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465.転売屋は再び出会う
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「わふぅ。」
「どうした、レイ。」
いつものように畑の周りを散歩していると、突然レイが一声鳴いて注意を促してきた。
ちなみにルフは寒いので小屋で待機中。
この先にあるのは例のカニバフラワーだが、誰か引っかかったんだろうか。
ゆっくりと近づくもそれらしい跡はない。
足元も血に染まっていないので魔物が食われた感じでもなさそうだ。
いつものように大きな口がこっちを向いて・・・。
ん?
一匹口が閉じている。
いつもは口を開けて出迎えてくれるはずなのに、一匹だけもごもごと口を動かしていた。
近づくと口の端に何か引っかかっている。
アレは・・・足?
なんだろう前にもおなじようなことがあったよな。
「ちょいとすまん。」
もぐもぐしている口をこじ開けると、唾液まみれの小人が現れた。
意識はないがまだ生きてはいるようだ。
小さくてわかりにくいが僅かに胸が上下している。
これは食べているというか溶かしている感じだな。
この見た目じゃ食べ応えもなさそうだし、魔力でも吸っていたんだろう。
無理やりエサ?を取られてそいつがカカカカと歯を鳴らして文句を言うので、仕方なくポケットに入れていた干し肉を放りこんでやった。
すると、満足そうにもぐもぐと口を動かす。
そしてそれを見たほかのやつが、うらやましそうにそいつの方を見ていた。
まぁ、こうなるよな。
ルフのおやつだったんだけど散歩してないし構わないだろう。
「さて、こいつをどうするか。」
「わふぅ。」
「そうだな、とりあえず洗ってやるか。」
見た感じ女の子のようだし、いくら何でも唾液まみれってのは可愛そうだ。
店に戻ってミラに何とかしてもらおう。
レイを小屋に戻し小走りで店へと戻る。
その間も少女が目覚めることはなかった。
「ただいま。」
「お帰りなさいませ、どうされたんですがそんなに息を切らせて。」
「いやな、変なのを救ったもんでさ。」
「変なの?」
「とりあえずお湯を沸かしてくれ、あぁ人肌ぐらいで。それと洗面器も頼む。」
ミラとアネットは不思議そうな顔をするものの、すぐに準備を始めてくれた。
普通はあれこれ聞いてきそうなものだがありがたいことだ。
懐から少女を取り出しカウンターの上に乗せる。
唾液まみれのハンカチはそのまま洗濯すればいいだろう。
血はついていないので噛まれた感じではなさそうだ。
「わ!妖精ですか!?」
「おそらくな、前に助けた雪の妖精によく似ている。」
前の奴は男だったから別の妖精だろう。
また次の冬にとか言っていたが、元気しているんだろうか。
っていうかこの手の奴らは食われないと気がすまないのか?
「怪我はしていないようですね。」
「カニバフラワーに甘噛みされていたようだ、とりあえず綺麗にしてやってくれ。」
「だからお湯を用意させたんですね。」
「一応女だからな、後で文句言われても困るしよろしく頼む。」
「かしこまりました。ミラ様!とっても可愛いですよ!」
アネットが人形を抱くようにして裏へと戻っていく。
はぁ、これでひとまずおっけーっと。
ぶら下げていた看板を休憩中に変えようと扉に近づいたその時だった。
バンバンとガラスを叩く音がした。
が、向こう側に人の姿は見えない。
気のせいかと思ったがもう一度同じ音がする。
ガキ共がいたずらをしているのかもしれない。
下に隠れたら見えないんだよな、ここ。
なので、取る方法は一つ。
少し間を開けて、一気に開く!
が、何もいなかった。
「おかしいな・・・。」
「ちょっと、危ないじゃない!」
「うぉぁ!」
誰もいないと安心したのもつかの間、何かが俺の顔にへばりついてくる。
慌てて扉を閉めて、へばりついてきた何かをひっぺがした。
「なんだぁ?」
「離して!パルルを返してください!?」
「小人?いや、妖精か。」
「いいから離して・・・って、貴方は!?」
ん?
親指と人差し指でつまんだ小さな人形・・・じゃなかった妖精が俺を指さしてくる。
小さな羽を必死に動かしているがその程度で逃げられるはずもない。
っていうか人を指さすなっての。
「俺か?」
「私です!ポポルです!」
「知らん。」
「えぇぇぇぇ!去年会ったじゃないですか!もう忘れたんですか!?」
はて、こんな小さい知り合いがいたっけか。
確かにカニバフラワーに食われかけたちっこいのを助けたが、名前は知らない。
だって名乗られなかったし。
「雪の妖精には会ったが名前は知らないなぁ。」
「それが私です!」
「だから?」
「だからあの子を返して・・・って、あれ?もしかして?」
「何を早とちりしているかは知らないが、探している奴は無事だ。まったく、雪妖精ってやつはそんなにあの花に食われるのが好きなのか?」
「そ、そういうわけじゃないんですけど・・・・。」
どうやら誤解は解けたらしい。
大人しくなったので手を離してやると、ふわふわと俺の目線まで浮かび上がった。
「落ち着いたか?」
「はい、誠に申し訳なく。」
「確かにまた冬に来るって言っていたが、まさか仲間が来るとはな。しかも食われかけてるし。」
「あははは・・・。」
「まぁ無事で何よりだ。今向こうで風呂に・・・。」
「ふわぁぁぁぁぁ!何ですか!?なんなんですか!?なんでお風呂なんですか!?すっごい気持ちいいんですけど!」
「起きたみたいだな。」
「ですね。」
あの小さいからだからどうやってそんなデカい声が出るんだろうか。
これだけ離れていたのに耳がきーんとなってるんだが。
ポポルが申し訳なさそうな顔をしながら、店の裏へと飛んでいく。
おい、今行くと・・・。
「ポポルのエッチ!」
「いたい!」
ほら見ろ。
叫びはするが向こうは風呂中だ。
そりゃいきなり行ったらそうなるだろ。
「どうか落ち着いてください、我々はカニバフラワーに食べられそうになっていた貴女を助けただけです。危害を加える気はありません。」
「え、助けてくれたんですか?」
「助けなければ今ごろそこに置いてある服のようにどろどろに溶かされていたことでしょう。」
「え、それはやだ。」
「ではどうぞ静まり下さい。今代わりの服を用意していますから。」
「・・・ありがとうございます。」
扉越しに聞こえてくる会話的にどうやら落ち着いてくれたようだ。
それから少しして着替えは完了し、俺達の入室は許可された。
「改めまして、この度はうちのパルルがお世話になりました。」
「助けて下さりありがとうございました。」
妖精が羽をパタパタさせながら深々と頭を下げる。
助けた方がパルルというらしく、なんとポポルの妹なんだそうだ。
今は着せ替え人形用の服を着せられている。
ちなみにルティエから借りてきたやつだ。
「礼ならうちのレイに言え。」
「シャレですか?」
「もう一度食わせてやろうか?」
「すみません冗談です。たしか、前に私を助けてくださったのもそちらの魔獣でしたね。」
「そいつの娘だ。」
「まさか兄さんが言っていた優しい人間に私も助けられるなんて。人間は傲慢で貪欲で私たち妖精を捕まえては売りつけるって聞いていたのに、兄さんの言うことは本当だったのね。」
目を輝かせて俺を見てくるパルル。
そんな純粋な目で見ないでほしいんだが。
俺はそんな素晴らしいやつじゃない。
「他の人間はそうじゃない。この人が特別なだけだよ。」
「でもこのお二人も優しいわ。」
「それは奴隷だからさ。首を見てごらん。」
「あ・・・。」
「隷属の首輪をつけているだろ?つまり、一歩間違えばパルルも僕も同じようになっていたかもしれないんだ。だから人間の世界には行っちゃいけないって言ったんだよ。」
「・・・ごめんなさい。」
聞けば勝手に飛び回っている兄貴がうらやましくて里を飛び出したらしい。
別に兄貴は遊びまわっているわけじゃない。
雪の妖精としてちゃんと仕事をしていた。
じゃあ、なんでこの前大雪が降ったのかって?
「この間の雪も全部この子がやったんですか?」
「全部じゃないんですけど・・・。ちょっと張り切りすぎちゃって。」
「本当にご迷惑をおかけしました。」
「そのおかげで楽しみもありましたし、誰も怒っていませんよ。」
「よかった~。」
「でも長様はお怒りだ、里に戻ったらしっかりと叱ってもらうように。」
里を抜け出し兄貴を探す傍ら、ちょっと自分の力を試してみたら大雪になってしまったと。
おかげでこっちは雪合戦が楽しめたし、色々とプラスもあったので文句はない。
死人も出てないしな。
だがそれとこれとは話が別だ。
悪いことをしたのなら怒られるべきだろう。
「は~い。」
「では、一度パルルを里に帰したら戻ってきます。」
「戻ってくるのか?」
「だって冬はまだこれからですよ?」
にやりと笑うポポル。
どうやら今年の冬はまだまだ寒くなりそうだ。
ちなみにお礼という事でまた例の結晶をもらってしまった。
おかげで色々と捗りそうなんだが、出来れば次はまともに登場してほしい。
二度あることは三度あるとはいうけれど、流石にまた食われることはないだろう。
そんな事を考えながら寒空に飛び立つ二人を見送るのだった。
冬まだこれから。
さて、次は何を仕込もうかな。
「どうした、レイ。」
いつものように畑の周りを散歩していると、突然レイが一声鳴いて注意を促してきた。
ちなみにルフは寒いので小屋で待機中。
この先にあるのは例のカニバフラワーだが、誰か引っかかったんだろうか。
ゆっくりと近づくもそれらしい跡はない。
足元も血に染まっていないので魔物が食われた感じでもなさそうだ。
いつものように大きな口がこっちを向いて・・・。
ん?
一匹口が閉じている。
いつもは口を開けて出迎えてくれるはずなのに、一匹だけもごもごと口を動かしていた。
近づくと口の端に何か引っかかっている。
アレは・・・足?
なんだろう前にもおなじようなことがあったよな。
「ちょいとすまん。」
もぐもぐしている口をこじ開けると、唾液まみれの小人が現れた。
意識はないがまだ生きてはいるようだ。
小さくてわかりにくいが僅かに胸が上下している。
これは食べているというか溶かしている感じだな。
この見た目じゃ食べ応えもなさそうだし、魔力でも吸っていたんだろう。
無理やりエサ?を取られてそいつがカカカカと歯を鳴らして文句を言うので、仕方なくポケットに入れていた干し肉を放りこんでやった。
すると、満足そうにもぐもぐと口を動かす。
そしてそれを見たほかのやつが、うらやましそうにそいつの方を見ていた。
まぁ、こうなるよな。
ルフのおやつだったんだけど散歩してないし構わないだろう。
「さて、こいつをどうするか。」
「わふぅ。」
「そうだな、とりあえず洗ってやるか。」
見た感じ女の子のようだし、いくら何でも唾液まみれってのは可愛そうだ。
店に戻ってミラに何とかしてもらおう。
レイを小屋に戻し小走りで店へと戻る。
その間も少女が目覚めることはなかった。
「ただいま。」
「お帰りなさいませ、どうされたんですがそんなに息を切らせて。」
「いやな、変なのを救ったもんでさ。」
「変なの?」
「とりあえずお湯を沸かしてくれ、あぁ人肌ぐらいで。それと洗面器も頼む。」
ミラとアネットは不思議そうな顔をするものの、すぐに準備を始めてくれた。
普通はあれこれ聞いてきそうなものだがありがたいことだ。
懐から少女を取り出しカウンターの上に乗せる。
唾液まみれのハンカチはそのまま洗濯すればいいだろう。
血はついていないので噛まれた感じではなさそうだ。
「わ!妖精ですか!?」
「おそらくな、前に助けた雪の妖精によく似ている。」
前の奴は男だったから別の妖精だろう。
また次の冬にとか言っていたが、元気しているんだろうか。
っていうかこの手の奴らは食われないと気がすまないのか?
「怪我はしていないようですね。」
「カニバフラワーに甘噛みされていたようだ、とりあえず綺麗にしてやってくれ。」
「だからお湯を用意させたんですね。」
「一応女だからな、後で文句言われても困るしよろしく頼む。」
「かしこまりました。ミラ様!とっても可愛いですよ!」
アネットが人形を抱くようにして裏へと戻っていく。
はぁ、これでひとまずおっけーっと。
ぶら下げていた看板を休憩中に変えようと扉に近づいたその時だった。
バンバンとガラスを叩く音がした。
が、向こう側に人の姿は見えない。
気のせいかと思ったがもう一度同じ音がする。
ガキ共がいたずらをしているのかもしれない。
下に隠れたら見えないんだよな、ここ。
なので、取る方法は一つ。
少し間を開けて、一気に開く!
が、何もいなかった。
「おかしいな・・・。」
「ちょっと、危ないじゃない!」
「うぉぁ!」
誰もいないと安心したのもつかの間、何かが俺の顔にへばりついてくる。
慌てて扉を閉めて、へばりついてきた何かをひっぺがした。
「なんだぁ?」
「離して!パルルを返してください!?」
「小人?いや、妖精か。」
「いいから離して・・・って、貴方は!?」
ん?
親指と人差し指でつまんだ小さな人形・・・じゃなかった妖精が俺を指さしてくる。
小さな羽を必死に動かしているがその程度で逃げられるはずもない。
っていうか人を指さすなっての。
「俺か?」
「私です!ポポルです!」
「知らん。」
「えぇぇぇぇ!去年会ったじゃないですか!もう忘れたんですか!?」
はて、こんな小さい知り合いがいたっけか。
確かにカニバフラワーに食われかけたちっこいのを助けたが、名前は知らない。
だって名乗られなかったし。
「雪の妖精には会ったが名前は知らないなぁ。」
「それが私です!」
「だから?」
「だからあの子を返して・・・って、あれ?もしかして?」
「何を早とちりしているかは知らないが、探している奴は無事だ。まったく、雪妖精ってやつはそんなにあの花に食われるのが好きなのか?」
「そ、そういうわけじゃないんですけど・・・・。」
どうやら誤解は解けたらしい。
大人しくなったので手を離してやると、ふわふわと俺の目線まで浮かび上がった。
「落ち着いたか?」
「はい、誠に申し訳なく。」
「確かにまた冬に来るって言っていたが、まさか仲間が来るとはな。しかも食われかけてるし。」
「あははは・・・。」
「まぁ無事で何よりだ。今向こうで風呂に・・・。」
「ふわぁぁぁぁぁ!何ですか!?なんなんですか!?なんでお風呂なんですか!?すっごい気持ちいいんですけど!」
「起きたみたいだな。」
「ですね。」
あの小さいからだからどうやってそんなデカい声が出るんだろうか。
これだけ離れていたのに耳がきーんとなってるんだが。
ポポルが申し訳なさそうな顔をしながら、店の裏へと飛んでいく。
おい、今行くと・・・。
「ポポルのエッチ!」
「いたい!」
ほら見ろ。
叫びはするが向こうは風呂中だ。
そりゃいきなり行ったらそうなるだろ。
「どうか落ち着いてください、我々はカニバフラワーに食べられそうになっていた貴女を助けただけです。危害を加える気はありません。」
「え、助けてくれたんですか?」
「助けなければ今ごろそこに置いてある服のようにどろどろに溶かされていたことでしょう。」
「え、それはやだ。」
「ではどうぞ静まり下さい。今代わりの服を用意していますから。」
「・・・ありがとうございます。」
扉越しに聞こえてくる会話的にどうやら落ち着いてくれたようだ。
それから少しして着替えは完了し、俺達の入室は許可された。
「改めまして、この度はうちのパルルがお世話になりました。」
「助けて下さりありがとうございました。」
妖精が羽をパタパタさせながら深々と頭を下げる。
助けた方がパルルというらしく、なんとポポルの妹なんだそうだ。
今は着せ替え人形用の服を着せられている。
ちなみにルティエから借りてきたやつだ。
「礼ならうちのレイに言え。」
「シャレですか?」
「もう一度食わせてやろうか?」
「すみません冗談です。たしか、前に私を助けてくださったのもそちらの魔獣でしたね。」
「そいつの娘だ。」
「まさか兄さんが言っていた優しい人間に私も助けられるなんて。人間は傲慢で貪欲で私たち妖精を捕まえては売りつけるって聞いていたのに、兄さんの言うことは本当だったのね。」
目を輝かせて俺を見てくるパルル。
そんな純粋な目で見ないでほしいんだが。
俺はそんな素晴らしいやつじゃない。
「他の人間はそうじゃない。この人が特別なだけだよ。」
「でもこのお二人も優しいわ。」
「それは奴隷だからさ。首を見てごらん。」
「あ・・・。」
「隷属の首輪をつけているだろ?つまり、一歩間違えばパルルも僕も同じようになっていたかもしれないんだ。だから人間の世界には行っちゃいけないって言ったんだよ。」
「・・・ごめんなさい。」
聞けば勝手に飛び回っている兄貴がうらやましくて里を飛び出したらしい。
別に兄貴は遊びまわっているわけじゃない。
雪の妖精としてちゃんと仕事をしていた。
じゃあ、なんでこの前大雪が降ったのかって?
「この間の雪も全部この子がやったんですか?」
「全部じゃないんですけど・・・。ちょっと張り切りすぎちゃって。」
「本当にご迷惑をおかけしました。」
「そのおかげで楽しみもありましたし、誰も怒っていませんよ。」
「よかった~。」
「でも長様はお怒りだ、里に戻ったらしっかりと叱ってもらうように。」
里を抜け出し兄貴を探す傍ら、ちょっと自分の力を試してみたら大雪になってしまったと。
おかげでこっちは雪合戦が楽しめたし、色々とプラスもあったので文句はない。
死人も出てないしな。
だがそれとこれとは話が別だ。
悪いことをしたのなら怒られるべきだろう。
「は~い。」
「では、一度パルルを里に帰したら戻ってきます。」
「戻ってくるのか?」
「だって冬はまだこれからですよ?」
にやりと笑うポポル。
どうやら今年の冬はまだまだ寒くなりそうだ。
ちなみにお礼という事でまた例の結晶をもらってしまった。
おかげで色々と捗りそうなんだが、出来れば次はまともに登場してほしい。
二度あることは三度あるとはいうけれど、流石にまた食われることはないだろう。
そんな事を考えながら寒空に飛び立つ二人を見送るのだった。
冬まだこれから。
さて、次は何を仕込もうかな。
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