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983.転売屋は香油を探す
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魔物コインは俺の予想を上回る勢いで人気を獲得し、魔物の種類によってはプレミア価格で取引されるようになっている。
提供数が決まっているので必然的に価格が高騰してしまうからなのだが、長い目で見れば常に安定供給されているのでいずれはこの価格も落ち着きを取り戻すだろう。
買取屋としては、安く買って高く売るだけで差額を得られるので高くなるのは有難い話だが、変に値段が上がると特定の人しか買えなくなるので結果として売れるまでの時間が長くなってしまう。
高くなりすぎるのも考えものってことだ。
「ということで、ヘアクリームに関しては出来るだけ供給量を多くしてこういった不本意な値上げを避けたいと思っている。調達はどんな感じだ?」
「ハニーホーネットの巣を発見し、全滅させないように少数個体を継続的に狩る事で安定的な供給量を確保しています。とはいえ量が取れませんので、目標個数を確保するにはおよそ一か月はかかるかと。」
「そうなると売り出しは秋になるか。遅れているネイルの販売ももうすぐだし、下手にバッティングさせるよりかはいいかもな。」
ほぼ毎日行われている夕食時の報告会。
魔物コインの流行を踏まえたうえで、19月の販売方針を決定しなければならない。
直近で決まっているのはネイルの販売。
薬莢ボトルの量産も完了し、全色セットの特別な箱も別途準備中。
販売価格は一本銀貨1枚で全8色用意している。
赤、ピンク、紫、黄、青、オレンジ、緑、白。
本来であれば今月20日の販売開始を予定していたのだが、陛下の滞在が思った以上に延びたのと魔物の襲撃のごたごたもあって致し方なく延長することにした。
普通なら販売延長となると問題になる事が多いのだが、今回は大々的に宣伝していなかったのも逆に良かったのかもしれない。
それに、婦人会もかなりいっぱいいっぱいだったので十日の余裕を持たせたことで作業も落ち着いて出来ているようだ。
だからこそ特別な箱の準備も出来ているんだけど。
「いよいよ販売ですね。」
「あぁ、開発期間を考えればかなり早い方だがそれでも長かった。」
「準備は万端、いつでも大丈夫です!」
オリンピアが両手に力を入れて気合を入れるポーズをする。
化粧品の販売にも慣れた所だけに、そろそろ新作の販売を経験させてもいいだろう。
前にも話したが販売当日の混乱は必至、それをどう対処するのか楽しみだ。
「ってことで、ネイルの方はギリギリまで連携を密にとって対応してくれ。ヘアクリームは引き続き材料の確保を最優先にして、入れ物をどうするのかも考えよう。」
「ハンドクリームと一緒だと紛らわしいしね。」
「そういう事。しかしアレだな、化粧品関係の販売がここまで続くとは思ってなかった。」
今までもそういう事はあったが、販売時期が被ることはなかったのでここまで問題にはならなかったのだが、実際それが起こってしまうとぶっちゃけめんどくさい。
ポジティブに考えれば色々思いつくのはいい事なのだが、それでもタイミングというものがある。
女達は受け入れてくれているものの、普通なら呆れられている所だろう。
「シロウ様の言葉を借りれば、思いついてしまったのですから仕方ありません。」
「ミラ様の言う通りです。こちらに来てまだ日は浅いですが、シロウ様がお金になる考えを形にしない事はありませんでした。」
「陛下にも匹敵する決断力と行動力、があるからこそ今の地位があるのは間違いありません。」
「因みにヘアクリームですが龍宮館にお願いしておりましたモニター試験の反応も良好、早くも予約注文が入っています。」
「街の奥様方も非常に喜んでおられるようですから街の半数以上は購入すると考えていいでしょう。こちらに関してはセーラと共に予約数を確認しながら販売個数を調整していきます。」
ミラだけでなくセーラさんとラフィムさんまで最近べた褒めしてくるので自分は仕事ができると誤解してしまいそうになるのだが、そのかわりにエリザが調子に乗らないよう諌めてくれるのでなんとか暴走しないですんでいる。
調子に乗らないよう自分でもしっかりしていかねば。
「そっちは宜しく頼む。化粧品関係はこれ以上業務を圧迫しないよう俺も気を付けるつもりだ。」
「大丈夫かしら。」
「・・・多分?」
「なによその微妙な返事は。まさか、また何か思いついたの!?」
エリザが信じられないという顔で俺の方を見てくる。
口の右横に夕食のソースが付いたままでそんな顔されてもなぁ。
まぁ、思いついたわけだけども。
「ご主人様、今ならまだ間に合います。」
「いや、犯罪とかじゃないから。それに今すぐ実現する物でもなし。」
「でもアナタの中ではお金になると判断したんですよね?」
「まぁなぁ。」
ヘアクリームを作るという話から始まり、それにあわせて色々と話を聞いているともう一つの可能性に気がついてしまった。
とはいえこっちに関してはクリームのように材料を含めて全てが未知数。
出来もしないことをするわけにもいかないし、なによりこれ以上化粧品関係を増やすとマリーさんの店がパンクしてしまう。
「それで何をするの?とりあえず聞くだけ聞いてあげるわ。」
「別にそこまでしなくてもいいんだが。」
「いいから言いなさいって、下手に寝かせて後々になっていきなり出されても困るのはこっちなんだから。」
「反論できねぇ。」
ドヤ顔のエリザに屈するのは不服だが、いつものようにいきなり話を持っていって迷惑かけるわけにも行かないんだよなぁ。
化粧品関係が渋滞している状況だからこそ、情報共有は大切だ。
期待半分呆れ半分の視線を浴びながら、ひとまず形になりそうなアイデアをアウトプットしていく。
頭で考えるよりも口に出した方が形になりやすい。
とりあえず考えを全部はきだした所で、小さく息を吐いた。
「香油ですか。」
「ヘアクリームのモニター結果を聞いてると、ここまで本格的じゃなくてもっと気軽に気分を変えられるものが欲しいって言う意見が結構あったんだよ。香水じゃ匂いがきつくなるが、香油なら揮発性が少ない分匂いは軽いし、それでいて香らないわけじゃない。冒険者とか、出先でさっと使うにはぴったりだと思うんだよな。」
「確かにヘアクリームはお風呂上りなど使用する場所に制限がありますから、ちょっと汗をかいたときとかに香り付けできるといいかもしれません。」
「そうかもしれないけど、別に香水でもいいわけでしょ?」
「もちろんそうなんだが、逆に匂いが気になるって意見もあった。それなら無香料のヘアクリームを作って、好きな香油をその後なじませるってのも面白いかもしれない。」
ヘアクリームよりも手軽で、香水よりも大人しいもの。
どうしても香水となると体臭をごまかす為に使われるため香りがきついものが多くなってしまうのだが、俺みたいにそれが苦手な人もいる。
そういう人にははじめから香のついているヘアクリームは使えなくなってしまうので、そういった層も取っていくのならば無香料という選択肢もあっていいだろう。
元々蜜蝋はほぼ無臭だし、オイルを工夫すれば香りのないものを作ることは可能なはず。
加えて、自分の好きな香りで使いたいっていう人も取り込めるというわけだ。
「となると香油を仕入れる必要があるわけですね。」
「そういうけど、この街で香油なんて聞いたことないわよ。ダンジョンで取れるって話もないし。」
「確か香付けするための成分を水蒸気で吸着して、それを冷やして分離させるって感じだったかと。」
「詳しいな、そういう機械はあるのか?」
「生憎製薬用の機材で流用するのは難しいと思います。とはいえ、それがどこに売っているのか見当もつかないんですけど・・・。」
うーむ、作り方自体はなんとなくわかってもそれを作る為の機材は手元にない。
ないのなら作ればいいってのがいつもの俺達だが、あいにくと精密機械を作るほどの実力はないんだよなぁ。
どうしたもんかと全員でウンウン唸りながら知恵を絞っていたときだった。
「話は聞かせてもらった。」
全員の視線が食堂の入り口に注がれる。
そこにいたのは隣町に居るはずのケイゴさんとハルカ、それとビアンカの三人。
もう夜だと言うのに何で三人がここに?
「ケイゴさん、こんな時間に何かあったのか?」
「本当は一人で月末の報告書とポーションを持っていくつもりだったんですが、馬車の用意をしているとケイゴ様が手伝いに来てくださいまして。折角行くならとご一緒してもらったんです。」
喜びのあまり突っ込んできたアネットを軽くあしらいながらビアンカが理由を教えてくれた。
用事があったのはビアンカだけでこの二人はおまけって事なんだろう。
別に来ちゃダメとは言わないがこちらにも準備というものがあるので、前もって教えてもらえると助かるんだけどなぁ。
一般人になったと言われても俺たちの中でケイゴさんの身分は高いままだ。
「なるほど。」
「香油を探しているのなら国王時代に取引のあった南方の職人を紹介してやろう。少々気難しい奴だが腕前は確かだ。確かうちだけでなくエドワード陛下の所にも何度か卸していると聞いたことがあったが、覚えはあるか?」
「あ!私使ってました!」
「やはりか。本来であれば一見の客は断るのだが、私の紹介であれば話ぐらいは聞いてもらえるだろう。ただし自分から出向かないと取り合ってもらえんから注意しろ、相手が王族だろうが貴族だろうが一度でも機嫌を損ねたら後がもう大変だからな。」
いい職人には変人が多いと聞いているが、どうやらその人もそのタイプのようだ。
ちょうど今度南方に行くし、そのときに色々と話が出来ればいいんだがなぁ。
そのためにもまずは紹介状的なものを書いてもらって、今度ジャニスさんが来たときに運んでもらえば大丈夫なはず。
しっかし、一見客お断りを覆せるってさすが元国王すごい人脈をお持ちのようだ。
「了解、また時間のあるときにでも紹介状を出してもらえると助かる。ついでに他にも取引できそうな職人が居たら教えてくれ。」
「それは香油か?」
「いや何でもいい。せっかくケイゴさんが築いた人脈なんだし、俺が有効に使わせてもらおうと思っただけだから。」
「ほんとちゃっかりしてるわね。」
「いやいや、今の私には無用の長物。シロウであれば喜んで紹介させてもらおう。」
今は一般人になったとしても、事情を知らない遠方の人たちにとっては国王としてのイメージが強いはずだ。
その人からの紹介となれば新規で開拓するよりも何倍もスムーズに話が出来るはず。
今ある物は有効に使わないとなぁ、やっぱり。
「とりあえず香油は向こうに行ったときじゃないと話が出来ないんでしょ?それならこの話はコレで終わり、それよりも今はケイゴ様たちを歓迎しなきゃ。ハワード、ご飯まだ残ってる?」
「大丈夫です!」
「とかなんとか言いながら、ただ単にお前がもう一回食べたいだけだろ?」
「えへへ、ばれたか。」
「バレバレだっての。ってことだから申し訳ないがここで飯食っていってくれ。その後は部屋もあるしゆっくりして明日話を聞かせてもらおう。ビアンカもそれでいいよな?」
「はい!」
折角来てくれたんだし、向こうの状況を聞きながら二度目の食事を楽しむとしよう。
香油を新しい化粧品商材として売り出せるかは現地に行ってからしかわからない。
それならば今目の前に積み上っている問題を解決するほうが先決だ。
個人的にはヘアクリームほどではないがそれなりの反応はあると思うんだが・・・。
ま、時間はあるんだしもう少し煮詰めながら考えるとしよう。
提供数が決まっているので必然的に価格が高騰してしまうからなのだが、長い目で見れば常に安定供給されているのでいずれはこの価格も落ち着きを取り戻すだろう。
買取屋としては、安く買って高く売るだけで差額を得られるので高くなるのは有難い話だが、変に値段が上がると特定の人しか買えなくなるので結果として売れるまでの時間が長くなってしまう。
高くなりすぎるのも考えものってことだ。
「ということで、ヘアクリームに関しては出来るだけ供給量を多くしてこういった不本意な値上げを避けたいと思っている。調達はどんな感じだ?」
「ハニーホーネットの巣を発見し、全滅させないように少数個体を継続的に狩る事で安定的な供給量を確保しています。とはいえ量が取れませんので、目標個数を確保するにはおよそ一か月はかかるかと。」
「そうなると売り出しは秋になるか。遅れているネイルの販売ももうすぐだし、下手にバッティングさせるよりかはいいかもな。」
ほぼ毎日行われている夕食時の報告会。
魔物コインの流行を踏まえたうえで、19月の販売方針を決定しなければならない。
直近で決まっているのはネイルの販売。
薬莢ボトルの量産も完了し、全色セットの特別な箱も別途準備中。
販売価格は一本銀貨1枚で全8色用意している。
赤、ピンク、紫、黄、青、オレンジ、緑、白。
本来であれば今月20日の販売開始を予定していたのだが、陛下の滞在が思った以上に延びたのと魔物の襲撃のごたごたもあって致し方なく延長することにした。
普通なら販売延長となると問題になる事が多いのだが、今回は大々的に宣伝していなかったのも逆に良かったのかもしれない。
それに、婦人会もかなりいっぱいいっぱいだったので十日の余裕を持たせたことで作業も落ち着いて出来ているようだ。
だからこそ特別な箱の準備も出来ているんだけど。
「いよいよ販売ですね。」
「あぁ、開発期間を考えればかなり早い方だがそれでも長かった。」
「準備は万端、いつでも大丈夫です!」
オリンピアが両手に力を入れて気合を入れるポーズをする。
化粧品の販売にも慣れた所だけに、そろそろ新作の販売を経験させてもいいだろう。
前にも話したが販売当日の混乱は必至、それをどう対処するのか楽しみだ。
「ってことで、ネイルの方はギリギリまで連携を密にとって対応してくれ。ヘアクリームは引き続き材料の確保を最優先にして、入れ物をどうするのかも考えよう。」
「ハンドクリームと一緒だと紛らわしいしね。」
「そういう事。しかしアレだな、化粧品関係の販売がここまで続くとは思ってなかった。」
今までもそういう事はあったが、販売時期が被ることはなかったのでここまで問題にはならなかったのだが、実際それが起こってしまうとぶっちゃけめんどくさい。
ポジティブに考えれば色々思いつくのはいい事なのだが、それでもタイミングというものがある。
女達は受け入れてくれているものの、普通なら呆れられている所だろう。
「シロウ様の言葉を借りれば、思いついてしまったのですから仕方ありません。」
「ミラ様の言う通りです。こちらに来てまだ日は浅いですが、シロウ様がお金になる考えを形にしない事はありませんでした。」
「陛下にも匹敵する決断力と行動力、があるからこそ今の地位があるのは間違いありません。」
「因みにヘアクリームですが龍宮館にお願いしておりましたモニター試験の反応も良好、早くも予約注文が入っています。」
「街の奥様方も非常に喜んでおられるようですから街の半数以上は購入すると考えていいでしょう。こちらに関してはセーラと共に予約数を確認しながら販売個数を調整していきます。」
ミラだけでなくセーラさんとラフィムさんまで最近べた褒めしてくるので自分は仕事ができると誤解してしまいそうになるのだが、そのかわりにエリザが調子に乗らないよう諌めてくれるのでなんとか暴走しないですんでいる。
調子に乗らないよう自分でもしっかりしていかねば。
「そっちは宜しく頼む。化粧品関係はこれ以上業務を圧迫しないよう俺も気を付けるつもりだ。」
「大丈夫かしら。」
「・・・多分?」
「なによその微妙な返事は。まさか、また何か思いついたの!?」
エリザが信じられないという顔で俺の方を見てくる。
口の右横に夕食のソースが付いたままでそんな顔されてもなぁ。
まぁ、思いついたわけだけども。
「ご主人様、今ならまだ間に合います。」
「いや、犯罪とかじゃないから。それに今すぐ実現する物でもなし。」
「でもアナタの中ではお金になると判断したんですよね?」
「まぁなぁ。」
ヘアクリームを作るという話から始まり、それにあわせて色々と話を聞いているともう一つの可能性に気がついてしまった。
とはいえこっちに関してはクリームのように材料を含めて全てが未知数。
出来もしないことをするわけにもいかないし、なによりこれ以上化粧品関係を増やすとマリーさんの店がパンクしてしまう。
「それで何をするの?とりあえず聞くだけ聞いてあげるわ。」
「別にそこまでしなくてもいいんだが。」
「いいから言いなさいって、下手に寝かせて後々になっていきなり出されても困るのはこっちなんだから。」
「反論できねぇ。」
ドヤ顔のエリザに屈するのは不服だが、いつものようにいきなり話を持っていって迷惑かけるわけにも行かないんだよなぁ。
化粧品関係が渋滞している状況だからこそ、情報共有は大切だ。
期待半分呆れ半分の視線を浴びながら、ひとまず形になりそうなアイデアをアウトプットしていく。
頭で考えるよりも口に出した方が形になりやすい。
とりあえず考えを全部はきだした所で、小さく息を吐いた。
「香油ですか。」
「ヘアクリームのモニター結果を聞いてると、ここまで本格的じゃなくてもっと気軽に気分を変えられるものが欲しいって言う意見が結構あったんだよ。香水じゃ匂いがきつくなるが、香油なら揮発性が少ない分匂いは軽いし、それでいて香らないわけじゃない。冒険者とか、出先でさっと使うにはぴったりだと思うんだよな。」
「確かにヘアクリームはお風呂上りなど使用する場所に制限がありますから、ちょっと汗をかいたときとかに香り付けできるといいかもしれません。」
「そうかもしれないけど、別に香水でもいいわけでしょ?」
「もちろんそうなんだが、逆に匂いが気になるって意見もあった。それなら無香料のヘアクリームを作って、好きな香油をその後なじませるってのも面白いかもしれない。」
ヘアクリームよりも手軽で、香水よりも大人しいもの。
どうしても香水となると体臭をごまかす為に使われるため香りがきついものが多くなってしまうのだが、俺みたいにそれが苦手な人もいる。
そういう人にははじめから香のついているヘアクリームは使えなくなってしまうので、そういった層も取っていくのならば無香料という選択肢もあっていいだろう。
元々蜜蝋はほぼ無臭だし、オイルを工夫すれば香りのないものを作ることは可能なはず。
加えて、自分の好きな香りで使いたいっていう人も取り込めるというわけだ。
「となると香油を仕入れる必要があるわけですね。」
「そういうけど、この街で香油なんて聞いたことないわよ。ダンジョンで取れるって話もないし。」
「確か香付けするための成分を水蒸気で吸着して、それを冷やして分離させるって感じだったかと。」
「詳しいな、そういう機械はあるのか?」
「生憎製薬用の機材で流用するのは難しいと思います。とはいえ、それがどこに売っているのか見当もつかないんですけど・・・。」
うーむ、作り方自体はなんとなくわかってもそれを作る為の機材は手元にない。
ないのなら作ればいいってのがいつもの俺達だが、あいにくと精密機械を作るほどの実力はないんだよなぁ。
どうしたもんかと全員でウンウン唸りながら知恵を絞っていたときだった。
「話は聞かせてもらった。」
全員の視線が食堂の入り口に注がれる。
そこにいたのは隣町に居るはずのケイゴさんとハルカ、それとビアンカの三人。
もう夜だと言うのに何で三人がここに?
「ケイゴさん、こんな時間に何かあったのか?」
「本当は一人で月末の報告書とポーションを持っていくつもりだったんですが、馬車の用意をしているとケイゴ様が手伝いに来てくださいまして。折角行くならとご一緒してもらったんです。」
喜びのあまり突っ込んできたアネットを軽くあしらいながらビアンカが理由を教えてくれた。
用事があったのはビアンカだけでこの二人はおまけって事なんだろう。
別に来ちゃダメとは言わないがこちらにも準備というものがあるので、前もって教えてもらえると助かるんだけどなぁ。
一般人になったと言われても俺たちの中でケイゴさんの身分は高いままだ。
「なるほど。」
「香油を探しているのなら国王時代に取引のあった南方の職人を紹介してやろう。少々気難しい奴だが腕前は確かだ。確かうちだけでなくエドワード陛下の所にも何度か卸していると聞いたことがあったが、覚えはあるか?」
「あ!私使ってました!」
「やはりか。本来であれば一見の客は断るのだが、私の紹介であれば話ぐらいは聞いてもらえるだろう。ただし自分から出向かないと取り合ってもらえんから注意しろ、相手が王族だろうが貴族だろうが一度でも機嫌を損ねたら後がもう大変だからな。」
いい職人には変人が多いと聞いているが、どうやらその人もそのタイプのようだ。
ちょうど今度南方に行くし、そのときに色々と話が出来ればいいんだがなぁ。
そのためにもまずは紹介状的なものを書いてもらって、今度ジャニスさんが来たときに運んでもらえば大丈夫なはず。
しっかし、一見客お断りを覆せるってさすが元国王すごい人脈をお持ちのようだ。
「了解、また時間のあるときにでも紹介状を出してもらえると助かる。ついでに他にも取引できそうな職人が居たら教えてくれ。」
「それは香油か?」
「いや何でもいい。せっかくケイゴさんが築いた人脈なんだし、俺が有効に使わせてもらおうと思っただけだから。」
「ほんとちゃっかりしてるわね。」
「いやいや、今の私には無用の長物。シロウであれば喜んで紹介させてもらおう。」
今は一般人になったとしても、事情を知らない遠方の人たちにとっては国王としてのイメージが強いはずだ。
その人からの紹介となれば新規で開拓するよりも何倍もスムーズに話が出来るはず。
今ある物は有効に使わないとなぁ、やっぱり。
「とりあえず香油は向こうに行ったときじゃないと話が出来ないんでしょ?それならこの話はコレで終わり、それよりも今はケイゴ様たちを歓迎しなきゃ。ハワード、ご飯まだ残ってる?」
「大丈夫です!」
「とかなんとか言いながら、ただ単にお前がもう一回食べたいだけだろ?」
「えへへ、ばれたか。」
「バレバレだっての。ってことだから申し訳ないがここで飯食っていってくれ。その後は部屋もあるしゆっくりして明日話を聞かせてもらおう。ビアンカもそれでいいよな?」
「はい!」
折角来てくれたんだし、向こうの状況を聞きながら二度目の食事を楽しむとしよう。
香油を新しい化粧品商材として売り出せるかは現地に行ってからしかわからない。
それならば今目の前に積み上っている問題を解決するほうが先決だ。
個人的にはヘアクリームほどではないがそれなりの反応はあると思うんだが・・・。
ま、時間はあるんだしもう少し煮詰めながら考えるとしよう。
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