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955.転売屋は大きな息子を洗う
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「トト!」
「バーン、おはようさん。」
「おはよう!今日もいい天気!」
「だな。あれ、ディーネはどうした?」
「ハハは行かないって。お肉があるなら呼んで欲しいって言ってた。」
せっかく親子?水入らずで出かけようと思ったのだが、出不精になってしまったようでディーネはダンジョンで留守番するようだ。
色気より食い気、お出かけよりも昼寝って感じだろうか。
まぁ、前に港町まで飛んだ時に色々と買い物したりしたので本人的には満足しているんだろう。
彼女たちの時間の流れは非常に緩やか、俺達の一日の感覚が一週間だったりするんだもんなぁ。
不思議なもんだ。
「ま、向こうに行けばバーンの分の肉は用意してくれているだろう。それじゃあ出発するか。」
「うん!」
畑から少し離れた所で元の姿に戻ってもらい、いつものように運搬用の大型木箱を足でつるす準備をする。
木箱を紐でしっかりと固定してバーンの足に結ぼうとしたその時だった。
何とも言えない臭いが風に吹かれて漂ってくる。
酸っぱいようなそうでないような。
これはあれだ、昔剣道をしていた時に防具を身に着けた時に嗅いだ臭いと同じだ。
つまりこれは汗の臭い?
でもなぁ、元の体でいるときは一緒に風呂も入っているし比較的清潔な感じなんだけど・・・。
そんな事を考えながら紐を固定していつもの様にバーンの背に跨ると、臭いはほぼ感じなくなった。
気のせいだったんだろうか。
地上はじりじりと焼けるような暑さだが空の上は太陽に近づいているのにそれほどでもない。
冷たい空気を感じつつあっという間に廃鉱山へと到着した。
バサバサとホバリングしながら木箱を降ろし、少し離れた所に着陸。
いつもならすぐに人型に戻るバーンなのだが、今日はなにやらそのままもぞもぞと羽を動かしている。
「どうした?」
「背中が痒い。」
「背中が?」
「うん、痒い。」
バサバサと羽を動かすたびに土埃が舞い上がる。
どうにかしてやりたいんだがその巨体のどこを掻いてやればいいんだろうか。
「ボス、どうされました。」
「マウジーか。バーンが背中が痒いと言い出してな、ちょっと待ってやってくれ。」
結局背中を岩場にこすりつけて少しはましになったようだ。
そのまま人の姿に戻るとホッとしたような顔をしている。
「もう大丈夫か?」
「うん、この姿だと痒くない。」
「なんだろうなぁ。」
心なしかさっきの酸っぱいようなにおいもするが、土埃を防ぐために口元を覆っているのでそこまでは感じない。
この状況でもマウジーは微動だにしないんだが、大丈夫なんだろうか。
「ふむ、バーン様水浴びはされていますか?」
「水浴び?昨日トトとしたよ。」
「いえ、元のお姿でです。」
「んー、してないかも。」
「恐らく臭いの原因はそれでしょう。加えてゴミか何かが背中付近に挟まってしまって痒いのかと思われます。」
「やっぱり臭ったのは気のせいじゃなかったか。」
「失礼ながら鼻はいいものでして、前に来られた時にお伝えするべきでした。」
普通は臭いですよなんて言えないしそこで悔やむ必要はない。
とはいえ、臭いと言われて少しショックなのかバーンが悲しそうに下を向いてしまった。
そんな顔するなよ我が息子、この父が何とかしてやるから。
「トト、臭い?」
「そうでもないぞ。だが皆にそう思われるのも嫌だろうし、いっちょ綺麗にしてやるとしよう。マウジー、
荷物は任せる。中に織り機なんかも入っているから確認しておいてくれ。それと、例のブツもな。」
「かしこまりました。水浴びでしたらここからもう少し東に行った所に大きな泉がございます。後で私達も手伝いに行きますので先にすっきりしてきてください。」
「いいのか?」
「いつもバーン様にはたくさんの荷物を運んで頂いておりますので、せめてもの恩返しです。それに、ワイバーンの背に乗る機会などめったにあるものではありませんから。」
なるほど、確かにその通りだ。
普通に生活していてワイバーンの背に乗る事はまずないだろう。
俺はバーンに乗り慣れてしまったが、普段鉱山内にいるマウジー達からすればまたとない機会。
最近刺激が少ないと若い連中が騒いでいるそうなので、ガス抜きも兼ねての手伝い志願というわけだ。
早速バーンの背に再び乗って東に飛ぶと、すぐの所に大きな泉があった。
大きいとはいえバーンが元の姿で入れば半分は埋まってしまいそうだが、水浴びをする分には十分だろう。
俺を地面に降ろすと歓声・・・というか雄たけびを上げながらワイバーンが泉に突撃していった。
上空からまっすぐ飛び込むと、巨大な水しぶきと共に泉の水が周りに飛び散る。
これだけで水が無くなってしまわないか心配だったが、中は思ったよりも深いようで水は問題無くバーンの体を濡らしてくれた。
「トト気持ちがいい!」
「そりゃよかったな。とりあえず羽をしっかり濡らしておけ。」
「うん!」
流石に一回転は出来ないようだが、体を傾けたりして器用に水を掛けていく。
じりじりと照り付ける太陽。
俺も足を濡らしたいところだが、今近づくと下敷きになりかねないので本人の気が済むまで遊ばせてやることにした。
「ボス、お待たせしました。」
「ちょうど今満足したところだ・・・って、なんだその恰好。」
「水浴びだけでは綺麗になりませんから、せっかくですので大掃除をしようと思いまして。」
「みんな!綺麗にしてくれるの?」
「そうらしいぞ。だからくすぐったくても我慢できるよな。」
「出来るよ!」
マウジー達鼠人族の手には長い棒と分厚い布が握られている。
必殺仕事人ならぬ掃除人ってところだろうか。
その中で一番風格が出ていたのは他でもないマウジーだった。
バーンに岸辺へ移動してもらい、伏せてもらった所で一斉に体に乗り込む。
俺は腰回り全般、マウジー達は小さな体と機動力を生かして足元や首周りの鱗を一枚一枚磨いていく。
よく見ると細かなゴミが鱗と鱗の隙間に入り込んでいるようだ。
なるほど、これが痒みと匂いの原因だったか。
ドラゴンは汗をかかないので体臭というわけではないようだが、食べカスや飛行時のゴミなんかが時間を掛けて詰まっていったんだろう。
途中何度か泉に入ってもらって剥ぎ取った汚れを落とすこと数時間。
「トト、それ!」
「ん?」
「それが痒いの!取って取って!」
鞍をどけて鱗を磨いていると急にバーンが体を左右に動かして暴れ出した。
幸い鼠人族は全員地面で休憩していたので大きな被害はなかったが、俺は落とされまいと必死になって鱗にしがみつく格好になってしまった。
落ちるとなかなかのケガをしてしまうので鱗の隙間深くに指を入れる形になったのだが、そこに鱗とは違う質感の何かを発見。
揺れる中、鱗をはがさないように取り出そうとすると、ふとした表紙に鱗を貫通するように金色に輝くトゲが姿を現した。
それも三本も。
『ゴールドイーゲルのトゲ。ダンジョン内で稀に見つかる金色に輝くハリネズミのトゲは、非常に鋭くドラゴンの鱗にすら刺さってしまう。あまりの鋭さから扱いには注意が必要だが、分厚い革や鋼鉄の鎧を加工出来るので職人垂涎の道具と言われている。最近の取引価格は金貨1枚、最安値金貨1枚最高値金貨1枚最終取引日は489日前と記録されています。』
「こりゃまた随分とデカいトゲだな。」
「あーーーすっきり!トトありがとう。」
「どういたしまして。」
トゲを手に地面に降りるとマウジー達がワラワラと集まって来た。
「ボス、何ですかそれは。」
「ダンジョンにいる金色のハリネズミのとげらしい。竜の鱗も貫通するらしいから気を付けろよ。」
「話には聞いたことありますが、本当に金ピカですね。」
「これ、これを刺してみてください」
そう言いながら鼠人が掃除の途中で剥がれ落ちたバーンの鱗を引きずって来た。
中々の重さがあるというのに、見た目以上に彼らは力持ちなんだよな。
『ワイバーンの鱗。飛竜と呼ばれるワイバーンの鱗は表面に凹凸が少なく空気抵抗が置きにくいようになっている。また飛行時は一枚一枚が重なり合う事でさらに抵抗をなくすため、ドラゴン種の中で一番の飛行速度を出すことが出来る。最近の平均取引価格は銀貨2枚。最安値銀貨1枚最高値銀貨4枚、最終取引日は本日と記録されています。』
鱗を受け取りゆっくり針を押し込んでいくと、まるで豆腐に箸を入れるようにスッと中に入ってしまった。
「「「「おぉぉぉ~。」」」」」
よくまぁこんな危険なのが刺さっていたもんだ。
どうやら先端は鋭くても反対側にその鋭さはないようで、押し込んでみても刺さる事は無かった。
偶然反対向きに刺さってしまったせいで肌に突き刺さる事は無かったが、抜けなくなってしまったんだろう。
ケガが無くて本当に良かった。
「よくまぁこんなのが刺さって無事だったな。」
「本当ですね。」
「トト、見せて見せて!」
人型に戻ったバーンが無邪気に金の針が刺さった自分の鱗を覗き込む。
恐怖よりも興味の方が勝っているようだ。
「バーン、ダンジョンの中で金色のハリネズミを見たことはあるか?」
「トゲトゲしたやつなら巣に迷い込んできた時に他のドラゴンと転がして遊んだけど、金色だったかも。」
「間違いなくそれだな。」
「えへへ、そっかぁ。」
「次からは気を付けろよ。」
「うん!みんな、綺麗にしてくれてありがとう。」
おぉ、ちゃんとお礼が言えるのか、偉いなぁ。
最近じゃお礼も言えなければ挨拶も出来ないような大人が増えているのだが、いい子に育っているようだ。
ふとした理由で始まったバーンの水浴びだったのだが、三本の針の他にも多数の鱗が確保できた。
まさに棚から牡丹餅、バーンの背中から鱗って感じだろうか。
良い感じの疲労感はあるんだが、残念ながらここに来た目的は達成できていない。
急ぎ廃鉱山に戻って残りの作業に取り掛かろう。
その為に今日はここまで来たんだ。
まだまだ休んでいられないってね。
「バーン、おはようさん。」
「おはよう!今日もいい天気!」
「だな。あれ、ディーネはどうした?」
「ハハは行かないって。お肉があるなら呼んで欲しいって言ってた。」
せっかく親子?水入らずで出かけようと思ったのだが、出不精になってしまったようでディーネはダンジョンで留守番するようだ。
色気より食い気、お出かけよりも昼寝って感じだろうか。
まぁ、前に港町まで飛んだ時に色々と買い物したりしたので本人的には満足しているんだろう。
彼女たちの時間の流れは非常に緩やか、俺達の一日の感覚が一週間だったりするんだもんなぁ。
不思議なもんだ。
「ま、向こうに行けばバーンの分の肉は用意してくれているだろう。それじゃあ出発するか。」
「うん!」
畑から少し離れた所で元の姿に戻ってもらい、いつものように運搬用の大型木箱を足でつるす準備をする。
木箱を紐でしっかりと固定してバーンの足に結ぼうとしたその時だった。
何とも言えない臭いが風に吹かれて漂ってくる。
酸っぱいようなそうでないような。
これはあれだ、昔剣道をしていた時に防具を身に着けた時に嗅いだ臭いと同じだ。
つまりこれは汗の臭い?
でもなぁ、元の体でいるときは一緒に風呂も入っているし比較的清潔な感じなんだけど・・・。
そんな事を考えながら紐を固定していつもの様にバーンの背に跨ると、臭いはほぼ感じなくなった。
気のせいだったんだろうか。
地上はじりじりと焼けるような暑さだが空の上は太陽に近づいているのにそれほどでもない。
冷たい空気を感じつつあっという間に廃鉱山へと到着した。
バサバサとホバリングしながら木箱を降ろし、少し離れた所に着陸。
いつもならすぐに人型に戻るバーンなのだが、今日はなにやらそのままもぞもぞと羽を動かしている。
「どうした?」
「背中が痒い。」
「背中が?」
「うん、痒い。」
バサバサと羽を動かすたびに土埃が舞い上がる。
どうにかしてやりたいんだがその巨体のどこを掻いてやればいいんだろうか。
「ボス、どうされました。」
「マウジーか。バーンが背中が痒いと言い出してな、ちょっと待ってやってくれ。」
結局背中を岩場にこすりつけて少しはましになったようだ。
そのまま人の姿に戻るとホッとしたような顔をしている。
「もう大丈夫か?」
「うん、この姿だと痒くない。」
「なんだろうなぁ。」
心なしかさっきの酸っぱいようなにおいもするが、土埃を防ぐために口元を覆っているのでそこまでは感じない。
この状況でもマウジーは微動だにしないんだが、大丈夫なんだろうか。
「ふむ、バーン様水浴びはされていますか?」
「水浴び?昨日トトとしたよ。」
「いえ、元のお姿でです。」
「んー、してないかも。」
「恐らく臭いの原因はそれでしょう。加えてゴミか何かが背中付近に挟まってしまって痒いのかと思われます。」
「やっぱり臭ったのは気のせいじゃなかったか。」
「失礼ながら鼻はいいものでして、前に来られた時にお伝えするべきでした。」
普通は臭いですよなんて言えないしそこで悔やむ必要はない。
とはいえ、臭いと言われて少しショックなのかバーンが悲しそうに下を向いてしまった。
そんな顔するなよ我が息子、この父が何とかしてやるから。
「トト、臭い?」
「そうでもないぞ。だが皆にそう思われるのも嫌だろうし、いっちょ綺麗にしてやるとしよう。マウジー、
荷物は任せる。中に織り機なんかも入っているから確認しておいてくれ。それと、例のブツもな。」
「かしこまりました。水浴びでしたらここからもう少し東に行った所に大きな泉がございます。後で私達も手伝いに行きますので先にすっきりしてきてください。」
「いいのか?」
「いつもバーン様にはたくさんの荷物を運んで頂いておりますので、せめてもの恩返しです。それに、ワイバーンの背に乗る機会などめったにあるものではありませんから。」
なるほど、確かにその通りだ。
普通に生活していてワイバーンの背に乗る事はまずないだろう。
俺はバーンに乗り慣れてしまったが、普段鉱山内にいるマウジー達からすればまたとない機会。
最近刺激が少ないと若い連中が騒いでいるそうなので、ガス抜きも兼ねての手伝い志願というわけだ。
早速バーンの背に再び乗って東に飛ぶと、すぐの所に大きな泉があった。
大きいとはいえバーンが元の姿で入れば半分は埋まってしまいそうだが、水浴びをする分には十分だろう。
俺を地面に降ろすと歓声・・・というか雄たけびを上げながらワイバーンが泉に突撃していった。
上空からまっすぐ飛び込むと、巨大な水しぶきと共に泉の水が周りに飛び散る。
これだけで水が無くなってしまわないか心配だったが、中は思ったよりも深いようで水は問題無くバーンの体を濡らしてくれた。
「トト気持ちがいい!」
「そりゃよかったな。とりあえず羽をしっかり濡らしておけ。」
「うん!」
流石に一回転は出来ないようだが、体を傾けたりして器用に水を掛けていく。
じりじりと照り付ける太陽。
俺も足を濡らしたいところだが、今近づくと下敷きになりかねないので本人の気が済むまで遊ばせてやることにした。
「ボス、お待たせしました。」
「ちょうど今満足したところだ・・・って、なんだその恰好。」
「水浴びだけでは綺麗になりませんから、せっかくですので大掃除をしようと思いまして。」
「みんな!綺麗にしてくれるの?」
「そうらしいぞ。だからくすぐったくても我慢できるよな。」
「出来るよ!」
マウジー達鼠人族の手には長い棒と分厚い布が握られている。
必殺仕事人ならぬ掃除人ってところだろうか。
その中で一番風格が出ていたのは他でもないマウジーだった。
バーンに岸辺へ移動してもらい、伏せてもらった所で一斉に体に乗り込む。
俺は腰回り全般、マウジー達は小さな体と機動力を生かして足元や首周りの鱗を一枚一枚磨いていく。
よく見ると細かなゴミが鱗と鱗の隙間に入り込んでいるようだ。
なるほど、これが痒みと匂いの原因だったか。
ドラゴンは汗をかかないので体臭というわけではないようだが、食べカスや飛行時のゴミなんかが時間を掛けて詰まっていったんだろう。
途中何度か泉に入ってもらって剥ぎ取った汚れを落とすこと数時間。
「トト、それ!」
「ん?」
「それが痒いの!取って取って!」
鞍をどけて鱗を磨いていると急にバーンが体を左右に動かして暴れ出した。
幸い鼠人族は全員地面で休憩していたので大きな被害はなかったが、俺は落とされまいと必死になって鱗にしがみつく格好になってしまった。
落ちるとなかなかのケガをしてしまうので鱗の隙間深くに指を入れる形になったのだが、そこに鱗とは違う質感の何かを発見。
揺れる中、鱗をはがさないように取り出そうとすると、ふとした表紙に鱗を貫通するように金色に輝くトゲが姿を現した。
それも三本も。
『ゴールドイーゲルのトゲ。ダンジョン内で稀に見つかる金色に輝くハリネズミのトゲは、非常に鋭くドラゴンの鱗にすら刺さってしまう。あまりの鋭さから扱いには注意が必要だが、分厚い革や鋼鉄の鎧を加工出来るので職人垂涎の道具と言われている。最近の取引価格は金貨1枚、最安値金貨1枚最高値金貨1枚最終取引日は489日前と記録されています。』
「こりゃまた随分とデカいトゲだな。」
「あーーーすっきり!トトありがとう。」
「どういたしまして。」
トゲを手に地面に降りるとマウジー達がワラワラと集まって来た。
「ボス、何ですかそれは。」
「ダンジョンにいる金色のハリネズミのとげらしい。竜の鱗も貫通するらしいから気を付けろよ。」
「話には聞いたことありますが、本当に金ピカですね。」
「これ、これを刺してみてください」
そう言いながら鼠人が掃除の途中で剥がれ落ちたバーンの鱗を引きずって来た。
中々の重さがあるというのに、見た目以上に彼らは力持ちなんだよな。
『ワイバーンの鱗。飛竜と呼ばれるワイバーンの鱗は表面に凹凸が少なく空気抵抗が置きにくいようになっている。また飛行時は一枚一枚が重なり合う事でさらに抵抗をなくすため、ドラゴン種の中で一番の飛行速度を出すことが出来る。最近の平均取引価格は銀貨2枚。最安値銀貨1枚最高値銀貨4枚、最終取引日は本日と記録されています。』
鱗を受け取りゆっくり針を押し込んでいくと、まるで豆腐に箸を入れるようにスッと中に入ってしまった。
「「「「おぉぉぉ~。」」」」」
よくまぁこんな危険なのが刺さっていたもんだ。
どうやら先端は鋭くても反対側にその鋭さはないようで、押し込んでみても刺さる事は無かった。
偶然反対向きに刺さってしまったせいで肌に突き刺さる事は無かったが、抜けなくなってしまったんだろう。
ケガが無くて本当に良かった。
「よくまぁこんなのが刺さって無事だったな。」
「本当ですね。」
「トト、見せて見せて!」
人型に戻ったバーンが無邪気に金の針が刺さった自分の鱗を覗き込む。
恐怖よりも興味の方が勝っているようだ。
「バーン、ダンジョンの中で金色のハリネズミを見たことはあるか?」
「トゲトゲしたやつなら巣に迷い込んできた時に他のドラゴンと転がして遊んだけど、金色だったかも。」
「間違いなくそれだな。」
「えへへ、そっかぁ。」
「次からは気を付けろよ。」
「うん!みんな、綺麗にしてくれてありがとう。」
おぉ、ちゃんとお礼が言えるのか、偉いなぁ。
最近じゃお礼も言えなければ挨拶も出来ないような大人が増えているのだが、いい子に育っているようだ。
ふとした理由で始まったバーンの水浴びだったのだが、三本の針の他にも多数の鱗が確保できた。
まさに棚から牡丹餅、バーンの背中から鱗って感じだろうか。
良い感じの疲労感はあるんだが、残念ながらここに来た目的は達成できていない。
急ぎ廃鉱山に戻って残りの作業に取り掛かろう。
その為に今日はここまで来たんだ。
まだまだ休んでいられないってね。
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