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1293.転売屋は北方の珍味を仕入れる
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「あの~。」
「イラッシャイ、買取ならカウンターまで持って来てくれ。」
「いや、そう言うのじゃないんですけどいいですか?」
刺すような日差しが降り注ぐ昼前、恰幅の良い中年女性がふらりと店にやって来た。
透き通るような金髪に雪のように白い肌。
これでお腹のポッコリが無ければ元の世界ではさぞもてはやされただろうという感じのその女性は、申し訳なさそうな顔でカウンターまでやってくる。
どうやら買い取り客じゃないようだが、そんな人が何でまたこんな店にやって来たんだろうか。
「販売もしてるからそれは構わないんだが、探し物か?」
「オムヒゥケールトジェリーという魔物の肉を探しているんです。此方ではあまりなじみはないかもしれませんが、私の故郷では珍味としてよく食べられているんです。ですがこの夏は全くと言っていい程見つからなくて、王都でなら手に入るかもと思ったのですがなかなか見つからなくて。」
「それで俺の店にたどり着いたと。正直うちでもそういった素材を扱った覚えはないんだが、そんなに美味いのか?」
「甘辛く味付けして食べるのが一般的ですがコリコリとした食感が癖になりますよ。何故こちらで食べられないかはわかりませんが、私は昔から食べているので、それが食べられないとなると夏を迎えた気がしないんです。」
うーむ、そんな言われ方すると気になるじゃないか。
珍味って言われるものの多くはなかなか手に入らないかそれとも癖があるのかのどちらかなのだが、どうやら前者の方らしい。
そしてそういう物は総じて高くなるのが一般的だが・・・。
「なるほどなぁ、因みに有ればいくらで買うつもりなんだ?」
「一匹当たり銀貨10枚でも買います。」
「そんなに高くても買うのか。」
「私達にはそれだけ大切な物なんです。それが急に見つからなくなって、何か良くない事の前触れじゃなかったらいいんですけど。」
どんな魔物か知らないが一匹当たり銀貨10枚もの金額をポンと出そうっていうんだからよっぽど需要があると見える。
この近辺では全く聞かないという事は限られた需要になるんだろうけど、この金額なら手を出してみてもいいかもしれない。
「何匹必要なんだ?」
「何匹でも。」
「おいおい、本気か?」
「それだけのお金はみんなから預かってきました、ここが最後の綱なんです宜しくお願いします!」
「とりあえず出来る限りの事はさせてもらうが確約はしないからその時は覚悟してくれ。とりあえず滞在先を教えてくれれば報告は入れよう。」
「ありがとうございます。」
出来れば大儲け、出来なくても大きな損失はなさそうなのでとりあえず探すだけ探してみてもいいだろう。
とりあえずは情報収集からだな。
そろそろジンが製薬ギルドから戻ってくるだろうからそれから図書館に行ってどんな魔物か調べてみよう。
「オムヒゥケールトジェリーですか。えぇっと・・・あ、ありました!逆さになったクヴァーレですの事ですね。」
「逆さ?」
「はい。ダンジョンの天井なんかに張り付いて触手を垂らし、そこに引っかかった魔物や人を捕まえて食べる魔物です。クヴァーレの一種ではあるんですけど海に住んでいない珍しい魔物だったかと。」
ジンと交代するように図書館に向かい、ラブリーさんに魔物について問い合わせてみると本を探すまでも無く本人の口からすらすらと情報が流れて来た。
全部覚えてないとか言ってたのにこの人もアレン少年と同じタイプなんじゃなかろうか。
「よくまぁそんなの覚えてるな。」
「実はこの間入って来た本に書いてあったものですから。」
「なるほどそういう事か。」
「でも珍しい魔物だって書いてありましたよ。一応本も持ってきますね。」
「あぁ、宜しく頼む。」
そうか、やっぱり珍しい魔物なのか。
ダンジョンの中にいるらしいから片っ端から探せば見つかるかもしれないけれど、すぐに見つかるかどうかは何とも言えないなぁ。
クラゲなのに水中にいないとかそれってクラゲって言えるんだろうか。
ま、この世界と向こうの世界が全く同じわけじゃないんだし違ったものがいても何の不思議もない。
彼女が探してきてくれた本を貸し出してもらいその足で冒険者ギルドへ。
受付嬢も魔物について全く知らなかったらしいので、とりあえず借りてきた本を見せて依頼を出してもらうことになった。
一匹当たり銀貨5枚。
本当はもう少し安くしたいんだが安くて持ち込まれないのもあれなので少し高めに設定しておいた。
「こんな魔物がいるんですね。」
「俺も話を聞くまでは知らなかったが、美味いらしいぞ。」
「え!食べるんですか?」
「北方じゃ珍味っていうことで人気らしい。正直どんな味かは知らないが、まぁ魔物を喰うのは俺達も同じだしそれと似たようなもんだろう。」
「でもクヴァーレですよ?」
俺達の知っているクヴァーレとは違うのかもしれないし、その辺はとりあえず依頼を出して様子をみよう。
ぶっちゃけこの感じだと期待は薄そうだけどなぁ。
「ただいま。」
「おかえりなさいませ、主殿急ぎ見て頂きたい素材がございまして。」
「変なのが持ち込まれたのか?」
「クヴァーレの触手だと思うのですが、どうも見たことが無く値段のつけようがございません。あ、毒がありますのでご注意を。」
「毒か、了解した。」
鑑定するのに素材に触れる必要はあるのだが手袋をしていても発動するのでその辺の心配は無用だ。
『オムヒゥケールトジェリーの触手。逆さクヴァーレとも呼ばれており、見た目は海にいる種と同じで触手を伸ばして獲物を取るがこの種はダンジョンや洞窟の天井に張り付き触手に引っかかった獲物を捕食する。触手には神経性の毒があるが本体部分は北方では珍味とされており、高値で取引されている。最近の平均取引価格は銀貨12枚、最安値銀貨8枚最高値銀貨18枚、最終取引日は33日前と記録されています。』
こんな偶然があっていいのだろうか、探していた魔物がまさかこんなに早く見つかるとは。
っていうかあまりにも出来すぎていて怖いぐらいだ。
とはいえここに持ち込まれるという事は近くのダンジョンに生息するという事、急ぎどこで見つけたか聞かなければ。
「ジン、これを持ち込んだ冒険者はいつ戻ってくる?」
「主殿の期間がわかりませんでしたので夕方とだけお伝えしてますが。これに何か問題でも?」
「素材よりもこいつがどこで見つかったかの方が重要なんだ、そいつがどこにいるかはわかるか?」
「来たのは少し前ですので探せるやもしれません、少しお時間を頂戴します。」
「見つかったら査定が終わった事とどこで見つけたかを聞き出してくれ。」
「お任せを。」
触手だけここに持って来て本体を他所に持って行っている可能性もある、もしそれを持っているのなら出来るだけ早くここに連れてきて両方回収しなければ。
「シロウ様ただいま戻りました。」
早くジンが戻ってこないかとやきもきしていると、先にアニエスさんが戻って来た。
ここ二日ほどギルド協会の要請で魔物が溢れそうになっているさびれたダンジョンの討伐隊に同行していたのだが、どうやらそれが終わったらしい。
クーガーさんもいたのでまぁ問題はないだろうと思っていたのだが予想通り怪我一つしていないようだ。
「お帰り、合同討伐隊はどうだった?」
「お陰様で氾濫する前に魔物の駆除に成功しました。あまり見かけない魔物も多く苦戦はしましたが冒険者に死者は出ておりません。こちら、ギルドより頂いた報酬と分配された素材になります。」
「随分と大量・・・ってこれはもしかして天井にぶら下がってる魔物のやつか!?」
「そうですがオムヒゥケールトジェリーなどよくご存じですね。主に北方にしかいない珍しい魔物なのですが。」
「丁度それを探していたところだ。そうか、これだとかなりの数が手に入りそうだな。」
おそらくはギルドにも持ち込まれているだろうからそれはすべて回収するとして、他にも持っている人がいないか声掛けしてもらえるようにお願いしておこう。
ジンには悪いがもう殆ど判明してしまったけども、まぁ他に持っているものがあれば割増しで買い取ればいいか。
急ぎギルドに向かい依頼を見て大喜びする冒険者達からクラゲを回収、触手の方も色々と使い道がありそうなので両方買い付ける事にした。
この前のベルベラドンナと一緒に聖騎士団に持ち込む予定だ。
本当はその日のうちに回収分を持ち込んでも良かったんだが、流石に早すぎるので翌日の昼ぐらいまで寝かせて持ち込むことにした。
「まさかこんなに手に入るなんて・・・。」
「こいつで間違いないか?」
「この白濁した半透明な感じ、間違いないオムヒゥケールトジェリーだよ。」
「そりゃよかった。正直なところ手に入るとは思っていなかったんだが、偶然遭遇したっていう冒険者がいたんで売ってもらったんだ。全部で25匹、状態はいいはずだが念のために確認してくれ。」
ぶよぶよした本体を机の上に並べながら一匹ずつ検品してもらう。
本当はこの倍ほどあるんだけれどあまり多すぎてもあれなので頑張りました感を出すために小出しにしている。
目を輝かせてブヨブヨのクラゲを見つめる様は正直少し怖い感じだが、それだけほしかったってことなんだろう。
「どれも申し分ないですけど触手はありませんでしたか?」
「アレは別で使う予定が出来たんで頼まれていた本体しかないんだ。あったほうが良かったのか?」
「いえ、あの噛んだ時にしびれる感じも好きだったので手に入ればと思って。」
いやいや、獲物をしびれさせる触手の方まで食べるのか。
そっちはどっちかっていうと刺激ほしさなんだろうけど・・・いや、人の趣味にとやかく言うのは失礼だよな。
とりあえずしばらくはこっちにいるそうなので手に入り次第お渡しすることを約束して今日の分の報酬をもらった。
今回の冒険者から買い取った分で得られる報酬はおよそ銀貨25枚、後は巣になっていたっていうダンジョンでどのぐらいのペースで回収できるかによって得られる金額が変わってくる。
この人もずっとここにいられるわけじゃないだろうから今後は北方に輸出する算段も計画しなければならないだろう。
しかしこんなクラゲが銀貨に化けるとはなぁ。
後は聖騎士団が触手にどれだけの金を積むのか気になるところだが、まぁあまり期待はしないでおこう。
ベルベラドンナもそこまでの高額にはならなかったし期待して落ち込むよりかはずっといい。
これもまた自分の心を慰める処世術。
折角なので残ったクラゲを教えてもらった作り方で調理してみたのだが、味に関してはあえて触れないでおくつもりだ。
不味くはなかった・・・そういう事にしておいてくれ。
「イラッシャイ、買取ならカウンターまで持って来てくれ。」
「いや、そう言うのじゃないんですけどいいですか?」
刺すような日差しが降り注ぐ昼前、恰幅の良い中年女性がふらりと店にやって来た。
透き通るような金髪に雪のように白い肌。
これでお腹のポッコリが無ければ元の世界ではさぞもてはやされただろうという感じのその女性は、申し訳なさそうな顔でカウンターまでやってくる。
どうやら買い取り客じゃないようだが、そんな人が何でまたこんな店にやって来たんだろうか。
「販売もしてるからそれは構わないんだが、探し物か?」
「オムヒゥケールトジェリーという魔物の肉を探しているんです。此方ではあまりなじみはないかもしれませんが、私の故郷では珍味としてよく食べられているんです。ですがこの夏は全くと言っていい程見つからなくて、王都でなら手に入るかもと思ったのですがなかなか見つからなくて。」
「それで俺の店にたどり着いたと。正直うちでもそういった素材を扱った覚えはないんだが、そんなに美味いのか?」
「甘辛く味付けして食べるのが一般的ですがコリコリとした食感が癖になりますよ。何故こちらで食べられないかはわかりませんが、私は昔から食べているので、それが食べられないとなると夏を迎えた気がしないんです。」
うーむ、そんな言われ方すると気になるじゃないか。
珍味って言われるものの多くはなかなか手に入らないかそれとも癖があるのかのどちらかなのだが、どうやら前者の方らしい。
そしてそういう物は総じて高くなるのが一般的だが・・・。
「なるほどなぁ、因みに有ればいくらで買うつもりなんだ?」
「一匹当たり銀貨10枚でも買います。」
「そんなに高くても買うのか。」
「私達にはそれだけ大切な物なんです。それが急に見つからなくなって、何か良くない事の前触れじゃなかったらいいんですけど。」
どんな魔物か知らないが一匹当たり銀貨10枚もの金額をポンと出そうっていうんだからよっぽど需要があると見える。
この近辺では全く聞かないという事は限られた需要になるんだろうけど、この金額なら手を出してみてもいいかもしれない。
「何匹必要なんだ?」
「何匹でも。」
「おいおい、本気か?」
「それだけのお金はみんなから預かってきました、ここが最後の綱なんです宜しくお願いします!」
「とりあえず出来る限りの事はさせてもらうが確約はしないからその時は覚悟してくれ。とりあえず滞在先を教えてくれれば報告は入れよう。」
「ありがとうございます。」
出来れば大儲け、出来なくても大きな損失はなさそうなのでとりあえず探すだけ探してみてもいいだろう。
とりあえずは情報収集からだな。
そろそろジンが製薬ギルドから戻ってくるだろうからそれから図書館に行ってどんな魔物か調べてみよう。
「オムヒゥケールトジェリーですか。えぇっと・・・あ、ありました!逆さになったクヴァーレですの事ですね。」
「逆さ?」
「はい。ダンジョンの天井なんかに張り付いて触手を垂らし、そこに引っかかった魔物や人を捕まえて食べる魔物です。クヴァーレの一種ではあるんですけど海に住んでいない珍しい魔物だったかと。」
ジンと交代するように図書館に向かい、ラブリーさんに魔物について問い合わせてみると本を探すまでも無く本人の口からすらすらと情報が流れて来た。
全部覚えてないとか言ってたのにこの人もアレン少年と同じタイプなんじゃなかろうか。
「よくまぁそんなの覚えてるな。」
「実はこの間入って来た本に書いてあったものですから。」
「なるほどそういう事か。」
「でも珍しい魔物だって書いてありましたよ。一応本も持ってきますね。」
「あぁ、宜しく頼む。」
そうか、やっぱり珍しい魔物なのか。
ダンジョンの中にいるらしいから片っ端から探せば見つかるかもしれないけれど、すぐに見つかるかどうかは何とも言えないなぁ。
クラゲなのに水中にいないとかそれってクラゲって言えるんだろうか。
ま、この世界と向こうの世界が全く同じわけじゃないんだし違ったものがいても何の不思議もない。
彼女が探してきてくれた本を貸し出してもらいその足で冒険者ギルドへ。
受付嬢も魔物について全く知らなかったらしいので、とりあえず借りてきた本を見せて依頼を出してもらうことになった。
一匹当たり銀貨5枚。
本当はもう少し安くしたいんだが安くて持ち込まれないのもあれなので少し高めに設定しておいた。
「こんな魔物がいるんですね。」
「俺も話を聞くまでは知らなかったが、美味いらしいぞ。」
「え!食べるんですか?」
「北方じゃ珍味っていうことで人気らしい。正直どんな味かは知らないが、まぁ魔物を喰うのは俺達も同じだしそれと似たようなもんだろう。」
「でもクヴァーレですよ?」
俺達の知っているクヴァーレとは違うのかもしれないし、その辺はとりあえず依頼を出して様子をみよう。
ぶっちゃけこの感じだと期待は薄そうだけどなぁ。
「ただいま。」
「おかえりなさいませ、主殿急ぎ見て頂きたい素材がございまして。」
「変なのが持ち込まれたのか?」
「クヴァーレの触手だと思うのですが、どうも見たことが無く値段のつけようがございません。あ、毒がありますのでご注意を。」
「毒か、了解した。」
鑑定するのに素材に触れる必要はあるのだが手袋をしていても発動するのでその辺の心配は無用だ。
『オムヒゥケールトジェリーの触手。逆さクヴァーレとも呼ばれており、見た目は海にいる種と同じで触手を伸ばして獲物を取るがこの種はダンジョンや洞窟の天井に張り付き触手に引っかかった獲物を捕食する。触手には神経性の毒があるが本体部分は北方では珍味とされており、高値で取引されている。最近の平均取引価格は銀貨12枚、最安値銀貨8枚最高値銀貨18枚、最終取引日は33日前と記録されています。』
こんな偶然があっていいのだろうか、探していた魔物がまさかこんなに早く見つかるとは。
っていうかあまりにも出来すぎていて怖いぐらいだ。
とはいえここに持ち込まれるという事は近くのダンジョンに生息するという事、急ぎどこで見つけたか聞かなければ。
「ジン、これを持ち込んだ冒険者はいつ戻ってくる?」
「主殿の期間がわかりませんでしたので夕方とだけお伝えしてますが。これに何か問題でも?」
「素材よりもこいつがどこで見つかったかの方が重要なんだ、そいつがどこにいるかはわかるか?」
「来たのは少し前ですので探せるやもしれません、少しお時間を頂戴します。」
「見つかったら査定が終わった事とどこで見つけたかを聞き出してくれ。」
「お任せを。」
触手だけここに持って来て本体を他所に持って行っている可能性もある、もしそれを持っているのなら出来るだけ早くここに連れてきて両方回収しなければ。
「シロウ様ただいま戻りました。」
早くジンが戻ってこないかとやきもきしていると、先にアニエスさんが戻って来た。
ここ二日ほどギルド協会の要請で魔物が溢れそうになっているさびれたダンジョンの討伐隊に同行していたのだが、どうやらそれが終わったらしい。
クーガーさんもいたのでまぁ問題はないだろうと思っていたのだが予想通り怪我一つしていないようだ。
「お帰り、合同討伐隊はどうだった?」
「お陰様で氾濫する前に魔物の駆除に成功しました。あまり見かけない魔物も多く苦戦はしましたが冒険者に死者は出ておりません。こちら、ギルドより頂いた報酬と分配された素材になります。」
「随分と大量・・・ってこれはもしかして天井にぶら下がってる魔物のやつか!?」
「そうですがオムヒゥケールトジェリーなどよくご存じですね。主に北方にしかいない珍しい魔物なのですが。」
「丁度それを探していたところだ。そうか、これだとかなりの数が手に入りそうだな。」
おそらくはギルドにも持ち込まれているだろうからそれはすべて回収するとして、他にも持っている人がいないか声掛けしてもらえるようにお願いしておこう。
ジンには悪いがもう殆ど判明してしまったけども、まぁ他に持っているものがあれば割増しで買い取ればいいか。
急ぎギルドに向かい依頼を見て大喜びする冒険者達からクラゲを回収、触手の方も色々と使い道がありそうなので両方買い付ける事にした。
この前のベルベラドンナと一緒に聖騎士団に持ち込む予定だ。
本当はその日のうちに回収分を持ち込んでも良かったんだが、流石に早すぎるので翌日の昼ぐらいまで寝かせて持ち込むことにした。
「まさかこんなに手に入るなんて・・・。」
「こいつで間違いないか?」
「この白濁した半透明な感じ、間違いないオムヒゥケールトジェリーだよ。」
「そりゃよかった。正直なところ手に入るとは思っていなかったんだが、偶然遭遇したっていう冒険者がいたんで売ってもらったんだ。全部で25匹、状態はいいはずだが念のために確認してくれ。」
ぶよぶよした本体を机の上に並べながら一匹ずつ検品してもらう。
本当はこの倍ほどあるんだけれどあまり多すぎてもあれなので頑張りました感を出すために小出しにしている。
目を輝かせてブヨブヨのクラゲを見つめる様は正直少し怖い感じだが、それだけほしかったってことなんだろう。
「どれも申し分ないですけど触手はありませんでしたか?」
「アレは別で使う予定が出来たんで頼まれていた本体しかないんだ。あったほうが良かったのか?」
「いえ、あの噛んだ時にしびれる感じも好きだったので手に入ればと思って。」
いやいや、獲物をしびれさせる触手の方まで食べるのか。
そっちはどっちかっていうと刺激ほしさなんだろうけど・・・いや、人の趣味にとやかく言うのは失礼だよな。
とりあえずしばらくはこっちにいるそうなので手に入り次第お渡しすることを約束して今日の分の報酬をもらった。
今回の冒険者から買い取った分で得られる報酬はおよそ銀貨25枚、後は巣になっていたっていうダンジョンでどのぐらいのペースで回収できるかによって得られる金額が変わってくる。
この人もずっとここにいられるわけじゃないだろうから今後は北方に輸出する算段も計画しなければならないだろう。
しかしこんなクラゲが銀貨に化けるとはなぁ。
後は聖騎士団が触手にどれだけの金を積むのか気になるところだが、まぁあまり期待はしないでおこう。
ベルベラドンナもそこまでの高額にはならなかったし期待して落ち込むよりかはずっといい。
これもまた自分の心を慰める処世術。
折角なので残ったクラゲを教えてもらった作り方で調理してみたのだが、味に関してはあえて触れないでおくつもりだ。
不味くはなかった・・・そういう事にしておいてくれ。
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