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1043.転売屋はかばんを見つける
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秋晴れの空を今日もバーンと共に飛び回る。
最初は馬車、次に魔導船、そしてワイバーンの背中。
移動手段がどんどんと高速化していっているおかげで仕事の効率が格段に上がっている。
いや、プライベートもか。
一般的な移動手段が馬車であるこの世界では長距離移動は非常に大変で、物を運ぶというのは実に大変な仕事だ。
魔物や盗賊の襲撃、荷物の破損、紛失、様々なリスクを背負いながら輸送業者は街道の上を走り回っている。
彼らこそがこの国の血液であり、なくてはならない存在。
そんな彼らよりも高速で移動して簡単なものも運べるバーンの存在はイレギュラーすぎるんだよなぁ。
本来であれば一週間はかかる港町との行き来もわずか半日で行える。
その為、緊急の手紙や小形の荷物なんかを運んでほしいという依頼は毎日飛び込んでくるのだが、それを当たり前のように受けてしまうと他の業者が大打撃を受けてしまうため、非常に高額かつ限られた人の仕事しか受けないようにしている。
それでも五日に一回は飛んでいることを考えると、その代金を支払ってでも使いたい価値があるんだろう。
まさに物流革命だ。
「それじゃあ一回街に戻って、また迎えに来るね。」
「おぅ、気を付けてな。」
バイバイと手を振るや否やバーンは瞬く間に空高く飛び上がり、あっという間に見えなくなってしまった。
彼の身に着けたカバンには何通かの手紙が入っている。
それを街に運び、そして返事をもらって戻ってくるだけで銀貨50枚も稼げてしまうんだから大儲けもいい所だ。
現状では月に5~6回ほど運び屋的な事をやっているので月収はおよそ金貨3~5枚ほど。
それだけの大金を支払ってでも届けたい手紙の内容が非常に気になるところではあるのだけど、余計なことに首を突っ込んで痛い目を見たくないのでその辺はマナーとして触れないようにしている。
触らぬ神に祟りなしってね。
さて、バーンが戻ってくるまでに自分の仕事を終えるとしよう。
下ろしてもらったのは港町のはずれ。
いつもここに着陸するので、他の人からすれば見慣れた光景になってしまっているようで驚く人は少なくなっている。
とりあえず向かうは新しい仕入先。
いつものように警備に挨拶をしてから城門をくぐり、その足で大通りをまっすぐに進む。
様々な商品がショーウィンドウを彩る中、ひときわ煌びやかな品を並べるお店の戸を開く。
「いらっしゃいませ、これはシロウ名誉男爵様。」
「敬称は不要だ、ただのシロウでいい。」
「普通はそう呼ばないと怒るものですけど?」
「そんな事で怒るってことはそれだけ器が狭かったって事だろ。」
最初こそ客用の顔をしていたが、今では作り笑顔を浮かべる事もなく冗談を言ってくるようになった。
彼女の名前はヘルメース。
新進気鋭の天才宝飾品職人として王都では名前を知らない人がいないぐらいの有名人だ。
ちなみに同業者であるルティエの大ファンでもある。
「ふふ、ご本人の前で言ってもらいたいものですね。それで本日はどのようなご用件でしょう、見たところルティエ様は同席されていないようですが。」
「残念だったな、あいつはこの間貰った刺激を形にしようともがき苦しんでいるところだ。」
「そんなに気負わなくても素晴らしい品をおつくりになられるのに。」
「天才と凡才の違いって奴だろう。まぁ放っておいてもいい品ができるのは俺も知っているから今は見守るだけだ。今日来たのはこの間の代金を支払いに来たのと、それと相談だな。」
「相談、ですか。」
ルティエが一緒じゃないと知って露骨に残念そうな顔をするなこの人は。
それぐらいわかりやすい方が俺も仕事をしやすいので別にいいんだが、とりあえずこの間買い付けたアクセサリーの残代金を支払ってから本題に入る。
ルティエがいればこうやって聞かなくてもよかったんだが、生憎とそれらの知識を持っている人が他にいなかったんだよなぁ。
「なるほど、カバンを探していると。」
「収納かばんは確かに便利ではあるんだが、見た目があんまりよくないんだよなぁ。特にこうやって商談するときなんかは別のカバンを使った方が見栄え的にもいいと思うんだ。プラディだったか?あんな感じの見栄えのいいカバンを探してる。正直ブランドとか王都で話題の商材なんかを一切知らなくてな、何かおすすめの物はあったりしないか?」
「私はルティエ様が気に入ったものなら何でもいいと思いますが。」
「・・・それ抜きで頼む。」
「正直それ以外の条件は興味がないのですが、他でもないシロウ様の相談ですので致し方なくお受けいたします。」
こうも露骨にルティエ推しだとむしろすがすがしい気分になるな。
ルティエは、憧れている新進気鋭の天才職人が、実は自分をいろんな意味で気に入っているっていうのはどういう気分なんだろうか。
うれしいのか恥ずかしいのか、まぁ俺には何の影響もないのでありがたくレクチャーをうけるとしよう。
「なるほど、そんなにも種類があるのか。」
「ルティエ様一押しのプラディを除けばおよそそんな感じかと。あまり高価でない方がシロウ様のお仕事的には良いかと思いますが、それでは持つ意味がありません。背伸びして買うからこそ大事にするものだと私は思っています。」
「そしてそれにふさわしい商品を作るのが自分の仕事だというわけだな。」
「そこまでは言いませんがそれぐらいの気持ちで作っています。」
だからこそ王都で人気になり誰もが欲しいと思う品を作り出せると。
ルティエ、こういう所から違いがあるみたいだぞ。
ともかくヘルメースさんに教えてもらったロシャン、バルバルイ、コルチという職人が作るカバンがそれなりの値段でありつつ物もそれなりにいいらしい。
どれもこの街に店を構えているようなのでとりあえず現物を見て考えるとしよう。
ヘルメースさんにお礼を言って教えてもらった店を順番に見て回る。
確かに見た目から高級感がありながらどれもしっかりとした作りになっている。
これなら長年使っても壊れることはいだろうし、壊れても修理に出せばまた使える。
一つ物を大事に使う文化はこの世界の方がしっかりと根付いているので値段次第では売れるのではないだろうか。
高い物で銀貨30枚ほど、安いものは銀貨10枚で買えるようだ。
少々高めだが、今はどちらかというと好景気なので買えない値段ではない。
むしろそれぐらいの方が大事にするのはわかる気がする。
とりあえず店主に挨拶をしつついくつか品を仕入れて帰ることにした。
さすがに三つ全部を継続して買うのは難しいだろうから、売れ行きを見てどれを選択するか考えよう。
「さて、バーンが来るにはまだもう少しあるか。」
買い付けた品は港に運んでもらいガレイの船に乗せて持って帰ることにした。
別に急いでいるわけではないのでその間にどういう風に売るかを考えよう。
確かにスピード感は重要だが、焦って売るようなものでもない。
迎えが来るまであと少し。
残りの時間はいつものようにぶらぶらと露店を冷かして回るとしよう。
時間的にはもう夕方、大半の店は店じまいを始めているのだがその中で一軒だけ、商品が山ほど残っている店があった。
置かれているのはごくありふれた茶色い革のカバン。
大小さまざまな形をしたやつが、これでもかというぐらいに並べられている。
他の店が店じまいをしているというのに店主の青年はどこ吹く風という感じだ。
「ちょっと見ていいか?」
「どうぞ~、どれも一つ銀貨3枚だよ。」
「この大きいのもか?」
「うん。」
「小さいのも同じ値段なのか?」
「うん。」
「基準がわからないな。」
今日見てきたカバンに比べるとどうしてもデザイン的に見劣りしてしまうが、決して悪いわけではない。
いい言い方をするとシンプル、悪い言い方をすると地味。
実用重視という感じだが、個人的には嫌いじゃない。
『マッスルホースのカバン。強靭な体を持つマッスルホースの皮を使ったカバン、見た目のわりに革は非常に柔らかいが丈夫で少々のことでは破れたりしない。水にも強く少々の雨では色落ちしないが、熱を当て続けると縮んでしまうので注意が必要。最近の平均取引価格は銀貨3枚、最安値銀貨1枚、最高値銀貨7枚、最終取引日は昨日と記録されています。』
マッスルホース。
確かものすごいムキムキの筋肉をした馬だったと記憶している。
主に採石場や重たいものを運ぶ場所で重宝されているが、力はあるものの持久力がなく肉は硬くて食べられなかったはずだ。
短命ながら繁殖力は非常に高く年に四度出産できるので安価な労働力として用いられていると本に書いてあった。
体も大きく数が手に入る分値段も安いという事なのだろう。
「これ、売れてるのか?」
「今日は二個売れたよ、その前は三個。」
「そんなもんでいいのか?」
「欲しい人が買ってくれたらそれでいいかな。いっぱい使って壊れたらまた買いに来てくれればそれでいいんだよ。」
「なるほど。」
確かにこの値段なら気にせず使って、壊れたら買い替えるって事も出来そうだ。
デザインはシンプルだが悪くないし大きい奴はそれなりに荷物も入る。
高級なカバンももちろんいいんだろうけど、個人的にはこういうのも嫌いじゃないんだよなぁ。
「どれかいいのがあったら言ってね。」
「ちなみにたくさん買ったら安くなるのか?」
「え~、そういうのはやってないんだけど全部買ってくれるなら安くしてもいいよ。」
「全部か。」
「うん、そしたら銀貨2枚でもいいかな。」
値段はさっき買い付けたお高いカバンの足元にも及ばないが、それでも数を売ればそれなりの儲けにはなるだろう。
時間はかかるかもしれないが、案外こういうやつの方が人気が出たりするんだよな。
特に扱いが雑な冒険者にはぴったりの品かもしれない。
「わかった、全部買おう。」
「え!冗談だったのに。」
「なんだ冗談なのか。」
「そのつもりだったんだけど、ほんとに買ってくれるなら銀貨2枚でいいよ。だって売れたらしばらく食べるのに困らないし。」
「どこで作ってるんだ?」
「ここから北にずーーっといった大山脈のふもと。」
北方まではいかないようだがその中間あたりって事だろうか。
100個あったとして金貨2枚、それだけあれば確かにしばらくは食っていけるはずだ。
まさか一人で作っているってことはないよな?
「いつもここに売りに来てるのか?」
「うん、数が出来たら売りに来るよ。」
「そうか、ならこれからよろしく頼む。俺はシロウ、名前は?」
「バティス。」
「バティス、また商品が出来たら見せてもらいたいんだが構わないか?」
「んー、別にいいけどいつになるかわからないよ?」
「急いでないから大丈夫だ。また売りに来たら港にいるガレイっていう船長を探してくれ、彼に言えばお金を払ってくれる。」
「わかった。じゃあ、とりあえず何個あるか数えるね。」
普通自分の品が全部売れたら大喜びしそうなものだが、彼は終始マイペースに数を数え代金を受け取っても特に変化はなかった。
売れるのがうれしくないのか、それとも売ることに興味がないのか。
俺としては売れそうな品を買い付ける事が出来たので素直にありがたいんだが・・・。
職人ってのは変な人が多いなぁと改めて思ったのだった。
最初は馬車、次に魔導船、そしてワイバーンの背中。
移動手段がどんどんと高速化していっているおかげで仕事の効率が格段に上がっている。
いや、プライベートもか。
一般的な移動手段が馬車であるこの世界では長距離移動は非常に大変で、物を運ぶというのは実に大変な仕事だ。
魔物や盗賊の襲撃、荷物の破損、紛失、様々なリスクを背負いながら輸送業者は街道の上を走り回っている。
彼らこそがこの国の血液であり、なくてはならない存在。
そんな彼らよりも高速で移動して簡単なものも運べるバーンの存在はイレギュラーすぎるんだよなぁ。
本来であれば一週間はかかる港町との行き来もわずか半日で行える。
その為、緊急の手紙や小形の荷物なんかを運んでほしいという依頼は毎日飛び込んでくるのだが、それを当たり前のように受けてしまうと他の業者が大打撃を受けてしまうため、非常に高額かつ限られた人の仕事しか受けないようにしている。
それでも五日に一回は飛んでいることを考えると、その代金を支払ってでも使いたい価値があるんだろう。
まさに物流革命だ。
「それじゃあ一回街に戻って、また迎えに来るね。」
「おぅ、気を付けてな。」
バイバイと手を振るや否やバーンは瞬く間に空高く飛び上がり、あっという間に見えなくなってしまった。
彼の身に着けたカバンには何通かの手紙が入っている。
それを街に運び、そして返事をもらって戻ってくるだけで銀貨50枚も稼げてしまうんだから大儲けもいい所だ。
現状では月に5~6回ほど運び屋的な事をやっているので月収はおよそ金貨3~5枚ほど。
それだけの大金を支払ってでも届けたい手紙の内容が非常に気になるところではあるのだけど、余計なことに首を突っ込んで痛い目を見たくないのでその辺はマナーとして触れないようにしている。
触らぬ神に祟りなしってね。
さて、バーンが戻ってくるまでに自分の仕事を終えるとしよう。
下ろしてもらったのは港町のはずれ。
いつもここに着陸するので、他の人からすれば見慣れた光景になってしまっているようで驚く人は少なくなっている。
とりあえず向かうは新しい仕入先。
いつものように警備に挨拶をしてから城門をくぐり、その足で大通りをまっすぐに進む。
様々な商品がショーウィンドウを彩る中、ひときわ煌びやかな品を並べるお店の戸を開く。
「いらっしゃいませ、これはシロウ名誉男爵様。」
「敬称は不要だ、ただのシロウでいい。」
「普通はそう呼ばないと怒るものですけど?」
「そんな事で怒るってことはそれだけ器が狭かったって事だろ。」
最初こそ客用の顔をしていたが、今では作り笑顔を浮かべる事もなく冗談を言ってくるようになった。
彼女の名前はヘルメース。
新進気鋭の天才宝飾品職人として王都では名前を知らない人がいないぐらいの有名人だ。
ちなみに同業者であるルティエの大ファンでもある。
「ふふ、ご本人の前で言ってもらいたいものですね。それで本日はどのようなご用件でしょう、見たところルティエ様は同席されていないようですが。」
「残念だったな、あいつはこの間貰った刺激を形にしようともがき苦しんでいるところだ。」
「そんなに気負わなくても素晴らしい品をおつくりになられるのに。」
「天才と凡才の違いって奴だろう。まぁ放っておいてもいい品ができるのは俺も知っているから今は見守るだけだ。今日来たのはこの間の代金を支払いに来たのと、それと相談だな。」
「相談、ですか。」
ルティエが一緒じゃないと知って露骨に残念そうな顔をするなこの人は。
それぐらいわかりやすい方が俺も仕事をしやすいので別にいいんだが、とりあえずこの間買い付けたアクセサリーの残代金を支払ってから本題に入る。
ルティエがいればこうやって聞かなくてもよかったんだが、生憎とそれらの知識を持っている人が他にいなかったんだよなぁ。
「なるほど、カバンを探していると。」
「収納かばんは確かに便利ではあるんだが、見た目があんまりよくないんだよなぁ。特にこうやって商談するときなんかは別のカバンを使った方が見栄え的にもいいと思うんだ。プラディだったか?あんな感じの見栄えのいいカバンを探してる。正直ブランドとか王都で話題の商材なんかを一切知らなくてな、何かおすすめの物はあったりしないか?」
「私はルティエ様が気に入ったものなら何でもいいと思いますが。」
「・・・それ抜きで頼む。」
「正直それ以外の条件は興味がないのですが、他でもないシロウ様の相談ですので致し方なくお受けいたします。」
こうも露骨にルティエ推しだとむしろすがすがしい気分になるな。
ルティエは、憧れている新進気鋭の天才職人が、実は自分をいろんな意味で気に入っているっていうのはどういう気分なんだろうか。
うれしいのか恥ずかしいのか、まぁ俺には何の影響もないのでありがたくレクチャーをうけるとしよう。
「なるほど、そんなにも種類があるのか。」
「ルティエ様一押しのプラディを除けばおよそそんな感じかと。あまり高価でない方がシロウ様のお仕事的には良いかと思いますが、それでは持つ意味がありません。背伸びして買うからこそ大事にするものだと私は思っています。」
「そしてそれにふさわしい商品を作るのが自分の仕事だというわけだな。」
「そこまでは言いませんがそれぐらいの気持ちで作っています。」
だからこそ王都で人気になり誰もが欲しいと思う品を作り出せると。
ルティエ、こういう所から違いがあるみたいだぞ。
ともかくヘルメースさんに教えてもらったロシャン、バルバルイ、コルチという職人が作るカバンがそれなりの値段でありつつ物もそれなりにいいらしい。
どれもこの街に店を構えているようなのでとりあえず現物を見て考えるとしよう。
ヘルメースさんにお礼を言って教えてもらった店を順番に見て回る。
確かに見た目から高級感がありながらどれもしっかりとした作りになっている。
これなら長年使っても壊れることはいだろうし、壊れても修理に出せばまた使える。
一つ物を大事に使う文化はこの世界の方がしっかりと根付いているので値段次第では売れるのではないだろうか。
高い物で銀貨30枚ほど、安いものは銀貨10枚で買えるようだ。
少々高めだが、今はどちらかというと好景気なので買えない値段ではない。
むしろそれぐらいの方が大事にするのはわかる気がする。
とりあえず店主に挨拶をしつついくつか品を仕入れて帰ることにした。
さすがに三つ全部を継続して買うのは難しいだろうから、売れ行きを見てどれを選択するか考えよう。
「さて、バーンが来るにはまだもう少しあるか。」
買い付けた品は港に運んでもらいガレイの船に乗せて持って帰ることにした。
別に急いでいるわけではないのでその間にどういう風に売るかを考えよう。
確かにスピード感は重要だが、焦って売るようなものでもない。
迎えが来るまであと少し。
残りの時間はいつものようにぶらぶらと露店を冷かして回るとしよう。
時間的にはもう夕方、大半の店は店じまいを始めているのだがその中で一軒だけ、商品が山ほど残っている店があった。
置かれているのはごくありふれた茶色い革のカバン。
大小さまざまな形をしたやつが、これでもかというぐらいに並べられている。
他の店が店じまいをしているというのに店主の青年はどこ吹く風という感じだ。
「ちょっと見ていいか?」
「どうぞ~、どれも一つ銀貨3枚だよ。」
「この大きいのもか?」
「うん。」
「小さいのも同じ値段なのか?」
「うん。」
「基準がわからないな。」
今日見てきたカバンに比べるとどうしてもデザイン的に見劣りしてしまうが、決して悪いわけではない。
いい言い方をするとシンプル、悪い言い方をすると地味。
実用重視という感じだが、個人的には嫌いじゃない。
『マッスルホースのカバン。強靭な体を持つマッスルホースの皮を使ったカバン、見た目のわりに革は非常に柔らかいが丈夫で少々のことでは破れたりしない。水にも強く少々の雨では色落ちしないが、熱を当て続けると縮んでしまうので注意が必要。最近の平均取引価格は銀貨3枚、最安値銀貨1枚、最高値銀貨7枚、最終取引日は昨日と記録されています。』
マッスルホース。
確かものすごいムキムキの筋肉をした馬だったと記憶している。
主に採石場や重たいものを運ぶ場所で重宝されているが、力はあるものの持久力がなく肉は硬くて食べられなかったはずだ。
短命ながら繁殖力は非常に高く年に四度出産できるので安価な労働力として用いられていると本に書いてあった。
体も大きく数が手に入る分値段も安いという事なのだろう。
「これ、売れてるのか?」
「今日は二個売れたよ、その前は三個。」
「そんなもんでいいのか?」
「欲しい人が買ってくれたらそれでいいかな。いっぱい使って壊れたらまた買いに来てくれればそれでいいんだよ。」
「なるほど。」
確かにこの値段なら気にせず使って、壊れたら買い替えるって事も出来そうだ。
デザインはシンプルだが悪くないし大きい奴はそれなりに荷物も入る。
高級なカバンももちろんいいんだろうけど、個人的にはこういうのも嫌いじゃないんだよなぁ。
「どれかいいのがあったら言ってね。」
「ちなみにたくさん買ったら安くなるのか?」
「え~、そういうのはやってないんだけど全部買ってくれるなら安くしてもいいよ。」
「全部か。」
「うん、そしたら銀貨2枚でもいいかな。」
値段はさっき買い付けたお高いカバンの足元にも及ばないが、それでも数を売ればそれなりの儲けにはなるだろう。
時間はかかるかもしれないが、案外こういうやつの方が人気が出たりするんだよな。
特に扱いが雑な冒険者にはぴったりの品かもしれない。
「わかった、全部買おう。」
「え!冗談だったのに。」
「なんだ冗談なのか。」
「そのつもりだったんだけど、ほんとに買ってくれるなら銀貨2枚でいいよ。だって売れたらしばらく食べるのに困らないし。」
「どこで作ってるんだ?」
「ここから北にずーーっといった大山脈のふもと。」
北方まではいかないようだがその中間あたりって事だろうか。
100個あったとして金貨2枚、それだけあれば確かにしばらくは食っていけるはずだ。
まさか一人で作っているってことはないよな?
「いつもここに売りに来てるのか?」
「うん、数が出来たら売りに来るよ。」
「そうか、ならこれからよろしく頼む。俺はシロウ、名前は?」
「バティス。」
「バティス、また商品が出来たら見せてもらいたいんだが構わないか?」
「んー、別にいいけどいつになるかわからないよ?」
「急いでないから大丈夫だ。また売りに来たら港にいるガレイっていう船長を探してくれ、彼に言えばお金を払ってくれる。」
「わかった。じゃあ、とりあえず何個あるか数えるね。」
普通自分の品が全部売れたら大喜びしそうなものだが、彼は終始マイペースに数を数え代金を受け取っても特に変化はなかった。
売れるのがうれしくないのか、それとも売ることに興味がないのか。
俺としては売れそうな品を買い付ける事が出来たので素直にありがたいんだが・・・。
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