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722.転売屋は話を見守る
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「それで、また俺達を呼んだ理由を聞かせてもらおうか。荷物を接収するなんて脅しまで使ったんだ、さぞ実のある話なんだろうな。」
「それはこちらのセリフです、姑息な手を使って何のつもりですか?」
再びやって来た応接室で始まったやったやらないの応酬。
結果はまぁ見えているが付き合ってやるか。
「おいおい、言いがかりはやめてくれ。俺が何をしたっていうんだ?」
「この大騒動の原因は貴方でしょう。」
「いいや違うね。」
「証拠はあります、貴方方が武器屋からゾロゾロと出て来たのを私の部下が直接確認しました。」
「ただ出て来ただけで証拠だって?バカすぎるだろ。」
向こうはかなり状況が悪いのか、あの時の薄ら笑いはどこへやらかなり焦っている感じだ。
それもそうだろう、反抗しないと思っていた各ギルドが一斉に自分達を非難し始めたんだから。
「話が読めないんだが、いったい何が起きているんだ?」
「簡単に申しますと、現在街で起きている騒ぎの原因をシロウ様だと言っているんです。」
俺とネシアがいがみ合っている後ろで、リングさんとアニエスさんがヒソヒソと情報共有している。
「そのままだな。で、本当なのか?」
「そもそもの原因は、材料不足による武器屋の武器提供停止。それを発端としまして冒険者ギルドの業務を停止しまして、その他様々なギルドから不満の声が上がっております。」
「陛下から聞いた通りか。」
「その通りです。」
ポーラ様は終始下を向いておりその表情はうかがえないが、小さく震えているのは間違いない。
「おい、そこ何を話している。」
どうやら裏でヒソヒソしているのが気に食わなかったのか、ネシアがアニエスさんに声をかける。
そうか、リングさんが誰か知らないのか。
そうじゃないとそんな口の利き方出来ないよな。
「監査官としてリング様に状況を説明しておりました、不快でしたらお詫び致します。」
「いや、それはいいんだが・・・。」
「リングだ、今は王家の隅に名前を置かせてもらっている。この街の長はお前か?」
「お、王家の方でしたか。」
「街長は横におられるポーラ様です。」
「ポ、ポーラと申しますリング様。」
「オークションのついでに立ち寄ってみたが、相変わらず変なことに巻き込まれているな。」
「別に巻き込まれたわけじゃないんだが・・・。」
むしろ自分から引き起こした?
ネシアには違うと言っているが間違いなく俺が原因だ。
でも、この状況を引き起こしたのはお前だよ。
ぶっちゃけリングさんの登場は予想外だったが、むしろ好都合だ。
この状況を利用させてもらうとしよう。
「アニエスさん、リングさんもいる事だし改めてポーラさんから話を聞いたらどうだ?」
「そうですね、そうさせて頂きましょう。」
「ちょ、ちょっとまて。今は・・・。」
「何か不都合でもあるのか?」
「い、いえ。」
「私も陛下からある程度の話は聞いているが詳しくない。ここに来たのも何かの縁なのだろう、一緒に聞かせてくれ。」
「では、最初から。」
リング様がいるせいで余計なことが言えなくなってしまったネシアが恨めしそうな目でこちらを睨んでくるのだが、俺の知った事ではない。
なぜこのようなことになったのか、そしてどうする予定だったのか。
しかしながらそれが叶わずどういう状況に陥っているのか。
書類を手にアニエスさんが粛々と話を進めていく。
ポーラ様はただ聞かれたことに返事をするだけで、まるで人形のようだ。
まるで余計な事を言うなと言われているかのよう。
いや、恐らくはそうなんだろう。
「と、ここまでは間違いありませんね。」
「間違い、ありません。」
「つまりシロウの持ち込んだ荷物を提供すればある程度騒ぎは収まるわけか。もちろん値段の折り合いがつけばの話だが、ここは双方が歩み寄るほうがいいのではないか?」
「そ、その通りだと思います。先程は私も言い過ぎた所があります、この状況を打開できるのであればそちらの金額に合わせるのもまた・・・。」
「さっきとは随分と態度が違うな。」
「当たり前です。街を正しく導くのが我々の仕事ですから。」
「では、ポーラ様のご家族を人質に取り、裏で運営指示を出すことが正しい仕事なのですね。」
「なっ!」
賽は投げられた。
そう、今回の一番のポイントはここだ。
何故ポーラさんが街長になったのか。
年齢もさることながら実績も経験も何一つない人が普通街長になることなんてありえない。
余程の強いコネや縁があれば別だが、今回は前街長の死去という大問題からのスタートだ。
町中大騒ぎになっているところに急に現れたポーラさん。
誰もが最初は疑問に思ったようだけど、その手腕は素晴らしくあっという間に混乱する街を収めてしまったらしい。
そしてなし崩し的に街長に就任。
なぜこの人なのか、という点には一切触れられなかったそうだ。
それともう一つ。
前街長の死因。
表向きは病死とされているようだが、色々と調べを進めていると査察先で事故に遭い亡くなったのだとか。
ちゃんとそう言えばいいのにわざわざ隠す所が怪しすぎる。
さぁ、どう出る。
「どういうことだ?」
「発言した通りです。ポーラ様のご家族は現在人質に取られており、反発すればその命が危なくなる。ですので、ネシア様を含めた複数人の言いなりになっていることが判明しました。これはギルド協会を含めた多方面の証言から判明しております。間違いありませんね、ポーラ様。」
「で、でたらめだ!そのような事実はないし、この場での嘘は我々に対する侮辱だ!」
「お前に聞いてないんだよ。ポーラさん、どうなんだ?」
「そ、それは・・・。」
「ちなみにご家族はもう保護しております、どうぞご安心を。」
アニエスさんの言葉を聞いた瞬間にポーラさんの顔が一気に明るくなる。
それはもう花が咲いたようにパッと笑顔になった。
ちなみに救助にはディーネとエリザが加わっている。
そろそろここにやってくるはずなんだが・・・。
「失礼、シロウはいるか?」
「これはディネストリファ様。」
「仕事は終わった、私が威嚇しただけで腰を抜かすような腑抜け共だったぞ。」
「ご苦労だった、向こうで好きなもの食べてきてくれ。肉だけじゃなく魚も食えよ。」
どうやら救助は無事に成功したようだ。
それにしてもディーネの威嚇か、さぞ見ものだっただろうなぁ。
腰を抜かすどころか失禁した奴もいるんじゃないだろうか。
くわばらくわばら。
満足そうに部屋を出ていくディーネを部屋の外まで見送り、再びもとの場所に戻る。
「話を腰を折って悪かった。で、どうなんだ?」
「アニエス様のいう通り、僕は家族を人質に取られネシアさんに言われるがまま街長をさせられていました。本当はこんな事したくなかったのに、でも僕が頑張らないと皆が苦しむから。だから・・・。」
「適当なことを言うな!」
「適当?熱病にかかったポーラ様の家族に薬を出さないと脅したそうじゃないですか。また、遠縁に当たる前街長の不正を公表されたくなければとも言ったそうですね、貴方が、その口で。」
アニエスさんの鋭い眼光がネシアの心を締め上げる。
殺されると思ったのかヒュッという音と共に絶句してしまった。
「つまりこの男がポーラ様を操っていたのだな。」
「その通りですリング様。」
「街長を脅しさらには街を牛耳ろうなど言語道断。さらに、これだけの騒ぎを起こしておいて言い逃れが出来ると思っておるまいなネシアとやら。」
「わ、私の話もお聞きください!このような茶番、全ては私に対する言いがかりです!確かにポーラ様に指示は出しておりましたが、それもすべてこの街をよくするため!決して私利私欲のためなどでは・・・。」
「じゃあお前が前街長を事故に見せかけて殺すように依頼したこの依頼書はどう説明するんだ?」
「む、ホリアではないか。」
「聖騎士団副団長様の登場か、悪いなこんな所まで。」
「なに、仕事のついでだ。リング様の護衛も仰せつかっているしな。」
再び応接室の扉が開かれ、何カ所か血のようなシミが見える紙を右手で掲げながらホリアが部屋に入ってきた。
最後のピースはこれで揃った。
ネシアが裏で何をしていたのか、前街長はなぜ死んだのか。
そのすべてが白日の下にさらされたことになる。
さすがのネシアも観念したのか、その場にへたり込みうなだれてしまった。
「ということで、もう無理しなくていいそうだぞ。ポーラさん。よく頑張ったな。」
「ありがとうございます、ありがとうございます。」
ぼろぼろと涙を流しポーラさんが何度もお礼を言う。
その横にアニエスさんが寄り添い、肩をやさしくなでてあげた。
かくして街の汚染は一掃され、街は元に戻ったわけだ。
ネシアはしょっぴかれ、大騒ぎの屋敷を後にする。
これからが本当に大変だろうけど、まぁあとはなんとかなるだろう。
悪は断たれた、残った人達が善なる者であることを祈るだけだ。
「やれやれ、陛下の下命があったとはいえ相変わらず面倒なことに首を突っ込んでいるな、お前は。」
「今回に限って言えば俺は何もしてないぞ、全部アニエスさんがやったことだ。俺は言われたとおりに素材を集めて売りに来ただけだよ。」
「ホリアの顔はそう言ってないが?」
「気のせいだろ。」
本当に俺はなにもしていない、言われた通りに素材を集めてきただけだ。
「あ。」
「どうした?」
「結局いくらで誰に荷物を売ればいいのか聞きそびれた。」
「全く、こんなときでも商売か。」
「当たり前だろ、苦労して集めたんだから高く売りたいじゃないか。」
どういう状況であれ安売りするつもりはない。
むしろ高く買ってくれる状況なんだから売らない理由はない。
ついでに追加の依頼を貰えたら最高なんだが、そっちはまぁ今度でいいか。
「戻るか?俺はリング様と一緒に宿にいってるぞ。」
「そうしてくれ、どちらにしろ出発は明日になるだろうし。」
「それじゃあな、シロウ。くれぐれも情に流されるなよ。」
どういうことだろうか。
首をかしげながら来た道を引き返すと、ちょうどアニエスさんが駆けてくるのが見えた。
「シロウ様ちょうどよかった!」
「どうしたんだ?」
「ポーラ様がどうしてもお礼を言いたいと。」
「俺も荷物の受け取りを頼みたかったところだ。」
「今化粧をお直ししていますので少しお待ちいただくと思いますが・・・、どうされました?」
「今なんていった?」
化粧がどうのとか言ったよな。
え、なんで?
そんなのいる?
「泣いて化粧が崩れてしまったようです、お着替えもするそうなので少しお待ちください。」
「なぁ、もしかしてもしかすると、ポーラさんは女なのか?」
「その通りですが。」
「マジか。」
「はい。」
え、気づいていなかったのは俺だけ?
だからリングさんはあんなことを言ったのか。
女の涙に弱いつもりはないのだが気を付けよう。
またエリザに小言を言われかねない。
こうして、オークションを前に無事港町に平穏が戻ってきたのだった。
「それはこちらのセリフです、姑息な手を使って何のつもりですか?」
再びやって来た応接室で始まったやったやらないの応酬。
結果はまぁ見えているが付き合ってやるか。
「おいおい、言いがかりはやめてくれ。俺が何をしたっていうんだ?」
「この大騒動の原因は貴方でしょう。」
「いいや違うね。」
「証拠はあります、貴方方が武器屋からゾロゾロと出て来たのを私の部下が直接確認しました。」
「ただ出て来ただけで証拠だって?バカすぎるだろ。」
向こうはかなり状況が悪いのか、あの時の薄ら笑いはどこへやらかなり焦っている感じだ。
それもそうだろう、反抗しないと思っていた各ギルドが一斉に自分達を非難し始めたんだから。
「話が読めないんだが、いったい何が起きているんだ?」
「簡単に申しますと、現在街で起きている騒ぎの原因をシロウ様だと言っているんです。」
俺とネシアがいがみ合っている後ろで、リングさんとアニエスさんがヒソヒソと情報共有している。
「そのままだな。で、本当なのか?」
「そもそもの原因は、材料不足による武器屋の武器提供停止。それを発端としまして冒険者ギルドの業務を停止しまして、その他様々なギルドから不満の声が上がっております。」
「陛下から聞いた通りか。」
「その通りです。」
ポーラ様は終始下を向いておりその表情はうかがえないが、小さく震えているのは間違いない。
「おい、そこ何を話している。」
どうやら裏でヒソヒソしているのが気に食わなかったのか、ネシアがアニエスさんに声をかける。
そうか、リングさんが誰か知らないのか。
そうじゃないとそんな口の利き方出来ないよな。
「監査官としてリング様に状況を説明しておりました、不快でしたらお詫び致します。」
「いや、それはいいんだが・・・。」
「リングだ、今は王家の隅に名前を置かせてもらっている。この街の長はお前か?」
「お、王家の方でしたか。」
「街長は横におられるポーラ様です。」
「ポ、ポーラと申しますリング様。」
「オークションのついでに立ち寄ってみたが、相変わらず変なことに巻き込まれているな。」
「別に巻き込まれたわけじゃないんだが・・・。」
むしろ自分から引き起こした?
ネシアには違うと言っているが間違いなく俺が原因だ。
でも、この状況を引き起こしたのはお前だよ。
ぶっちゃけリングさんの登場は予想外だったが、むしろ好都合だ。
この状況を利用させてもらうとしよう。
「アニエスさん、リングさんもいる事だし改めてポーラさんから話を聞いたらどうだ?」
「そうですね、そうさせて頂きましょう。」
「ちょ、ちょっとまて。今は・・・。」
「何か不都合でもあるのか?」
「い、いえ。」
「私も陛下からある程度の話は聞いているが詳しくない。ここに来たのも何かの縁なのだろう、一緒に聞かせてくれ。」
「では、最初から。」
リング様がいるせいで余計なことが言えなくなってしまったネシアが恨めしそうな目でこちらを睨んでくるのだが、俺の知った事ではない。
なぜこのようなことになったのか、そしてどうする予定だったのか。
しかしながらそれが叶わずどういう状況に陥っているのか。
書類を手にアニエスさんが粛々と話を進めていく。
ポーラ様はただ聞かれたことに返事をするだけで、まるで人形のようだ。
まるで余計な事を言うなと言われているかのよう。
いや、恐らくはそうなんだろう。
「と、ここまでは間違いありませんね。」
「間違い、ありません。」
「つまりシロウの持ち込んだ荷物を提供すればある程度騒ぎは収まるわけか。もちろん値段の折り合いがつけばの話だが、ここは双方が歩み寄るほうがいいのではないか?」
「そ、その通りだと思います。先程は私も言い過ぎた所があります、この状況を打開できるのであればそちらの金額に合わせるのもまた・・・。」
「さっきとは随分と態度が違うな。」
「当たり前です。街を正しく導くのが我々の仕事ですから。」
「では、ポーラ様のご家族を人質に取り、裏で運営指示を出すことが正しい仕事なのですね。」
「なっ!」
賽は投げられた。
そう、今回の一番のポイントはここだ。
何故ポーラさんが街長になったのか。
年齢もさることながら実績も経験も何一つない人が普通街長になることなんてありえない。
余程の強いコネや縁があれば別だが、今回は前街長の死去という大問題からのスタートだ。
町中大騒ぎになっているところに急に現れたポーラさん。
誰もが最初は疑問に思ったようだけど、その手腕は素晴らしくあっという間に混乱する街を収めてしまったらしい。
そしてなし崩し的に街長に就任。
なぜこの人なのか、という点には一切触れられなかったそうだ。
それともう一つ。
前街長の死因。
表向きは病死とされているようだが、色々と調べを進めていると査察先で事故に遭い亡くなったのだとか。
ちゃんとそう言えばいいのにわざわざ隠す所が怪しすぎる。
さぁ、どう出る。
「どういうことだ?」
「発言した通りです。ポーラ様のご家族は現在人質に取られており、反発すればその命が危なくなる。ですので、ネシア様を含めた複数人の言いなりになっていることが判明しました。これはギルド協会を含めた多方面の証言から判明しております。間違いありませんね、ポーラ様。」
「で、でたらめだ!そのような事実はないし、この場での嘘は我々に対する侮辱だ!」
「お前に聞いてないんだよ。ポーラさん、どうなんだ?」
「そ、それは・・・。」
「ちなみにご家族はもう保護しております、どうぞご安心を。」
アニエスさんの言葉を聞いた瞬間にポーラさんの顔が一気に明るくなる。
それはもう花が咲いたようにパッと笑顔になった。
ちなみに救助にはディーネとエリザが加わっている。
そろそろここにやってくるはずなんだが・・・。
「失礼、シロウはいるか?」
「これはディネストリファ様。」
「仕事は終わった、私が威嚇しただけで腰を抜かすような腑抜け共だったぞ。」
「ご苦労だった、向こうで好きなもの食べてきてくれ。肉だけじゃなく魚も食えよ。」
どうやら救助は無事に成功したようだ。
それにしてもディーネの威嚇か、さぞ見ものだっただろうなぁ。
腰を抜かすどころか失禁した奴もいるんじゃないだろうか。
くわばらくわばら。
満足そうに部屋を出ていくディーネを部屋の外まで見送り、再びもとの場所に戻る。
「話を腰を折って悪かった。で、どうなんだ?」
「アニエス様のいう通り、僕は家族を人質に取られネシアさんに言われるがまま街長をさせられていました。本当はこんな事したくなかったのに、でも僕が頑張らないと皆が苦しむから。だから・・・。」
「適当なことを言うな!」
「適当?熱病にかかったポーラ様の家族に薬を出さないと脅したそうじゃないですか。また、遠縁に当たる前街長の不正を公表されたくなければとも言ったそうですね、貴方が、その口で。」
アニエスさんの鋭い眼光がネシアの心を締め上げる。
殺されると思ったのかヒュッという音と共に絶句してしまった。
「つまりこの男がポーラ様を操っていたのだな。」
「その通りですリング様。」
「街長を脅しさらには街を牛耳ろうなど言語道断。さらに、これだけの騒ぎを起こしておいて言い逃れが出来ると思っておるまいなネシアとやら。」
「わ、私の話もお聞きください!このような茶番、全ては私に対する言いがかりです!確かにポーラ様に指示は出しておりましたが、それもすべてこの街をよくするため!決して私利私欲のためなどでは・・・。」
「じゃあお前が前街長を事故に見せかけて殺すように依頼したこの依頼書はどう説明するんだ?」
「む、ホリアではないか。」
「聖騎士団副団長様の登場か、悪いなこんな所まで。」
「なに、仕事のついでだ。リング様の護衛も仰せつかっているしな。」
再び応接室の扉が開かれ、何カ所か血のようなシミが見える紙を右手で掲げながらホリアが部屋に入ってきた。
最後のピースはこれで揃った。
ネシアが裏で何をしていたのか、前街長はなぜ死んだのか。
そのすべてが白日の下にさらされたことになる。
さすがのネシアも観念したのか、その場にへたり込みうなだれてしまった。
「ということで、もう無理しなくていいそうだぞ。ポーラさん。よく頑張ったな。」
「ありがとうございます、ありがとうございます。」
ぼろぼろと涙を流しポーラさんが何度もお礼を言う。
その横にアニエスさんが寄り添い、肩をやさしくなでてあげた。
かくして街の汚染は一掃され、街は元に戻ったわけだ。
ネシアはしょっぴかれ、大騒ぎの屋敷を後にする。
これからが本当に大変だろうけど、まぁあとはなんとかなるだろう。
悪は断たれた、残った人達が善なる者であることを祈るだけだ。
「やれやれ、陛下の下命があったとはいえ相変わらず面倒なことに首を突っ込んでいるな、お前は。」
「今回に限って言えば俺は何もしてないぞ、全部アニエスさんがやったことだ。俺は言われたとおりに素材を集めて売りに来ただけだよ。」
「ホリアの顔はそう言ってないが?」
「気のせいだろ。」
本当に俺はなにもしていない、言われた通りに素材を集めてきただけだ。
「あ。」
「どうした?」
「結局いくらで誰に荷物を売ればいいのか聞きそびれた。」
「全く、こんなときでも商売か。」
「当たり前だろ、苦労して集めたんだから高く売りたいじゃないか。」
どういう状況であれ安売りするつもりはない。
むしろ高く買ってくれる状況なんだから売らない理由はない。
ついでに追加の依頼を貰えたら最高なんだが、そっちはまぁ今度でいいか。
「戻るか?俺はリング様と一緒に宿にいってるぞ。」
「そうしてくれ、どちらにしろ出発は明日になるだろうし。」
「それじゃあな、シロウ。くれぐれも情に流されるなよ。」
どういうことだろうか。
首をかしげながら来た道を引き返すと、ちょうどアニエスさんが駆けてくるのが見えた。
「シロウ様ちょうどよかった!」
「どうしたんだ?」
「ポーラ様がどうしてもお礼を言いたいと。」
「俺も荷物の受け取りを頼みたかったところだ。」
「今化粧をお直ししていますので少しお待ちいただくと思いますが・・・、どうされました?」
「今なんていった?」
化粧がどうのとか言ったよな。
え、なんで?
そんなのいる?
「泣いて化粧が崩れてしまったようです、お着替えもするそうなので少しお待ちください。」
「なぁ、もしかしてもしかすると、ポーラさんは女なのか?」
「その通りですが。」
「マジか。」
「はい。」
え、気づいていなかったのは俺だけ?
だからリングさんはあんなことを言ったのか。
女の涙に弱いつもりはないのだが気を付けよう。
またエリザに小言を言われかねない。
こうして、オークションを前に無事港町に平穏が戻ってきたのだった。
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