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811.転売屋は福利厚生を充実させる
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持ち帰ったレールはギルド協会に運ばれ、実際に確認してもらった上で無事に中古レールの採用が決定した。
これもミラのプレゼンの賜物、やはり大量に使用するだけあって新規のレールよりも二割安くなるのは大きかったようだ。
今の所はまだ計画段階だが、実際に使用する石材の量次第ではロックゴーレムだけでなくダンジョン内の採石場からも石材を確保する必要が出てくる。
そうなると敷くレールも二倍になるわけで、安く上がるに越したことはないというわけだ。
俺からしてみれば倍使ってもらった方が更に元が取れるのでありがたい。
ひとまずこれで石材関係の問題はクリア出来たな。
やれやれ、一歩前進ってやつだ。
向こうに行っている間に清酒関係も始動したと報告が入っていた。
例の湧き水にも簡易の小屋が作られたそうなので、水関係も問題無く到着するだろう。
報告書によればアインさんが陸路で運んでくれているそうだ。
あの人なら安心だな。
溜まった事務処理の休憩がてら食堂へ向かうと、中に入ってすぐエリザに捕まった。
とはいえ何をするわけでもなく後ろにぴったりとついてくる。
「ねぇ。」
「なんだ?」
「今日は休みにしなさいよ。」
「この前休暇をもらったばかりなんだが?」
「休暇とか言いながら仕事してたじゃない、だから今日は休み。どうせこの後は還年祭まで休みなしなんだから良いでしょ別に。」
「つまり構ってほしいわけだな、理解した。」
屋敷に戻って来るなりエリザが俺にまとわりつくようになった。
もちろんベタベタ触ってくるようなことはしないが、どこに行くにもついてくる。
風呂もそうだしトイレだってそうだ。
ともかく四六時中一緒にいないと気が済まない、そんな気配を感じる。
ハーシェさんにそれとなく聞いてみると、出産前はかなりナーバスになってしまうそうだ。
まぁ、そりゃそうだよなお腹にデカい命を抱えて不安になるのも仕方がない。
特にエリザは今までアクティブに動き回っていただけに急にその発散先が無くなったことでその傾向が強くなっているんだろう。
なら旦那の俺がすることは一つだ。
「いいの?」
「良いも悪いもお前がそれを望むなら受け入れるさ。幸い残りの仕事は簡単な報告だけだし、聞かれて困るもんでもない。執務室で静かにできるか?」
「失礼ね、子供じゃないわよ。」
「じゃあついてこい。」
水を一気に飲み干し、嬉しそうに腕をからませてくるエリザを連れて執務室に戻る。
「あの、シロウ様。」
「気にするな、別に聞かれて困るものでもないだろ?」
「それはそうですが・・・。いえ、では報告を続けます。」
俺の横に椅子を持って来てべったりとくっついてくるエリザを見て、流石のラフィムさんも戸惑っている様子。
気持ちはわかる、だが許せ。
そんなエリザの状況を察してか仕事は早々に終わりラフィムさんが執務室を後にする。
とりあえず仕事は片づけたので残りは半日はオフってことになる。
「それで何をする?」
「買い物行きたい!」
「その後は?」
「そうね、ご飯を食べてルティエちゃんの所に行きたいかな。」
「ルティエの所?」
「この間シロウに会いに来てたけど不在だったでしょ。」
そういえばそんな報告を受けていた気がする。
でもそこに行くと二人っきりにはなれないわけで。
うーむ、何がしたいかわからん。
「まぁエリザがそれでいいなら。」
「じゃあ早速行きましょ、私コート取ってくるからエントランスでね。」
パッと手を離しさっさと執務室を出て行くエリザ。
いつもはこんなにべたべたしてこないだけに若干新鮮だ。
「アナタ、よろしいですか?」
「入ってくれ。」
エリザと入れ替わるようにハーシェさんが入ってくる。
リーシャはミミィが見ているようだ。
「どうした?」
「エリザ様の事、くれぐれも宜しくお願いします。不在の間だいぶ参っておられましたから。」
「そんなにか。」
「不安な気持ちはわかります。私もお話は聞いていますが、やはりアナタにしか話せないことがあるはずです。」
いつもは菩薩のように優しい目をしているハーシェさんが随分と不安そうだ。
余程の状況だったんだろう。
「うーむ、今後はあまり街を出ない方がいいかもなぁ。」
「そうかもしれませんが、下手に遠慮すると余計負担になる可能性もあります。それとなく聞いてあげてください。」
「わかった、それじゃあ行ってくる。」
あまり遅くなるとまた心配するので俺もコートを手にエントランスへ走ると、下にいたエリザが俺を見つけてパッと顔を輝かす。
それはもう照明が付いたんじゃないかってぐらいに。
これは俺が思っている以上に重症かもしれない。
エリザの手を取り二人でゆっくりと坂を下る。
終始笑顔のエリザとは対照的に俺が難しい顔をしていたせいで、すれ違う人が難しい顔をしていた。
「さて、どこに行く?」
「まずは市場かなぁ。あ、でも商品見つけたらシロウは買い物しちゃうでしょ?ならマリーさんの所で化粧品を買い足すわ。」
「市場がダメなら、モーリスさんの所で買い付けをするのもダメなのか?」
「ピクルス買ってくれるならいいわよ。」
「それならお安い御用だ。」
どうも何もしないってのが勿体なく感じてしまう性分なので、買い物の途中でもめぼしい物を見つけるとついついそっちに気が行ってしまう。
それをするとエリザが放っておかれたみたいな顔をするので、極力我慢して急ぎマリーさんの店へ向かった。
「いらっしゃいませ旦那様、エリザさん。」
「マリーさんも元気そうだな。」
店に入るとマリーさんが笑顔で出迎えてくれた。
アニエスさんは・・・今日は不在のようだな。
お腹も随分と大きくなり、愛おしそうに自分のお腹を撫でている。
ここにも俺の子がいるんだよなぁ。
普段離れているので実感が少ないのだが、産前から暫くはうちに来てもらう事になっている。
やはり誰かがいる方が安心だろう。
「お陰様でお腹の子も元気いっぱいです。今日はどうされました?」
「エリザの買い物に付き合ってる所だ。なんでも化粧品を買い足したいんだと。」
「この間教えてもらったクリームがあったでしょ。ハーシェさんに聞いたんだけど、お腹のケアはしておくべきだって。あまりお腹が大きくなると、産んだ後に皺になっちゃうんだって。」
「では皮膚を柔らかくするクリームを用意しますね、私も気を付けないと。」
なるほどそういう事もあるのか。
筋肉質のエリザは産後の体を結構気にしていたので、その辺をケアしたかったんだろう。
カーラ手製の乳液はその成分を配合したクリームへと進化し、今や街の妊婦御用達品になっているんだとか。
化粧品業界ってのはいつの時代も儲かるもんなんだなぁ。
『ボディークリーム。ワイルドカウの乳成分を多量に含んでいる。保湿力が高く乾燥した肌を柔軟かつ柔らかくしてくれる。最近の平均取引価格は銀貨3枚。最安値銀貨2枚、最高値銀貨5枚。最終取引日は本日と記録されています。』
「ではこちらがクリームです、お風呂上がりの柔らかくなったお腹にたっぷり塗ってください。」
「オッケー。」
「この後もお買い物ですか?」
「その予定だ。モーリスさんの所に行って、その後はルティエの所だったか。」
「いいなぁ。」
ぼそっと本音が漏れてしまうマリーさん。
それを敏感に察知したエリザはニヤリと笑いながら俺の腕を引っ張ってくる。
「ほら、マリーさんもこう言ってるんだし明日も休んだら?」
「いやいや、還年祭も近いしオークション用の品を準備しないと。」
「とか言いながら買い付けするんでしょ?なら良いじゃない、今日みたいに少しでいいから。」
「お忙しいのでは?」
「そんなの良いのよ。仕事ばっかりで相手をしないシロウが悪いの。」
「確かに、最近はアニエスばかり構って私の所には来てくれませんね。」
いやいや、マリーさんまで何を言い出し・・・って、それを断るのは変な話だよな。
エリザと同様マリーさんも色々と大変だろうし、それで気分転換できるのならば断る理由はない。
それもまた旦那としての務めというやつだろう。
「・・・昼からでもいいか?」
「はい!」
「良かったわねマリーさん。」
「有難うございますエリザ様。」
「マリーさんとアニエスさんのお部屋の準備はもうできてるから、いつこっちに来てもいいからね。」
「わかりました。しばらくはお店をお休みしますし、その準備が出来たら向かいます。」
そうか、俺の店みたいに代わりに店番できる人がいないのか。
とはいえ今から募集しようにも多額の金銭を扱うだけに信頼できる人に頼まないといけないわけで。
加えて化粧品にも精通している人。
カーラを呼び寄せるってわけにもいかないしなぁ。
その辺も考えておけばよかった。
「それじゃあ次、行きましょ。」
「ってことでまた明日な。」
「はい、おめかししてお待ちしてます。」
今でも十分可愛いけど、何て言おうものなら横のエリザに何をされるか分かったもんじゃない。
いや、エリザも十分に可愛いんだが。
なんだか照れ臭いじゃないか。
「ねぇ、私もおめかしした方が良かった?」
「お前はそのままでも十分だ。」
「それはしても意味ないって事?」
「バカ言え、今でも十分綺麗だってことだよ。鎧姿も捨てがたいけどな。」
今のエリザも捨てがたいがエリザといえば鎧姿なんだよなぁ、やっぱり。
私服姿も捨てがたいが、こいつはやっぱり鎧姿が一番似合う。
それを堪能できるのはもう暫く先になりそうだが。
「ふふふ、ありがとう。」
「どういたしまして。悪いな、ほったらかして。」
「良いわよ、今回は私も我がまま言いすぎたし。」
「今後もあっちこっちには行くことになるだろうが、勘弁してくれ。」
「いいけど、今日みたいにまた買い物付き合ってよね。」
「それぐらいならお安い御用だ。」
マリーさんもそうだし、ハーシェさんともそういう時間を作るべきだろう。
もちろんミラやアネットもそうだ。
二人っきりで一日ってのは難しいが、そういう時間は大切にしていかないとな。
「それじゃあ次、行きましょ。」
「あぁ。アンナさんが入ってこないのかと不思議な顔してるし。」
「アンナさーん!ピクルス頂戴!」
「いらっしゃいませ!新しいの出来てますよ!」
他の客がいないから良かったものの、少しは声を加減しろよな。
その後もいつにもなくハイテンションなエリザとのデートは夕方まで続き、翌日マリーさんとも楽しませてもらった。
屋敷に戻ると月に二度ほどそういう日が設定されており、順番でデートをする事になっていたけど。
こういうことに関しては団結力半端ないよな、うちの女達は。
日々頑張っている彼女らへの福利厚生という事だろう。
頑張らせて頂きます。
これもミラのプレゼンの賜物、やはり大量に使用するだけあって新規のレールよりも二割安くなるのは大きかったようだ。
今の所はまだ計画段階だが、実際に使用する石材の量次第ではロックゴーレムだけでなくダンジョン内の採石場からも石材を確保する必要が出てくる。
そうなると敷くレールも二倍になるわけで、安く上がるに越したことはないというわけだ。
俺からしてみれば倍使ってもらった方が更に元が取れるのでありがたい。
ひとまずこれで石材関係の問題はクリア出来たな。
やれやれ、一歩前進ってやつだ。
向こうに行っている間に清酒関係も始動したと報告が入っていた。
例の湧き水にも簡易の小屋が作られたそうなので、水関係も問題無く到着するだろう。
報告書によればアインさんが陸路で運んでくれているそうだ。
あの人なら安心だな。
溜まった事務処理の休憩がてら食堂へ向かうと、中に入ってすぐエリザに捕まった。
とはいえ何をするわけでもなく後ろにぴったりとついてくる。
「ねぇ。」
「なんだ?」
「今日は休みにしなさいよ。」
「この前休暇をもらったばかりなんだが?」
「休暇とか言いながら仕事してたじゃない、だから今日は休み。どうせこの後は還年祭まで休みなしなんだから良いでしょ別に。」
「つまり構ってほしいわけだな、理解した。」
屋敷に戻って来るなりエリザが俺にまとわりつくようになった。
もちろんベタベタ触ってくるようなことはしないが、どこに行くにもついてくる。
風呂もそうだしトイレだってそうだ。
ともかく四六時中一緒にいないと気が済まない、そんな気配を感じる。
ハーシェさんにそれとなく聞いてみると、出産前はかなりナーバスになってしまうそうだ。
まぁ、そりゃそうだよなお腹にデカい命を抱えて不安になるのも仕方がない。
特にエリザは今までアクティブに動き回っていただけに急にその発散先が無くなったことでその傾向が強くなっているんだろう。
なら旦那の俺がすることは一つだ。
「いいの?」
「良いも悪いもお前がそれを望むなら受け入れるさ。幸い残りの仕事は簡単な報告だけだし、聞かれて困るもんでもない。執務室で静かにできるか?」
「失礼ね、子供じゃないわよ。」
「じゃあついてこい。」
水を一気に飲み干し、嬉しそうに腕をからませてくるエリザを連れて執務室に戻る。
「あの、シロウ様。」
「気にするな、別に聞かれて困るものでもないだろ?」
「それはそうですが・・・。いえ、では報告を続けます。」
俺の横に椅子を持って来てべったりとくっついてくるエリザを見て、流石のラフィムさんも戸惑っている様子。
気持ちはわかる、だが許せ。
そんなエリザの状況を察してか仕事は早々に終わりラフィムさんが執務室を後にする。
とりあえず仕事は片づけたので残りは半日はオフってことになる。
「それで何をする?」
「買い物行きたい!」
「その後は?」
「そうね、ご飯を食べてルティエちゃんの所に行きたいかな。」
「ルティエの所?」
「この間シロウに会いに来てたけど不在だったでしょ。」
そういえばそんな報告を受けていた気がする。
でもそこに行くと二人っきりにはなれないわけで。
うーむ、何がしたいかわからん。
「まぁエリザがそれでいいなら。」
「じゃあ早速行きましょ、私コート取ってくるからエントランスでね。」
パッと手を離しさっさと執務室を出て行くエリザ。
いつもはこんなにべたべたしてこないだけに若干新鮮だ。
「アナタ、よろしいですか?」
「入ってくれ。」
エリザと入れ替わるようにハーシェさんが入ってくる。
リーシャはミミィが見ているようだ。
「どうした?」
「エリザ様の事、くれぐれも宜しくお願いします。不在の間だいぶ参っておられましたから。」
「そんなにか。」
「不安な気持ちはわかります。私もお話は聞いていますが、やはりアナタにしか話せないことがあるはずです。」
いつもは菩薩のように優しい目をしているハーシェさんが随分と不安そうだ。
余程の状況だったんだろう。
「うーむ、今後はあまり街を出ない方がいいかもなぁ。」
「そうかもしれませんが、下手に遠慮すると余計負担になる可能性もあります。それとなく聞いてあげてください。」
「わかった、それじゃあ行ってくる。」
あまり遅くなるとまた心配するので俺もコートを手にエントランスへ走ると、下にいたエリザが俺を見つけてパッと顔を輝かす。
それはもう照明が付いたんじゃないかってぐらいに。
これは俺が思っている以上に重症かもしれない。
エリザの手を取り二人でゆっくりと坂を下る。
終始笑顔のエリザとは対照的に俺が難しい顔をしていたせいで、すれ違う人が難しい顔をしていた。
「さて、どこに行く?」
「まずは市場かなぁ。あ、でも商品見つけたらシロウは買い物しちゃうでしょ?ならマリーさんの所で化粧品を買い足すわ。」
「市場がダメなら、モーリスさんの所で買い付けをするのもダメなのか?」
「ピクルス買ってくれるならいいわよ。」
「それならお安い御用だ。」
どうも何もしないってのが勿体なく感じてしまう性分なので、買い物の途中でもめぼしい物を見つけるとついついそっちに気が行ってしまう。
それをするとエリザが放っておかれたみたいな顔をするので、極力我慢して急ぎマリーさんの店へ向かった。
「いらっしゃいませ旦那様、エリザさん。」
「マリーさんも元気そうだな。」
店に入るとマリーさんが笑顔で出迎えてくれた。
アニエスさんは・・・今日は不在のようだな。
お腹も随分と大きくなり、愛おしそうに自分のお腹を撫でている。
ここにも俺の子がいるんだよなぁ。
普段離れているので実感が少ないのだが、産前から暫くはうちに来てもらう事になっている。
やはり誰かがいる方が安心だろう。
「お陰様でお腹の子も元気いっぱいです。今日はどうされました?」
「エリザの買い物に付き合ってる所だ。なんでも化粧品を買い足したいんだと。」
「この間教えてもらったクリームがあったでしょ。ハーシェさんに聞いたんだけど、お腹のケアはしておくべきだって。あまりお腹が大きくなると、産んだ後に皺になっちゃうんだって。」
「では皮膚を柔らかくするクリームを用意しますね、私も気を付けないと。」
なるほどそういう事もあるのか。
筋肉質のエリザは産後の体を結構気にしていたので、その辺をケアしたかったんだろう。
カーラ手製の乳液はその成分を配合したクリームへと進化し、今や街の妊婦御用達品になっているんだとか。
化粧品業界ってのはいつの時代も儲かるもんなんだなぁ。
『ボディークリーム。ワイルドカウの乳成分を多量に含んでいる。保湿力が高く乾燥した肌を柔軟かつ柔らかくしてくれる。最近の平均取引価格は銀貨3枚。最安値銀貨2枚、最高値銀貨5枚。最終取引日は本日と記録されています。』
「ではこちらがクリームです、お風呂上がりの柔らかくなったお腹にたっぷり塗ってください。」
「オッケー。」
「この後もお買い物ですか?」
「その予定だ。モーリスさんの所に行って、その後はルティエの所だったか。」
「いいなぁ。」
ぼそっと本音が漏れてしまうマリーさん。
それを敏感に察知したエリザはニヤリと笑いながら俺の腕を引っ張ってくる。
「ほら、マリーさんもこう言ってるんだし明日も休んだら?」
「いやいや、還年祭も近いしオークション用の品を準備しないと。」
「とか言いながら買い付けするんでしょ?なら良いじゃない、今日みたいに少しでいいから。」
「お忙しいのでは?」
「そんなの良いのよ。仕事ばっかりで相手をしないシロウが悪いの。」
「確かに、最近はアニエスばかり構って私の所には来てくれませんね。」
いやいや、マリーさんまで何を言い出し・・・って、それを断るのは変な話だよな。
エリザと同様マリーさんも色々と大変だろうし、それで気分転換できるのならば断る理由はない。
それもまた旦那としての務めというやつだろう。
「・・・昼からでもいいか?」
「はい!」
「良かったわねマリーさん。」
「有難うございますエリザ様。」
「マリーさんとアニエスさんのお部屋の準備はもうできてるから、いつこっちに来てもいいからね。」
「わかりました。しばらくはお店をお休みしますし、その準備が出来たら向かいます。」
そうか、俺の店みたいに代わりに店番できる人がいないのか。
とはいえ今から募集しようにも多額の金銭を扱うだけに信頼できる人に頼まないといけないわけで。
加えて化粧品にも精通している人。
カーラを呼び寄せるってわけにもいかないしなぁ。
その辺も考えておけばよかった。
「それじゃあ次、行きましょ。」
「ってことでまた明日な。」
「はい、おめかししてお待ちしてます。」
今でも十分可愛いけど、何て言おうものなら横のエリザに何をされるか分かったもんじゃない。
いや、エリザも十分に可愛いんだが。
なんだか照れ臭いじゃないか。
「ねぇ、私もおめかしした方が良かった?」
「お前はそのままでも十分だ。」
「それはしても意味ないって事?」
「バカ言え、今でも十分綺麗だってことだよ。鎧姿も捨てがたいけどな。」
今のエリザも捨てがたいがエリザといえば鎧姿なんだよなぁ、やっぱり。
私服姿も捨てがたいが、こいつはやっぱり鎧姿が一番似合う。
それを堪能できるのはもう暫く先になりそうだが。
「ふふふ、ありがとう。」
「どういたしまして。悪いな、ほったらかして。」
「良いわよ、今回は私も我がまま言いすぎたし。」
「今後もあっちこっちには行くことになるだろうが、勘弁してくれ。」
「いいけど、今日みたいにまた買い物付き合ってよね。」
「それぐらいならお安い御用だ。」
マリーさんもそうだし、ハーシェさんともそういう時間を作るべきだろう。
もちろんミラやアネットもそうだ。
二人っきりで一日ってのは難しいが、そういう時間は大切にしていかないとな。
「それじゃあ次、行きましょ。」
「あぁ。アンナさんが入ってこないのかと不思議な顔してるし。」
「アンナさーん!ピクルス頂戴!」
「いらっしゃいませ!新しいの出来てますよ!」
他の客がいないから良かったものの、少しは声を加減しろよな。
その後もいつにもなくハイテンションなエリザとのデートは夕方まで続き、翌日マリーさんとも楽しませてもらった。
屋敷に戻ると月に二度ほどそういう日が設定されており、順番でデートをする事になっていたけど。
こういうことに関しては団結力半端ないよな、うちの女達は。
日々頑張っている彼女らへの福利厚生という事だろう。
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