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629.転売屋は歓迎される
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過激な歓迎の後は何事も無かったかのように王城の中へと案内された。
途中まではリングさんと一緒だったが、広間のあたりで別の使用人に呼ばれどこかへと消えてしまった。
応接室へと通されたものの、そのまま何も無く30分ほどが経過している。
「ちょっとは落ち着いたら?」
「落ち着けるかよ。」
「別にとって食われるわけでもなし、ガルも迎え入れてくれたのだから何の心配も無かろう。ガルよりも国王陛下とやらのほうが怖いのか?」
「比べる対象がどうかと思うが、この国に住む者としては陛下の方が怖いな。」
「ふむ、人間風情ながらシロウを怖がらせるとは灸をすえる必要があるか。」
「そういうのはマジで勘弁してくれ、今はつっこむ余裕が無い。」
ふと外に目を向けると窓の下には大小さまざまな建物がこれでもかと建っている。
心に余裕があれば景色に感動したのかもしれないが、生憎そんな強心臓は持ち合わせてないんだ。
「シロウ様、お茶が入りましたよ。」
「え、どこにあったの?」
「外で待機している方に持ってきていただきました、なかなか良い茶葉を用意してくださったようです。」
「当然じゃな。」
「いい香り、ねぇシロウも飲みなさいよ。ゴブリンみたいにウロウロしても何も変わらないわよ。」
バターが出来るぐらいにぐるぐると同じ所を回ったところで、陛下に会う事は決定事項だ。
何を言われるのかも想像がついている。
タダ単に今おかれている状況にビビッているだけ。
それはわかっているんだが、やっぱり落ち着かないんだよなぁ。
「仕方ないのぉ、ホレ。」
「ディーネ、何で服を脱いでるんだ?」
「オスはメスの乳に触れると落ち着くじゃろ?」
「あ、確かにそうかも。シロウも不安になると揉もうとするわよね。」
「お尻もお好きです。」
「自分で言うのもなんじゃが、人並み程度の大きさにはしているつもりじゃ。希望があればでかくもできるが、どうする?」
「え、変えられるの?ずるくない?」
「それだけデカい乳をして何を言うか。」
確かに胸も尻も好きだけどさぁ。
ディーネに続いてミラまでもスカートに手をかけゆっくりと捲っていく。
いや、確かに元気にはなるけどさぁそっち方面は場所的に勘弁して欲しい。
「わかったから二人ともそれをしまってくれ。」
「なんじゃ、揉まんのか?」
「そういうのは夜になったらな。」
「え、昼間でも揉むじゃない。」
「だから・・・、いやもういい。」
抵抗するのも面倒になった。
ぐるぐる回るのをやめその足でミラの用意した香茶の置かれたテーブルまで行き、横にいたエリザの尻を思いっきり揉んでやる。
小さな悲鳴の後ものすごい目でにらまれたがあえて無視した。
まったく、いい尻だよお前のは。
こんなにも心が落ち着くわけだしな。
「失礼します、裏に荷馬車が到着いたしましたがいかがいたしましょうか。」
「中身を確認したいのですぐに行きます。シロウ様、かまいませんか?」
「あぁ、皆に渡す用のブツも運んでくれるよう頼んでくれ。」
「畏まりました、行って参ります。」
ミラが部屋を出ていき、代わりにハーシェさんがおかわりを入れてくれたのだが、心なしか手が震えている。
その手に俺の手をそっと乗せると静かに手を握り返してきた。
「大丈夫か?」
「一応貴族の末席に属させていただきましたが、実は国王陛下にお会いしたことはないんです。やはり緊張しますね。」
「それが正しい反応だよなぁ。」
「そんな物かしら。」
「むしろお前は何で気にならないんだ?」
「縁遠いからかしら。私みたいな冒険者には関係のない話だもの。」
「確かに普通に生活していたら関係ないだろうが、今は関係あるだろ?」
「シロウにはね。」
あくまでも自分が会うわけじゃないから列席するぐらいじゃビビらないってことか。
日々凶悪な魔物と戦っているだけあってエリザの方がよっぽど胆が据わっている。
静かに香茶を堪能しつつミラの帰りを待っていると、再び扉がノックされた。
「失礼します、エドワード陛下が参られました。」
「は?」
思わず変な声が出てしまった。
てっきりミラが戻って来たと思っていたのに、っていうかなんで本人がこんな場所に来るんだよ。
慌てる俺とハーシェさんをあざ笑うかのように扉が開き、最初に入って来たのはアニエスさんだった。
一応中を確認し、後ろに合図をしてからマリーさんそして大ボスが入って来る。
「そんなに畏まらなくていいぞ、堅っ苦しいのは晩餐会だけで十分だ。」
「シロウ様、どうか落ち着いてください。」
「今は肩書なしで行こうではないか、こんな遠方までよく来てくれたなシロウ。奥方は疲れていないか?」
「ご心配ありがとうございますエドワード陛下。」
「このような男を夫に持つと大変だろう、まぁ私が言えたものではないがな。あっはっは!」
自分でぼけて自分でつっこんでるし。
ともかく向こうから無礼講だと言ってくれているんだ、今更ビビってどうするよ。
「この度はお招きいただきありがとうございます、エドワード陛下。」
「うむ。聞けばそこにいる二人も孕ませたそうだな、なかなかやるではないか。」
「まぁ、流れと言いますか何と言いますか。」
「男ならそうあるべきだ、むしろ少し遅かったとも思っている。マリアンナ、よくやった。」
「ありがとうございます陛下。」
「ここでは父上と呼んでくれないのか?」
「冗談ですよ、お父様。」
元息子が女として子を孕んだというのにこの反応。
やはりこの人は普通じゃない。
「父として、そして王家の長として新たな血筋を歓迎する。非公式ながら孫が出来るのは素直にうれしいものだ、今後はもっと頼ってくれていいのだぞ。」
「いえ、そういうのはあまり。」
「相変わらず欲のない男だな。普通は泣いて喜ぶものだぞ、いやリングはそうでもなかったか。」
「リング様がですか?」
「貴族の中でもあまり権力に固執しない男だからな、王族になった今でもそれはかわらないようだ。似た者同士仲良くしてやってくれ。」
「もったいないお言葉です。」
一応友人という間柄でもあるし、リングさんとは末永くいい関係を築きたいと思っている。
でもなぁ、国王陛下はちょっとなぁ。
「それで、そちらにおられるのがディネストリファ様か。」
「うむ、ディーネでよいぞ人間。」
「ガルグリンダム様から色々と聞いております。人嫌いの貴女がまさか男と一緒に来るなんて正直信じられないとぼやいておいででした。聞けば夫婦だったとか?」
「大昔の話じゃ。対戦で疲れていたのもあったし子を生したわけでもない。」
「なるほど、脈はないと。」
「諦めろと諭しておいてくれるか?」
「私の言葉を聞いてくれればそう致しましょう。」
あのエドワード陛下が敬語を使っているあたり、やはりディーネはすごい存在なんだろう。
そんな彼女に好意を寄せられる理由が正直わからんのだが。
まぁ、いずれわかるか。
「あと300年もすれば諦めるじゃろう。お主の娘は我が庇護する、安心して国を治めると良い。」
「ありがたきお言葉。」
「して、飯はまだか?」
「もう少しお待ちください。」
「そうか。ならば待とう。」
ディーネは満足そうにうなずくと用意された茶菓子をバリバリと食べ始めた。
「ふと思ったのだが。」
「なにか?」
「そこにいるのは、エリザベート姫ではないのか?」
「姫?」
「何のことかしら。」
「隠しても無駄だ、その瞳の反射はリンブルグ家のもの。あのおてんば娘が随分と大きくなったものだ、まさか子を生して再会するとは思わなかったがな。」
「失礼ですが陛下、私はもうあの家を捨てた身で今はただの冒険者でございます。」
え、何そのそっけない返事。
エドワード陛下にビビらないのは縁遠いんじゃなくて寧ろ知り合いだからじゃないんですかね。
「貴族だったのか?」
「大昔の話よ。私とキキはもうあの家から勘当されているんだから貴族でも何でもないわ。」
「前々からリングさんなんかにも堂々と話をしていると思ったが、向こうとも知り合いだったのか?」
「そんなわけないじゃない。」
「でも私とは知り合いでしたよね。」
「会ったのは一回だけで子供の時の話よ。」
あ、そ。
マリーさんがエリザと妙に親しい感じがあったのは顔見知りだったからか。
なるほど長年の疑問がやっと晴れた。
っていうか教えてくれよ、そういうことはさぁ。
「なによ、そんな目して。」
「いいや、エリザはエリザだったと思っただけだ。」
「意味わかんない。」
「まぁまぁいいではないか。ハーシェ殿も色々と大変だったようだな。」
「お気遣いありがとうございます。ですが今はこの方の妻として幸せに暮らしておりますのでご心配には及びません、大変だなんて決して思っておりませんので。」
「さっきのは失言だ、忘れてくれ。」
「出過ぎたことを申しました。」
「ふむ。お前の妻達はお前が思っている以上に、芯のある者ばかりのようだ。尻に敷かれるなよ。」
マリーさんは国王陛下の娘で、エリザとハーシェさんは元貴族。
今更ながら俺みたいな普通の男にはもったいない女ばかりだ。
「エドワード様、そろそろご準備のお時間です。」
「おっともうそんな時間か。もう少し話がしたいが今日で終わりというわけではないしな。ではまた晩餐会で会うとしよう、またな。」
そう言うとくるりと踵を返し迎えに来たであろうメイドさんと共に部屋を出て行った。
「あんなに嬉しそうな父上は初めてです。」
「そうなのか?」
「普段はあまり冗談を言う人ではありませんから。」
「よほどロバート様、いえマリアンナ様に子供が出来たのがうれしいのでしょう。半ばあきらめたような物でしたから。」
「あはは、昔の私であれば孫を見せる事は出来なかったでしょうからね。だから私もうれしいんです、シロウ様いいえ旦那様本当にありがとうございました。」
深々と頭を下げるマリーさんとアニエスさん。
そして頭を上げると、陛下を追いかけるようにして部屋を出て行った。
なんていうか歓迎してくれているのは非常に伝わってくるのだが、情報量が多すぎて処理が上手くいっていない。
「ただいまもどりまし・・・た?」
「おかえりミラ。」
「おかえりなさいませミラさん。」
「あの、どうかされましたか?」
「大丈夫よ。ちょっと処理が追いついていないだけだろうから。」
「そうですか。」
「それよりも荷物の方は大丈夫だった?」
「はい。予定通り必要なものだけ別の場所に保管していただいています。国王陛下にご挨拶する時にはしっかりお渡しできそうです。お会いするのが楽しみですね。」
「そうね。」
「そうですね。」
何も知らないミラをエリザとハーシェさんが優しく労う。
さぁ次は晩餐会だ。
と、すぐに気持ちを切り替えられる俺ではなかった。
途中まではリングさんと一緒だったが、広間のあたりで別の使用人に呼ばれどこかへと消えてしまった。
応接室へと通されたものの、そのまま何も無く30分ほどが経過している。
「ちょっとは落ち着いたら?」
「落ち着けるかよ。」
「別にとって食われるわけでもなし、ガルも迎え入れてくれたのだから何の心配も無かろう。ガルよりも国王陛下とやらのほうが怖いのか?」
「比べる対象がどうかと思うが、この国に住む者としては陛下の方が怖いな。」
「ふむ、人間風情ながらシロウを怖がらせるとは灸をすえる必要があるか。」
「そういうのはマジで勘弁してくれ、今はつっこむ余裕が無い。」
ふと外に目を向けると窓の下には大小さまざまな建物がこれでもかと建っている。
心に余裕があれば景色に感動したのかもしれないが、生憎そんな強心臓は持ち合わせてないんだ。
「シロウ様、お茶が入りましたよ。」
「え、どこにあったの?」
「外で待機している方に持ってきていただきました、なかなか良い茶葉を用意してくださったようです。」
「当然じゃな。」
「いい香り、ねぇシロウも飲みなさいよ。ゴブリンみたいにウロウロしても何も変わらないわよ。」
バターが出来るぐらいにぐるぐると同じ所を回ったところで、陛下に会う事は決定事項だ。
何を言われるのかも想像がついている。
タダ単に今おかれている状況にビビッているだけ。
それはわかっているんだが、やっぱり落ち着かないんだよなぁ。
「仕方ないのぉ、ホレ。」
「ディーネ、何で服を脱いでるんだ?」
「オスはメスの乳に触れると落ち着くじゃろ?」
「あ、確かにそうかも。シロウも不安になると揉もうとするわよね。」
「お尻もお好きです。」
「自分で言うのもなんじゃが、人並み程度の大きさにはしているつもりじゃ。希望があればでかくもできるが、どうする?」
「え、変えられるの?ずるくない?」
「それだけデカい乳をして何を言うか。」
確かに胸も尻も好きだけどさぁ。
ディーネに続いてミラまでもスカートに手をかけゆっくりと捲っていく。
いや、確かに元気にはなるけどさぁそっち方面は場所的に勘弁して欲しい。
「わかったから二人ともそれをしまってくれ。」
「なんじゃ、揉まんのか?」
「そういうのは夜になったらな。」
「え、昼間でも揉むじゃない。」
「だから・・・、いやもういい。」
抵抗するのも面倒になった。
ぐるぐる回るのをやめその足でミラの用意した香茶の置かれたテーブルまで行き、横にいたエリザの尻を思いっきり揉んでやる。
小さな悲鳴の後ものすごい目でにらまれたがあえて無視した。
まったく、いい尻だよお前のは。
こんなにも心が落ち着くわけだしな。
「失礼します、裏に荷馬車が到着いたしましたがいかがいたしましょうか。」
「中身を確認したいのですぐに行きます。シロウ様、かまいませんか?」
「あぁ、皆に渡す用のブツも運んでくれるよう頼んでくれ。」
「畏まりました、行って参ります。」
ミラが部屋を出ていき、代わりにハーシェさんがおかわりを入れてくれたのだが、心なしか手が震えている。
その手に俺の手をそっと乗せると静かに手を握り返してきた。
「大丈夫か?」
「一応貴族の末席に属させていただきましたが、実は国王陛下にお会いしたことはないんです。やはり緊張しますね。」
「それが正しい反応だよなぁ。」
「そんな物かしら。」
「むしろお前は何で気にならないんだ?」
「縁遠いからかしら。私みたいな冒険者には関係のない話だもの。」
「確かに普通に生活していたら関係ないだろうが、今は関係あるだろ?」
「シロウにはね。」
あくまでも自分が会うわけじゃないから列席するぐらいじゃビビらないってことか。
日々凶悪な魔物と戦っているだけあってエリザの方がよっぽど胆が据わっている。
静かに香茶を堪能しつつミラの帰りを待っていると、再び扉がノックされた。
「失礼します、エドワード陛下が参られました。」
「は?」
思わず変な声が出てしまった。
てっきりミラが戻って来たと思っていたのに、っていうかなんで本人がこんな場所に来るんだよ。
慌てる俺とハーシェさんをあざ笑うかのように扉が開き、最初に入って来たのはアニエスさんだった。
一応中を確認し、後ろに合図をしてからマリーさんそして大ボスが入って来る。
「そんなに畏まらなくていいぞ、堅っ苦しいのは晩餐会だけで十分だ。」
「シロウ様、どうか落ち着いてください。」
「今は肩書なしで行こうではないか、こんな遠方までよく来てくれたなシロウ。奥方は疲れていないか?」
「ご心配ありがとうございますエドワード陛下。」
「このような男を夫に持つと大変だろう、まぁ私が言えたものではないがな。あっはっは!」
自分でぼけて自分でつっこんでるし。
ともかく向こうから無礼講だと言ってくれているんだ、今更ビビってどうするよ。
「この度はお招きいただきありがとうございます、エドワード陛下。」
「うむ。聞けばそこにいる二人も孕ませたそうだな、なかなかやるではないか。」
「まぁ、流れと言いますか何と言いますか。」
「男ならそうあるべきだ、むしろ少し遅かったとも思っている。マリアンナ、よくやった。」
「ありがとうございます陛下。」
「ここでは父上と呼んでくれないのか?」
「冗談ですよ、お父様。」
元息子が女として子を孕んだというのにこの反応。
やはりこの人は普通じゃない。
「父として、そして王家の長として新たな血筋を歓迎する。非公式ながら孫が出来るのは素直にうれしいものだ、今後はもっと頼ってくれていいのだぞ。」
「いえ、そういうのはあまり。」
「相変わらず欲のない男だな。普通は泣いて喜ぶものだぞ、いやリングはそうでもなかったか。」
「リング様がですか?」
「貴族の中でもあまり権力に固執しない男だからな、王族になった今でもそれはかわらないようだ。似た者同士仲良くしてやってくれ。」
「もったいないお言葉です。」
一応友人という間柄でもあるし、リングさんとは末永くいい関係を築きたいと思っている。
でもなぁ、国王陛下はちょっとなぁ。
「それで、そちらにおられるのがディネストリファ様か。」
「うむ、ディーネでよいぞ人間。」
「ガルグリンダム様から色々と聞いております。人嫌いの貴女がまさか男と一緒に来るなんて正直信じられないとぼやいておいででした。聞けば夫婦だったとか?」
「大昔の話じゃ。対戦で疲れていたのもあったし子を生したわけでもない。」
「なるほど、脈はないと。」
「諦めろと諭しておいてくれるか?」
「私の言葉を聞いてくれればそう致しましょう。」
あのエドワード陛下が敬語を使っているあたり、やはりディーネはすごい存在なんだろう。
そんな彼女に好意を寄せられる理由が正直わからんのだが。
まぁ、いずれわかるか。
「あと300年もすれば諦めるじゃろう。お主の娘は我が庇護する、安心して国を治めると良い。」
「ありがたきお言葉。」
「して、飯はまだか?」
「もう少しお待ちください。」
「そうか。ならば待とう。」
ディーネは満足そうにうなずくと用意された茶菓子をバリバリと食べ始めた。
「ふと思ったのだが。」
「なにか?」
「そこにいるのは、エリザベート姫ではないのか?」
「姫?」
「何のことかしら。」
「隠しても無駄だ、その瞳の反射はリンブルグ家のもの。あのおてんば娘が随分と大きくなったものだ、まさか子を生して再会するとは思わなかったがな。」
「失礼ですが陛下、私はもうあの家を捨てた身で今はただの冒険者でございます。」
え、何そのそっけない返事。
エドワード陛下にビビらないのは縁遠いんじゃなくて寧ろ知り合いだからじゃないんですかね。
「貴族だったのか?」
「大昔の話よ。私とキキはもうあの家から勘当されているんだから貴族でも何でもないわ。」
「前々からリングさんなんかにも堂々と話をしていると思ったが、向こうとも知り合いだったのか?」
「そんなわけないじゃない。」
「でも私とは知り合いでしたよね。」
「会ったのは一回だけで子供の時の話よ。」
あ、そ。
マリーさんがエリザと妙に親しい感じがあったのは顔見知りだったからか。
なるほど長年の疑問がやっと晴れた。
っていうか教えてくれよ、そういうことはさぁ。
「なによ、そんな目して。」
「いいや、エリザはエリザだったと思っただけだ。」
「意味わかんない。」
「まぁまぁいいではないか。ハーシェ殿も色々と大変だったようだな。」
「お気遣いありがとうございます。ですが今はこの方の妻として幸せに暮らしておりますのでご心配には及びません、大変だなんて決して思っておりませんので。」
「さっきのは失言だ、忘れてくれ。」
「出過ぎたことを申しました。」
「ふむ。お前の妻達はお前が思っている以上に、芯のある者ばかりのようだ。尻に敷かれるなよ。」
マリーさんは国王陛下の娘で、エリザとハーシェさんは元貴族。
今更ながら俺みたいな普通の男にはもったいない女ばかりだ。
「エドワード様、そろそろご準備のお時間です。」
「おっともうそんな時間か。もう少し話がしたいが今日で終わりというわけではないしな。ではまた晩餐会で会うとしよう、またな。」
そう言うとくるりと踵を返し迎えに来たであろうメイドさんと共に部屋を出て行った。
「あんなに嬉しそうな父上は初めてです。」
「そうなのか?」
「普段はあまり冗談を言う人ではありませんから。」
「よほどロバート様、いえマリアンナ様に子供が出来たのがうれしいのでしょう。半ばあきらめたような物でしたから。」
「あはは、昔の私であれば孫を見せる事は出来なかったでしょうからね。だから私もうれしいんです、シロウ様いいえ旦那様本当にありがとうございました。」
深々と頭を下げるマリーさんとアニエスさん。
そして頭を上げると、陛下を追いかけるようにして部屋を出て行った。
なんていうか歓迎してくれているのは非常に伝わってくるのだが、情報量が多すぎて処理が上手くいっていない。
「ただいまもどりまし・・・た?」
「おかえりミラ。」
「おかえりなさいませミラさん。」
「あの、どうかされましたか?」
「大丈夫よ。ちょっと処理が追いついていないだけだろうから。」
「そうですか。」
「それよりも荷物の方は大丈夫だった?」
「はい。予定通り必要なものだけ別の場所に保管していただいています。国王陛下にご挨拶する時にはしっかりお渡しできそうです。お会いするのが楽しみですね。」
「そうね。」
「そうですね。」
何も知らないミラをエリザとハーシェさんが優しく労う。
さぁ次は晩餐会だ。
と、すぐに気持ちを切り替えられる俺ではなかった。
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