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1083.転売屋は遺跡から持ち帰る
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なんていうか、話を聞けば聞くほど自業自得という言葉しか出てこないんだが。
最初の迫力はどこへやら随分と小さくなってしまったウンチュミーを祭壇の上に乗せつつ、それを囲むようにして皆で話を聞く。
それぞれの手には香茶の入ったティタム製のカップ。
まるでお通夜のような空気の中、彼女は何度目かの溜息をついた。
「つまり自分を祭るお祭りでお供え物を食べたら怒られてしまい、それでカッとなってその人を食べたと。」
「それでここに封印されたのね。」
「神様に対してこのようなことを申し上げるのは誠に申し訳ないのですが、自業自得ではないでしょうか。」
「煩い煩い!わえもそれぐらいはわかっておる!じゃが、あの時はあまりにも腹が減り過ぎて我を忘れておったのだ。十日にも及ぶ大嵐から海を守るべく必死になって戦い、やっとの思いで地上に戻ったというのにこのありさま。時間が経てば許してくれるじゃろうと思っておったら、許すどころかわえの事すら忘れる始末。もうこの地の住民にはわえの事を覚えておる者はおらんのじゃな。」
アニエスさんの止めにも近いツッコミに暴れ出すかと思いきや、もうその気力すらないらしい。
なんでも、神様というのは人々の信仰もしくは記憶に残る事で発揮できる力が違うのだとか。
その辺は俺も初耳なのだが、ボードとかはどうなっているんだろうか。
ダンジョンという存在が認知され続けている限り力を失うことは無いのかもしれないが、彼女の場合はそうではない。
根本的に存在を忘れ去られている。
でも存在が消えないという事は、少なからず信仰している人は何処かにいるわけで。
何度目かの溜息と共に彼女のお腹からグゥと小さな音が鳴った。
「はぁ、お腹空いた。」
「そういや目覚めてから何も食べてないんだったな。」
「そうじゃ。本当はこの中に奉納された魔物達を美味しくいただくはずだたのだが、わえが食べる前にお主らが全て逃がし殺してしもうた。おかげで力を取り戻す事も出来ず、このようなちんちくりんな姿でいる事しかできん。」
自分の体を見下ろし、主になくなった胸部パーツをさすってまたまた溜息をつく。
まったく辛気臭いったらありゃしない。
登場したときのあの迫力と恐怖はいったい何だったというのだろうか。
本気で食われるって思ったんだからな、俺は。
「なるほど、それで合点がいった。なぜあのようにたくさんの種類の魔物がいたのか、そして逃げ出すように飛び出してきたのか。」
「そりゃ食われるよりも逃げ出すほうがマシだよなぁ。」
「もっとも、我らに倒され生き残ったのは僅かではあるが。」
彼女の話から察するに100年近く封印されていたことになる。
恐らくは羽追い祭りが考案されたのは彼女が封印されてからなんだろう。
どういう理由で尾羽を追うようになったのかは不明だが、その勝者をここに案内する当たり鎮魂というか鎮守というかそういった意味合いで始められたんだろう。
だがその意味も忘れ去られ、今では祭りのみが残されたと。
起源はわからないけれど祭りごとだけが残されているとか元の世界でもよくある話だ。
「トト、ババにご飯食べさせてあげてよ。」
「ババ?」
「ハハのハハなんでしょ?人はそう呼ぶって、教えてもらった。」
「正確にはあのお転婆の母親ではないんじゃが、まぁ似たようなものか。」
「そうなのか?」
「生きとし生けるものは皆、わえの元から出てわえの元に帰ってくる。それは人も魔物もドラゴンとて同じことじゃ。」
生き物が皆海から生まれたってのは進化論的には良くある話だが、それを異世界で聞くとは思わなかった。
そもそもこの世界の生まれとか魔物の進化とかそういうのってさっぱりわからないんだよな。
よくある神様が作った的な感じなのだと勝手に思っていたんだが、違うんだろうか。
「魔素循環説ですね。」
「なんだそれ。」
「この世界の全てをつかさどる魔素がどこから生まれてどこに帰っていくのかという考え方です。人も亜人も魔物も、なんなら食べ物にもすべて魔素が含まれています。今の通説では体内で消費されたり魔法などで消費された後、大気に紛れて世界を巡り大地に戻るというものですが、もう一つの説として空から海に戻りそして再び地上に戻ってくるという考えがあります。どちらも魔素は循環しているという考え方ですが、それが大地に戻るのか海を経ているのかは完全には解明されていません。」
「だが今の話だと海に帰るらしいぞ。」
「はい!私は元々海派だったので、今すぐ学会に報告したい気分です!」
どうやらキキの学者スイッチが入ってしまったようだ。
元々魔物学者だったキキだが、色々あって今は学会を追放された形になっている。
だが彼女の答えが本当ならばそれはもう大騒ぎになる事だろう。
追放者が凱旋したと思ったら、今までの定説に決着をつけるネタを持ち込んだわけなんだから。
もっとも、彼女が神様であるという事を証明するところからスタートしないといけないけどな。
まぁ、その辺は俺には関係の無い話なので好きにしてもらっていいんだが。
「ともかくだ、仮にそうだとしてもいきなりウンチュミーと言っても信じてもらえないわけで、それなら別の呼称が必要だよな。」
「そうねぇ、ババってのはちょっとあれだし。」
「わえは何でも構わんぞ、バーンじゃったか、お前の好きに呼ぶがいい。」
「トト、何て呼べばいい?」
いきなりそんな事を言われてもだな。
見た目的にババと呼ぶのは気が引けるし、かといって別の名前を付けるわけにはいかないだろう。
その点あだ名的なものであれば元の名前は変わらないわけだし問題無いはずだ。
「んー、面倒だからグランマでいいなじゃいか?」
「グランマ!」
「うむ、悪くない響きじゃな。皆の者、今後わえ事はグランマと呼ぶがいい。」
「宜しくお願いしますグランマ。」
「さすがシロウ、いい名前じゃない。」
無茶苦茶安直な名付けだったのにまさかこんなに気に入ってもらえるとは思わなかった。
見た目は完全に幼女なので名前と合致していないのだが、まぁあだ名みたいなもんだし問題は無いだろう。
他の面々に呼ばれて本人も悪い気はしないようだ。
ともかくだ、腹が減ってはなんとやら食い物を逃がしたのは俺達だしその責任を取る必要はある。
幸い道具は持って来ているし昨日倒した魔物もまだ食べられるはずだ。
祭壇のある小部屋では狭いので別の場所に移動し、持ち込んだ火の魔導具を使って即席のコンロを作る。
さて、何を作るかだが・・・。
「それで、何が食いたい?」
「肉じゃな、魚でもよいがここには無いじゃろう。それは外に出るまで辛抱する。」
「サモーンの燻製だったらおつまみ用に持って来てるけど、それでいい?」
「でかした。ついでに隠し持ってきた海酒も出してやってくれ。」
「え!何で知ってるの!?」
「俺が気付かないわけないだろうが。街に戻ったら返してやるからさっさと出せ。」
相手は一応神様だからな、お神酒的なものはあったほうがいいだろう。
アニエスさんとウーラさんが剥ぎ取ってきてくれた肉を、ハルカとケイゴさんと共に調理していく。
といってもシンプルに塩とペパペッパーを振りかけて焼くだけだが、調味料はそれなりにあるので味変には事欠かない。
後は別の鍋で乾麺を茹でてスープを作り、1時間ほどで簡単ながら人数分の料理を作ることが出来た。
普通はこんな大っぴらに作る事はしないのだが魔物が出ないってわかっているのは大きいな。
「ほほぉ、見事なものじゃ。」
「トトの作る料理はすっごく美味しいんだよ!」
「街に戻ればもっと色々と作れるんだが、今はこれで勘弁してくれ。」
「人の作る料理を再び食べられる日が来るとは思わなんだ。遠慮なく頂くとしよう。」
「それじゃあ俺達も食うか。」
「「「「「いただきます!」」」」」
遺跡の最深部で始まったどんちゃん騒ぎ。
流石に時間制限があるので一日中というわけにはいかないが、それなりに腹も満たされたようでグランマことウンチュミーの体は少しずつだが大きくなり始めている。
しかしながら食事を終えればまた小さくなっていくんだろう。
彼女、というか神様の体を支えているのは信仰らしいし、このままここにいてもいつかは消えてしまう。
本人は直接口に出さないが、各々それには気が付いているようだ。
楽しい時間もいずれは終わりを迎える。
最後の肉を食べ終え、彼女は満足そうにぽっこりと膨れた腹を優しく撫でた。
「食った食った、こんなに美味い飯は何年ぶりじゃろう。あの時空腹に負けてお主を喰わなくて本当に良かったのぉ。」
「ほんとにな。あの時は本気で喰われると思ったんだぞ。」
「それはすまなかった。じゃが封印を解いたのはお主じゃ、目の前に美味そうな食べ物があったら思わず手が伸びてしまうもの、違うか?」
「その通りだ。」
「正直者よのぉお主は。」
からからと幼女が乾いた笑いを返してくる。
皆もこれで終わりだと言うことを理解しているのか、さっきと違って寂しそうな顔をしていた。
まぁそうなるのはわかる。
最初の出会いこそあれだったが、決して悪いタイプの神様ではないみたいだし。
「これからどうするんだ?」
「そうさな、わえを望む声はこの地でもう聞こえん。求められていないのならば消えるのみじゃろうて。」
「グランマ、消えちゃうの?」
「そんな顔をするな。わえのような存在は人に望まれてこそ意味がある。消えてもいずれまた求められれば新たなわえが生まれることじゃろう。」
「つまり求められていれば消えないんだよな?」
「わえを信仰してくれるそんな場所があればの。」
泣きそうな顔をするバーンの頭をグランマが慈しむように見つめながら優しく撫でる。
出会ったばかりだと言うにバーンにとってはディーネと同じ親近感を感じるのだろうか。
もしかすると過去の古龍が世話になった記憶がどこかに残っているのかもしれない。
息子のそんな顔を見て何もしないわけにはいかないよなぁ。
「わかった、じゃあ俺達と一緒に来るといい。必要としてくれる場所に案内してやろう。」
「ちょっとシロウ!そんな都合のいいこと言って大丈夫なの?」
「大丈夫も何も心当たりはある。」
「ですがここに封印されていたんですよね?それを勝手に連れ出すというのはどんなんでしょう。」
「ここに入るときに手に入れたものは持って出てもいいって言われていただろ?ちなみにここに転がっていた道具とかってもらっていいんだよな?」
「わえには必要のないものだから好きにするがよい。じゃが、本当にそんな場所があるのか?」
不安そうな顔をするグランマに向かって俺はニヤリと笑って見せた。
遺跡の宝物は全部持って行っていいって言われているし、神様だって同じだろう。
というかこのまま信仰の薄いここに置いて帰っても意味が無いし、なにより彼女にはもっとふさわしい場所がある。
ちょいとばかし遠回りにはなるがきっと気に入ってくれるはずだ。
そうと決まればさっさと外に出るとしよう。
早くしないとミラ達が心配するからな。
最初の迫力はどこへやら随分と小さくなってしまったウンチュミーを祭壇の上に乗せつつ、それを囲むようにして皆で話を聞く。
それぞれの手には香茶の入ったティタム製のカップ。
まるでお通夜のような空気の中、彼女は何度目かの溜息をついた。
「つまり自分を祭るお祭りでお供え物を食べたら怒られてしまい、それでカッとなってその人を食べたと。」
「それでここに封印されたのね。」
「神様に対してこのようなことを申し上げるのは誠に申し訳ないのですが、自業自得ではないでしょうか。」
「煩い煩い!わえもそれぐらいはわかっておる!じゃが、あの時はあまりにも腹が減り過ぎて我を忘れておったのだ。十日にも及ぶ大嵐から海を守るべく必死になって戦い、やっとの思いで地上に戻ったというのにこのありさま。時間が経てば許してくれるじゃろうと思っておったら、許すどころかわえの事すら忘れる始末。もうこの地の住民にはわえの事を覚えておる者はおらんのじゃな。」
アニエスさんの止めにも近いツッコミに暴れ出すかと思いきや、もうその気力すらないらしい。
なんでも、神様というのは人々の信仰もしくは記憶に残る事で発揮できる力が違うのだとか。
その辺は俺も初耳なのだが、ボードとかはどうなっているんだろうか。
ダンジョンという存在が認知され続けている限り力を失うことは無いのかもしれないが、彼女の場合はそうではない。
根本的に存在を忘れ去られている。
でも存在が消えないという事は、少なからず信仰している人は何処かにいるわけで。
何度目かの溜息と共に彼女のお腹からグゥと小さな音が鳴った。
「はぁ、お腹空いた。」
「そういや目覚めてから何も食べてないんだったな。」
「そうじゃ。本当はこの中に奉納された魔物達を美味しくいただくはずだたのだが、わえが食べる前にお主らが全て逃がし殺してしもうた。おかげで力を取り戻す事も出来ず、このようなちんちくりんな姿でいる事しかできん。」
自分の体を見下ろし、主になくなった胸部パーツをさすってまたまた溜息をつく。
まったく辛気臭いったらありゃしない。
登場したときのあの迫力と恐怖はいったい何だったというのだろうか。
本気で食われるって思ったんだからな、俺は。
「なるほど、それで合点がいった。なぜあのようにたくさんの種類の魔物がいたのか、そして逃げ出すように飛び出してきたのか。」
「そりゃ食われるよりも逃げ出すほうがマシだよなぁ。」
「もっとも、我らに倒され生き残ったのは僅かではあるが。」
彼女の話から察するに100年近く封印されていたことになる。
恐らくは羽追い祭りが考案されたのは彼女が封印されてからなんだろう。
どういう理由で尾羽を追うようになったのかは不明だが、その勝者をここに案内する当たり鎮魂というか鎮守というかそういった意味合いで始められたんだろう。
だがその意味も忘れ去られ、今では祭りのみが残されたと。
起源はわからないけれど祭りごとだけが残されているとか元の世界でもよくある話だ。
「トト、ババにご飯食べさせてあげてよ。」
「ババ?」
「ハハのハハなんでしょ?人はそう呼ぶって、教えてもらった。」
「正確にはあのお転婆の母親ではないんじゃが、まぁ似たようなものか。」
「そうなのか?」
「生きとし生けるものは皆、わえの元から出てわえの元に帰ってくる。それは人も魔物もドラゴンとて同じことじゃ。」
生き物が皆海から生まれたってのは進化論的には良くある話だが、それを異世界で聞くとは思わなかった。
そもそもこの世界の生まれとか魔物の進化とかそういうのってさっぱりわからないんだよな。
よくある神様が作った的な感じなのだと勝手に思っていたんだが、違うんだろうか。
「魔素循環説ですね。」
「なんだそれ。」
「この世界の全てをつかさどる魔素がどこから生まれてどこに帰っていくのかという考え方です。人も亜人も魔物も、なんなら食べ物にもすべて魔素が含まれています。今の通説では体内で消費されたり魔法などで消費された後、大気に紛れて世界を巡り大地に戻るというものですが、もう一つの説として空から海に戻りそして再び地上に戻ってくるという考えがあります。どちらも魔素は循環しているという考え方ですが、それが大地に戻るのか海を経ているのかは完全には解明されていません。」
「だが今の話だと海に帰るらしいぞ。」
「はい!私は元々海派だったので、今すぐ学会に報告したい気分です!」
どうやらキキの学者スイッチが入ってしまったようだ。
元々魔物学者だったキキだが、色々あって今は学会を追放された形になっている。
だが彼女の答えが本当ならばそれはもう大騒ぎになる事だろう。
追放者が凱旋したと思ったら、今までの定説に決着をつけるネタを持ち込んだわけなんだから。
もっとも、彼女が神様であるという事を証明するところからスタートしないといけないけどな。
まぁ、その辺は俺には関係の無い話なので好きにしてもらっていいんだが。
「ともかくだ、仮にそうだとしてもいきなりウンチュミーと言っても信じてもらえないわけで、それなら別の呼称が必要だよな。」
「そうねぇ、ババってのはちょっとあれだし。」
「わえは何でも構わんぞ、バーンじゃったか、お前の好きに呼ぶがいい。」
「トト、何て呼べばいい?」
いきなりそんな事を言われてもだな。
見た目的にババと呼ぶのは気が引けるし、かといって別の名前を付けるわけにはいかないだろう。
その点あだ名的なものであれば元の名前は変わらないわけだし問題無いはずだ。
「んー、面倒だからグランマでいいなじゃいか?」
「グランマ!」
「うむ、悪くない響きじゃな。皆の者、今後わえ事はグランマと呼ぶがいい。」
「宜しくお願いしますグランマ。」
「さすがシロウ、いい名前じゃない。」
無茶苦茶安直な名付けだったのにまさかこんなに気に入ってもらえるとは思わなかった。
見た目は完全に幼女なので名前と合致していないのだが、まぁあだ名みたいなもんだし問題は無いだろう。
他の面々に呼ばれて本人も悪い気はしないようだ。
ともかくだ、腹が減ってはなんとやら食い物を逃がしたのは俺達だしその責任を取る必要はある。
幸い道具は持って来ているし昨日倒した魔物もまだ食べられるはずだ。
祭壇のある小部屋では狭いので別の場所に移動し、持ち込んだ火の魔導具を使って即席のコンロを作る。
さて、何を作るかだが・・・。
「それで、何が食いたい?」
「肉じゃな、魚でもよいがここには無いじゃろう。それは外に出るまで辛抱する。」
「サモーンの燻製だったらおつまみ用に持って来てるけど、それでいい?」
「でかした。ついでに隠し持ってきた海酒も出してやってくれ。」
「え!何で知ってるの!?」
「俺が気付かないわけないだろうが。街に戻ったら返してやるからさっさと出せ。」
相手は一応神様だからな、お神酒的なものはあったほうがいいだろう。
アニエスさんとウーラさんが剥ぎ取ってきてくれた肉を、ハルカとケイゴさんと共に調理していく。
といってもシンプルに塩とペパペッパーを振りかけて焼くだけだが、調味料はそれなりにあるので味変には事欠かない。
後は別の鍋で乾麺を茹でてスープを作り、1時間ほどで簡単ながら人数分の料理を作ることが出来た。
普通はこんな大っぴらに作る事はしないのだが魔物が出ないってわかっているのは大きいな。
「ほほぉ、見事なものじゃ。」
「トトの作る料理はすっごく美味しいんだよ!」
「街に戻ればもっと色々と作れるんだが、今はこれで勘弁してくれ。」
「人の作る料理を再び食べられる日が来るとは思わなんだ。遠慮なく頂くとしよう。」
「それじゃあ俺達も食うか。」
「「「「「いただきます!」」」」」
遺跡の最深部で始まったどんちゃん騒ぎ。
流石に時間制限があるので一日中というわけにはいかないが、それなりに腹も満たされたようでグランマことウンチュミーの体は少しずつだが大きくなり始めている。
しかしながら食事を終えればまた小さくなっていくんだろう。
彼女、というか神様の体を支えているのは信仰らしいし、このままここにいてもいつかは消えてしまう。
本人は直接口に出さないが、各々それには気が付いているようだ。
楽しい時間もいずれは終わりを迎える。
最後の肉を食べ終え、彼女は満足そうにぽっこりと膨れた腹を優しく撫でた。
「食った食った、こんなに美味い飯は何年ぶりじゃろう。あの時空腹に負けてお主を喰わなくて本当に良かったのぉ。」
「ほんとにな。あの時は本気で喰われると思ったんだぞ。」
「それはすまなかった。じゃが封印を解いたのはお主じゃ、目の前に美味そうな食べ物があったら思わず手が伸びてしまうもの、違うか?」
「その通りだ。」
「正直者よのぉお主は。」
からからと幼女が乾いた笑いを返してくる。
皆もこれで終わりだと言うことを理解しているのか、さっきと違って寂しそうな顔をしていた。
まぁそうなるのはわかる。
最初の出会いこそあれだったが、決して悪いタイプの神様ではないみたいだし。
「これからどうするんだ?」
「そうさな、わえを望む声はこの地でもう聞こえん。求められていないのならば消えるのみじゃろうて。」
「グランマ、消えちゃうの?」
「そんな顔をするな。わえのような存在は人に望まれてこそ意味がある。消えてもいずれまた求められれば新たなわえが生まれることじゃろう。」
「つまり求められていれば消えないんだよな?」
「わえを信仰してくれるそんな場所があればの。」
泣きそうな顔をするバーンの頭をグランマが慈しむように見つめながら優しく撫でる。
出会ったばかりだと言うにバーンにとってはディーネと同じ親近感を感じるのだろうか。
もしかすると過去の古龍が世話になった記憶がどこかに残っているのかもしれない。
息子のそんな顔を見て何もしないわけにはいかないよなぁ。
「わかった、じゃあ俺達と一緒に来るといい。必要としてくれる場所に案内してやろう。」
「ちょっとシロウ!そんな都合のいいこと言って大丈夫なの?」
「大丈夫も何も心当たりはある。」
「ですがここに封印されていたんですよね?それを勝手に連れ出すというのはどんなんでしょう。」
「ここに入るときに手に入れたものは持って出てもいいって言われていただろ?ちなみにここに転がっていた道具とかってもらっていいんだよな?」
「わえには必要のないものだから好きにするがよい。じゃが、本当にそんな場所があるのか?」
不安そうな顔をするグランマに向かって俺はニヤリと笑って見せた。
遺跡の宝物は全部持って行っていいって言われているし、神様だって同じだろう。
というかこのまま信仰の薄いここに置いて帰っても意味が無いし、なにより彼女にはもっとふさわしい場所がある。
ちょいとばかし遠回りにはなるがきっと気に入ってくれるはずだ。
そうと決まればさっさと外に出るとしよう。
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