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519.転売屋は明かりを作る
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「シロウさん、これ買い取れます?」
「これは・・・。」
「発光石なんですけど、なんか普通と違うんですよね。」
「ふむ。」
発光石とはその名の如く光る石。
とはいえ光り続けるのではなく、刺激を与えると弱い光を発する程度の品だ。
ダンジョン内のごく限られた場所で採取できるので、たまにこんな風にして冒険者が持ち込んでくるのだが・・・。
『発光石。刺激を与えると淡い光を出す石。原理はいまだに解明されていないが、内蔵する微量な魔力に反応すると言われている。発光量が多い。最近の平均取引価格は銅貨35枚。最安値銅貨10枚最高値銅貨77枚最終取引日は本日と記録されています。』
ふむ、確かに発光量が多いな。
普通のやつは軽くたたくとぼんやりと光る程度だが、こいつは明らかに眩しい。
発光時間も普通と違って長い気がする。
とはいえ、一分もすれば消えてしまうので誤差といえば誤差といえるだろう。
しかしあれだな、こんなものを買う人もいるんだな。
「別に買い取りはするが他と一緒で買取価格は銅貨10枚だぞ?」
「え、そんなに安いんですか?ならあっちに持って行こうかなぁ。」
「うちよりも高い所があるのか?」
「知らないんですか?いま発光石がガキ共の間で流行ってるんですよ。俺も嫁さんに言われ拾ってきたんですけど、こんなの違うってガキに投げ返されましてね。」
「そりゃご愁傷様。」
「はぁ、苦労したんだけどなぁ。」
「あっちってのは露店か何かか?」
「はい、向こうで買取やってる人がいるんでそっちに持っていきます。」
ふむ、わざわざこれを買い取る奴がいるのか。
ガキの間で流行っているのも知らなかった。
とはいえ、銅貨10枚程度のものだ。
商売にするにはちと安すぎるよなぁ。
どうやって儲けるんだろうか。
冒険者を見送り俺も立ち上がる。
「見に行きますか?」
「あぁ、ちょっと興味がある。」
「どうぞいってらっしゃいませ。」
気になるのなら見に行けばいい。
冒険者の後をつけるようにして俺も市場へと向かう。
彼が立ち止まったのは出入りの激しい入り口側ではなく奥まった隅の方にある露店だった。
ふむ、店主は随分と若い女だな。
メルディと同じぐらい、いや見た目で判断できないか。
二言三言やり取りをして売買が成立したようだ。
代金を支払って彼は市場の奥へと消えて行った。
さて、次は俺の番だな。
「いらっしゃい。」
「ここで発光石を扱っていると聞いたんだが?」
「よく知ってるね、でもうちは買取専門なんだ。」
「買取だけ?」
「うん、販売はお姉ちゃんがしてるから。」
「ちなみに聞くが何に使うんだ?」
「これを瓶に入れて振るとピカピカ光るんだ。売れると思わない?」
「あ~・・・、そうだな。」
目を輝かせる女を前になんていえばいいのかわからなくなってしまった。
人の商売を邪魔するつもりはない。
たとえそれが儲からない商売だったとしてもだ。
俺は善人じゃないからわざわざ売れないと言う事はしないし、それはただのおせっかいだとわかっている。
俺が売れないと思っても他で売れる可能性だって十分にある。
思い込みは良くないよな。
ひとまず販売しているという姉を探しに行くと、ちょうど反対側のこれまた隅の方で店を出していた。
店の前には子供(ガキ)共が群がっている。
ふむ、大人はともかく子供には人気があるのか。
「姉ちゃんこれは?」
「これは赤く光るよ、こっちは青、こっちは緑ね。」
「すげー、瓶を振るとピカピカする。」
小さな瓶を振ると中に入っていた発光石がピカピカと光る。
石自体は白く光るはずなので、瓶の色を変えているんだろう。
一つだと可愛い感じだが複数はいると大人が見ても綺麗に見える。
ふむ、なかなか面白い事を考えるもんだ。
瓶は恐らく酒が入っていたやつだろう。
「欲しいなぁ・・・。お母さんに言って買ってもらおうかなぁ。」
「ねぇこれいくら?」
「小さい瓶は銅貨50枚で、中くらいのが75枚大きいのが銀貨1枚よ。」
「家の手伝いしたら買ってもらえるかも!」
「ふふ、またおいで。」
「「「「は~い!」」」」
「おい行こうぜ!」
どの季節でもガキ共は元気だなぁ。
彼らを見送った姉と思われる女性が俺に気づき会釈をする。
「あの、お客さんですか?」
「あぁ、販売はこっちでやってるって聞いたんでな。随分と人気だったが、これはなんなんだ?」
「なんだと言われると難しいですが、玩具だと思ってもらえれば。」
「玩具か。てっきり明かりか何かだと思ったんだが違うようだな。」
「明かりにするにはちょっと暗いので。」
確かにこの光量では明かりには物足りないだろう。
だが、さっきの石を使うとそれも変わってくる。
「ならさっき買い取った奴を使えばいい。」
「え?」
「うちに持ち込まれた発光石なんだが、普通のと違ってかなり光が強いんだ。俺は買い取らなかったんだが、持ち込んだ奴が向こうで買い取ってもらってたぞ。」
「そんなものが。でも、うちは子供向けの品で十分です。」
「売れるかもしれないのにか?」
「お金を稼ぎたいわけじゃないので。もちろんあるに越したことはないですけど、その辺は何とかなります。」
ふむ、金儲けでやってるわけじゃないと。
身なりはそれなりに綺麗だし、顔色もかなりいい。
貧しいわけではなさそうだ。
金持ちの道楽か、はたまた遊びか。
まぁその辺はどうでもいい話だ。
相手は今まで通りの発光石で商売が出来ればそれでいいみたいだしな。
「なら俺が買い取っても問題ないか?」
「といいますと?」
「俺はこの街の買取屋だ、今までの発光石には興味はないがさっきの発光量の多いやつには興味がある。そこで提案なんだが、これまで通りのやつを俺が買い取った場合はここに持ってくるから、さっきのやつを買い取ったら俺に売ってくれないか?買取金額はここに合わせよう。」
「つまり貴方もこれで何かを作られるんですね?」
「そのつもりだ。あぁ、もちろんそっちの考えたやり方は使わない、安心してくれ。」
「マネされても別に構いませんが。」
「そういうわけにはいかない。」
特許権があるわけじゃないが、この街でもめ事を起こすつもりはない。
俺は俺のやり方で儲けさせてもらうつもりだ。
もっとも、数が手に入らなければ意味がないのでその辺は調べてからになるだろう。
「わかりました、強く光る物があればお譲りさせていただきます。」
「助かる。せっかくだ、その大きいのをもらえるか?」
「え、これですか?」
「あぁ、知り合いの子供に渡すと喜んでもらえそうだ。」
あまりピカピカ光りすぎるのは困るが、このぐらいなら大丈夫だろう。
銀貨を1枚支払いそれを持って店に帰る。
ミラが一瞬で視線を動かし最後に俺の顔を見てにこりと笑った。
手に持っている物を見て色々と察したようだ。
さすができる女は違うな。
「おかえりなさいませ、いかがでしたか?」
「発光量の多いやつは使用しないそうだ。その代わり通常の奴を買い取ったら融通する約束をしている。」
「わかりました、では買い取りましたら分けておきます。」
「数はないと思うが宜しく頼む。それと、発光量の多い分に関しては出所がどこかも調べてもらえるか?」
「おまかせください。」
さてひとまずは様子見だな。
それまでに何を使うかを考えておかないと。
入れ替わるようにして外出するミラを見送り、俺はあれやこれやと思考を巡らせるのだった。
そして翌日。
早くも強発光石(面倒なので命名)の出所が判明した。
「なるほどねぇ、新しい採掘先が見つかったのか。」
「そうなのよ。まさか壁の向こう側に通路があるなんて思いもしなかったわ。」
「普段は見向きもされない素材だが、今回の流行でそれが発見されたわけだな。」
「あれだけ手当たり次第に掘ったらねぇ。」
「崩れたりしないのか?」
「その辺は一応考えてるみたいよ。で、強いほうは結構見つかってるんだけどコレをどうするの?」
調査に言ったエリザの手には強発光石が握られている。
ポンポンと手の上でお手玉するたびにチカチカと光りだす。
直視するとかなり目が痛い。
そのままでは流石に使えなさそうだ。
「こいつの中に入れてみようと思うんだが、ちょっと貸してくれ。」
エリザがぽんと投げてよこしたそれを右手で華麗にキャッチして、左手に持っていたそれに押し込む。
中々の抵抗はあったがグッと力を入れるとズポっと中に納まった。
「スライムの核ですか。」
「あぁ、今回はブルースライムの核を用意してみた。で、こいつを叩くと・・・。」
スライムの核、そのさらに中央に石が浮かんでいる。
それを上から強めに叩くと振動が伝わり石が光りだした。
「わ!綺麗です!」
「光が落ち着きましたね、コレぐらいでしたら直視しても問題ありません。」
「青い光。ということはスライムの種類を変えると色が変わるのね。」
「そういう事だ。後は発光時間の検証だが・・・。あんまり長持ちしないな。」
小さい発光石同様10秒ほどで消えてしまった。
個人的にはもう少し光って欲しいんだが、残光がある分体感的にはもう10秒ぐらいありそうだ。
「また叩けばいいじゃない。」
「継続使用には難ありだが、でもまぁ短時間での使用なら綺麗だよな。」
「そうですね、コレだけ明るければ夜中に物を探すのに使えそうです。」
「トイレに行くときに便利そう。」
「つまりそういう用途で売り出すのですね?」
「あぁ、わざわざ燃料を消費して明かりを点けなくてもコレで十分事足りることも多い。部屋の雰囲気や気分で変えても面白いかもな。」
「核の原価が銅貨20枚前後。発光石が15枚ほどですので銀貨1枚でも十分に元が取れますね。」
銀貨1枚で売って粗利が銅貨65枚。
値段が安ければそれだけ数を出さないと利益は出ないが、材料が豊富にあることを考えると大量生産も不可能じゃない。
もちろん売れるかどうかを見極めてからにはなるが、もし売れたとしてもすぐ真似されるだろう。
核に突っ込むだけだしな。
となると、短期で一気にばら撒いて利益を出すしかない。
残念ながら長期的な商売にはならなさそうだ。
「個人的にはもう少し高めに設定したいんだが、他にも使える素材があるかもしれない。もう少し手を加えてから考えよう。欲しいと思うか?」
「私は欲しいわ。ダンジョンでも使えそうだし。」
「ダンジョンで?」
「発光石って結構割れるのよ。でも核で包めば衝撃にも強そうだから通路の奥の様子を見たり、魔物をおびき出すのにも使えそうだなって。」
「確かにな。もしくはお互いの意思確認にも使えるかもしれないぞ。救援要請なら赤を投げるとかどうだ?」
「そうなるといくつもの色を持ち歩かなければなりません、邪魔にはなりませんでしょうか。」
ふむ、色々と用途は考えられそうだな。
あれやこれやと盛り上がる女達を見ながら、俺も次の流れを考えるのだった。
「これは・・・。」
「発光石なんですけど、なんか普通と違うんですよね。」
「ふむ。」
発光石とはその名の如く光る石。
とはいえ光り続けるのではなく、刺激を与えると弱い光を発する程度の品だ。
ダンジョン内のごく限られた場所で採取できるので、たまにこんな風にして冒険者が持ち込んでくるのだが・・・。
『発光石。刺激を与えると淡い光を出す石。原理はいまだに解明されていないが、内蔵する微量な魔力に反応すると言われている。発光量が多い。最近の平均取引価格は銅貨35枚。最安値銅貨10枚最高値銅貨77枚最終取引日は本日と記録されています。』
ふむ、確かに発光量が多いな。
普通のやつは軽くたたくとぼんやりと光る程度だが、こいつは明らかに眩しい。
発光時間も普通と違って長い気がする。
とはいえ、一分もすれば消えてしまうので誤差といえば誤差といえるだろう。
しかしあれだな、こんなものを買う人もいるんだな。
「別に買い取りはするが他と一緒で買取価格は銅貨10枚だぞ?」
「え、そんなに安いんですか?ならあっちに持って行こうかなぁ。」
「うちよりも高い所があるのか?」
「知らないんですか?いま発光石がガキ共の間で流行ってるんですよ。俺も嫁さんに言われ拾ってきたんですけど、こんなの違うってガキに投げ返されましてね。」
「そりゃご愁傷様。」
「はぁ、苦労したんだけどなぁ。」
「あっちってのは露店か何かか?」
「はい、向こうで買取やってる人がいるんでそっちに持っていきます。」
ふむ、わざわざこれを買い取る奴がいるのか。
ガキの間で流行っているのも知らなかった。
とはいえ、銅貨10枚程度のものだ。
商売にするにはちと安すぎるよなぁ。
どうやって儲けるんだろうか。
冒険者を見送り俺も立ち上がる。
「見に行きますか?」
「あぁ、ちょっと興味がある。」
「どうぞいってらっしゃいませ。」
気になるのなら見に行けばいい。
冒険者の後をつけるようにして俺も市場へと向かう。
彼が立ち止まったのは出入りの激しい入り口側ではなく奥まった隅の方にある露店だった。
ふむ、店主は随分と若い女だな。
メルディと同じぐらい、いや見た目で判断できないか。
二言三言やり取りをして売買が成立したようだ。
代金を支払って彼は市場の奥へと消えて行った。
さて、次は俺の番だな。
「いらっしゃい。」
「ここで発光石を扱っていると聞いたんだが?」
「よく知ってるね、でもうちは買取専門なんだ。」
「買取だけ?」
「うん、販売はお姉ちゃんがしてるから。」
「ちなみに聞くが何に使うんだ?」
「これを瓶に入れて振るとピカピカ光るんだ。売れると思わない?」
「あ~・・・、そうだな。」
目を輝かせる女を前になんていえばいいのかわからなくなってしまった。
人の商売を邪魔するつもりはない。
たとえそれが儲からない商売だったとしてもだ。
俺は善人じゃないからわざわざ売れないと言う事はしないし、それはただのおせっかいだとわかっている。
俺が売れないと思っても他で売れる可能性だって十分にある。
思い込みは良くないよな。
ひとまず販売しているという姉を探しに行くと、ちょうど反対側のこれまた隅の方で店を出していた。
店の前には子供(ガキ)共が群がっている。
ふむ、大人はともかく子供には人気があるのか。
「姉ちゃんこれは?」
「これは赤く光るよ、こっちは青、こっちは緑ね。」
「すげー、瓶を振るとピカピカする。」
小さな瓶を振ると中に入っていた発光石がピカピカと光る。
石自体は白く光るはずなので、瓶の色を変えているんだろう。
一つだと可愛い感じだが複数はいると大人が見ても綺麗に見える。
ふむ、なかなか面白い事を考えるもんだ。
瓶は恐らく酒が入っていたやつだろう。
「欲しいなぁ・・・。お母さんに言って買ってもらおうかなぁ。」
「ねぇこれいくら?」
「小さい瓶は銅貨50枚で、中くらいのが75枚大きいのが銀貨1枚よ。」
「家の手伝いしたら買ってもらえるかも!」
「ふふ、またおいで。」
「「「「は~い!」」」」
「おい行こうぜ!」
どの季節でもガキ共は元気だなぁ。
彼らを見送った姉と思われる女性が俺に気づき会釈をする。
「あの、お客さんですか?」
「あぁ、販売はこっちでやってるって聞いたんでな。随分と人気だったが、これはなんなんだ?」
「なんだと言われると難しいですが、玩具だと思ってもらえれば。」
「玩具か。てっきり明かりか何かだと思ったんだが違うようだな。」
「明かりにするにはちょっと暗いので。」
確かにこの光量では明かりには物足りないだろう。
だが、さっきの石を使うとそれも変わってくる。
「ならさっき買い取った奴を使えばいい。」
「え?」
「うちに持ち込まれた発光石なんだが、普通のと違ってかなり光が強いんだ。俺は買い取らなかったんだが、持ち込んだ奴が向こうで買い取ってもらってたぞ。」
「そんなものが。でも、うちは子供向けの品で十分です。」
「売れるかもしれないのにか?」
「お金を稼ぎたいわけじゃないので。もちろんあるに越したことはないですけど、その辺は何とかなります。」
ふむ、金儲けでやってるわけじゃないと。
身なりはそれなりに綺麗だし、顔色もかなりいい。
貧しいわけではなさそうだ。
金持ちの道楽か、はたまた遊びか。
まぁその辺はどうでもいい話だ。
相手は今まで通りの発光石で商売が出来ればそれでいいみたいだしな。
「なら俺が買い取っても問題ないか?」
「といいますと?」
「俺はこの街の買取屋だ、今までの発光石には興味はないがさっきの発光量の多いやつには興味がある。そこで提案なんだが、これまで通りのやつを俺が買い取った場合はここに持ってくるから、さっきのやつを買い取ったら俺に売ってくれないか?買取金額はここに合わせよう。」
「つまり貴方もこれで何かを作られるんですね?」
「そのつもりだ。あぁ、もちろんそっちの考えたやり方は使わない、安心してくれ。」
「マネされても別に構いませんが。」
「そういうわけにはいかない。」
特許権があるわけじゃないが、この街でもめ事を起こすつもりはない。
俺は俺のやり方で儲けさせてもらうつもりだ。
もっとも、数が手に入らなければ意味がないのでその辺は調べてからになるだろう。
「わかりました、強く光る物があればお譲りさせていただきます。」
「助かる。せっかくだ、その大きいのをもらえるか?」
「え、これですか?」
「あぁ、知り合いの子供に渡すと喜んでもらえそうだ。」
あまりピカピカ光りすぎるのは困るが、このぐらいなら大丈夫だろう。
銀貨を1枚支払いそれを持って店に帰る。
ミラが一瞬で視線を動かし最後に俺の顔を見てにこりと笑った。
手に持っている物を見て色々と察したようだ。
さすができる女は違うな。
「おかえりなさいませ、いかがでしたか?」
「発光量の多いやつは使用しないそうだ。その代わり通常の奴を買い取ったら融通する約束をしている。」
「わかりました、では買い取りましたら分けておきます。」
「数はないと思うが宜しく頼む。それと、発光量の多い分に関しては出所がどこかも調べてもらえるか?」
「おまかせください。」
さてひとまずは様子見だな。
それまでに何を使うかを考えておかないと。
入れ替わるようにして外出するミラを見送り、俺はあれやこれやと思考を巡らせるのだった。
そして翌日。
早くも強発光石(面倒なので命名)の出所が判明した。
「なるほどねぇ、新しい採掘先が見つかったのか。」
「そうなのよ。まさか壁の向こう側に通路があるなんて思いもしなかったわ。」
「普段は見向きもされない素材だが、今回の流行でそれが発見されたわけだな。」
「あれだけ手当たり次第に掘ったらねぇ。」
「崩れたりしないのか?」
「その辺は一応考えてるみたいよ。で、強いほうは結構見つかってるんだけどコレをどうするの?」
調査に言ったエリザの手には強発光石が握られている。
ポンポンと手の上でお手玉するたびにチカチカと光りだす。
直視するとかなり目が痛い。
そのままでは流石に使えなさそうだ。
「こいつの中に入れてみようと思うんだが、ちょっと貸してくれ。」
エリザがぽんと投げてよこしたそれを右手で華麗にキャッチして、左手に持っていたそれに押し込む。
中々の抵抗はあったがグッと力を入れるとズポっと中に納まった。
「スライムの核ですか。」
「あぁ、今回はブルースライムの核を用意してみた。で、こいつを叩くと・・・。」
スライムの核、そのさらに中央に石が浮かんでいる。
それを上から強めに叩くと振動が伝わり石が光りだした。
「わ!綺麗です!」
「光が落ち着きましたね、コレぐらいでしたら直視しても問題ありません。」
「青い光。ということはスライムの種類を変えると色が変わるのね。」
「そういう事だ。後は発光時間の検証だが・・・。あんまり長持ちしないな。」
小さい発光石同様10秒ほどで消えてしまった。
個人的にはもう少し光って欲しいんだが、残光がある分体感的にはもう10秒ぐらいありそうだ。
「また叩けばいいじゃない。」
「継続使用には難ありだが、でもまぁ短時間での使用なら綺麗だよな。」
「そうですね、コレだけ明るければ夜中に物を探すのに使えそうです。」
「トイレに行くときに便利そう。」
「つまりそういう用途で売り出すのですね?」
「あぁ、わざわざ燃料を消費して明かりを点けなくてもコレで十分事足りることも多い。部屋の雰囲気や気分で変えても面白いかもな。」
「核の原価が銅貨20枚前後。発光石が15枚ほどですので銀貨1枚でも十分に元が取れますね。」
銀貨1枚で売って粗利が銅貨65枚。
値段が安ければそれだけ数を出さないと利益は出ないが、材料が豊富にあることを考えると大量生産も不可能じゃない。
もちろん売れるかどうかを見極めてからにはなるが、もし売れたとしてもすぐ真似されるだろう。
核に突っ込むだけだしな。
となると、短期で一気にばら撒いて利益を出すしかない。
残念ながら長期的な商売にはならなさそうだ。
「個人的にはもう少し高めに設定したいんだが、他にも使える素材があるかもしれない。もう少し手を加えてから考えよう。欲しいと思うか?」
「私は欲しいわ。ダンジョンでも使えそうだし。」
「ダンジョンで?」
「発光石って結構割れるのよ。でも核で包めば衝撃にも強そうだから通路の奥の様子を見たり、魔物をおびき出すのにも使えそうだなって。」
「確かにな。もしくはお互いの意思確認にも使えるかもしれないぞ。救援要請なら赤を投げるとかどうだ?」
「そうなるといくつもの色を持ち歩かなければなりません、邪魔にはなりませんでしょうか。」
ふむ、色々と用途は考えられそうだな。
あれやこれやと盛り上がる女達を見ながら、俺も次の流れを考えるのだった。
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