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958.転売屋は肉を溜め込む
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17月も残り一週間を切った。
いよいよエドワード陛下の来訪する18月が目前となり、街はいつも以上の活気で満ち溢れている。
会場は順調に仕上がっており、出店のほうも正式な許可が降りたことで各店主の準備に余念がない。
必要なものは俺が事前に揃えていたので大きな問題もなく進んでいるが、どうしても用意できないものがあった。
「お肉足りるかしら。」
「そこは冒険者の頑張りに期待するしかないだろう。日持ちしない物を事前に買いこんでも致し方ない。魔導冷蔵庫だってどこも一杯一杯なんだろ?」
「そうなのよねぇ。塩漬けにしとくって手もあるんだけどそれじゃあ美味しさ半減だし。やっぱり捌きたての一番美味しいのが食べたいわよね。」
肉。
出店の半分は肉を扱った店になる予定なのだが、それらの需要を全てまかなえるだけの肉を短期間で準備できるかが問題になっている。
もちろん肉はダンジョンの中からかき集められるのだが、街中の魔導冷蔵庫をフル稼働してもそれらを保存できるほどの余裕はない。
他にも色々と保管しなければならないものも多いだけに、肉だけを優先してというわけには行かないんだよなぁ。
とはいえ、一気に注文が殺到したら肉不足になるのは必至。
特に今回は冒険者と聖騎士団との戦いというだけあって、戦いを一目見ようとダンジョンに潜らない冒険者が非常に多いと予想されている。
ただでさえ人手が欲しいのにそれを手配できないとなれば更に供給不足が深刻化するだろう。
かといって保存する場所はなし。
まさに堂々巡りだ。
「とりあえず日持ちするギリギリまで置いておくしかないだろうな。ほら、肉は腐りかけが一番美味しいっていうし、最悪腹を下したらアネットの薬で何とかしてもらうさ。」
「それ、エドワード陛下にも同じ事言える?」
「無理だな。」
ニアと二人で出店から出された注文書の束を見て大きな溜息をつく。
出店の成功はチャリティの根幹にも関わってくるだけに手は抜けない。
せめて冷凍庫があればよかったんだが、生憎と冷蔵庫どまりで、そこまでは開発されていないんだよなぁ。
「氷壁を魔導冷蔵庫代わりにするって計画もあるんだけど、あそこに置くとお肉がカチカチになっちゃって戻したときにパサパサになっちゃうのよねぇ。」
「肉の中の水分が凍るからどうしてもな。」
「それじゃあ美味しさも半減。はぁ、ほんとどうしよう。」
「まぁまぁそんなに難しい顔しないで、とりあえずかき氷でも食べたら?」
まったく、この女ときたら他人事だと思いやがって。
二人してウンウンと知恵を絞っているところに、エリザがかき氷を持ってやってきた。
アイスと違って量産が出来、さらには加工もしやすいとあって今やカキ氷は手軽に食べられるスイーツへと生まれ変わっている。
俺達以外にもあと二軒ほど新しい店が出ていると、氷を卸している冒険者が教えてくれた。
現在氷壁では有志の冒険者が俺から水の魔道具を借りる形で氷作りを行っている。
氷の作製から氷壁から削りだした氷の運搬まで一手に担い、いまや街ではなくてはならない存在だ。
「ちょうどサッパリしたものが食べたかったのよ。」
「そうだろうと思った。」
「エリザはいいのか?」
「私はもう食べてきたから。それで、お肉のほうはどんな感じ?」
「どんな感じも何も鮮度の部分で行き詰ってる感じだ。ギリギリまで待てば供給不足、前もって準備すれば味の低下。濃い味付けにするとかでごまかす手もあるが、いくら酔っ払っている前提とはいえ普段鮮度のいい肉を食べている冒険者の舌はごまかせないだろうなぁ。」
「なんだかんだでいいもの食べてるものね。」
そうなんだよなぁ。
街に流通するほぼ全ての肉を冒険者がダンジョンから運んできている。
流石に死骸を丸々運ぶわけにも行かないので倒された魔物はその場で解体されて地上に運ばれるのだが、それでも全て運ぶことは出来ないので大抵はその場で彼らの腹に収められる。
解体したての一番いい肉を冒険者が食べているというわけだ。
そんな彼らがまずい肉を態々金を出して食べるとは思えない。
あー、堂々巡りだ。
エリザから貰ったカキ氷を口の中に入れる。
サッパリとしたレレモンの酸味と、シロップの甘味が口いっぱいに広がって一気に目が覚める。
「はぁ、美味い。」
「ね、氷が量産され始めたおかげでエールとかも冷たいまま飲めるようになってるのよ。氷ってすごいわねぇ。」
「それを可能にしたのもシロウさんがヒートゴーレムの装甲を輸送用の箱にしたからなのよね。あの中に入れたら地上でも長持ちするのかしら。」
「そりゃ多少は長持ちするだろうが氷が溶ければ終わりだ。それに、氷漬けにしても乾燥はしないがびちゃびちゃになって解凍と同時に旨味成分も全部流れ出る。結局は不味い肉の出来上がりだ。果物とか野菜ならまだしも、肉の塊は難しいだろう。」
実は氷作りをし始めたときに、果物の氷漬けを試したことがある。
野菜や果物など、自前の皮で覆われているものは凍らせても特に問題はなかったのだが、一度加工したものを水につけて凍らせるとどうしても成分が流出してしまって美味しくなくなってしまった。
なのでレレモンやマジックアップル、ボンバーオレンジなどの皮のしっかりしたものは今後氷漬けにして保管することが出来るだろう。
とはいえ、元々日持ちするだけに秋以降そこまで気にしなくてもよさそうだけどな。
「うーん、そっかぁ。」
「凍ったら氷壁に山ほど置けるから便利なのにね。」
「もしくはうちの氷室で保管だな。氷のままなら温度も下がらないし場所もたくさんある。この前作った特注の木箱に入れればバーンを使った高速輸送も可能だろう。」
「まさか廃鉱山にそんな使い道があるとはねぇ。」
「ギルドで保管できないようなものがあればいつでも受け入れるぞ、月々の使用料金だけで倉庫が空くんだ悪い話じゃないと思うが?」
ようはレンタルスペースという奴だ。
今はギルド相手だが、今後は他の商人や貴族を相手に保管を売りにすることも考えている。
もっとも、物が盗まれただの何だの言い出しそうだから、鍵つきの箱で保管するとかの条件はつきそうだけども。
「もしそういうのが必要になったらお願いね。ご馳走様、エリザありがとう。」
「え、もういいの?」
「他の仕事があるの思い出したから。食べないなら風蜥蜴の皮膜をかけといて。」
「溶けちゃうわよ。」
「溶けたら飲むわよ。」
まだ氷の残ったグラスをエリザに渡してニアは応接室を出て行ってしまった。
渡されたのをどうするのかと思ったが何の躊躇もなくエリザは自分の腹に収めていく。
ま、そうなるよな。
「あー美味しかった。皮膜で包んで保管できたらいいのにね。」
「包んだところで溶けるのは変わりないだろ。」
「でも汁は漏れないでしょ?」
「まぁなぁ。」
風蜥蜴の皮膜は水をしっかり遮断してくれるので、ゴミを寄せ付けないだけでなく汁物のデリバリーなんかにも使われている。
温度はそのまま影響するので、火のそばにおいておけば冷めにくいとか言う技もあったが・・・。
「まてよ。」
「どうしたの?」
「もしかしたら何とかなるかもしれない。ちょっと現地に行くから護衛してくれ。」
「オッケー、任せて!」
もしかするともしかするかもしれない。
急ぎ肉と皮膜を手配してエリザとともにダンジョンの氷壁へと向かう。
防寒対策をしっかりしてきたはずなのだが、そこは予想以上の寒さだった。
「寒い!」
「そんなの言わなくても分かるわよ。それで、何をする気なの?」
「肉を冷凍保存する。」
「でもそのままじゃ美味しくないんでしょ?」
「だから皮膜で包んで、旨味が逃げないようにした状態で凍らせるんだ。」
そう、そのまま凍らせるから問題だっただけで一手間加えれば十分にデメリットを克服できる。
まずは肉を皮膜でぐるぐる巻きにして、次に半分ほど水を入れて凍らせたヒートゴーレムの装甲の中にそれを入れる。
最後に上から水をかけて凍らせれば・・・。
「すごい、氷の中にお肉がある!」
「これなら解凍しても肉の旨味はそのままだし、外気に触れないから肉が痛む心配も少ない。さらには容器そのものが保冷できるから輸送中に溶け出す心配もないだろう。後は、これを量産して氷室に持っていけば完璧だ。」
「え、ここに置いておくんじゃないの?」
「保管したいのは山々だが、氷作りの邪魔になる上にこいつらを凍らせる場所も必要になる。効率化するためにも保管場所は別に必要なのさ。」
実験は成功。
真四角の容器をひっくり返すと、氷の中に肉の塊が浮かんでいた。
水の魔道具で作った氷は純度が高く透明度が非常に高い。
なので、何の肉を入れているか一目で分かるのがいいな。
まぁ、容器に名前を書いておけばいいだけの話なので保管するときは入れ物に入れたままだが、これを果物ですれば皮むきや加工の手間も省ける上に、氷漬けの果物という最高のビジュアルを確保できる。
陛下もさぞ驚くことだろう。
「さぁ、肉の保存が出来るとなったら問題も解決。じゃんじゃん確保して冷凍していこう。」
「オッケー!凍ったのはどうするの?」
「特製の木箱に詰め込んでそのままバーンに運んでもらう。追加の氷室をどこにするかはもう目星がついているから、肉を凍らせている間に氷を運んで氷室を完成させるとしよう。切り出しに運び出し、それと肉の確保と冷凍。時間がないだけに忙しくなるぞ。」
「そんなのいつものことじゃない。さ、早く戻りましょ。」
この前シュウ達の珪砂を探しに行くときに改めて廃鉱山を調べたおかげで新たな氷室候補を見つけることが出来たのだが、まさかこんな形で早々に実行することになるとは思わなかった。
氷の高速大量輸送が可能になった現状で、なまものを長期保存できる環境を確保することは必要不可欠。
更には氷漬け、つまり冷凍することによってもっと長期間保存できる可能性も出てきたわけだ。
食べ物に限らず薬草や薬なども保存することが出来るだろう。
これは革命とも言えるかもしれない。
もっとも、俺のように氷室を作れるだけの環境がなければ意味がないので、真似をされる心配はほとんどない。
まさに俺の独壇場、買っててよかった廃鉱山ってね。
いよいよエドワード陛下の来訪する18月が目前となり、街はいつも以上の活気で満ち溢れている。
会場は順調に仕上がっており、出店のほうも正式な許可が降りたことで各店主の準備に余念がない。
必要なものは俺が事前に揃えていたので大きな問題もなく進んでいるが、どうしても用意できないものがあった。
「お肉足りるかしら。」
「そこは冒険者の頑張りに期待するしかないだろう。日持ちしない物を事前に買いこんでも致し方ない。魔導冷蔵庫だってどこも一杯一杯なんだろ?」
「そうなのよねぇ。塩漬けにしとくって手もあるんだけどそれじゃあ美味しさ半減だし。やっぱり捌きたての一番美味しいのが食べたいわよね。」
肉。
出店の半分は肉を扱った店になる予定なのだが、それらの需要を全てまかなえるだけの肉を短期間で準備できるかが問題になっている。
もちろん肉はダンジョンの中からかき集められるのだが、街中の魔導冷蔵庫をフル稼働してもそれらを保存できるほどの余裕はない。
他にも色々と保管しなければならないものも多いだけに、肉だけを優先してというわけには行かないんだよなぁ。
とはいえ、一気に注文が殺到したら肉不足になるのは必至。
特に今回は冒険者と聖騎士団との戦いというだけあって、戦いを一目見ようとダンジョンに潜らない冒険者が非常に多いと予想されている。
ただでさえ人手が欲しいのにそれを手配できないとなれば更に供給不足が深刻化するだろう。
かといって保存する場所はなし。
まさに堂々巡りだ。
「とりあえず日持ちするギリギリまで置いておくしかないだろうな。ほら、肉は腐りかけが一番美味しいっていうし、最悪腹を下したらアネットの薬で何とかしてもらうさ。」
「それ、エドワード陛下にも同じ事言える?」
「無理だな。」
ニアと二人で出店から出された注文書の束を見て大きな溜息をつく。
出店の成功はチャリティの根幹にも関わってくるだけに手は抜けない。
せめて冷凍庫があればよかったんだが、生憎と冷蔵庫どまりで、そこまでは開発されていないんだよなぁ。
「氷壁を魔導冷蔵庫代わりにするって計画もあるんだけど、あそこに置くとお肉がカチカチになっちゃって戻したときにパサパサになっちゃうのよねぇ。」
「肉の中の水分が凍るからどうしてもな。」
「それじゃあ美味しさも半減。はぁ、ほんとどうしよう。」
「まぁまぁそんなに難しい顔しないで、とりあえずかき氷でも食べたら?」
まったく、この女ときたら他人事だと思いやがって。
二人してウンウンと知恵を絞っているところに、エリザがかき氷を持ってやってきた。
アイスと違って量産が出来、さらには加工もしやすいとあって今やカキ氷は手軽に食べられるスイーツへと生まれ変わっている。
俺達以外にもあと二軒ほど新しい店が出ていると、氷を卸している冒険者が教えてくれた。
現在氷壁では有志の冒険者が俺から水の魔道具を借りる形で氷作りを行っている。
氷の作製から氷壁から削りだした氷の運搬まで一手に担い、いまや街ではなくてはならない存在だ。
「ちょうどサッパリしたものが食べたかったのよ。」
「そうだろうと思った。」
「エリザはいいのか?」
「私はもう食べてきたから。それで、お肉のほうはどんな感じ?」
「どんな感じも何も鮮度の部分で行き詰ってる感じだ。ギリギリまで待てば供給不足、前もって準備すれば味の低下。濃い味付けにするとかでごまかす手もあるが、いくら酔っ払っている前提とはいえ普段鮮度のいい肉を食べている冒険者の舌はごまかせないだろうなぁ。」
「なんだかんだでいいもの食べてるものね。」
そうなんだよなぁ。
街に流通するほぼ全ての肉を冒険者がダンジョンから運んできている。
流石に死骸を丸々運ぶわけにも行かないので倒された魔物はその場で解体されて地上に運ばれるのだが、それでも全て運ぶことは出来ないので大抵はその場で彼らの腹に収められる。
解体したての一番いい肉を冒険者が食べているというわけだ。
そんな彼らがまずい肉を態々金を出して食べるとは思えない。
あー、堂々巡りだ。
エリザから貰ったカキ氷を口の中に入れる。
サッパリとしたレレモンの酸味と、シロップの甘味が口いっぱいに広がって一気に目が覚める。
「はぁ、美味い。」
「ね、氷が量産され始めたおかげでエールとかも冷たいまま飲めるようになってるのよ。氷ってすごいわねぇ。」
「それを可能にしたのもシロウさんがヒートゴーレムの装甲を輸送用の箱にしたからなのよね。あの中に入れたら地上でも長持ちするのかしら。」
「そりゃ多少は長持ちするだろうが氷が溶ければ終わりだ。それに、氷漬けにしても乾燥はしないがびちゃびちゃになって解凍と同時に旨味成分も全部流れ出る。結局は不味い肉の出来上がりだ。果物とか野菜ならまだしも、肉の塊は難しいだろう。」
実は氷作りをし始めたときに、果物の氷漬けを試したことがある。
野菜や果物など、自前の皮で覆われているものは凍らせても特に問題はなかったのだが、一度加工したものを水につけて凍らせるとどうしても成分が流出してしまって美味しくなくなってしまった。
なのでレレモンやマジックアップル、ボンバーオレンジなどの皮のしっかりしたものは今後氷漬けにして保管することが出来るだろう。
とはいえ、元々日持ちするだけに秋以降そこまで気にしなくてもよさそうだけどな。
「うーん、そっかぁ。」
「凍ったら氷壁に山ほど置けるから便利なのにね。」
「もしくはうちの氷室で保管だな。氷のままなら温度も下がらないし場所もたくさんある。この前作った特注の木箱に入れればバーンを使った高速輸送も可能だろう。」
「まさか廃鉱山にそんな使い道があるとはねぇ。」
「ギルドで保管できないようなものがあればいつでも受け入れるぞ、月々の使用料金だけで倉庫が空くんだ悪い話じゃないと思うが?」
ようはレンタルスペースという奴だ。
今はギルド相手だが、今後は他の商人や貴族を相手に保管を売りにすることも考えている。
もっとも、物が盗まれただの何だの言い出しそうだから、鍵つきの箱で保管するとかの条件はつきそうだけども。
「もしそういうのが必要になったらお願いね。ご馳走様、エリザありがとう。」
「え、もういいの?」
「他の仕事があるの思い出したから。食べないなら風蜥蜴の皮膜をかけといて。」
「溶けちゃうわよ。」
「溶けたら飲むわよ。」
まだ氷の残ったグラスをエリザに渡してニアは応接室を出て行ってしまった。
渡されたのをどうするのかと思ったが何の躊躇もなくエリザは自分の腹に収めていく。
ま、そうなるよな。
「あー美味しかった。皮膜で包んで保管できたらいいのにね。」
「包んだところで溶けるのは変わりないだろ。」
「でも汁は漏れないでしょ?」
「まぁなぁ。」
風蜥蜴の皮膜は水をしっかり遮断してくれるので、ゴミを寄せ付けないだけでなく汁物のデリバリーなんかにも使われている。
温度はそのまま影響するので、火のそばにおいておけば冷めにくいとか言う技もあったが・・・。
「まてよ。」
「どうしたの?」
「もしかしたら何とかなるかもしれない。ちょっと現地に行くから護衛してくれ。」
「オッケー、任せて!」
もしかするともしかするかもしれない。
急ぎ肉と皮膜を手配してエリザとともにダンジョンの氷壁へと向かう。
防寒対策をしっかりしてきたはずなのだが、そこは予想以上の寒さだった。
「寒い!」
「そんなの言わなくても分かるわよ。それで、何をする気なの?」
「肉を冷凍保存する。」
「でもそのままじゃ美味しくないんでしょ?」
「だから皮膜で包んで、旨味が逃げないようにした状態で凍らせるんだ。」
そう、そのまま凍らせるから問題だっただけで一手間加えれば十分にデメリットを克服できる。
まずは肉を皮膜でぐるぐる巻きにして、次に半分ほど水を入れて凍らせたヒートゴーレムの装甲の中にそれを入れる。
最後に上から水をかけて凍らせれば・・・。
「すごい、氷の中にお肉がある!」
「これなら解凍しても肉の旨味はそのままだし、外気に触れないから肉が痛む心配も少ない。さらには容器そのものが保冷できるから輸送中に溶け出す心配もないだろう。後は、これを量産して氷室に持っていけば完璧だ。」
「え、ここに置いておくんじゃないの?」
「保管したいのは山々だが、氷作りの邪魔になる上にこいつらを凍らせる場所も必要になる。効率化するためにも保管場所は別に必要なのさ。」
実験は成功。
真四角の容器をひっくり返すと、氷の中に肉の塊が浮かんでいた。
水の魔道具で作った氷は純度が高く透明度が非常に高い。
なので、何の肉を入れているか一目で分かるのがいいな。
まぁ、容器に名前を書いておけばいいだけの話なので保管するときは入れ物に入れたままだが、これを果物ですれば皮むきや加工の手間も省ける上に、氷漬けの果物という最高のビジュアルを確保できる。
陛下もさぞ驚くことだろう。
「さぁ、肉の保存が出来るとなったら問題も解決。じゃんじゃん確保して冷凍していこう。」
「オッケー!凍ったのはどうするの?」
「特製の木箱に詰め込んでそのままバーンに運んでもらう。追加の氷室をどこにするかはもう目星がついているから、肉を凍らせている間に氷を運んで氷室を完成させるとしよう。切り出しに運び出し、それと肉の確保と冷凍。時間がないだけに忙しくなるぞ。」
「そんなのいつものことじゃない。さ、早く戻りましょ。」
この前シュウ達の珪砂を探しに行くときに改めて廃鉱山を調べたおかげで新たな氷室候補を見つけることが出来たのだが、まさかこんな形で早々に実行することになるとは思わなかった。
氷の高速大量輸送が可能になった現状で、なまものを長期保存できる環境を確保することは必要不可欠。
更には氷漬け、つまり冷凍することによってもっと長期間保存できる可能性も出てきたわけだ。
食べ物に限らず薬草や薬なども保存することが出来るだろう。
これは革命とも言えるかもしれない。
もっとも、俺のように氷室を作れるだけの環境がなければ意味がないので、真似をされる心配はほとんどない。
まさに俺の独壇場、買っててよかった廃鉱山ってね。
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