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836.転売屋は整備をする
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「シロウ様、到着しました。」
「お、もう着いたのか。」
「随分集中されていましたね。」
「数が多いんでこういう時じゃないと集中して出来ないんだ。」
編み物をしていた手を止め、顔を上げて首の骨をポキポキと鳴らす。
気づけば馬車は廃鉱山のすぐ手前まで来ていた。
横に控えるウーラさんは何も言わずにルフの頭を撫でている。
狼の亜人ということもあるんだろうけど、すぐにルフが懐いたのがちょっと意外だったな。
アニエスさんはどっちかって言うと上司とか上の立場って感じだが、ウーラさんは仲間っぽい雰囲気を感じる。
上でも下でもない対等な立場。
時折会話をしているような気もするのだが、何を話しているのかはまったく分からなかった。
「到着が少し早まりましたので、予定よりも長く滞在できそうです。」
「やっぱり街道が整備されたのは大きいな。とはいえ、まだデコボコしている所もあるし最初の搬出の時には土魔法の使い手も一緒に来てもらった方が良さそうだ。」
「それはいい考えですね。到着後は私とウーラで荷を降ろしますので、シロウ様はそのまま中へお進みください。」
「分かった。宜しく頼むな、ウーラさん。」
「ウオマルカセフクウダルサフイ。」
ルフを撫でていた手を止め、ウーラさんがぺこりと頭を下げる。
今日はいつものように廃鉱山への食料の搬入と回収に来たのだが、それとは別にいくつか確認事項がある。
やることが多いだけに時間に余裕があるのはいいことだ。
馬車は最後の坂を上がり廃鉱山に到着。
鉱山の巨大な入り口の横には、何本ものレールが同じ高さで積み上げられていた。
想定よりもかなり本数が多い。
前倒しで作業を進めてくれたからだろう、後でお礼を言っておかないとな。
「じゃあ任せた。ルフ、いくぞ。」
ブンブン。
ルフと共に勢いよく荷台から飛び降り、その足で鉱山の中へと向かう。
北風吹き荒れる外と違い、中は非常に暖かかった。
別に暖房が付いているわけではないのだが、前に来た時よりも更に空気が澄んでいるような気がする。
そうか、朽ち果てたトロッコが片付けられたからか。
来るたびに綺麗になっていくなぁ、ここは。
とはいえ、あまり綺麗にしすぎるのも良くないのでその辺は注意してもらわないと。
なんせここには誰も住んでいないことになっているんだ。
辺鄙な場所過ぎて誰も近づかないのだが、街道が整備されたことで興味本位で近づく奴らも出てくるだろう。
そういった連中に見つかると色々と面倒だ。
今度入り口付近に私有地だって立て札を立てておいたほうが良いだろう。
魔灯の明かりに案内されるように10分ほど奥へと下ると、集落の入り口が見えてきた。
ん?向こうから歩いてくるのは・・・。
「おや、シロウ様ではありませんか。入り口までお出迎えせず誠に申し訳ありません。」
「別に迎えが欲しいわけじゃない、気にするな。それよりも随分と綺麗になったな。」
「この間頂きました空気清浄機のおかげでここの空気も新鮮そのものです。本当にありがとうございます。」
「清潔なのは良いことだが、あまり小綺麗にしすぎるとよからぬ連中にここがバレるぞ。」
「その心配には及びません。シロウ様が来られる日以外は魔灯を消し、岩で道を塞いでおります。」
「ここは俺にとっても大切な場所だ、くれぐれも宜しく頼むぞ。」
「お任せを、さぁルフ様とどうぞ奥へ。すぐに香茶を淹れましょう。」
相変わらずミヌレさんの対応は大げさだが、ここに住まわせて貰っている立場がそうさせてしまうんだろう。
フレンドリーにしろと言った所で何かが変わるわけでも無いし、したいようにしてくれればいい。
それに集落ですれ違う人は皆笑顔で俺を迎えてくれる。
その顔に嘘や怯えなどの感情は一切無い。
俺は彼らに労働を頼み、彼らは食事と住まいを得る。
持ちつ持たれつのある意味平等な関係と言っても良いかもな。
「外のレールはご覧いただけましたでしょうか。」
「あぁ、随分と頑張ってくれたみたいだな。」
「皆シロウ様のお役に立てることが嬉しいのです。言われた通り一番奥から搬出を始めており、一日10本ほど搬出できております。また、ご指示にありました炭鉱の再探索も行っておりますが、生憎と目ぼしい収穫はありませんでした。」
この間ここを離れるときに、レールとは別に鉱山の調査を頼んでおいた。
あまりにも放置され続けたせいでローランド様の所にも正しい地図が無かったからだ。
さすがに勝手に迷い込んで帰れなくなりましたじゃお話にならないからなぁ。
居住部はともかく、入り口付近の構造なんかはレールを搬出する為にもしっかりと確認しておく必要がある。
しかし、さすがに掘り尽くされただけあって珍しいものは無かったか。
ま、当然だな。
「それに関しては期待していないから気にしないでくれ。それよりも坑道の状況はどうだ?崩落する心配はなさそうか?」
「今の所そのような兆候は見られませんでした。無理な採掘をしなかったおかげでしょう、痛みも無く綺麗なものです。」
「ふむ、地図を見る限りいくつか小部屋のような場所があるみたいだな。」
「そちらもしっかりと木材と土魔法で支えられておりました。おそらく休憩所や倉庫に使っていたのだと思われますが、使えるものはありませんでしたので掃除のみにとどめております。」
鉱山に入るとすぐに三本の道に分かれており、そのうちの右端が集落に通じている。
残り二つは蟻の巣のように奥へ奥へと広がっているようだが、その途中にいくつか大きな部屋があった。
一番奥の部屋が一番大きく、そしてすんなりとたどり着くのは難しそうだ。
ふむ、これはありだな。
「左側一番手前の部屋は入り口が随分と狭いみたいだな。」
「えぇ、我々であれば入るのは造作もありませんがシロウ様ように大きな方は大変でしょう。入り口は狭いものの、中は比較的広くなっておりました。」
「出入りはし辛くさらには見つけにくいと。」
「魔灯を消せばまず分かりません。」
「なら隠すにはもってこいだな。」
「隠す?一体何をされるおつもりですか?」
地図を見ながらにやりと笑う俺を見てミヌレさんが不思議そうな顔をする。
おっと、つい顔に出てしまった。
俺の悪い癖だな、もうすこしポーカーフェイスを身につけないと。
「いやな、せっかく広い鉱山を持っているんだから有効利用したいと思っていたんだよ。」
「鉱石も石材も取れないこの場所を何に使うんです?」
「倉庫だよ。」
「倉庫?」
「仕事柄長期保存しないといけない素材やら道具があまりにも多くて、それが自前の倉庫を圧迫して困ってたんだよ。時期が来れば金になる、でも置き場が無くて買い取れない。それなら別の場所を用意して、そこで寝かせれば場所も出来るしさらに金を稼げるというわけだ。もちろん持ち出される危険もあるが、この地図を見る限りいきなり一番奥の部屋にたどり着くのは難しそうだ。それに、使わないときはここと同じく岩か何かでふさいでしまうという手もある。頻繁に出し入れするわけでもないし、食料搬入に合わせて開けておいてくれれば十分だ。」
当初は街の拡張に合わせて倉庫も新設されると踏んでいたんだが、生憎と当てが外れて困っていた。
グリーンスライムの核のように、大量に手に入るものの売る時期が決まっているものなんかはその時が来るまで邪魔でしかないんだよな。
とはいえ、仕入れ数を絞れば儲けが減るわけで。
それなら別の場所に保管すれば良いじゃないかと考えていた時に、ここの存在を思いついたんだ。
で、ふたを開けてみればぴったりの場所があるじゃないか。
さすが俺、完璧だ。
「なるほど、確かにこれだけ入り組んだ奥であれば盗まれる心配も少ないでしょう。」
「とはいえ盗まれない保証も無い。だから貴重な物なんかはこっちの狭いところで保管して、同じくふたをしてしまえば見つかる心配も無いってわけだ。そういう物はそもそもそんなに数はないし、ここを別の用途で使えば見つかる心配も無い。」
「隠す以外に使うのですか?」
「あぁ、入り口が狭いって事は外気に触れる面積も少ないって事だろ?だから氷室にしてしまって、そこで日持ちのする果物や食料を保存しようと思うんだ。」
仕舞うのは別に魔物の素材だけではない。
りんごや芋など、生ものではあるけれど比較的日持ちのするものなんかは冷たい場所に入れておくとさらに長持ちさせることが出来る。
鉱山内は比較的気温が一定で涼しいので氷や雪を大量にぶち込んでしまえば長持ちしそうだ。
可能なら彼らの食料も一緒に入れてしまえばいい。
小麦などはともかく肉類は傷みが早いからな、美味しく食べる為にも冷蔵庫的な場所は必須だろうう。
「確かにそういった場所があると助かります。」
「もちろん麦とかはこっちで保管すればいい、あくまでも生ものや痛みやすいものを入れる場所と考えてくれ。」
「そして我々はその警護をするわけですな?」
「欲を言えばお願いしたいところだが、わざわざ自分から姿を現す必要は無いだろう。あくまでも、レールの搬出と運搬、清掃、それと魔力水の回収がメインだ。くれぐれも間違えるなよ。」
「はい、肝に銘じておきます。」
倉庫はあくまでもおまけ。
ここを買った一番の理由は魔力水が手に入るからだ。
五年十年と長い年月をかけて投資を回収し、回収後は金を生み出す金の卵に生まれ変わる貴重な存在。
それをわざわざ危険を冒して他人に晒す位なら必要なことだけしてもらうほうがいい。
彼らも平穏な生活を望んでいるわけだし、俺がそれを害する必要はどこにも無い。
「とはいえ荷物の搬入なんかは手伝ってもらう必要がある。実は食料とは別に、倉庫に入れておきたい物を持ってきているんだ。上でアニエスさんとウーラさんが準備してくれている、手伝ってくれるか?」
「もちろんです。すぐに若いのを連れて行きますので、シロウ様とルフ様はどうぞごゆっくりお休みください。」
「もちろんそのつもりだ。」
再びにやりと笑ってかばんから途中で止めた編み物を取り出す。
空き時間は有効に使わないとな。
こうして、俺は新たな倉庫を手に入れたのだった。
急ぐものでもないので氷室はまた雪が降った時に運び込んでもらうとしよう。
夏に食べる冬の果物。
間違いなく売れる。
あぁ、今から楽しみだなぁ。
「お、もう着いたのか。」
「随分集中されていましたね。」
「数が多いんでこういう時じゃないと集中して出来ないんだ。」
編み物をしていた手を止め、顔を上げて首の骨をポキポキと鳴らす。
気づけば馬車は廃鉱山のすぐ手前まで来ていた。
横に控えるウーラさんは何も言わずにルフの頭を撫でている。
狼の亜人ということもあるんだろうけど、すぐにルフが懐いたのがちょっと意外だったな。
アニエスさんはどっちかって言うと上司とか上の立場って感じだが、ウーラさんは仲間っぽい雰囲気を感じる。
上でも下でもない対等な立場。
時折会話をしているような気もするのだが、何を話しているのかはまったく分からなかった。
「到着が少し早まりましたので、予定よりも長く滞在できそうです。」
「やっぱり街道が整備されたのは大きいな。とはいえ、まだデコボコしている所もあるし最初の搬出の時には土魔法の使い手も一緒に来てもらった方が良さそうだ。」
「それはいい考えですね。到着後は私とウーラで荷を降ろしますので、シロウ様はそのまま中へお進みください。」
「分かった。宜しく頼むな、ウーラさん。」
「ウオマルカセフクウダルサフイ。」
ルフを撫でていた手を止め、ウーラさんがぺこりと頭を下げる。
今日はいつものように廃鉱山への食料の搬入と回収に来たのだが、それとは別にいくつか確認事項がある。
やることが多いだけに時間に余裕があるのはいいことだ。
馬車は最後の坂を上がり廃鉱山に到着。
鉱山の巨大な入り口の横には、何本ものレールが同じ高さで積み上げられていた。
想定よりもかなり本数が多い。
前倒しで作業を進めてくれたからだろう、後でお礼を言っておかないとな。
「じゃあ任せた。ルフ、いくぞ。」
ブンブン。
ルフと共に勢いよく荷台から飛び降り、その足で鉱山の中へと向かう。
北風吹き荒れる外と違い、中は非常に暖かかった。
別に暖房が付いているわけではないのだが、前に来た時よりも更に空気が澄んでいるような気がする。
そうか、朽ち果てたトロッコが片付けられたからか。
来るたびに綺麗になっていくなぁ、ここは。
とはいえ、あまり綺麗にしすぎるのも良くないのでその辺は注意してもらわないと。
なんせここには誰も住んでいないことになっているんだ。
辺鄙な場所過ぎて誰も近づかないのだが、街道が整備されたことで興味本位で近づく奴らも出てくるだろう。
そういった連中に見つかると色々と面倒だ。
今度入り口付近に私有地だって立て札を立てておいたほうが良いだろう。
魔灯の明かりに案内されるように10分ほど奥へと下ると、集落の入り口が見えてきた。
ん?向こうから歩いてくるのは・・・。
「おや、シロウ様ではありませんか。入り口までお出迎えせず誠に申し訳ありません。」
「別に迎えが欲しいわけじゃない、気にするな。それよりも随分と綺麗になったな。」
「この間頂きました空気清浄機のおかげでここの空気も新鮮そのものです。本当にありがとうございます。」
「清潔なのは良いことだが、あまり小綺麗にしすぎるとよからぬ連中にここがバレるぞ。」
「その心配には及びません。シロウ様が来られる日以外は魔灯を消し、岩で道を塞いでおります。」
「ここは俺にとっても大切な場所だ、くれぐれも宜しく頼むぞ。」
「お任せを、さぁルフ様とどうぞ奥へ。すぐに香茶を淹れましょう。」
相変わらずミヌレさんの対応は大げさだが、ここに住まわせて貰っている立場がそうさせてしまうんだろう。
フレンドリーにしろと言った所で何かが変わるわけでも無いし、したいようにしてくれればいい。
それに集落ですれ違う人は皆笑顔で俺を迎えてくれる。
その顔に嘘や怯えなどの感情は一切無い。
俺は彼らに労働を頼み、彼らは食事と住まいを得る。
持ちつ持たれつのある意味平等な関係と言っても良いかもな。
「外のレールはご覧いただけましたでしょうか。」
「あぁ、随分と頑張ってくれたみたいだな。」
「皆シロウ様のお役に立てることが嬉しいのです。言われた通り一番奥から搬出を始めており、一日10本ほど搬出できております。また、ご指示にありました炭鉱の再探索も行っておりますが、生憎と目ぼしい収穫はありませんでした。」
この間ここを離れるときに、レールとは別に鉱山の調査を頼んでおいた。
あまりにも放置され続けたせいでローランド様の所にも正しい地図が無かったからだ。
さすがに勝手に迷い込んで帰れなくなりましたじゃお話にならないからなぁ。
居住部はともかく、入り口付近の構造なんかはレールを搬出する為にもしっかりと確認しておく必要がある。
しかし、さすがに掘り尽くされただけあって珍しいものは無かったか。
ま、当然だな。
「それに関しては期待していないから気にしないでくれ。それよりも坑道の状況はどうだ?崩落する心配はなさそうか?」
「今の所そのような兆候は見られませんでした。無理な採掘をしなかったおかげでしょう、痛みも無く綺麗なものです。」
「ふむ、地図を見る限りいくつか小部屋のような場所があるみたいだな。」
「そちらもしっかりと木材と土魔法で支えられておりました。おそらく休憩所や倉庫に使っていたのだと思われますが、使えるものはありませんでしたので掃除のみにとどめております。」
鉱山に入るとすぐに三本の道に分かれており、そのうちの右端が集落に通じている。
残り二つは蟻の巣のように奥へ奥へと広がっているようだが、その途中にいくつか大きな部屋があった。
一番奥の部屋が一番大きく、そしてすんなりとたどり着くのは難しそうだ。
ふむ、これはありだな。
「左側一番手前の部屋は入り口が随分と狭いみたいだな。」
「えぇ、我々であれば入るのは造作もありませんがシロウ様ように大きな方は大変でしょう。入り口は狭いものの、中は比較的広くなっておりました。」
「出入りはし辛くさらには見つけにくいと。」
「魔灯を消せばまず分かりません。」
「なら隠すにはもってこいだな。」
「隠す?一体何をされるおつもりですか?」
地図を見ながらにやりと笑う俺を見てミヌレさんが不思議そうな顔をする。
おっと、つい顔に出てしまった。
俺の悪い癖だな、もうすこしポーカーフェイスを身につけないと。
「いやな、せっかく広い鉱山を持っているんだから有効利用したいと思っていたんだよ。」
「鉱石も石材も取れないこの場所を何に使うんです?」
「倉庫だよ。」
「倉庫?」
「仕事柄長期保存しないといけない素材やら道具があまりにも多くて、それが自前の倉庫を圧迫して困ってたんだよ。時期が来れば金になる、でも置き場が無くて買い取れない。それなら別の場所を用意して、そこで寝かせれば場所も出来るしさらに金を稼げるというわけだ。もちろん持ち出される危険もあるが、この地図を見る限りいきなり一番奥の部屋にたどり着くのは難しそうだ。それに、使わないときはここと同じく岩か何かでふさいでしまうという手もある。頻繁に出し入れするわけでもないし、食料搬入に合わせて開けておいてくれれば十分だ。」
当初は街の拡張に合わせて倉庫も新設されると踏んでいたんだが、生憎と当てが外れて困っていた。
グリーンスライムの核のように、大量に手に入るものの売る時期が決まっているものなんかはその時が来るまで邪魔でしかないんだよな。
とはいえ、仕入れ数を絞れば儲けが減るわけで。
それなら別の場所に保管すれば良いじゃないかと考えていた時に、ここの存在を思いついたんだ。
で、ふたを開けてみればぴったりの場所があるじゃないか。
さすが俺、完璧だ。
「なるほど、確かにこれだけ入り組んだ奥であれば盗まれる心配も少ないでしょう。」
「とはいえ盗まれない保証も無い。だから貴重な物なんかはこっちの狭いところで保管して、同じくふたをしてしまえば見つかる心配も無いってわけだ。そういう物はそもそもそんなに数はないし、ここを別の用途で使えば見つかる心配も無い。」
「隠す以外に使うのですか?」
「あぁ、入り口が狭いって事は外気に触れる面積も少ないって事だろ?だから氷室にしてしまって、そこで日持ちのする果物や食料を保存しようと思うんだ。」
仕舞うのは別に魔物の素材だけではない。
りんごや芋など、生ものではあるけれど比較的日持ちのするものなんかは冷たい場所に入れておくとさらに長持ちさせることが出来る。
鉱山内は比較的気温が一定で涼しいので氷や雪を大量にぶち込んでしまえば長持ちしそうだ。
可能なら彼らの食料も一緒に入れてしまえばいい。
小麦などはともかく肉類は傷みが早いからな、美味しく食べる為にも冷蔵庫的な場所は必須だろうう。
「確かにそういった場所があると助かります。」
「もちろん麦とかはこっちで保管すればいい、あくまでも生ものや痛みやすいものを入れる場所と考えてくれ。」
「そして我々はその警護をするわけですな?」
「欲を言えばお願いしたいところだが、わざわざ自分から姿を現す必要は無いだろう。あくまでも、レールの搬出と運搬、清掃、それと魔力水の回収がメインだ。くれぐれも間違えるなよ。」
「はい、肝に銘じておきます。」
倉庫はあくまでもおまけ。
ここを買った一番の理由は魔力水が手に入るからだ。
五年十年と長い年月をかけて投資を回収し、回収後は金を生み出す金の卵に生まれ変わる貴重な存在。
それをわざわざ危険を冒して他人に晒す位なら必要なことだけしてもらうほうがいい。
彼らも平穏な生活を望んでいるわけだし、俺がそれを害する必要はどこにも無い。
「とはいえ荷物の搬入なんかは手伝ってもらう必要がある。実は食料とは別に、倉庫に入れておきたい物を持ってきているんだ。上でアニエスさんとウーラさんが準備してくれている、手伝ってくれるか?」
「もちろんです。すぐに若いのを連れて行きますので、シロウ様とルフ様はどうぞごゆっくりお休みください。」
「もちろんそのつもりだ。」
再びにやりと笑ってかばんから途中で止めた編み物を取り出す。
空き時間は有効に使わないとな。
こうして、俺は新たな倉庫を手に入れたのだった。
急ぐものでもないので氷室はまた雪が降った時に運び込んでもらうとしよう。
夏に食べる冬の果物。
間違いなく売れる。
あぁ、今から楽しみだなぁ。
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