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1130.転売屋は雪だるまを作る
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冬の初めと同じくまた雪が強くなって来た。
隣町を慌てて飛び出したおかげで今回は大丈夫だったが、少し遅ければ街道のど真ん中で取り残されていた可能性もある。
一応防寒対策はしてあるものの、風と雪をもろに受ける草原のど真ん中では凍死する可能すらあった。
でもまぁ予定よりも帰りが遅ければバーンが街道の上を飛んで迎えに来てくれただろうけど、そうなったら荷物をすべて置いていかなければならなかっただけに本当に間一髪といっていいだろう。
ともかくだ、その雪のせいで今回も街道は通行止め。
幸い今回はヒートシープの大量発生のおかげで羊肉が大量に出回っているのと、この間の教訓を生かして備蓄がそれなりにあるので大きな問題は起きないだろう。
感謝祭に向けて街中が大忙しという雰囲気だったのだが、物流が止まったこともありそれもぴたりと止まったような感じになっている。
もっとも冒険者は基本ダンジョンで活動しているので今回の雪でも関係ないみたいだけどな。
「うー、さぶさぶ。」
「あ!シロウさん、おはようございます。」
「おはようさん。雪は大丈夫だったか?」
「裏庭が埋まっちゃってましたけど、何とか通れるようになりました。」
「朝から雪かきご苦労さん。」
他の仕事は止まっても冒険者の動きは止まらない。
むしろすることが無くなった冒険者がこぞってダンジョンに潜るので、買取の品が増えると想定して今日は一日店に張り付くことにした。
メルディが雪かきをがんばってくれたおかげで裏庭の倉庫への移動はスムーズに行える。
これなら大量に買取を持ち込まれても対応出来る事だろう。
朝方は冒険者がダンジョンに潜っているので忙しくなるのは昼以降、それまでは溜まった仕事を片付けつつその時を待つことになるのだが・・・。
「暇だな。」
「暇ですねぇ。」
「この雪じゃ他の客も来そうにないし、ダンジョンから戻るまでもう少し待つしかないか。」
「あ、そういえばお客さんからもらった香茶があるんですけど飲みますか?」
「いいのか?それじゃあ遠慮なく。」
は~いと明るい声で返事をしながらメルディが店の裏へと戻っていく。
誰もいない店、窓の向こうには深々と降り続く雪。
この感じだとまた二・三日は街道は使えないままだろう。
緊急の用事は無いのだが念のためにバーンでいつでも移動できるようにしておいた方がいいかもしれない。
ふと外の窓枠に積もった雪が気になり、寒い外に出て積もった雪を右手でザっと払う。
が、水分の多い雪はそのまま山となり下に落ちる事は無かった。
ふむ、今回のは結構ベタっとした雪なんだな。
冬の初めのやつは結構サラサラだった覚えがあるのだが、今回のは前よりもずっしりと重い。
そのまま両手で掴んでぎゅっと握ると丁度いい感じの雪の塊になった。
「わ、可愛い!」
「そうか?」
「はい、小さいけどちゃんと目もあるんですね。」
「本当は腕もつけたかったんだが良い感じの奴が無かったんだ。」
ハッと我にかえり後ろを向くと、湯気の登るカップを手に目を輝かせたメルディが立っていた。
雪玉を作った後ふと思いついたのが雪だるま。
先程の雪に加えさらにローザさんの店の軒先から雪を拝借して大きくし、その上に小さな頭を乗せただけの簡単なやつだが、なんだか愛着がわいてしまい気付けば石の目までつけていた。
木の枝があれば腕になるのだが、生憎とこの街では木が手に入りにくい。
その為にわざわざダンジョンに潜るのもアレだしなぁ。
メルディが楽しそうに玄関先に置かれた雪だるまをツンツンと触っている。
別に珍しい物でもないだろうに、というかそんなに可愛いか?
「これ、鼻の代わりにレッドスライムの核を入れたら可愛いと思いません?」
「可愛い・・・のか?」
「可愛いですよぉ。それにトレントの小枝を刺して、それから頭に何かかぶせてあげたいですね。何がいいかなぁ、帽子っぽいの何かあったかなぁ。」
「俺は先に中に戻ってるぞ~。」
「は~い。」
付き合ってやりたいのは山々だが、この寒さの中外に居続けるのは辛すぎる。
という事でカップを手に店に戻り、暖かい店内から何やら楽しそうにしているメルディを眺める。
雪だるまの頭に乗せるものといえばバケツだが、地蔵の頭なら笠だよな。
あれって確か雪の日にお地蔵様が寒そうだからって売れ残った笠をかぶせて、一つ足りない分は自分の分をあげたんだったか。
そしたらその日の夜にお礼参り・・・じゃなかった、お礼にと金銀財宝に米俵を置いて去っていったとかそんな感じだった気がする。
現代風に言えば売れ残りを提供したら大喜びしてもらえた上に報酬までたんまりもらってって感じになるんだろうけど、世の中そんなうまくいくことはまぁないんだよな。
「・・・あの、何してるんですか?」
「見てわかるだろ、雪だるま作ってるんだよ。」
「えぇぇぇ。」
「なんだよその反応は。可愛いだろ?」
「可愛いか可愛くないかと聞かれたら、可愛くないです。」
なんでだよ!
確かに形は不格好かもしれないが、このつぶらな瞳を見て可愛いと思わないとか信じられないんだが。
店の前で雪だるまをいじるメルディを見ていると自分もやりたくなってきてしまい、結局新たな雪だるまを作りさらには倉庫から素材を持ち出してアレンジまで始めてしまった。
素材を使うことでただ丸めるだけでは感じなかった個性というか愛着がわいてきてしまうのだから不思議なものだ。
その様子をダンジョンから戻ってきた冒険者が信じられないという顔で俺たちを見てくるが、楽しそうに雪だるまを作る俺たちを見て一人、また一人と同じことを始めていく。
気づけば冒険者だけでなく住民までもがそこらじゅうで雪だるまを作り始めていた。
おかしいな、どうしてこうなった?
最初はみんなただ丸めるだけだったのだが、一人が手持ちの素材でアレンジをし始めるとそれを真似してほかのひともどんどんと手を加えていく。
気づけば誰もが好みの素材を探して最終的に俺のところに集まってきた。
「シロウさん、レッドブラッドの実ってまだあります?」
「俺はブラックビーンズ!できれば形の変わったるやつ!」
「ブッシュシューターのバレットが欲しいんですけど・・・。できればたくさんありませんか?」
老若男女問わず大勢の客が思い思いの雪だるまを作るべく素材を求めてやってくる。
もちろん何でもあるわけではないのだが、ほとんどあるのが俺の店。
メルディがしっかり在庫を管理してくれているおかげで普段出ていかないような素材まで飛ぶように売れていった。
しかも相場よりも二割ぐらい吹っ掛けても売れていく。
うーむ、需要と供給のバランスが崩れると一気に値段が上がるなぁ。
まぁ転売する身としては安定していない方が儲けを出せるわけだけど。
「いらっしゃ・・・なんだシープさんか。」
「シロウさん、ちょっといいです?」
一人二人と客をさばいていると、次にやってきたのはできれば会いたくなかった人物。
そろそろ来る頃かなとは思っていたんだが、思ったよりも早かったな。
「悪いが今は忙しいんだ。」
「まぁまぁそう言わないで、今回のこの騒動もシロウさんが始めたんですよね?」
「人聞きの悪いことを言うなよ。確かに始めたのは俺だが、別にやれといったわけじゃないんだぞ?」
「もちろん知ってますよ。この雪でみんなすることもなかったんで盛り上がるのはいい事なんですけど、ちょっと盛り上がりすぎてるところもありまして。それならばいっそもっと大騒ぎにしてしまえばいいんじゃないかと思って相談に来たんです。外で雪像が作られてるのって知ってます?」
「は?雪だるまじゃなくて?」
「はい。さっき見に行ったら等身大のディネストリファ様を作るんだって大人数で雪の山を作ってました。」
いやいや、雪だるまならまだしも雪像ってなんだよ雪像って。
確かにやろうと思ったら作れなくはないだろうけど、いったい誰が言い出したんだろうか。
ここは大通公園じゃないんだぞ?
「で、その状況をそっちはどうしたいんだ?」
「コンテスト的な感じにして、たくさん作ったのをみんなで評価しても面白いかなと。雪だるま部門と雪像部門の二つを作って優勝者には賞金を出す感じです。もちろんそれを出すのはシロウさんですけどね。」
「なんで俺なんだよ、そこは関係ないだろ?」
「だってコンテストにしたら今以上にシロウさんの所に素材を買いに集まってきますよね?雪像ともなればかなりの量の素材を使いますし、その売上金を考えれば賞金なんて安いものだと思いますけど。」
確かにお祭り好きの冒険者のことだ、賞金が出るともなれば益々盛り上がって俺のところに素材を探しに来るに違いない。
今でも十分儲かっているのに更に買いにくれば大儲けもいいところだ。
それなら賞金を出しても損はない、それはわかっているんだが・・・。
「それとこれとは話が別じゃないか?」
「それならこうしましょう。シロウさんがこの間買い付けたヒートシープの肉、それをうちが全部買い取りますからそれでどうですか?」
「そんなこと言いながら、その肉を露店に出して儲けようっていう算段だろ?」
「まぁそうなんですけどね。」
「最初からそうやって言えよなまったく・・・。」
別に賞金を出すのが嫌なわけじゃない、祭りごとにするのならギルド協会が主催でやるべきだと思っただけだ。
でもそうすることで今以上の売り上げを確保できるのも事実。
なんなら羊男の言うように露店を出して更なる儲けを確保することだってできる。
もっとも、それをする人も時間もないので買い取ってくれるのであれば喜んで手放そうじゃないか。
「どうですかね。」
「せっかく盛り上がってるんだしここで下火にするのはもったいないだろ。正直雪像の方は気になってるんだ、優勝賞金は銀貨20枚ぐらいでいいか?」
「十分です。」
「そのかわり肉は全部買ってもらうし、ついでに別の食い物露店を出す代金も無料にしてくれるよな?」
「えー、そこまではちょっと。」
「するよな?」
有無を言わせない言い方をしても羊男は最後まで折れなかった。
まぁ俺もそこまでは無理だと思っていたので必要以上に粘ることはしなかったわけだが。
翌日、突如として現れた城壁に並ぶ巨大な雪像は長旅に疲れた来訪者を大いに喜ばせ新たな名物になったのだった。
隣町を慌てて飛び出したおかげで今回は大丈夫だったが、少し遅ければ街道のど真ん中で取り残されていた可能性もある。
一応防寒対策はしてあるものの、風と雪をもろに受ける草原のど真ん中では凍死する可能すらあった。
でもまぁ予定よりも帰りが遅ければバーンが街道の上を飛んで迎えに来てくれただろうけど、そうなったら荷物をすべて置いていかなければならなかっただけに本当に間一髪といっていいだろう。
ともかくだ、その雪のせいで今回も街道は通行止め。
幸い今回はヒートシープの大量発生のおかげで羊肉が大量に出回っているのと、この間の教訓を生かして備蓄がそれなりにあるので大きな問題は起きないだろう。
感謝祭に向けて街中が大忙しという雰囲気だったのだが、物流が止まったこともありそれもぴたりと止まったような感じになっている。
もっとも冒険者は基本ダンジョンで活動しているので今回の雪でも関係ないみたいだけどな。
「うー、さぶさぶ。」
「あ!シロウさん、おはようございます。」
「おはようさん。雪は大丈夫だったか?」
「裏庭が埋まっちゃってましたけど、何とか通れるようになりました。」
「朝から雪かきご苦労さん。」
他の仕事は止まっても冒険者の動きは止まらない。
むしろすることが無くなった冒険者がこぞってダンジョンに潜るので、買取の品が増えると想定して今日は一日店に張り付くことにした。
メルディが雪かきをがんばってくれたおかげで裏庭の倉庫への移動はスムーズに行える。
これなら大量に買取を持ち込まれても対応出来る事だろう。
朝方は冒険者がダンジョンに潜っているので忙しくなるのは昼以降、それまでは溜まった仕事を片付けつつその時を待つことになるのだが・・・。
「暇だな。」
「暇ですねぇ。」
「この雪じゃ他の客も来そうにないし、ダンジョンから戻るまでもう少し待つしかないか。」
「あ、そういえばお客さんからもらった香茶があるんですけど飲みますか?」
「いいのか?それじゃあ遠慮なく。」
は~いと明るい声で返事をしながらメルディが店の裏へと戻っていく。
誰もいない店、窓の向こうには深々と降り続く雪。
この感じだとまた二・三日は街道は使えないままだろう。
緊急の用事は無いのだが念のためにバーンでいつでも移動できるようにしておいた方がいいかもしれない。
ふと外の窓枠に積もった雪が気になり、寒い外に出て積もった雪を右手でザっと払う。
が、水分の多い雪はそのまま山となり下に落ちる事は無かった。
ふむ、今回のは結構ベタっとした雪なんだな。
冬の初めのやつは結構サラサラだった覚えがあるのだが、今回のは前よりもずっしりと重い。
そのまま両手で掴んでぎゅっと握ると丁度いい感じの雪の塊になった。
「わ、可愛い!」
「そうか?」
「はい、小さいけどちゃんと目もあるんですね。」
「本当は腕もつけたかったんだが良い感じの奴が無かったんだ。」
ハッと我にかえり後ろを向くと、湯気の登るカップを手に目を輝かせたメルディが立っていた。
雪玉を作った後ふと思いついたのが雪だるま。
先程の雪に加えさらにローザさんの店の軒先から雪を拝借して大きくし、その上に小さな頭を乗せただけの簡単なやつだが、なんだか愛着がわいてしまい気付けば石の目までつけていた。
木の枝があれば腕になるのだが、生憎とこの街では木が手に入りにくい。
その為にわざわざダンジョンに潜るのもアレだしなぁ。
メルディが楽しそうに玄関先に置かれた雪だるまをツンツンと触っている。
別に珍しい物でもないだろうに、というかそんなに可愛いか?
「これ、鼻の代わりにレッドスライムの核を入れたら可愛いと思いません?」
「可愛い・・・のか?」
「可愛いですよぉ。それにトレントの小枝を刺して、それから頭に何かかぶせてあげたいですね。何がいいかなぁ、帽子っぽいの何かあったかなぁ。」
「俺は先に中に戻ってるぞ~。」
「は~い。」
付き合ってやりたいのは山々だが、この寒さの中外に居続けるのは辛すぎる。
という事でカップを手に店に戻り、暖かい店内から何やら楽しそうにしているメルディを眺める。
雪だるまの頭に乗せるものといえばバケツだが、地蔵の頭なら笠だよな。
あれって確か雪の日にお地蔵様が寒そうだからって売れ残った笠をかぶせて、一つ足りない分は自分の分をあげたんだったか。
そしたらその日の夜にお礼参り・・・じゃなかった、お礼にと金銀財宝に米俵を置いて去っていったとかそんな感じだった気がする。
現代風に言えば売れ残りを提供したら大喜びしてもらえた上に報酬までたんまりもらってって感じになるんだろうけど、世の中そんなうまくいくことはまぁないんだよな。
「・・・あの、何してるんですか?」
「見てわかるだろ、雪だるま作ってるんだよ。」
「えぇぇぇ。」
「なんだよその反応は。可愛いだろ?」
「可愛いか可愛くないかと聞かれたら、可愛くないです。」
なんでだよ!
確かに形は不格好かもしれないが、このつぶらな瞳を見て可愛いと思わないとか信じられないんだが。
店の前で雪だるまをいじるメルディを見ていると自分もやりたくなってきてしまい、結局新たな雪だるまを作りさらには倉庫から素材を持ち出してアレンジまで始めてしまった。
素材を使うことでただ丸めるだけでは感じなかった個性というか愛着がわいてきてしまうのだから不思議なものだ。
その様子をダンジョンから戻ってきた冒険者が信じられないという顔で俺たちを見てくるが、楽しそうに雪だるまを作る俺たちを見て一人、また一人と同じことを始めていく。
気づけば冒険者だけでなく住民までもがそこらじゅうで雪だるまを作り始めていた。
おかしいな、どうしてこうなった?
最初はみんなただ丸めるだけだったのだが、一人が手持ちの素材でアレンジをし始めるとそれを真似してほかのひともどんどんと手を加えていく。
気づけば誰もが好みの素材を探して最終的に俺のところに集まってきた。
「シロウさん、レッドブラッドの実ってまだあります?」
「俺はブラックビーンズ!できれば形の変わったるやつ!」
「ブッシュシューターのバレットが欲しいんですけど・・・。できればたくさんありませんか?」
老若男女問わず大勢の客が思い思いの雪だるまを作るべく素材を求めてやってくる。
もちろん何でもあるわけではないのだが、ほとんどあるのが俺の店。
メルディがしっかり在庫を管理してくれているおかげで普段出ていかないような素材まで飛ぶように売れていった。
しかも相場よりも二割ぐらい吹っ掛けても売れていく。
うーむ、需要と供給のバランスが崩れると一気に値段が上がるなぁ。
まぁ転売する身としては安定していない方が儲けを出せるわけだけど。
「いらっしゃ・・・なんだシープさんか。」
「シロウさん、ちょっといいです?」
一人二人と客をさばいていると、次にやってきたのはできれば会いたくなかった人物。
そろそろ来る頃かなとは思っていたんだが、思ったよりも早かったな。
「悪いが今は忙しいんだ。」
「まぁまぁそう言わないで、今回のこの騒動もシロウさんが始めたんですよね?」
「人聞きの悪いことを言うなよ。確かに始めたのは俺だが、別にやれといったわけじゃないんだぞ?」
「もちろん知ってますよ。この雪でみんなすることもなかったんで盛り上がるのはいい事なんですけど、ちょっと盛り上がりすぎてるところもありまして。それならばいっそもっと大騒ぎにしてしまえばいいんじゃないかと思って相談に来たんです。外で雪像が作られてるのって知ってます?」
「は?雪だるまじゃなくて?」
「はい。さっき見に行ったら等身大のディネストリファ様を作るんだって大人数で雪の山を作ってました。」
いやいや、雪だるまならまだしも雪像ってなんだよ雪像って。
確かにやろうと思ったら作れなくはないだろうけど、いったい誰が言い出したんだろうか。
ここは大通公園じゃないんだぞ?
「で、その状況をそっちはどうしたいんだ?」
「コンテスト的な感じにして、たくさん作ったのをみんなで評価しても面白いかなと。雪だるま部門と雪像部門の二つを作って優勝者には賞金を出す感じです。もちろんそれを出すのはシロウさんですけどね。」
「なんで俺なんだよ、そこは関係ないだろ?」
「だってコンテストにしたら今以上にシロウさんの所に素材を買いに集まってきますよね?雪像ともなればかなりの量の素材を使いますし、その売上金を考えれば賞金なんて安いものだと思いますけど。」
確かにお祭り好きの冒険者のことだ、賞金が出るともなれば益々盛り上がって俺のところに素材を探しに来るに違いない。
今でも十分儲かっているのに更に買いにくれば大儲けもいいところだ。
それなら賞金を出しても損はない、それはわかっているんだが・・・。
「それとこれとは話が別じゃないか?」
「それならこうしましょう。シロウさんがこの間買い付けたヒートシープの肉、それをうちが全部買い取りますからそれでどうですか?」
「そんなこと言いながら、その肉を露店に出して儲けようっていう算段だろ?」
「まぁそうなんですけどね。」
「最初からそうやって言えよなまったく・・・。」
別に賞金を出すのが嫌なわけじゃない、祭りごとにするのならギルド協会が主催でやるべきだと思っただけだ。
でもそうすることで今以上の売り上げを確保できるのも事実。
なんなら羊男の言うように露店を出して更なる儲けを確保することだってできる。
もっとも、それをする人も時間もないので買い取ってくれるのであれば喜んで手放そうじゃないか。
「どうですかね。」
「せっかく盛り上がってるんだしここで下火にするのはもったいないだろ。正直雪像の方は気になってるんだ、優勝賞金は銀貨20枚ぐらいでいいか?」
「十分です。」
「そのかわり肉は全部買ってもらうし、ついでに別の食い物露店を出す代金も無料にしてくれるよな?」
「えー、そこまではちょっと。」
「するよな?」
有無を言わせない言い方をしても羊男は最後まで折れなかった。
まぁ俺もそこまでは無理だと思っていたので必要以上に粘ることはしなかったわけだが。
翌日、突如として現れた城壁に並ぶ巨大な雪像は長旅に疲れた来訪者を大いに喜ばせ新たな名物になったのだった。
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