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1269.転売屋は蜂に追われる
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「あ!シロウさんようこそ、今日はお仕事ですか?それとも納品ですか?」
「今日は仕事だ。何か面白い仕事ないか?」
「面白いですか・・・、シロウさんの面白いの基準がよくわからないんですけど。」
「ま、そりゃそうだ。簡単に言えば楽に稼げて、でもあまり誰もやりたがらなそうなやつがあればいいかな。」
「誰もやりたがらないですか。それならいいのがありますよ!」
露店に缶詰めになるにはつらい気候、たまには体を動かさないと鈍ってしまいそうなので今日は仕事を休止して冒険者として活動することにした。
といっても所詮は新人冒険者に毛が生えたような実力しかないので、大型の魔物を倒すなんて言うすごい依頼はできない。
なので比較的簡単、でも誰もやりたがらないようなやつをやることにした。
普通誰もやりたがらないようなやつは儲けが少ないことが多いのだが、儲けが多いもののめんどくさいとかで置いておかれるようなのもある。
折角なら儲けが出る方がありがたいのだが、今回のはどっちだろうか。
「パラライビーの針?」
「そうなんです、マッサージっていうか整体?ともかく体のケアに使うらしいんですけど、手に入れるのが難しいので誰もやりたがらないんですよね。」
「因みに難しい理由は?」
「とにかく数が多いんです。蟲系の魔物は燃やしちゃうのが手っ取り早いんですけど、燃やすと針が手に入らないんですよ。つまり、襲い来る大量のパラライビーを燃やさずに対処するとなると・・・ぶっちゃけ大変なんです。」
蟲系の魔物が炎に弱いのは鉄板だが、それをすると素材が全く手に入らない。
かといって物理的に倒そうとするとかなりの時間と労力が必要になる。
パラライビーはその名の通り針で獲物をマヒさせてくるのだが、一匹ではなく何十匹も同時に襲ってくるのでマヒするとなると心臓までマヒして死んでしまうのだとか。
痛みで死ぬのかそれとも苦しみで死ぬのか、ともかくそんな恐ろしい目に合うぐらいなら手を出さないって言うのが普通の考え方なんだろうなぁ。
「それはぶっちゃけなくても大変だな。」
「ちなみにシロウさんならどうやって対処しますか?」
「普通に考えれば殺虫剤だが、煙も案外効果があるらしいからそっちでやってみるのもありだな。巣にゆっくり近づいて、煙を焚いて駆除。逃げ回るのを各個撃破って感じか。」
「それでいけますか?」
「別に全部駆除しろって依頼じゃないんだろ?なら必要数集めてさっさとドロンするのが一番だ。」
討伐依頼と違って調達依頼は魔物の駆除を必要としない。
もちろん全部駆除したほうが楽なのは楽だし、調達依頼なので数が手に入ればその分実入りもよくなる。
整体か何かに使うってことはあれか?鍼灸の技術があるってことなんだろうか。
パラライビーの針を使うのが結構怖いんだが安全性が確立しているからこその依頼なんだろう。
たぶん。
「正直誰もやってくれないので少しでも持って帰ってくれると助かります。依頼料は一本当たり銅貨50本です、よろしくお願いします。」
「了解、期待しないで待っていてくれ。」
「え~そこはかっこよく期待しとけっていうところじゃないんですか?」
「かっこよく言って命を失うのは馬鹿らしいだろ?」
「シロウさんって見た目の割に年配の人みたいな雰囲気ありますよね。」
見た目の割にっていう部分が引っかかるが、でもまぁ中身は40すぎたオッサンだし間違いじゃないんだよな。
そこを見抜ける当たり人を見る目はあるんだろうなぁ。
依頼書を受けとって屋敷に戻り、アニエスさんに事情を説明する。
ジンも手が空いているので手伝ってもらえるようだ。
基本この二人がいると何とかなるからな、これで依頼達成も確実だ。
「しかし、パラライビーを焼かずに対処するのは聊かむずかしくありませんかな?」
「別に全部焼かないわけじゃない、必要数が集まればそれをするのも一つの手段だ。」
「ですがそれをするまでは燃やさずに対処されるわけですよね?」
「そうなる。一応作戦としては森で拾ってきたスモークマッシュルームを巣の下に投げつけて燻し、出てきたのを遠距離攻撃で撃破。スモークマッシュルームと一緒に殺虫剤も投げつけてやれば弱らせるぐらいはできるだろう。知らんけど。」
やってもいないので効果があるのは未知数だが、元の世界では煙も中々に有効だった覚えがある。
まぁ、一番は殺虫剤だけどな。
「パラライビーが出る場所はもう判明しているんですか?」
「それは確認済みだ、ちょうどボスケさんの森と俺の森の間ぐらいに巨大な巣が出来ているらしい。人通りがないから放置されているが、正直このまま放置して被害が出る前に何とかしてしまいたいっていう気持ちもある。が、とりあえず今は依頼優先でいこう。」
「そこでしたら馬車ですぐですから日帰りできますね。わかりました、急ぎ参りましょう。」
「馬車の手配はギルドがやってくれている、各自準備して30分後に集合で。」
「「はい。」」
ルフは留守番、クーガーさんも残念ながら捕まらなかったのでこの三人で依頼をこなすことになる。
さっきも言ったようにこの二人がいれば基本何とかなる。
その、はずだったんだけどなぁ・・・。
「無理無理無理!なんでこっちに来るんだよ!」
「主殿、叫ぶ前に足を動かさねば死にますよ。」
「わかってるっての!」
「もう少し頑張ってください、今殺虫剤を撒いています。」
馬車で森の近くまで移動すると、離れた所からでもわかるぐらいに巨大な蜂の巣がドンと鎮座していた。
その近くを無数の蜂が飛び回っているのがわかる。
数にしてざっと100はいるんじゃないだろうか。
外でそれぐらいいるってことは中にはもっといるという事だ。
おかしい、俺の聞いた話じゃもっと小さい巣の予定だったんだが・・・。
しかし、ここまで来た以上成果を出さなければ大損だ。
ってことでビビりながらも準備を整え、離れた安全地帯からかく乱用のスモークマッシュルームをスリングで打ち込む。
三つほど打ち込むとそこらじゅうが真っ白になり巣が見えなくなってしまった。
ブンブンと飛び交う音もするがこれだけは慣れていたら大丈夫、そう思っていたその時だった。
白い煙を突き破るように一直線にこちらへ向かってくる蜂の影。
何匹かは来ると思っていたが、ものすごい数が向かってきたので慌てて後ろに逃げ出したのがよくなかったんだろう。
動き出した俺めがけて蜂が殺到し、近くにいたアニエスさんとジンには見向きもしなかった。
まるで犯人がだれかわかっているよう。
幸い速度は遅めなのでこうやって逃げ続ける事が出来ているものの、俺にも体力ってもんがあってだな。
何故か相手にされないアニエスさんが急ぎ殺虫剤を巣の近くに置きに行った・・・とおもったら、まさか巣そのものを叩き落としてしまった。
いや、確かにそれも選択肢の一つだって言ったけど、でもそれじゃあ素材を確保することはできない。
どうするどうすればいい。
逃げながら必死になって知恵を回しているせいか酸欠になってきて目の前が少し白くなる。
やばい、これはマジでヤバい。
何かの歯車がずれると後は全てが狂ってしまう。
そう思った時には足がもつれ、その場に勢いよく倒れてしまった。
立ち上がろうにも足がうまく動かない。
え、マジであの量に襲われるのか?
そう冷静に考えたその時だった。
襲い来る蜂の大軍が突然何か見えない壁のようなものにぶつかり、動きを止めた。
「え?」
「間一髪、ですな。」
「まさかジンが?」
「いかにも、私強欲なものですから彼らの周りの空間を少し頂きまして。あとはこうして、空気を奪ってやれば・・・。」
見えない壁にぶち当たった蜂が急に暴れ出したと思ったら、宙に浮いたまま羽ばたきをやめ倒れこんだ。
空に浮かぶ無数の蜂たち。
前にブラックオークを退治しに行った時もこんな風に対処したんだったか。
強欲だから相手の物を奪うことができるってのはさすが魔人といったところだろう。
しばらくして宙に浮かんだ蜂が地面に落下、だが彼らが動くことはもう二度と無かった。
「なぁ、初めからこうすればよかったんじゃないか?」
「何のことでしょう。」
「いや、もういい。念のためとどめを刺してまわってから針を回収しよう。巣の方は・・・アニエスさんが何とかするだろ。」
「かしこまりました。」
これ以上突っ込むのは時間の無駄だ。
念のため首の部分を切断してからお尻に生えた針を抜いていく。
よく見ると全ての蜂に針があるわけではなく、元から無い奴もいた。
たしかメスにしか針はないんだっけか?
『パラライビーの尾針。この針から毒液を流し込み相手を痺れさせた後巣に戻って肉団子にする。尾針そのものに毒はないが、先端部に多少の毒が残っている場合は少し痺れが残ることもある。あまりの鋭さから鍼灸用に用いられることもあり、その場合はしっかり洗浄されている為毒の心配はない。最近の平均取引価格は銅貨25枚、最安値銅貨15枚最高値銅貨33枚、最終取引日は34日前と記録されています。』
なるほど、使うときは消毒するのかそりゃそうだよな。
ジンのお陰で無傷のまま全部で55本の針を回収することができた。
他にも使える素材があればよかったんだが生憎と針ぐらいしか使い道がない。
あるとしたら・・・。
「巣から蜜蠟と蜂の子を回収いたしました。」
「蜂の子?なんでまたそんなのを。」
「とても栄養価が高いので食べると元気になりますよ。」
「はちみつはないのか?」
「残念ながらパラライビーは肉食ですので、蜜蝋はありますが蜜はございません。」
肉団子とか言ってたからそれはそうなんだろうけど・・・マジで食うのか。
アニエスさんの手には大きめの白い芋虫が握られている。
一匹がかなり大きい。
元の世界でも蜂の子を食べる文化はあるが、これはちょっと・・・。
困ったもんだ。
「因みに売れるのか?」
「栄養価が高く、男性機能の向上にも効果がありますからかなりの需要があるかと。」
「マジか、それなら針なんて無視して巣をつぶした方が儲かるってことじゃないか?」
「事実としてはそうですがそれでは針を求める方が報われません。どちらも救ってこそ儲けが出るというわけです。」
確かに一つよりも二つの方が儲かるわけだが・・・ま、とりあえずは終わった話だ。
俺の全力疾走のおかげでアニエスさんが巣を壊し、その結果これが手に入った。
そう考えると俺の走りも無駄ではなかったってことになる。
だが一つだけ言わせてもらおう。
素人が出来るんじゃないかって勝手に思い込むのはよくないな!
煙で燻せば何とかなるとか言ったの誰だよって俺か。
なんて一人ツッコミができるぐらいにはとりあえず落ち着いた。
次からはしっかりと考えてから戦いを挑むとしよう。
ひとまず依頼は大成功、大量の素材と蜂の子を乗せ馬車は夕暮れに染まる王都目指して走り出したのだった。
「今日は仕事だ。何か面白い仕事ないか?」
「面白いですか・・・、シロウさんの面白いの基準がよくわからないんですけど。」
「ま、そりゃそうだ。簡単に言えば楽に稼げて、でもあまり誰もやりたがらなそうなやつがあればいいかな。」
「誰もやりたがらないですか。それならいいのがありますよ!」
露店に缶詰めになるにはつらい気候、たまには体を動かさないと鈍ってしまいそうなので今日は仕事を休止して冒険者として活動することにした。
といっても所詮は新人冒険者に毛が生えたような実力しかないので、大型の魔物を倒すなんて言うすごい依頼はできない。
なので比較的簡単、でも誰もやりたがらないようなやつをやることにした。
普通誰もやりたがらないようなやつは儲けが少ないことが多いのだが、儲けが多いもののめんどくさいとかで置いておかれるようなのもある。
折角なら儲けが出る方がありがたいのだが、今回のはどっちだろうか。
「パラライビーの針?」
「そうなんです、マッサージっていうか整体?ともかく体のケアに使うらしいんですけど、手に入れるのが難しいので誰もやりたがらないんですよね。」
「因みに難しい理由は?」
「とにかく数が多いんです。蟲系の魔物は燃やしちゃうのが手っ取り早いんですけど、燃やすと針が手に入らないんですよ。つまり、襲い来る大量のパラライビーを燃やさずに対処するとなると・・・ぶっちゃけ大変なんです。」
蟲系の魔物が炎に弱いのは鉄板だが、それをすると素材が全く手に入らない。
かといって物理的に倒そうとするとかなりの時間と労力が必要になる。
パラライビーはその名の通り針で獲物をマヒさせてくるのだが、一匹ではなく何十匹も同時に襲ってくるのでマヒするとなると心臓までマヒして死んでしまうのだとか。
痛みで死ぬのかそれとも苦しみで死ぬのか、ともかくそんな恐ろしい目に合うぐらいなら手を出さないって言うのが普通の考え方なんだろうなぁ。
「それはぶっちゃけなくても大変だな。」
「ちなみにシロウさんならどうやって対処しますか?」
「普通に考えれば殺虫剤だが、煙も案外効果があるらしいからそっちでやってみるのもありだな。巣にゆっくり近づいて、煙を焚いて駆除。逃げ回るのを各個撃破って感じか。」
「それでいけますか?」
「別に全部駆除しろって依頼じゃないんだろ?なら必要数集めてさっさとドロンするのが一番だ。」
討伐依頼と違って調達依頼は魔物の駆除を必要としない。
もちろん全部駆除したほうが楽なのは楽だし、調達依頼なので数が手に入ればその分実入りもよくなる。
整体か何かに使うってことはあれか?鍼灸の技術があるってことなんだろうか。
パラライビーの針を使うのが結構怖いんだが安全性が確立しているからこその依頼なんだろう。
たぶん。
「正直誰もやってくれないので少しでも持って帰ってくれると助かります。依頼料は一本当たり銅貨50本です、よろしくお願いします。」
「了解、期待しないで待っていてくれ。」
「え~そこはかっこよく期待しとけっていうところじゃないんですか?」
「かっこよく言って命を失うのは馬鹿らしいだろ?」
「シロウさんって見た目の割に年配の人みたいな雰囲気ありますよね。」
見た目の割にっていう部分が引っかかるが、でもまぁ中身は40すぎたオッサンだし間違いじゃないんだよな。
そこを見抜ける当たり人を見る目はあるんだろうなぁ。
依頼書を受けとって屋敷に戻り、アニエスさんに事情を説明する。
ジンも手が空いているので手伝ってもらえるようだ。
基本この二人がいると何とかなるからな、これで依頼達成も確実だ。
「しかし、パラライビーを焼かずに対処するのは聊かむずかしくありませんかな?」
「別に全部焼かないわけじゃない、必要数が集まればそれをするのも一つの手段だ。」
「ですがそれをするまでは燃やさずに対処されるわけですよね?」
「そうなる。一応作戦としては森で拾ってきたスモークマッシュルームを巣の下に投げつけて燻し、出てきたのを遠距離攻撃で撃破。スモークマッシュルームと一緒に殺虫剤も投げつけてやれば弱らせるぐらいはできるだろう。知らんけど。」
やってもいないので効果があるのは未知数だが、元の世界では煙も中々に有効だった覚えがある。
まぁ、一番は殺虫剤だけどな。
「パラライビーが出る場所はもう判明しているんですか?」
「それは確認済みだ、ちょうどボスケさんの森と俺の森の間ぐらいに巨大な巣が出来ているらしい。人通りがないから放置されているが、正直このまま放置して被害が出る前に何とかしてしまいたいっていう気持ちもある。が、とりあえず今は依頼優先でいこう。」
「そこでしたら馬車ですぐですから日帰りできますね。わかりました、急ぎ参りましょう。」
「馬車の手配はギルドがやってくれている、各自準備して30分後に集合で。」
「「はい。」」
ルフは留守番、クーガーさんも残念ながら捕まらなかったのでこの三人で依頼をこなすことになる。
さっきも言ったようにこの二人がいれば基本何とかなる。
その、はずだったんだけどなぁ・・・。
「無理無理無理!なんでこっちに来るんだよ!」
「主殿、叫ぶ前に足を動かさねば死にますよ。」
「わかってるっての!」
「もう少し頑張ってください、今殺虫剤を撒いています。」
馬車で森の近くまで移動すると、離れた所からでもわかるぐらいに巨大な蜂の巣がドンと鎮座していた。
その近くを無数の蜂が飛び回っているのがわかる。
数にしてざっと100はいるんじゃないだろうか。
外でそれぐらいいるってことは中にはもっといるという事だ。
おかしい、俺の聞いた話じゃもっと小さい巣の予定だったんだが・・・。
しかし、ここまで来た以上成果を出さなければ大損だ。
ってことでビビりながらも準備を整え、離れた安全地帯からかく乱用のスモークマッシュルームをスリングで打ち込む。
三つほど打ち込むとそこらじゅうが真っ白になり巣が見えなくなってしまった。
ブンブンと飛び交う音もするがこれだけは慣れていたら大丈夫、そう思っていたその時だった。
白い煙を突き破るように一直線にこちらへ向かってくる蜂の影。
何匹かは来ると思っていたが、ものすごい数が向かってきたので慌てて後ろに逃げ出したのがよくなかったんだろう。
動き出した俺めがけて蜂が殺到し、近くにいたアニエスさんとジンには見向きもしなかった。
まるで犯人がだれかわかっているよう。
幸い速度は遅めなのでこうやって逃げ続ける事が出来ているものの、俺にも体力ってもんがあってだな。
何故か相手にされないアニエスさんが急ぎ殺虫剤を巣の近くに置きに行った・・・とおもったら、まさか巣そのものを叩き落としてしまった。
いや、確かにそれも選択肢の一つだって言ったけど、でもそれじゃあ素材を確保することはできない。
どうするどうすればいい。
逃げながら必死になって知恵を回しているせいか酸欠になってきて目の前が少し白くなる。
やばい、これはマジでヤバい。
何かの歯車がずれると後は全てが狂ってしまう。
そう思った時には足がもつれ、その場に勢いよく倒れてしまった。
立ち上がろうにも足がうまく動かない。
え、マジであの量に襲われるのか?
そう冷静に考えたその時だった。
襲い来る蜂の大軍が突然何か見えない壁のようなものにぶつかり、動きを止めた。
「え?」
「間一髪、ですな。」
「まさかジンが?」
「いかにも、私強欲なものですから彼らの周りの空間を少し頂きまして。あとはこうして、空気を奪ってやれば・・・。」
見えない壁にぶち当たった蜂が急に暴れ出したと思ったら、宙に浮いたまま羽ばたきをやめ倒れこんだ。
空に浮かぶ無数の蜂たち。
前にブラックオークを退治しに行った時もこんな風に対処したんだったか。
強欲だから相手の物を奪うことができるってのはさすが魔人といったところだろう。
しばらくして宙に浮かんだ蜂が地面に落下、だが彼らが動くことはもう二度と無かった。
「なぁ、初めからこうすればよかったんじゃないか?」
「何のことでしょう。」
「いや、もういい。念のためとどめを刺してまわってから針を回収しよう。巣の方は・・・アニエスさんが何とかするだろ。」
「かしこまりました。」
これ以上突っ込むのは時間の無駄だ。
念のため首の部分を切断してからお尻に生えた針を抜いていく。
よく見ると全ての蜂に針があるわけではなく、元から無い奴もいた。
たしかメスにしか針はないんだっけか?
『パラライビーの尾針。この針から毒液を流し込み相手を痺れさせた後巣に戻って肉団子にする。尾針そのものに毒はないが、先端部に多少の毒が残っている場合は少し痺れが残ることもある。あまりの鋭さから鍼灸用に用いられることもあり、その場合はしっかり洗浄されている為毒の心配はない。最近の平均取引価格は銅貨25枚、最安値銅貨15枚最高値銅貨33枚、最終取引日は34日前と記録されています。』
なるほど、使うときは消毒するのかそりゃそうだよな。
ジンのお陰で無傷のまま全部で55本の針を回収することができた。
他にも使える素材があればよかったんだが生憎と針ぐらいしか使い道がない。
あるとしたら・・・。
「巣から蜜蠟と蜂の子を回収いたしました。」
「蜂の子?なんでまたそんなのを。」
「とても栄養価が高いので食べると元気になりますよ。」
「はちみつはないのか?」
「残念ながらパラライビーは肉食ですので、蜜蝋はありますが蜜はございません。」
肉団子とか言ってたからそれはそうなんだろうけど・・・マジで食うのか。
アニエスさんの手には大きめの白い芋虫が握られている。
一匹がかなり大きい。
元の世界でも蜂の子を食べる文化はあるが、これはちょっと・・・。
困ったもんだ。
「因みに売れるのか?」
「栄養価が高く、男性機能の向上にも効果がありますからかなりの需要があるかと。」
「マジか、それなら針なんて無視して巣をつぶした方が儲かるってことじゃないか?」
「事実としてはそうですがそれでは針を求める方が報われません。どちらも救ってこそ儲けが出るというわけです。」
確かに一つよりも二つの方が儲かるわけだが・・・ま、とりあえずは終わった話だ。
俺の全力疾走のおかげでアニエスさんが巣を壊し、その結果これが手に入った。
そう考えると俺の走りも無駄ではなかったってことになる。
だが一つだけ言わせてもらおう。
素人が出来るんじゃないかって勝手に思い込むのはよくないな!
煙で燻せば何とかなるとか言ったの誰だよって俺か。
なんて一人ツッコミができるぐらいにはとりあえず落ち着いた。
次からはしっかりと考えてから戦いを挑むとしよう。
ひとまず依頼は大成功、大量の素材と蜂の子を乗せ馬車は夕暮れに染まる王都目指して走り出したのだった。
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