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1323.転売屋は目覚めに立ち合う
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「シロウ様、どうやら彼女が目覚めるようです。」
「マジか。」
夕方、店を閉めてさぁ夕飯でも作るかというタイミングでアニエスさんが二階から降りてきて教えてくれた。
慌てて鍋にかけていた火を止めて二階へと駆け上がる。
居住スペースの一室、客間のベッドを占拠し続けたホムンクルスの横ではルフが身を伏せて静かに様子をうかがっていた。
夕焼けに染まる部屋、ベッドのそばに近づいて彼女の顔を覗き込んだその瞬間にゆっくりと目が開かれた。
深い紺色、いや藍色という方が正しいだろうか。
青というよりかは深く黒というよりかは明るい、俺の好きな夕方と夜の境目の空と同じ色をした瞳がまっすぐに俺の目を覗き込んでいた。
見つめ合うまま数十秒が経過。
表情を変えずじっと俺の顔を見つめ続ける彼女だったが、先に俺が目をそらす結果になってしまった。
なんていうか恥ずかしさが出てしまったんだよな、うん。
「あー、おはよう。」
「おはようございます。質問です、貴方が新しいマスターですか?」
「マスター・・・なのか?」
「申し訳ありませんが状況がわかりません。私は貴方に対する敵意を一切抱いておりませんのでどうか教えていただけませんでしょうか。」
何とも他人行儀な感じではあるが、目が覚めたらいきなり知らない男が目の前にいたんだから動揺するのも致し方ない。
後ろを振り返りアニエスさんとルフを交互に見ると二人共静かに頷いた。
何事も対話が大切だと昔の偉い人は言ったもんだ、まぁそれが誰かは知らないんだけども。
「そうですか、封印が解かれた遺跡に潜り私を見つけてくださったのですね。」
「最初は遺体か何かだと思ったんだが、連れ帰った後にとある人がホムンクルスだって教えてくれたんだ。実際教えてもらったとおりに魔力を与え続けた結果こうして目覚めてくれたわけだが・・・。何か思い出したか?」
俺の話を最後まで聞き静かに頷いた彼女だったが状況を理解したのか随分と落ち着き払っている。
ホムンクルス、またの名を人造生命体。
旧王朝時代に製造され、魔力を糧に半永久的に生き続ける事が出来る存在。
魔力がある限り生き続けられるものの生殖器がなく子孫を残すことは出来ないのだが、その長命さと増え続ける知識量に恐れをなして製造されたほとんどが破壊されてしまったんだとか。
彼女はその生き残り。
いや、封印されていたところから察するに廃棄されたと考えるのが妥当なんだろうなぁ。
実際頭の中は真っ白で自分の事すらも思い出せないみたいだし。
「申し訳ありませんが私がホムンクルスであるという事以外は何も思い出せません。」
「まぁその辺はおいおい思い出していけばいいだろう。」
「ありがとうございます。あの、このような状況で大変申し上げにくいお願いがあるのですがよろしいでしょうか。」
「なんだ?」
「もし可能であればここに置いていただくことは可能でしょうか。今の状態でこのようなお願いをするのは大変差し出がましいのですが、何も知らないまま外に出た場合生存できる可能性は非常に低くせっかく目覚めたことが無駄になってしまいます。しかしながら今の私にそれに対する対価を提供することは出来ず、人間男性が喜ぶ生殖行為を行う事も出来ません。私に出来る事としたら・・・。」
ここまで無表情で話し続けていた彼女の目に初めて感情らしい動きが生まれた。
目を少し大きく開き、そのまま固まってしまう。
「どうかしたのか?」
「一つ思い出しました。」
「何を思い出したんだ?」
「私の存在、私の役割、私の・・・そうです、私はホムンクルス。マスターと共に生きその身をお守りする戦闘用ホムンクルスです。マスター、どうか私にご命令を。ご希望があればドラゴンでもうち滅ぼして御覧に入れましょう。」
目に光が宿り、その光は炎のように輝いている。
さっきまでは人形のようだったのに今は普通の人のように見えてしまうから不思議だ。
上半身を起こした彼女が腕を曲げ力こぶを作るようなポーズをとる。
残念ながら真っ白く細い腕には筋肉らしいものは一切見えないのだが、本人は気づいていないのだろうか。
「戦闘用ホムンクルスなんてのがいるのか。」
「我々ホムンクルスは主に戦闘用、支援用、生活用の三種類に分かれマスターをお助けするように製造されました。残念ながら生活用と支援用はいなくなってしまったようですが、少々の事であれば戦闘用の私にも可能です。しかしながら本業は戦闘用ですのでそちらで活躍させていただければと思います。マスター、よろしいでしょうか。」
「あー、そもそも俺がマスターってのになるのか?」
「製作者は既に死亡。そうなりますと再起動させてくださった方が新たなマスターとして登録されます。」
「登録されるとどうなるんだ?」
「私が全身全霊をかけてマスターをお守りします。私がいる限りマスターには指一本触れさせはしませんし、ご命令とあればどのような魔物もうち滅ぼして御覧に入れます。」
うーむ、正直マスターとかそういうのは全く想定していなかったんだが現状を考えると俺がそれに該当するんだろう。
目覚めたからはいサヨウナラというわけにもいかないし、陛下からもしっかり管理するようにと言われているからなぁ。
戦闘用何て言う物騒な役割みたいだし下手な奴に登録されるぐらいなら俺がしっかりと管理するべきなんだろう。
もっとも、どれぐらいの実力があるかは全く不明だが。
「あー、アニエスさん。」
「特に問題ないのではないでしょうか。私もこの状態ですシロウ様の安全を確保するためにも必要な存在だと思います。ルフもそうするべきだと思っているようですよ。」
「わふ。」
「ま、それもそうか。一つ聞きたいんだが戦闘以外には何ができるんだ?」
「あまり多くのことは出来ませんが家事全般と算術は可能です。それ以外に関しては教えていただければ登録させていただきます。」
つまり教えれば教えるだけ出来る事が増えていくと。
あくまでも戦闘用という存在らしいのだが、家事などを手伝ってもらえるのは非常にありがたいことだ。
ジンも色々と手伝ってくれるが最近は店番を任せてばかりなので家事なんかはさっぱりだったんだよなぁ。
「わかった、俺なんかがマスターで良ければ是非お願いしたい。一応冒険者でもあるから戦闘関係でも活躍してもらうことになるだろう。とはいえ実力を知らずに頼むことは出来ないから今度見せてもらえるか?」
「今からでも構いませんが。」
「今日はもうこの時間だしまた今度な。っていうか病み上がりで動けないだろ?」
「マスターとして登録してくだされば今からでも活動可能です。それでは右手を貸していただけますか?」
「こうか?」
言われるがまま右手を前に伸ばすと、彼女はその手を取りそのまま自分の胸元へと強く押し当てた。
薄いワンピース越しに柔らかな感触が伝わってくる。
しかし、押し当てられた左胸の下からは本来感じるはずの脈動を感じることは出来なかった。
生きているのに心臓は動いていない、何とも不思議な感じだ。
「今この瞬間よりマスターを私の主人として登録し生涯にわたって仕えることを誓います。その為の名前を頂戴できますでしょうか。」
「名前か・・・。」
ここにきていきなり名前が欲しいとかちょっと待ってほしいんだが。
自分の子供なら生まれてくる前に考える時間が会ったりするし、なんなら母親がもう考えていたりするのだが今回は全くそんな時間もないわけで。
ホムンクルス。
ホム、ムン、クル、クルス、どれもありきたりっていうかに合ってないというか。
もっとこう戦闘用ホムンクルスっぽいやつがいいよなぁ。
「アティナ。」
「私は戦闘用ホムンクルスのアティナ、マスターに生涯お仕えする事をここに誓約いたします。マスターに勝利と富を運ぶことをお約束します。」
「勝利はともかくなんで富なんだ?」
「右手からマスターの事を教えていただきました。」
慌てて右手を離すも時すでに遅しというやつだろうか、いったいどこまで俺の事を知りえたのかは不明だが後で確認しておかないとまずいことになる。
うーむ、もしかして早まったことしてしまっただろうか。
「アニエス様、そしてルフ様ですね。どうぞよろしくお願いいたします。」
「わふ!」
「こちらこそよろしくお願いします、アティナさん。」
「気軽にアティナとお呼びください、奥様。」
「奥様・・・いい響きです。」
早くもアニエスさんが骨抜きにされている。
まだ安定期に入っていないので婚約も式の準備もしていないのだが、子供が出来れば妻の座につけるというのが女達の中の取り決めだったはず。
アニエスさんはあまり興味が無さそうな感じだったのだが、そう思っていたのは俺だけだったのかもしれない。
ルフも彼女の事を好意的に受け止めている様子、うーむ溶け込むのが早い。
「ただいま戻りました・・・おや、目覚めたのですね。」
「おかえり。あぁ、たった今目覚めた所だ。」
「マスター、こちらの方は?」
「強欲の魔人、ジンと申します。主殿の欲望の深さに惹かれお手伝いをしている次第です。あぁ、私にその力は効きませんのであしからず。」
「力?」
「相手の思考に作用して自分を好意的に感じさせる力です。主殿にはかけていないようですが、後ろのお二人はかかっているようですね。」
おいおいなんて力使ってるんだよ。
何か変だなと思ったんだが、戦闘用ホムンクルスとか言いながら相手に干渉するとかするとかやばすぎるだろ。
「アティナ。」
「何か?」
「その力は禁止だ。そんなものを使わなくてもお前はここにいてもいいし誰もお前を敵視しない。というかホムンクルスだって言いふらそうもんなら魔術師ギルドがすっ飛んでくるからな、下手なことをして感づかれても知らないぞ。」
「かしこまりました、力の使用を停止します。」
「まったく油断も隙もない。」
なんだろう、漫画とかによくある献身的な感じを勝手に想像していたんだがとんだ相手を迎え入れてしまったのかもしれない。
ベッドから降り、夕日を背に優雅に挨拶をするアティナ。
こうして我が家に新たな仲間が加わったわけだが・・・。
「マスター、この計算式は間違っています。またこちらの書類には三か所の不備があるようです。さらにはこちらの伝票ですが訂正したのであれば正しく数字の記入をお願いします。」
「わかった、分かったから一気に言うな!」
「マスターにお仕えする以上、仕事の補佐をするのもまた私の役目。これからは私がしっかりと管理いたしますのでどうぞご安心ください。」
「いやー、主殿の書類嫌いには困っておりましたからな。これからよろしく頼みますよ、アティナ殿。」
「お任せください!」
いや、お前確か戦闘用ホムンクルスだったよな?確かに算術はできるって言ってたけどどう考えてもおかしくないか?
「マスター、無駄なことを考えている前に訂正をお願いします。」
「うっす。」
戦闘用ホムンクルス、アティナ。
彼女が来たことで店の書類仕事が格段に改善したのだが、その分俺の体力が削られたのは言うまでもない。
「マジか。」
夕方、店を閉めてさぁ夕飯でも作るかというタイミングでアニエスさんが二階から降りてきて教えてくれた。
慌てて鍋にかけていた火を止めて二階へと駆け上がる。
居住スペースの一室、客間のベッドを占拠し続けたホムンクルスの横ではルフが身を伏せて静かに様子をうかがっていた。
夕焼けに染まる部屋、ベッドのそばに近づいて彼女の顔を覗き込んだその瞬間にゆっくりと目が開かれた。
深い紺色、いや藍色という方が正しいだろうか。
青というよりかは深く黒というよりかは明るい、俺の好きな夕方と夜の境目の空と同じ色をした瞳がまっすぐに俺の目を覗き込んでいた。
見つめ合うまま数十秒が経過。
表情を変えずじっと俺の顔を見つめ続ける彼女だったが、先に俺が目をそらす結果になってしまった。
なんていうか恥ずかしさが出てしまったんだよな、うん。
「あー、おはよう。」
「おはようございます。質問です、貴方が新しいマスターですか?」
「マスター・・・なのか?」
「申し訳ありませんが状況がわかりません。私は貴方に対する敵意を一切抱いておりませんのでどうか教えていただけませんでしょうか。」
何とも他人行儀な感じではあるが、目が覚めたらいきなり知らない男が目の前にいたんだから動揺するのも致し方ない。
後ろを振り返りアニエスさんとルフを交互に見ると二人共静かに頷いた。
何事も対話が大切だと昔の偉い人は言ったもんだ、まぁそれが誰かは知らないんだけども。
「そうですか、封印が解かれた遺跡に潜り私を見つけてくださったのですね。」
「最初は遺体か何かだと思ったんだが、連れ帰った後にとある人がホムンクルスだって教えてくれたんだ。実際教えてもらったとおりに魔力を与え続けた結果こうして目覚めてくれたわけだが・・・。何か思い出したか?」
俺の話を最後まで聞き静かに頷いた彼女だったが状況を理解したのか随分と落ち着き払っている。
ホムンクルス、またの名を人造生命体。
旧王朝時代に製造され、魔力を糧に半永久的に生き続ける事が出来る存在。
魔力がある限り生き続けられるものの生殖器がなく子孫を残すことは出来ないのだが、その長命さと増え続ける知識量に恐れをなして製造されたほとんどが破壊されてしまったんだとか。
彼女はその生き残り。
いや、封印されていたところから察するに廃棄されたと考えるのが妥当なんだろうなぁ。
実際頭の中は真っ白で自分の事すらも思い出せないみたいだし。
「申し訳ありませんが私がホムンクルスであるという事以外は何も思い出せません。」
「まぁその辺はおいおい思い出していけばいいだろう。」
「ありがとうございます。あの、このような状況で大変申し上げにくいお願いがあるのですがよろしいでしょうか。」
「なんだ?」
「もし可能であればここに置いていただくことは可能でしょうか。今の状態でこのようなお願いをするのは大変差し出がましいのですが、何も知らないまま外に出た場合生存できる可能性は非常に低くせっかく目覚めたことが無駄になってしまいます。しかしながら今の私にそれに対する対価を提供することは出来ず、人間男性が喜ぶ生殖行為を行う事も出来ません。私に出来る事としたら・・・。」
ここまで無表情で話し続けていた彼女の目に初めて感情らしい動きが生まれた。
目を少し大きく開き、そのまま固まってしまう。
「どうかしたのか?」
「一つ思い出しました。」
「何を思い出したんだ?」
「私の存在、私の役割、私の・・・そうです、私はホムンクルス。マスターと共に生きその身をお守りする戦闘用ホムンクルスです。マスター、どうか私にご命令を。ご希望があればドラゴンでもうち滅ぼして御覧に入れましょう。」
目に光が宿り、その光は炎のように輝いている。
さっきまでは人形のようだったのに今は普通の人のように見えてしまうから不思議だ。
上半身を起こした彼女が腕を曲げ力こぶを作るようなポーズをとる。
残念ながら真っ白く細い腕には筋肉らしいものは一切見えないのだが、本人は気づいていないのだろうか。
「戦闘用ホムンクルスなんてのがいるのか。」
「我々ホムンクルスは主に戦闘用、支援用、生活用の三種類に分かれマスターをお助けするように製造されました。残念ながら生活用と支援用はいなくなってしまったようですが、少々の事であれば戦闘用の私にも可能です。しかしながら本業は戦闘用ですのでそちらで活躍させていただければと思います。マスター、よろしいでしょうか。」
「あー、そもそも俺がマスターってのになるのか?」
「製作者は既に死亡。そうなりますと再起動させてくださった方が新たなマスターとして登録されます。」
「登録されるとどうなるんだ?」
「私が全身全霊をかけてマスターをお守りします。私がいる限りマスターには指一本触れさせはしませんし、ご命令とあればどのような魔物もうち滅ぼして御覧に入れます。」
うーむ、正直マスターとかそういうのは全く想定していなかったんだが現状を考えると俺がそれに該当するんだろう。
目覚めたからはいサヨウナラというわけにもいかないし、陛下からもしっかり管理するようにと言われているからなぁ。
戦闘用何て言う物騒な役割みたいだし下手な奴に登録されるぐらいなら俺がしっかりと管理するべきなんだろう。
もっとも、どれぐらいの実力があるかは全く不明だが。
「あー、アニエスさん。」
「特に問題ないのではないでしょうか。私もこの状態ですシロウ様の安全を確保するためにも必要な存在だと思います。ルフもそうするべきだと思っているようですよ。」
「わふ。」
「ま、それもそうか。一つ聞きたいんだが戦闘以外には何ができるんだ?」
「あまり多くのことは出来ませんが家事全般と算術は可能です。それ以外に関しては教えていただければ登録させていただきます。」
つまり教えれば教えるだけ出来る事が増えていくと。
あくまでも戦闘用という存在らしいのだが、家事などを手伝ってもらえるのは非常にありがたいことだ。
ジンも色々と手伝ってくれるが最近は店番を任せてばかりなので家事なんかはさっぱりだったんだよなぁ。
「わかった、俺なんかがマスターで良ければ是非お願いしたい。一応冒険者でもあるから戦闘関係でも活躍してもらうことになるだろう。とはいえ実力を知らずに頼むことは出来ないから今度見せてもらえるか?」
「今からでも構いませんが。」
「今日はもうこの時間だしまた今度な。っていうか病み上がりで動けないだろ?」
「マスターとして登録してくだされば今からでも活動可能です。それでは右手を貸していただけますか?」
「こうか?」
言われるがまま右手を前に伸ばすと、彼女はその手を取りそのまま自分の胸元へと強く押し当てた。
薄いワンピース越しに柔らかな感触が伝わってくる。
しかし、押し当てられた左胸の下からは本来感じるはずの脈動を感じることは出来なかった。
生きているのに心臓は動いていない、何とも不思議な感じだ。
「今この瞬間よりマスターを私の主人として登録し生涯にわたって仕えることを誓います。その為の名前を頂戴できますでしょうか。」
「名前か・・・。」
ここにきていきなり名前が欲しいとかちょっと待ってほしいんだが。
自分の子供なら生まれてくる前に考える時間が会ったりするし、なんなら母親がもう考えていたりするのだが今回は全くそんな時間もないわけで。
ホムンクルス。
ホム、ムン、クル、クルス、どれもありきたりっていうかに合ってないというか。
もっとこう戦闘用ホムンクルスっぽいやつがいいよなぁ。
「アティナ。」
「私は戦闘用ホムンクルスのアティナ、マスターに生涯お仕えする事をここに誓約いたします。マスターに勝利と富を運ぶことをお約束します。」
「勝利はともかくなんで富なんだ?」
「右手からマスターの事を教えていただきました。」
慌てて右手を離すも時すでに遅しというやつだろうか、いったいどこまで俺の事を知りえたのかは不明だが後で確認しておかないとまずいことになる。
うーむ、もしかして早まったことしてしまっただろうか。
「アニエス様、そしてルフ様ですね。どうぞよろしくお願いいたします。」
「わふ!」
「こちらこそよろしくお願いします、アティナさん。」
「気軽にアティナとお呼びください、奥様。」
「奥様・・・いい響きです。」
早くもアニエスさんが骨抜きにされている。
まだ安定期に入っていないので婚約も式の準備もしていないのだが、子供が出来れば妻の座につけるというのが女達の中の取り決めだったはず。
アニエスさんはあまり興味が無さそうな感じだったのだが、そう思っていたのは俺だけだったのかもしれない。
ルフも彼女の事を好意的に受け止めている様子、うーむ溶け込むのが早い。
「ただいま戻りました・・・おや、目覚めたのですね。」
「おかえり。あぁ、たった今目覚めた所だ。」
「マスター、こちらの方は?」
「強欲の魔人、ジンと申します。主殿の欲望の深さに惹かれお手伝いをしている次第です。あぁ、私にその力は効きませんのであしからず。」
「力?」
「相手の思考に作用して自分を好意的に感じさせる力です。主殿にはかけていないようですが、後ろのお二人はかかっているようですね。」
おいおいなんて力使ってるんだよ。
何か変だなと思ったんだが、戦闘用ホムンクルスとか言いながら相手に干渉するとかするとかやばすぎるだろ。
「アティナ。」
「何か?」
「その力は禁止だ。そんなものを使わなくてもお前はここにいてもいいし誰もお前を敵視しない。というかホムンクルスだって言いふらそうもんなら魔術師ギルドがすっ飛んでくるからな、下手なことをして感づかれても知らないぞ。」
「かしこまりました、力の使用を停止します。」
「まったく油断も隙もない。」
なんだろう、漫画とかによくある献身的な感じを勝手に想像していたんだがとんだ相手を迎え入れてしまったのかもしれない。
ベッドから降り、夕日を背に優雅に挨拶をするアティナ。
こうして我が家に新たな仲間が加わったわけだが・・・。
「マスター、この計算式は間違っています。またこちらの書類には三か所の不備があるようです。さらにはこちらの伝票ですが訂正したのであれば正しく数字の記入をお願いします。」
「わかった、分かったから一気に言うな!」
「マスターにお仕えする以上、仕事の補佐をするのもまた私の役目。これからは私がしっかりと管理いたしますのでどうぞご安心ください。」
「いやー、主殿の書類嫌いには困っておりましたからな。これからよろしく頼みますよ、アティナ殿。」
「お任せください!」
いや、お前確か戦闘用ホムンクルスだったよな?確かに算術はできるって言ってたけどどう考えてもおかしくないか?
「マスター、無駄なことを考えている前に訂正をお願いします。」
「うっす。」
戦闘用ホムンクルス、アティナ。
彼女が来たことで店の書類仕事が格段に改善したのだが、その分俺の体力が削られたのは言うまでもない。
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