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511.転売屋は走る
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「ルフ、レイ、散歩に行くぞ。」
「わふ!」
ブンブン。
まだ夜も明けきらぬ早朝。
俺は新しく出来たばかりの靴を履いて畑へと向かった。
散歩という単語にレイは元気に返事をし、ルフは尻尾を振って応える。
この日の為に町中歩き回って靴に足を慣らした。
普通逆じゃないかって?
違うんだよな、俺が合わせるんだ。
最初は俺から合せていけば自ずと靴も合って来る。
オーダーメイドだけあって足の先は痛くないし、靴擦れも起きないぐらいにぴったりとしている。
ちゃんと靴下も履いているから問題なし。
そして迎えた今日。
いよいよこの靴の本領を発揮してもらう日が来たわけだ。
「悪いな、付き合わせて。」
「わふ?」
「なに、こっちの話だ。」
いつもの散歩であればこんな事を言う必要はないが、今日は違う。
どれぐらい歩いたら足が痛くなるのか。
この靴の限界を確かめるんだ。
その為にしっかりと準備して来た。
かばんにはしっかりと飲み物を入れ、簡単に食べられる食糧も持ってきている。
もちろんルフたちの分も忘れてはいない。
まぁ、彼女達は自分で獲物を捕まえられるから最悪現地調達してもらうって手もあるけど。
しっかりと準備運動をしてっと。
「おや、シロウ様お出かけですか?」
「あぁルフとレイと一緒にな。」
「今日は風が強くなります、くれぐれもお気を付けください。」
「焔の石も持ってるし防寒対策は大丈夫だろう、行ってくる。」
「いってらっしゃいませ。」
アグリに見送られながら俺達は走り始めた。
最初はゆっくりと、それからだんだんと速度を上げていく。
地面を蹴って体を前に飛ばし、着地した瞬間に全体重を前にずらす。
その繰り返し。
蹴って前へ、蹴って前へ、蹴って前へ、蹴って前へ。
何も考えずひたすら走り続ける。
最初こそいつもの散歩だと思っていた彼女達もだんだんと速度を上げ、俺を追い抜き先導するように走り始めた。
母親を追い抜こうとレイが速度を上げれば、それを阻止しようとルフが速度を上げる。
ヒートアップしすぎて何度も置いて行かれるが、俺は気にせずペースを維持して走り続けた。
そうすれば気付いた二匹が戻って来るから。
すごいなこの靴は。
どれだけ走っても疲れない。
いや、肉体的な疲労は勿論あるが足の疲労感が全然違う。
膝は痛くならないし、蹴った時の力を損なわずに伝える事が出来る。
オーダーメイドおそるべし。
いや、ドックの腕がいいのか。
そりゃ冒険者がこぞって注文するわけだよ。
こんなに思ったとおりに体が動くんだ、金を積んででも買うべきだな。
「少し休むか。」
「「ワフ!」」
ジョギング程度の速度が気付けばマラソン位に早くなっていた。
昔の俺だったらすぐに息切れしただろうがこの一年で大分鍛えたんでね、持久力もそこそこついている。
とはいえ一時間も走ればさすがに疲れるなぁ。
手ごろな岩があったのでそこに腰かけ、カバンから水を取り出した。
蓋を外しそのまま口へ。
水が喉を通り抜ける位に流れ込む感覚が最高に気持ちいい。
っと、飲み干す前にルフ達にも飲ませないと。
持って来た器に水を入れると二匹とも器用に舌で飲み干した。
「はぁ、身体を動かすって気持ちいいなぁ。」
アグリが言っていたように風は少し強いので普段なら肌寒く感じる気候も、火照った体を覚ますには心地がいい。
普段はあれやこれやと色々と考え込んでしまうが、走っている時はそれをしなくて済む。
無心になるのがこんなに気持ちいいなんて知らなかった。
昔はマラソン好きの気持ちが分からなかったが、この感覚を知ってしまうと彼らの気持ちがよくわかる。
仕事が忙しかったりする人ほど、何も考えない時間が欲しくなるんだろうなぁ。
そんな事を考えながら呼吸を正していると、ルフとレイがスッと立ち上がり周りの臭いをかぎ始めた。
「何かいるのか?」
ブンブン。
「魔物か?」
ブンブン。
「倒せるか?」
・・・ブン。
少し考えてからルフは一度だけ尻尾を振った。
ルフで勝てない魔物が近くにいる。
あまり考えたくないが、魔力だまりから発生した変異体という可能性もある。
そういった個体は地域の食物連鎖のバランスを壊してしまうので討伐依頼をかけられることが多いのだが、もしかするとまだ発見されていない個体なのかもしれない。
君子危うきに近寄らずってね。
ここは大人しく立ち去って・・・。
「おい。」
「わふ?」
「何やる気出してんだよ、ルフがやばいって言ってるだろ?」
それが何?とレイが首をかしげる。
冷静な母親とは対照的に、レイはやる気満々の顔をしていた。
爪を舐めストレッチするように全身を伸ばしている。
それを見てルフが小さく息を吐いたのが分かった。
母ちゃんも大変だなぁ。
「とりあえず逃げるんだよな?」
ブン。
「え、殺る気なのか?」
ブンブン。
「わふ!」
「娘が心配だから参戦するって、それ元からやる気だっただろ?」
え?何の話ですか?と言わんばかりに露骨に目線をそらしやがって。
はぁ、好きにしろ。
「一緒なら倒せるんだな?」
ブンブン。
「絶対に大丈夫なんだな?」
ブンブン。
「なら行ってこい、やるからには生きて帰れよ。俺は戦えないからな。」
期待されても俺は何もできないぞ。
なんせいつも持っている短剣すら持っていてないんだから。
草原のはるか向こうに何かの影が見える。
ルフとレイが獣の目をして、ゆっくりとその陰に近づいて行った。
ルフが正面から、レイが後ろに回り込んで襲うつもりのようだ。
俺はできるだけ距離をとり、離れた所からそれを確認する。
「ワオーン!」
ルフの遠吠えを合図に影がものすごい速度でルフへと襲いかかったのが分かった。
相手が何かはわからない。
悲鳴は聞こえないが争っていると思われる音だけが聞こえていた。
それも次第に小さくなる。
時間にして五分かそこらぐらいだろう。
「アオーン!」
「ワオーン!」
二匹の遠吠えが冬空に高らかと響いた。
どうやら無事に仕留めたらしい。
声のする方へ近づくとだんだんと血のにおいがきつくなる。
「無事か?」
「わふ!」
「ワフ。」
獲物は巨大なトラのような魔物のようだ。
『クレイジータイガー。何らかの理由で正気を失い動くものすべてに襲い掛かる魔物。主に魔力溜まりで発生し、周囲の生き物を駆逐する危険な存在でもある。』
狂ったトラとか名前に悪意を感じるな。
短剣があれば皮をはいで持ち帰ったんだが、生憎とそう言ったものは持ってきていない。
でもなかなかによさげな皮をしている。
『クレイジータイガーの皮。鮮やかな縞模様は貴族に人気が高く、生息地が固定でない為高値で売買されている。最近の平均取引価格は金貨3枚、最安値金貨1枚最高値金貨5枚最終取引日は287日前と記録されています。』
ほら、中々の高値じゃないか。
大きさは2m越え。
重さはゆうに100kgは越えているだろう。
二匹の返り血から中々壮絶な戦いだと推測できるのだが、さほど皮が傷ついていない所を見るとレイの奇襲が成功したんだろう。
狼と言ってもまだ子供。
将来有望すぎるだろう。
「さて、どうやって持って帰るか・・・。」
考え込んでいると再びルフが周りの臭いをかぎ始めた。
おい、まさか。
「まだいるのか?」
レイが身をかがめ唸り声を上げる。
ルフが俺の足を噛み、強く引っ張った。
「逃げろって?」
ブンブン。
「もちろんお前達も一緒だよな。」
ブンブンブン。
よし、ならば結構。
「わふ!」
後ずさりするレイが一声鳴いたのを合図に俺は全速力で走り出した。
俺の前をルフが、後ろをレイがピッタリとついてくる。
その後ろを何かが追ってくる気配だけはわかるが、振り返っている余裕はなかった。
止まれば死ぬ。
それだけはわかる。
今までの靴だったら途中で脱げそうになったり痛くなったかもしれないが、今回のは一味違う。
俺の命を助けてくれる最高の靴、そして彼女達が一緒なら大丈夫だ。
体力の続く限りひたすら走り続けると、だんだんと街の城壁が見えて来た。
あそこまで行けば大丈夫だ。
そう思った所で先を行くルフが突然立ち止まった。
その横を通り過ぎ走りながら後ろを振り返る。
そこには先ほど倒したはずのトラがいた。
しかも3頭も。
仲間を殺された事で怒っているのだろうか。
いや、絶対に怒ってるよな。
「絶対に死ぬなよ!」
「わふ!」
「ウォン!」
当たり前でしょと言わんばかりの軽い鳴き声を背中で聞きながら俺は速度を落とさず走り続けた。
脚は痛くない。
ただ呼吸が追い付かないだけ。
なら死ぬ気で走り続けろ。
走って走って走って、早く助けを呼ばなければ。
「え、シロウなんでそんなに・・・。」
「魔物だ!こっちに来てる!」
何とか畑の前まで来た所で脱力してしまい、その拍子で派手にこけてしまった。
様子を見に来ていたエリザが慌てた様子で駆け寄って来るも、俺の言葉を聞き目の色を変えた。
「こっちは任せて、シロウは早く中へ。」
「ルフ達を頼む。」
「まっかせなさい。」
エリザが居て本当に良かった。
アグリに引きずられるようにして立ち上がり城壁の中へ。
入れ替わるようにエリザを追いかけ警備と冒険者が走り去っていった。
「はぁ、助かった。」
新しい靴がなかったら死んでいただろう。
汚れてしまった靴を触りながら心の底からそうつぶやく。
その後トラは無事に討伐され、俺はこっぴどく怒られた。
勝手に出て行って危ない目に合った罰として俺は飯抜きにされたが、ルフとレイは毛皮を売ったお金で褒美の肉を貰ったんだとか。
「わふ!」
ブンブン。
まだ夜も明けきらぬ早朝。
俺は新しく出来たばかりの靴を履いて畑へと向かった。
散歩という単語にレイは元気に返事をし、ルフは尻尾を振って応える。
この日の為に町中歩き回って靴に足を慣らした。
普通逆じゃないかって?
違うんだよな、俺が合わせるんだ。
最初は俺から合せていけば自ずと靴も合って来る。
オーダーメイドだけあって足の先は痛くないし、靴擦れも起きないぐらいにぴったりとしている。
ちゃんと靴下も履いているから問題なし。
そして迎えた今日。
いよいよこの靴の本領を発揮してもらう日が来たわけだ。
「悪いな、付き合わせて。」
「わふ?」
「なに、こっちの話だ。」
いつもの散歩であればこんな事を言う必要はないが、今日は違う。
どれぐらい歩いたら足が痛くなるのか。
この靴の限界を確かめるんだ。
その為にしっかりと準備して来た。
かばんにはしっかりと飲み物を入れ、簡単に食べられる食糧も持ってきている。
もちろんルフたちの分も忘れてはいない。
まぁ、彼女達は自分で獲物を捕まえられるから最悪現地調達してもらうって手もあるけど。
しっかりと準備運動をしてっと。
「おや、シロウ様お出かけですか?」
「あぁルフとレイと一緒にな。」
「今日は風が強くなります、くれぐれもお気を付けください。」
「焔の石も持ってるし防寒対策は大丈夫だろう、行ってくる。」
「いってらっしゃいませ。」
アグリに見送られながら俺達は走り始めた。
最初はゆっくりと、それからだんだんと速度を上げていく。
地面を蹴って体を前に飛ばし、着地した瞬間に全体重を前にずらす。
その繰り返し。
蹴って前へ、蹴って前へ、蹴って前へ、蹴って前へ。
何も考えずひたすら走り続ける。
最初こそいつもの散歩だと思っていた彼女達もだんだんと速度を上げ、俺を追い抜き先導するように走り始めた。
母親を追い抜こうとレイが速度を上げれば、それを阻止しようとルフが速度を上げる。
ヒートアップしすぎて何度も置いて行かれるが、俺は気にせずペースを維持して走り続けた。
そうすれば気付いた二匹が戻って来るから。
すごいなこの靴は。
どれだけ走っても疲れない。
いや、肉体的な疲労は勿論あるが足の疲労感が全然違う。
膝は痛くならないし、蹴った時の力を損なわずに伝える事が出来る。
オーダーメイドおそるべし。
いや、ドックの腕がいいのか。
そりゃ冒険者がこぞって注文するわけだよ。
こんなに思ったとおりに体が動くんだ、金を積んででも買うべきだな。
「少し休むか。」
「「ワフ!」」
ジョギング程度の速度が気付けばマラソン位に早くなっていた。
昔の俺だったらすぐに息切れしただろうがこの一年で大分鍛えたんでね、持久力もそこそこついている。
とはいえ一時間も走ればさすがに疲れるなぁ。
手ごろな岩があったのでそこに腰かけ、カバンから水を取り出した。
蓋を外しそのまま口へ。
水が喉を通り抜ける位に流れ込む感覚が最高に気持ちいい。
っと、飲み干す前にルフ達にも飲ませないと。
持って来た器に水を入れると二匹とも器用に舌で飲み干した。
「はぁ、身体を動かすって気持ちいいなぁ。」
アグリが言っていたように風は少し強いので普段なら肌寒く感じる気候も、火照った体を覚ますには心地がいい。
普段はあれやこれやと色々と考え込んでしまうが、走っている時はそれをしなくて済む。
無心になるのがこんなに気持ちいいなんて知らなかった。
昔はマラソン好きの気持ちが分からなかったが、この感覚を知ってしまうと彼らの気持ちがよくわかる。
仕事が忙しかったりする人ほど、何も考えない時間が欲しくなるんだろうなぁ。
そんな事を考えながら呼吸を正していると、ルフとレイがスッと立ち上がり周りの臭いをかぎ始めた。
「何かいるのか?」
ブンブン。
「魔物か?」
ブンブン。
「倒せるか?」
・・・ブン。
少し考えてからルフは一度だけ尻尾を振った。
ルフで勝てない魔物が近くにいる。
あまり考えたくないが、魔力だまりから発生した変異体という可能性もある。
そういった個体は地域の食物連鎖のバランスを壊してしまうので討伐依頼をかけられることが多いのだが、もしかするとまだ発見されていない個体なのかもしれない。
君子危うきに近寄らずってね。
ここは大人しく立ち去って・・・。
「おい。」
「わふ?」
「何やる気出してんだよ、ルフがやばいって言ってるだろ?」
それが何?とレイが首をかしげる。
冷静な母親とは対照的に、レイはやる気満々の顔をしていた。
爪を舐めストレッチするように全身を伸ばしている。
それを見てルフが小さく息を吐いたのが分かった。
母ちゃんも大変だなぁ。
「とりあえず逃げるんだよな?」
ブン。
「え、殺る気なのか?」
ブンブン。
「わふ!」
「娘が心配だから参戦するって、それ元からやる気だっただろ?」
え?何の話ですか?と言わんばかりに露骨に目線をそらしやがって。
はぁ、好きにしろ。
「一緒なら倒せるんだな?」
ブンブン。
「絶対に大丈夫なんだな?」
ブンブン。
「なら行ってこい、やるからには生きて帰れよ。俺は戦えないからな。」
期待されても俺は何もできないぞ。
なんせいつも持っている短剣すら持っていてないんだから。
草原のはるか向こうに何かの影が見える。
ルフとレイが獣の目をして、ゆっくりとその陰に近づいて行った。
ルフが正面から、レイが後ろに回り込んで襲うつもりのようだ。
俺はできるだけ距離をとり、離れた所からそれを確認する。
「ワオーン!」
ルフの遠吠えを合図に影がものすごい速度でルフへと襲いかかったのが分かった。
相手が何かはわからない。
悲鳴は聞こえないが争っていると思われる音だけが聞こえていた。
それも次第に小さくなる。
時間にして五分かそこらぐらいだろう。
「アオーン!」
「ワオーン!」
二匹の遠吠えが冬空に高らかと響いた。
どうやら無事に仕留めたらしい。
声のする方へ近づくとだんだんと血のにおいがきつくなる。
「無事か?」
「わふ!」
「ワフ。」
獲物は巨大なトラのような魔物のようだ。
『クレイジータイガー。何らかの理由で正気を失い動くものすべてに襲い掛かる魔物。主に魔力溜まりで発生し、周囲の生き物を駆逐する危険な存在でもある。』
狂ったトラとか名前に悪意を感じるな。
短剣があれば皮をはいで持ち帰ったんだが、生憎とそう言ったものは持ってきていない。
でもなかなかによさげな皮をしている。
『クレイジータイガーの皮。鮮やかな縞模様は貴族に人気が高く、生息地が固定でない為高値で売買されている。最近の平均取引価格は金貨3枚、最安値金貨1枚最高値金貨5枚最終取引日は287日前と記録されています。』
ほら、中々の高値じゃないか。
大きさは2m越え。
重さはゆうに100kgは越えているだろう。
二匹の返り血から中々壮絶な戦いだと推測できるのだが、さほど皮が傷ついていない所を見るとレイの奇襲が成功したんだろう。
狼と言ってもまだ子供。
将来有望すぎるだろう。
「さて、どうやって持って帰るか・・・。」
考え込んでいると再びルフが周りの臭いをかぎ始めた。
おい、まさか。
「まだいるのか?」
レイが身をかがめ唸り声を上げる。
ルフが俺の足を噛み、強く引っ張った。
「逃げろって?」
ブンブン。
「もちろんお前達も一緒だよな。」
ブンブンブン。
よし、ならば結構。
「わふ!」
後ずさりするレイが一声鳴いたのを合図に俺は全速力で走り出した。
俺の前をルフが、後ろをレイがピッタリとついてくる。
その後ろを何かが追ってくる気配だけはわかるが、振り返っている余裕はなかった。
止まれば死ぬ。
それだけはわかる。
今までの靴だったら途中で脱げそうになったり痛くなったかもしれないが、今回のは一味違う。
俺の命を助けてくれる最高の靴、そして彼女達が一緒なら大丈夫だ。
体力の続く限りひたすら走り続けると、だんだんと街の城壁が見えて来た。
あそこまで行けば大丈夫だ。
そう思った所で先を行くルフが突然立ち止まった。
その横を通り過ぎ走りながら後ろを振り返る。
そこには先ほど倒したはずのトラがいた。
しかも3頭も。
仲間を殺された事で怒っているのだろうか。
いや、絶対に怒ってるよな。
「絶対に死ぬなよ!」
「わふ!」
「ウォン!」
当たり前でしょと言わんばかりの軽い鳴き声を背中で聞きながら俺は速度を落とさず走り続けた。
脚は痛くない。
ただ呼吸が追い付かないだけ。
なら死ぬ気で走り続けろ。
走って走って走って、早く助けを呼ばなければ。
「え、シロウなんでそんなに・・・。」
「魔物だ!こっちに来てる!」
何とか畑の前まで来た所で脱力してしまい、その拍子で派手にこけてしまった。
様子を見に来ていたエリザが慌てた様子で駆け寄って来るも、俺の言葉を聞き目の色を変えた。
「こっちは任せて、シロウは早く中へ。」
「ルフ達を頼む。」
「まっかせなさい。」
エリザが居て本当に良かった。
アグリに引きずられるようにして立ち上がり城壁の中へ。
入れ替わるようにエリザを追いかけ警備と冒険者が走り去っていった。
「はぁ、助かった。」
新しい靴がなかったら死んでいただろう。
汚れてしまった靴を触りながら心の底からそうつぶやく。
その後トラは無事に討伐され、俺はこっぴどく怒られた。
勝手に出て行って危ない目に合った罰として俺は飯抜きにされたが、ルフとレイは毛皮を売ったお金で褒美の肉を貰ったんだとか。
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