1,186 / 1,738
1181.転売屋は事の成り行きを報告する
しおりを挟む
「シロウ様、お客様が参られましたわよ。」
「俺に客?」
「応接室にお通ししてますから、後で香茶をお持ちしますわ。」
こちらでは珍しく曇天が広がり冷たい雪の降る日の事、自室でのんびりとしていると突然イザベラから客が来たと連絡を受けた。
王都にきてそろそろ一カ月弱。
それなりに仕事をしてきたのでそのうちの誰かが会いに来たという可能性はあるんだけど、よく考えればどこに住んでいるかとかまでは教えていなかったはず。
にもかかわらず俺の居場所を知る人物となると限られてくるわけだが・・・。
ま、行けばわかるか。
「ジン、一緒に行くぞ。」
「よろしいのですか?」
「イザベラが確認もせずに案内するってことは俺に近しい人物なんだろう。隠す必要もないさ。」
「なるほど、かしこまりました。」
もちろんルフも立ち上がり、総出で応接室へと移動する。
「シロウだ、入るぞ。」
親しき中にも礼儀あり、ちゃんとノックをして声をかけてから扉を開いた。
「シロウ、久しぶりだな。」
「ケイゴさん!それにアニエスさんまで、戻ってきていたのか。」
「お久しぶりですシロウ様。おや、そちらの方は?」
アニエスさんが少しだけ表情を和らげたものの、すぐに後ろに立っているジンに目をやり厳しい顔に戻る。
頭の上の耳がピンと立っているときは警戒している証拠だ。
「あー、それについては後で報告させてくれ。とりあえず無事に戦争が終わってよかったな、色々大変だっただろ。」
「大変といえば大変だったが、それにもシロウが関係しているらしいな。」
「俺は別に・・・ってディーネから聞いたのか。」
「あぁ、その後ろにいるのがそうなのか。」
「お初にお目にかかります、私はジン。シロウ様より強欲の壺から出していただいた魔人でございます。ご壺から出していただいた御恩もあり、欲深きシロウ様のお手伝いをさせていただいております。どうぞお見知りおきを。」
後ろに控えていたジンが、横に並び立ち深々とお辞儀をする。
うーん、見た目も相成って様になるなぁ。
中身はアレだけど。
「そうか、お前が弟を変えた張本人か。」
「300年ぶりの願いがまさかあのような事に使われるとは思っていませんでしたが、後から人間の争いを犠牲者も出さずに終える事が出来たと伺いました。小さき願いで大きな結果を生み出すとは強欲なお方だ。」
「シロウ様は強欲では・・・いえ、強欲ですね。」
「アニエスさんフォローしてくれるんじゃないのかよ。」
「よくよく考えますとその欲深さが今の結果につながったと考えられます。マリー様を始めとした皆様を守りつつ財産を残す、欲深くなければできなかったでしょう。」
これは褒められているのかけなされているのか。
いや、褒められているのはもちろん理解しているがなんていうか言い方がさぁ。
「まぁまぁそのぐらいにしておけ。正直首を取ることも覚悟していたのだが終始穏やかに話し合いの場を設ける事が出来たのは間違いなくシロウのおかげだ。改めて礼を言わせてくれ、弟の目を覚まさせてくれて本当にありがとう。」
「本当に偶然の結果だが、まぁうまくいってよかった。それで今日はそれを報告に来てくれたのか?」
「西方国との交渉について陛下にご報告をするべく戻ってまいりました。その前にどうしてもケイゴ様がお礼を言いたいとのことでしたので参上した次第です。」
「なるほど、それじゃあ陛下にもよろしく伝えてくれ。」
西方国から戻ってきて疲れている所わざわざ寄ってくれたのか。
本当は色々と聞きたい事もあるのだが、あまり引き留めるのもよろしくないな。
「何を言うか、お前も一緒に行くんだぞ。」
「俺が?なんでだ?」
「近年最大の戦争になりかけたのを止めた張本人だぞ?いかない理由はないだろう。」
「強欲の壺の願いで西方国国王の性癖を変えましたって報告するのか?勘弁してくれ。」
「だが事実は事実だ。ディネストリファ様やガルグリンダム様からも同様の報告が上がっている事だろう。それだけの事実があれば仕組まれた国家反逆罪などいくらでも帳消しにできるのではないか?」
「それはそれ、これはこれ。罪は罪として受け入れないと今後の示しがつかないだろ?それにだ、陛下からは推薦状という形で褒美をもらっているし、今更同行するつもりはない。むしろいい機会だと思ってここでしっかり稼いでいくつもりだ。ここで人脈を作っておけば向こうに戻ってからも十分稼ぐことができるからな。」
ケイゴさんの気持ちは大変ありがたいが、これに関してはもう終わった話だ。
金貨3000枚もの借金と引き換えに、俺は王都での生活と新しいきっかけを手にしたことになる。
もちろんそれを行うにあたって少しでもスムーズに事が運ぶように陛下からの特別な推薦状ももらっているし、現にそれがあったおかげで錬金術ギルドや製薬ギルドとの取引が成功したと言えるだろう。
もちろんすぐに罰金を支払って街に戻るという選択肢もあったのだが、それではこの世界を知らずに過ごすことになる。
最初はすぐに帰りたいと思っていたが、今は少しでも多くの物を持ち帰りたいという考え方に変わっている。
せっかくの機会なんだ、強欲の魔人に驚かれるぐらいの欲深さで金もうけしてやろうじゃないか。
「そうか、お前がそういう考えならば何も言うまい。だが一緒には来てもらうぞ。」
「えー、今日は寒いからゆっくりしたいんだがなぁ。」
「そういうわけにはまいりません。西方国との今後についての話もありますのでどうかご同行お願いします。」
「そうか、西方国との国交について決まれば向こうの品がまた入ってくることになるのか。」
戦争が終わった以上向こうの品がこちらに流れてくるわけだし、それを聞かない手はないよな。
折角ハルカとケイゴさんが作ってくれている調味料にも関係する話だけにしっかりと情報収集しておかないと。
ということで予定を変更してケイゴさん達と共に馬車に乗り込み一路王城へと向かう。
平民の身でありながら一カ月で二回も行くことになるとは思ってもみなかったが、まぁ一回も二回も同じことか。
「ケイゴ殿、アニエス長旅ご苦労だった。」
「西方国国王より親書を預かっております、まずはこちらをお納めください。」
「うむ、拝見しよう。」
城に到着した後は二人と共に陛下の元へ。
使者として出向いた二人と違ってなんとも場違いな感じではあるのだが、誰も文句を言う人はいないようなので静かにしておこう。
大勢の臣下と兵士が見守る前でケイゴさんが陛下に書状を手渡す。
それをその場で開き素早く目を通すと、その目がかすかに動いたのが見えた。
「これが西方国の回答か。」
「はい。此度の戦争に関しては西方国に非があり、多大なる迷惑をかけたことをお詫びする。国交の再開を認めてもらえるのならば賠償金として金貨1000枚を支払う用意がある。また、今後五年間にわたり西方国での関税を二割減らすとの事です。可能であれば直接陛下に謝罪をするとも言っておりましたが、それに関しては勝手ながら保留にさせていただきました。ひとまずは賠償の問題を解決したのち謝罪を受け入れるかどうかをお決めいただければと思います。」
「弟に厳しいのだな。」
「国の長として国民の上に立つのならばそれなりの罰を受けるべきだと思いますが、私も身勝手に民を捨てた身ですので、あまり偉そうなことを言うことはできません。」
「では、国王としてこの件について回答しよう。我が国は西方国の賠償内容を了承し、西方国国王直々の謝罪をもって国交回復に同意する。時期においては先方が落ち着き次第という事で構わないだろう。現時点で西方国の品が不足して困っているわけでもないが、関税が引き下げられるとわかれば聡い商人なら急ぎ準備するものも出てくるはず。その準備期間も必要だろう。」
そういいながら俺の方を見るのはなぜだろうか。
別に西方と取引がしたいわけではないので、俺は別に関係ないんだが。
むしろ向こうの品がすぐに入ってこないという情報の方がありがたい。
せっかくハルカたちが頑張っているのに安価に醤油やみそが流入することになれば折角の投資が無駄になってしまうからな。
「そのように申し伝えます。」
「うむ、今回の件はさほど大事にせず両国の繁栄につながるきっかけになればとも思っている。平和な世でありながらも私利私欲のために国をも利用するものがいるといういい戒めにもなっただろう。我もより一層気を引き締めて統治にあたることにする。ケイゴ殿、アニエスよくやってくれた。」
「「ありがとうございます。」」
「ケイゴ殿には引き続き西方国との仲介役として動いてもらえればと考えているが、そのあたりはどうお考えだ?」
「申し訳ありませんが身内である私があまり口を出し続けるのは宜しくないと考えております。つきましては、今回の件を伝えた時点で仲介の役目を辞させていただけますでしょうか。」
「そうか、それは残念だ。」
ふむ、てっきり継続して西方との仲介に入ると思っていたのだが、あくまでも国を捨てた身。
加えて身内があれこれ口を出しては世間的にもよろしくないと考えてのことだろう。
まぁ、早くハルカの所に戻りたいっていう部分の方が強いかもしれないけどな。
「後任に関しては議会での一件もありましたので中立の立場で動くことができ、かつ向こうの文化に詳しい者が相応しいと考えております。つきましては一人推薦したい者がいるのですが・・・。」
「奇遇だな、私も同じことを考えていた。」
「・・・おい。」
なんでそうなるんだよ。
っていうかこっちを見るな。
俺はもう貴族の身分を剥奪されたただの平民、っていうか国を裏切った国家反逆罪の前科持ちに戦争相手国との仲介をさせるとかどう考えてもおかしいだろうが。
折角そういうしがらみから解放されたはずなのに、そもそもそんなの議会が許すはずがないだろ?
許さないよな?
な?
「もちろんその者も突然のことに戸惑うと思いますので、そこで同行してくださいましたアニエス監査官を補佐としてついていただければとも考えております。実際に私と共に現地でのやり取りを見ておりますし、その武力と知力は必ずやお役に立つと思います。」
「と、ケイゴ殿は申しているがアニエスどう思う。」
「私でよろしければ喜んでお手伝いさせていただきます。」
「決まりだな。その者には後日使いを出し了承を取り付けると約束しよう。」
「ありがとうございます。」
なんだよその出来レース。
まだ誰にっていう明言はしてないけど、どう考えても俺だよな。
っていうかこの場にいるほぼ全員が俺の方を見ているんだが?
ここに俺を呼んだ本当の理由はこっちだったか・・・。
くそ、アニエスさんにまでしてやられた。
悔しそうな顔をする俺を見て陛下が満足げな笑みを浮かべている。
終戦の功労者どころか厄介ごとの押し付けに呼ばれただけじゃないか。
おのれケイゴさん、後で覚えとけよ。
こうなったら西方関係の儲け話は全部俺の金になるように仕向けてやる。
それをわかってやれって言ってるんだよな?そうだよな!?
なんて心の中で叫びながら彼らの後ろで盛大なため息をつくのだった。
「俺に客?」
「応接室にお通ししてますから、後で香茶をお持ちしますわ。」
こちらでは珍しく曇天が広がり冷たい雪の降る日の事、自室でのんびりとしていると突然イザベラから客が来たと連絡を受けた。
王都にきてそろそろ一カ月弱。
それなりに仕事をしてきたのでそのうちの誰かが会いに来たという可能性はあるんだけど、よく考えればどこに住んでいるかとかまでは教えていなかったはず。
にもかかわらず俺の居場所を知る人物となると限られてくるわけだが・・・。
ま、行けばわかるか。
「ジン、一緒に行くぞ。」
「よろしいのですか?」
「イザベラが確認もせずに案内するってことは俺に近しい人物なんだろう。隠す必要もないさ。」
「なるほど、かしこまりました。」
もちろんルフも立ち上がり、総出で応接室へと移動する。
「シロウだ、入るぞ。」
親しき中にも礼儀あり、ちゃんとノックをして声をかけてから扉を開いた。
「シロウ、久しぶりだな。」
「ケイゴさん!それにアニエスさんまで、戻ってきていたのか。」
「お久しぶりですシロウ様。おや、そちらの方は?」
アニエスさんが少しだけ表情を和らげたものの、すぐに後ろに立っているジンに目をやり厳しい顔に戻る。
頭の上の耳がピンと立っているときは警戒している証拠だ。
「あー、それについては後で報告させてくれ。とりあえず無事に戦争が終わってよかったな、色々大変だっただろ。」
「大変といえば大変だったが、それにもシロウが関係しているらしいな。」
「俺は別に・・・ってディーネから聞いたのか。」
「あぁ、その後ろにいるのがそうなのか。」
「お初にお目にかかります、私はジン。シロウ様より強欲の壺から出していただいた魔人でございます。ご壺から出していただいた御恩もあり、欲深きシロウ様のお手伝いをさせていただいております。どうぞお見知りおきを。」
後ろに控えていたジンが、横に並び立ち深々とお辞儀をする。
うーん、見た目も相成って様になるなぁ。
中身はアレだけど。
「そうか、お前が弟を変えた張本人か。」
「300年ぶりの願いがまさかあのような事に使われるとは思っていませんでしたが、後から人間の争いを犠牲者も出さずに終える事が出来たと伺いました。小さき願いで大きな結果を生み出すとは強欲なお方だ。」
「シロウ様は強欲では・・・いえ、強欲ですね。」
「アニエスさんフォローしてくれるんじゃないのかよ。」
「よくよく考えますとその欲深さが今の結果につながったと考えられます。マリー様を始めとした皆様を守りつつ財産を残す、欲深くなければできなかったでしょう。」
これは褒められているのかけなされているのか。
いや、褒められているのはもちろん理解しているがなんていうか言い方がさぁ。
「まぁまぁそのぐらいにしておけ。正直首を取ることも覚悟していたのだが終始穏やかに話し合いの場を設ける事が出来たのは間違いなくシロウのおかげだ。改めて礼を言わせてくれ、弟の目を覚まさせてくれて本当にありがとう。」
「本当に偶然の結果だが、まぁうまくいってよかった。それで今日はそれを報告に来てくれたのか?」
「西方国との交渉について陛下にご報告をするべく戻ってまいりました。その前にどうしてもケイゴ様がお礼を言いたいとのことでしたので参上した次第です。」
「なるほど、それじゃあ陛下にもよろしく伝えてくれ。」
西方国から戻ってきて疲れている所わざわざ寄ってくれたのか。
本当は色々と聞きたい事もあるのだが、あまり引き留めるのもよろしくないな。
「何を言うか、お前も一緒に行くんだぞ。」
「俺が?なんでだ?」
「近年最大の戦争になりかけたのを止めた張本人だぞ?いかない理由はないだろう。」
「強欲の壺の願いで西方国国王の性癖を変えましたって報告するのか?勘弁してくれ。」
「だが事実は事実だ。ディネストリファ様やガルグリンダム様からも同様の報告が上がっている事だろう。それだけの事実があれば仕組まれた国家反逆罪などいくらでも帳消しにできるのではないか?」
「それはそれ、これはこれ。罪は罪として受け入れないと今後の示しがつかないだろ?それにだ、陛下からは推薦状という形で褒美をもらっているし、今更同行するつもりはない。むしろいい機会だと思ってここでしっかり稼いでいくつもりだ。ここで人脈を作っておけば向こうに戻ってからも十分稼ぐことができるからな。」
ケイゴさんの気持ちは大変ありがたいが、これに関してはもう終わった話だ。
金貨3000枚もの借金と引き換えに、俺は王都での生活と新しいきっかけを手にしたことになる。
もちろんそれを行うにあたって少しでもスムーズに事が運ぶように陛下からの特別な推薦状ももらっているし、現にそれがあったおかげで錬金術ギルドや製薬ギルドとの取引が成功したと言えるだろう。
もちろんすぐに罰金を支払って街に戻るという選択肢もあったのだが、それではこの世界を知らずに過ごすことになる。
最初はすぐに帰りたいと思っていたが、今は少しでも多くの物を持ち帰りたいという考え方に変わっている。
せっかくの機会なんだ、強欲の魔人に驚かれるぐらいの欲深さで金もうけしてやろうじゃないか。
「そうか、お前がそういう考えならば何も言うまい。だが一緒には来てもらうぞ。」
「えー、今日は寒いからゆっくりしたいんだがなぁ。」
「そういうわけにはまいりません。西方国との今後についての話もありますのでどうかご同行お願いします。」
「そうか、西方国との国交について決まれば向こうの品がまた入ってくることになるのか。」
戦争が終わった以上向こうの品がこちらに流れてくるわけだし、それを聞かない手はないよな。
折角ハルカとケイゴさんが作ってくれている調味料にも関係する話だけにしっかりと情報収集しておかないと。
ということで予定を変更してケイゴさん達と共に馬車に乗り込み一路王城へと向かう。
平民の身でありながら一カ月で二回も行くことになるとは思ってもみなかったが、まぁ一回も二回も同じことか。
「ケイゴ殿、アニエス長旅ご苦労だった。」
「西方国国王より親書を預かっております、まずはこちらをお納めください。」
「うむ、拝見しよう。」
城に到着した後は二人と共に陛下の元へ。
使者として出向いた二人と違ってなんとも場違いな感じではあるのだが、誰も文句を言う人はいないようなので静かにしておこう。
大勢の臣下と兵士が見守る前でケイゴさんが陛下に書状を手渡す。
それをその場で開き素早く目を通すと、その目がかすかに動いたのが見えた。
「これが西方国の回答か。」
「はい。此度の戦争に関しては西方国に非があり、多大なる迷惑をかけたことをお詫びする。国交の再開を認めてもらえるのならば賠償金として金貨1000枚を支払う用意がある。また、今後五年間にわたり西方国での関税を二割減らすとの事です。可能であれば直接陛下に謝罪をするとも言っておりましたが、それに関しては勝手ながら保留にさせていただきました。ひとまずは賠償の問題を解決したのち謝罪を受け入れるかどうかをお決めいただければと思います。」
「弟に厳しいのだな。」
「国の長として国民の上に立つのならばそれなりの罰を受けるべきだと思いますが、私も身勝手に民を捨てた身ですので、あまり偉そうなことを言うことはできません。」
「では、国王としてこの件について回答しよう。我が国は西方国の賠償内容を了承し、西方国国王直々の謝罪をもって国交回復に同意する。時期においては先方が落ち着き次第という事で構わないだろう。現時点で西方国の品が不足して困っているわけでもないが、関税が引き下げられるとわかれば聡い商人なら急ぎ準備するものも出てくるはず。その準備期間も必要だろう。」
そういいながら俺の方を見るのはなぜだろうか。
別に西方と取引がしたいわけではないので、俺は別に関係ないんだが。
むしろ向こうの品がすぐに入ってこないという情報の方がありがたい。
せっかくハルカたちが頑張っているのに安価に醤油やみそが流入することになれば折角の投資が無駄になってしまうからな。
「そのように申し伝えます。」
「うむ、今回の件はさほど大事にせず両国の繁栄につながるきっかけになればとも思っている。平和な世でありながらも私利私欲のために国をも利用するものがいるといういい戒めにもなっただろう。我もより一層気を引き締めて統治にあたることにする。ケイゴ殿、アニエスよくやってくれた。」
「「ありがとうございます。」」
「ケイゴ殿には引き続き西方国との仲介役として動いてもらえればと考えているが、そのあたりはどうお考えだ?」
「申し訳ありませんが身内である私があまり口を出し続けるのは宜しくないと考えております。つきましては、今回の件を伝えた時点で仲介の役目を辞させていただけますでしょうか。」
「そうか、それは残念だ。」
ふむ、てっきり継続して西方との仲介に入ると思っていたのだが、あくまでも国を捨てた身。
加えて身内があれこれ口を出しては世間的にもよろしくないと考えてのことだろう。
まぁ、早くハルカの所に戻りたいっていう部分の方が強いかもしれないけどな。
「後任に関しては議会での一件もありましたので中立の立場で動くことができ、かつ向こうの文化に詳しい者が相応しいと考えております。つきましては一人推薦したい者がいるのですが・・・。」
「奇遇だな、私も同じことを考えていた。」
「・・・おい。」
なんでそうなるんだよ。
っていうかこっちを見るな。
俺はもう貴族の身分を剥奪されたただの平民、っていうか国を裏切った国家反逆罪の前科持ちに戦争相手国との仲介をさせるとかどう考えてもおかしいだろうが。
折角そういうしがらみから解放されたはずなのに、そもそもそんなの議会が許すはずがないだろ?
許さないよな?
な?
「もちろんその者も突然のことに戸惑うと思いますので、そこで同行してくださいましたアニエス監査官を補佐としてついていただければとも考えております。実際に私と共に現地でのやり取りを見ておりますし、その武力と知力は必ずやお役に立つと思います。」
「と、ケイゴ殿は申しているがアニエスどう思う。」
「私でよろしければ喜んでお手伝いさせていただきます。」
「決まりだな。その者には後日使いを出し了承を取り付けると約束しよう。」
「ありがとうございます。」
なんだよその出来レース。
まだ誰にっていう明言はしてないけど、どう考えても俺だよな。
っていうかこの場にいるほぼ全員が俺の方を見ているんだが?
ここに俺を呼んだ本当の理由はこっちだったか・・・。
くそ、アニエスさんにまでしてやられた。
悔しそうな顔をする俺を見て陛下が満足げな笑みを浮かべている。
終戦の功労者どころか厄介ごとの押し付けに呼ばれただけじゃないか。
おのれケイゴさん、後で覚えとけよ。
こうなったら西方関係の儲け話は全部俺の金になるように仕向けてやる。
それをわかってやれって言ってるんだよな?そうだよな!?
なんて心の中で叫びながら彼らの後ろで盛大なため息をつくのだった。
24
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました!
【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】
皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました!
本当に、本当にありがとうございます!
皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。
市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です!
【作品紹介】
欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。
彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
世の中は意外と魔術で何とかなる
ものまねの実
ファンタジー
新しい人生が唐突に始まった男が一人。目覚めた場所は人のいない森の中の廃村。生きるのに精一杯で、大層な目標もない。しかしある日の出会いから物語は動き出す。
神様の土下座・謝罪もない、スキル特典もレベル制もない、転生トラックもそれほど走ってない。突然の転生に戸惑うも、前世での経験があるおかげで図太く生きられる。生きるのに『隠してたけど実は最強』も『パーティから追放されたから復讐する』とかの設定も必要ない。人はただ明日を目指して歩くだけで十分なんだ。
『王道とは歩むものではなく、その隣にある少しずれた道を歩くためのガイドにするくらいが丁度いい』
平凡な生き方をしているつもりが、結局騒ぎを起こしてしまう男の冒険譚。困ったときの魔術頼み!大丈夫、俺上手に魔術使えますから。※主人公は結構ズルをします。正々堂々がお好きな方はご注意ください。
異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*本作の無断転載、無断翻訳、無断利用を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる