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671.転売屋はドレスを仕立てる

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「全部で銀貨12枚、それと上乗せで銀貨5枚の全部で銀貨17枚だ。」

「すげぇ、そんなに稼いだの久しぶりだ!」

「稼いだからって全部使うなよ、少しは貯金しろ貯金。」

「えぇ、そりゃ無理ってモンですよ。」

「いや、無理じゃないだろ。」

稼いだそばから飲み代に使うから装備も更新されなくて深くもぐれないんだよ。

まったく、困った奴らだ。

とはいえ実力はあるので、本当に装備を揃えたらもっと戦えるはずなんだがなぁ。

「終わった?」

「あぁ、今最後の客が帰ったところだ。」

「あ、フラワーリーフ。綺麗ね。」

「花なのか葉っぱなのかどっちなんだ?」

「どっちもじゃないかしら、これで紙を作ると綺麗なのよね。」

『フラワーリーフ。花びらに擬態した魔物の葉っぱ。鮮やかな見た目で獲物を誘い捕食する危険な魔物。花びらは薬になり、葉は紙や布に加工されることが多い。最近の平均取引価格は銀貨3枚。最安値銀貨1枚最高値銀貨5枚。最終取引日は本日と記録されています。』

花びらに擬態する魔物か。

これもこの前のローラー作戦で見つかった奴だな。

ニア曰く中々に大変だったそうだが、無事に素材は揃ったしたくさんの素材が手に入った。

その中にはコレのように中々お目にかかれない素材も多い。

割増料金を払ってでも手に入れる価値のある品ばかりだ。

「紙ねぇ。ソレよりも布の方がいいんじゃないか?華があるぞ。」

「花だけに?」

「冗談はいいっての。それで、ドレスは作れそうか?」

「とりあえず採寸は終わったわ。胸が大きくなっちゃって結構大変そう。」

「ふーん。」

「興味なさそうね。」

「俺は胸よりも尻派だ。」

「ふふ、知ってる。」

尻を揉んでやるとまんざらでもない顔をするエリザ。

今作っているのは結婚式用のウェディングドレスだ。

安定期に入ったのでやっと動くことが出来た。

これから毎日毎日からだが変化していくだけにどのタイミングで作るのか悩んだのだが、今しかないということで作ることを決めたようだ。

俺は産後でもいいといったのだが、エリザは今がいいらしい。

「デザインはどんな感じだ?」

「んー、シンプルにするつもり。あまり派手なのにしても似合わないもの。」

「そうでもないと思うぞ。」

「そうかしら。」

「あぁ、色々考えてみたらどうだ?」

「そうする。今日はコレで終わりなんでしょ?ちょっと付き合ってよ。」

「何するんだ?」

「か・い・も・の。」

買い物なら別に俺はいらないんじゃないだろうか。

それを言った所で行くという結果は変わらないのでついていくとしよう。

当ても無くフラフラと二人で露天を見て回る。

お、見たことのない布があるぞ。

純白なのに光沢が入っているように見える。

一点物だろうか中々に綺麗だ。

「アレはどう思う?」

「え?私に?」

「お前以外に誰がいる。」

「ちょっと可愛すぎない?ほら、こんなに筋肉質だし体もごついし。あぁいうのはマリーさんとかキキが身につけるものよ。」

「それはお前の主観だな、だが俺はそうは思わん。」

「えぇぇぇ。」

信じられないという目で俺を見てくる。

いや、何でそんな顔するかな。

別にエリザが可愛らしい服を着ていても問題ないと思うんだが。

似合う似合わないは本人の基準があるにせよ、客観的基準もまた存在する。

似合うと思う、コレが俺の主観だ。

「すまない、コレを見せてくれ。」

「いらっしゃいませ。コレは母が編んだ婚礼衣装用の布です、綺麗でしょう?」

「あぁ、この光沢は初めて見る。何か編みこんでいるのか?」

「聖糸にメレージュエルをはさみながら編んでいるんです。中々難しいんですよ。」

「そう思う。いくらだ?」

「一反銀貨20枚です、ちょっと高いですよね。」

「いいや、聖糸の値段を考えれば妥当な所だろう。細工次第ではもっと高くてもいいと思うぞ。」

コレにはそういった細工はしてないのでこれ以上高く買うのは難しい。

だが物は間違いなくいいものだ。

だから買う。

「母にはそう伝えます。」

「他にも何かあるか見せてくれ。」

「どうぞ見ていってください!」

ひとまず代金を支払い、小物などを見せて貰う。

どれもしっかりと縫製されており、実用だけでなく見た目も綺麗な感じだ。

ハンカチがたくさんあったので全て買占め、店を後にした。

「いっぱい買ったわね。」

「ほら、これはエリザの分だ。」

「え、私の?」

「ハンカチもってきてないだろ。」

「えへへ、忘れてた。」

「まぁそうだと思ったよ。」

こいつに女らしさとか上品さを求めているわけではない。

エリザを気に入ったのはあの夜に見たあの眼。

そしてありのままの俺を受け入れてくれる、器の大きさだ。

こんな器のちっちゃい俺についてきてくれるんだからなぁ、こいつは。

ほんとたいした忠犬だよ。

まぁ、普段は駄犬だけど。

「俺は似合うと思うぞ、それこそ今日買い取ったような花柄も。」

「フラワーリーフ?」

「あぁ、確かアレで布が作れたよな?ものすごく手間と金がかかるらしいが、それは素晴らしい布に仕上がるそうだ。」

「そうらしいわね。」

「あれでドレスを作るのはどうだ?間違いなく似合うぞ。」

「本気で言ってるの?」

「俺が冗談で言うと思ってるのか?」

純白のドレスも素敵だが、別に絶対に白じゃないといけない決まりは無い。

もちろん本人の意思を尊重するが、俺はありだと思う。

「シロウが似合うと思うなら。」

「似合う。」

「じゃあそうする。でも高いわよ?」

「金ならある、そのために稼いでるんだ気にするな。」

「えへへ、ありがとう。」

「とはいえ、生地の手配はしないといけないし、デザインも一からし直さないといけないだろう。まだお腹はそんなに膨らんでいないとはいえ、あまりタイトなのは良くないだろ?」

「でもそういうの好きよね?」

「まぁな。」

ボディーラインが出るのは結構好きだ。

見た目にも楽しめるし、何よりエリザの肉体美がよく出るだろう。

お姫様のようなラインよりも絶対に似合う。

俺はそう思う。

「エレナさんに相談してみるわ。」

「なら俺は生地を探そう、一から作る時間はなさそうだから生地になっているほうが都合がいい。」

「頑張ってね。」

「任せろ。」

何のために手広く仕事をしていると思っているんだ。

全方位に情報提供を呼びかけてなんとしてでも手に入れてみせる。

せっかくのドレスだ、とことんやってやろうじゃないか。

もちろん他の女達も同様だ。

一番素敵なドレスを毎回仕立てて見せるし、その金を出せるぐらいに稼いでみせる。

とりあえずエリザの順番が来ただけだ。

「それじゃあ一緒にコサージュも作らなきゃ。」

「コサージュ?」

「そう、タイトなのにするならどうしてもおなかに目が行くでしょ?それならコサージュをつければ隠せるじゃない?フラワーリーフの生地ならそれに似たやつをつけると映えるとおもうの。そこれこそ、さっき買った生地とか素敵だと思うわ。」

「まぁ、確かに?」

「赤はダメだけど緑とか黄色とかはありよね。そうと決まれば色々と材料を集めなくっちゃ。お金の心配はしなくていいみたいだし。」

「おい。」

「なに?」

「いや、なんでもない。」

おかしいな、もしかすると俺はとんでもないことをしてしまったんじゃないだろうか。

そんな疑念が頭をよぎる。

「そうと決まれば他にも色々見て回りましょ。」

「おい、引っ張るなよ。」

「シロウが言ったんだからね、覚悟しなさいよ。」

その後、足が棒になるまで市場を歩き回り生地やら飾りやらを大量に買い付けることになってしまった。

まぁ、素材関係は余れば売ればいいし、コサージュの出来次第ではソレを売ることだって出来るだろう。

何だかんだ言ってお菓子作りとか裁縫とか好きなんだよなこいつ。

ドレスだって本当は自分で作りたいのかもしれない。

もちろんそうするなら止めはしない。

エリザのドレスだ、さっきも言ったようにそのためなら金は惜しまない。

色々と買いあさり、満足そうなエリザの横顔を見ながらそんな事を考える。

その後、屋敷に戻ったエリザは女達を集めてそれはもう大騒ぎをしながら最高のドレスとそれに似合う最高のコサージュについて語り合うのだった。
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