1,009 / 1,027
1006.転売屋はパンを買う
しおりを挟む
夏といえば鰻。
残暑厳しい夏を越える為にも栄養満点のオイルヒュドラは冒険者や労働者に広く受け入れられることになった。
最初は見た目から毛嫌いされていたというのに美味しいと分かった途端にこの反応。
まぁ、美味いんだから仕方がない。
甘めのタレをたっぷりつけて焼くとそれはもういい香が広がるうえに、それがたっぷり掛かったコメと一緒に食べればそれはもう言葉に出来ない美味さが広がる。
コレはヤバイ。
カニ並みにヤバイ。
ってことで、今までの教訓を生かして乱獲されないよう冒険者ギルドでしっかりと管理してもらうことになった。
幸い繁殖方法に関しても図書館にいけば簡単に調べることが出来たので、今後はそれを専門にする冒険者も出てくることだろう。
ダンジョンの外ではエサだ何だと大変だが、ダンジョンの中であれば勝手に成長してくれる。
もちろんエサを与えればそれ以上に成長するので育てるのにはもってこいの環境と言ってもいいだろう。
そんなわけで街は空前のオイルヒュドラブームというわけだ。
「あー、腹減った。」
「お疲れ様です。今日もオイルヒュドラがあるみたいですけど食べます?」
「流石に連日は飽きるな、たまにはパンが食べたい。」
「ふふ、ご主人様ならそう言うと思ってました。」
「そうか?」
「おコメも美味しいですけど、やっぱりパンの美味しさは何物にもかえられませんよね。」
朝の一仕事を終え少し早く食堂に向かうと、同じく製薬に一区切りついたでだろうアネットが美味しそうにパンを頬張っていた。
最近コメばかりだったからなぁ、そんなに美味しそうに食べられると俺も欲しくなるじゃないか。
「ハワード、俺の分のパンはあるか?」
「申し訳ありません、アネット様の分で最後でして。夕食の食材と一緒に買いに行く予定だったのですが・・・。」
「それなら自分で買ってくるか。悪い今日は外で食べてくるが夕食は?」
「今日はエリザ様のリクエストでビーフシチューです。」
「ならますますパンがいるな、そっちは任された、夕方までには戻る。」
「宜しくお願いします。」
ビーフシチューといえばパンだろう。
それも長いバゲットが理想だ。
この世界のパンはどちらかといえばハード形が多く、元の世界で当たり前のようにあった食パンのような柔らかいものにはまだ出会っていない。
最初こそ戸惑ったものの、よく考えればハード形のパンの方が好きなのであまり困ったことはなかったが結構硬いんだよなぁ。
サンドイッチにする奴とかはその中でも比較的柔らかいやつを選んで買っている。
この街にあるパン屋は全部で三件。
そのそれぞれに特色があるのでいつになっても飽きることはない。
今日の献立を考えると大通りのパン屋がピッタリか。
でもその前に自分の腹ごしらえが先だな。
まだまだ暑い日差しの中露店に足を伸ばすと、珍しくパンの香りが漂ってきた。
小麦の焼ける独特のにおい。
でも焼くには大型の釜が必要なだけにここでパンの焼ける匂いをかぐのは珍しいなぁ。
匂いに釣られて歩みを進めると到着したのはおなじみの場所。
「よぉ兄ちゃん。」
「あれ?おっちゃんパンなんて焼くのか?」
「これは甥っ子の焼いたパンだ。見習いに毛の生えた感じでまだまだ売れ行きがよくないんでな、ここでついでに売ることにしたんだよ。どうだ、一本。」
「折角だしいくつか貰おうかな、ちょうど昼飯探してたんだ。」
匂いの発生源はまさかのおっちゃんの店。
いつも並んでいる保存食の隣に美味しそうなパンがいくつも並んでいた。
そういえばオバちゃんはミラの顔を見に来ているので店は休みにするって言ってたな。
俺も店を出していないので空きスペースが出来ており、そこを使わせてもらっているようだ。
それにしてもたくさんなるなぁ。
「お勧めはうちのチーズ入りのパンと、こっちのベーコンを挟んだ奴だな。」
「へぇ、美味そうだ。」
ちょうど欲しかったバゲットもあったのであわせて購入。
しめて銀貨2枚也。
少々割高だが、味が見合えば問題なし。
輸送費とかあるしどうしても高くなってしまうのは仕方ないだろう。
おっちゃんお勧めのパンはハード系の見た目ながら二つに割ると中に四角いチーズがゴロゴロ入っていた。
元の世界ほどではないが、それでもこの世界で見たパンの中では一番中がふわっとしている気がする。
「美味い!」
「だろ?パン屋になるなんて聞いたときは耳を疑ったもんだが、まぁ人様に出せるぐらいの品は作れるみたいだ。」
「店はないのか?」
「今は自分の家で焼いているだけだな。一応本人は自分の店を持ちたいみたいだが、この街で出すってのは大変だろ?新しい窯だっているし、何より兄ちゃんが空き家を探すのも大変だったんだ。あいつがここでやっていけるか正直不安がある。」
「確かに今は空き家不足だが、拡張工事が終われば店も出せるし何より人が増えれば追加のパン屋は必要だ。俺は売れると思うけどなぁ。」
「兄ちゃんにそこまで褒めてもらったのなら可能性はあるかも知れんな。まぁ図に乗らない程度に褒めておくよ。」
米食が広がったとは言うものの、まだまだパンの方が需要は多いし今後人口が増えればその分の需要を満たす必要が出てくる。
そうなればどこからかパン職人を連れてこないといけないわけだが、コレだけ美味しいパンが焼けるのならば十分勝算はあると思うんだがなぁ。
さっきのをぺろりと平らげてしまい、我慢出来ずに二つ目にも手を伸ばす。
ベーコンエピっぽいパンはペパペッパーの辛さがアクセントになっており、さっきとは違う感じでなお美味しかった。
コレなら全部買い占めてもいいぐらいだが、それをしてしまうと折角の美味しさが広まらないので我慢して半分だけにした俺を褒めてやりたい。
「「「「美味しい!」」」」」
「この柔らかさ、癖になります。」
「私はバゲットの固さが気に入ったわ、焼くとカリカリサクサク。シチューにつけるとしっとりして美味しいの。」
「私はこっちのベーコンのパンが気に入りました。」
「王都でもコレだけのパンは中々見かけませんよ、ねぇお姉さま。」
買い込んだパンは早速夕食で振舞われ、予想通り全員に受け入れられた。
普段から美味しいパンを食べ慣れていたはずのマリーさんやオリンピアの評価が高いのは中々にポイントが高い。
このパンなら毎日でも食べたくなる味だ。
「これが自分で作れたら最高なんですがねぇ。」
「やっぱり自分で焼きたいものなのか?」
「それはもちろん。でも窯やら寝かせる時間やらをその日の気候に合わせて調整しなきゃならないんです、俺にはムリですよ。」
「そうかしら、ハワードならできると思うけど。」
「エリザ様、そんなに褒めても肉は出ませんよ。」
「なんだ残念。」
肉目当てかよ!とツッコミを入れつつも俺もエリザの意見に同感だ。
ハワードならコレと同じまでは行かなくてもこれに近いものは作れそうなもんだけどなぁ。
もちろんそれを仕込む時間があればの話だが、今のハワードにその時間を作れというほうが酷というもの。
コレだけの人数分の食事をドーラさんと二人で仕込んでくれているんだ、その上パンもお願いするなんて申し訳ない。
これからどんどん食べる奴が増えていくわけだし、そうなったら厨房にあと一人は追加しないといけないだろう。
幸いリラが屋敷の仕事をしながら手伝ってくれているので将来はそっちをお願いしてもいいかもしれない。
もちろん本人が別のことをしたいというのならば応援するけどな。
「しばらくはおっちゃんの店で販売するらしいから欲しいものがあったら買いに行ってやってくれ。」
「わかりました。でも残念ですね、この味なら今すぐ店を出しても売れそうなのに。」
「街に空き店舗がありませんから。」
「俺もそれは思ってるんだがミラの言うように空き店舗がないんだよなぁ。とはいえ、この職人を逃す手はないし、いっそのこと抱え込んでしまおうかとも思っている。」
「抱え込む?」
「本人は自分の店を持ちたがっているわけだしそのためには金が要る。それならうちで簡易の工房を作ってそこでパンを焼いてもらうんだ。幸い畑にはまだ空きスペースはあるし、寝泊りは街の中でして貰って作るときだけそっちに移動してもらえばいい。もちろん売上げに応じた見返りは貰うが、拡張工事が終わって店を出せるようになればそこに移動してもらえば今後もこの美味いパンが食えるだろ。」
もちろん本人がそれを承諾したらの話だが、ぶっちゃけ金を積んででも来てもらいたいと思っている。
このパンは売れる、そして受け入れられる。
今のうちにつばをつけておけば今後も美味しいパンを食べられるというわけだ。
「シロウがそこまで気に入るなんてよっぽどね。」
「いっそのことうちで雇いますか?」
「いやいや、それはまた違うだろう。自分で店を出すからこそやりがいがあるってもんだ。」
「そうでしょうか。」
「・・・多分。」
「なんで急に自信なくなるのよ。」
「雇われの方が安心するって奴を何人も見ているからなぁ。」
アネットをはじめアグリやメルディも自分で店を持つよりも雇われているほうがいいと言っている。
向上心がないわけではないのだが安心感が違うんだろう。
俺としてはそのほうがありがたいので引き続き働きやすい環境を作っていくつもりだ。
「お館様の読みでは次に来るのはパンですか、それに合う料理を考えないといけませんね。」
「いやいや、今でも十分美味いって。」
「いえ、このパンに合うとなるとまた味付けを考えないといけません。お館様の事ですからまた新しい料理を考案しそうですし。」
「それが楽しみよね。」
「えぇ、次はどんな料理なんでしょうか。」
エリザとハワードが二人して何かに期待しているようだが、そこまでは考えていないんだけどなぁ。
パン食は十分流通しているし、今更それが広がるとは思えない。
もちろん受け入れられるとは思うがそれとコレとは話が別だ。
ま、とりあえず明日この話をおっちゃんに伝えてから考えるとしよう。
売れるよりもまず自分の腹が満たされる、それが一番さ。
残暑厳しい夏を越える為にも栄養満点のオイルヒュドラは冒険者や労働者に広く受け入れられることになった。
最初は見た目から毛嫌いされていたというのに美味しいと分かった途端にこの反応。
まぁ、美味いんだから仕方がない。
甘めのタレをたっぷりつけて焼くとそれはもういい香が広がるうえに、それがたっぷり掛かったコメと一緒に食べればそれはもう言葉に出来ない美味さが広がる。
コレはヤバイ。
カニ並みにヤバイ。
ってことで、今までの教訓を生かして乱獲されないよう冒険者ギルドでしっかりと管理してもらうことになった。
幸い繁殖方法に関しても図書館にいけば簡単に調べることが出来たので、今後はそれを専門にする冒険者も出てくることだろう。
ダンジョンの外ではエサだ何だと大変だが、ダンジョンの中であれば勝手に成長してくれる。
もちろんエサを与えればそれ以上に成長するので育てるのにはもってこいの環境と言ってもいいだろう。
そんなわけで街は空前のオイルヒュドラブームというわけだ。
「あー、腹減った。」
「お疲れ様です。今日もオイルヒュドラがあるみたいですけど食べます?」
「流石に連日は飽きるな、たまにはパンが食べたい。」
「ふふ、ご主人様ならそう言うと思ってました。」
「そうか?」
「おコメも美味しいですけど、やっぱりパンの美味しさは何物にもかえられませんよね。」
朝の一仕事を終え少し早く食堂に向かうと、同じく製薬に一区切りついたでだろうアネットが美味しそうにパンを頬張っていた。
最近コメばかりだったからなぁ、そんなに美味しそうに食べられると俺も欲しくなるじゃないか。
「ハワード、俺の分のパンはあるか?」
「申し訳ありません、アネット様の分で最後でして。夕食の食材と一緒に買いに行く予定だったのですが・・・。」
「それなら自分で買ってくるか。悪い今日は外で食べてくるが夕食は?」
「今日はエリザ様のリクエストでビーフシチューです。」
「ならますますパンがいるな、そっちは任された、夕方までには戻る。」
「宜しくお願いします。」
ビーフシチューといえばパンだろう。
それも長いバゲットが理想だ。
この世界のパンはどちらかといえばハード形が多く、元の世界で当たり前のようにあった食パンのような柔らかいものにはまだ出会っていない。
最初こそ戸惑ったものの、よく考えればハード形のパンの方が好きなのであまり困ったことはなかったが結構硬いんだよなぁ。
サンドイッチにする奴とかはその中でも比較的柔らかいやつを選んで買っている。
この街にあるパン屋は全部で三件。
そのそれぞれに特色があるのでいつになっても飽きることはない。
今日の献立を考えると大通りのパン屋がピッタリか。
でもその前に自分の腹ごしらえが先だな。
まだまだ暑い日差しの中露店に足を伸ばすと、珍しくパンの香りが漂ってきた。
小麦の焼ける独特のにおい。
でも焼くには大型の釜が必要なだけにここでパンの焼ける匂いをかぐのは珍しいなぁ。
匂いに釣られて歩みを進めると到着したのはおなじみの場所。
「よぉ兄ちゃん。」
「あれ?おっちゃんパンなんて焼くのか?」
「これは甥っ子の焼いたパンだ。見習いに毛の生えた感じでまだまだ売れ行きがよくないんでな、ここでついでに売ることにしたんだよ。どうだ、一本。」
「折角だしいくつか貰おうかな、ちょうど昼飯探してたんだ。」
匂いの発生源はまさかのおっちゃんの店。
いつも並んでいる保存食の隣に美味しそうなパンがいくつも並んでいた。
そういえばオバちゃんはミラの顔を見に来ているので店は休みにするって言ってたな。
俺も店を出していないので空きスペースが出来ており、そこを使わせてもらっているようだ。
それにしてもたくさんなるなぁ。
「お勧めはうちのチーズ入りのパンと、こっちのベーコンを挟んだ奴だな。」
「へぇ、美味そうだ。」
ちょうど欲しかったバゲットもあったのであわせて購入。
しめて銀貨2枚也。
少々割高だが、味が見合えば問題なし。
輸送費とかあるしどうしても高くなってしまうのは仕方ないだろう。
おっちゃんお勧めのパンはハード系の見た目ながら二つに割ると中に四角いチーズがゴロゴロ入っていた。
元の世界ほどではないが、それでもこの世界で見たパンの中では一番中がふわっとしている気がする。
「美味い!」
「だろ?パン屋になるなんて聞いたときは耳を疑ったもんだが、まぁ人様に出せるぐらいの品は作れるみたいだ。」
「店はないのか?」
「今は自分の家で焼いているだけだな。一応本人は自分の店を持ちたいみたいだが、この街で出すってのは大変だろ?新しい窯だっているし、何より兄ちゃんが空き家を探すのも大変だったんだ。あいつがここでやっていけるか正直不安がある。」
「確かに今は空き家不足だが、拡張工事が終われば店も出せるし何より人が増えれば追加のパン屋は必要だ。俺は売れると思うけどなぁ。」
「兄ちゃんにそこまで褒めてもらったのなら可能性はあるかも知れんな。まぁ図に乗らない程度に褒めておくよ。」
米食が広がったとは言うものの、まだまだパンの方が需要は多いし今後人口が増えればその分の需要を満たす必要が出てくる。
そうなればどこからかパン職人を連れてこないといけないわけだが、コレだけ美味しいパンが焼けるのならば十分勝算はあると思うんだがなぁ。
さっきのをぺろりと平らげてしまい、我慢出来ずに二つ目にも手を伸ばす。
ベーコンエピっぽいパンはペパペッパーの辛さがアクセントになっており、さっきとは違う感じでなお美味しかった。
コレなら全部買い占めてもいいぐらいだが、それをしてしまうと折角の美味しさが広まらないので我慢して半分だけにした俺を褒めてやりたい。
「「「「美味しい!」」」」」
「この柔らかさ、癖になります。」
「私はバゲットの固さが気に入ったわ、焼くとカリカリサクサク。シチューにつけるとしっとりして美味しいの。」
「私はこっちのベーコンのパンが気に入りました。」
「王都でもコレだけのパンは中々見かけませんよ、ねぇお姉さま。」
買い込んだパンは早速夕食で振舞われ、予想通り全員に受け入れられた。
普段から美味しいパンを食べ慣れていたはずのマリーさんやオリンピアの評価が高いのは中々にポイントが高い。
このパンなら毎日でも食べたくなる味だ。
「これが自分で作れたら最高なんですがねぇ。」
「やっぱり自分で焼きたいものなのか?」
「それはもちろん。でも窯やら寝かせる時間やらをその日の気候に合わせて調整しなきゃならないんです、俺にはムリですよ。」
「そうかしら、ハワードならできると思うけど。」
「エリザ様、そんなに褒めても肉は出ませんよ。」
「なんだ残念。」
肉目当てかよ!とツッコミを入れつつも俺もエリザの意見に同感だ。
ハワードならコレと同じまでは行かなくてもこれに近いものは作れそうなもんだけどなぁ。
もちろんそれを仕込む時間があればの話だが、今のハワードにその時間を作れというほうが酷というもの。
コレだけの人数分の食事をドーラさんと二人で仕込んでくれているんだ、その上パンもお願いするなんて申し訳ない。
これからどんどん食べる奴が増えていくわけだし、そうなったら厨房にあと一人は追加しないといけないだろう。
幸いリラが屋敷の仕事をしながら手伝ってくれているので将来はそっちをお願いしてもいいかもしれない。
もちろん本人が別のことをしたいというのならば応援するけどな。
「しばらくはおっちゃんの店で販売するらしいから欲しいものがあったら買いに行ってやってくれ。」
「わかりました。でも残念ですね、この味なら今すぐ店を出しても売れそうなのに。」
「街に空き店舗がありませんから。」
「俺もそれは思ってるんだがミラの言うように空き店舗がないんだよなぁ。とはいえ、この職人を逃す手はないし、いっそのこと抱え込んでしまおうかとも思っている。」
「抱え込む?」
「本人は自分の店を持ちたがっているわけだしそのためには金が要る。それならうちで簡易の工房を作ってそこでパンを焼いてもらうんだ。幸い畑にはまだ空きスペースはあるし、寝泊りは街の中でして貰って作るときだけそっちに移動してもらえばいい。もちろん売上げに応じた見返りは貰うが、拡張工事が終わって店を出せるようになればそこに移動してもらえば今後もこの美味いパンが食えるだろ。」
もちろん本人がそれを承諾したらの話だが、ぶっちゃけ金を積んででも来てもらいたいと思っている。
このパンは売れる、そして受け入れられる。
今のうちにつばをつけておけば今後も美味しいパンを食べられるというわけだ。
「シロウがそこまで気に入るなんてよっぽどね。」
「いっそのことうちで雇いますか?」
「いやいや、それはまた違うだろう。自分で店を出すからこそやりがいがあるってもんだ。」
「そうでしょうか。」
「・・・多分。」
「なんで急に自信なくなるのよ。」
「雇われの方が安心するって奴を何人も見ているからなぁ。」
アネットをはじめアグリやメルディも自分で店を持つよりも雇われているほうがいいと言っている。
向上心がないわけではないのだが安心感が違うんだろう。
俺としてはそのほうがありがたいので引き続き働きやすい環境を作っていくつもりだ。
「お館様の読みでは次に来るのはパンですか、それに合う料理を考えないといけませんね。」
「いやいや、今でも十分美味いって。」
「いえ、このパンに合うとなるとまた味付けを考えないといけません。お館様の事ですからまた新しい料理を考案しそうですし。」
「それが楽しみよね。」
「えぇ、次はどんな料理なんでしょうか。」
エリザとハワードが二人して何かに期待しているようだが、そこまでは考えていないんだけどなぁ。
パン食は十分流通しているし、今更それが広がるとは思えない。
もちろん受け入れられるとは思うがそれとコレとは話が別だ。
ま、とりあえず明日この話をおっちゃんに伝えてから考えるとしよう。
売れるよりもまず自分の腹が満たされる、それが一番さ。
6
お気に入りに追加
328
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
愛していました。待っていました。でもさようなら。
彩柚月
ファンタジー
魔の森を挟んだ先の大きい街に出稼ぎに行った夫。待てども待てども帰らない夫を探しに妻は魔の森に脚を踏み入れた。
やっと辿り着いた先で見たあなたは、幸せそうでした。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる