723 / 1,248
720.転売屋は片付けの準備をする
しおりを挟む
さて、夏も残すところあとわずか。
メインイベントはオークション、と言いたい所だが目下進行中の懸案事項が一つ。
そう、港町だ。
今の所は平穏なようだが、どうもきな臭い感じは消えていない。
あそこが使えなくなると金儲けの手段がいくつか無くなってしまうからなぁ、それだけは何とも避けたいところ。
とはいえ、その為に俺が出来ることはあまりない。
一応国王陛下から下命されている仕事とはいえ、向こうも本気でどうにかしろとは思っていないだろう。
メインは監査官であるアニエスさんだ。
俺は貴族という身分とディーネというお守りを駆使して自分の儲けを維持したいだけ。
街が揉めているとかはぶっちゃけどうでもいいだよなぁ。
揉めていたとしても俺はゴードンさんやゾイルと取引をするし、必要であればポーラさんとだって商売をする。
彼らがそれを咎めることはないだろう。
これも仕事だからな、俺が金儲けを生きがいにしていることもわかっているだろうし。
とはいえ、それを快く思っていない奴もいるわけで。
それが今回の一番のネック、毒、めんどくさい原因というわけだ。
「さて、気持ちよくオークションを迎える為にも面倒ごとはさっさと片づけてしまいたいわけだ。それに国王陛下からの下命に答える為にも結果を出す必要がある。その為の情報を提供してもらうべく集まってもらったわけだけども・・・。何だよその顔は。」
「いや、珍しくシロウさんがやる気だなと思って。」
「全くやる気はない。ぶっちゃけどうでもいいしめんどくさいが、俺の金儲けの為には致し方ない。」
「つまりすべては自分の為と。」
「その通り、何か問題が?」
「いえ、何も。」
「だよな。」
ギルド協会の一室を借りてそこにいつもの面々が集合していた。
こっちは俺とミラ、それとアニエスさん。
ギルド協会からは羊男、冒険者ギルドからはニア、それとガレイさんとアインにも来てもらった。
立ち位置としてはこっちだが、今回は向こうサイドでお願いしている。
貴重な情報源だからな。
「あくまでも私達は情報提供者で今回の件には関係しない、そのスタンスでいいのよね?」
「問題ありません。あくまでも私達の仕事ですので、情報源を明かすことはありません。監査官特権というものです。」
「それを聞いて安心した。ほら、一応こういう立場だし他の街との関係もあるからさ。でも、実際大変みたいよ向こうは。」
「というと?」
「うちはまぁ特殊だけど、冒険者の扱いが随分とぞんざいなんだって。仕事も適当だし、冒険者を便利屋としか思っていない感じがするって向こうの職員がぼやいていたわ。必要な素材なんかをお願いしても、自分達で何とか出来るだろって笑われるとか。それに、前以上に経費について厳しくなって予算が通りにくくなったんだって。その結果が冒険者の待遇や扱いの悪化、そこから来る冒険者離れ。冒険者がいなくなると護衛が減るから、さらに陸路が衰退。安全な海路に依頼が殺到して、結果今まで以上に下との関係が悪化するわけ。」
ニアには冒険者ギルドの知り合いを通じて向こうの状況を調べてもらったわけだが、これは思った以上に大変な感じだ。
港の方が随分と虐げられているのは知っていたが、それ以上に冒険者の扱いがよろしくない。
そりゃ冒険者も港の方に手を貸すよなぁ。
そのせいで、この前のように武器が不正に横流しされているとか噂が出てしまうんだろう。
全部身から出た錆というやつじゃないか。
「実際に船を使った依頼も随分と増えています。いつもなら彼女の所に来る依頼の三割はこちらに流れていると考えられます。」
「待遇が悪く冒険者が集まらない、それでも改善するつもりは無く現状維持かむしろ悪化。早く何とかしてあげないと街自体が衰退するわよ、マジで。」
「とはいえそれを俺に言われてもなぁ。むしろそれをやらなきゃいけないのは向こうのギルド協会だろ、そこんとこどうなんだよ。」
「どうなんだよと言われましても。それはもう大変なことになってますって。」
「そうなのか?」
「我々の仕事は公平を保つこと、もちろん街の運営にも関わりますがそれは公平でなければなりません。それが出来ていない上に、出来ないことを強制されているんですからそりゃもう不満の嵐です。」
「・・・それを止めるのがギルド協会の仕事じゃないのか?」
いくら街長が偉いとはいえ、中立の立場にいるのがギルド協会のはず。
街の運営には多くの人間、そして組織がかかわっている。
ギルドだってたくさんあるし、問題も山積みだ。
それはどこも同じだろう。
でもそれを中立な立場で公平に上手くさばくのがギルド協会の仕事。
まぁ、羊男が無理難題言ってくるのは公平なのかと聞かれれば何とも言い難いが、その分ちゃんと報酬が出ているので公平と考えることが出来る。
でも向こうはそれが出来ていない。
つまり偏った運営がなされているわけだ。
ポーラさんはそれを対話で正すと言っていたが、ぶっちゃけそれで解決するような状況じゃないよな。
それこそ監査官という第三者機関を入れてしっかりと綺麗にするべき案件だ。
だからこそアニエスさんが陛下より下命されて調査に行くことになったわけだけども。
「もちろんそれはわかっていますが、我々も食べて行かないといけなくてですね。」
「食べていくために不正を許すのか?」
「不正ではありません。」
「それ、苦しくないか?」
「苦しいのは向こうの職員です、ちょっと話を聞くだけだったのに夜中まで付き合わされたんですから。」
「つまり不満は膨れ上がり今にも爆発しそう、そういう事だな?」
「今すぐにまでは言いませんが、かなり膨らんでいると言っていいでしょう。針でつつけば大爆発間違いなしです。」
つまりその針の役目を俺達がしなければならないというわけか。
問題は爆発した後だが、それを頑張るのは俺じゃない。
港町が正しく運営されるようになることが、結果として俺の利益にもつながっている。
「クーデターとか起きないのか?」
「さすがにギルド職員とはいえ貴族に喧嘩を売れば首を切られますから。」
「これだから貴族は。」
「シロウさんも貴族では?」
「俺がそんなことすると思うのかお前は。」
「シロウ様はそんな事をしません、むしろいいように持って行って絞れるだけ搾り取るかと。」
「アニエスさん、俺をなんだと思っているんだ?」
「違うんですか?」
「正確には裏から根回しをして徹底的に利益を回収するですね。今回ですと冒険者ギルドを味方につけ、向こうが求めている素材や道具を提供。ギルド協会には監査官が一緒にいるシロウ様の動きを公認していただき、港での取引を活性化させることで結果としてに上の動きを弱体化させ公平性を保てるようにします。その過程で多くの利益が生まれる事でしょう。」
アニエスさんに次いでミラまで。
っていうか、そんな大それたことはさすがに考えてないんですけど?
「そこまでしなきゃダメなのか?」
「そこまですれば向こうも黙っていられないでしょう。何かしらの手を打ってくるはずです。」
「で、それを俺にどうしろと。」
「もちろん迎え撃ちますよね?」
「いやいや、どう考えても命を狙われるよなそれって。いくらディーネがいるとはいえ四六時中狙われるのはごめんだぞ。」
「そこまで行く前に終わると思いますよ。」
「何を根拠に。」
他人事だと思って気楽なこと言いやがって。
貴族になっても俺はただの一般人、政治関係のごたごたを正すような知識も権力も持ち合わせていない。
そういうのは然るべき組織がそれこそ公平に捌くべきだ。
港町は宜しくない勢力に牛耳られている。
それによって不均衡が生じ、今や爆発寸前。
唯一の希望はポーラさんが完全に向こう側ではないという事だけだが、それだけじゃよわいんだよなぁ。
「それに関しては私の方で動いています。ホリアが上手くやってくれればの話ですが。」
「おい、聖騎士団の副団長まで噛んでるのかよ。」
「むしろそれぐらいの人間が動かないと解決しない話でしょう。ね、大丈夫でしょ?」
「お前知ってたのか?」
「港町の仲間を助けたいのは私も同じです。仲間の為にも悪は滅びるべき、今の状況は公平ではありませんからね。」
「冒険者ギルドも同じよ、ダンジョンに潜るだけじゃなく護衛の仕事も私達の大切な仕事。それを取り上げられるのは死活問題だわ。それを解決するために手段は選んでいられない、今回の件はちょうどいいタイミングだったというわけ。」
つまり、俺を出汁にあれこれやろうというわけか。
エドワード陛下もそれをわかった上で下命を出した。
噛ませ犬ってわけかよ俺は。
「あー、やってらんねぇ。」
「まぁまぁ腐らない腐らない。」
「これで腐らないでいられるかってんだ。骨折り損のくたびれ儲けじゃねぇか。」
「え、ちゃんと儲けは出ていますよね?ポーラ様に頼まれた品を含め、かなりの量を運ぶはずでは?」
「それとこれとは話が別だ。」
「つまり報酬が欲しいと?」
「そんなのはいらない。だから俺にわかるように一から十まで説明しろ、何がどうなってどうしたいのか。まずは俺に話をするのが筋ってもんだろ。」
「でもシロウさん面倒ごと嫌いですよね。」
「大っ嫌いだよ。」
「矛盾してるなぁ。」
「うるせぇ。」
俺だってわかってるよそんな事は。
話をざっくりまとめると、不満は溜まっていたが現状では自分達の立場が危ういので何もできなかった。
だが監査官が来たことで状況は一変、第三勢力が介入することで現状が変わるかもしれないという期待が大きくなり、必然的に内部の情報が流出。
かなり細かい部分まで情報が漏れだし諸悪の根源が特定されることになった。
ただの貴族ならともかく監査官や更には聖騎士団が動くとなれば話は別だ。
皆ここぞとばかりに情報を流してくれたのだとか。
それはもう出るわ出るわ、多くの悪行が白日の下にさらされポーラさんについても色々とわかってきた。
やはりあの人は雇われ街長のような立場で、いわば操り人形。
それも弱みを握られて逃げられなくするという極悪仕様だったようだ。
ここまでピースがそろえば後はそれをはめ込んでいくだけで状況は解決するだろう。
あれ?俺要らないんじゃね?
とか思ってもそういうわけにいかないわけで。
マジで勘弁してくれよ。
「という事でシロウさん宜しくお願いします。」
「はぁ。」
「もっとやる気出してくださいよ、全部言えってシロウさんが言ったんじゃないですか。これもシロウさんの儲けの為です、お金好きですよね?」
「全部それに直結させるなよな。」
「違うんですか?」
「違わねぇ。」
話を聞きに来たはずが、話に巻き込まれた気分だ。
いや、最初から巻き込まれていたのか。
なんだか自分だけ蚊帳の外で気合を入れていたのが恥ずかしいというか悲しいというか。
まぁ、これも清々しく夏を終える為に必要な事。
やるしかなか。
「では出発は明日、荷物の搬出は私達に任せてください。」
「宜しく頼む。」
「それじゃあお先に失礼します、ガレイ行くわよ。」
「わかった。」
アインさんとガレイのもたらした情報もすごかった。
皆今の状況を快く思っていなかったのは間違いない。
あとはアニエスさんがそれを良い感じに料理するだけ。
俺は皿の端を彩るパセリになろう。
それが一番安心だ。
こうして、この夏最後のメインイベントオークションを前に面倒ごとを解決する運びとなった。
はぁ、頑張ろう。
メインイベントはオークション、と言いたい所だが目下進行中の懸案事項が一つ。
そう、港町だ。
今の所は平穏なようだが、どうもきな臭い感じは消えていない。
あそこが使えなくなると金儲けの手段がいくつか無くなってしまうからなぁ、それだけは何とも避けたいところ。
とはいえ、その為に俺が出来ることはあまりない。
一応国王陛下から下命されている仕事とはいえ、向こうも本気でどうにかしろとは思っていないだろう。
メインは監査官であるアニエスさんだ。
俺は貴族という身分とディーネというお守りを駆使して自分の儲けを維持したいだけ。
街が揉めているとかはぶっちゃけどうでもいいだよなぁ。
揉めていたとしても俺はゴードンさんやゾイルと取引をするし、必要であればポーラさんとだって商売をする。
彼らがそれを咎めることはないだろう。
これも仕事だからな、俺が金儲けを生きがいにしていることもわかっているだろうし。
とはいえ、それを快く思っていない奴もいるわけで。
それが今回の一番のネック、毒、めんどくさい原因というわけだ。
「さて、気持ちよくオークションを迎える為にも面倒ごとはさっさと片づけてしまいたいわけだ。それに国王陛下からの下命に答える為にも結果を出す必要がある。その為の情報を提供してもらうべく集まってもらったわけだけども・・・。何だよその顔は。」
「いや、珍しくシロウさんがやる気だなと思って。」
「全くやる気はない。ぶっちゃけどうでもいいしめんどくさいが、俺の金儲けの為には致し方ない。」
「つまりすべては自分の為と。」
「その通り、何か問題が?」
「いえ、何も。」
「だよな。」
ギルド協会の一室を借りてそこにいつもの面々が集合していた。
こっちは俺とミラ、それとアニエスさん。
ギルド協会からは羊男、冒険者ギルドからはニア、それとガレイさんとアインにも来てもらった。
立ち位置としてはこっちだが、今回は向こうサイドでお願いしている。
貴重な情報源だからな。
「あくまでも私達は情報提供者で今回の件には関係しない、そのスタンスでいいのよね?」
「問題ありません。あくまでも私達の仕事ですので、情報源を明かすことはありません。監査官特権というものです。」
「それを聞いて安心した。ほら、一応こういう立場だし他の街との関係もあるからさ。でも、実際大変みたいよ向こうは。」
「というと?」
「うちはまぁ特殊だけど、冒険者の扱いが随分とぞんざいなんだって。仕事も適当だし、冒険者を便利屋としか思っていない感じがするって向こうの職員がぼやいていたわ。必要な素材なんかをお願いしても、自分達で何とか出来るだろって笑われるとか。それに、前以上に経費について厳しくなって予算が通りにくくなったんだって。その結果が冒険者の待遇や扱いの悪化、そこから来る冒険者離れ。冒険者がいなくなると護衛が減るから、さらに陸路が衰退。安全な海路に依頼が殺到して、結果今まで以上に下との関係が悪化するわけ。」
ニアには冒険者ギルドの知り合いを通じて向こうの状況を調べてもらったわけだが、これは思った以上に大変な感じだ。
港の方が随分と虐げられているのは知っていたが、それ以上に冒険者の扱いがよろしくない。
そりゃ冒険者も港の方に手を貸すよなぁ。
そのせいで、この前のように武器が不正に横流しされているとか噂が出てしまうんだろう。
全部身から出た錆というやつじゃないか。
「実際に船を使った依頼も随分と増えています。いつもなら彼女の所に来る依頼の三割はこちらに流れていると考えられます。」
「待遇が悪く冒険者が集まらない、それでも改善するつもりは無く現状維持かむしろ悪化。早く何とかしてあげないと街自体が衰退するわよ、マジで。」
「とはいえそれを俺に言われてもなぁ。むしろそれをやらなきゃいけないのは向こうのギルド協会だろ、そこんとこどうなんだよ。」
「どうなんだよと言われましても。それはもう大変なことになってますって。」
「そうなのか?」
「我々の仕事は公平を保つこと、もちろん街の運営にも関わりますがそれは公平でなければなりません。それが出来ていない上に、出来ないことを強制されているんですからそりゃもう不満の嵐です。」
「・・・それを止めるのがギルド協会の仕事じゃないのか?」
いくら街長が偉いとはいえ、中立の立場にいるのがギルド協会のはず。
街の運営には多くの人間、そして組織がかかわっている。
ギルドだってたくさんあるし、問題も山積みだ。
それはどこも同じだろう。
でもそれを中立な立場で公平に上手くさばくのがギルド協会の仕事。
まぁ、羊男が無理難題言ってくるのは公平なのかと聞かれれば何とも言い難いが、その分ちゃんと報酬が出ているので公平と考えることが出来る。
でも向こうはそれが出来ていない。
つまり偏った運営がなされているわけだ。
ポーラさんはそれを対話で正すと言っていたが、ぶっちゃけそれで解決するような状況じゃないよな。
それこそ監査官という第三者機関を入れてしっかりと綺麗にするべき案件だ。
だからこそアニエスさんが陛下より下命されて調査に行くことになったわけだけども。
「もちろんそれはわかっていますが、我々も食べて行かないといけなくてですね。」
「食べていくために不正を許すのか?」
「不正ではありません。」
「それ、苦しくないか?」
「苦しいのは向こうの職員です、ちょっと話を聞くだけだったのに夜中まで付き合わされたんですから。」
「つまり不満は膨れ上がり今にも爆発しそう、そういう事だな?」
「今すぐにまでは言いませんが、かなり膨らんでいると言っていいでしょう。針でつつけば大爆発間違いなしです。」
つまりその針の役目を俺達がしなければならないというわけか。
問題は爆発した後だが、それを頑張るのは俺じゃない。
港町が正しく運営されるようになることが、結果として俺の利益にもつながっている。
「クーデターとか起きないのか?」
「さすがにギルド職員とはいえ貴族に喧嘩を売れば首を切られますから。」
「これだから貴族は。」
「シロウさんも貴族では?」
「俺がそんなことすると思うのかお前は。」
「シロウ様はそんな事をしません、むしろいいように持って行って絞れるだけ搾り取るかと。」
「アニエスさん、俺をなんだと思っているんだ?」
「違うんですか?」
「正確には裏から根回しをして徹底的に利益を回収するですね。今回ですと冒険者ギルドを味方につけ、向こうが求めている素材や道具を提供。ギルド協会には監査官が一緒にいるシロウ様の動きを公認していただき、港での取引を活性化させることで結果としてに上の動きを弱体化させ公平性を保てるようにします。その過程で多くの利益が生まれる事でしょう。」
アニエスさんに次いでミラまで。
っていうか、そんな大それたことはさすがに考えてないんですけど?
「そこまでしなきゃダメなのか?」
「そこまですれば向こうも黙っていられないでしょう。何かしらの手を打ってくるはずです。」
「で、それを俺にどうしろと。」
「もちろん迎え撃ちますよね?」
「いやいや、どう考えても命を狙われるよなそれって。いくらディーネがいるとはいえ四六時中狙われるのはごめんだぞ。」
「そこまで行く前に終わると思いますよ。」
「何を根拠に。」
他人事だと思って気楽なこと言いやがって。
貴族になっても俺はただの一般人、政治関係のごたごたを正すような知識も権力も持ち合わせていない。
そういうのは然るべき組織がそれこそ公平に捌くべきだ。
港町は宜しくない勢力に牛耳られている。
それによって不均衡が生じ、今や爆発寸前。
唯一の希望はポーラさんが完全に向こう側ではないという事だけだが、それだけじゃよわいんだよなぁ。
「それに関しては私の方で動いています。ホリアが上手くやってくれればの話ですが。」
「おい、聖騎士団の副団長まで噛んでるのかよ。」
「むしろそれぐらいの人間が動かないと解決しない話でしょう。ね、大丈夫でしょ?」
「お前知ってたのか?」
「港町の仲間を助けたいのは私も同じです。仲間の為にも悪は滅びるべき、今の状況は公平ではありませんからね。」
「冒険者ギルドも同じよ、ダンジョンに潜るだけじゃなく護衛の仕事も私達の大切な仕事。それを取り上げられるのは死活問題だわ。それを解決するために手段は選んでいられない、今回の件はちょうどいいタイミングだったというわけ。」
つまり、俺を出汁にあれこれやろうというわけか。
エドワード陛下もそれをわかった上で下命を出した。
噛ませ犬ってわけかよ俺は。
「あー、やってらんねぇ。」
「まぁまぁ腐らない腐らない。」
「これで腐らないでいられるかってんだ。骨折り損のくたびれ儲けじゃねぇか。」
「え、ちゃんと儲けは出ていますよね?ポーラ様に頼まれた品を含め、かなりの量を運ぶはずでは?」
「それとこれとは話が別だ。」
「つまり報酬が欲しいと?」
「そんなのはいらない。だから俺にわかるように一から十まで説明しろ、何がどうなってどうしたいのか。まずは俺に話をするのが筋ってもんだろ。」
「でもシロウさん面倒ごと嫌いですよね。」
「大っ嫌いだよ。」
「矛盾してるなぁ。」
「うるせぇ。」
俺だってわかってるよそんな事は。
話をざっくりまとめると、不満は溜まっていたが現状では自分達の立場が危ういので何もできなかった。
だが監査官が来たことで状況は一変、第三勢力が介入することで現状が変わるかもしれないという期待が大きくなり、必然的に内部の情報が流出。
かなり細かい部分まで情報が漏れだし諸悪の根源が特定されることになった。
ただの貴族ならともかく監査官や更には聖騎士団が動くとなれば話は別だ。
皆ここぞとばかりに情報を流してくれたのだとか。
それはもう出るわ出るわ、多くの悪行が白日の下にさらされポーラさんについても色々とわかってきた。
やはりあの人は雇われ街長のような立場で、いわば操り人形。
それも弱みを握られて逃げられなくするという極悪仕様だったようだ。
ここまでピースがそろえば後はそれをはめ込んでいくだけで状況は解決するだろう。
あれ?俺要らないんじゃね?
とか思ってもそういうわけにいかないわけで。
マジで勘弁してくれよ。
「という事でシロウさん宜しくお願いします。」
「はぁ。」
「もっとやる気出してくださいよ、全部言えってシロウさんが言ったんじゃないですか。これもシロウさんの儲けの為です、お金好きですよね?」
「全部それに直結させるなよな。」
「違うんですか?」
「違わねぇ。」
話を聞きに来たはずが、話に巻き込まれた気分だ。
いや、最初から巻き込まれていたのか。
なんだか自分だけ蚊帳の外で気合を入れていたのが恥ずかしいというか悲しいというか。
まぁ、これも清々しく夏を終える為に必要な事。
やるしかなか。
「では出発は明日、荷物の搬出は私達に任せてください。」
「宜しく頼む。」
「それじゃあお先に失礼します、ガレイ行くわよ。」
「わかった。」
アインさんとガレイのもたらした情報もすごかった。
皆今の状況を快く思っていなかったのは間違いない。
あとはアニエスさんがそれを良い感じに料理するだけ。
俺は皿の端を彩るパセリになろう。
それが一番安心だ。
こうして、この夏最後のメインイベントオークションを前に面倒ごとを解決する運びとなった。
はぁ、頑張ろう。
16
お気に入りに追加
361
あなたにおすすめの小説
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
いきなり異世界って理不尽だ!
みーか
ファンタジー
三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!
「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。
桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。
「不細工なお前とは婚約破棄したい」
この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。
※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。
※1回の投稿文字数は少な目です。
※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。
表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。
❇❇❇❇❇❇❇❇❇
2024年10月追記
お読みいただき、ありがとうございます。
こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。
1ページの文字数は少な目です。
約4500文字程度の番外編です。
バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`)
ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑)
※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーヤのお気楽異世界転移
暇野無学
ファンタジー
死因は神様の当て逃げです! 地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる