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1054.転売屋は箒を作る
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「すみません、お米を運んでもらっただけではなく掃除まで手伝ってもらって。」
「気にするな、一回始めたら途中で止めるのもあれだしな。」
目の前に広がる大量の落ち葉。
それを木の棒の先に魔物の毛を付けた箒のようなもので集めていく。
ある程度集めたところで周りを見るも集まっているのはごく一部。
これ全部集めるのは正直無理だなぁ。
清酒用の米を運びに隣町へとやってきたわけだが、あまりにも落ち葉が多いのでつい手を出してしまった。
が、それが間違いだと気づいたのはついさっき。
足元には膝ぐらいの高さにまで成長した落ち葉の山があるのだが、これだけ集めてもほんの一部なんだもんなぁ。
はぁ、終わんのかこれ。
ハルカの前で恰好を付けた手前すぐに辞めますというわけにもいかないし、っていうか集めにくいんだよなこの箒。
先端の毛か何かが一応は落ち葉を絡めてはくれるものの、その力が弱いのか掃いても掃いても落ち葉が残る。
もっとこう効率よくできないもんかなぁ。
「ただいま戻りました~って、主様何してるんですか?」
「見てわかるだろ、落ち葉を集めてるんだよ。」
作業の手をやめて使い勝手の悪い箒をどうしてやろうかと見つめていると、森の奥からビアンカが戻ってきた。
ちょうど出てきた目の前で俺が箒を睨んでいるものだから、驚いたというかあきれたというかなとも形容しがたい顔をしている。
「ビアンカさんお帰りなさい。森はどうでした?」
「特に異常がありませんでした。これ、お土産のブラウンマッシュルームです、ケイゴさんと一緒に食べてください。」
「わ!ありがとうございます!」
「主様も分もありますからよければアネットに持ち帰ってくださいね。」
「あぁ、ありがとな。」
どうやら森に異常がないか確認しに行っていたようだ。
そのついでにキノコ狩り、他にも薬草やらなんやらをたくさん集めて戻ってきたんだろう。
腰にぶら下げた収納かばんから某ロボットのように色々なものが取り出される。
俺の分と言いながらもアネットの為に集めてきたんだろうなぁ、ほんと仲がいい二人だ。
そんな事よりも今はこの出来の悪い箒をどうにかしなければ。
「ビアンカ、ハイドバンブーって森に生えてたりするか?」
「あの細いバンブーですか?あると思いますよ。」
「ならそれと一緒に枯れて落ちた枝も持ってきてほしいんだが、帰ってきたところ悪いが取ってきてもらえるか?」
「それでしたら私も行きます、どのぐらい必要でしょうか。」
「そうだな、枝はたくさんバンブーは5本ぐらい頼む。」
「では少しだけお待ちください。」
ハイドバンブーはこの前ダンジョンで大暴れしたバンブーヘッドの仲間だ。
通常の物と違ってひょろひょろと細長いのが特徴でよくしなる為様々な用途で用いられている。
ダンジョンではあまり生えていないのだがこの豊かな森ではごく当たり前に生えているらしい。
疲れているところ申し訳ないがハルカと共に再び森に潜ってもらい、その間に俺は道具を用意しておく。
待つこと30分。
山のようになった落ち葉に火をつけて中にスイートトポテを仕込んでいると二人が森から戻ってきた。
目的のものと、もちろん他の物も一緒に。
「それをどうするんですか?」
「適当な長さに切って、ほんでもって乾いた枝を先端にこんな感じで差し込んで・・・っと。」
「随分と大きな箒ですね。」
「こいつじゃ全然落ち葉が集まらないからな、その点これだけ先端部が広いと広範囲の物を集められる。加えて枝の先が面ではなくて点で接してるから砂とかは残って目的の物だけを集められるってわけだ。」
切れ目を入れた部分に大量の枝を差し込み、それを囲うようにしてさらに枝を巻き付けていく。
少々コツはいるが最初の一本を作った後は比較的簡単に残りを仕上げる事が出来た。
今回作ったのは元の世界ではおなじみの竹箒。
これさえあれば広範囲の落ち葉など敵ではない。
早速その実力を発揮するべくビアンカの家の前にたまった落ち葉を集めると、見る見るうちに先程と同じぐらいの落ち葉の山が三つ出来上がった。
いやー、効果は絶大だな。
「すごい、今までの箒とは全くの別物です。」
「西方にも同じようなものがありましたが、出来上がったものばかり見ていたので作るところを見るのは新鮮でした。」
「別段難しいものでもないんだが、落ち葉以外にはあまり使えないんだよなぁ。小さいのを集めるには不向きだし、そういうのはさっきの奴で十分だ。」
「これがあれば街中の落ち葉をすぐに集められそうです。」
「まぁ、明日にはまた同じだけ落ちてるんだろうけどとりあえず集められるだけ集めて馬車に積んでるから木箱にぶちこんでくれ。」
「え、落ち葉を持って帰るんですか?」
「ここじゃ邪魔者でも、向こうじゃ宝の山なのさ。」
それこそどこを見回しても樹があるこの街と違って、俺達の街には数えるほどしか樹が生えていない。
どこを見回しても草が生い茂るばかり。
なので今のように落ち葉の心配をする必要はないのだがそれを回収することもできない。
ただの落ち葉でも全くない場所からすれば珍しいものに変わってしまう。
それこそ、さっき仕込んだスイートトポテが宝物になるぐらいにな。
全部で5本作ったので、途中でシュウとキョウの二人にも手伝ってもらって目につく範囲の落ち葉を回収。
ひとまず今日一日は落ち葉に悩まされることはないだろう。
俺はお宝を、街は掃除道具を物々交換で手に入れる事が出来た。
「そういやシュウのグラスってどうやって掃除してるんだ?」
「アタシが一個一個磨いてるんだ、結構大変なんだよ。」
「そうだろうなぁ、でも埃は毎日たまるだろ?簡単にはたいたりしないのか?」
「下手に当てて割っちゃうと怖いし、それなら拭いた方が早いかな。」
「ビアンカの機材はどうだ?」
「あはは・・・お掃除はあまりしてなくて。」
うん、聞いた俺が悪かった。
仕事の腕は確かなんだが、自分を疎かにする傾向があるからなぁビアンカは。
そのせいで何度か倒れているのでその後は定期的に生存確認してもらうようにお願いしてある。
アネットのように体力の指輪をつけているわけではないからだけど、それでもちょっとなぁ。
一応そうならないように仕事はセーブしてもらっているんだが、この辺は本人の性格もあるだろう。
ガラスや精密機器である機材を傷めずに埃を払えたら少しは掃除してくれるんだろうか。
そんなことを考えながら落ち葉を満載にした馬車に乗り込み、あれやこれやと考えているうちにあっという間に街に戻ってきてしまった。
「で、ハルカさんに運転を任せてシロウはこんなものを考えていたと。」
「こんな物っていうなよ。」
「だって、ただの羽箒でしょ?」
「そんじょそこらの羽箒だと思うな、これははたけばはたくほど勝手に埃を吸着してくれる特別製だ。」
「え、埃を浮かすだけじゃないんですか?」
「それだと舞い上がって結局はまた落ちてくるだろ?換気したりすれば多少はましだが、ビアンカがそんなことすると思うか?」
「あはは、しませんね。」
親友であるアネットにもこういわれてしまうのはどうかと思うぞ、ビアンカ。
まぁそれはさておき、ハルカさんに全部丸投げしてまで考えていたのがこの羽箒だ。
さっきも言ったようにこれは埃を舞い上げるだけじゃなく吸着することで綺麗にしてくれる優れ物。
割れ物が多い場所はどうしても掃除の手が届きにくく埃がたまりやすいのだが、わざわざ動かすのもまた破損のリスクが出てしまう。
その問題を解決するべく考案したのが自動で埃を集めてくれる羽箒。
前にブルーフォックスの毛皮を使ったモップを作ったが、原理はそれに近いものがある。
ようは静電気だ。
この前ダンジョンで大量に尾羽を集めたのだが、その中に同じ性質をもつものがあったのを思い出したので使ってみた。
色も地味だし残念ながらコンテスト用には採用されなかったのだが、これで新しい命を吹き込むことができる。
『サンダーバードの尾羽。サンダーバードはその名の如く羽に静電気を纏って獲物を攻撃する鳥の魔物。ただし自らの魔素はさほど濃く無いため、魔法を使うことはできない。最近の平均取引価格は銅貨20枚。最安値銅貨17枚、最高値銅貨36枚。最終取引日は71日前と記録されています。』
自動車業界では車体の埃や静電気を除去するダチョウの羽毛を掃除用に使っているようだが、これはその真逆の発送。
あれは静電気を発生させないので、バサバサと振れば汚れが落ちるようになっていたのだがこれはあえてそれをしないように作ってある。
もちろん静電気がたまったままだといつまでも汚れをくっつけたままになるので、ごみを除去できるように吸電材で作った入れ物も用意しておいた。
これで埃を安全に回収できるのだが、冬場は放電して火事にならないように注意する必要もあるだろう。
ドアノブを持った時に出るあのバチ!っとした感じ。
出来れば冬場はあまり使いたくない箒だな。
「箒にも色々あるのねぇ。」
「とりあえずアネット用に作ったから使用感を教えてくれ。調子が良ければビアンカの分と、他の店の分も作るつもりでいる。」
「お任せください。」
「そんじゃま、俺は一仕事終えたからスイートトポテでも食べてくるかな。」
「ないわよ。」
「は?」
「あの落ち葉を燃やして作ろうとしてたやつでしょ?残念だけど燃やされずに子供たちの遊び道具になってるわ。あ、大人もそこそこ混じっていたわね。」
なんてことだ。
この辺では珍しい落ち葉を燃やして作るスイートトポテ。
それを売って小遣い稼ぎをしようと思ったのにまさか別の使い方をされるとは思っていなかった。
慌てて畑に様子を見に行くと、大人も子供も楽しそうに巨大な落ち葉の山に木箱の上から飛び込んでいる。
まさかそんな使い方をされるとは。
「これはしばらく焼けそうにありませんね。」
「だな。というかこんなに喜ぶならもう少し運び込んで金をとって遊び場でも作るか?」
「それはせこくないかしら。」
「飽きたら燃やして最後は畑にまけばいい。芋も焼けるし一石二鳥、いや三鳥か。」
「街の落ち葉を回収していただけるのならもう一つ追加できるかと。」
さすがハルカ、いい考えだだ。
誰にも怒られずむしろ喜ばれるのならばやらない理由はない。
まぁ、輸送の手間はあるがどうせハルカを送りに明日また隣町に行くんだ。
その時に今日作った羽箒を持ってって、帰りに掃除用の竹ぼうきを持って帰ってくればいい。
よし、それでいこう。
邪魔者の落ち葉も場所を変えればご覧の通り。
世の中何が金を生み出すのか、本当にわからないものだなぁ。
「気にするな、一回始めたら途中で止めるのもあれだしな。」
目の前に広がる大量の落ち葉。
それを木の棒の先に魔物の毛を付けた箒のようなもので集めていく。
ある程度集めたところで周りを見るも集まっているのはごく一部。
これ全部集めるのは正直無理だなぁ。
清酒用の米を運びに隣町へとやってきたわけだが、あまりにも落ち葉が多いのでつい手を出してしまった。
が、それが間違いだと気づいたのはついさっき。
足元には膝ぐらいの高さにまで成長した落ち葉の山があるのだが、これだけ集めてもほんの一部なんだもんなぁ。
はぁ、終わんのかこれ。
ハルカの前で恰好を付けた手前すぐに辞めますというわけにもいかないし、っていうか集めにくいんだよなこの箒。
先端の毛か何かが一応は落ち葉を絡めてはくれるものの、その力が弱いのか掃いても掃いても落ち葉が残る。
もっとこう効率よくできないもんかなぁ。
「ただいま戻りました~って、主様何してるんですか?」
「見てわかるだろ、落ち葉を集めてるんだよ。」
作業の手をやめて使い勝手の悪い箒をどうしてやろうかと見つめていると、森の奥からビアンカが戻ってきた。
ちょうど出てきた目の前で俺が箒を睨んでいるものだから、驚いたというかあきれたというかなとも形容しがたい顔をしている。
「ビアンカさんお帰りなさい。森はどうでした?」
「特に異常がありませんでした。これ、お土産のブラウンマッシュルームです、ケイゴさんと一緒に食べてください。」
「わ!ありがとうございます!」
「主様も分もありますからよければアネットに持ち帰ってくださいね。」
「あぁ、ありがとな。」
どうやら森に異常がないか確認しに行っていたようだ。
そのついでにキノコ狩り、他にも薬草やらなんやらをたくさん集めて戻ってきたんだろう。
腰にぶら下げた収納かばんから某ロボットのように色々なものが取り出される。
俺の分と言いながらもアネットの為に集めてきたんだろうなぁ、ほんと仲がいい二人だ。
そんな事よりも今はこの出来の悪い箒をどうにかしなければ。
「ビアンカ、ハイドバンブーって森に生えてたりするか?」
「あの細いバンブーですか?あると思いますよ。」
「ならそれと一緒に枯れて落ちた枝も持ってきてほしいんだが、帰ってきたところ悪いが取ってきてもらえるか?」
「それでしたら私も行きます、どのぐらい必要でしょうか。」
「そうだな、枝はたくさんバンブーは5本ぐらい頼む。」
「では少しだけお待ちください。」
ハイドバンブーはこの前ダンジョンで大暴れしたバンブーヘッドの仲間だ。
通常の物と違ってひょろひょろと細長いのが特徴でよくしなる為様々な用途で用いられている。
ダンジョンではあまり生えていないのだがこの豊かな森ではごく当たり前に生えているらしい。
疲れているところ申し訳ないがハルカと共に再び森に潜ってもらい、その間に俺は道具を用意しておく。
待つこと30分。
山のようになった落ち葉に火をつけて中にスイートトポテを仕込んでいると二人が森から戻ってきた。
目的のものと、もちろん他の物も一緒に。
「それをどうするんですか?」
「適当な長さに切って、ほんでもって乾いた枝を先端にこんな感じで差し込んで・・・っと。」
「随分と大きな箒ですね。」
「こいつじゃ全然落ち葉が集まらないからな、その点これだけ先端部が広いと広範囲の物を集められる。加えて枝の先が面ではなくて点で接してるから砂とかは残って目的の物だけを集められるってわけだ。」
切れ目を入れた部分に大量の枝を差し込み、それを囲うようにしてさらに枝を巻き付けていく。
少々コツはいるが最初の一本を作った後は比較的簡単に残りを仕上げる事が出来た。
今回作ったのは元の世界ではおなじみの竹箒。
これさえあれば広範囲の落ち葉など敵ではない。
早速その実力を発揮するべくビアンカの家の前にたまった落ち葉を集めると、見る見るうちに先程と同じぐらいの落ち葉の山が三つ出来上がった。
いやー、効果は絶大だな。
「すごい、今までの箒とは全くの別物です。」
「西方にも同じようなものがありましたが、出来上がったものばかり見ていたので作るところを見るのは新鮮でした。」
「別段難しいものでもないんだが、落ち葉以外にはあまり使えないんだよなぁ。小さいのを集めるには不向きだし、そういうのはさっきの奴で十分だ。」
「これがあれば街中の落ち葉をすぐに集められそうです。」
「まぁ、明日にはまた同じだけ落ちてるんだろうけどとりあえず集められるだけ集めて馬車に積んでるから木箱にぶちこんでくれ。」
「え、落ち葉を持って帰るんですか?」
「ここじゃ邪魔者でも、向こうじゃ宝の山なのさ。」
それこそどこを見回しても樹があるこの街と違って、俺達の街には数えるほどしか樹が生えていない。
どこを見回しても草が生い茂るばかり。
なので今のように落ち葉の心配をする必要はないのだがそれを回収することもできない。
ただの落ち葉でも全くない場所からすれば珍しいものに変わってしまう。
それこそ、さっき仕込んだスイートトポテが宝物になるぐらいにな。
全部で5本作ったので、途中でシュウとキョウの二人にも手伝ってもらって目につく範囲の落ち葉を回収。
ひとまず今日一日は落ち葉に悩まされることはないだろう。
俺はお宝を、街は掃除道具を物々交換で手に入れる事が出来た。
「そういやシュウのグラスってどうやって掃除してるんだ?」
「アタシが一個一個磨いてるんだ、結構大変なんだよ。」
「そうだろうなぁ、でも埃は毎日たまるだろ?簡単にはたいたりしないのか?」
「下手に当てて割っちゃうと怖いし、それなら拭いた方が早いかな。」
「ビアンカの機材はどうだ?」
「あはは・・・お掃除はあまりしてなくて。」
うん、聞いた俺が悪かった。
仕事の腕は確かなんだが、自分を疎かにする傾向があるからなぁビアンカは。
そのせいで何度か倒れているのでその後は定期的に生存確認してもらうようにお願いしてある。
アネットのように体力の指輪をつけているわけではないからだけど、それでもちょっとなぁ。
一応そうならないように仕事はセーブしてもらっているんだが、この辺は本人の性格もあるだろう。
ガラスや精密機器である機材を傷めずに埃を払えたら少しは掃除してくれるんだろうか。
そんなことを考えながら落ち葉を満載にした馬車に乗り込み、あれやこれやと考えているうちにあっという間に街に戻ってきてしまった。
「で、ハルカさんに運転を任せてシロウはこんなものを考えていたと。」
「こんな物っていうなよ。」
「だって、ただの羽箒でしょ?」
「そんじょそこらの羽箒だと思うな、これははたけばはたくほど勝手に埃を吸着してくれる特別製だ。」
「え、埃を浮かすだけじゃないんですか?」
「それだと舞い上がって結局はまた落ちてくるだろ?換気したりすれば多少はましだが、ビアンカがそんなことすると思うか?」
「あはは、しませんね。」
親友であるアネットにもこういわれてしまうのはどうかと思うぞ、ビアンカ。
まぁそれはさておき、ハルカさんに全部丸投げしてまで考えていたのがこの羽箒だ。
さっきも言ったようにこれは埃を舞い上げるだけじゃなく吸着することで綺麗にしてくれる優れ物。
割れ物が多い場所はどうしても掃除の手が届きにくく埃がたまりやすいのだが、わざわざ動かすのもまた破損のリスクが出てしまう。
その問題を解決するべく考案したのが自動で埃を集めてくれる羽箒。
前にブルーフォックスの毛皮を使ったモップを作ったが、原理はそれに近いものがある。
ようは静電気だ。
この前ダンジョンで大量に尾羽を集めたのだが、その中に同じ性質をもつものがあったのを思い出したので使ってみた。
色も地味だし残念ながらコンテスト用には採用されなかったのだが、これで新しい命を吹き込むことができる。
『サンダーバードの尾羽。サンダーバードはその名の如く羽に静電気を纏って獲物を攻撃する鳥の魔物。ただし自らの魔素はさほど濃く無いため、魔法を使うことはできない。最近の平均取引価格は銅貨20枚。最安値銅貨17枚、最高値銅貨36枚。最終取引日は71日前と記録されています。』
自動車業界では車体の埃や静電気を除去するダチョウの羽毛を掃除用に使っているようだが、これはその真逆の発送。
あれは静電気を発生させないので、バサバサと振れば汚れが落ちるようになっていたのだがこれはあえてそれをしないように作ってある。
もちろん静電気がたまったままだといつまでも汚れをくっつけたままになるので、ごみを除去できるように吸電材で作った入れ物も用意しておいた。
これで埃を安全に回収できるのだが、冬場は放電して火事にならないように注意する必要もあるだろう。
ドアノブを持った時に出るあのバチ!っとした感じ。
出来れば冬場はあまり使いたくない箒だな。
「箒にも色々あるのねぇ。」
「とりあえずアネット用に作ったから使用感を教えてくれ。調子が良ければビアンカの分と、他の店の分も作るつもりでいる。」
「お任せください。」
「そんじゃま、俺は一仕事終えたからスイートトポテでも食べてくるかな。」
「ないわよ。」
「は?」
「あの落ち葉を燃やして作ろうとしてたやつでしょ?残念だけど燃やされずに子供たちの遊び道具になってるわ。あ、大人もそこそこ混じっていたわね。」
なんてことだ。
この辺では珍しい落ち葉を燃やして作るスイートトポテ。
それを売って小遣い稼ぎをしようと思ったのにまさか別の使い方をされるとは思っていなかった。
慌てて畑に様子を見に行くと、大人も子供も楽しそうに巨大な落ち葉の山に木箱の上から飛び込んでいる。
まさかそんな使い方をされるとは。
「これはしばらく焼けそうにありませんね。」
「だな。というかこんなに喜ぶならもう少し運び込んで金をとって遊び場でも作るか?」
「それはせこくないかしら。」
「飽きたら燃やして最後は畑にまけばいい。芋も焼けるし一石二鳥、いや三鳥か。」
「街の落ち葉を回収していただけるのならもう一つ追加できるかと。」
さすがハルカ、いい考えだだ。
誰にも怒られずむしろ喜ばれるのならばやらない理由はない。
まぁ、輸送の手間はあるがどうせハルカを送りに明日また隣町に行くんだ。
その時に今日作った羽箒を持ってって、帰りに掃除用の竹ぼうきを持って帰ってくればいい。
よし、それでいこう。
邪魔者の落ち葉も場所を変えればご覧の通り。
世の中何が金を生み出すのか、本当にわからないものだなぁ。
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