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1008.転売屋は調教師に出会う
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少しずつ秋の気配を感じる晩夏の頃。
そんな時期でも夏野菜は青々と茂り、特に豊作なのがオニトポテ。
芋が不作の時に植えたやつだったのだが、この夏は昨年を上回る収穫量で倉庫は山のようになっている。
幸い日持ちするので木箱につめて廃鉱山に運んでおけば冬まで十分食べていけるだろう。
この夏は麦も例年通りの収穫量との事なので昨年ほどの値上がりは無いだろうが、それでもコンスタントに売れてくれる優秀な食材だ。
少し寝かせて糖分を落ち着かせてからこの秋はフライドポテトにでもして売り出してやろうかと考えている。
スティック状でもいいしスライスしてもいい。
どちらも塩をかけて食うだけで美味いんだよなぁ。
そうなるとハンバーガー的な奴も食べたくなるわけで。
ブレットさんが正式に街でパン屋を開いてくれることになったので、こちらに来てもらった際にはそれようのパンを焼いてもらうとしよう。
今の所あのふかふか具合を出せるのはブレットさんにしか出来ないので、それはもう飛ぶように売れるはずだ。
はさむ具材は某チェーン店を真似すればいくらでも出てくる。
こういう時に一から考えなくていいのはありがたいよなぁ。
「ん?」
「レイが吠えていますね、この感じは魔物でしょうか。」
「この時間に来るとは思えないが、ちょっと様子を見てくる。」
魔物であればルフも吠えそうなものだが聞こえてくるのはレイの鳴き声のみ。
収穫の手を止め小走りで畑の入り口に向かうと、レイが体勢を低くして何かに向かって吠え続けていた。
その先に見えるのは同じグレイウルフ。
流れかとも考えたが、その隣に主人らしき女性の姿が見えるので違うんだろう。
そう楽観視していた次の瞬間、その女性が腰にぶら下げた剣を抜きあろう事かレイに向かって突き出した。
「おいおいおい!ちょっとまて!俺の子にいったい何をする気だ!」
慌てて駆け寄りルフと共にレイの前に立ちふさがる。
我関せずと言ったルフだったが、流石に娘の危機となると俺と同じタイミングで飛び出してきた。
「危ないですよ!」
「危ないのはそっちだ、いきなり剣を構えてどういうつもりだ?」
「それは野生のグレイウルフを駆除しようと・・・ってあれ?なついてる?」
「当たり前だろ。」
「え、でも隷属の首輪がありませんよね。」
「そんなものが無くてもこいつらとは意思疎通できている。誤解させたのなら申し訳ないが、こいつらは人に危害を加えることはしない。もっとも、それは自分に危害を加えてこなかったらの話だが。理解してもらえたならそろそろ剣を納めてくれないか?そっちのグレイウルフもな。」
レイとそいつは静かににらみ合ったまま、時折歯をむき出しにしている。
ルフは状況が悪化しないと察したのか、トコトコといつもの寝場所に戻って行ってしまった。
なんとまぁマイペースなことだ。
その様子に剣を構えていた女は毒気を抜かれたのか、手を下ろし静かに剣を納めた。
「ランダ、もう大丈夫だよ。」
「ほぉ、ランダというのか。いい毛並みだな。」
「私の相棒です。すみません、とんだ早とちりをしてしまって。」
「誤解を与えてしまったのはこちらの落ち度だ、気にしないでくれ。」
ランダと呼ばれたグレイウルフは主人の足にそっと頭をこすりつけてから上目遣いに主人を見る。
自分の狼を褒められたのがうれしかったのか、彼女もまたそんな狼の頭を優しく撫でてやった。
隷属の首輪が見えるが決して無理やり服従させている様子は無い。
そんな一人と一匹がうらやましいのか、レイもゴンゴンと頭をぶつけてくる。
結構痛い。
「はいはい、わかったわかった。」
「私、ヘルミーナっていいます。」
「俺はシロウ、この街で買取屋をしている。ここにはダンジョン目当てで来たのか?」
「私、調教師(テイマー)なんですけどランダ以外になかなか新しい子を服従させられなくて。それで、まずは実力をつけるために来ました。」
「テイマー、聞いたことはあるが会ったのは初めてだ。」
「昔はたくさんいたそうですけど、今はあまりいないみたいです。」
レイの頭を撫でながら簡単にテイマーという職業について教えてもらう。
簡単に言えば魔物を従えて戦う冒険者のようだ。
某ゲームのようにボールの中に入れることはできないが、苦楽を共にすることで強固な関係を築くことが出来るらしい。
本来魔獣は隷属の首輪が無いと懐かないと言われている、実際彼女の相棒であるランダの首にもそれがしっかりと巻かれていた。
別に必要ないような気もするが、本来はそれを使用しなければならないはず。
それがあることで他の住民や冒険者も、安心できるのだとか。
そういう意味ではレイの首には何も巻かれていないので、知らない人から見れば野良の魔物に勘違いされてしまうのも致し方ないだろう。
ちなみにルフは前に貰った別の首輪をつけているので、一応見た目的には隷属の首輪をつけているっぽく見えるんだよな。
「あの、一つ聞いてもいいですか?」
「ん?」
「どうして隷属の首輪無しで言うことを聞くんでしょう。その、コツとかあるんでしょうか。」
「後ろにいるルフはここに来たときに俺が助けてからの付き合いだし、レイはルフが生んだ子供でここでずっと暮らしている家族みたいなもんだ。だから隷属の首輪無しでも問題ないと俺は思っている。本来はつけたほうがいいんだろうが、道具に頼らなくても対話で良好な関係は築けると思っている。人間よりもずっと素直だし、お互いに裏切らないと分かっているから安心できる。な、レイ。」
「わふ!」
「すごいなぁ。私もランダの事は家族だと思っていますけど、首輪無しでここまで仲良しになれるかどうか。」
一度道具に頼ってしまっただけに、本当にお互いの事を想いあっているのか不安になっているんだろう。
そもそもテイマーという職業は魔獣と意思疎通をして本領を発揮するものではないのだろうか。
自分がそんな気持ちでは相棒も不安になってしまう。
彼らはそういうのに非常に敏感だからなぁ。
「まぁいきなりは無理かもしれないが俺は大丈夫だと思うぞ。なぁ、レイ。」
「わふ。」
「ランダ、本当に?」
「・・・。」
返事は無いが尻尾は雄弁に答えを語っている。
後は本人同士の問題だろう。
どうやらレイは彼(ランダ)の事が気になるようで、ゆっくり近づいては離れるのを繰り返している。
そういえば野良のグレイウルフとは遭遇しても、こうやって戦いあわない関係というのは初めてなのかもしれない。
折角の機会なので少し遊ばせてもらえるかと聞いてみたら快く承諾してくれた。
その代わりに街の事を色々と伝え、魔獣と一緒に泊まれる宿を紹介することに。
ルフは楽しそうにはしゃぐ娘を時々確認しながら、決して近づこうとはしなかった。
二匹とも恋路、という感じには見えないがお互いに悪い感じはしないようだ。
「すごい、グレイウルフのほかにロックバードやカニバフラワーなんかも従えているなんて。」
「残念ながら会話は出来ないからなんとなく雰囲気で感じているだけだし、どっちかっていうと持ちつ持たれつの関係ってだけで別に従えているわけじゃない。お互いに認め合っているだけだ。な?」
「カカカカ!」
「ババババ。」
「魔獣はともかく彼らは魔物、本来は人を襲うはずなのに何がそうさせるんでしょう。」
ヘルミーナさん的にはその辺が納得できないようで、しきりに首を傾げてはなにがきっかけなのかと質問攻めにあってしまった。
俺だって本当はどうなのかなんて知らないが、一つ言えるのは無理強いをせずお互いを尊重することが大切だと思っている。
魔物とはいえ、やれあぁしろこうしろと言われて気分がいいはず無いからな。
「まるで師匠みたいです。」
「師匠がいるのか?」
「我が家は代々テイマーの家系で、父も師匠の叔父も素晴らしい魔獣を従えています。訓練次第では魔獣だけでなくドラゴンも従わせることが出来ると聞いたその日から、ワイバーン騎士みたいになるのが私の夢なんです。」
「お、おぅ。」
目をキラキラと輝かせて自分の夢を語るヘルミーナさん。
何をするにも目標があるのはいいことだよな。
コレはアレだ、下手に関わるとろくなことにならない奴だ。
これ以上深く関わってはいけないと俺の第六感がそういっている。
そう察した俺は早々に彼女と別れるべくレイたちの所に戻ることにした。
なんとなくレイラをストーカーしていたキャンディーという冒険者を思い出す。
そういえば彼女はどこに行ったんだろうか、エリザのストーカーをしたのは覚えているんだが・・・。
「あ、トト!」
「バーン、なんでここに?」
「マウジーが相談したい事があるから来て欲しいって。」
「急ぎなのか?」
「うん、だからすぐ行こう!」
なんでこんなときに限って悪いことが重なってしまうのか。
いや、もしかするとこういう状況が悪いことを引き寄せているのかもしれない。
とりあえずヘルミーナさんには早急に退場してもらって、あまり刺激を与えないようにしなければ。
「悪い急用ができた。レイ、楽しかったか?」
「わふ!」
「ってことで宿はさっき言った場所がお勧めだ。ダンジョンで何か見つけたら俺の店で高く買えるかもしれない、それじゃあまたな!」
楽しそうに遊んでいたレイを強引に引き離し、『はいさようなら』という感じで彼女達と別れる。
とりあえず見えない場所まで移動すれば何の問題も無いはず。
まったく、間が悪いというかなというか。
別にバーンもマウジーも悪くないのだが、どうしてもそんな風に思ってしまう。
「トト、行くよ!」
「ちょっと待て今はまだ!」
「お肉が待ってるんだから待てない!」
「あ、こら!」
強引に俺の腕を引っ張りまるで親が子供を持ち上げるかのように脇の下にバーンの両手が差し込まれた次の瞬間。
俺の体は空高く放り投げられ、あっという間に地上から遠ざかっていく。
上昇が下降に変わる寸前にストンと跨る感じでバーンの背中に着地した。
最後に見たのは信じられないというヘルミーナさんの顔。
レイがあんなに楽しそうにしているのは見たことが無かっただけに出来れば穏便に関係を継続したかったのだが、その目論見はたった一回のイレギュラーによって無残にも散ってしまった。
ワイバーン騎士の話をするときのあの顔はガチで憧れている感じだったもんなぁ。
戻ったらどんな風になるのか、正直考えたくも無い。
「はぁ。」
「どうしたの、トト。」
「なんでもない。ちょっと面倒なことになりそうだなと思っただけだ。」
「そういう気分のときは美味しいお肉をいっぱい食べると元気になるよ!」
「そうだな。」
「マウジーがブラックホーンをまた仕留めたんだって!今日はいっぱい食べようね!」
頭の中がお肉でいっぱいのバーン。
彼は彼なりに俺を励ましてくれているようだが、到着までの間どうやって彼女に対処しようかと頭を悩ませ続けるのだった。
そんな時期でも夏野菜は青々と茂り、特に豊作なのがオニトポテ。
芋が不作の時に植えたやつだったのだが、この夏は昨年を上回る収穫量で倉庫は山のようになっている。
幸い日持ちするので木箱につめて廃鉱山に運んでおけば冬まで十分食べていけるだろう。
この夏は麦も例年通りの収穫量との事なので昨年ほどの値上がりは無いだろうが、それでもコンスタントに売れてくれる優秀な食材だ。
少し寝かせて糖分を落ち着かせてからこの秋はフライドポテトにでもして売り出してやろうかと考えている。
スティック状でもいいしスライスしてもいい。
どちらも塩をかけて食うだけで美味いんだよなぁ。
そうなるとハンバーガー的な奴も食べたくなるわけで。
ブレットさんが正式に街でパン屋を開いてくれることになったので、こちらに来てもらった際にはそれようのパンを焼いてもらうとしよう。
今の所あのふかふか具合を出せるのはブレットさんにしか出来ないので、それはもう飛ぶように売れるはずだ。
はさむ具材は某チェーン店を真似すればいくらでも出てくる。
こういう時に一から考えなくていいのはありがたいよなぁ。
「ん?」
「レイが吠えていますね、この感じは魔物でしょうか。」
「この時間に来るとは思えないが、ちょっと様子を見てくる。」
魔物であればルフも吠えそうなものだが聞こえてくるのはレイの鳴き声のみ。
収穫の手を止め小走りで畑の入り口に向かうと、レイが体勢を低くして何かに向かって吠え続けていた。
その先に見えるのは同じグレイウルフ。
流れかとも考えたが、その隣に主人らしき女性の姿が見えるので違うんだろう。
そう楽観視していた次の瞬間、その女性が腰にぶら下げた剣を抜きあろう事かレイに向かって突き出した。
「おいおいおい!ちょっとまて!俺の子にいったい何をする気だ!」
慌てて駆け寄りルフと共にレイの前に立ちふさがる。
我関せずと言ったルフだったが、流石に娘の危機となると俺と同じタイミングで飛び出してきた。
「危ないですよ!」
「危ないのはそっちだ、いきなり剣を構えてどういうつもりだ?」
「それは野生のグレイウルフを駆除しようと・・・ってあれ?なついてる?」
「当たり前だろ。」
「え、でも隷属の首輪がありませんよね。」
「そんなものが無くてもこいつらとは意思疎通できている。誤解させたのなら申し訳ないが、こいつらは人に危害を加えることはしない。もっとも、それは自分に危害を加えてこなかったらの話だが。理解してもらえたならそろそろ剣を納めてくれないか?そっちのグレイウルフもな。」
レイとそいつは静かににらみ合ったまま、時折歯をむき出しにしている。
ルフは状況が悪化しないと察したのか、トコトコといつもの寝場所に戻って行ってしまった。
なんとまぁマイペースなことだ。
その様子に剣を構えていた女は毒気を抜かれたのか、手を下ろし静かに剣を納めた。
「ランダ、もう大丈夫だよ。」
「ほぉ、ランダというのか。いい毛並みだな。」
「私の相棒です。すみません、とんだ早とちりをしてしまって。」
「誤解を与えてしまったのはこちらの落ち度だ、気にしないでくれ。」
ランダと呼ばれたグレイウルフは主人の足にそっと頭をこすりつけてから上目遣いに主人を見る。
自分の狼を褒められたのがうれしかったのか、彼女もまたそんな狼の頭を優しく撫でてやった。
隷属の首輪が見えるが決して無理やり服従させている様子は無い。
そんな一人と一匹がうらやましいのか、レイもゴンゴンと頭をぶつけてくる。
結構痛い。
「はいはい、わかったわかった。」
「私、ヘルミーナっていいます。」
「俺はシロウ、この街で買取屋をしている。ここにはダンジョン目当てで来たのか?」
「私、調教師(テイマー)なんですけどランダ以外になかなか新しい子を服従させられなくて。それで、まずは実力をつけるために来ました。」
「テイマー、聞いたことはあるが会ったのは初めてだ。」
「昔はたくさんいたそうですけど、今はあまりいないみたいです。」
レイの頭を撫でながら簡単にテイマーという職業について教えてもらう。
簡単に言えば魔物を従えて戦う冒険者のようだ。
某ゲームのようにボールの中に入れることはできないが、苦楽を共にすることで強固な関係を築くことが出来るらしい。
本来魔獣は隷属の首輪が無いと懐かないと言われている、実際彼女の相棒であるランダの首にもそれがしっかりと巻かれていた。
別に必要ないような気もするが、本来はそれを使用しなければならないはず。
それがあることで他の住民や冒険者も、安心できるのだとか。
そういう意味ではレイの首には何も巻かれていないので、知らない人から見れば野良の魔物に勘違いされてしまうのも致し方ないだろう。
ちなみにルフは前に貰った別の首輪をつけているので、一応見た目的には隷属の首輪をつけているっぽく見えるんだよな。
「あの、一つ聞いてもいいですか?」
「ん?」
「どうして隷属の首輪無しで言うことを聞くんでしょう。その、コツとかあるんでしょうか。」
「後ろにいるルフはここに来たときに俺が助けてからの付き合いだし、レイはルフが生んだ子供でここでずっと暮らしている家族みたいなもんだ。だから隷属の首輪無しでも問題ないと俺は思っている。本来はつけたほうがいいんだろうが、道具に頼らなくても対話で良好な関係は築けると思っている。人間よりもずっと素直だし、お互いに裏切らないと分かっているから安心できる。な、レイ。」
「わふ!」
「すごいなぁ。私もランダの事は家族だと思っていますけど、首輪無しでここまで仲良しになれるかどうか。」
一度道具に頼ってしまっただけに、本当にお互いの事を想いあっているのか不安になっているんだろう。
そもそもテイマーという職業は魔獣と意思疎通をして本領を発揮するものではないのだろうか。
自分がそんな気持ちでは相棒も不安になってしまう。
彼らはそういうのに非常に敏感だからなぁ。
「まぁいきなりは無理かもしれないが俺は大丈夫だと思うぞ。なぁ、レイ。」
「わふ。」
「ランダ、本当に?」
「・・・。」
返事は無いが尻尾は雄弁に答えを語っている。
後は本人同士の問題だろう。
どうやらレイは彼(ランダ)の事が気になるようで、ゆっくり近づいては離れるのを繰り返している。
そういえば野良のグレイウルフとは遭遇しても、こうやって戦いあわない関係というのは初めてなのかもしれない。
折角の機会なので少し遊ばせてもらえるかと聞いてみたら快く承諾してくれた。
その代わりに街の事を色々と伝え、魔獣と一緒に泊まれる宿を紹介することに。
ルフは楽しそうにはしゃぐ娘を時々確認しながら、決して近づこうとはしなかった。
二匹とも恋路、という感じには見えないがお互いに悪い感じはしないようだ。
「すごい、グレイウルフのほかにロックバードやカニバフラワーなんかも従えているなんて。」
「残念ながら会話は出来ないからなんとなく雰囲気で感じているだけだし、どっちかっていうと持ちつ持たれつの関係ってだけで別に従えているわけじゃない。お互いに認め合っているだけだ。な?」
「カカカカ!」
「ババババ。」
「魔獣はともかく彼らは魔物、本来は人を襲うはずなのに何がそうさせるんでしょう。」
ヘルミーナさん的にはその辺が納得できないようで、しきりに首を傾げてはなにがきっかけなのかと質問攻めにあってしまった。
俺だって本当はどうなのかなんて知らないが、一つ言えるのは無理強いをせずお互いを尊重することが大切だと思っている。
魔物とはいえ、やれあぁしろこうしろと言われて気分がいいはず無いからな。
「まるで師匠みたいです。」
「師匠がいるのか?」
「我が家は代々テイマーの家系で、父も師匠の叔父も素晴らしい魔獣を従えています。訓練次第では魔獣だけでなくドラゴンも従わせることが出来ると聞いたその日から、ワイバーン騎士みたいになるのが私の夢なんです。」
「お、おぅ。」
目をキラキラと輝かせて自分の夢を語るヘルミーナさん。
何をするにも目標があるのはいいことだよな。
コレはアレだ、下手に関わるとろくなことにならない奴だ。
これ以上深く関わってはいけないと俺の第六感がそういっている。
そう察した俺は早々に彼女と別れるべくレイたちの所に戻ることにした。
なんとなくレイラをストーカーしていたキャンディーという冒険者を思い出す。
そういえば彼女はどこに行ったんだろうか、エリザのストーカーをしたのは覚えているんだが・・・。
「あ、トト!」
「バーン、なんでここに?」
「マウジーが相談したい事があるから来て欲しいって。」
「急ぎなのか?」
「うん、だからすぐ行こう!」
なんでこんなときに限って悪いことが重なってしまうのか。
いや、もしかするとこういう状況が悪いことを引き寄せているのかもしれない。
とりあえずヘルミーナさんには早急に退場してもらって、あまり刺激を与えないようにしなければ。
「悪い急用ができた。レイ、楽しかったか?」
「わふ!」
「ってことで宿はさっき言った場所がお勧めだ。ダンジョンで何か見つけたら俺の店で高く買えるかもしれない、それじゃあまたな!」
楽しそうに遊んでいたレイを強引に引き離し、『はいさようなら』という感じで彼女達と別れる。
とりあえず見えない場所まで移動すれば何の問題も無いはず。
まったく、間が悪いというかなというか。
別にバーンもマウジーも悪くないのだが、どうしてもそんな風に思ってしまう。
「トト、行くよ!」
「ちょっと待て今はまだ!」
「お肉が待ってるんだから待てない!」
「あ、こら!」
強引に俺の腕を引っ張りまるで親が子供を持ち上げるかのように脇の下にバーンの両手が差し込まれた次の瞬間。
俺の体は空高く放り投げられ、あっという間に地上から遠ざかっていく。
上昇が下降に変わる寸前にストンと跨る感じでバーンの背中に着地した。
最後に見たのは信じられないというヘルミーナさんの顔。
レイがあんなに楽しそうにしているのは見たことが無かっただけに出来れば穏便に関係を継続したかったのだが、その目論見はたった一回のイレギュラーによって無残にも散ってしまった。
ワイバーン騎士の話をするときのあの顔はガチで憧れている感じだったもんなぁ。
戻ったらどんな風になるのか、正直考えたくも無い。
「はぁ。」
「どうしたの、トト。」
「なんでもない。ちょっと面倒なことになりそうだなと思っただけだ。」
「そういう気分のときは美味しいお肉をいっぱい食べると元気になるよ!」
「そうだな。」
「マウジーがブラックホーンをまた仕留めたんだって!今日はいっぱい食べようね!」
頭の中がお肉でいっぱいのバーン。
彼は彼なりに俺を励ましてくれているようだが、到着までの間どうやって彼女に対処しようかと頭を悩ませ続けるのだった。
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