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499.転売屋はダンジョンから帰還する。
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ドスンという強い衝撃を足に感じた後はそのまま投げ出されるようにして地面を二転三転した。
いや、もっとかもしれないがごろごろと全身を打ち付けながら転がっているのだけはわかった。
しばらくしてそれも終わり、ドクドクと早鐘のように鳴る心臓の音で生きているのだけはわかった。
体中が痛い。
恐る恐る体を動かしてみると、痛みはあるがどこも折れている感じはなさそうだ。
『シュート』
ダンジョンに点在する罠の一つで、罠にかかった者を別の場所へと移動させる罠。
エリザから話には聞いていたけれど、まさか自分がかかることになるとは。
うかつだった。
体を起こし体の異常を確認する。
擦り傷はたくさんあるけれどひどい傷はない。
一番ひどいといえば打ち身ぐらいだろう。
それも我慢できる程度だ。
周りは先程と変わりない、いつものダンジョン。
洞窟というかトンネルというか。
土がむき出しになっており、魔灯と呼ばれる明かりがぽつぽつとついている。
だが、先程と違ってダンジョンの下層になっているはずだ。
下に行けば魔物は強くなり、実力のない者は生きて戻ることは出来なくなる。
死んだ冒険者はダンジョンに吸収され、糧になる。
そんな子供でも知っている知識を思い出し、そしてひどい後悔に襲われた。
なぜこんなことになってしまったのか。
いや、何故俺は一人で歩き出そうとなんてしてしまったのか。
ダンジョンに入ってから罠にかかるまで、必ずベッキーが先導してくれた。
それは魔物を感知するのと同時に俺が罠にかからないようにするためだ。
ベッキーが先に行くことで僅かな変化を罠が察知し作動させることが出来る。
そうする事で危険な罠を回避してあそこまで行くことが出来たんだ。
でも、俺はそれを無視した。
油断だった。
二人がいれば大丈夫なんてよくわからない自信。
まるで自分もダンジョンでやっていけると思ってしまったんだ。
でもそれが間違いだった。
俺は冒険者じゃない。
そんな奴がダンジョンの、しかも下層に一人で取り残されて生き残れるだろうか。
間違いなく無理だ。
ダンジョンの、いや冒険のイロハも知らないやつが生き残れるほどダンジョンは甘くない。
ここ最近エリザが口酸っぱく冒険者に言っている事だ。
甘く見れば命を落とす。
行くのならば調査と準備を万全に。
どんな時でも最悪を想定して動くように。
武器の練習を怠るな。
講義を聞きに行ったときに何度も何度も言っていた事だ。
ウザがられようが、笑われようが、それを言い続けることで一人でも生きて地上に戻ればそれでいい。
あいつはそういっていた。
それだけ厳しい場所なんだよ、ここは。
薄暗いダンジョン。
何度も自分の前後を確認してしまう。
魔物が来たら生きて帰れない。
その事実に思わず吐き気がこみあげてくる。
俺は死ぬ。
元の世界でもこれほどまで死の恐怖を感じることはなかった。
この世界に来てもだ。
ダンジョンの奥底に連れていかれても、必ずエリザや誰かがいた。
絶対に安全だという確信があったから、あんな場所まで行けたんだ。
でも今は違う。
守ってくれた二人とはぐれ、俺は一人きり。
とてつもない不安と恐怖に俺は自分の両肩を抱き、うずくまってしまった。
誰か。
誰か俺を助けてくれ。
声を出せば気がまぎれたかもしれないが、そんな事をしたら魔物が来てしまう。
叫びたくなる気持ちをぐっと抑え、俺はゆっくりと上を見上げ・・・。
「いたぁぁぁぁぁぁ!」
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
いきなり正面10cmの場所に人の顔があったらそりゃ叫ぶだろう。
たとえその顔を知っていても無理だ。
「静かに、静かにするし!」
慌てて口を押え呼吸を整える。
口から心臓が出そうと例えられるが、本当にそんな感じだった。
あーびっくりした。
「ベッキー、脅かすなよ・・・。」
「脅かしてないし、声をかける前に上を向いたのが悪いんだし。」
「いやまぁ、そうなんだが。」
「とりあえず無事でよかったし。」
「ありがとな。」
「気にしちゃだめだし、それにお礼ならミケに言うし。」
「ミケに?」
「どこに落ちたかすぐに感知して追いかけてくれたし。今は周りに魔物がいないか確認しに行ってくれたし。」
さっきまでの悲壮感はどこへやら。
目の前に知った顔が、ベッキーがいるだけで物凄い安心感が俺を包んでいる。
まったく、現金なもんだ。
「そうか。ともかく来てくれてよかった。」
「まったく、だから一人で行くなって言ったし。」
「面目ない。」
「普通なら助けに来れなかったし、幽霊だったことに感謝するし。」
「そういえばそうだよな。シュートは一人しか落ちない罠だから作動すればすぐに蓋が閉まり再起動することはない。どうやってって幽霊だもんな。」
そう、普通は助けに来られない。
どんな原理かはわからないが、一度作動した罠が再び稼働することはない。
一度落ちれば別れ別れになってしまうのがシュートの怖い所だ。
だが、二人は俺を助けにいてくれた。
床を、ダンジョンの中を通り抜けて。
幽霊だからできる荒業だ。
「幽霊で本当に良かったし。」
「だな。」
「ミケが戻ってきたら上に戻るし、一階層しか落ちなかったから戻るのは簡単だし。」
「ミャウ!」
「とか言ってたら戻ってきたな。ん?何か咥えているぞ。」
ミケが正面から走って戻ってくる。
口には仕留めたばかりなのか血だらけの魔物が咥えられていた。
実体化を解除すると、ドスンと床に落ちる。
いや、マジで便利だなそれ。
「モスボアだし!」
「嘘だろ。」
「嘘じゃないし。流石ミケだし、最高だし!」
「ミャ~ウ!」
どんなもんだいとミケが胸を張る。
デカい猫がお座りして胸をそらす姿はなかなかの迫力だ。
襲われないとわかっているから怖くないが、こんなのにダンジョンで出会ったら・・・。
うん、死ぬって思うわ。
ひとまずミケが持ってきたモスボアから苔を剥ぎ取り袋に入れる。
『モスボアの苔。じっとりとした場所に生息するモスボアは体に苔をはやして体温が奪われるのを防いでいる。苔は薬になるため魔物に飼われている場合もある。最近の平均取引価格は銅貨45枚、最安値銅貨32枚最高値銅貨77枚最終取引日は昨日と記録されています。』
まさか両方手に入れられるとは思わなかったが、これで特効薬が作れる。
今はビビってダンジョンに潜らない冒険者たちも、潜らなければ生活できないんだ。
薬があるとわかればまた潜ってくれるだろう。
そのためにはある程度の数が欲しい所だが・・・。
「シロウさん、ミケが向こうにまだいるって言ってるし。」
「マジか。」
「囲いの中にいるって言ってるけど、どうするし?」
「あー、魔物に飼われてるのか。」
鑑定スキルにもそんな事書いてあったな。
飼っている奴がいるってことは一匹じゃないという事だ。
複数の魔物を相手にすることになる。
それってやばくないか?
「あの程度ならミケが倒せるし?やっちゃうし?」
「ベッキーは行かないのか?」
「私が行ったら死んじゃうし!」
「いや、もう死んでるから。」
「そうだったし!」
俺を元気づけようとわざと言っているのか、それともマジなのかはわからないが真剣に驚く顔に思わず笑みがこぼれる。
俺達が相手をすることはできないが、ミケがやってくれるなら問題ない。
せっかく危険を冒してここまで来たんだ、持ち帰れるだけ持ち帰りたい。
「ミケ、頼めるか?」
「ミャウ!」
「俺達は離れたところで待ってるから、宜しく頼む。」
「ミケ頑張るし!」
応援を受けミケが壁の向こうへと消える。
しばらくして通路の奥の方から何やら騒がしい音が聞こえてきたが、それもすぐ静かになった。
「終わったみたいだし。」
「だな。」
「それじゃあさっさと回収して地上に戻るし。でも、次は勝手に動いちゃだめだし。」
「二度としないっての。」
もうこんな思いをするのはごめんだ。
通路を進むと、ミケが仕留めたモスボアの上で再びのドヤ顔をしていた。
後ろに転がる無残な死体は見ないでおこう。
ここは弱肉強食の世界だ、相手が幽霊でもやられたほうが悪い。
素材を回収して急ぎ地上へと向かう。
途中何度か魔物に襲われたが、ミケのひと睨みで逃げ出すやつもいたのでそんなに時間はかからなかった。
「やっとついたし!」
「あー、疲れた。」
馴染みのある天井。
いつものダンジョン入り口に繋がる最上階へと何とか戻ってくることが出来た。
ここには魔物はいない。
襲われる心配がないというのはなんと幸せなことだろうか。
「シロウ!」
「ん、エリザか?」
「何無茶してるのよ、この馬鹿!」
「バカはお前だ、熱あるのに何してんだよ。」
「熱なんて何よ、シロウがいなくなるのに比べたらなんてことないわ!一人でダンジョンになんて潜って・・・。って、それシロウが取ってきたの?」
「あぁ。」
「一人で?」
「そんなわけあるか、二人と一緒だよ。」
後ろを振り返り功労者である二人を見る。
実体化した二人がエリザに向かって笑顔を向けた。
「あ、そっか。」
「そういう事。でもありがとな、心配してくれて。」
恐らくは戻ってこない俺を心配して迎えに来てくれたんだろう。
顔色が少し良くなっているのでアネットの薬が効いたんだろう。
余程慌てていたのか、防具は何も身に着けず一番使い込んでいるミスリルの手斧だけを持ってきていた。
そういうところがエリザらしい。
「別に、そんなんじゃないし。」
「そういう事にしておいてやる。」
ふてくされるエリザの頭をくしゃくしゃと撫でてもう一度後ろを振り返る。
「今日はありがとな。」
「問題ないし、また何かあったらいつでもいうし。」
「ミャウ。」
二人に手を振ってエリザと共に外へと向かう。
エリザにばれてるってことは他の二人にもバレているという事だ。
怒られるだろうなぁ。
でもまぁ、それも仕方なかったんだという事で許してもらおう。
とんだ大冒険になってしまったが、それもこれにてそれも終了。
またしたいかと聞かれたらこう答えるね。
もちろん、もう二度とごめんだってね。
いや、もっとかもしれないがごろごろと全身を打ち付けながら転がっているのだけはわかった。
しばらくしてそれも終わり、ドクドクと早鐘のように鳴る心臓の音で生きているのだけはわかった。
体中が痛い。
恐る恐る体を動かしてみると、痛みはあるがどこも折れている感じはなさそうだ。
『シュート』
ダンジョンに点在する罠の一つで、罠にかかった者を別の場所へと移動させる罠。
エリザから話には聞いていたけれど、まさか自分がかかることになるとは。
うかつだった。
体を起こし体の異常を確認する。
擦り傷はたくさんあるけれどひどい傷はない。
一番ひどいといえば打ち身ぐらいだろう。
それも我慢できる程度だ。
周りは先程と変わりない、いつものダンジョン。
洞窟というかトンネルというか。
土がむき出しになっており、魔灯と呼ばれる明かりがぽつぽつとついている。
だが、先程と違ってダンジョンの下層になっているはずだ。
下に行けば魔物は強くなり、実力のない者は生きて戻ることは出来なくなる。
死んだ冒険者はダンジョンに吸収され、糧になる。
そんな子供でも知っている知識を思い出し、そしてひどい後悔に襲われた。
なぜこんなことになってしまったのか。
いや、何故俺は一人で歩き出そうとなんてしてしまったのか。
ダンジョンに入ってから罠にかかるまで、必ずベッキーが先導してくれた。
それは魔物を感知するのと同時に俺が罠にかからないようにするためだ。
ベッキーが先に行くことで僅かな変化を罠が察知し作動させることが出来る。
そうする事で危険な罠を回避してあそこまで行くことが出来たんだ。
でも、俺はそれを無視した。
油断だった。
二人がいれば大丈夫なんてよくわからない自信。
まるで自分もダンジョンでやっていけると思ってしまったんだ。
でもそれが間違いだった。
俺は冒険者じゃない。
そんな奴がダンジョンの、しかも下層に一人で取り残されて生き残れるだろうか。
間違いなく無理だ。
ダンジョンの、いや冒険のイロハも知らないやつが生き残れるほどダンジョンは甘くない。
ここ最近エリザが口酸っぱく冒険者に言っている事だ。
甘く見れば命を落とす。
行くのならば調査と準備を万全に。
どんな時でも最悪を想定して動くように。
武器の練習を怠るな。
講義を聞きに行ったときに何度も何度も言っていた事だ。
ウザがられようが、笑われようが、それを言い続けることで一人でも生きて地上に戻ればそれでいい。
あいつはそういっていた。
それだけ厳しい場所なんだよ、ここは。
薄暗いダンジョン。
何度も自分の前後を確認してしまう。
魔物が来たら生きて帰れない。
その事実に思わず吐き気がこみあげてくる。
俺は死ぬ。
元の世界でもこれほどまで死の恐怖を感じることはなかった。
この世界に来てもだ。
ダンジョンの奥底に連れていかれても、必ずエリザや誰かがいた。
絶対に安全だという確信があったから、あんな場所まで行けたんだ。
でも今は違う。
守ってくれた二人とはぐれ、俺は一人きり。
とてつもない不安と恐怖に俺は自分の両肩を抱き、うずくまってしまった。
誰か。
誰か俺を助けてくれ。
声を出せば気がまぎれたかもしれないが、そんな事をしたら魔物が来てしまう。
叫びたくなる気持ちをぐっと抑え、俺はゆっくりと上を見上げ・・・。
「いたぁぁぁぁぁぁ!」
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
いきなり正面10cmの場所に人の顔があったらそりゃ叫ぶだろう。
たとえその顔を知っていても無理だ。
「静かに、静かにするし!」
慌てて口を押え呼吸を整える。
口から心臓が出そうと例えられるが、本当にそんな感じだった。
あーびっくりした。
「ベッキー、脅かすなよ・・・。」
「脅かしてないし、声をかける前に上を向いたのが悪いんだし。」
「いやまぁ、そうなんだが。」
「とりあえず無事でよかったし。」
「ありがとな。」
「気にしちゃだめだし、それにお礼ならミケに言うし。」
「ミケに?」
「どこに落ちたかすぐに感知して追いかけてくれたし。今は周りに魔物がいないか確認しに行ってくれたし。」
さっきまでの悲壮感はどこへやら。
目の前に知った顔が、ベッキーがいるだけで物凄い安心感が俺を包んでいる。
まったく、現金なもんだ。
「そうか。ともかく来てくれてよかった。」
「まったく、だから一人で行くなって言ったし。」
「面目ない。」
「普通なら助けに来れなかったし、幽霊だったことに感謝するし。」
「そういえばそうだよな。シュートは一人しか落ちない罠だから作動すればすぐに蓋が閉まり再起動することはない。どうやってって幽霊だもんな。」
そう、普通は助けに来られない。
どんな原理かはわからないが、一度作動した罠が再び稼働することはない。
一度落ちれば別れ別れになってしまうのがシュートの怖い所だ。
だが、二人は俺を助けにいてくれた。
床を、ダンジョンの中を通り抜けて。
幽霊だからできる荒業だ。
「幽霊で本当に良かったし。」
「だな。」
「ミケが戻ってきたら上に戻るし、一階層しか落ちなかったから戻るのは簡単だし。」
「ミャウ!」
「とか言ってたら戻ってきたな。ん?何か咥えているぞ。」
ミケが正面から走って戻ってくる。
口には仕留めたばかりなのか血だらけの魔物が咥えられていた。
実体化を解除すると、ドスンと床に落ちる。
いや、マジで便利だなそれ。
「モスボアだし!」
「嘘だろ。」
「嘘じゃないし。流石ミケだし、最高だし!」
「ミャ~ウ!」
どんなもんだいとミケが胸を張る。
デカい猫がお座りして胸をそらす姿はなかなかの迫力だ。
襲われないとわかっているから怖くないが、こんなのにダンジョンで出会ったら・・・。
うん、死ぬって思うわ。
ひとまずミケが持ってきたモスボアから苔を剥ぎ取り袋に入れる。
『モスボアの苔。じっとりとした場所に生息するモスボアは体に苔をはやして体温が奪われるのを防いでいる。苔は薬になるため魔物に飼われている場合もある。最近の平均取引価格は銅貨45枚、最安値銅貨32枚最高値銅貨77枚最終取引日は昨日と記録されています。』
まさか両方手に入れられるとは思わなかったが、これで特効薬が作れる。
今はビビってダンジョンに潜らない冒険者たちも、潜らなければ生活できないんだ。
薬があるとわかればまた潜ってくれるだろう。
そのためにはある程度の数が欲しい所だが・・・。
「シロウさん、ミケが向こうにまだいるって言ってるし。」
「マジか。」
「囲いの中にいるって言ってるけど、どうするし?」
「あー、魔物に飼われてるのか。」
鑑定スキルにもそんな事書いてあったな。
飼っている奴がいるってことは一匹じゃないという事だ。
複数の魔物を相手にすることになる。
それってやばくないか?
「あの程度ならミケが倒せるし?やっちゃうし?」
「ベッキーは行かないのか?」
「私が行ったら死んじゃうし!」
「いや、もう死んでるから。」
「そうだったし!」
俺を元気づけようとわざと言っているのか、それともマジなのかはわからないが真剣に驚く顔に思わず笑みがこぼれる。
俺達が相手をすることはできないが、ミケがやってくれるなら問題ない。
せっかく危険を冒してここまで来たんだ、持ち帰れるだけ持ち帰りたい。
「ミケ、頼めるか?」
「ミャウ!」
「俺達は離れたところで待ってるから、宜しく頼む。」
「ミケ頑張るし!」
応援を受けミケが壁の向こうへと消える。
しばらくして通路の奥の方から何やら騒がしい音が聞こえてきたが、それもすぐ静かになった。
「終わったみたいだし。」
「だな。」
「それじゃあさっさと回収して地上に戻るし。でも、次は勝手に動いちゃだめだし。」
「二度としないっての。」
もうこんな思いをするのはごめんだ。
通路を進むと、ミケが仕留めたモスボアの上で再びのドヤ顔をしていた。
後ろに転がる無残な死体は見ないでおこう。
ここは弱肉強食の世界だ、相手が幽霊でもやられたほうが悪い。
素材を回収して急ぎ地上へと向かう。
途中何度か魔物に襲われたが、ミケのひと睨みで逃げ出すやつもいたのでそんなに時間はかからなかった。
「やっとついたし!」
「あー、疲れた。」
馴染みのある天井。
いつものダンジョン入り口に繋がる最上階へと何とか戻ってくることが出来た。
ここには魔物はいない。
襲われる心配がないというのはなんと幸せなことだろうか。
「シロウ!」
「ん、エリザか?」
「何無茶してるのよ、この馬鹿!」
「バカはお前だ、熱あるのに何してんだよ。」
「熱なんて何よ、シロウがいなくなるのに比べたらなんてことないわ!一人でダンジョンになんて潜って・・・。って、それシロウが取ってきたの?」
「あぁ。」
「一人で?」
「そんなわけあるか、二人と一緒だよ。」
後ろを振り返り功労者である二人を見る。
実体化した二人がエリザに向かって笑顔を向けた。
「あ、そっか。」
「そういう事。でもありがとな、心配してくれて。」
恐らくは戻ってこない俺を心配して迎えに来てくれたんだろう。
顔色が少し良くなっているのでアネットの薬が効いたんだろう。
余程慌てていたのか、防具は何も身に着けず一番使い込んでいるミスリルの手斧だけを持ってきていた。
そういうところがエリザらしい。
「別に、そんなんじゃないし。」
「そういう事にしておいてやる。」
ふてくされるエリザの頭をくしゃくしゃと撫でてもう一度後ろを振り返る。
「今日はありがとな。」
「問題ないし、また何かあったらいつでもいうし。」
「ミャウ。」
二人に手を振ってエリザと共に外へと向かう。
エリザにばれてるってことは他の二人にもバレているという事だ。
怒られるだろうなぁ。
でもまぁ、それも仕方なかったんだという事で許してもらおう。
とんだ大冒険になってしまったが、それもこれにてそれも終了。
またしたいかと聞かれたらこう答えるね。
もちろん、もう二度とごめんだってね。
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