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897.転売屋は激辛スープを作る
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ディーネとのデートは驚きの連続だった。
当初の予定としていたディーネ希望の買い物は、旧王朝時代のネックレスを無事に購入する事が出来た。
随分と古い感じはするのだが本人はいたって気に入っており、購入後早速身に着けると嬉しそうに見せて来た。
なんでも昔地上をうろうろしていた頃に見たデザインなんだとか。
もちろんそれと全く同じということは無いと思うが、まぁ本人が喜んでいるならそれでいいか。
他にもいくつか旧王朝時代の品を手に入れる事が出来たので、次のオークションにでも出品するつもりでいる。
いかにも偽物!って感じの品が山ほど並べられた露店だったのだが、まさかこんな大当たりが眠っているとは。
あのときディーネがネックレスを見つけなかったら普通にスルーしていただろう。
まるでリーシャセンサーのようだ。
その後も気になった店をすべて見て回り、二人でお腹いっぱいになるまで飲み食いした。
正直もう入らない。
「美味であった。」
「そりゃよかった。」
「シロウはあまり気に入った様子ではなかったな。」
「辛いのは嫌いじゃないんだが、あそこまで辛いと正直きつい。」
「そうか?私にはちょうど良かったがの。」
今なにより今回のデート一番の驚きは最後に入ったあの露店。
近づくだけで目が痛くなるほどの香辛料をふんだんに使った、南方からきていた激辛料理店だ。
ディーネの鱗の様な鮮やかな赤い色をしたスープに、港町ならではの新鮮な魚介がふんだんに使用されており三口目ぐらいまでは俺も美味しくいただけた。
問題はその先だ。
喉を焼き鼻の粘膜を過激に刺激するあの真っ赤なスープ。
それを飲むたびに俺の体は悲鳴を上げ、最後は涙を流しながらギブアップするしかできなかった。
ワイルドカウのミルクを飲んでもまだヒリヒリしている。
うーむ、今日の夜が非常に心配だなぁ。
「正直あれを喰えるのはディーネしかいないだろ。でもそのおかげで店主が良い物をくれたし、結果オーライってやつだな。」
「うむ、あの味を街に戻っても食べられるのは非常に嬉しい限りじゃ。」
「さすがにそのままじゃ無理だろうからある程度加減するつもりだが・・・。げ、デスキャプシカムがこんなに入っているんか。そりゃ辛いわけだ。」
「なんじゃ辛さを減らすのか?」
「じゃないとあんなの誰も食べれないからなぁ。ま、ディーネ用にはちゃんと元のレシピで作ってやるから安心しろ。」
涙を流しながら代金を支払い、さぁ帰ろうかと立ち上がった時だ。
俺が残してしまった真っ赤なスープを涼しい顔でぺろりと平らげるディーネの食べっぷりに店主がいたく感動し、よかったら作ってくれとレシピを教えてくれた。
飲食店にとってレシピは門外不出の物。
いくら南方からやっていたその日限りの露店とはいえ、それをいとも簡単に渡すなんてよっぽど気に入ってくれたんだろうなぁ。
確かに辛くて全部食べられなかったが、それはデスキャプシカムのような激辛トウガラシが大量に使われているからであって、その量を加減してやれば十分に美味いのは分かっている。
辛さを減らすことにディーネは不満のようだが、彼女だけ別添えで増量してやれば文句はないだろう。
「再現できそうか?」
「材料自体はごくありふれたものだし、いくつか南方から仕入れれば問題ないだろう。たしかモーリスさんの店にあったはずだ。」
「ならばよし。」
「そろそろ暗くなってきたな、他にやり残したことは無いか?」
「欲しい物は手に入れたし腹もいっぱいになった。楽しかったぞ、シロウ。」
「そりゃ何よりだ。じゃあ帰りもよろしくな。」
「うむ、大急ぎで帰還するとしよう。」
ってな感じで突然のデートを終えて帰還した翌日。
中庭に設置した簡易のコンロの前で俺は二日連続の涙を流していた。
「うぅ、目が痛い。」
「ちょっと、すごい匂いだけど本当にこれでいいのよね!?」
「わからんがメニューにはそう書いてある、とりあえず試作はメニュー通りにやるのがセオリーだ。」
鍋の中では大量のストロングガーリックとデスキャプシカムのみじん切りがごま油っぽいやつで炒められていた。
弱火にも拘わらず鍋からはすさまじい匂いと刺激成分の配合された煙が上がり、顔にかかろうものなら悶絶必至だ。
焦げるか焦げないかの所まで炒めた所で、お待ちかねのスープを投入。
レシピでは水を入れるだけだったが、今回は鶏がらスープで代用してみた。
だれだ、レシピ通りじゃないとか思った奴。
美味けりゃいいんだよ美味けりゃ。
スープが入ったことで刺激臭はひとまず収まったが、それでもまだ目はヒリヒリしている。
恐るべし唐辛子成分。
後は煮立つ寸前まで火を入れ、最後にグリーンオニオンの芽を入れれば完成っと。
「とりあえず出来たのは出来たな。」
「すっごい辛そう。」
「デスキャプシカムを半分以下にしたからそこまで辛くない筈なんだが・・・。」
スープ自体はそこまで赤くはないものの、匂いは中々刺激的。
恐る恐るスープに口をつけると、予想よりは抑えられてはいるものの辛さが脳天まで走り抜ける。
辛い、でも美味い。
鶏がらスープを入れたおかげで少しマイルドになってるし、薬味代わりのグリーンオニオンが良い感じだ。
スープだけでこれなら、肉を入れるともう少しマシになるだろう。
「うん、美味い。」
「えぇほんとに~?」
「嫌なら飲まないでいいぞ。」
「あー、嘘嘘ちょっとだけ!」
まったく文句の多い奴だなぁ。
器に少しだけスープをよそってやると、かなりビビりながらエリザが口をつけた。
「ん!?」
「どうだ?」
「辛い!でも美味しい!」
「だろ?」
「口の中がピリピリするけど、なんだかお腹の中から暖かくなる感じがするわ。」
「なかなかいい食レポじゃないか。でもまぁ本物の半分以下の辛さだしな。」
「え、そんなに辛かったの?」
そんなに辛かったって昨日あれだけ言っただろうが。
幸いにも腹の方は問題なかったが、口のヒリヒリした感じは朝になっても取れなかった。
流石にこれだけ辛味を抑えたらそこまでひどくなることはないだろうけど、これじゃディーネは許してくれないだろうなぁ。
とはいえ二種類作るのは難しいので別途辛さを追加できるように別添えのデスキャプシカムを用意しておいた方がいいかもしれない。
パウダー状にすれば辛味も良く混じるからあとでベッキーに手伝ってもらうとしよう。
アイツなら死んでるし作業中に粉を吸い込んでも大丈夫、のはずだ。
試作品をハワードとドーラさんにも飲んでもらい、二人のアドバイスを聞きながら味を調え迎えた翌朝。
「さぁ、南方で人気のスープはどうだ?飲めば体の中からぽかぽか、辛いのに挑戦したい奴は激辛もあるぞ。」
露店のいつもの場所、ではなく一番端をわざと借りてスープの露店を出した。
理由は簡単だ、あの刺激臭を市場のど真ん中でだせばテロ行為も良い所。
隅の方なら風通しが悪いので匂いが拡散する心配もないし、周りの露店に被害が出ること少ない。
もっとも、煮込んでいる途中から二軒隣にあった店が別の場所に移動してしまったけどな。
ま、場所が空くのは都合がいい。
『デスキャプシカムのスープ。南方で良く飲まれている激辛スープ。デスキャプシカムがを大量に使う事により体内から体を温め、発汗作用によりお肌がきれいになると言われている。ただしデスキャプシカムを使う量により辛さが変わる為、食べる時には注意が必要。最近の平均取引価格は銅貨10枚。最安値銅貨5枚、最高値銅貨15枚。最終取引日は昨日と記録されています。』
南方ではポピュラーなのか毎日取引はされているようだ。
材料も特別な物を使っているわけではないのでそれなりに安く、今回は銅貨10枚で提供する。
まぁトッピングを別に用意しているので、それで稼ぐつもりではいるけど。
「わ、すごい匂い。」
「よかったら試飲してみるか?」
「え、いいの?」
興味を持って近づいてきた女性冒険者にスープを少し入れたコップをわたす。
エリザ同様恐る恐る匂いを嗅ぎ、口に入れたと思ったら目を見開いて残りを飲み干してしまった。
「美味しい!」
「そりゃよかった。」
「辛いのに辛くない、でも辛い!」
「気に入ってくれたのなら一杯銅貨10枚、トッピングで鶏肉が銅貨5枚、最後に米を入れて雑炊にするのもおすすめだ。ちなみに米も銅貨5枚な。」
「全部!」
「米は先に入れるとどろどろになるから別添えしとくぞ、全部で銅貨20枚な。」
まさか最初から全部入るとは思わなかったが、気に入ってくれたのなら何よりだ。
その後もいつものように行列ができるという程ではなかったが、じわりじわりと客足は増えていった。
それだけではない。
気に入った客の中身は辛さが足りないという強者もそれなりにいるようで、ベッキーに頼んでおいたパウダーが思った以上に売れている。
まるで血の池地獄のように真っ赤に染まったスープをとても美味そうに飲むのは何度見ても信じられない。
てっきりディーネだけかと思ったんだが、思いのほか辛さに強い人がいるもんだなぁ。
もちろん本人もしれっと登場し、三倍量のパウダーをぶち込んだスープを美味しそうに飲んでいた。
あれはもう辛さしか感じないと思う。
俺には絶対に無理だ。
結局夕方を待たずスープは完売。
惜しむ声も聞かれたので気が向けば店を出してもいいかもしれない。
原価率はそれほど高くないので、トッピングさえ出ればそれなりの利益にはなる。
ちなみに今日の売上は銀貨45枚、儲けは銀貨20枚という所だろうか。
まだまだ伸びしろはある。
辛さを求める層が少なからずいるとわかっただけでも大収穫だ。
一番の驚きは、ハーシェさんが二倍量を顔色一つ変えずに飲んでいた事だけどな。
当初の予定としていたディーネ希望の買い物は、旧王朝時代のネックレスを無事に購入する事が出来た。
随分と古い感じはするのだが本人はいたって気に入っており、購入後早速身に着けると嬉しそうに見せて来た。
なんでも昔地上をうろうろしていた頃に見たデザインなんだとか。
もちろんそれと全く同じということは無いと思うが、まぁ本人が喜んでいるならそれでいいか。
他にもいくつか旧王朝時代の品を手に入れる事が出来たので、次のオークションにでも出品するつもりでいる。
いかにも偽物!って感じの品が山ほど並べられた露店だったのだが、まさかこんな大当たりが眠っているとは。
あのときディーネがネックレスを見つけなかったら普通にスルーしていただろう。
まるでリーシャセンサーのようだ。
その後も気になった店をすべて見て回り、二人でお腹いっぱいになるまで飲み食いした。
正直もう入らない。
「美味であった。」
「そりゃよかった。」
「シロウはあまり気に入った様子ではなかったな。」
「辛いのは嫌いじゃないんだが、あそこまで辛いと正直きつい。」
「そうか?私にはちょうど良かったがの。」
今なにより今回のデート一番の驚きは最後に入ったあの露店。
近づくだけで目が痛くなるほどの香辛料をふんだんに使った、南方からきていた激辛料理店だ。
ディーネの鱗の様な鮮やかな赤い色をしたスープに、港町ならではの新鮮な魚介がふんだんに使用されており三口目ぐらいまでは俺も美味しくいただけた。
問題はその先だ。
喉を焼き鼻の粘膜を過激に刺激するあの真っ赤なスープ。
それを飲むたびに俺の体は悲鳴を上げ、最後は涙を流しながらギブアップするしかできなかった。
ワイルドカウのミルクを飲んでもまだヒリヒリしている。
うーむ、今日の夜が非常に心配だなぁ。
「正直あれを喰えるのはディーネしかいないだろ。でもそのおかげで店主が良い物をくれたし、結果オーライってやつだな。」
「うむ、あの味を街に戻っても食べられるのは非常に嬉しい限りじゃ。」
「さすがにそのままじゃ無理だろうからある程度加減するつもりだが・・・。げ、デスキャプシカムがこんなに入っているんか。そりゃ辛いわけだ。」
「なんじゃ辛さを減らすのか?」
「じゃないとあんなの誰も食べれないからなぁ。ま、ディーネ用にはちゃんと元のレシピで作ってやるから安心しろ。」
涙を流しながら代金を支払い、さぁ帰ろうかと立ち上がった時だ。
俺が残してしまった真っ赤なスープを涼しい顔でぺろりと平らげるディーネの食べっぷりに店主がいたく感動し、よかったら作ってくれとレシピを教えてくれた。
飲食店にとってレシピは門外不出の物。
いくら南方からやっていたその日限りの露店とはいえ、それをいとも簡単に渡すなんてよっぽど気に入ってくれたんだろうなぁ。
確かに辛くて全部食べられなかったが、それはデスキャプシカムのような激辛トウガラシが大量に使われているからであって、その量を加減してやれば十分に美味いのは分かっている。
辛さを減らすことにディーネは不満のようだが、彼女だけ別添えで増量してやれば文句はないだろう。
「再現できそうか?」
「材料自体はごくありふれたものだし、いくつか南方から仕入れれば問題ないだろう。たしかモーリスさんの店にあったはずだ。」
「ならばよし。」
「そろそろ暗くなってきたな、他にやり残したことは無いか?」
「欲しい物は手に入れたし腹もいっぱいになった。楽しかったぞ、シロウ。」
「そりゃ何よりだ。じゃあ帰りもよろしくな。」
「うむ、大急ぎで帰還するとしよう。」
ってな感じで突然のデートを終えて帰還した翌日。
中庭に設置した簡易のコンロの前で俺は二日連続の涙を流していた。
「うぅ、目が痛い。」
「ちょっと、すごい匂いだけど本当にこれでいいのよね!?」
「わからんがメニューにはそう書いてある、とりあえず試作はメニュー通りにやるのがセオリーだ。」
鍋の中では大量のストロングガーリックとデスキャプシカムのみじん切りがごま油っぽいやつで炒められていた。
弱火にも拘わらず鍋からはすさまじい匂いと刺激成分の配合された煙が上がり、顔にかかろうものなら悶絶必至だ。
焦げるか焦げないかの所まで炒めた所で、お待ちかねのスープを投入。
レシピでは水を入れるだけだったが、今回は鶏がらスープで代用してみた。
だれだ、レシピ通りじゃないとか思った奴。
美味けりゃいいんだよ美味けりゃ。
スープが入ったことで刺激臭はひとまず収まったが、それでもまだ目はヒリヒリしている。
恐るべし唐辛子成分。
後は煮立つ寸前まで火を入れ、最後にグリーンオニオンの芽を入れれば完成っと。
「とりあえず出来たのは出来たな。」
「すっごい辛そう。」
「デスキャプシカムを半分以下にしたからそこまで辛くない筈なんだが・・・。」
スープ自体はそこまで赤くはないものの、匂いは中々刺激的。
恐る恐るスープに口をつけると、予想よりは抑えられてはいるものの辛さが脳天まで走り抜ける。
辛い、でも美味い。
鶏がらスープを入れたおかげで少しマイルドになってるし、薬味代わりのグリーンオニオンが良い感じだ。
スープだけでこれなら、肉を入れるともう少しマシになるだろう。
「うん、美味い。」
「えぇほんとに~?」
「嫌なら飲まないでいいぞ。」
「あー、嘘嘘ちょっとだけ!」
まったく文句の多い奴だなぁ。
器に少しだけスープをよそってやると、かなりビビりながらエリザが口をつけた。
「ん!?」
「どうだ?」
「辛い!でも美味しい!」
「だろ?」
「口の中がピリピリするけど、なんだかお腹の中から暖かくなる感じがするわ。」
「なかなかいい食レポじゃないか。でもまぁ本物の半分以下の辛さだしな。」
「え、そんなに辛かったの?」
そんなに辛かったって昨日あれだけ言っただろうが。
幸いにも腹の方は問題なかったが、口のヒリヒリした感じは朝になっても取れなかった。
流石にこれだけ辛味を抑えたらそこまでひどくなることはないだろうけど、これじゃディーネは許してくれないだろうなぁ。
とはいえ二種類作るのは難しいので別途辛さを追加できるように別添えのデスキャプシカムを用意しておいた方がいいかもしれない。
パウダー状にすれば辛味も良く混じるからあとでベッキーに手伝ってもらうとしよう。
アイツなら死んでるし作業中に粉を吸い込んでも大丈夫、のはずだ。
試作品をハワードとドーラさんにも飲んでもらい、二人のアドバイスを聞きながら味を調え迎えた翌朝。
「さぁ、南方で人気のスープはどうだ?飲めば体の中からぽかぽか、辛いのに挑戦したい奴は激辛もあるぞ。」
露店のいつもの場所、ではなく一番端をわざと借りてスープの露店を出した。
理由は簡単だ、あの刺激臭を市場のど真ん中でだせばテロ行為も良い所。
隅の方なら風通しが悪いので匂いが拡散する心配もないし、周りの露店に被害が出ること少ない。
もっとも、煮込んでいる途中から二軒隣にあった店が別の場所に移動してしまったけどな。
ま、場所が空くのは都合がいい。
『デスキャプシカムのスープ。南方で良く飲まれている激辛スープ。デスキャプシカムがを大量に使う事により体内から体を温め、発汗作用によりお肌がきれいになると言われている。ただしデスキャプシカムを使う量により辛さが変わる為、食べる時には注意が必要。最近の平均取引価格は銅貨10枚。最安値銅貨5枚、最高値銅貨15枚。最終取引日は昨日と記録されています。』
南方ではポピュラーなのか毎日取引はされているようだ。
材料も特別な物を使っているわけではないのでそれなりに安く、今回は銅貨10枚で提供する。
まぁトッピングを別に用意しているので、それで稼ぐつもりではいるけど。
「わ、すごい匂い。」
「よかったら試飲してみるか?」
「え、いいの?」
興味を持って近づいてきた女性冒険者にスープを少し入れたコップをわたす。
エリザ同様恐る恐る匂いを嗅ぎ、口に入れたと思ったら目を見開いて残りを飲み干してしまった。
「美味しい!」
「そりゃよかった。」
「辛いのに辛くない、でも辛い!」
「気に入ってくれたのなら一杯銅貨10枚、トッピングで鶏肉が銅貨5枚、最後に米を入れて雑炊にするのもおすすめだ。ちなみに米も銅貨5枚な。」
「全部!」
「米は先に入れるとどろどろになるから別添えしとくぞ、全部で銅貨20枚な。」
まさか最初から全部入るとは思わなかったが、気に入ってくれたのなら何よりだ。
その後もいつものように行列ができるという程ではなかったが、じわりじわりと客足は増えていった。
それだけではない。
気に入った客の中身は辛さが足りないという強者もそれなりにいるようで、ベッキーに頼んでおいたパウダーが思った以上に売れている。
まるで血の池地獄のように真っ赤に染まったスープをとても美味そうに飲むのは何度見ても信じられない。
てっきりディーネだけかと思ったんだが、思いのほか辛さに強い人がいるもんだなぁ。
もちろん本人もしれっと登場し、三倍量のパウダーをぶち込んだスープを美味しそうに飲んでいた。
あれはもう辛さしか感じないと思う。
俺には絶対に無理だ。
結局夕方を待たずスープは完売。
惜しむ声も聞かれたので気が向けば店を出してもいいかもしれない。
原価率はそれほど高くないので、トッピングさえ出ればそれなりの利益にはなる。
ちなみに今日の売上は銀貨45枚、儲けは銀貨20枚という所だろうか。
まだまだ伸びしろはある。
辛さを求める層が少なからずいるとわかっただけでも大収穫だ。
一番の驚きは、ハーシェさんが二倍量を顔色一つ変えずに飲んでいた事だけどな。
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