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960.転売屋は噂を耳にする
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「よし、それじゃあ向こうは任せた。」
「任せて!トトも頑張ってね。」
「頑張るようなことはないが、まぁ頑張ってくる。」
巨大な木箱をぶら下げたままバーンが北の山へと飛び去っていく。
昔はどよめきも起きたものだが、港町の住民からしてみれば毎度の事なので特に大きな反応はない。
とはいえ、それを知らない商人や冒険者は信じられないという顔で残された俺をじっと見てきた。
俺を囲むようにして出来た人だかりが、どよめきとともに二つに割れる。
モーゼの如く開いた人垣の間から現れたのはこの場に似つかわしくない可憐な少女だった。
「こんにちはシロウさん。」
「街長じきじきのお出迎えとはありがたいね。」
「いつも素敵なものを持ってきてくださいますから。今回も素晴らしいものを持ち込んでくださったとお聞きしています。そちらの重そうな箱がそうなのですか?」
「ヒートゴーレムの装甲で作った保冷箱だ。ここで開封するわけにはいかないんで中へ運びたいんだが、人手を貸してもらえるか?」
「おまかせください。」
ポーラさんがドンと胸を張る。
相変わらず見た目はまったく街長には見えないのだが、今では貫禄もついてきて立派な街長として街を運営しているとゾイルがこの前珍しく褒めていた。
前までは港側と街側で大きな隔たりが出来ていたのだが、最近ではどちらの住民も自由にお互いの場所を出入りしているように見える。
お互いに歩み寄れるようにしっかりと舵取りをしている証拠だろう。
最初は大丈夫か不安なところもあったのだが、俺が思っている以上に適正があったんだろうなぁ。
警備の皆さん総動員で保冷箱を市場へと運んでもらい、その場で蓋を開ける。
中から出てきたのは肉の塊。
だがそれらは保冷箱の形に凍っており、冷たい冷気を発していた。
「すごい、お肉が丸々凍ってる。」
「昨日取れたばかりのワイルドカウの肉を凍らせたものだ。ちょいとばかし量が多かったんでな、おすそ分けついでに持ってきてみた。鮮度は保障する、このまま置いておけば氷が解けて肉が取り出せるようになるだろう。その後は適当に振舞ってやってくれ。」
「こんなにたくさん、よろしいのですか?」
「もちろんそれなりの値段で買い取ってくれるのならばありがたいが、まぁ適当でいいぞ。」
「つまりこのお肉に見合う情報が欲しい、もしくは便宜を図って欲しいそういうことですよね?私とシロウさんの仲なんですから、こんなことしなくても好きなだけ便宜を図りますのに。」
だから、そういう風になるのが嫌だからこうして肉を運んできたんだって。
まぁ、ダンジョン内で大繁殖したのを間引いたらかなりの量の肉になって、廃鉱山の新造したほうの氷室も一杯になってきたからここに持ってきただけなんだけど。
相変わらず隙を見せるとすぐに切り込んでくるな、この人は。
「そういう事をいうからシロウ様が困られるんです。街長としての自覚を持った発言をして欲しいですわね。」
「トリーヌ、元気そうだな。」
「ワイバーンの姿が見えましたので飛んできましたの。お蔭様で商売ともども順調ですわ。」
「それは何よりだ。聞けば西方の商人を何人か受け入れたそうじゃないか、どんな感じだ?」
「皆さんまじめでよく働いてくれています。西方の件は残念ですが、元々こちらでお仕事を探されていたようですし、私達としても優秀な商人を抱え込めましたのでむしろお礼を言いたいぐらいです。」
ラフィムさんの持ち帰った情報に寄れば、おおよそ二割程の商人は国に戻らずこちらでの生活を選び、そのうちの何人かがドネル家に拾われたそうだ。
過去の失墜はどこへやら、いまや飛ぶ鳥を落とす勢いで再成長しているのもまた彼女の手腕のおかげ。
同時期に同世代のしかも知り合い同士がこの街を牽引しているというのは、おそらく偶然ではないんだろうなぁ。
商人を囲い込むということは、その人が持っている取引先を丸々囲い込めるということ。
西方国以外にも貿易相手はいるだけに、そういったところと新しい商売が出来るのはうらやましい限りだ。
「ちょっと、シロウさんとは私がお話ししているんだけど?」
「そんな事を言って困らせてばかりじゃありませんか。邪魔をする前に、せっかく持ってきてくださったこのお肉をしかるべき場所に運んではいかが?」
「そんなの言われなくても分かってる。シロウさん、ちょっと席をはずすけどすぐに戻ってくるからここで待っててね。もし置いていったら、ガレイさんの船に重課税しちゃうから!」
よりにもよって俺じゃなくてガレイを人質に使うとは、なんとも恐ろしい女だ。
流石にガレイに迷惑をかけるわけにはいかないので、致し方なく近くの店に避難してトリーヌとともにポーラさんの帰りを待つ。
中々にお洒落な店がまえ、香茶のセンスも中々よろしい。
何よりも美味しいのがこのシフォンケーキ。
見た目以上にふわふわで、生クリームとかなり相性がいい。
エリザが好きそうな味だなぁ。
「うーん、こりゃ美味い。」
「お口に合ったようでよかったですわ。」
「甘いものが好きなのか?」
「そういうわけではありませんが、疲れているときはどうしても甘い物が欲しくなりますので。」
「わかる。あれこれやりすぎて頭がパンクしかけてくると甘いもの欲しくなるよな。」
マルチタスクは嫌いじゃないんだが、あまりにも複数抱えると脳みそがパンクしそうになるんだよな。
最近はそうなる前に食堂に逃げ込んで、甘いものを食べるようにしている。
エリザが定期的に作ってくれるので厨房の戸棚をあされば絶対に何かあるんだよなぁ。
「少々シロウ様は手広くやりすぎかと。聞けば新しい西方奴隷を買い付けて向こうの食材をこちらでおつくりになるそうですね。」
「なぁ、その情報どこで知った?」
「ふふ、どこでしょう。例えシロウ様とはいえそれを漏らすことは出来ませんわ。」
「別に隠しているわけじゃないんだが、まだまだ準備すら出来ていないはずなんだがなぁ。西方ついででいくと、前王がこの国に入っているって話あったよな?あれって何か進捗あったのか?」
「今の所詳しい話はわかりませんの。でも、つい一週間ほど前にうちに来た商人がこの街で前王を見たといっていましたわ。港町で人について尋ねて回っていたそうです。」
「一週間前か・・・。」
この国に来てそれなりの時間が経っているにもかかわらず、まだこの近辺をうろついているってことはある程度は目星をつけているんだろう。
話によれば前王は元王妃、つまりハルカを探しに来たって言う話だ。
その足取りをたどっているのであればいずれ俺達の街にも来るのかもしれない。
自分の元嫁が奴隷として働かされていると知ったら一体どういう顔をするんだろうか。
ちょっと想像がつかないな。
「おまたせー!って何それ、すっごい美味しそうなんだけど!」
「美味しそうじゃなくて美味しい、だな。」
「えー、一口ください!シロウさんのそのフォークでちょっと切ってもらって、それを私の口に運んでくれるだけでいいです!えへへ、これで間接キス。」
帰ってきて早々に暴走し始めるポーラさん。
そういう反応がトリーヌと大きな差を作っている事が何故わからないんだろうか。
仕事は出来るのにこういうところが抜けてるよな、この人は。
「欲しけりゃ自分で注文しろ。」
「ケチ!」
「商売人なんだケチで当然。それで、肉はもう終わったのか?」
「うん、半分はゴードンさんの所に置いてきたから後は勝手に何とかしてくれるみたい。上は孤児院と子持ち家庭に優先的に回すようにしてあるから大丈夫。」
「ゴードンさんならいいようにしてくれるだろう。ちょっと聞きたいんだが、エドワード陛下の来訪について何か知っていることはないか?いつ来るかとか、どうやって移動するかとか。正直そこまでの話がこっち回ってこないんだよ。」
今日ここに来たのは新しい西方の情報を仕入れることと、陛下の動きについて探りを入れるため。
もうすぐだというのにその辺の情報がまったく入ってこなくなったんだよなぁ。
防犯の都合もあるだろうし公に出来ない理由もあるのかもしれないが、それでもこっちにも準備があるだけに早めに教えて欲しいところだ。
わざと情報を流していないという可能性もある。
サプライズとかそういうのは苦手なので勘弁して欲しいんだけどなぁ。
「18月とは聞いてますけどそれ以外は全然知りません、むしろ私が教えて欲しいぐらいです。到着後はやっぱり船で?」
「さぁ、その可能性もあるだろうが聖騎士団もそれなりの人数居るし大人しく陸路だと思うぞ。」
「あー、確かにそうですね。となると、宿場町には事前に知らせる必要があるわけで・・・。」
「こういう部分はシロウ様とよく似ていますわね。」
「どういうことだ?」
「夢中になると他の事がまったく見えない所です。」
つまり俺は回りからこんな風に見られているというわけだ。
確かにそういう性分ではあるのだが、最近はちゃんと人の意見も取り入れるし暴走しないようにはしているつもりなんだが・・・。
否定できないのがちょっと悔しい。
「まぁ知恵が回るのはいいことだ、そのおかげで今のこの街があるわけだしな。」
「確かにそうですわね。」
「しっかり手綱と握りつつ良いように動かしてやってくれ。さて、メインイベントは終わったし買い付けしてバーンが戻ってくるのを待つか。」
「ご一緒して構いません?」
「別に面白いものはないぞ?西方商人がいなくなってここも随分と寂しくなっただろうし、なじみの所に顔を出すだけだが。」
「ご一緒したいだけです。」
「知ってる。」
初めて会った時からそうだが。トリーヌもこうと決めたら周りが見えなくなるタイプだよな。
そしてその矛先はまっすぐ俺に向けられている。
決して悪い気がしないのだが彼女とどうこうなるつもりはサラサラない。
もちろんポーラさんとも。
その後買い付けに乱入してきたポーラさんを追加して三人で港町を回り、帰りは新鮮な魚を保冷箱に満載にして港町を後にした。
お目当てのものも手に入ったし、何より新しい情報を手に入れられたのは大きい。
買い物の途中でも前王を見たという話を何回か耳にしただけに、ここを基点として動き回っているのは間違いなさそうだ。
もし、お会いすることがあるとしてその時ハルカと会わせるべきか、それとも知らないふりをするべきか。
悩ましいところだなぁ。
「任せて!トトも頑張ってね。」
「頑張るようなことはないが、まぁ頑張ってくる。」
巨大な木箱をぶら下げたままバーンが北の山へと飛び去っていく。
昔はどよめきも起きたものだが、港町の住民からしてみれば毎度の事なので特に大きな反応はない。
とはいえ、それを知らない商人や冒険者は信じられないという顔で残された俺をじっと見てきた。
俺を囲むようにして出来た人だかりが、どよめきとともに二つに割れる。
モーゼの如く開いた人垣の間から現れたのはこの場に似つかわしくない可憐な少女だった。
「こんにちはシロウさん。」
「街長じきじきのお出迎えとはありがたいね。」
「いつも素敵なものを持ってきてくださいますから。今回も素晴らしいものを持ち込んでくださったとお聞きしています。そちらの重そうな箱がそうなのですか?」
「ヒートゴーレムの装甲で作った保冷箱だ。ここで開封するわけにはいかないんで中へ運びたいんだが、人手を貸してもらえるか?」
「おまかせください。」
ポーラさんがドンと胸を張る。
相変わらず見た目はまったく街長には見えないのだが、今では貫禄もついてきて立派な街長として街を運営しているとゾイルがこの前珍しく褒めていた。
前までは港側と街側で大きな隔たりが出来ていたのだが、最近ではどちらの住民も自由にお互いの場所を出入りしているように見える。
お互いに歩み寄れるようにしっかりと舵取りをしている証拠だろう。
最初は大丈夫か不安なところもあったのだが、俺が思っている以上に適正があったんだろうなぁ。
警備の皆さん総動員で保冷箱を市場へと運んでもらい、その場で蓋を開ける。
中から出てきたのは肉の塊。
だがそれらは保冷箱の形に凍っており、冷たい冷気を発していた。
「すごい、お肉が丸々凍ってる。」
「昨日取れたばかりのワイルドカウの肉を凍らせたものだ。ちょいとばかし量が多かったんでな、おすそ分けついでに持ってきてみた。鮮度は保障する、このまま置いておけば氷が解けて肉が取り出せるようになるだろう。その後は適当に振舞ってやってくれ。」
「こんなにたくさん、よろしいのですか?」
「もちろんそれなりの値段で買い取ってくれるのならばありがたいが、まぁ適当でいいぞ。」
「つまりこのお肉に見合う情報が欲しい、もしくは便宜を図って欲しいそういうことですよね?私とシロウさんの仲なんですから、こんなことしなくても好きなだけ便宜を図りますのに。」
だから、そういう風になるのが嫌だからこうして肉を運んできたんだって。
まぁ、ダンジョン内で大繁殖したのを間引いたらかなりの量の肉になって、廃鉱山の新造したほうの氷室も一杯になってきたからここに持ってきただけなんだけど。
相変わらず隙を見せるとすぐに切り込んでくるな、この人は。
「そういう事をいうからシロウ様が困られるんです。街長としての自覚を持った発言をして欲しいですわね。」
「トリーヌ、元気そうだな。」
「ワイバーンの姿が見えましたので飛んできましたの。お蔭様で商売ともども順調ですわ。」
「それは何よりだ。聞けば西方の商人を何人か受け入れたそうじゃないか、どんな感じだ?」
「皆さんまじめでよく働いてくれています。西方の件は残念ですが、元々こちらでお仕事を探されていたようですし、私達としても優秀な商人を抱え込めましたのでむしろお礼を言いたいぐらいです。」
ラフィムさんの持ち帰った情報に寄れば、おおよそ二割程の商人は国に戻らずこちらでの生活を選び、そのうちの何人かがドネル家に拾われたそうだ。
過去の失墜はどこへやら、いまや飛ぶ鳥を落とす勢いで再成長しているのもまた彼女の手腕のおかげ。
同時期に同世代のしかも知り合い同士がこの街を牽引しているというのは、おそらく偶然ではないんだろうなぁ。
商人を囲い込むということは、その人が持っている取引先を丸々囲い込めるということ。
西方国以外にも貿易相手はいるだけに、そういったところと新しい商売が出来るのはうらやましい限りだ。
「ちょっと、シロウさんとは私がお話ししているんだけど?」
「そんな事を言って困らせてばかりじゃありませんか。邪魔をする前に、せっかく持ってきてくださったこのお肉をしかるべき場所に運んではいかが?」
「そんなの言われなくても分かってる。シロウさん、ちょっと席をはずすけどすぐに戻ってくるからここで待っててね。もし置いていったら、ガレイさんの船に重課税しちゃうから!」
よりにもよって俺じゃなくてガレイを人質に使うとは、なんとも恐ろしい女だ。
流石にガレイに迷惑をかけるわけにはいかないので、致し方なく近くの店に避難してトリーヌとともにポーラさんの帰りを待つ。
中々にお洒落な店がまえ、香茶のセンスも中々よろしい。
何よりも美味しいのがこのシフォンケーキ。
見た目以上にふわふわで、生クリームとかなり相性がいい。
エリザが好きそうな味だなぁ。
「うーん、こりゃ美味い。」
「お口に合ったようでよかったですわ。」
「甘いものが好きなのか?」
「そういうわけではありませんが、疲れているときはどうしても甘い物が欲しくなりますので。」
「わかる。あれこれやりすぎて頭がパンクしかけてくると甘いもの欲しくなるよな。」
マルチタスクは嫌いじゃないんだが、あまりにも複数抱えると脳みそがパンクしそうになるんだよな。
最近はそうなる前に食堂に逃げ込んで、甘いものを食べるようにしている。
エリザが定期的に作ってくれるので厨房の戸棚をあされば絶対に何かあるんだよなぁ。
「少々シロウ様は手広くやりすぎかと。聞けば新しい西方奴隷を買い付けて向こうの食材をこちらでおつくりになるそうですね。」
「なぁ、その情報どこで知った?」
「ふふ、どこでしょう。例えシロウ様とはいえそれを漏らすことは出来ませんわ。」
「別に隠しているわけじゃないんだが、まだまだ準備すら出来ていないはずなんだがなぁ。西方ついででいくと、前王がこの国に入っているって話あったよな?あれって何か進捗あったのか?」
「今の所詳しい話はわかりませんの。でも、つい一週間ほど前にうちに来た商人がこの街で前王を見たといっていましたわ。港町で人について尋ねて回っていたそうです。」
「一週間前か・・・。」
この国に来てそれなりの時間が経っているにもかかわらず、まだこの近辺をうろついているってことはある程度は目星をつけているんだろう。
話によれば前王は元王妃、つまりハルカを探しに来たって言う話だ。
その足取りをたどっているのであればいずれ俺達の街にも来るのかもしれない。
自分の元嫁が奴隷として働かされていると知ったら一体どういう顔をするんだろうか。
ちょっと想像がつかないな。
「おまたせー!って何それ、すっごい美味しそうなんだけど!」
「美味しそうじゃなくて美味しい、だな。」
「えー、一口ください!シロウさんのそのフォークでちょっと切ってもらって、それを私の口に運んでくれるだけでいいです!えへへ、これで間接キス。」
帰ってきて早々に暴走し始めるポーラさん。
そういう反応がトリーヌと大きな差を作っている事が何故わからないんだろうか。
仕事は出来るのにこういうところが抜けてるよな、この人は。
「欲しけりゃ自分で注文しろ。」
「ケチ!」
「商売人なんだケチで当然。それで、肉はもう終わったのか?」
「うん、半分はゴードンさんの所に置いてきたから後は勝手に何とかしてくれるみたい。上は孤児院と子持ち家庭に優先的に回すようにしてあるから大丈夫。」
「ゴードンさんならいいようにしてくれるだろう。ちょっと聞きたいんだが、エドワード陛下の来訪について何か知っていることはないか?いつ来るかとか、どうやって移動するかとか。正直そこまでの話がこっち回ってこないんだよ。」
今日ここに来たのは新しい西方の情報を仕入れることと、陛下の動きについて探りを入れるため。
もうすぐだというのにその辺の情報がまったく入ってこなくなったんだよなぁ。
防犯の都合もあるだろうし公に出来ない理由もあるのかもしれないが、それでもこっちにも準備があるだけに早めに教えて欲しいところだ。
わざと情報を流していないという可能性もある。
サプライズとかそういうのは苦手なので勘弁して欲しいんだけどなぁ。
「18月とは聞いてますけどそれ以外は全然知りません、むしろ私が教えて欲しいぐらいです。到着後はやっぱり船で?」
「さぁ、その可能性もあるだろうが聖騎士団もそれなりの人数居るし大人しく陸路だと思うぞ。」
「あー、確かにそうですね。となると、宿場町には事前に知らせる必要があるわけで・・・。」
「こういう部分はシロウ様とよく似ていますわね。」
「どういうことだ?」
「夢中になると他の事がまったく見えない所です。」
つまり俺は回りからこんな風に見られているというわけだ。
確かにそういう性分ではあるのだが、最近はちゃんと人の意見も取り入れるし暴走しないようにはしているつもりなんだが・・・。
否定できないのがちょっと悔しい。
「まぁ知恵が回るのはいいことだ、そのおかげで今のこの街があるわけだしな。」
「確かにそうですわね。」
「しっかり手綱と握りつつ良いように動かしてやってくれ。さて、メインイベントは終わったし買い付けしてバーンが戻ってくるのを待つか。」
「ご一緒して構いません?」
「別に面白いものはないぞ?西方商人がいなくなってここも随分と寂しくなっただろうし、なじみの所に顔を出すだけだが。」
「ご一緒したいだけです。」
「知ってる。」
初めて会った時からそうだが。トリーヌもこうと決めたら周りが見えなくなるタイプだよな。
そしてその矛先はまっすぐ俺に向けられている。
決して悪い気がしないのだが彼女とどうこうなるつもりはサラサラない。
もちろんポーラさんとも。
その後買い付けに乱入してきたポーラさんを追加して三人で港町を回り、帰りは新鮮な魚を保冷箱に満載にして港町を後にした。
お目当てのものも手に入ったし、何より新しい情報を手に入れられたのは大きい。
買い物の途中でも前王を見たという話を何回か耳にしただけに、ここを基点として動き回っているのは間違いなさそうだ。
もし、お会いすることがあるとしてその時ハルカと会わせるべきか、それとも知らないふりをするべきか。
悩ましいところだなぁ。
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