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658.転売屋は酒を造る
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「お、シロウ良い所に。」
「マスター!こんな所で会うなんて珍しいな、仕入れか?」
「そんなところだ。今時間あるよな、面貸せ。」
まるでカツアゲする不良のように顎で外へと誘導される。
いや、俺はギルドに用があるんで別に暇なわけでは。
なんて言い訳を許してもらえるわけもなく、回れ右して冒険者ギルドの外に出る。
そしてそのままギルドの裏へと移動させられた。
え、マジでかつあげ?
生憎と今日は持ち合わせが少なくて。
飛んだらいいですかね。
「あ、ゲイルさん!それにシロウさんまで。」
「ちょうど良い所にいたから引っ張ってきたぞ。」
「話が早くて助かります。これが新たに見つかった蜜玉で、全部で8個あります。本当は10個あるんですけど誘導用に使わせてもらっているので新しいのが見つかりましたら容器に入れてお返ししますね。」
ギルドの裏手に並べられた高さ50cm程の壺。
小脇に抱えられそうな大きさのソレは蓋をした上に何重にも封をされており、ぶっちゃけ禍々しくも見えてしまう。
しかしながらその中身は現在依頼中の大蟻殲滅作戦の副産物である蜜玉だった。
放置するとその匂いに引き寄せられて遥か彼方からでも大蟻が来てしまうので、こうやって酒に入れて保管されている。
しかし10個か、随分と出てきたもんだな。
「今までのに追加してこれで20個目、そろそろ引き取ってもらえると助かるんだが?」
「生憎とまだ引き取り手が見つかってないんでね、もう少し時間をもらえるか?別に邪魔じゃないだろ?」
「邪魔だから引き取れって言ってるんだよ。秋に向けてワインを仕入れるから場所が無いんだ、お前んとこの地下倉庫にいくらでも入るだろ?」
「のんべぇがいるからなぁ。」
「そいつは今禁酒中だ。今日中に全部持っていけ、わかったな。」
「その為に俺を呼んだのかよ。」
「ついでに中の酒代も請求させてもらう。これが請求書だ。」
「ういっす。」
そういう理由であれば仕方あるまい。
請求書の金額は全部で銀貨50枚。
マスターにしては少な目の請求だ。
「という事でギルドも蜜玉の代金を請求させてもらいますね、10個分で金貨5枚です。」
「おい、ちょっと高くないか?前は4枚だっただろ。」
「え~、シロウさんがあんな値段で売るって知ったら値上げしても罰当たらないかなって。冒険者への依頼料に充てるんで、宜しくお願いします。」
「足元みやがって。」
「それぐらい払ってやれよ、安いもんだろ?」
「いや、金貨1枚は安くないから。」
一般家庭が3か月働かずに悠々食っていける金額を安いというとは何事だ。
確かに町は金余りの状況だが、それは一時的な物。
しっかり引き締めておかないといつ何時金が無くなるとも限らない。
銅貨1枚を笑うやつは銅貨1枚に泣くんだからな。
「ちなみに足の分もあるんですけど、そっちはどうします?」
「面倒だから纏めて明細を作って屋敷に送ってくれ、セラフィムさんが確認するから。」
「あの人ちょっと苦手なのよね。」
「そうなのか?」
「だって、冗談言っても真顔なんですよ」
「面白くなかったんだろ。」
「渾身のネタだったのに。」
いや、それは知らん。
とりあえずマスターの話は終わったようなので本来の用事を済ませる為にギルドへと戻る。
まぁ、半分は今ので片付いたようなもんだけどな。
「そんじゃま残りの仕事を片付けるか。」
「こちらが冒険者の感想で、こちらが使用したサプリメントになります。どれも効果は少なめですが持続力はいいみたいですね。」
「即効性が欲しいならポーションがあるからな、こっちはコレでいいんだろう。被験者にお礼を言っておいてくれ。」
「かしこまりました。それと、別件で頼まれていましたアラクネの糸ですが、巣が見つかりましたので規定量以上に回収できてしまいました。どうします?」
「ちなみに値下げは?」
「一つにつき銅貨5枚でしたらとニアさんより聞いてます。」
さっきは銀貨10枚も値上げしておいてこっちは銅貨5枚程度か。
とはいえアラクネの糸は色々と使い道がある、今後のために備蓄しておいても問題ないだろう。
学校建設が始まれば需要が増え値段は高騰するはずだ。
それで十分元が取れる。
「わかったそれでいい。」
「では先程の請求書と一緒にお送りしておきますね。」
「よろしく頼む。そんじゃま引き続き大蟻のほうはよろしく頼むな。」
「あ、シロウ様待ってください!」
さぁ帰ろうかというところで受付嬢が慌てて俺を引き止めた。
デートのお誘いという顔ではないな。
「なんだ?」
「お客様がギルド協会に来ているそうですのでそちらへ向かってください。」
「俺に客?」
「隣町のナミル様だそうです。」
げ、女豹かよ。
わざわざこっちに来るなんてどう考えてもいい話じゃないよな。
いや、ワンチャンサプリメント工場の話という可能性もあるか。
新作のサプリメントも効果は十分、素材も安価で加工もしやすいとなれば量産しないては無いよな。
連絡を受けておいて無視するわけにもいかないし、なにより屋敷に来られたら面倒だ。
「わかったすぐ行く。」
「よろしくお願いします。」
本当は露天を見て回るつもりだったのだが、予定を変更してギルド協会へと向かう。
建物に入ると待ってましたと言わんばかりの勢いで羊男が向かってきた。
そのまま引きずられるようにして応接室へと移動する。
「待たせたか?」
「私も今来たところですの。」
「そりゃなによりだ。で?話って?」
「まずは座ったらどうです?」
「それもそうだな。」
わざわざここまで来ておいて立ち話ってのもアレだ。
向かい合うようにして応接用のソファーに腰掛ける。
羊男はビビッて中に入ってこないらしい。
「わざわざこんな場所まで来るってことは、旨い話でももって来てくれたんだよな?」
「それは貴方次第かしら、名誉男爵様。」
「聞いたのか?」
「いやでも耳に入ってきますわ、数十年ぶりの名誉職ですもの。」
「別に貴族になったからって何も変わらないけどなぁ。むしろ金は出て行く一方だ。」
「儲けているんだからよろしいんじゃなくて?」
「まったくよろしくない。特にそっちにネタを振って何かしてやろうと考えている奴の前ではな。」
俺を持ち上げても何もいいことは無いぞと先に釘を刺しておく。
もちろんそんなセコイ手段を使う女ではないのだが、警戒するにこしたことはない。
「警戒されていますわね。」
「当然だろ。で、話ってのはなんだ?サプリメント工場なら予定通り稼動してるだろ?」
「まずはそれについて感謝を。おかげであの人に怒られなくて済みましたわ。」
「そいつは何よりだ。新作も効果は問題ないようだからそっちも追加で製造して貰うつもりだ。まだラインに空きはあるよな?」
「もちろん。」
「準備が出来次第材料を送らせて貰う、納期厳守でよろしくな。」
「それは貴方次第かしら。そんな怖い顔しないで下さる?冗談よ。」
「で、さっさと本題を言えよ。」
女豹の冗談に付き合って相手のペースに飲まれるのは避けたい。
サプリメントは問題なし、なら何をしに来た?
「大蟻の蜜玉があるそうですわね。」
「どこでそれを?」
「冒険者が随分と楽しそうに話しているのを聞きましたの。魔物を狩るのに使うだなんて、面白いことをしておられるのね。」
「狙いは蜜玉酒か。」
「その効果は美容に若返り、滅多に手に入らないはずの代物がここにはごろごろしていると聞いてこれを逃す手はありませんわ。」
冒険者の口に戸は立てられないか。
別に隠していたわけではないのだが、狙いが王都だっただけに出荷前のこの段階で女豹にかぎつけられたのは想定外だった。
「全部は出さないぞ、カーラにも提供しなきゃならないんだからな。」
「もちろん分かってますわ。でもいくつかは出せるのよね?」
「出せて5壷、一つ金貨2枚で譲ってやる。」
「高すぎません?」
「王都に出せば2.5枚で売れるんだぞ?」
「貴族なら金を出すというやり方には感心しませんわね。」
「貴族だからじゃない、あるところから引っ張っているだけだ。別にぼったくっているわけでもないしな、過去の取引履歴を調べると一壺最大で金貨3枚、三割引きは良心的だと思うぞ。」
もちろん嘘ではない。
今でこそ比較的簡単に手に入っている蜜玉だが、女豹が言っていたように普段はあまり出回らない品だ。
理由は言うまでもない、めんどくさいから。
わざわざ苦労をして大蟻を駆除しても絶対に持っている保証はなく、さらには一匹から採れる素材の金額はたかが知れてる。
だから好んで狩る冒険者がいないので結果として出回る量が少ないというわけだ。
だからこの値段はぼったくりではない、むしろ良心的と言っていい。
これで高いというのならばこの値段で買ってくれる人に持って行くだけだしな。
「これもあの人の為に綺麗でいる為だもの、仕方ないわね。」
「今日持って帰るか?」
「えぇ、その為に来たんだものそうさせてもらうわ。」
「そりゃご苦労様。で?」
「何かしら。」
「こっちは虎の子の蜜玉酒を定価で譲るんだ、なにか美味いネタを持ってきてくれたんだよな?まさかモノだけ持っていくなんてセコいことはしないよな?」
損をしたわけではないのだが、こっちはこっちで譲歩している。
向こうもそれなりの動きをしてもらわないと割に合わないんだがなぁ。
「強請る気?」
「そんな事はしないさ、だがギルド協会員なら公平を重んじるものだよなと思っただけだ。恐らく扉の外で聞き耳立てているシープさんもそう言うだろうさ。」
「高い買い物になりそうね。」
「いいや、格安だよ。そっちは不足した素材を仕入れることができる上に欲しいものまで手に入れるんだ。知り合いのよしみで多少勉強するつもりだぞ。」
「本当かしら。」
「それは話を聞いてからだな。さぁ、美味い儲け話ってのを聞かせてもらおうか。」
誰も損をしない素敵な話。
なるほど、それは確かに美味そうな話だ。
早速取り掛かるとしよう。
蜜玉酒を大事に抱えて馬車に乗り込んだ女豹を見送りながら、俺は次の動きをシミュレーションするのだった。
「マスター!こんな所で会うなんて珍しいな、仕入れか?」
「そんなところだ。今時間あるよな、面貸せ。」
まるでカツアゲする不良のように顎で外へと誘導される。
いや、俺はギルドに用があるんで別に暇なわけでは。
なんて言い訳を許してもらえるわけもなく、回れ右して冒険者ギルドの外に出る。
そしてそのままギルドの裏へと移動させられた。
え、マジでかつあげ?
生憎と今日は持ち合わせが少なくて。
飛んだらいいですかね。
「あ、ゲイルさん!それにシロウさんまで。」
「ちょうど良い所にいたから引っ張ってきたぞ。」
「話が早くて助かります。これが新たに見つかった蜜玉で、全部で8個あります。本当は10個あるんですけど誘導用に使わせてもらっているので新しいのが見つかりましたら容器に入れてお返ししますね。」
ギルドの裏手に並べられた高さ50cm程の壺。
小脇に抱えられそうな大きさのソレは蓋をした上に何重にも封をされており、ぶっちゃけ禍々しくも見えてしまう。
しかしながらその中身は現在依頼中の大蟻殲滅作戦の副産物である蜜玉だった。
放置するとその匂いに引き寄せられて遥か彼方からでも大蟻が来てしまうので、こうやって酒に入れて保管されている。
しかし10個か、随分と出てきたもんだな。
「今までのに追加してこれで20個目、そろそろ引き取ってもらえると助かるんだが?」
「生憎とまだ引き取り手が見つかってないんでね、もう少し時間をもらえるか?別に邪魔じゃないだろ?」
「邪魔だから引き取れって言ってるんだよ。秋に向けてワインを仕入れるから場所が無いんだ、お前んとこの地下倉庫にいくらでも入るだろ?」
「のんべぇがいるからなぁ。」
「そいつは今禁酒中だ。今日中に全部持っていけ、わかったな。」
「その為に俺を呼んだのかよ。」
「ついでに中の酒代も請求させてもらう。これが請求書だ。」
「ういっす。」
そういう理由であれば仕方あるまい。
請求書の金額は全部で銀貨50枚。
マスターにしては少な目の請求だ。
「という事でギルドも蜜玉の代金を請求させてもらいますね、10個分で金貨5枚です。」
「おい、ちょっと高くないか?前は4枚だっただろ。」
「え~、シロウさんがあんな値段で売るって知ったら値上げしても罰当たらないかなって。冒険者への依頼料に充てるんで、宜しくお願いします。」
「足元みやがって。」
「それぐらい払ってやれよ、安いもんだろ?」
「いや、金貨1枚は安くないから。」
一般家庭が3か月働かずに悠々食っていける金額を安いというとは何事だ。
確かに町は金余りの状況だが、それは一時的な物。
しっかり引き締めておかないといつ何時金が無くなるとも限らない。
銅貨1枚を笑うやつは銅貨1枚に泣くんだからな。
「ちなみに足の分もあるんですけど、そっちはどうします?」
「面倒だから纏めて明細を作って屋敷に送ってくれ、セラフィムさんが確認するから。」
「あの人ちょっと苦手なのよね。」
「そうなのか?」
「だって、冗談言っても真顔なんですよ」
「面白くなかったんだろ。」
「渾身のネタだったのに。」
いや、それは知らん。
とりあえずマスターの話は終わったようなので本来の用事を済ませる為にギルドへと戻る。
まぁ、半分は今ので片付いたようなもんだけどな。
「そんじゃま残りの仕事を片付けるか。」
「こちらが冒険者の感想で、こちらが使用したサプリメントになります。どれも効果は少なめですが持続力はいいみたいですね。」
「即効性が欲しいならポーションがあるからな、こっちはコレでいいんだろう。被験者にお礼を言っておいてくれ。」
「かしこまりました。それと、別件で頼まれていましたアラクネの糸ですが、巣が見つかりましたので規定量以上に回収できてしまいました。どうします?」
「ちなみに値下げは?」
「一つにつき銅貨5枚でしたらとニアさんより聞いてます。」
さっきは銀貨10枚も値上げしておいてこっちは銅貨5枚程度か。
とはいえアラクネの糸は色々と使い道がある、今後のために備蓄しておいても問題ないだろう。
学校建設が始まれば需要が増え値段は高騰するはずだ。
それで十分元が取れる。
「わかったそれでいい。」
「では先程の請求書と一緒にお送りしておきますね。」
「よろしく頼む。そんじゃま引き続き大蟻のほうはよろしく頼むな。」
「あ、シロウ様待ってください!」
さぁ帰ろうかというところで受付嬢が慌てて俺を引き止めた。
デートのお誘いという顔ではないな。
「なんだ?」
「お客様がギルド協会に来ているそうですのでそちらへ向かってください。」
「俺に客?」
「隣町のナミル様だそうです。」
げ、女豹かよ。
わざわざこっちに来るなんてどう考えてもいい話じゃないよな。
いや、ワンチャンサプリメント工場の話という可能性もあるか。
新作のサプリメントも効果は十分、素材も安価で加工もしやすいとなれば量産しないては無いよな。
連絡を受けておいて無視するわけにもいかないし、なにより屋敷に来られたら面倒だ。
「わかったすぐ行く。」
「よろしくお願いします。」
本当は露天を見て回るつもりだったのだが、予定を変更してギルド協会へと向かう。
建物に入ると待ってましたと言わんばかりの勢いで羊男が向かってきた。
そのまま引きずられるようにして応接室へと移動する。
「待たせたか?」
「私も今来たところですの。」
「そりゃなによりだ。で?話って?」
「まずは座ったらどうです?」
「それもそうだな。」
わざわざここまで来ておいて立ち話ってのもアレだ。
向かい合うようにして応接用のソファーに腰掛ける。
羊男はビビッて中に入ってこないらしい。
「わざわざこんな場所まで来るってことは、旨い話でももって来てくれたんだよな?」
「それは貴方次第かしら、名誉男爵様。」
「聞いたのか?」
「いやでも耳に入ってきますわ、数十年ぶりの名誉職ですもの。」
「別に貴族になったからって何も変わらないけどなぁ。むしろ金は出て行く一方だ。」
「儲けているんだからよろしいんじゃなくて?」
「まったくよろしくない。特にそっちにネタを振って何かしてやろうと考えている奴の前ではな。」
俺を持ち上げても何もいいことは無いぞと先に釘を刺しておく。
もちろんそんなセコイ手段を使う女ではないのだが、警戒するにこしたことはない。
「警戒されていますわね。」
「当然だろ。で、話ってのはなんだ?サプリメント工場なら予定通り稼動してるだろ?」
「まずはそれについて感謝を。おかげであの人に怒られなくて済みましたわ。」
「そいつは何よりだ。新作も効果は問題ないようだからそっちも追加で製造して貰うつもりだ。まだラインに空きはあるよな?」
「もちろん。」
「準備が出来次第材料を送らせて貰う、納期厳守でよろしくな。」
「それは貴方次第かしら。そんな怖い顔しないで下さる?冗談よ。」
「で、さっさと本題を言えよ。」
女豹の冗談に付き合って相手のペースに飲まれるのは避けたい。
サプリメントは問題なし、なら何をしに来た?
「大蟻の蜜玉があるそうですわね。」
「どこでそれを?」
「冒険者が随分と楽しそうに話しているのを聞きましたの。魔物を狩るのに使うだなんて、面白いことをしておられるのね。」
「狙いは蜜玉酒か。」
「その効果は美容に若返り、滅多に手に入らないはずの代物がここにはごろごろしていると聞いてこれを逃す手はありませんわ。」
冒険者の口に戸は立てられないか。
別に隠していたわけではないのだが、狙いが王都だっただけに出荷前のこの段階で女豹にかぎつけられたのは想定外だった。
「全部は出さないぞ、カーラにも提供しなきゃならないんだからな。」
「もちろん分かってますわ。でもいくつかは出せるのよね?」
「出せて5壷、一つ金貨2枚で譲ってやる。」
「高すぎません?」
「王都に出せば2.5枚で売れるんだぞ?」
「貴族なら金を出すというやり方には感心しませんわね。」
「貴族だからじゃない、あるところから引っ張っているだけだ。別にぼったくっているわけでもないしな、過去の取引履歴を調べると一壺最大で金貨3枚、三割引きは良心的だと思うぞ。」
もちろん嘘ではない。
今でこそ比較的簡単に手に入っている蜜玉だが、女豹が言っていたように普段はあまり出回らない品だ。
理由は言うまでもない、めんどくさいから。
わざわざ苦労をして大蟻を駆除しても絶対に持っている保証はなく、さらには一匹から採れる素材の金額はたかが知れてる。
だから好んで狩る冒険者がいないので結果として出回る量が少ないというわけだ。
だからこの値段はぼったくりではない、むしろ良心的と言っていい。
これで高いというのならばこの値段で買ってくれる人に持って行くだけだしな。
「これもあの人の為に綺麗でいる為だもの、仕方ないわね。」
「今日持って帰るか?」
「えぇ、その為に来たんだものそうさせてもらうわ。」
「そりゃご苦労様。で?」
「何かしら。」
「こっちは虎の子の蜜玉酒を定価で譲るんだ、なにか美味いネタを持ってきてくれたんだよな?まさかモノだけ持っていくなんてセコいことはしないよな?」
損をしたわけではないのだが、こっちはこっちで譲歩している。
向こうもそれなりの動きをしてもらわないと割に合わないんだがなぁ。
「強請る気?」
「そんな事はしないさ、だがギルド協会員なら公平を重んじるものだよなと思っただけだ。恐らく扉の外で聞き耳立てているシープさんもそう言うだろうさ。」
「高い買い物になりそうね。」
「いいや、格安だよ。そっちは不足した素材を仕入れることができる上に欲しいものまで手に入れるんだ。知り合いのよしみで多少勉強するつもりだぞ。」
「本当かしら。」
「それは話を聞いてからだな。さぁ、美味い儲け話ってのを聞かせてもらおうか。」
誰も損をしない素敵な話。
なるほど、それは確かに美味そうな話だ。
早速取り掛かるとしよう。
蜜玉酒を大事に抱えて馬車に乗り込んだ女豹を見送りながら、俺は次の動きをシミュレーションするのだった。
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