934 / 1,027
931.転売屋は西方の情報を収集する
しおりを挟む
国王が変わったことでどれほどの影響が出るかは分からないのだが、今の生活水準を維持する為にも必要な物は買い占めておかなければならない。
とりあえず情報を得るべく、俺はバーンと共に港町まで急いで向かった。
「その件に関してはこちらでも把握しています。今の所商人の動きに変わった様子は無いですね。」
「そうか。それを聞いて安心した。」
「でも、いつどう変わるかは分かりません。私達としても西方商人が持ち込む品には色々と助けられていますので正直今居なくなられるのは苦しい限りです。」
真っ先に向かったのは街長であるポーラさんの所。
やはりこちらでも商人を通じて情報を掴んでいたようで、色々と調べていたようだが現状では大きな動きは無いようだ。
向こうも変わったばかりで、まずは内政を落ち着かせる事に注力しているのかもしれない。
俺はその辺詳しくないが、まずは足元を固めないことには何事も始まらないからな。
そして、それが収まった後いよいよ次の段階に移行すると。
それにどのぐらいの時間が掛かるかは分からないが、あまり悠長なことは言ってられないだろう。
「前国王の退位について何か分かってるのか?」
「なんでも、居なくなった奥様を探す為に弟さんに王位を譲られたそうですよ。」
「あー、やっぱりそうなのか。」
「奥様が居なくなった理由が定かではないそうですけど、あまり国民受けもしていなかったようですし代替わりするのは時間の問題だったんじゃないですかね。」
「とはいえ、これだけ西方の品が入るようになっていたのも、前国王が輸出を推奨したからって話だ。今更それを止められるのは正直きついな。」
せっかく西方製の品でどちらも潤ってきたところでいきなり梯子を外されると、どちらの商人も一気に苦しくなる。
それを売るために投資をして販路を確保し、さぁ今から儲けるぞ!というところでだ。
致し方ないとはいえ、これで廃業する商人も少なからず居るだろう。
「聡い商人や貴族が早くも西方製の品を買い占めているそうです。あ、シロウさんのことじゃないですよ!」
「まぁやろうとしていることは同じだしな、気にするな。」
「何かお力になれればいいんですけど。」
「コレといってやって欲しいことはないから気にせず街の運営に注力してくれ。そういや彼女はどうした?」
「彼女?」
「ビネル家の、確かトリーヌだったか。最近姿を見ないが・・・。」
「お呼びですか!」
突然後ろから元気一杯の声が聞こえてきた。
仕事モードのキリリとした顔が露骨に嫌な顔に変化するあたりご本人の登場で間違いないだろう。
「元気そうだな。」
「お蔭様で、お父様に代わり仕事に邁進しておりましたの。しばらくお顔を出せませんでしたのに私の事を気にかけてくださり光栄ですわ。」
「トリーヌ、ここは僕の執務室なんだけど?」
「それがどうしまして?貴女が私を呼び出したのでしょう、『西方の動向が知りたい』って。」
胸元に垂れる金髪ロングヘアーをいつものように右手で後ろに払い、腰に手を当てて胸を張るトリーヌさん。
相変わらずの感じだが、心なしか前よりも堂々としている気がする。
さっき父親に代わって仕事をしているといっていたあたり、こちらも代替わりをしたんだろう。
「西方の動向?そうか、海運業をしているんだったな。」
「シロウ様のお邪魔をしないよう今は西方の商人と取引をしておりますの。今回の情報も、私がポーラに提供しましたのよ。」
「ってことは一番鮮度のいい情報を持っているのか。」
「そういうことです。他でもないシロウ様でしたら、とっておきの情報を提供して差し上げるのですが・・・、この後お時間ありまして?」
前までの高飛車な感じとはうって変わって、女豹のような雰囲気を感じる。
持っているものをどうやって使えば最善を引き出せるのか、商人としてかなり成長したようだ。
これは前みたいに舐めてかかると痛い目を見るかもしれない。
そういう意味では、ポーラさんは随分と出遅れた感じだな。
「生憎あまり時間は無いんだが、ランチぐらいなら付き合えるぞ。」
「最近出来たいいお店を知っていますの、よろしければそちらでゆっくり情報交換いたしましょう。」
「ちょっと!シロウさんは僕と情報交換していたんだけど!邪魔しないでよ。」
「そんな鮮度の低い情報なんて聞くだけ無駄ですわ。お魚と同じ、取れたてが一番ですのよ。」
「違いない。」
「じゃあ僕も行く!街長命令!拒否したら営業権剥奪してやるんだから!」
おいおい、職権乱用も甚だし過ぎるだろ。
いくら気心の知れた相手とはいえ言っていい事と悪いことがある。
彼女は傾いた自分の家を救うべく、前の宣言どおりプライドを捨て汚れた仕事も引き受けて必死になって家を建て直した。
海運業としては一番手から三番手にまで落ちたものの、現在では前とは比べものにならないぐらいに成長している。
西方商人にいち早く目をつけ、父親の買い付けた不用品を俺に全て買い取らせた後、その金を使ってうちの規格木箱を導入したんだ。
全ては家を残す為。
正直彼女がそこまでするとは思っても居なかったのだが、あの時の言葉は本気だったと後になって理解した。
正直動機は不純だが、それがモチベーションに繋がった上に結果を残しているんだから誰にも文句は言えないだろう。
『俺と結婚する』、か。
正直好みでもないしそもそもその気は無いのだが、一緒に仕事をするという部分では十分にその実力を身につけている。
それを知っているからこそ、彼女がこの場に居ないことをポーラさんに聞いたんだ。
西方について今一番鮮度の高い情報を持っている人物はどこかってね。
そんな人物の営業権を剥奪するとか、もちろん本気じゃないだろうが・・・本気じゃないよな?
「なるほど、前国王の行方すら分からないのか。一体どうなってるんだ?」
「新国王である弟君に幽閉もしくは殺害されたという噂もあったんですが、その後この国に入ったのを見たという話が多数出ているんです。とはいえ、確証のある話ではないのであくまでも噂程度ですけど。」
「その噂は僕も聞いたことがあるよ。冒険者ギルドで護衛を雇って東に向かったんだって。」
「東ねぇ・・・。」
トリーヌさんに案内してもらった店で遅めの昼食を取りながらの情報交換。
交換って言うか提供だな、これは。
もちろん見返りは要求されるだろうけど、それを惜しむ必要の無いぐらいの鮮度の高い情報を貰うことができた。
火のないところに煙が立たないように、噂もまた事実から生み出される。
前国王がこの国に来て、そして俺達の街のほうへと向かった。
それは間違いないだろう。
じゃあ何の為?
決まってる、居なくなった嫁さんを探す為だ。
どう考えてもそれしかない。
前に聞いた話じゃ、虐げられていたとか言っていたがそれも事実ではないんだろう。
そんな嫁さんを地位を捨ててまで追いかけることなんてしないはずだ。
じゃあ嫁さんはどこに?
あまりにも出来すぎている流れに思わず身震いしてしまった。
「どうされまして?」
「いや、なんでもない。ともかく前国王はこの国に来ているんだな。」
「噂ですけど。」
「それが答えだよ。」
「シロウさんは随分その人の事を気にされているんですね。知り合いなんですか?」
「そんなわけ無いだろうが。そもそも西方になんていったことないし、その人がどんな顔かもしらないっての。」
話に聞いているだけで西方の事はまったくといっていいほど知らない。
前国王がどんな顔で、逃げ出した嫁がどんな人だったかも聞いた話だけだ。
地位を捨てたとはいえ元国王。
そんな人間がこの国に居るとなればどう考えても面倒ごとがおきるのは間違いない。
どの国にも隠しておきたい秘密の一つや二つはあるだろう。
それを知っている人間が外に出てしまったんだぞ?
普通は探して捕まえようとするよなぁ。
もしその場にいたり、かくまったとか言われたらどうなる?
うーん、考えたくも無い。
「それもそうですよね。」
「ともかくだ、当分は西方の情報を出来る限り集めておいてくれ。」
「それと醤油と味噌の仕入れでしたわね、謹んでお受けいたしますわ。」
「でもそんなにかき集めてどうするの?たしかに醤油は美味しいけど、かき集めるとすごい量になるんじゃない?」
「個人単位ではそうだろうが、街単位だとそうでもないんだよ。」
特にうちみたいに一般家庭レベルで使うとなると、消費量はかなりのものだ。
最初は多く感じるかもしれないが、気づけばすぐになくなってしまうのは間違いない。
だからこそ過剰に思えるぐらいに仕入れを行いもしもに備えておきたいんだ。
もっとも、輸出を減らしたりしなければその必要も無いわけだが。
コレまで集めた情報から察するにそうなるのは間違いないだろう。
「まだまだ発想が小娘ですわね。」
「小娘って、同い年じゃないか。」
「そんな小娘がこの街の長だなんて、いっそのことシロウ様がこの街の長になればよろしいのです。そうすればますます繁栄すること間違いありませんわ。」
「いやいや勘弁してくれ、そんなめんどくさい事ごめんだね。」
「ふふ、そうですわね。シロウ様にはもっと相応しいお仕事がありますもの。いかがです?我がドネル家と正式に手を結ばれるのは。なんでしたら籍を入れてもかまいませんが。」
「悪いがそれは遠慮しておく。」
街長も結婚もどちらも願い下げだ。
ともかく西方の最新情報は獲得できた。
さらには醤油と味噌もひとまずは問題なく手に入れることが出来そうだし、大きな収穫があったといえるだろう。
後は買い付けられるものを買い付けて、街に戻るとするかな。
「まったく、そんな強引なやり方だから断られるんだよ。」
「小娘に言われたくありませんわね。」
「あー、また小娘って言った!」
「だって本当の事ですもの。シロウ様に相応しいのはこの私、街長の地位に胡坐をかいている貴女と一緒にしないでくださいまし。」
「胡坐なんてかいてないよ!コレでも一生懸命なんだからね!」
やれやれ、また始まった。
長くなりそうなので一足先にお暇するとしよう。
やることはまだたくさんある。
そろそろバーンも待ちくたびれていることだろうし、急ぐとするか。
口論を続ける二人からそっと逃げ出し、港のほうへと駆け下りる。
潮風はもう夏の雰囲気を纏っていた。
夏はすぐそこ。
でも、この夏はいつも以上にめんどくさいことになりそうだ。
とりあえず情報を得るべく、俺はバーンと共に港町まで急いで向かった。
「その件に関してはこちらでも把握しています。今の所商人の動きに変わった様子は無いですね。」
「そうか。それを聞いて安心した。」
「でも、いつどう変わるかは分かりません。私達としても西方商人が持ち込む品には色々と助けられていますので正直今居なくなられるのは苦しい限りです。」
真っ先に向かったのは街長であるポーラさんの所。
やはりこちらでも商人を通じて情報を掴んでいたようで、色々と調べていたようだが現状では大きな動きは無いようだ。
向こうも変わったばかりで、まずは内政を落ち着かせる事に注力しているのかもしれない。
俺はその辺詳しくないが、まずは足元を固めないことには何事も始まらないからな。
そして、それが収まった後いよいよ次の段階に移行すると。
それにどのぐらいの時間が掛かるかは分からないが、あまり悠長なことは言ってられないだろう。
「前国王の退位について何か分かってるのか?」
「なんでも、居なくなった奥様を探す為に弟さんに王位を譲られたそうですよ。」
「あー、やっぱりそうなのか。」
「奥様が居なくなった理由が定かではないそうですけど、あまり国民受けもしていなかったようですし代替わりするのは時間の問題だったんじゃないですかね。」
「とはいえ、これだけ西方の品が入るようになっていたのも、前国王が輸出を推奨したからって話だ。今更それを止められるのは正直きついな。」
せっかく西方製の品でどちらも潤ってきたところでいきなり梯子を外されると、どちらの商人も一気に苦しくなる。
それを売るために投資をして販路を確保し、さぁ今から儲けるぞ!というところでだ。
致し方ないとはいえ、これで廃業する商人も少なからず居るだろう。
「聡い商人や貴族が早くも西方製の品を買い占めているそうです。あ、シロウさんのことじゃないですよ!」
「まぁやろうとしていることは同じだしな、気にするな。」
「何かお力になれればいいんですけど。」
「コレといってやって欲しいことはないから気にせず街の運営に注力してくれ。そういや彼女はどうした?」
「彼女?」
「ビネル家の、確かトリーヌだったか。最近姿を見ないが・・・。」
「お呼びですか!」
突然後ろから元気一杯の声が聞こえてきた。
仕事モードのキリリとした顔が露骨に嫌な顔に変化するあたりご本人の登場で間違いないだろう。
「元気そうだな。」
「お蔭様で、お父様に代わり仕事に邁進しておりましたの。しばらくお顔を出せませんでしたのに私の事を気にかけてくださり光栄ですわ。」
「トリーヌ、ここは僕の執務室なんだけど?」
「それがどうしまして?貴女が私を呼び出したのでしょう、『西方の動向が知りたい』って。」
胸元に垂れる金髪ロングヘアーをいつものように右手で後ろに払い、腰に手を当てて胸を張るトリーヌさん。
相変わらずの感じだが、心なしか前よりも堂々としている気がする。
さっき父親に代わって仕事をしているといっていたあたり、こちらも代替わりをしたんだろう。
「西方の動向?そうか、海運業をしているんだったな。」
「シロウ様のお邪魔をしないよう今は西方の商人と取引をしておりますの。今回の情報も、私がポーラに提供しましたのよ。」
「ってことは一番鮮度のいい情報を持っているのか。」
「そういうことです。他でもないシロウ様でしたら、とっておきの情報を提供して差し上げるのですが・・・、この後お時間ありまして?」
前までの高飛車な感じとはうって変わって、女豹のような雰囲気を感じる。
持っているものをどうやって使えば最善を引き出せるのか、商人としてかなり成長したようだ。
これは前みたいに舐めてかかると痛い目を見るかもしれない。
そういう意味では、ポーラさんは随分と出遅れた感じだな。
「生憎あまり時間は無いんだが、ランチぐらいなら付き合えるぞ。」
「最近出来たいいお店を知っていますの、よろしければそちらでゆっくり情報交換いたしましょう。」
「ちょっと!シロウさんは僕と情報交換していたんだけど!邪魔しないでよ。」
「そんな鮮度の低い情報なんて聞くだけ無駄ですわ。お魚と同じ、取れたてが一番ですのよ。」
「違いない。」
「じゃあ僕も行く!街長命令!拒否したら営業権剥奪してやるんだから!」
おいおい、職権乱用も甚だし過ぎるだろ。
いくら気心の知れた相手とはいえ言っていい事と悪いことがある。
彼女は傾いた自分の家を救うべく、前の宣言どおりプライドを捨て汚れた仕事も引き受けて必死になって家を建て直した。
海運業としては一番手から三番手にまで落ちたものの、現在では前とは比べものにならないぐらいに成長している。
西方商人にいち早く目をつけ、父親の買い付けた不用品を俺に全て買い取らせた後、その金を使ってうちの規格木箱を導入したんだ。
全ては家を残す為。
正直彼女がそこまでするとは思っても居なかったのだが、あの時の言葉は本気だったと後になって理解した。
正直動機は不純だが、それがモチベーションに繋がった上に結果を残しているんだから誰にも文句は言えないだろう。
『俺と結婚する』、か。
正直好みでもないしそもそもその気は無いのだが、一緒に仕事をするという部分では十分にその実力を身につけている。
それを知っているからこそ、彼女がこの場に居ないことをポーラさんに聞いたんだ。
西方について今一番鮮度の高い情報を持っている人物はどこかってね。
そんな人物の営業権を剥奪するとか、もちろん本気じゃないだろうが・・・本気じゃないよな?
「なるほど、前国王の行方すら分からないのか。一体どうなってるんだ?」
「新国王である弟君に幽閉もしくは殺害されたという噂もあったんですが、その後この国に入ったのを見たという話が多数出ているんです。とはいえ、確証のある話ではないのであくまでも噂程度ですけど。」
「その噂は僕も聞いたことがあるよ。冒険者ギルドで護衛を雇って東に向かったんだって。」
「東ねぇ・・・。」
トリーヌさんに案内してもらった店で遅めの昼食を取りながらの情報交換。
交換って言うか提供だな、これは。
もちろん見返りは要求されるだろうけど、それを惜しむ必要の無いぐらいの鮮度の高い情報を貰うことができた。
火のないところに煙が立たないように、噂もまた事実から生み出される。
前国王がこの国に来て、そして俺達の街のほうへと向かった。
それは間違いないだろう。
じゃあ何の為?
決まってる、居なくなった嫁さんを探す為だ。
どう考えてもそれしかない。
前に聞いた話じゃ、虐げられていたとか言っていたがそれも事実ではないんだろう。
そんな嫁さんを地位を捨ててまで追いかけることなんてしないはずだ。
じゃあ嫁さんはどこに?
あまりにも出来すぎている流れに思わず身震いしてしまった。
「どうされまして?」
「いや、なんでもない。ともかく前国王はこの国に来ているんだな。」
「噂ですけど。」
「それが答えだよ。」
「シロウさんは随分その人の事を気にされているんですね。知り合いなんですか?」
「そんなわけ無いだろうが。そもそも西方になんていったことないし、その人がどんな顔かもしらないっての。」
話に聞いているだけで西方の事はまったくといっていいほど知らない。
前国王がどんな顔で、逃げ出した嫁がどんな人だったかも聞いた話だけだ。
地位を捨てたとはいえ元国王。
そんな人間がこの国に居るとなればどう考えても面倒ごとがおきるのは間違いない。
どの国にも隠しておきたい秘密の一つや二つはあるだろう。
それを知っている人間が外に出てしまったんだぞ?
普通は探して捕まえようとするよなぁ。
もしその場にいたり、かくまったとか言われたらどうなる?
うーん、考えたくも無い。
「それもそうですよね。」
「ともかくだ、当分は西方の情報を出来る限り集めておいてくれ。」
「それと醤油と味噌の仕入れでしたわね、謹んでお受けいたしますわ。」
「でもそんなにかき集めてどうするの?たしかに醤油は美味しいけど、かき集めるとすごい量になるんじゃない?」
「個人単位ではそうだろうが、街単位だとそうでもないんだよ。」
特にうちみたいに一般家庭レベルで使うとなると、消費量はかなりのものだ。
最初は多く感じるかもしれないが、気づけばすぐになくなってしまうのは間違いない。
だからこそ過剰に思えるぐらいに仕入れを行いもしもに備えておきたいんだ。
もっとも、輸出を減らしたりしなければその必要も無いわけだが。
コレまで集めた情報から察するにそうなるのは間違いないだろう。
「まだまだ発想が小娘ですわね。」
「小娘って、同い年じゃないか。」
「そんな小娘がこの街の長だなんて、いっそのことシロウ様がこの街の長になればよろしいのです。そうすればますます繁栄すること間違いありませんわ。」
「いやいや勘弁してくれ、そんなめんどくさい事ごめんだね。」
「ふふ、そうですわね。シロウ様にはもっと相応しいお仕事がありますもの。いかがです?我がドネル家と正式に手を結ばれるのは。なんでしたら籍を入れてもかまいませんが。」
「悪いがそれは遠慮しておく。」
街長も結婚もどちらも願い下げだ。
ともかく西方の最新情報は獲得できた。
さらには醤油と味噌もひとまずは問題なく手に入れることが出来そうだし、大きな収穫があったといえるだろう。
後は買い付けられるものを買い付けて、街に戻るとするかな。
「まったく、そんな強引なやり方だから断られるんだよ。」
「小娘に言われたくありませんわね。」
「あー、また小娘って言った!」
「だって本当の事ですもの。シロウ様に相応しいのはこの私、街長の地位に胡坐をかいている貴女と一緒にしないでくださいまし。」
「胡坐なんてかいてないよ!コレでも一生懸命なんだからね!」
やれやれ、また始まった。
長くなりそうなので一足先にお暇するとしよう。
やることはまだたくさんある。
そろそろバーンも待ちくたびれていることだろうし、急ぐとするか。
口論を続ける二人からそっと逃げ出し、港のほうへと駆け下りる。
潮風はもう夏の雰囲気を纏っていた。
夏はすぐそこ。
でも、この夏はいつも以上にめんどくさいことになりそうだ。
8
お気に入りに追加
328
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
【完結】彼女以外、みんな思い出す。
❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。
幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。
神様との賭けに勝ったので、スキルを沢山貰えた件。
猫丸
ファンタジー
ある日の放課後。突然足元に魔法陣が現れると、気付けば目の前には神を名乗る存在が居た。
そこで神は異世界に送るからスキルを1つ選べと言ってくる。
あれ?これもしかして頑張ったらもっと貰えるパターンでは?
そこで彼は思った――もっと欲しい!
欲をかいた少年は神様に賭けをしないかと提案した。
神様とゲームをすることになった悠斗はその結果――
※過去に投稿していたものを大きく加筆修正したものになります。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!
父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
その他、多数投稿しています!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-
ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。
自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。
28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。
そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。
安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。
いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して!
この世界は無い物ばかり。
現代知識を使い生産チートを目指します。
※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。
転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~
hisa
ファンタジー
受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。
自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。
戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?
教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!!
※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく!
※第5章に突入しました。
※小説家になろう96万PV突破!
※カクヨム68万PV突破!
※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる