当たりさせようと思ったのだが予想よりも早く再び飛び去ってしまった。
そのままドラゴンの板穴の前に着地した所で奥から砂まみれのエリザが顔を出す。
「こっちは大丈夫よ!」
「よし、何とか追い込んでみるから奥で待ってろ!」
「わかった!」
無事を確認できたのなら後は奴を追い込むだけだ。
空飛ぶ金・・・じゃなかったホワイトドラゴンめがけてバーンが再び大空へと飛び上がる。
俺を背中に乗せているせいで思ったほど速度を出せないのかと思ったが、そこは飛竜と言われるだけあってどんどんと距離を縮めていった。
向こうもそれに気が付いたのか今度は急に旋回して振り払おうと不規則な動きを繰り返すも、バーンがそれに負けるはずもなく確実に追い込んでいく。
俺はというと振り落とされないよう必死にしがみつき、三半規管がつぶれないのをただただ祈ることしか出来なかったが。
縦横無尽に空を飛び回るワイバーンとホワイトドラゴンではあったが、次第にホワイトドラゴンの動きが遅くなりそれを逃すことなくバーンの鋭い爪がドラゴンの背中に突き刺さった。
悲鳴をあげながら錐もみ状態で落下するホワイトドラゴン。
ギリギリまで爪を突き刺していたバーンだったがぶつかる寸前に爪を外して再び空へと舞い上がる。
そこでやっとホバリング状態になり落ち着いて下を見る事が出来るようになった。
落ちたのはちょうど穴のあった崖の手前辺り、偶然とはいえ近くに落ちたのはありがたいな。
「トト、大丈夫?」
「だいじょばない。」
「ならよかった。」
「よかった・・・のか?ともかくだ、どれだけ逃げ回ろうともバーンの敵じゃなかったってことだな。よくがんばった、偉いぞ。」
「えへへ。」
ポンポンと首を叩いてやると嬉しそうに身じろぎをする。
眼下では落下したホワイトドラゴンは体を血に染めながらも、なんとか逃げようと体を起こし始めていた。
が、それよりもはやく先ほどの穴から飛び降りてきたアティナが弾丸のように背中に向かって落下し、再び地面に叩きつけられる。
なんていうか容赦ないな。
ドラゴンの背中にめり込んだアティナが全身を血に染めながらもこちらに向かってサムズアップしてくる。
あの高さから落下傘もなしに飛び降りるとか正気の沙汰じゃない、いくらドラゴンの体がクッションになるとはいえ怪我したらどうするつもりだったんだろうか。
と説教したところで聞いてくれるとは思えないけど一応言うだけ言っておくか。
ともかくだ、無事にホワイトドラゴン二頭の討伐に成功したわけだしあとは搬送の準備に取り掛かるとしよう。
こいつらがいなくなったことで北の街道付近も平和になるだろうし、なにより俺の懐が最高に温かくなる。
無傷とは言わないけれども完全な状態でドラゴンが運ばれてくるなんてことまぁないからな、いったいいくらで取引されるんだろうか。
楽しみすぎて思わず頬が緩んでしまうのを必死に抑えながらひとまず搬送に向けた準備に取り掛かるのだった。
白龍ボルニュクストから聞いた話では北の大山脈で発見されたホワイトドラゴンが近くに逃げ込んでいるらしいという事だ。
最初の調査の際に三頭確認されそのうちの一頭はその場で倒されたものの残りは奥に飛んでいったため追いかける事が出来なかったらしい。
因みに討伐されたホワイトドラゴンは全身余すところなく利用され、総額金貨20枚程で売却されたとか。
血の一滴すら金になる生き物だけにそれを発見出来れば大儲け間違いなし、流石に血液まで持ち帰るのは難しいだろうけど血抜きをした肉は他の肉とは比べ物にならないぐらいに美味しいのでぜひとも持ち帰りたいところだ。
普通なら山奥で討伐した所で普通は持ち帰れないところだが、今回はバーンがいるのでどこにいたとしても確実に持ち帰ることができる。
なんせこっちにはホワイトドラゴンとタイマンを張れるだけの実力者がいるだけに探さないという選択肢はどこにもないわけで。
まったくこれだから戦闘狂は。
ダンジョンで大暴れするはずが空振りに終わってしまい色々と鬱憤的な物がたまっているんだろう。
氾濫が終わったとなればもう前のように戦う事も出来ないだろうし、戦い収め的な感じで考えているのかもしれない。
「しかし一気に二頭も倒して生態系的な物は大丈夫なのか?」
「そもそも近辺の魔物は全て逃げ出しちゃったわけだし、そこにホワイトドラゴンだけいても魔物が戻ってくるのに邪魔なだけよ。わざわざ危険な相手がいるところに戻りたいと思う?」
「思わないな。」
「そういう事、つまりこれはこの辺りの環境を整えるためにも必要な事なのよ。」
もっともらしい理由を力説してくれるエリザだが俺にはただ戦いたいだけにしか思えないんだよなぁ。
まぁ言いたいことはわかるし考えも間違っていないだろう。
ドラゴンを排除することでこの辺りに再び魔物や生き物が戻ってくるのであれば倒すしか選択肢はない。
「アティナ、そいつらの気配は今どのへんだ?」
「強い気配が一つ、この先から感じます。」
「この先って言っても崖しかないんだが?」
「トト!あそこに穴が開いてるよ!」
ダンジョンを出てからアティナの察知能力を駆使して歩くこと30分ほど。
北の大山脈に連なる巨大な崖の手前までやってきた俺達だったが、バーンの指さした先にぽっかりと穴が開いているのを発見した。
高さ20mぐらいはあるだろうか、フリークライミングをしないと登れないような断崖絶壁の中腹に見えるその穴は誰も寄せ付けないという雰囲気を醸し出している。
あそこなら空でも飛ばない限り魔物も冒険者も寄ってこないだろう、巣にするにはもってこいの場所ではあるのだが言い換えるとあそこしか居場所がないともいえる。
三頭の内一頭がやられたのを目の当たりにしているだけに他の場所では命の危険があると判断したんだろう。
確かに普通の方法ではたどり着けないかもしれないが、俺達にはバーンがいるわけで。
まずはアティナから続いてエリザを入り口まで運んでもらい、俺は岩陰で静かに待機する。
自分の嫁を捕まえてこんなこと言うのはあれだけどドラゴンとタイマン張ろうってのがそもそもおかしい話なんだよな。
本来であれば複数人の冒険者と連携しながら倒すような魔物であって、そんなやつに一人で戦いを挑むのは自殺行為に他ならない。
炎で焼かれるか爪で切り裂かれるか踏みつぶされるか、もちろん倒せばかなりの儲けになるけれどそれを命を天秤にかけた時に普通の冒険者なら戦わない方を選ぶだろう。
普通ならな。
「トトはいかない?」
「あぁ、もしもに備えて待機しておく。バーンはどうする?」
「じゃあトトと一緒にいる。エリザママとアティなら大丈夫。」
あんな逃げ場のない洞窟に突入するとか勘弁してほしいが、当の本人たちは今頃どっちが先に攻撃するかとか話し合っているんだろうなぁ。
過去にダンジョン内で戦ったことはあるけれど出来ればあぁいう狭い場所で戦いたくない魔物ではある。
「相手はあのドラゴンだぞ?それを簡単に倒せると思うあたりどうかしてるよな。」
「トトも倒せるよ?」
「いやいや、絶対に無理だから。俺なんかが戦いを挑もうもんならすぐに殺されるのがおちだ。」
「そんなことない!大丈夫、僕が守るから!」
可愛い息子に守ると言ってもらえるなんて父親冥利に尽きるじゃないか。
なんてことを考えていると洞窟の奥深くから悲鳴にも雄叫びにも似た声が響いてくる、どうやら接敵したらしい。
中がどうなっているかはわからないがダンジョンのようになっていないという事はかなり狭い空間で戦っているという事だ。
不安はある、だがそれ以上に二人なら何とかしてしまうだろう安心感の方が強いのは何故だろうか。
次第に声は小さくなりそして何も聞こえなくなった。
どうやら戦いは終わったらしい。
「終わったかな。」
「おそらくな、無事ならどっちかが出てくると思うんだが。」
「おーい、終わったわよ~!」
そういうや否や、エリザが穴から顔を出して討伐したことを教えてくれた。
流石というかなんというか死闘を繰り広げたような雰囲気を一切感じさせないお気楽な声に思わず笑みがこぼれてしまう。
別におかしいから笑っているんじゃない、このドラゴンを売るだけでどれだけの金が転がりこんでいるのかそんな皮算用をしてついニヤけてしまっただけだ。
その場で解体してから運び出すのが一般的ではあるのだがいっその事そのまま縛り上げてバーンに運んでもらった方がめんどくさくもないし金になるんじゃないだろうか。
一頭丸々ともなれば金貨20枚、いやそれ以上の値段も十分にあり得る。
もしそうするのならあそこから死骸を引きずり出さないといけないわけで、無邪気にこちらに手を振るエリザに向かって手を振り返した、その時だった。
「了解すぐに・・・、エリザもどれ!」
「え?」
エリザの後ろ、空の上から白い何かが急降下してくるのが視界の端に移った。
慌てて声をかけるのとほぼ同じタイミングでその何かが穴の入り口付近に落下、土煙と衝撃で視界を奪われてしまう。
突然のことに色々なことを考えてしまったが、それで思考がフリーズするよりも早く俺は声を発していた。
「バーン!」
「まかせて!」
突然腕を掴まれそのまま空高く放り投げられたのは間違いない、目の前は真っ暗で視界はくるくると回っているけれど不思議と心配は感じなかった。
放り投げられたベクトルがなくなり代わりに重力に従うように今度は落下が始まると、落ちるよりも早く自分が何かの上に乗ったのがわかった。
恐る恐る目を開けると、土煙がなくなり青空が視界一杯に広がっている。
バーンにしがみつきながら身を乗り出すようにして下を見ると、先ほどの穴の前に白い何かが丸くなっているのが見えた。
エリザの姿は確認できないが・・・大丈夫だと信じるしか今はできない。
「急降下だ、後ろからぶちかませ!」
「任せて!」
恐らくというか間違いなく残った方のホワイトドラゴンだろう。
片割れの悲鳴を聞き付けて戻ってきたに違いない、無防備な背中めがけてバーンに体当たりさせようと思ったのだが予想よりも早く再び飛び去ってしまった。
そのままドラゴンの板穴の前に着地した所で奥から砂まみれのエリザが顔を出す。
「こっちは大丈夫よ!」
「よし、何とか追い込んでみるから奥で待ってろ!」
「わかった!」
無事を確認できたのなら後は奴を追い込むだけだ。
空飛ぶ金・・・じゃなかったホワイトドラゴンめがけてバーンが再び大空へと飛び上がる。
俺を背中に乗せているせいで思ったほど速度を出せないのかと思ったが、そこは飛竜と言われるだけあってどんどんと距離を縮めていった。
向こうもそれに気が付いたのか今度は急に旋回して振り払おうと不規則な動きを繰り返すも、バーンがそれに負けるはずもなく確実に追い込んでいく。
俺はというと振り落とされないよう必死にしがみつき、三半規管がつぶれないのをただただ祈ることしか出来なかったが。
縦横無尽に空を飛び回るワイバーンとホワイトドラゴンではあったが、次第にホワイトドラゴンの動きが遅くなりそれを逃すことなくバーンの鋭い爪がドラゴンの背中に突き刺さった。
悲鳴をあげながら錐もみ状態で落下するホワイトドラゴン。
ギリギリまで爪を突き刺していたバーンだったがぶつかる寸前に爪を外して再び空へと舞い上がる。
そこでやっとホバリング状態になり落ち着いて下を見る事が出来るようになった。
落ちたのはちょうど穴のあった崖の手前辺り、偶然とはいえ近くに落ちたのはありがたいな。
「トト、大丈夫?」
「だいじょばない。」
「ならよかった。」
「よかった・・・のか?ともかくだ、どれだけ逃げ回ろうともバーンの敵じゃなかったってことだな。よくがんばった、偉いぞ。」
「えへへ。」
ポンポンと首を叩いてやると嬉しそうに身じろぎをする。
眼下では落下したホワイトドラゴンは体を血に染めながらも、なんとか逃げようと体を起こし始めていた。
が、それよりもはやく先ほどの穴から飛び降りてきたアティナが弾丸のように背中に向かって落下し、再び地面に叩きつけられる。
なんていうか容赦ないな。
ドラゴンの背中にめり込んだアティナが全身を血に染めながらもこちらに向かってサムズアップしてくる。
あの高さから落下傘もなしに飛び降りるとか正気の沙汰じゃない、いくらドラゴンの体がクッションになるとはいえ怪我したらどうするつもりだったんだろうか。
と説教したところで聞いてくれるとは思えないけど一応言うだけ言っておくか。
ともかくだ、無事にホワイトドラゴン二頭の討伐に成功したわけだしあとは搬送の準備に取り掛かるとしよう。
こいつらがいなくなったことで北の街道付近も平和になるだろうし、なにより俺の懐が最高に温かくなる。
無傷とは言わないけれども完全な状態でドラゴンが運ばれてくるなんてことまぁないからな、いったいいくらで取引されるんだろうか。
楽しみすぎて思わず頬が緩んでしまうのを必死に抑えながらひとまず搬送に向けた準備に取り掛かるのだった。
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