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1018.転売屋は北方への販路を確保する
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結論から言うと、金貨4枚分の価値がある情報ではなかった。
別に秘匿にされているわけでもなく、冒険者ギルドには通達済み。
それでも知っている人は限りなく少ないので有効に使うことでアドバンテージを得ることはできるだろう。
約束は約束なので、買い付けた食器のほかに情報料として金貨4枚を足した金貨10枚を奥様に支払い二人は屋敷を後にした。
最後の最後まで恐縮しきりだったが、今後も食器を売りに来てくれる約束をしているのですぐにでも情報料は回収できるだろう。
何なら今回仕入れた分で回収できる可能性もある。
どれも色鮮やかで、夕食に花を添えてくれた。
今後は見た目でも楽しませてくれるはずだ。
「なるほどね、あんなところにダンジョンの出入り口があったなんて知らなかったわ。」
「そもそもあそこまで行く人がいないんだもの当然よ。でも。言い換えればあそこまで行けば新しいダンジョンがあるわけよね。腕が鳴るわ。」
「一つ聞きたいんだが、ダンジョンの出入り口って一つじゃないのか?」
「普通は一つだけど、まれに複数の出入り口から一つのダンジョンに入るような場所もあるわ。そういうダンジョンほど中が広くて複雑なんだけど、同じ場所に離れた場所から行けるってことは言い換えればダンジョンを経由すれば本来行き来できない場所にも行けるってことなのよね。今回見つかったダンジョンがまさにそれで、本当なら大きく迂回しなければいけなかった北の大山脈の向こう側に短い時間で行けるようになったわけ。もちろん普通に行くよりも危険だし、馬車が通れるわけじゃないから大量の荷物を運べるわけじゃないけど、それでも少ない荷物なら運び込めるから今回みたいなことができるようになるのよ。」
「つまりショートカットできるようになったわけか。ダンジョン内がどんな風になっているかはある程度分かっているんだよな?」
「情報はあるんだけど、今までに見つかっている入り口が主に北方側だったから詳しくはまだね。」
今回見つかったその入り口というのは廃鉱山から山沿いに一時間ほど馬車で走った所にあるそうだ。
あの夫婦はそこを経由して整備された街道を南下、そしてこの街に到着したらしい。
よくまぁあの荷物を街に運び込めたなと思ったら、ちょうど廃鉱山に物資を運んだ馬車が通りかかって乗せてもらったんだとか。
販路を広げるために魔物のはびこるダンジョンの中を行くとか、いくら護衛がいるとはいえよく決断したもんだなぁ。
それだけあの奥さんの肝が据わっているってことなんだろうけど、俺には無理そうだ。
「まさかレール用に整備した街道を本来の形で使う日が来るとは思わなかったが、今後は昔みたいに街道沿いに宿ができたりするのかもしれないな。」
「それはどれだけ利便性が高いかによるわね。ダンジョンが危険だったらそもそも物を運ぶことなんてできないし、なにより場所が悪いわ。鉱山に向かう途中の道を外れてそこから悪路を進まないといけないわけだし、まぁ行くけど。」
「行くのかよ。」
「当然じゃないだって新しいダンジョンよ?最初は調査が必要だけど、大丈夫そうならほかの冒険者もこぞって行くんじゃないかしら。」
冒険者にとってダンジョンは飯のタネ。
新しく金儲けの可能性が見つかったとなれば喜んで行くやつは大勢いるだろう。
それにダンジョン内がそれなりに解明されていくと、今度は中を通りたがる一般人を護衛して生計を立てるようなやつも出てくるかもしれない。
今はまだ北方について何も知らないが、今後は新しい金儲けができるかもしれない。
例えば本来は接点のほとんどない南方の品向こうに売りに行くとか。
通常であれば手に入らない食べ物も、保冷箱があればそれなりに保存できるしいざとなれば冷凍してしまう手もある。
北国で食べる南方の果物なんていったいどれだけの値段が付くんだろうか。
もしそれなりの儲けが出るのであれば、バーンと一緒に届けに行くという手もある。
おぉ、なんだかすごい金儲けができるような気がしてきたぞ。
「いつ出るんだ?」
「出発は明日、期間は一週間ぐらいじゃないかしら。シロウさんには悪いんだけどエリザとキキ、ウーラさんにも来てほしいんだけどいいかしら。」
「本人がいいと言えば問題ないぞ。」
「なら問題ないわね、一度廃鉱山まで移動してそこから山脈沿いに移動。廃鉱山で物資を補給すればあまり大荷物にならないんじゃないかしら。」
「それはつまりバーンに運んでもらえってことだな?」
「あはは、ばれた?」
「まぁいいさ。北への販路が開かれれば新しい商売の可能性が上がる。しっかり調査してくるんだぞ。」
「まかせといて!」
ということで北への販路を確保するべく、冒険者による調査隊が結成されることになった。
俺は一足先に物資を運びつつ状況を廃鉱山に伝えに行く。
今まではよほどのことがなければだれも寄り付かない場所だったが、今後はここが中継地点になるかもしれない。
もちろん彼らが静かな生活を望んでいる以上、中に入らないようにするとかの対策は取るつもりだ。
しかしながら、それをしてなお中に入る不届き者もいるわけで。
そういうやつをどうするかが今後の課題だな。
「わかりました。しばらくはあまり外に出ないよう、中の者に伝えておきます。」
「静かなほうがいいだろうに、迷惑をかけるな。」
「大丈夫です。いつまでも奥に引きこもっているわけにはいきませんから。」
「マウジーはそう考えているのか。」
「ボスのおかげで我々の生活は劇的に改善しました。もう少ない食料を分け合う必要もありませんし、よその者に怯えて生きていく必要もありません。ここがボスの大事な場所である以上、そこを守るのが我々の役目です。そのために姿をさらせと言われれば喜んで出ますよ。」
鼠人族は本来外に出て何かをするということはしない。
しかしながら、身体的ポテンシャルは高いのでマウジーのように魔物にも後れを取らず戦える者も少なからずいる。
本当にここが交易の中心になるのであれば、それこそ前に出て色々と活動してもらえるほうが助かるんだよなぁ。
今は自分用に使っている倉庫を一般に開放して使用料を取ったり、店を開いて商売することだってできる。
もちろん魔力水のことは門外不出だが、これを機に外との接点を持つというのは悪いことではないと思うんだが。
でもまぁそれを決めるのは俺じゃない。
彼らの中で話し合いをしてしっかりと答えを出してからでも遅くないだろう。
荷物を置き、バーンの背に乗って少しだけ北の大山脈の方に足を延ばす。
過去に何度か飛んだことはあるのだが、改めてこの先に集落があることを知り飛んでみたくなった。
「結構風がきついな。」
「うん、トトはしっかりしがみついていてね!」
「あぁ。くれぐれも無茶な飛び方はしないでくれよ。」
大山脈は非常に広く、30分ほど飛んでも険しい山々の風景が変わることはなかった。
これだけ飛べばいつもなら街に帰ることができるのだが、同じ距離を飛んでも何もない。
いや、何もないわけではなく何度か巨大な魔物の姿も目撃している。
マンモスのような巨大なゾウのような魔物や、ワイバーンも見えた。
襲われることも覚悟したが、かなり上空だったからかスルーしてくれたようだ。
これだけ山が続けば、そりゃあ迂回するしかないよなぁ。
「戻るか。」
「うん、一回マウジーの所に戻って休憩していい?」
「あぁ、遅くなるし飯を食ってから帰るとしよう。」
バーンのガソリンは肉の塊。
確か氷室にまだ残っていたはずなので、それを食べてから戻ってもいいだろう。
くるりと旋回して元の方角へ戻ろうとしたその時だった。
ものすごく鋭い、いや冷たい視線のようなものを感じ慌てて眼下を見る。
切り立った山々の一角に、なにやら銀色に光るものがあった。
「あれは・・・。」
「おっきいカカ!」
俺にはよく見えなかったが、バーンはカカ、つまりグレイウルフだと思ったようだ。
おっきいていう言い方がまたあれだな。
あまり近づいて刺激するのもあれだし、おとなしくこの場を離れるほうがいいだろう。
「急ごう。」
俺の意図をくみ取ったのか返事はなかったがバーンが速度を上げあっという間に見えなくなってしまった。
これまでいろいろと調べてはきたが北方に関しては全くと言っていいほど縁がなかったんだよなぁ。
だがここにきて新しい縁が生まれ、そして新たな可能性が出てきた。
エリザたちが詳しく調べてくれている。
その間に俺は俺でいろいろと調べておくとしよう。
向こうの名産は何か、そして何が売れそうなのか。
調べるのは好きだ。
調べれば調べるほど金が生まれる、これを惜しむ理由はない。
新たな販路拡大に向け気合を入れつつ、俺達は風の吹き荒れる北大山脈を後にするのだった。
別に秘匿にされているわけでもなく、冒険者ギルドには通達済み。
それでも知っている人は限りなく少ないので有効に使うことでアドバンテージを得ることはできるだろう。
約束は約束なので、買い付けた食器のほかに情報料として金貨4枚を足した金貨10枚を奥様に支払い二人は屋敷を後にした。
最後の最後まで恐縮しきりだったが、今後も食器を売りに来てくれる約束をしているのですぐにでも情報料は回収できるだろう。
何なら今回仕入れた分で回収できる可能性もある。
どれも色鮮やかで、夕食に花を添えてくれた。
今後は見た目でも楽しませてくれるはずだ。
「なるほどね、あんなところにダンジョンの出入り口があったなんて知らなかったわ。」
「そもそもあそこまで行く人がいないんだもの当然よ。でも。言い換えればあそこまで行けば新しいダンジョンがあるわけよね。腕が鳴るわ。」
「一つ聞きたいんだが、ダンジョンの出入り口って一つじゃないのか?」
「普通は一つだけど、まれに複数の出入り口から一つのダンジョンに入るような場所もあるわ。そういうダンジョンほど中が広くて複雑なんだけど、同じ場所に離れた場所から行けるってことは言い換えればダンジョンを経由すれば本来行き来できない場所にも行けるってことなのよね。今回見つかったダンジョンがまさにそれで、本当なら大きく迂回しなければいけなかった北の大山脈の向こう側に短い時間で行けるようになったわけ。もちろん普通に行くよりも危険だし、馬車が通れるわけじゃないから大量の荷物を運べるわけじゃないけど、それでも少ない荷物なら運び込めるから今回みたいなことができるようになるのよ。」
「つまりショートカットできるようになったわけか。ダンジョン内がどんな風になっているかはある程度分かっているんだよな?」
「情報はあるんだけど、今までに見つかっている入り口が主に北方側だったから詳しくはまだね。」
今回見つかったその入り口というのは廃鉱山から山沿いに一時間ほど馬車で走った所にあるそうだ。
あの夫婦はそこを経由して整備された街道を南下、そしてこの街に到着したらしい。
よくまぁあの荷物を街に運び込めたなと思ったら、ちょうど廃鉱山に物資を運んだ馬車が通りかかって乗せてもらったんだとか。
販路を広げるために魔物のはびこるダンジョンの中を行くとか、いくら護衛がいるとはいえよく決断したもんだなぁ。
それだけあの奥さんの肝が据わっているってことなんだろうけど、俺には無理そうだ。
「まさかレール用に整備した街道を本来の形で使う日が来るとは思わなかったが、今後は昔みたいに街道沿いに宿ができたりするのかもしれないな。」
「それはどれだけ利便性が高いかによるわね。ダンジョンが危険だったらそもそも物を運ぶことなんてできないし、なにより場所が悪いわ。鉱山に向かう途中の道を外れてそこから悪路を進まないといけないわけだし、まぁ行くけど。」
「行くのかよ。」
「当然じゃないだって新しいダンジョンよ?最初は調査が必要だけど、大丈夫そうならほかの冒険者もこぞって行くんじゃないかしら。」
冒険者にとってダンジョンは飯のタネ。
新しく金儲けの可能性が見つかったとなれば喜んで行くやつは大勢いるだろう。
それにダンジョン内がそれなりに解明されていくと、今度は中を通りたがる一般人を護衛して生計を立てるようなやつも出てくるかもしれない。
今はまだ北方について何も知らないが、今後は新しい金儲けができるかもしれない。
例えば本来は接点のほとんどない南方の品向こうに売りに行くとか。
通常であれば手に入らない食べ物も、保冷箱があればそれなりに保存できるしいざとなれば冷凍してしまう手もある。
北国で食べる南方の果物なんていったいどれだけの値段が付くんだろうか。
もしそれなりの儲けが出るのであれば、バーンと一緒に届けに行くという手もある。
おぉ、なんだかすごい金儲けができるような気がしてきたぞ。
「いつ出るんだ?」
「出発は明日、期間は一週間ぐらいじゃないかしら。シロウさんには悪いんだけどエリザとキキ、ウーラさんにも来てほしいんだけどいいかしら。」
「本人がいいと言えば問題ないぞ。」
「なら問題ないわね、一度廃鉱山まで移動してそこから山脈沿いに移動。廃鉱山で物資を補給すればあまり大荷物にならないんじゃないかしら。」
「それはつまりバーンに運んでもらえってことだな?」
「あはは、ばれた?」
「まぁいいさ。北への販路が開かれれば新しい商売の可能性が上がる。しっかり調査してくるんだぞ。」
「まかせといて!」
ということで北への販路を確保するべく、冒険者による調査隊が結成されることになった。
俺は一足先に物資を運びつつ状況を廃鉱山に伝えに行く。
今まではよほどのことがなければだれも寄り付かない場所だったが、今後はここが中継地点になるかもしれない。
もちろん彼らが静かな生活を望んでいる以上、中に入らないようにするとかの対策は取るつもりだ。
しかしながら、それをしてなお中に入る不届き者もいるわけで。
そういうやつをどうするかが今後の課題だな。
「わかりました。しばらくはあまり外に出ないよう、中の者に伝えておきます。」
「静かなほうがいいだろうに、迷惑をかけるな。」
「大丈夫です。いつまでも奥に引きこもっているわけにはいきませんから。」
「マウジーはそう考えているのか。」
「ボスのおかげで我々の生活は劇的に改善しました。もう少ない食料を分け合う必要もありませんし、よその者に怯えて生きていく必要もありません。ここがボスの大事な場所である以上、そこを守るのが我々の役目です。そのために姿をさらせと言われれば喜んで出ますよ。」
鼠人族は本来外に出て何かをするということはしない。
しかしながら、身体的ポテンシャルは高いのでマウジーのように魔物にも後れを取らず戦える者も少なからずいる。
本当にここが交易の中心になるのであれば、それこそ前に出て色々と活動してもらえるほうが助かるんだよなぁ。
今は自分用に使っている倉庫を一般に開放して使用料を取ったり、店を開いて商売することだってできる。
もちろん魔力水のことは門外不出だが、これを機に外との接点を持つというのは悪いことではないと思うんだが。
でもまぁそれを決めるのは俺じゃない。
彼らの中で話し合いをしてしっかりと答えを出してからでも遅くないだろう。
荷物を置き、バーンの背に乗って少しだけ北の大山脈の方に足を延ばす。
過去に何度か飛んだことはあるのだが、改めてこの先に集落があることを知り飛んでみたくなった。
「結構風がきついな。」
「うん、トトはしっかりしがみついていてね!」
「あぁ。くれぐれも無茶な飛び方はしないでくれよ。」
大山脈は非常に広く、30分ほど飛んでも険しい山々の風景が変わることはなかった。
これだけ飛べばいつもなら街に帰ることができるのだが、同じ距離を飛んでも何もない。
いや、何もないわけではなく何度か巨大な魔物の姿も目撃している。
マンモスのような巨大なゾウのような魔物や、ワイバーンも見えた。
襲われることも覚悟したが、かなり上空だったからかスルーしてくれたようだ。
これだけ山が続けば、そりゃあ迂回するしかないよなぁ。
「戻るか。」
「うん、一回マウジーの所に戻って休憩していい?」
「あぁ、遅くなるし飯を食ってから帰るとしよう。」
バーンのガソリンは肉の塊。
確か氷室にまだ残っていたはずなので、それを食べてから戻ってもいいだろう。
くるりと旋回して元の方角へ戻ろうとしたその時だった。
ものすごく鋭い、いや冷たい視線のようなものを感じ慌てて眼下を見る。
切り立った山々の一角に、なにやら銀色に光るものがあった。
「あれは・・・。」
「おっきいカカ!」
俺にはよく見えなかったが、バーンはカカ、つまりグレイウルフだと思ったようだ。
おっきいていう言い方がまたあれだな。
あまり近づいて刺激するのもあれだし、おとなしくこの場を離れるほうがいいだろう。
「急ごう。」
俺の意図をくみ取ったのか返事はなかったがバーンが速度を上げあっという間に見えなくなってしまった。
これまでいろいろと調べてはきたが北方に関しては全くと言っていいほど縁がなかったんだよなぁ。
だがここにきて新しい縁が生まれ、そして新たな可能性が出てきた。
エリザたちが詳しく調べてくれている。
その間に俺は俺でいろいろと調べておくとしよう。
向こうの名産は何か、そして何が売れそうなのか。
調べるのは好きだ。
調べれば調べるほど金が生まれる、これを惜しむ理由はない。
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