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1314.転売屋は北の大山脈を調査する
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今日も今日とてこの国一番の市場を歩いて回り、相場の推移を確認しつつ金になりそうなものを仕入れて回る。
暑い日差しに負けないようしっかりと帽子をかぶり、首にはこの間仕入れたばかりの凍化のタオルを巻いているので熱中症の心配はない。
喉が渇いても保冷ボトルのお陰で冷たい香茶をいつでも飲めるってのもありがたい話だ。
まぁ、このすべてを自分で開発仕入れたわけだけども。
我ながらよくまぁこれだけの品を見つけられたものだ。
もっともアイデアのほとんどは元の世界で使っていたようなものばかりだが、どの世界でも人々の苦労は同じってことなんだろう。
それを真似するだけでお金になるのだからありがたい話だなぁ。
「トト!」
「ん?」
それだけの対策をしているにもかかわらずバーンの声が聞こえたような気がするんだが・・・、暑さにやられたんだろうか。
「トトこっち!」
「んん!?」
やはり聞こえてきた声に上を見上げると、巨大な龍がはるか上空でホバリングしていた。
そしてそのまま急降下を始めたと思ったらその姿が瞬く間に消えてなくなり、代わりに黒いなにかがものすごい速度で地上へ落下。
土煙をあげながら近くの空き地に着弾した。
一体何事かと思っていたら土煙を切り裂くように何かが俺に向かって突進してくる。
「トトみつけた!」
「バーン!?いったいどうしたんだ?」
「お手紙と荷物のお届けだよ、受け取りにサインをください!」
突っ込んでくると思い身構えたが、バーンは俺の手前でしっかりと立ち止まり白い紙とペンを自慢げに差し出してきた。
自慢の飛行能力を生かした高速輸送は荷物だけでなく手紙や伝令の運搬に広く用いられ、今では引く手あまたの需要があるのだとイザベラが教えてくれた。
今回もその仕事らしく差出人にはマリーさんとアグリの名前が書かれていた。
とりあえず周りの人が驚いているので場所を変え、手紙と荷物の中身を確認する。
どうやら一足先に荷物はウィフさんの屋敷にもっていったようだが、そこを出たと聞き荷物を置いて俺を探しに来たのだとか。
そういや店の場所とかは教えてなかった気がする。
「サイン確認しました!これでお仕事おしまいだよ。」
「見ると手紙だけじゃなくて南方の砂糖を取りに行ったみたいじゃないか、ここまで大変だったろ。」
「んーそうでもないよ、グランマにも会えるから南に飛ぶのは嫌いじゃないし船長の船で美味しいお肉もたべられるから。あ、でも今日の分はまだ食べてなかった。」
「よしよし、それじゃあまずは腹ごしらえだな。何が食べたい?」
「お肉!」
だよな、知ってた。
この間大量に入ってきたトレインボアの肉は残念ながらすべて加工されてしまったのだが、そのせいかワイルドカウの肉が余ってしまったらしくそっちも安売りされているのは確認済み。
とりあえず片っ端から肉を買い集めてバーンのお腹を満たすところから始めよう。
二人で手分けして肉を買い集め、そのままウィフさんの屋敷にお邪魔してBBQパーティーを開催。
場所代はバーンが持ってきた荷物に入っていた清酒の小瓶で支払ったのでウィフさんも満面の笑みで承諾してくれた。
焼いても焼いてもすぐにバーンのお腹の中に消えていくので俺が食べれたのは微々たる量だが、それでも息子が喜んでくれたのならばこの苦労も悪くはない。
「あー、お腹いっぱい!」
「そりゃなによりだ。さて、俺は荷物の仕分けをしに店に戻るつもりだがバーンはどうする?」
「ちょっと食べすぎちゃったから運動してこようかなって思ったんだけど・・・、トトも行かないの?」
「俺も?」
「うん!久しぶりにトトを乗せて飛びたい!」
食後に軽い運動をしたくなる気持ちはよくわかるがまさかそんなお誘いを受けるとは思わなかった。
荷物を片付けたいという気持ちはありつつもバーンがいる事なんてなかなかないんだし、折角なら普段できないことをやるべきだろう。
ってことで荷物は店に運んでもらい急遽バーンの背に乗って空の旅を楽しむことに。
この時の為に態々鞍を持ってきていたらしく、それをつけてやると歯を見せるようにニシシと笑うのがまた可愛らしい。
会わないうちにまた成長したのか身長は俺と変わらないぐらいだが、中身はまだまだ子供のようだ。
「よし、出発だ!」
「それじゃあいくよ!」
鞍をしっかりと握ると、空に放り投げられるかのような急激な浮遊感が体を襲う。
久しぶりの感覚に戸惑っているうちに気付けば王都を眼下に見るところまで飛びあがっていた。
空から見てもでかいよなぁ、王都は。
「重たくないか?」
「荷物に比べたら全然!トトはどこに行きたい?」
「そうだな・・・急なことで決めてなかったんだが、折角だし北の大山脈まで飛んでもらえるか?」
「北?あの白い方?」
「そう、あっちだ。」
「わかった!しっかりつかまっててね!」
上昇するときよりも勢いは少ないものの、景色がどんどんと後ろへと流れていく。
眼下にはミカールラッケイトの森が広がり、オールダートレントを横目に見ながらあっという間に北の大山脈付近に到着した。
馬車移動なら数日かかるような距離でも、障害物のない空なら一直線に移動できるってのはでかいよなぁ。
さっきまで遥か下方に見えた大地が見る見るうちに壁のように目の前に立ちはだかる。
心なしか空気も一気に冷えてきたようにも感じるな。
「すごい、真っ白だね。」
「あぁ、あの雲が雪を降らせているみたいだな。分厚い上にどこまでも広がっている、ちょっと山脈沿いに飛んでみてくれ。」
「わかった!」
鬱蒼と茂る森の上を大山脈に沿うように飛び続ける。
麓の付近はまだまだ緑でおおわれているものの少しでも山に近づけば見る見るうちに白い雪で覆われてしまうようだ。
ぐるりと旋回して元の場所に戻ると、今度は山脈に向かって真っすぐ突っ込むことに、とはいえ雪雲の中に突入するのは危険なので一度雲の上まで上昇してからそのまま山脈の上を飛び続けた。
「雲が分厚すぎて何も見えないが、向こうの一番高い所は雲の上に出てるんだな。」
「すっごい高いね。」
「前みたいな変な視線は感じるか?」
「ううん、何も感じないよ。」
「とはいえこのまま雲の下に降りるのもなぁ、防寒着も何も用意してきてないし。」
「トト寒い?」
「少しな。」
こんなことならな防寒着を着てくればよかった。
大山脈に沿って飛んでいるときはそうも思わなかったが、北へ向かえば向かう程体感温度がどんどんと下がっていくように感じる。
流石に限界を感じ始めたのでそのまま引き返し、最後に北街道の上を北から南に向かって飛行していた時だった。
「トト、あれは?」
「あれは・・・魔物か。」
「すっごいいっぱいいるね、それも何種類も!」
「獲物を追いかけてるって感じじゃないな、どっちかっていうと逃げているのかそれとも移動しているのか。幸い王都とは離れているけどあれがどこかに移動すればその分追いやられていくやつが出るだろう。」
街道から少し離れた山脈の麓付近から森に向かって二足歩行の魔物が群れを成して移動しているのが見えた。
コボレート、オーガ、オークもいるなあれは。
普段は群れる事のない奴らが徒党を組んで移動してるってのはよほど嫌がる何かがあるんだろう。
コボレートはともかくオーガなんかは山脈付近に集落をつくっていたはず、そこを出なきゃならないぐらいに寒くなっていると考えるべきだろう。
この分だと本当に冷気が山脈を越えてこっちに来るかもしれない。
これは戻って報告しておいた方がよさそうだな。
「調査はこのぐらいにしてそろそろ戻るか、いい運動になっただろ?」
「うん!」
「しばらくこっちにいるのか?」
「ううん、荷物を持ったら向こうに戻るよ。」
「そうか、もうすぐ夏まつりだから楽しめればと思ったんだが仕方がないな。」
「トトが考えたあの暖かいのがものすごい売れてるからたくさん持って帰ってきてほしいんだって、あとはアネットママが薬に使う珍しい素材があったらほしいって言ってたよ。」
「それならちょうどいいのがあるから戻ったら荷物を準備するか。」
少し離れた所にオールダートレントがそびえたっている。
この間の嵐で拾ったやつは匿名オークションに出す予定だが、流石に全部出すわけにはいかないので若葉のいくつかと枝を何本か持って帰ってもらうとしよう。
しばらくすればまたユミルさん達が拾ってきてくれるだろうから多めに渡しても問題ないはずだ。
魔物の動向を気にしつつ大山脈の調査を終え王都へと無事に帰還。
そのまま店に戻り、バーンが運んできた中型木箱の中身をすべて出した代わりに向こうに持って帰ってもらう素材をあれこれ詰め込んだ。
この間出荷したばかりなのでさほど量はないのだが軽い方がバーンも楽だろう。
「それじゃあトト、また今度ね!」
「あぁくれぐれも気を付けてな。」
「大丈夫!」
城壁の外からオレンジ色に染まった大空に向かって、バーンが勢いよく飛びあがりあっという間に港の方へと飛び去ってしまった。
今生の別れというわけでもないので随分とさばさばとした別れだったなぁ。
本人からすればまた仕事でこっちに来るのでその時にまた会えるって感覚なんだろう。
「さて、やることやってしまうかな。」
今見てきたばかりの情報を早速聖騎士団に売り込もう。
王都まではまだまだ距離はあるものの魔物がこっちに向かっているのは事実だし、それに加えていい加減北方との交易路をどうにかしなければいけない。
近々情報収集のために調査隊を派遣するという噂を耳にしているので、それ用の道具を早めに用意しておいてもいいかもしれない。
あれだけの寒さだ、それこそ発熱下着なんかが売れる可能性も十分にある。
いやー、荷物と一緒に持ってきてもらってよかったよかった。
あとは一緒に入っていた魔力の種を彼女に使えるか試すこと。
前に送ったコスタ=リッカーの葉は畑にたくさんの栄養をもたらし、カニバフラワーたちが落とす魔力の種がかなり増加したらしい。
幽霊の涙と同じくあれもまた魔素を凝縮した物なのでもしかしたら使えるかもと今回の荷物にたくさん入れてくれたんだとか。
これで彼女が起き出すかは不明だがカニバフラワーたちの魔力が込められた物だけに期待していいかもしれない。
もっとも、起き出したとして何がどうするわけでもないんだが・・・。
ま、今はやるべきことをさっさと終わらせよう。
夏もいよいよ後半戦。
まだまだ忙しくなりそうだ。
暑い日差しに負けないようしっかりと帽子をかぶり、首にはこの間仕入れたばかりの凍化のタオルを巻いているので熱中症の心配はない。
喉が渇いても保冷ボトルのお陰で冷たい香茶をいつでも飲めるってのもありがたい話だ。
まぁ、このすべてを自分で開発仕入れたわけだけども。
我ながらよくまぁこれだけの品を見つけられたものだ。
もっともアイデアのほとんどは元の世界で使っていたようなものばかりだが、どの世界でも人々の苦労は同じってことなんだろう。
それを真似するだけでお金になるのだからありがたい話だなぁ。
「トト!」
「ん?」
それだけの対策をしているにもかかわらずバーンの声が聞こえたような気がするんだが・・・、暑さにやられたんだろうか。
「トトこっち!」
「んん!?」
やはり聞こえてきた声に上を見上げると、巨大な龍がはるか上空でホバリングしていた。
そしてそのまま急降下を始めたと思ったらその姿が瞬く間に消えてなくなり、代わりに黒いなにかがものすごい速度で地上へ落下。
土煙をあげながら近くの空き地に着弾した。
一体何事かと思っていたら土煙を切り裂くように何かが俺に向かって突進してくる。
「トトみつけた!」
「バーン!?いったいどうしたんだ?」
「お手紙と荷物のお届けだよ、受け取りにサインをください!」
突っ込んでくると思い身構えたが、バーンは俺の手前でしっかりと立ち止まり白い紙とペンを自慢げに差し出してきた。
自慢の飛行能力を生かした高速輸送は荷物だけでなく手紙や伝令の運搬に広く用いられ、今では引く手あまたの需要があるのだとイザベラが教えてくれた。
今回もその仕事らしく差出人にはマリーさんとアグリの名前が書かれていた。
とりあえず周りの人が驚いているので場所を変え、手紙と荷物の中身を確認する。
どうやら一足先に荷物はウィフさんの屋敷にもっていったようだが、そこを出たと聞き荷物を置いて俺を探しに来たのだとか。
そういや店の場所とかは教えてなかった気がする。
「サイン確認しました!これでお仕事おしまいだよ。」
「見ると手紙だけじゃなくて南方の砂糖を取りに行ったみたいじゃないか、ここまで大変だったろ。」
「んーそうでもないよ、グランマにも会えるから南に飛ぶのは嫌いじゃないし船長の船で美味しいお肉もたべられるから。あ、でも今日の分はまだ食べてなかった。」
「よしよし、それじゃあまずは腹ごしらえだな。何が食べたい?」
「お肉!」
だよな、知ってた。
この間大量に入ってきたトレインボアの肉は残念ながらすべて加工されてしまったのだが、そのせいかワイルドカウの肉が余ってしまったらしくそっちも安売りされているのは確認済み。
とりあえず片っ端から肉を買い集めてバーンのお腹を満たすところから始めよう。
二人で手分けして肉を買い集め、そのままウィフさんの屋敷にお邪魔してBBQパーティーを開催。
場所代はバーンが持ってきた荷物に入っていた清酒の小瓶で支払ったのでウィフさんも満面の笑みで承諾してくれた。
焼いても焼いてもすぐにバーンのお腹の中に消えていくので俺が食べれたのは微々たる量だが、それでも息子が喜んでくれたのならばこの苦労も悪くはない。
「あー、お腹いっぱい!」
「そりゃなによりだ。さて、俺は荷物の仕分けをしに店に戻るつもりだがバーンはどうする?」
「ちょっと食べすぎちゃったから運動してこようかなって思ったんだけど・・・、トトも行かないの?」
「俺も?」
「うん!久しぶりにトトを乗せて飛びたい!」
食後に軽い運動をしたくなる気持ちはよくわかるがまさかそんなお誘いを受けるとは思わなかった。
荷物を片付けたいという気持ちはありつつもバーンがいる事なんてなかなかないんだし、折角なら普段できないことをやるべきだろう。
ってことで荷物は店に運んでもらい急遽バーンの背に乗って空の旅を楽しむことに。
この時の為に態々鞍を持ってきていたらしく、それをつけてやると歯を見せるようにニシシと笑うのがまた可愛らしい。
会わないうちにまた成長したのか身長は俺と変わらないぐらいだが、中身はまだまだ子供のようだ。
「よし、出発だ!」
「それじゃあいくよ!」
鞍をしっかりと握ると、空に放り投げられるかのような急激な浮遊感が体を襲う。
久しぶりの感覚に戸惑っているうちに気付けば王都を眼下に見るところまで飛びあがっていた。
空から見てもでかいよなぁ、王都は。
「重たくないか?」
「荷物に比べたら全然!トトはどこに行きたい?」
「そうだな・・・急なことで決めてなかったんだが、折角だし北の大山脈まで飛んでもらえるか?」
「北?あの白い方?」
「そう、あっちだ。」
「わかった!しっかりつかまっててね!」
上昇するときよりも勢いは少ないものの、景色がどんどんと後ろへと流れていく。
眼下にはミカールラッケイトの森が広がり、オールダートレントを横目に見ながらあっという間に北の大山脈付近に到着した。
馬車移動なら数日かかるような距離でも、障害物のない空なら一直線に移動できるってのはでかいよなぁ。
さっきまで遥か下方に見えた大地が見る見るうちに壁のように目の前に立ちはだかる。
心なしか空気も一気に冷えてきたようにも感じるな。
「すごい、真っ白だね。」
「あぁ、あの雲が雪を降らせているみたいだな。分厚い上にどこまでも広がっている、ちょっと山脈沿いに飛んでみてくれ。」
「わかった!」
鬱蒼と茂る森の上を大山脈に沿うように飛び続ける。
麓の付近はまだまだ緑でおおわれているものの少しでも山に近づけば見る見るうちに白い雪で覆われてしまうようだ。
ぐるりと旋回して元の場所に戻ると、今度は山脈に向かって真っすぐ突っ込むことに、とはいえ雪雲の中に突入するのは危険なので一度雲の上まで上昇してからそのまま山脈の上を飛び続けた。
「雲が分厚すぎて何も見えないが、向こうの一番高い所は雲の上に出てるんだな。」
「すっごい高いね。」
「前みたいな変な視線は感じるか?」
「ううん、何も感じないよ。」
「とはいえこのまま雲の下に降りるのもなぁ、防寒着も何も用意してきてないし。」
「トト寒い?」
「少しな。」
こんなことならな防寒着を着てくればよかった。
大山脈に沿って飛んでいるときはそうも思わなかったが、北へ向かえば向かう程体感温度がどんどんと下がっていくように感じる。
流石に限界を感じ始めたのでそのまま引き返し、最後に北街道の上を北から南に向かって飛行していた時だった。
「トト、あれは?」
「あれは・・・魔物か。」
「すっごいいっぱいいるね、それも何種類も!」
「獲物を追いかけてるって感じじゃないな、どっちかっていうと逃げているのかそれとも移動しているのか。幸い王都とは離れているけどあれがどこかに移動すればその分追いやられていくやつが出るだろう。」
街道から少し離れた山脈の麓付近から森に向かって二足歩行の魔物が群れを成して移動しているのが見えた。
コボレート、オーガ、オークもいるなあれは。
普段は群れる事のない奴らが徒党を組んで移動してるってのはよほど嫌がる何かがあるんだろう。
コボレートはともかくオーガなんかは山脈付近に集落をつくっていたはず、そこを出なきゃならないぐらいに寒くなっていると考えるべきだろう。
この分だと本当に冷気が山脈を越えてこっちに来るかもしれない。
これは戻って報告しておいた方がよさそうだな。
「調査はこのぐらいにしてそろそろ戻るか、いい運動になっただろ?」
「うん!」
「しばらくこっちにいるのか?」
「ううん、荷物を持ったら向こうに戻るよ。」
「そうか、もうすぐ夏まつりだから楽しめればと思ったんだが仕方がないな。」
「トトが考えたあの暖かいのがものすごい売れてるからたくさん持って帰ってきてほしいんだって、あとはアネットママが薬に使う珍しい素材があったらほしいって言ってたよ。」
「それならちょうどいいのがあるから戻ったら荷物を準備するか。」
少し離れた所にオールダートレントがそびえたっている。
この間の嵐で拾ったやつは匿名オークションに出す予定だが、流石に全部出すわけにはいかないので若葉のいくつかと枝を何本か持って帰ってもらうとしよう。
しばらくすればまたユミルさん達が拾ってきてくれるだろうから多めに渡しても問題ないはずだ。
魔物の動向を気にしつつ大山脈の調査を終え王都へと無事に帰還。
そのまま店に戻り、バーンが運んできた中型木箱の中身をすべて出した代わりに向こうに持って帰ってもらう素材をあれこれ詰め込んだ。
この間出荷したばかりなのでさほど量はないのだが軽い方がバーンも楽だろう。
「それじゃあトト、また今度ね!」
「あぁくれぐれも気を付けてな。」
「大丈夫!」
城壁の外からオレンジ色に染まった大空に向かって、バーンが勢いよく飛びあがりあっという間に港の方へと飛び去ってしまった。
今生の別れというわけでもないので随分とさばさばとした別れだったなぁ。
本人からすればまた仕事でこっちに来るのでその時にまた会えるって感覚なんだろう。
「さて、やることやってしまうかな。」
今見てきたばかりの情報を早速聖騎士団に売り込もう。
王都まではまだまだ距離はあるものの魔物がこっちに向かっているのは事実だし、それに加えていい加減北方との交易路をどうにかしなければいけない。
近々情報収集のために調査隊を派遣するという噂を耳にしているので、それ用の道具を早めに用意しておいてもいいかもしれない。
あれだけの寒さだ、それこそ発熱下着なんかが売れる可能性も十分にある。
いやー、荷物と一緒に持ってきてもらってよかったよかった。
あとは一緒に入っていた魔力の種を彼女に使えるか試すこと。
前に送ったコスタ=リッカーの葉は畑にたくさんの栄養をもたらし、カニバフラワーたちが落とす魔力の種がかなり増加したらしい。
幽霊の涙と同じくあれもまた魔素を凝縮した物なのでもしかしたら使えるかもと今回の荷物にたくさん入れてくれたんだとか。
これで彼女が起き出すかは不明だがカニバフラワーたちの魔力が込められた物だけに期待していいかもしれない。
もっとも、起き出したとして何がどうするわけでもないんだが・・・。
ま、今はやるべきことをさっさと終わらせよう。
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まだまだ忙しくなりそうだ。
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