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485.転売屋は使用人たちの様子を確認する
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「シロウ様おかえりなさい。」
「お帰りってのはまだなれないな。」
「ここはシロウ様のお屋敷でもあるんですから。」
「まぁそうだが・・・。」
ハーシェさんの様子を見に屋敷へ行くと、入って直ぐ本人に出迎えられてしまった。
どうやら散歩に出ていたらしい。
「今日はどうされたんですか?」
「様子を見に来たという名のサボりだ。」
「ふふ、いけない人。」
「たまにはいいだろ?」
「結構な頻度だと思いますが、でもいいと思います。」
「みんなの様子はどうだ?もう慣れたか?」
ハーシェさんの様子を見に来たというのは間違いない。
それに加えて使用人達の様子も気になったので見に来たというワケだ。
出迎えはない。
そりゃそうだ、あの人数でこの屋敷を管理しているんだから出迎えられても・・・。
「お館様お帰りなさいませ。」
「・・・今まで居なかったよな?」
「気配を感じましたので。」
「そうか。」
何時の間にやって来ていたのか、グレイスがハーシェさんの傍に控えていた。
気配を感じたって、忍者か何かでしょうか。
「グレイスは昔冒険者だったそうですよ、それも上級一歩手前だったとか。」
「お恥ずかしい、エリザ様の足元にも及びません。」
「なんでこの仕事に?」
「女が生きていくには難しい仕事でしたから、自分の特技を生かしておりますといつの間にかこの年になっておりました。」
「なるほど?」
「さぁあまり風に当るとお体に障ります、お館様もどうぞ中へ。」
それもそうだな。
エントランスを通り抜け食堂へ。
扉を開けると中からいい香りが漂ってきた。
これは・・・鰹出汁か?
「ハワード、奥様とお館様が参られました。香茶をお出しして。」
「主様ちょうどいい所に、ちょっと味を見てください。」
「ハワード。」
「まぁまぁいいじゃないか、研究熱心なのはいい事だ。今そっちにいく。」
厨房から顔をのぞかせたハワードが子供みたいに嬉しそうな顔をする。
料理のこととなると人が変わるな。
やれやれという顔をするグレイスを制して厨房に入ると、出汁の香りがより濃くなった。
「一番出汁か?」
「置いておけば色々使えますからね、どうですか?」
小皿を受け取りその上に注がれた出汁を口に含む。
凝縮された鰹節のいい香りが口全体に広がり、そのままのどの奥へと消えていく。
雑味の無い非常に良い出汁だ。
教えてからまだ一週間ほど。
流石何でも作れると自負する料理人だ、もう俺よりも上手に出汁をとっている。
「美味い。」
「へへ、今日のは自信あったんですよ。」
「今日の夕食が楽しみだな。」
「奥方様もコレだけは飲めますからね、悪阻が治まるまで頑張りますよ。」
「よろしく頼むな。」
「そうだ、香茶でしたよね。直ぐ淹れます。」
「いや、そっちに集中してくれ俺がやろう。」
一番出汁をとって終わりではない。
二番出汁だって中々に使えるんだ。
今度はハワードを制して手際よく香茶を注ぐ。
おや、どうやら茶葉を変えたらしい。
いつもよりもスッキリとした香りがする。
「お館様自ら香茶を淹れられるなんて、まったく。」
「いいじゃないか。ほら、グレイスの分もあるぞ。」
「いえ、私はまだ・・・。」
「あ、お館様と奥様だ!」
「こらジョン!」
「お、キルシュとジョン一緒にどうだ?」
ハワードはまだかかるだろうから二人も一緒に誘ってみた。
それを聞いてまたぐグレイスが微妙な顔をする。
それもそうか、仕事をさせていたのに自分の主人がそれをサボらせているんだから。
でも俺は自重しない。
「お菓子ある?」
「あるぞ。・・・あるよな?」
「取引先から頂いたお菓子があったはずです。」
「厨房の右奥の戸棚に入っています。まったく、お館様には困ります。」
「まぁまぁグレイス良いじゃありませんか。」
という事で即席のお茶会が始まった。
とはいえハワードとミミィは不参加なので簡単なものだが。
目の前に並べられたお菓子に目を輝かすジョンとは対照的に緊張した面持ちのキルシュ。
グレイスは無言で香茶を口に運んでいた。
「どうだ、仕事には慣れたか?」
「まだまだ失敗は多いんですけど、少しは。」
「お掃除楽しいよ!」
「と、言ってるが実際どうなんだ?」
「未熟な部分は多くありますが年齢を考えれば頑張っている方かと。文句も言わずよく動いています。ジョンにはまだまだ教育が足りていませんがキルシュは良くやっていますよ。」
「ありがとうございますグレイス様。」
「僕、ダメ?」
「ダメじゃないぞ。だが仕事する時は遊ばないようにな、じゃないとこの前みたいになるぞ。」
この前廊下に置いてあった壷を割ってしまったらしい。
元々はウィフさんの奴なので全然気にしていないのだが、あの人の持ち物だけあってかなり高価だったそうだ。
値段を聞いて真っ青な顔をする二人。
とはいえ弁償させる気もないのでその時は不問にしたのだがその日以降しばらくはジョンの動きがぎこちなかったんだとか。
まぁ無理ないよな。
「気をつけます。」
「ならばよし。お菓子食べて良いぞ。」
「はい!」
嬉しそうにお菓子を頬張るジョンと、口に付いた食べかすを何も言わずに取ってやるキルシュ。
この二人を見ていると本当に幸せな気分になる。
あの時二人一緒に雇った選択は間違いなかったな。
「グレイスはどうだ?この屋敷の広さだとやはり人は足りないか?」
「正直に申しまして足りておりません。しかしながら全室使用しているわけではありませんので、現在の稼働状況を考えればギリギリという所でしょう。今後人が増えるのであればそれに合わせて二人ずつ増やしていただければ問題ありません。」
「となると、うちの四人が増えると8人か?」
「いえ、今の奥方様方を考慮しての人数です。」
「つまり新たにシロウ様が女性を増やされたらですね。」
「マリー様はアニエス様がおられますので問題ないでしょう。むしろ、来てくださるのであれば非常に助かります。」
「とはいえ向こうも屋敷持ちだからなぁ。」
ハーシェさんのように子供が出来たら来るかもしれないが、当分は無いだろう。
たぶん。
当番制になるらしいからその分的中度も下がるはずだ。
ハーシェさんはなんていうか、濃い時間だったからなぁ。
誰かを孕ますなんて初めての経験だ。
それが今後もあると考えると、なんていうかこそばゆい感じがする。
征服感とか達成感とかそういうのじゃないんだよな。
「当面はこの人数で問題ありませんのでご心配されなくても大丈夫です。」
「何かあればすぐハーシェさんに言ってくれ、大抵の物は準備させる。」
「ありがとうございます。」
「そういや、ミミィはどうしたんだ?」
「彼女には買出しを頼んでおります。もうそろそろ帰ってくると思うのですが・・・。」
「さっき出かけに追加を頼んだのでもう少しかかるかもしれません。」
「ハワード、また食材を頼んだのですか?」
「いやー、あはは。」
「いくら好きに食材を使えるからといっても限度があります。今後必要以上の食材は貴方の給金から天引きとしましょう。」
「そ、それだけは勘弁してください。」
なるほど、厨房に入った時に見えた豊富な食材はハワードが手配した奴か。
確かに多いかもしれないが無駄遣いはしていないようだし、ここの人数なら問題はないだろう。
「ハワードは私の為に色々工夫してくれているだけですから、大目に見てあげてください。」
「奥様まで。」
「いいじゃないか、無駄にするならともかく良い食事はいい仕事には必須だ。不味くはないんだろ?」
「ハワードの御飯とっても美味しいよ!」
「お、ジョンよく言った!」
「えへへ。」
「だから嫌いなグリーンパッペリカも食べられるよな。」
パッペリカはピーマンみたいな食べ物だ。
子供は苦手だよなぁ。
「好き嫌いは許しません、ジョンちゃんと食べなさい。」
「は~い。」
「私も・・・がんばります。」
「なんだキルシュも苦手なのか?」
「ちょっと。」
「ミミィを見習えよ、あいつなんでも食べるから作り甲斐がある。」
「あの子は少し食べすぎです。」
「グレイスももう少し食べた方がいいのでは?」
「あまり食べるとお腹につきますから。」
そういうのを気にする年・・・いや、女性は常に気にするか。
俺だって元の世界だったら自分の腹を見てため息をついたものだ。
女性ならなおのこと気にするだろう。
「ただいま戻りました!」
とか何とか言っていたら裏口から元気な声が聞こえてきた。
「お、戻ってきたみたいだな。」
「ハワードさん!頼まれていた高級食材、見つけましたよ褒めて下さい!」
「高級。」「食材?」
ハーシェさんと俺は二人で顔を見合わせ、ハワードの方を見る。
明らかに顔色が悪い。
更に言えば目線を合わせようとしない。
ふむ、コレは色々聞き出した方がよさそうだな。
「あれ、皆さんどうして食堂に?あ!お館様に奥様まで!」
「ミミィ買って来た物をここへ持ってきなさい。」
「え、でもお二人が・・・。」
「良いからもってこい。」
「わかりました!」
グレイスさんに言われてミミィが大荷物を持って来る。
良くこの小さい身体でコレだけの荷物が持てるよなぁ。
「お、俺は出汁の確認を・・・。」
「ハワード。」
「はい。」
グレイスさんの手にはこの時期ではダンジョン内でしか採れないであろう、鮮やかな色をした果物が握られていた。
うん、見るからに高そうだ。
銀貨3枚って所かな。
刺すような視線に逃げようとしたハワードが戻ってくる。
椅子に座らされ質問という名の説教が始まった。
「あの、私何か悪い事しましたか?」
「いいや問題ないぞ、ご苦労だった。」
「お疲れ様ミミィちゃん、お菓子食べて良いですよ。」
「やった!いただきます!」
「あ、それ僕の!」
「ジョンはさっき食べたじゃない。」
「でも~!」
「喧嘩するな、全部食べて良いから安心しろ。」
「はい!」
青い顔で震えるハワードとは対照的に他の三人は仲良くお菓子を頬張っている。
なんとか馴染んでくれているようだ。
仕事はしっかり出来ても中が悪いと空気も悪くなる。
どうやらその心配は無さそうだ。
後ろの二人?
あぁ、アレは放っておけ。
ハワードが悪い。
それからしばらく暗い顔をしたハワードが目撃されたそうだが、食事は豪華だったとハーシェさんが教えてくれた。
「お帰りってのはまだなれないな。」
「ここはシロウ様のお屋敷でもあるんですから。」
「まぁそうだが・・・。」
ハーシェさんの様子を見に屋敷へ行くと、入って直ぐ本人に出迎えられてしまった。
どうやら散歩に出ていたらしい。
「今日はどうされたんですか?」
「様子を見に来たという名のサボりだ。」
「ふふ、いけない人。」
「たまにはいいだろ?」
「結構な頻度だと思いますが、でもいいと思います。」
「みんなの様子はどうだ?もう慣れたか?」
ハーシェさんの様子を見に来たというのは間違いない。
それに加えて使用人達の様子も気になったので見に来たというワケだ。
出迎えはない。
そりゃそうだ、あの人数でこの屋敷を管理しているんだから出迎えられても・・・。
「お館様お帰りなさいませ。」
「・・・今まで居なかったよな?」
「気配を感じましたので。」
「そうか。」
何時の間にやって来ていたのか、グレイスがハーシェさんの傍に控えていた。
気配を感じたって、忍者か何かでしょうか。
「グレイスは昔冒険者だったそうですよ、それも上級一歩手前だったとか。」
「お恥ずかしい、エリザ様の足元にも及びません。」
「なんでこの仕事に?」
「女が生きていくには難しい仕事でしたから、自分の特技を生かしておりますといつの間にかこの年になっておりました。」
「なるほど?」
「さぁあまり風に当るとお体に障ります、お館様もどうぞ中へ。」
それもそうだな。
エントランスを通り抜け食堂へ。
扉を開けると中からいい香りが漂ってきた。
これは・・・鰹出汁か?
「ハワード、奥様とお館様が参られました。香茶をお出しして。」
「主様ちょうどいい所に、ちょっと味を見てください。」
「ハワード。」
「まぁまぁいいじゃないか、研究熱心なのはいい事だ。今そっちにいく。」
厨房から顔をのぞかせたハワードが子供みたいに嬉しそうな顔をする。
料理のこととなると人が変わるな。
やれやれという顔をするグレイスを制して厨房に入ると、出汁の香りがより濃くなった。
「一番出汁か?」
「置いておけば色々使えますからね、どうですか?」
小皿を受け取りその上に注がれた出汁を口に含む。
凝縮された鰹節のいい香りが口全体に広がり、そのままのどの奥へと消えていく。
雑味の無い非常に良い出汁だ。
教えてからまだ一週間ほど。
流石何でも作れると自負する料理人だ、もう俺よりも上手に出汁をとっている。
「美味い。」
「へへ、今日のは自信あったんですよ。」
「今日の夕食が楽しみだな。」
「奥方様もコレだけは飲めますからね、悪阻が治まるまで頑張りますよ。」
「よろしく頼むな。」
「そうだ、香茶でしたよね。直ぐ淹れます。」
「いや、そっちに集中してくれ俺がやろう。」
一番出汁をとって終わりではない。
二番出汁だって中々に使えるんだ。
今度はハワードを制して手際よく香茶を注ぐ。
おや、どうやら茶葉を変えたらしい。
いつもよりもスッキリとした香りがする。
「お館様自ら香茶を淹れられるなんて、まったく。」
「いいじゃないか。ほら、グレイスの分もあるぞ。」
「いえ、私はまだ・・・。」
「あ、お館様と奥様だ!」
「こらジョン!」
「お、キルシュとジョン一緒にどうだ?」
ハワードはまだかかるだろうから二人も一緒に誘ってみた。
それを聞いてまたぐグレイスが微妙な顔をする。
それもそうか、仕事をさせていたのに自分の主人がそれをサボらせているんだから。
でも俺は自重しない。
「お菓子ある?」
「あるぞ。・・・あるよな?」
「取引先から頂いたお菓子があったはずです。」
「厨房の右奥の戸棚に入っています。まったく、お館様には困ります。」
「まぁまぁグレイス良いじゃありませんか。」
という事で即席のお茶会が始まった。
とはいえハワードとミミィは不参加なので簡単なものだが。
目の前に並べられたお菓子に目を輝かすジョンとは対照的に緊張した面持ちのキルシュ。
グレイスは無言で香茶を口に運んでいた。
「どうだ、仕事には慣れたか?」
「まだまだ失敗は多いんですけど、少しは。」
「お掃除楽しいよ!」
「と、言ってるが実際どうなんだ?」
「未熟な部分は多くありますが年齢を考えれば頑張っている方かと。文句も言わずよく動いています。ジョンにはまだまだ教育が足りていませんがキルシュは良くやっていますよ。」
「ありがとうございますグレイス様。」
「僕、ダメ?」
「ダメじゃないぞ。だが仕事する時は遊ばないようにな、じゃないとこの前みたいになるぞ。」
この前廊下に置いてあった壷を割ってしまったらしい。
元々はウィフさんの奴なので全然気にしていないのだが、あの人の持ち物だけあってかなり高価だったそうだ。
値段を聞いて真っ青な顔をする二人。
とはいえ弁償させる気もないのでその時は不問にしたのだがその日以降しばらくはジョンの動きがぎこちなかったんだとか。
まぁ無理ないよな。
「気をつけます。」
「ならばよし。お菓子食べて良いぞ。」
「はい!」
嬉しそうにお菓子を頬張るジョンと、口に付いた食べかすを何も言わずに取ってやるキルシュ。
この二人を見ていると本当に幸せな気分になる。
あの時二人一緒に雇った選択は間違いなかったな。
「グレイスはどうだ?この屋敷の広さだとやはり人は足りないか?」
「正直に申しまして足りておりません。しかしながら全室使用しているわけではありませんので、現在の稼働状況を考えればギリギリという所でしょう。今後人が増えるのであればそれに合わせて二人ずつ増やしていただければ問題ありません。」
「となると、うちの四人が増えると8人か?」
「いえ、今の奥方様方を考慮しての人数です。」
「つまり新たにシロウ様が女性を増やされたらですね。」
「マリー様はアニエス様がおられますので問題ないでしょう。むしろ、来てくださるのであれば非常に助かります。」
「とはいえ向こうも屋敷持ちだからなぁ。」
ハーシェさんのように子供が出来たら来るかもしれないが、当分は無いだろう。
たぶん。
当番制になるらしいからその分的中度も下がるはずだ。
ハーシェさんはなんていうか、濃い時間だったからなぁ。
誰かを孕ますなんて初めての経験だ。
それが今後もあると考えると、なんていうかこそばゆい感じがする。
征服感とか達成感とかそういうのじゃないんだよな。
「当面はこの人数で問題ありませんのでご心配されなくても大丈夫です。」
「何かあればすぐハーシェさんに言ってくれ、大抵の物は準備させる。」
「ありがとうございます。」
「そういや、ミミィはどうしたんだ?」
「彼女には買出しを頼んでおります。もうそろそろ帰ってくると思うのですが・・・。」
「さっき出かけに追加を頼んだのでもう少しかかるかもしれません。」
「ハワード、また食材を頼んだのですか?」
「いやー、あはは。」
「いくら好きに食材を使えるからといっても限度があります。今後必要以上の食材は貴方の給金から天引きとしましょう。」
「そ、それだけは勘弁してください。」
なるほど、厨房に入った時に見えた豊富な食材はハワードが手配した奴か。
確かに多いかもしれないが無駄遣いはしていないようだし、ここの人数なら問題はないだろう。
「ハワードは私の為に色々工夫してくれているだけですから、大目に見てあげてください。」
「奥様まで。」
「いいじゃないか、無駄にするならともかく良い食事はいい仕事には必須だ。不味くはないんだろ?」
「ハワードの御飯とっても美味しいよ!」
「お、ジョンよく言った!」
「えへへ。」
「だから嫌いなグリーンパッペリカも食べられるよな。」
パッペリカはピーマンみたいな食べ物だ。
子供は苦手だよなぁ。
「好き嫌いは許しません、ジョンちゃんと食べなさい。」
「は~い。」
「私も・・・がんばります。」
「なんだキルシュも苦手なのか?」
「ちょっと。」
「ミミィを見習えよ、あいつなんでも食べるから作り甲斐がある。」
「あの子は少し食べすぎです。」
「グレイスももう少し食べた方がいいのでは?」
「あまり食べるとお腹につきますから。」
そういうのを気にする年・・・いや、女性は常に気にするか。
俺だって元の世界だったら自分の腹を見てため息をついたものだ。
女性ならなおのこと気にするだろう。
「ただいま戻りました!」
とか何とか言っていたら裏口から元気な声が聞こえてきた。
「お、戻ってきたみたいだな。」
「ハワードさん!頼まれていた高級食材、見つけましたよ褒めて下さい!」
「高級。」「食材?」
ハーシェさんと俺は二人で顔を見合わせ、ハワードの方を見る。
明らかに顔色が悪い。
更に言えば目線を合わせようとしない。
ふむ、コレは色々聞き出した方がよさそうだな。
「あれ、皆さんどうして食堂に?あ!お館様に奥様まで!」
「ミミィ買って来た物をここへ持ってきなさい。」
「え、でもお二人が・・・。」
「良いからもってこい。」
「わかりました!」
グレイスさんに言われてミミィが大荷物を持って来る。
良くこの小さい身体でコレだけの荷物が持てるよなぁ。
「お、俺は出汁の確認を・・・。」
「ハワード。」
「はい。」
グレイスさんの手にはこの時期ではダンジョン内でしか採れないであろう、鮮やかな色をした果物が握られていた。
うん、見るからに高そうだ。
銀貨3枚って所かな。
刺すような視線に逃げようとしたハワードが戻ってくる。
椅子に座らされ質問という名の説教が始まった。
「あの、私何か悪い事しましたか?」
「いいや問題ないぞ、ご苦労だった。」
「お疲れ様ミミィちゃん、お菓子食べて良いですよ。」
「やった!いただきます!」
「あ、それ僕の!」
「ジョンはさっき食べたじゃない。」
「でも~!」
「喧嘩するな、全部食べて良いから安心しろ。」
「はい!」
青い顔で震えるハワードとは対照的に他の三人は仲良くお菓子を頬張っている。
なんとか馴染んでくれているようだ。
仕事はしっかり出来ても中が悪いと空気も悪くなる。
どうやらその心配は無さそうだ。
後ろの二人?
あぁ、アレは放っておけ。
ハワードが悪い。
それからしばらく暗い顔をしたハワードが目撃されたそうだが、食事は豪華だったとハーシェさんが教えてくれた。
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