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1037.転売屋は運動会を見守る
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「なるほど、子供達の体を動かす機会を作りたいわけか。」
「孤児院だけでなく街の子供達も学校に通ってくれるようになっていますし、季節もよくなってきたのでこの前の武闘大会のように何か目標を決めて楽しめればと思って。」
「確かに体を動かすには最高の時期だしこれを逃す手はない。ようは運動会だろ?」
「ウンドウカイ?」
「簡単に言えば二手に分かれて色々な種目で競い合うんだ。走ったり投げたり引っ張ったり、ただ体を動かすだけじゃなく競い合えばそれだけで盛り上がるからな。」
ある日のこと、モニカが屋敷にやってきたのでなにか大変なことが起きたのかと思ったのだが蓋を開けるとただの相談事だった。
最近子供たちのエネルギーが半端ないので、なにかいい案はないだろうか。
そんな感じの相談事だったんだが、色々と話し合っているうちに一つの方向性が見えてくる。
頭で考えるよりも口に出した方が考えがまとまるのと同じで、自分の考えを誰かに話すことでより考えがまとまることも多い。
基本は自分一人で色々と考えてしまう俺も、時々自分の考えを確認したくてミラやセラフィムさん達に聞いてもらうことがある。
ミラなんかはほぼほぼ肯定してくれるのだが、セラフィムさんは結構鋭いツッコミを入れてくれるので考えが破綻することに気付かされることも多い。
あ、ミラの名誉のために言えば変なところはちゃんと変だと言ってくれるから、決して全肯定というわけではない。
その辺はちゃんと線引きしてくれている。
「確かに競いあうのはいいかもしれません。でも、年の離れた子同士では勝負にならないような気もしますが・・・。」
「一回で決着をつけるんじゃなくて、色々な競技をできるだけ年の近い奴同士で競わせてそこで得た得点で競い合えばいい。年が離れすぎているのならハンデを与えればいいし、なんなら大人と競わせてもいい。その辺はさじ加減一つで何とでもなるさ。」
「色々な競技で得点を競い合う、それなら一回失敗しても挽回できますね。」
「子供たちをできるだけ公平な感じに二つないし三つに分けて競わせるのがいいだろうな。下水道工事の前なら拡張工事の広場が使えるから、そこで街の人に見て貰えば盛り上がるし、理解も広まっていくだろう。その辺は俺からシープさんに話を通しておく。問題は何をするかだが・・・。」
この前のチャリティ以降、住民や冒険者の孤児院や学校を見る目が変わったような気がする。
今まではあっても知らない興味がないという感じだったが、最近ではどうやったら学校に入れるかの質問や孤児院や保育園の手伝い希望も来ているんだとか。
今後を考えればなくてはならない存在だけに、やっと認知が広まってきたということだろう。
教会も孤児院も必要がなければ行くこともないのだが、保育園や学校になれば子供がいる家庭はお世話になる機会も出てくる。
イレーネさんをはじめとする婦人会の皆さんが話を広めてくれているのも大きなきっかけの一つだな。
それはさておき、とりあえず何をするかを考えない事には始まらない。
とりあえず組み分けなんかはモニカに丸投げして、俺は場所の確保と競技の選定を行うことになった。
二人でやるのは大変でも、みんなを巻き込んでしまえばそうでもないもんだ。
「それは面白そうですね、わかりました場所の確保はお任せください。住民に告知しても構いませんよね?」
「あぁ、観覧は自由。ただし下品なヤジと賭け事は禁止だ。」
「出店はどうします?」
「正直そこまで話を大きくするつもりはないんだが、いやでも大きくなるよなぁ。」
「お祭りごと好きですからね、ここの皆さんは。」
その中にお前も入っているだろと羊男に心の中でツッコミつつ、快く受け入れてくれたことに感謝する。
これで場所の確保と会場の整備はオッケーだな。
出店とかまでは考えてなかったが出せば売れるし盛り上がる。
とはいえ協議の最中に暴れられても困るので、酒と賭け事は禁止させてもらおう。
子供の教育によろしくないからな。
さて、次は何をするかだ。
運動会の定番といえば玉入れ、大玉ころがしにリレー、あとは綱引きぐらいか。
もう少し競技が欲しい所なのでこういう競い合う感じの奴は、そういうのが好きな奴に聞きにいくとしよう。
「それなら札探しはどうかしら、お題に描かれた物や人を探してからゴールに走るの。」
「借り物競争みたいなものだな、他にあるか?」
「でしたら紐飛びや障害物を避けて走るのとかはどうでしょう、年齢や身のこなしで走る場所を変えればいい勝負ができると思います。」
「障害物競走か、それも盛り上がりそうだ。」
定番の競技とはいえ、一人ではどういう競技にするか詰めることはできなかっただろう。
こういう時は素直に他人の助力を得るべきだと改めて痛感した。
全部で10を超える競技を羅列し、今度はそれに必要な道具を集める事に。
ここからは転売屋の腕の見せ所。
羊男に話を持って行った時点で街の金で開催してくれる言質は取っている。
チャリティで稼いだ金はまだ残っているようなのでそれをあてがうんだそうだ。
宝くじを販売してかなりの金額を使ったはずなんだが、まだ残っているとかどれだけ儲かったんだろうなぁあれ。
「今回は必要な数を必要なだけ持ってきてもらえると助かる。早いもの順にするとあれだからその辺はギルドで上手いこと仕分けしてくれ。」
「とりあえず急ぎは数の多い素材ですね、玉入れ用のスライムの核各種100個ずつ。それと、持ち帰るのが大変なロープウッドの蔓を20m程。細々としたものは何かのついでにお願いする感じで行きましょう。」
「依頼料はシロウが出すの?」
「とりあえず俺が出して後で上に請求する感じだ、だから普通よりも高めでいいぞ。」
「オッケー、それならすぐに集まると思うわ。」
依頼料とは別に買取もするので冒険者からしたら二重取りできることになる。
別に急いでいるわけではないんだが早いに越したことはないからな。
そんなこんなで、とんとん拍子に話は進みあっという間に運動会用の道具が揃えられた。
冒険者の行動力もさることながら、やっぱりこの街の住民はお祭り騒ぎが好きなようだ。
羊男に話が行ってすぐに運動会の告知がなされたのだが、一番最初に来た問い合わせが『出店は出るのか』だったらしい。
それも消費する方ではなく出店する方。
俺のように商魂たくましい人がいるのは街としてはいいことなんだろうなぁ。
そんなこんなで、二日後には運動会が開催される運びとなった。
元の世界では練習だなんだといろいろあるみたいだけど、こっちはほぼぶっつけ本番。
一応ルール説明は行っているそうだから問題はないだろう。
あればその都度対処すればいいだけ。
今回は黒組と白組に分かれての勝負のようだ。
三つに分けるには人数が足りなかったそうだが、次の秋には三組だけでは足りないだろうなぁ。
「それでは第一回運動会を始めます、始めるにあたり開催するために尽力してくださったシロウ様より一言貰いたいと思います。シロウ様、お願いできますか?」
「聞いてないんだが?」
「いいじゃない、簡単に済ませちゃいなさいよ。」
「簡単にってお前なぁ。」
てっきり観覧席でのんびりできると思っていたのだが、まさかモニカに無茶振りされる日が来るとは思っていなかった。
後で文句を言ってやらないと。
学校と孤児院の運動会のはずが、気づけば街の半分ぐらいが見に来るビッグイベントになってしまった。
大勢の視線を浴びるのには大分慣れてはきたものの、それでも気にならないわけじゃない。
とりあえず深呼吸をして心を落ち着かせつつ、大勢に囲まれて俺以上に緊張しているガキ共の方を向いた。
「あー、今日は無事に晴れてよかったな。せっかく大勢の人に見てもらってるんだ、自分たちがどれだけ元気でどれだけ出来るようになったかしっかり見てもらうように。大人はしっかりと応援してやってくれ、ただしヤジと罵倒は禁止だからな。俺への文句は、まぁ許してやろう。」
会場から笑い声が聞こえてくる、とりあえずこんなもんでいいだろう。
軽く手を振って元の席へ。
モニカがうれしそうな顔で俺に向かってお辞儀をしてから、今度は真剣な顔に切り替わる。
「まず第一種目は・・・。」
さぁ、運動会の始まりだ。
子供達の為に大勢の大人が動いて開催することができた。
もちろん俺もその一人であり、さらにはしっかりと稼がせてもらっている。
少し離れた出店エリアでは今頃ハワードとドーラさんが大量の串焼きを一生懸命焼きまくっているはずだ。
朝一番で始まった運動会は、昼休憩をはさんだもののおやつ時を前にあっさりと終了。
まぁそうだよな、子供の数に限りもあるし用意した競技もさほど時間はかからない。
次回はもっと増やさないとなぁ、そんなことを考えながら楽しそうに運動会を終える子供たちを見守っていたその時だった。
「さぁ、子供の運動会はここで終了。でもこのまま終わるのはもったいない、そう思っている大人もいるんじゃないの?」
突然ニアのよくとおる声が後ろから聞こえてきた。
さっきまでざわついていた会場が水を打ったように静かになる。
おいおい、いったい何をやらかすつもりだ?
こんなことやるなんて全く聞いてないんだが?
「これから大人の部を始めます。我こそはという大人は大会本部前に集合、組み分けをしたのち競技を開始するから準備運動も忘れないようにね!」
「あー、それとシロウさんも急ぎ本部前に来てください。折角のお祭り騒ぎ、このまま終わらせるのはもったいなくありませんか?」
「だって、シロウ行くの?」
「行きたくないが行かないとうるさそうだからなぁ。はぁ、随分と大人しいなと思ってはいたが、エリザ知ってただろ。」
「ごめんね、ニアに口止めされてたから。でも、あんなに頑張っている姿を見せられたら私たちもって思っちゃうわよねぇ。」
「出るのか?」
「もちろん、みんなも出るわよ。」
みんな?
エリザが出場するのはまぁ想定の範囲内として、他の皆が出場する?
慌てて後ろを振り返ると、ミラをはじめアネットやマリーさんオリンピア、そしてハーシェさんまでもがやる気に満ち溢れた顔でこちらを見てくる。
嘘だろ、全員出るのかよ。
「俺は出ないぞ?」
「シロウ様がお忙しいのはわかっていますからその分私たちが頑張ってきますね。」
「旦那様、応援してください。」
「がんばってきますね、ご主人様!」
「子供達は婦人会の奥様方にお願いしています、ミミィちゃんも一緒なので大丈夫ですから安心してください。」
この反応、どう考えてもエリザから情報を回してもらって参加を決めていたな。
そういう事なら前もって言ってくれたらいいのに。
でもまぁ楽しそうならいいか。
普段はあまりこういうことに参加しないタイプだし、気晴らしになる事だろう。
「シロウさ~ん、早く来てくれないと始められなんですけど~!」
「わかったから少し待ってろ!」
羊男が情けない声で俺を呼ぶ。
さぁ、大人の大運動会・・・っていうと卑猥な感じに聞こえてしまうが、とにもかくにも運動会の始まりだ。
果たしてどういう結果になるのか。
ほんと、この街の住民はお祭り騒ぎが好きだよな。
もちろん俺も含めてだけどさ。
「孤児院だけでなく街の子供達も学校に通ってくれるようになっていますし、季節もよくなってきたのでこの前の武闘大会のように何か目標を決めて楽しめればと思って。」
「確かに体を動かすには最高の時期だしこれを逃す手はない。ようは運動会だろ?」
「ウンドウカイ?」
「簡単に言えば二手に分かれて色々な種目で競い合うんだ。走ったり投げたり引っ張ったり、ただ体を動かすだけじゃなく競い合えばそれだけで盛り上がるからな。」
ある日のこと、モニカが屋敷にやってきたのでなにか大変なことが起きたのかと思ったのだが蓋を開けるとただの相談事だった。
最近子供たちのエネルギーが半端ないので、なにかいい案はないだろうか。
そんな感じの相談事だったんだが、色々と話し合っているうちに一つの方向性が見えてくる。
頭で考えるよりも口に出した方が考えがまとまるのと同じで、自分の考えを誰かに話すことでより考えがまとまることも多い。
基本は自分一人で色々と考えてしまう俺も、時々自分の考えを確認したくてミラやセラフィムさん達に聞いてもらうことがある。
ミラなんかはほぼほぼ肯定してくれるのだが、セラフィムさんは結構鋭いツッコミを入れてくれるので考えが破綻することに気付かされることも多い。
あ、ミラの名誉のために言えば変なところはちゃんと変だと言ってくれるから、決して全肯定というわけではない。
その辺はちゃんと線引きしてくれている。
「確かに競いあうのはいいかもしれません。でも、年の離れた子同士では勝負にならないような気もしますが・・・。」
「一回で決着をつけるんじゃなくて、色々な競技をできるだけ年の近い奴同士で競わせてそこで得た得点で競い合えばいい。年が離れすぎているのならハンデを与えればいいし、なんなら大人と競わせてもいい。その辺はさじ加減一つで何とでもなるさ。」
「色々な競技で得点を競い合う、それなら一回失敗しても挽回できますね。」
「子供たちをできるだけ公平な感じに二つないし三つに分けて競わせるのがいいだろうな。下水道工事の前なら拡張工事の広場が使えるから、そこで街の人に見て貰えば盛り上がるし、理解も広まっていくだろう。その辺は俺からシープさんに話を通しておく。問題は何をするかだが・・・。」
この前のチャリティ以降、住民や冒険者の孤児院や学校を見る目が変わったような気がする。
今まではあっても知らない興味がないという感じだったが、最近ではどうやったら学校に入れるかの質問や孤児院や保育園の手伝い希望も来ているんだとか。
今後を考えればなくてはならない存在だけに、やっと認知が広まってきたということだろう。
教会も孤児院も必要がなければ行くこともないのだが、保育園や学校になれば子供がいる家庭はお世話になる機会も出てくる。
イレーネさんをはじめとする婦人会の皆さんが話を広めてくれているのも大きなきっかけの一つだな。
それはさておき、とりあえず何をするかを考えない事には始まらない。
とりあえず組み分けなんかはモニカに丸投げして、俺は場所の確保と競技の選定を行うことになった。
二人でやるのは大変でも、みんなを巻き込んでしまえばそうでもないもんだ。
「それは面白そうですね、わかりました場所の確保はお任せください。住民に告知しても構いませんよね?」
「あぁ、観覧は自由。ただし下品なヤジと賭け事は禁止だ。」
「出店はどうします?」
「正直そこまで話を大きくするつもりはないんだが、いやでも大きくなるよなぁ。」
「お祭りごと好きですからね、ここの皆さんは。」
その中にお前も入っているだろと羊男に心の中でツッコミつつ、快く受け入れてくれたことに感謝する。
これで場所の確保と会場の整備はオッケーだな。
出店とかまでは考えてなかったが出せば売れるし盛り上がる。
とはいえ協議の最中に暴れられても困るので、酒と賭け事は禁止させてもらおう。
子供の教育によろしくないからな。
さて、次は何をするかだ。
運動会の定番といえば玉入れ、大玉ころがしにリレー、あとは綱引きぐらいか。
もう少し競技が欲しい所なのでこういう競い合う感じの奴は、そういうのが好きな奴に聞きにいくとしよう。
「それなら札探しはどうかしら、お題に描かれた物や人を探してからゴールに走るの。」
「借り物競争みたいなものだな、他にあるか?」
「でしたら紐飛びや障害物を避けて走るのとかはどうでしょう、年齢や身のこなしで走る場所を変えればいい勝負ができると思います。」
「障害物競走か、それも盛り上がりそうだ。」
定番の競技とはいえ、一人ではどういう競技にするか詰めることはできなかっただろう。
こういう時は素直に他人の助力を得るべきだと改めて痛感した。
全部で10を超える競技を羅列し、今度はそれに必要な道具を集める事に。
ここからは転売屋の腕の見せ所。
羊男に話を持って行った時点で街の金で開催してくれる言質は取っている。
チャリティで稼いだ金はまだ残っているようなのでそれをあてがうんだそうだ。
宝くじを販売してかなりの金額を使ったはずなんだが、まだ残っているとかどれだけ儲かったんだろうなぁあれ。
「今回は必要な数を必要なだけ持ってきてもらえると助かる。早いもの順にするとあれだからその辺はギルドで上手いこと仕分けしてくれ。」
「とりあえず急ぎは数の多い素材ですね、玉入れ用のスライムの核各種100個ずつ。それと、持ち帰るのが大変なロープウッドの蔓を20m程。細々としたものは何かのついでにお願いする感じで行きましょう。」
「依頼料はシロウが出すの?」
「とりあえず俺が出して後で上に請求する感じだ、だから普通よりも高めでいいぞ。」
「オッケー、それならすぐに集まると思うわ。」
依頼料とは別に買取もするので冒険者からしたら二重取りできることになる。
別に急いでいるわけではないんだが早いに越したことはないからな。
そんなこんなで、とんとん拍子に話は進みあっという間に運動会用の道具が揃えられた。
冒険者の行動力もさることながら、やっぱりこの街の住民はお祭り騒ぎが好きなようだ。
羊男に話が行ってすぐに運動会の告知がなされたのだが、一番最初に来た問い合わせが『出店は出るのか』だったらしい。
それも消費する方ではなく出店する方。
俺のように商魂たくましい人がいるのは街としてはいいことなんだろうなぁ。
そんなこんなで、二日後には運動会が開催される運びとなった。
元の世界では練習だなんだといろいろあるみたいだけど、こっちはほぼぶっつけ本番。
一応ルール説明は行っているそうだから問題はないだろう。
あればその都度対処すればいいだけ。
今回は黒組と白組に分かれての勝負のようだ。
三つに分けるには人数が足りなかったそうだが、次の秋には三組だけでは足りないだろうなぁ。
「それでは第一回運動会を始めます、始めるにあたり開催するために尽力してくださったシロウ様より一言貰いたいと思います。シロウ様、お願いできますか?」
「聞いてないんだが?」
「いいじゃない、簡単に済ませちゃいなさいよ。」
「簡単にってお前なぁ。」
てっきり観覧席でのんびりできると思っていたのだが、まさかモニカに無茶振りされる日が来るとは思っていなかった。
後で文句を言ってやらないと。
学校と孤児院の運動会のはずが、気づけば街の半分ぐらいが見に来るビッグイベントになってしまった。
大勢の視線を浴びるのには大分慣れてはきたものの、それでも気にならないわけじゃない。
とりあえず深呼吸をして心を落ち着かせつつ、大勢に囲まれて俺以上に緊張しているガキ共の方を向いた。
「あー、今日は無事に晴れてよかったな。せっかく大勢の人に見てもらってるんだ、自分たちがどれだけ元気でどれだけ出来るようになったかしっかり見てもらうように。大人はしっかりと応援してやってくれ、ただしヤジと罵倒は禁止だからな。俺への文句は、まぁ許してやろう。」
会場から笑い声が聞こえてくる、とりあえずこんなもんでいいだろう。
軽く手を振って元の席へ。
モニカがうれしそうな顔で俺に向かってお辞儀をしてから、今度は真剣な顔に切り替わる。
「まず第一種目は・・・。」
さぁ、運動会の始まりだ。
子供達の為に大勢の大人が動いて開催することができた。
もちろん俺もその一人であり、さらにはしっかりと稼がせてもらっている。
少し離れた出店エリアでは今頃ハワードとドーラさんが大量の串焼きを一生懸命焼きまくっているはずだ。
朝一番で始まった運動会は、昼休憩をはさんだもののおやつ時を前にあっさりと終了。
まぁそうだよな、子供の数に限りもあるし用意した競技もさほど時間はかからない。
次回はもっと増やさないとなぁ、そんなことを考えながら楽しそうに運動会を終える子供たちを見守っていたその時だった。
「さぁ、子供の運動会はここで終了。でもこのまま終わるのはもったいない、そう思っている大人もいるんじゃないの?」
突然ニアのよくとおる声が後ろから聞こえてきた。
さっきまでざわついていた会場が水を打ったように静かになる。
おいおい、いったい何をやらかすつもりだ?
こんなことやるなんて全く聞いてないんだが?
「これから大人の部を始めます。我こそはという大人は大会本部前に集合、組み分けをしたのち競技を開始するから準備運動も忘れないようにね!」
「あー、それとシロウさんも急ぎ本部前に来てください。折角のお祭り騒ぎ、このまま終わらせるのはもったいなくありませんか?」
「だって、シロウ行くの?」
「行きたくないが行かないとうるさそうだからなぁ。はぁ、随分と大人しいなと思ってはいたが、エリザ知ってただろ。」
「ごめんね、ニアに口止めされてたから。でも、あんなに頑張っている姿を見せられたら私たちもって思っちゃうわよねぇ。」
「出るのか?」
「もちろん、みんなも出るわよ。」
みんな?
エリザが出場するのはまぁ想定の範囲内として、他の皆が出場する?
慌てて後ろを振り返ると、ミラをはじめアネットやマリーさんオリンピア、そしてハーシェさんまでもがやる気に満ち溢れた顔でこちらを見てくる。
嘘だろ、全員出るのかよ。
「俺は出ないぞ?」
「シロウ様がお忙しいのはわかっていますからその分私たちが頑張ってきますね。」
「旦那様、応援してください。」
「がんばってきますね、ご主人様!」
「子供達は婦人会の奥様方にお願いしています、ミミィちゃんも一緒なので大丈夫ですから安心してください。」
この反応、どう考えてもエリザから情報を回してもらって参加を決めていたな。
そういう事なら前もって言ってくれたらいいのに。
でもまぁ楽しそうならいいか。
普段はあまりこういうことに参加しないタイプだし、気晴らしになる事だろう。
「シロウさ~ん、早く来てくれないと始められなんですけど~!」
「わかったから少し待ってろ!」
羊男が情けない声で俺を呼ぶ。
さぁ、大人の大運動会・・・っていうと卑猥な感じに聞こえてしまうが、とにもかくにも運動会の始まりだ。
果たしてどういう結果になるのか。
ほんと、この街の住民はお祭り騒ぎが好きだよな。
もちろん俺も含めてだけどさ。
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