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571.転売屋は仕事先を斡旋する
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「・・・という感じで、近隣の町でも同様の被害が出ていたようです。狙われたのは貴族や商人で、特に現金の出入りが激しい方々が狙われていたのだとか。手口としては、自分と同じ亜人に声をかけて油断させ、言葉巧みに標的の家に忍び込ませて内情を確認。戻ればよし、戻らなくて捕まっても被害は出ませんから難しいと判断した時点で街を出ていたそうです。亜人同士の仲間意識を巧妙に使い、結果無関係の人が被害者になる。最低な手口です。」
「なるほどなぁ。声をかけられ潜入した時点で犯罪者だし、無事に戻ってきたら盗みを手伝わせて他所に逃げられないようにするわけか。賢いやり方だ。」
「今回捕まえなければ第二第三のトトリ様が産まれていた事でしょう。首謀者は王都に連れて行き厳罰に処すこととなりました。」
「他の仲間は?」
「その気がなかったとはいえ、盗みを働いた時点で犯罪です。とはいえ被害者でもあることを考え、犯罪奴隷として複数年の労役となるかと。」
むしろそれで済んでよかったと思うべきか。
最初は無関係でもズルズルと犯行を重ねれば罪はドンドンと重くなる。
重罪になれば一生労役につかされることになるわけで、そうはならずに複数年で労役が終わるのも情状酌量の余地ありと判断されたからだろう。
「屋敷で捕まった奴はともかく、逃げた奴は労役につけるのか?」
「幸い腱は切れておりませんでしたし、ポーションで治りますから。」
「まだ治療していないのか?」
「痛みも必要な刑罰ですので。」
ポーション一つで痛みから解放されるというのに、それすらも与えられないのは人権侵害だ!とか騒がれたりしないのだろうか。
屋敷の中で捕縛された連中はせいぜい笑いすぎによる筋肉痛程度だが、外に逃げた奴はアニエスさんの命令を受けたルフとレイがいい感じに足を噛みまくったらしい。
甘噛みではない本気のやつ。
さぞ痛かったことだろう。
「しかるべき刑は受けるんだ、ほどほどにしておいてやれよ。」
「もちろんです。それでトトリ様はどちらに?」
「あー、彼女なら上で寝てる。」
「そうですか。」
「一応無罪放免なんだろ?」
「はい。犯人に偽情報を流し逮捕に貢献したということで今回は無罪となりました。一昨日の潜入もシロウ様の入れ知恵で刑には問われないそうです。」
大方エリザがゲロったんだろう。
まぁ元々被害届を出すつもりはなかったし、盗む前に捕縛したので体裁上は無罪。
昨日の襲撃についても無罪。
晴れて自由の身となったわけだが・・・。
「なんのことだか。」
「エリザ様が少々ふくれておりましたが、そういう懐の大きさも良いオスには必要です。寛大な措置に感謝いたします。」
「感謝されるようなことはしていない、後は彼女の問題だ。」
「随分と堪えたようですね。」
「あぁ、軽い気持ちだったとはいえ自分以外が犯罪者として扱われるとなったらなぁ。怖くもなるさ。」
「自業自得ではありますが彼女もまた被害者です。早く立ち直っていただけるといいですね。」
二人同時に天井を見る。
自分の思っていた以上の状況に怖くなったのか、あれ以降客間に閉じこもったまま出てこない。
鍵はかかっていないので同じ亜人であるアネットが様子を見てくれているが、随分落ち込んでいるとのことだ。
聞けば身寄りもなく日銭を稼いで、あちらこちらと旅をしていたのだとか。
目的もなくタダ生きていくだけの人生がイヤになったんだろう。
だからあの時、死んでもかまわないみたいな事をいったんだな。
「ま、コレも何かの縁だ。しばらくはうちで預かって様子を見るよ。」
「何かありましたらご相談ください。」
「おぅ、報告は以上か?」
「今回の件については以上です。別件でマリー様より都合の良いタイミングで寄って欲しいと伝言を賜っております。お時間あるときにお店までお願いします。」
「はいよ。」
マリーさんが一体何の用だろうか。
急用ならそう言うだろうし、ひとまず後回しにさせて貰おう。
アニエスさんを玄関先まで見送り、一息つく。
「あ、ご主人様ちょうどいい所に。」
「どうかしたのか?」
「トトリ様がお呼びですのでお部屋までお願いします。私は製薬がありますので・・・。」
「わかった。」
見送りを済ませると今度はアネットに声を掛けられた。
どうやら本人がお呼びのようだ。
俺一人で行くのは少し気が引けるが、別に悪い事をしに行くわけじゃない。
階段を上り客間の前へ。
「シロウだ。」
「ど、どうぞ!」
ノックをするとすぐに返事が返ってくる。
一呼吸おいてから扉を開けると、かしこまった顔をした顔をして俺を出迎えてくれた。
「で、話ってのは?」
「その、ご迷惑をかけたお詫びとお礼を・・・。」
「そういうのは気にするな、おかげでもっと大きな相手を逮捕出来た。それと、監査官から伝言だ、昨日の件も罪に問われないので自由にしていいんだと。」
「私だけ無罪でいいんでしょうか。」
「司法取引だからな、むしろ当然の結果だ。」
「アネットさんもそう言っていました。」
心なしか表情が明るい。
アネットが親身になって話を聞いたおかげだろう。
「今後は同じ亜人だからって気を抜かないことだな、悪い事を考えている奴は多いぞ。」
「はい、気をつけます。」
「いい顔になったじゃないか。」
「落ち込んでいても何も変わらないから。」
「その通りだな。で、この後はどうする。」
「いつまでもお世話になれないので今日のうちに出て行くつもりです。」
「あてはあるのか?」
「今までもありませんでしたから、でもなんとかなります。」
いい顔にはなったものの根本は何も解決できていない。
フールの様に冒険者になるという手もあるが、どう見てもそういうのは苦手な感じだ。
線も細いし荒事には向いていなさそう。
まぁ、今後どうするかまでは俺の知るところじゃない。
好きに生きるのもまた人生だ。
「おせっかいで聞くが、何が出来るんだ?」
「え・・・。」
ふと気になったので聞いてみたのだがまた、前のように暗い顔で俯いてしまった。
地雷を踏んでしまったようだ。
「何もできません。」
「じゃあ得意なことは?」
「えっと、少しだけ足が速くて人にぶつからずに走ることが出来ます。それだけです。」
「器用だな。」
「そうでもないです、逃げるのが得意なだけですから。」
足が速いのはわかるが人にぶつからずに走るってのはなかなか難しい。
逃げ足っていうか身のこなしが軽いんだろうな。
だから忍び込むのも容易だったと。
ふむ、ちょうどいいかもしれない。
「今日のうちに出ていくんだったな、じゃあちょっと付き合え。」
「え?」
「別に取って食いやしないから安心しろ。ほら、行くぞ。」
「え、あ、まってください!」
返事を待たずに立ち上がった俺を慌てて追いかけてくる音がする。
部屋を出るとグレイスがお茶を持って立っていたが、お詫びだけしてそのまま屋敷を出た。
「あの、どこに行くんですか?」
「冒険者ギルド。」
「え?」
「足、早いんだよな?」
「ちょっとだけですよ?」
「今まで魔物と戦った事は?」
「戦ったことはありませんけど、逃げたり隠れたりはしました。」
じゃあぴったりだな。
戸惑う彼女を連れて冒険者ギルドへ向かうと、エリザが暇そうに受付をしていた。
「シロウ?それにトトリちゃんまでどうしたの?」
「エリザか。確か休憩所に荷物を運ぶ依頼があったよな?あれまだやってるか?」
「え、そんなのあったっけ?」
「まだやってますよ。戦闘抜きの輸送のみなので人気がないんですよね。」
「依頼料は?」
「一往復で銅貨30枚、荷物は軽いから彼女でも大丈夫じゃないかしら。」
適当な返事をするエリザを見かねて後ろからニアが顔を出す。
まったく、何のために受付やってるんだよ。
「魔物との戦闘はなし、危ない場合は逃げても問題ない。ただしその場合はその旨をギルドに報告せよ、だったよな?」
「そうそうそんな依頼だった。」
「お仕事希望?」
「え、そうなんですか?」
「せっかく人より足が速いんだ、食い扶持を稼ぐのにはもってこいだろう。どうだ、やるか?」
いきなりやるかときかれて戸惑っているようだ。
「やってもらえると助かるなぁ、運ぶのは書類とかだし道を覚えるまでは護衛もつけるから。」
「足が速いんなら宅配の仕事とかもあったわよね。」
「そういえば、アインさんが探してたな。」
「うちとしては専属で働いてほしいんだけど、毎回仕事があるわけじゃないし兼業でも全然問題ないわ。貴女名前は?」
「トトリャーナ、です。」
「トトリちゃんね。良かったら住むところも案内できるわよ、女の子ばかりだから安心してね。早速見に行きましょうか。」
「え、でも。」
「いいからいいから。」
あっという間にニアに攫われてしまった。
うちの屋敷に荷物とかあるんだけどなぁ。
ま、後で取りに来るか。
「連れていかれたわね。」
「だな。」
「ほんと甘いんだから。」
「アニエスさん曰くそういう懐の大きい所がいいオスなんだと。」
「そこは否定しないわ。それに、誰もしたがらなかった仕事が埋まるのはいい事だしね。」
「違いない。」
さて、これでおせっかいも終わりだ。
あとはニアに丸投げしよう。
「もう帰るの?」
「マリーさんに呼ばれてるみたいだからそっちに行ってからな。」
「ふーん、私も行こっかな。」
「別に来なくていいぞ?」
「なによその言い方、絶対に行くんだから。」
そういうと思った。
カウンターをくぐってくるのかと思ったら、ひょいと上を跳んで来る。
スカートがふわりと翻り、それを見たほかの冒険者が口笛を吹いた。
が、そんな事で動じるエリザではない。
そのまま俺の腕に自分の腕を絡め強めに腕を押し当ててくる。
自分が誰のものかを見せつけるように。
「さ、行きましょ。」
「歩きにくい。それと、さっきみたいなのは止めろ危ないだろ。」
「は~い。」
「全然反省してないな。」
「うん。」
知ってた。
エリザを引きずるようにして冒険者ギルドを後にする。
さて、マリーさんの用事はなんだろうか。
急ぎじゃないんだし面倒ごとではないと思うんだけど・・・。
嫌な予感はするんだよなぁ。
「なるほどなぁ。声をかけられ潜入した時点で犯罪者だし、無事に戻ってきたら盗みを手伝わせて他所に逃げられないようにするわけか。賢いやり方だ。」
「今回捕まえなければ第二第三のトトリ様が産まれていた事でしょう。首謀者は王都に連れて行き厳罰に処すこととなりました。」
「他の仲間は?」
「その気がなかったとはいえ、盗みを働いた時点で犯罪です。とはいえ被害者でもあることを考え、犯罪奴隷として複数年の労役となるかと。」
むしろそれで済んでよかったと思うべきか。
最初は無関係でもズルズルと犯行を重ねれば罪はドンドンと重くなる。
重罪になれば一生労役につかされることになるわけで、そうはならずに複数年で労役が終わるのも情状酌量の余地ありと判断されたからだろう。
「屋敷で捕まった奴はともかく、逃げた奴は労役につけるのか?」
「幸い腱は切れておりませんでしたし、ポーションで治りますから。」
「まだ治療していないのか?」
「痛みも必要な刑罰ですので。」
ポーション一つで痛みから解放されるというのに、それすらも与えられないのは人権侵害だ!とか騒がれたりしないのだろうか。
屋敷の中で捕縛された連中はせいぜい笑いすぎによる筋肉痛程度だが、外に逃げた奴はアニエスさんの命令を受けたルフとレイがいい感じに足を噛みまくったらしい。
甘噛みではない本気のやつ。
さぞ痛かったことだろう。
「しかるべき刑は受けるんだ、ほどほどにしておいてやれよ。」
「もちろんです。それでトトリ様はどちらに?」
「あー、彼女なら上で寝てる。」
「そうですか。」
「一応無罪放免なんだろ?」
「はい。犯人に偽情報を流し逮捕に貢献したということで今回は無罪となりました。一昨日の潜入もシロウ様の入れ知恵で刑には問われないそうです。」
大方エリザがゲロったんだろう。
まぁ元々被害届を出すつもりはなかったし、盗む前に捕縛したので体裁上は無罪。
昨日の襲撃についても無罪。
晴れて自由の身となったわけだが・・・。
「なんのことだか。」
「エリザ様が少々ふくれておりましたが、そういう懐の大きさも良いオスには必要です。寛大な措置に感謝いたします。」
「感謝されるようなことはしていない、後は彼女の問題だ。」
「随分と堪えたようですね。」
「あぁ、軽い気持ちだったとはいえ自分以外が犯罪者として扱われるとなったらなぁ。怖くもなるさ。」
「自業自得ではありますが彼女もまた被害者です。早く立ち直っていただけるといいですね。」
二人同時に天井を見る。
自分の思っていた以上の状況に怖くなったのか、あれ以降客間に閉じこもったまま出てこない。
鍵はかかっていないので同じ亜人であるアネットが様子を見てくれているが、随分落ち込んでいるとのことだ。
聞けば身寄りもなく日銭を稼いで、あちらこちらと旅をしていたのだとか。
目的もなくタダ生きていくだけの人生がイヤになったんだろう。
だからあの時、死んでもかまわないみたいな事をいったんだな。
「ま、コレも何かの縁だ。しばらくはうちで預かって様子を見るよ。」
「何かありましたらご相談ください。」
「おぅ、報告は以上か?」
「今回の件については以上です。別件でマリー様より都合の良いタイミングで寄って欲しいと伝言を賜っております。お時間あるときにお店までお願いします。」
「はいよ。」
マリーさんが一体何の用だろうか。
急用ならそう言うだろうし、ひとまず後回しにさせて貰おう。
アニエスさんを玄関先まで見送り、一息つく。
「あ、ご主人様ちょうどいい所に。」
「どうかしたのか?」
「トトリ様がお呼びですのでお部屋までお願いします。私は製薬がありますので・・・。」
「わかった。」
見送りを済ませると今度はアネットに声を掛けられた。
どうやら本人がお呼びのようだ。
俺一人で行くのは少し気が引けるが、別に悪い事をしに行くわけじゃない。
階段を上り客間の前へ。
「シロウだ。」
「ど、どうぞ!」
ノックをするとすぐに返事が返ってくる。
一呼吸おいてから扉を開けると、かしこまった顔をした顔をして俺を出迎えてくれた。
「で、話ってのは?」
「その、ご迷惑をかけたお詫びとお礼を・・・。」
「そういうのは気にするな、おかげでもっと大きな相手を逮捕出来た。それと、監査官から伝言だ、昨日の件も罪に問われないので自由にしていいんだと。」
「私だけ無罪でいいんでしょうか。」
「司法取引だからな、むしろ当然の結果だ。」
「アネットさんもそう言っていました。」
心なしか表情が明るい。
アネットが親身になって話を聞いたおかげだろう。
「今後は同じ亜人だからって気を抜かないことだな、悪い事を考えている奴は多いぞ。」
「はい、気をつけます。」
「いい顔になったじゃないか。」
「落ち込んでいても何も変わらないから。」
「その通りだな。で、この後はどうする。」
「いつまでもお世話になれないので今日のうちに出て行くつもりです。」
「あてはあるのか?」
「今までもありませんでしたから、でもなんとかなります。」
いい顔にはなったものの根本は何も解決できていない。
フールの様に冒険者になるという手もあるが、どう見てもそういうのは苦手な感じだ。
線も細いし荒事には向いていなさそう。
まぁ、今後どうするかまでは俺の知るところじゃない。
好きに生きるのもまた人生だ。
「おせっかいで聞くが、何が出来るんだ?」
「え・・・。」
ふと気になったので聞いてみたのだがまた、前のように暗い顔で俯いてしまった。
地雷を踏んでしまったようだ。
「何もできません。」
「じゃあ得意なことは?」
「えっと、少しだけ足が速くて人にぶつからずに走ることが出来ます。それだけです。」
「器用だな。」
「そうでもないです、逃げるのが得意なだけですから。」
足が速いのはわかるが人にぶつからずに走るってのはなかなか難しい。
逃げ足っていうか身のこなしが軽いんだろうな。
だから忍び込むのも容易だったと。
ふむ、ちょうどいいかもしれない。
「今日のうちに出ていくんだったな、じゃあちょっと付き合え。」
「え?」
「別に取って食いやしないから安心しろ。ほら、行くぞ。」
「え、あ、まってください!」
返事を待たずに立ち上がった俺を慌てて追いかけてくる音がする。
部屋を出るとグレイスがお茶を持って立っていたが、お詫びだけしてそのまま屋敷を出た。
「あの、どこに行くんですか?」
「冒険者ギルド。」
「え?」
「足、早いんだよな?」
「ちょっとだけですよ?」
「今まで魔物と戦った事は?」
「戦ったことはありませんけど、逃げたり隠れたりはしました。」
じゃあぴったりだな。
戸惑う彼女を連れて冒険者ギルドへ向かうと、エリザが暇そうに受付をしていた。
「シロウ?それにトトリちゃんまでどうしたの?」
「エリザか。確か休憩所に荷物を運ぶ依頼があったよな?あれまだやってるか?」
「え、そんなのあったっけ?」
「まだやってますよ。戦闘抜きの輸送のみなので人気がないんですよね。」
「依頼料は?」
「一往復で銅貨30枚、荷物は軽いから彼女でも大丈夫じゃないかしら。」
適当な返事をするエリザを見かねて後ろからニアが顔を出す。
まったく、何のために受付やってるんだよ。
「魔物との戦闘はなし、危ない場合は逃げても問題ない。ただしその場合はその旨をギルドに報告せよ、だったよな?」
「そうそうそんな依頼だった。」
「お仕事希望?」
「え、そうなんですか?」
「せっかく人より足が速いんだ、食い扶持を稼ぐのにはもってこいだろう。どうだ、やるか?」
いきなりやるかときかれて戸惑っているようだ。
「やってもらえると助かるなぁ、運ぶのは書類とかだし道を覚えるまでは護衛もつけるから。」
「足が速いんなら宅配の仕事とかもあったわよね。」
「そういえば、アインさんが探してたな。」
「うちとしては専属で働いてほしいんだけど、毎回仕事があるわけじゃないし兼業でも全然問題ないわ。貴女名前は?」
「トトリャーナ、です。」
「トトリちゃんね。良かったら住むところも案内できるわよ、女の子ばかりだから安心してね。早速見に行きましょうか。」
「え、でも。」
「いいからいいから。」
あっという間にニアに攫われてしまった。
うちの屋敷に荷物とかあるんだけどなぁ。
ま、後で取りに来るか。
「連れていかれたわね。」
「だな。」
「ほんと甘いんだから。」
「アニエスさん曰くそういう懐の大きい所がいいオスなんだと。」
「そこは否定しないわ。それに、誰もしたがらなかった仕事が埋まるのはいい事だしね。」
「違いない。」
さて、これでおせっかいも終わりだ。
あとはニアに丸投げしよう。
「もう帰るの?」
「マリーさんに呼ばれてるみたいだからそっちに行ってからな。」
「ふーん、私も行こっかな。」
「別に来なくていいぞ?」
「なによその言い方、絶対に行くんだから。」
そういうと思った。
カウンターをくぐってくるのかと思ったら、ひょいと上を跳んで来る。
スカートがふわりと翻り、それを見たほかの冒険者が口笛を吹いた。
が、そんな事で動じるエリザではない。
そのまま俺の腕に自分の腕を絡め強めに腕を押し当ててくる。
自分が誰のものかを見せつけるように。
「さ、行きましょ。」
「歩きにくい。それと、さっきみたいなのは止めろ危ないだろ。」
「は~い。」
「全然反省してないな。」
「うん。」
知ってた。
エリザを引きずるようにして冒険者ギルドを後にする。
さて、マリーさんの用事はなんだろうか。
急ぎじゃないんだし面倒ごとではないと思うんだけど・・・。
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