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744.転売屋は強盗に襲われる
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芸術祭りもひっそりと終了し、またいつもの日常が戻ってきた。
ここはダンジョンと冒険者の街。
おとなしい芸術も嫌いじゃないか基本は野蛮で粗暴でそれでいてお祭り騒ぎが大好きな連中がたくさんいる。
もっとも、俺もその一人だけどな。
「あーおいしい!イライザさんおかわり!」
「あんまり飲みすぎるなよ。」
「発泡水を飲みすぎた所で何もないわよ。」
「そうでもないよお姉ちゃん、水中毒もあるんだから水分の急激な摂取は気を付けてよね。」
「キキまでそんなこと言うんだから。」
水中毒は確か何リットルも飲んだらの話だったと思うが、エールのようにがぶ飲みするんだからどうしても心配になってしまう。
今までならともかく腹の中にはもう一人いるわけだし。
エリザが不貞腐れた顔をしながら新しい串焼きに手を伸ばした、その時だった。
カランカランとベルが鳴り、怪しげな二人組が入ってきた。
外套で口元を隠した上にフードまでかぶっている。
秋が少しずつ深まり夜が寒くなってきたとはいえ、あの格好は暑苦しい。
俺たち以外の客は入ってきた二人を気にする様子もなく、楽しそうに話を続けている。
生憎と店は満席。
近くにいたイライザさんが空いたグラスを持ちながらその二人組に近づいていく。
「いらっしゃい、でも見ての通り満席なの。後で来るか出直してもらえたら・・・。」
「動くな。」
「きゃ・・・。」
短い悲鳴の後、耳を劈くグラスの割れる音が店中に響き渡った。
フードをかぶったままの片割れがイライザさんに刃物を突きつけている。
グラスが割れるなんてのはこの店では日常茶飯事だが、さすがにこの状況は初めてだな。
全員の視線を一身に浴びてもその二人は微動だにしなかった。
「ちょっと、イライザさんを離しなさいよ。」
「動くなと言っている、この女がどうなってもいいのか?」
「金なんてないよ、さっさと出て行って。」
「満席なんだろ?しこたま稼いでいるじゃないか。」
「見てわかるようにみんなまだ食事中さ、会計はまだだよ。」
刃物を突き付けられ若干声は上ずっているものの、イライザさんもこの街の女。
出会った頃に比べたら随分と肝が座っている。
「なら客は金を持ってるな。おい、この女をどうにかされたくなかったらさっさと金を・・・。」
「断る。」
「お前らに渡す金はねぇ、さっさと帰れ。」
「っていうかその手を放せ、料理が来ないだろ!」
ついでに言うと動じないのはここの客も同じだ。
強盗ごときでビビるような奴は冒険者になんてなれない。
とはいえ一触即発の状況は変わらない。
非常に危険だ。
イライザさんではなく、あの二人組がな。
「くそ、聞いていた話と違うぞ。」
「誰よ、冒険者なんて腰抜けの集まりなんて言ったやつ。」
「あー、とりあえずイライザさんを解放したらどうだ?今なら大怪我しないで済むぞ?」
「うるせぇ!いいから有り金さっさと出しやがれ!」
「痛!」
彼女の腕を無理やりつかみ、喉元に刃物を突き付ける。
さっきまでなら笑い話で済ませることもできたがこれはよくない。
飲み食いしていた全員が一斉に立ち上がり、得物に手を伸ばした。
声の感じから刃物を持っているのは男に違いない。
年齢は分からないがそれなりに若い感じがした。
「シロウ。」
「殺すなよ。」
「お姉ちゃんが動く必要はないよ、私の魔法なら動く前に殺せる。」
「じゃあ競争ね。」
「嫌だから殺すなって。それと絶対に当てるなよ、絶対だからな。」
決してフリなんかじゃない。
まじで怪我させるなって言ってるんだ。
鈍感な二人組もさすがにやばいと感じたのか二人同時に後ろに下がる。
これだけの殺意を全身に浴びることはまぁないだろう。
どこで聞いたか知らないが冒険者が腰抜けだって?
何を馬鹿なことを。
人間以上に狡猾で残虐で凶悪な魔物相手に戦ってるような連中だぞ。
なめんじゃねぇ。
「もう一度言う、武器を下ろせ。」
「誰がお前の言う事・・・いってぇ!」
俺の最後通告を拒否し終える前に誰かが投げた小型ナイフが男の二の腕に突き刺さった。
脅していた刃物が床に落ちる。
カランという音が聞こえると同時にイライザが相手の足を踏みつけ、相手の拘束から逃れた。
「この、よくも!」
「殺せ!」
「いや、殺すな!」
「どっちよ!」
こちらへ走ってくるイライザさんとすれ違うように店中の冒険者が二人組に殺到。
転びそうになった彼女を慌てて抱き留めるころには制圧されていた。
なんとまぁ無謀なことしたもんだ。
そこらの冒険者ならともかくこの人を人質にとるとか。
そりゃボコボコにされるだろ。
あっという間に決着がつき、ぼこぼこにされた強盗が縛り上げられる。
「シロウ、終わったわよ。」
「生きてるよな。」
「まぁ、一応?」
「死にそうならポーションでもぶっかけとけ。まったく、飯の最中に迷惑な奴らだ。イライザさんも大丈夫か?」
「おかげさまで大丈夫だよ。」
「そりゃよかった。」
口では大丈夫というものの抱きしめたからだが震えている。
そりゃ刃物を突き付けられればこうなるか。
俺でもなる。
さっさと警備につき出して飯の続きでもと思ったのだが、ふとさっきの会話が気になったのでボコボコにされた二人の所へと向かった。
「おい、しゃべれるか?」
「くそ、くたばれ。」
「しゃべれるな、よしよし。」
どうやら本当に誰かがポーションをかけたようで、片割れが文句を言った後に歯と血の混じった唾を吐き出した。
後ろにいた冒険者がフードを無理やり脱がすと、予想通りまだ若い男だ。
「何も言わねぇぞ。」
「シロウが聞いてるのよ、答えなさい。」
「エリザ、そう威嚇するなって。」
「でも。」
「吐き出したのと同じだけ歯を折ってまた生やせばしゃべるだろ。俺は二度とやりたくないが、まぁ頑張れ。」
「えへへ、そうこなくっちゃ。」
最近はお上品でも元は粗暴な冒険者。
失礼、粗暴は言いすぎか。
野蛮ぐらいにしておこう。
ボキボキと指の関節を鳴らしながら近づいてくる冒険者たちにそいつの顔が引きつるのがわかる。
一緒にいたもう一人は・・・まじか女かよ。
男同様ボコボコにされたようだがポーションで完治したようだ。
とはいえ女の歯の折るほどに殴るのはちょっと見たくない。
「シロウ、女だって容赦しなくていいわよ。」
「そうはいってもなぁ。」
「女だからってなめんじゃないわよ!お前ぐらい簡単に殺・・・。」
「今、なんて言った?」
「ヒゥ・・・。」
だからそんなに威嚇するなって。
ビビりすぎて何も言えなくなっちゃうじゃないか。
「あー、とりあえず反論はしない方がいいぞ。まじで殺されるかそれに近い状況になりたくはないだろ。」
さっきまでの威勢のよさはどこへやら。
大勢の冒険者に加えエリザの睨みに完全にビビってしまった哀れな二人組になってしまった。
完全に入った店を間違えたな。
エリザがいなかったらまだここまでされなかっただろうに。
俺のことになると沸点低いからなぁこいつ。
「よし、それじゃあもう一度最初から行こうか。」
落ち着いたところで尋問を開始。
さっきこいつらが言っていたセリフを思い出す。
『聞いていたのと話が違う。』
いったい誰からどんな話を聞いてきたのか。
彼らを腰抜けというぐらいだからあまり素行のよろしくない連中なんだろう。
冒険者に世話になるような人種はそんなことを言わないはず。
まぁ貴族とかになると話は別だが、そういった連中がわざわざ町の飲み屋を襲わせるようなことはしないだろう。
ましてや俺の知り合いの店を。
その辺の危機管理はしっかりしてるからなぁ、あくどい貴族ってのは。
「つまりこの街が狙われてるってこと?」
「そういう事みたいだな。」
「馬鹿じゃないの!?」
「いや、馬鹿だろどう考えても。」
尋問の結果聞き出した情報があまりにも酷すぎて思わず脱力してしまったぐらいだ。
なんとまぁ馬鹿なことを考えるやつがいるもんだ。
この町を襲うって?
いくら世の中が平和になったとしてもこういう突拍子のないことを考えるやつはいるんだなぁ。
びっくりした。
「確かに酒を飲んだ冒険者は使い物にならないかもしれないが、それは酒を飲んだらの話であって、こうやって情報が洩れて迎え撃たれたらどうなるかとか考えないんだろう、多分。」
「なめられてますね。」
「私たち一応魔物と戦ってるんだけど、そこらの民間人と間違えられているのかしら。」
「魔物程度とか思ってるんじゃないか?ダンジョンの中まで知らないんだよたぶん。」
「そんなことある?」
「あるから襲おうとしてるんだろ?ここに来たら金が山ほどある、か。確かにその通りだが、いったいどのぐらいの人間で襲ってくるつもりなんだろうなぁ。」
「そ、そこまでは知らないです。」
「かんべんしてください。」
下っ端過ぎてそこまでの情報はもらってないと考えるべきか。
でも街を襲うなんてことを考えるぐらいだ、かなりの人数で襲ってくるんだろう。
でもなぁ、街が襲われるのなんて日常茶飯事だし?
さすがに武器や魔法を使ってくる魔物は少ないが、それでもかなりの修羅場をくぐっている連中だ。
護衛依頼で人間とも戦ってきている。
よほどの相手じゃなければ大丈夫だと思うんだが・・・。
「決行は二日後。大量の酒が持ち込まれて冒険者が酔いつぶれた夜中に襲撃してくると、なるほどなるほど。」
「アネットに頑張ってもらいましょうか。」
「だな。それと近くの町か村が襲われた記録がないか確認しよう。あれば大体の規模がわかるはずだ。」
「はぁ、魔物はお金になるけど人間はお金にならないのよね。」
「装備ぐらいにしとけ。」
生皮をはぐとか勘弁してほしい。
ともかく、この街が襲われるなんて馬鹿なことを考えている連中がいるのは間違いない。
そいつらは二日後、大量の酒を街に持ち込み酒盛りを行わせるそうだ。
仕方がないからその作戦に乗ってやろうじゃないか。
酒に罪はない。
しっかり飲ませてもらったうえで返り討ちにしてやればいい。
さて、冒険者の何たるかを教えてやろうじゃないか。
ここはダンジョンと冒険者の街。
おとなしい芸術も嫌いじゃないか基本は野蛮で粗暴でそれでいてお祭り騒ぎが大好きな連中がたくさんいる。
もっとも、俺もその一人だけどな。
「あーおいしい!イライザさんおかわり!」
「あんまり飲みすぎるなよ。」
「発泡水を飲みすぎた所で何もないわよ。」
「そうでもないよお姉ちゃん、水中毒もあるんだから水分の急激な摂取は気を付けてよね。」
「キキまでそんなこと言うんだから。」
水中毒は確か何リットルも飲んだらの話だったと思うが、エールのようにがぶ飲みするんだからどうしても心配になってしまう。
今までならともかく腹の中にはもう一人いるわけだし。
エリザが不貞腐れた顔をしながら新しい串焼きに手を伸ばした、その時だった。
カランカランとベルが鳴り、怪しげな二人組が入ってきた。
外套で口元を隠した上にフードまでかぶっている。
秋が少しずつ深まり夜が寒くなってきたとはいえ、あの格好は暑苦しい。
俺たち以外の客は入ってきた二人を気にする様子もなく、楽しそうに話を続けている。
生憎と店は満席。
近くにいたイライザさんが空いたグラスを持ちながらその二人組に近づいていく。
「いらっしゃい、でも見ての通り満席なの。後で来るか出直してもらえたら・・・。」
「動くな。」
「きゃ・・・。」
短い悲鳴の後、耳を劈くグラスの割れる音が店中に響き渡った。
フードをかぶったままの片割れがイライザさんに刃物を突きつけている。
グラスが割れるなんてのはこの店では日常茶飯事だが、さすがにこの状況は初めてだな。
全員の視線を一身に浴びてもその二人は微動だにしなかった。
「ちょっと、イライザさんを離しなさいよ。」
「動くなと言っている、この女がどうなってもいいのか?」
「金なんてないよ、さっさと出て行って。」
「満席なんだろ?しこたま稼いでいるじゃないか。」
「見てわかるようにみんなまだ食事中さ、会計はまだだよ。」
刃物を突き付けられ若干声は上ずっているものの、イライザさんもこの街の女。
出会った頃に比べたら随分と肝が座っている。
「なら客は金を持ってるな。おい、この女をどうにかされたくなかったらさっさと金を・・・。」
「断る。」
「お前らに渡す金はねぇ、さっさと帰れ。」
「っていうかその手を放せ、料理が来ないだろ!」
ついでに言うと動じないのはここの客も同じだ。
強盗ごときでビビるような奴は冒険者になんてなれない。
とはいえ一触即発の状況は変わらない。
非常に危険だ。
イライザさんではなく、あの二人組がな。
「くそ、聞いていた話と違うぞ。」
「誰よ、冒険者なんて腰抜けの集まりなんて言ったやつ。」
「あー、とりあえずイライザさんを解放したらどうだ?今なら大怪我しないで済むぞ?」
「うるせぇ!いいから有り金さっさと出しやがれ!」
「痛!」
彼女の腕を無理やりつかみ、喉元に刃物を突き付ける。
さっきまでなら笑い話で済ませることもできたがこれはよくない。
飲み食いしていた全員が一斉に立ち上がり、得物に手を伸ばした。
声の感じから刃物を持っているのは男に違いない。
年齢は分からないがそれなりに若い感じがした。
「シロウ。」
「殺すなよ。」
「お姉ちゃんが動く必要はないよ、私の魔法なら動く前に殺せる。」
「じゃあ競争ね。」
「嫌だから殺すなって。それと絶対に当てるなよ、絶対だからな。」
決してフリなんかじゃない。
まじで怪我させるなって言ってるんだ。
鈍感な二人組もさすがにやばいと感じたのか二人同時に後ろに下がる。
これだけの殺意を全身に浴びることはまぁないだろう。
どこで聞いたか知らないが冒険者が腰抜けだって?
何を馬鹿なことを。
人間以上に狡猾で残虐で凶悪な魔物相手に戦ってるような連中だぞ。
なめんじゃねぇ。
「もう一度言う、武器を下ろせ。」
「誰がお前の言う事・・・いってぇ!」
俺の最後通告を拒否し終える前に誰かが投げた小型ナイフが男の二の腕に突き刺さった。
脅していた刃物が床に落ちる。
カランという音が聞こえると同時にイライザが相手の足を踏みつけ、相手の拘束から逃れた。
「この、よくも!」
「殺せ!」
「いや、殺すな!」
「どっちよ!」
こちらへ走ってくるイライザさんとすれ違うように店中の冒険者が二人組に殺到。
転びそうになった彼女を慌てて抱き留めるころには制圧されていた。
なんとまぁ無謀なことしたもんだ。
そこらの冒険者ならともかくこの人を人質にとるとか。
そりゃボコボコにされるだろ。
あっという間に決着がつき、ぼこぼこにされた強盗が縛り上げられる。
「シロウ、終わったわよ。」
「生きてるよな。」
「まぁ、一応?」
「死にそうならポーションでもぶっかけとけ。まったく、飯の最中に迷惑な奴らだ。イライザさんも大丈夫か?」
「おかげさまで大丈夫だよ。」
「そりゃよかった。」
口では大丈夫というものの抱きしめたからだが震えている。
そりゃ刃物を突き付けられればこうなるか。
俺でもなる。
さっさと警備につき出して飯の続きでもと思ったのだが、ふとさっきの会話が気になったのでボコボコにされた二人の所へと向かった。
「おい、しゃべれるか?」
「くそ、くたばれ。」
「しゃべれるな、よしよし。」
どうやら本当に誰かがポーションをかけたようで、片割れが文句を言った後に歯と血の混じった唾を吐き出した。
後ろにいた冒険者がフードを無理やり脱がすと、予想通りまだ若い男だ。
「何も言わねぇぞ。」
「シロウが聞いてるのよ、答えなさい。」
「エリザ、そう威嚇するなって。」
「でも。」
「吐き出したのと同じだけ歯を折ってまた生やせばしゃべるだろ。俺は二度とやりたくないが、まぁ頑張れ。」
「えへへ、そうこなくっちゃ。」
最近はお上品でも元は粗暴な冒険者。
失礼、粗暴は言いすぎか。
野蛮ぐらいにしておこう。
ボキボキと指の関節を鳴らしながら近づいてくる冒険者たちにそいつの顔が引きつるのがわかる。
一緒にいたもう一人は・・・まじか女かよ。
男同様ボコボコにされたようだがポーションで完治したようだ。
とはいえ女の歯の折るほどに殴るのはちょっと見たくない。
「シロウ、女だって容赦しなくていいわよ。」
「そうはいってもなぁ。」
「女だからってなめんじゃないわよ!お前ぐらい簡単に殺・・・。」
「今、なんて言った?」
「ヒゥ・・・。」
だからそんなに威嚇するなって。
ビビりすぎて何も言えなくなっちゃうじゃないか。
「あー、とりあえず反論はしない方がいいぞ。まじで殺されるかそれに近い状況になりたくはないだろ。」
さっきまでの威勢のよさはどこへやら。
大勢の冒険者に加えエリザの睨みに完全にビビってしまった哀れな二人組になってしまった。
完全に入った店を間違えたな。
エリザがいなかったらまだここまでされなかっただろうに。
俺のことになると沸点低いからなぁこいつ。
「よし、それじゃあもう一度最初から行こうか。」
落ち着いたところで尋問を開始。
さっきこいつらが言っていたセリフを思い出す。
『聞いていたのと話が違う。』
いったい誰からどんな話を聞いてきたのか。
彼らを腰抜けというぐらいだからあまり素行のよろしくない連中なんだろう。
冒険者に世話になるような人種はそんなことを言わないはず。
まぁ貴族とかになると話は別だが、そういった連中がわざわざ町の飲み屋を襲わせるようなことはしないだろう。
ましてや俺の知り合いの店を。
その辺の危機管理はしっかりしてるからなぁ、あくどい貴族ってのは。
「つまりこの街が狙われてるってこと?」
「そういう事みたいだな。」
「馬鹿じゃないの!?」
「いや、馬鹿だろどう考えても。」
尋問の結果聞き出した情報があまりにも酷すぎて思わず脱力してしまったぐらいだ。
なんとまぁ馬鹿なことを考えるやつがいるもんだ。
この町を襲うって?
いくら世の中が平和になったとしてもこういう突拍子のないことを考えるやつはいるんだなぁ。
びっくりした。
「確かに酒を飲んだ冒険者は使い物にならないかもしれないが、それは酒を飲んだらの話であって、こうやって情報が洩れて迎え撃たれたらどうなるかとか考えないんだろう、多分。」
「なめられてますね。」
「私たち一応魔物と戦ってるんだけど、そこらの民間人と間違えられているのかしら。」
「魔物程度とか思ってるんじゃないか?ダンジョンの中まで知らないんだよたぶん。」
「そんなことある?」
「あるから襲おうとしてるんだろ?ここに来たら金が山ほどある、か。確かにその通りだが、いったいどのぐらいの人間で襲ってくるつもりなんだろうなぁ。」
「そ、そこまでは知らないです。」
「かんべんしてください。」
下っ端過ぎてそこまでの情報はもらってないと考えるべきか。
でも街を襲うなんてことを考えるぐらいだ、かなりの人数で襲ってくるんだろう。
でもなぁ、街が襲われるのなんて日常茶飯事だし?
さすがに武器や魔法を使ってくる魔物は少ないが、それでもかなりの修羅場をくぐっている連中だ。
護衛依頼で人間とも戦ってきている。
よほどの相手じゃなければ大丈夫だと思うんだが・・・。
「決行は二日後。大量の酒が持ち込まれて冒険者が酔いつぶれた夜中に襲撃してくると、なるほどなるほど。」
「アネットに頑張ってもらいましょうか。」
「だな。それと近くの町か村が襲われた記録がないか確認しよう。あれば大体の規模がわかるはずだ。」
「はぁ、魔物はお金になるけど人間はお金にならないのよね。」
「装備ぐらいにしとけ。」
生皮をはぐとか勘弁してほしい。
ともかく、この街が襲われるなんて馬鹿なことを考えている連中がいるのは間違いない。
そいつらは二日後、大量の酒を街に持ち込み酒盛りを行わせるそうだ。
仕方がないからその作戦に乗ってやろうじゃないか。
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