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453.転売屋は調査を依頼する

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隠し部屋から搬出された呪われた木箱だが、他にも様々な物が梱包されていた。

その中でも特に怪しげな物が二つ。

『破滅の祭器。とあるダンジョンの最下層に封じられている祭壇に捧げる事で、世界を破滅に導く事ができる忌まわしき祭器。再生の祭器と共に神によって創造されたといわれている。最近の平均取引価格は金貨3枚、最安値銅貨15枚最高値金貨8枚。最終取引日は5年と227日前と記録されています。』

『災厄の杯。穢れのない子供の血で杯を満たすと災厄を引き起こす事ができる禁じられた祭器。決して満たされることはなく、注がれた量に応じて災厄の大きさが変わる。最近の平均取引価格は金貨8枚。最安値銀貨43枚最高値金貨25枚最終取引日は8年と625日前と記録されています。』

最初に見つけた物がオモチャに見えるぐらいの凶悪な品。

流石にコレは店に於いて置けないので、冒険者ギルドで厳重に保管してもらっている。

とはいえ何時までもおいておくわけにも行かないんだよなぁ。

っていうか、なんて品が保管されてるんだよ。

俺達が見つけなければずっとそのまま、そして良くわからないまま悪人の手に渡っていたかもしれないんだぞ。

怖すぎるだろ。

「それでは先の二つは引き続き冒険者ギルドで保管してもらうという事で。また、この件に関しても緘口令を継続します。」

「それが良いだろう。下手に言いふらしてよからぬ連中に来てもらっても困る。」

「知ってるのは見つけた皆さんと私達だけだから問題ないわ。」

「いや~、シロウさんやっぱり持ってますねぇ。」

「ぜんぜん嬉しくねぇ。」

「でもおかげで世界の危機を防ぐ事ができますから。これはまた、国王陛下からご褒美とか貰えちゃうんじゃないですか?」

「ぜんぜん嬉しくねぇ。」

何が嬉しくてあの人に褒めてもらわなければならないんだ?

っていうかそれ目当てで見つけたわけじゃないんだし、むしろ面倒なもの見つけるなって怒られたりして。

「でも、何時までもこのままってわけにも行かないでしょ?」

「そうなのよねぇ。流石にこんなもの何時までも預かりたくないわ。」

ちなみに冒険者ギルドでこの打ち合わせに参加しているのは俺とエリザ、それとニアと羊男の四人だけ。

内容が内容だけに他言できないってのが面倒だ。

「とはいえ何処に報告するんだ?王家か?それとも中央ギルドか?」

「下手に役人が絡むと面倒そうではあります。所有権がどうのとかで揉める未来しか見えません。」

「一応俺ってことになってるんだよな?」

「屋敷の所有者であったハーシェ様が放棄され第一発見者のシロウ様に所有権が委譲されましたからそのはずです。」

「汚職まみれの役人の手に回るのがオチか。」

「認めたくありませんが、中央は色々と問題が多くて。」

それはそれでどうかと思うんだが、面倒な事になるのなら下手に公表しない方がマシだ。

しかるべき場所に直接提出できれば良いんだが・・・。

それは一体何処なんだろうか。

「この前の監査官とかがいっぱい居るんじゃないの?」

「その監査官が使い物にならないんですよ。もちろんまともな人の方が多いですが、ハズレを引いた時が面倒です。無駄に権力がありますから、この前のように強引に持っていけるんですよね。しかも我々の介入無しで。」

「あー・・・。」

「とりあえずブランドン監査官に連絡を取るつもりです、あの方でしたら問題ないでしょうから。」

「だな、それが一番だ。」

「本当に大丈夫?」

「信じるしかないわよ。」

俺の見立てでは何処にも染まっていない感じだが、もちろん絶対ではない。

もしかして、という可能性は残り続ける。

だが俺達が連絡の取れる場所って言ったらそれぐらいしかないんだ。

絶対がない以上一番可能性の低い人に連絡するしかないんだよ。

とりあえず話しは纏った。

後は、その他の呪われた品を仕分けしてモニカのところに持っていかなければ。

「じゃあ行くか。」

「それじゃあニアまたね。」

「エリザも。あ、今度巡回忘れちゃダメよ。」

「分かってるって、明後日よね?」

「あ・し・た。」

「じょ、冗談だってば。明日でしょ。」

絶対に忘れてたよなこれは。

苦笑いを浮かべるエリザと共に部屋を出てギルドのエントランスに向うと、珍しい人が立っていた。

「あれ、アニエスさん!」

「これはシロウ様エリザ様、やっとお会いできました。」

「ん?探してたのか?」

「その通りです、例の祭器についてといえば分かりますか?」

「・・・エリザ戻るぞ。」

「え、ちょっと!」

さっきも言ったように今回の件は他言無用、外でしていい話じゃない。

それに目の前に居るのはもう一人の監査官。

しかも、ブランドン氏よりも潔白だと言える人物だ。

その人が今回の件に介入しようとしているって事は、なにか良い案があるんだろう。

来た道を戻り部屋に入るとニアと羊男がいちゃついて・・・いなかった。

「あれ、忘れ物ですか?」

「突然失礼します、本日は監査官アニエスとしてお話に参りました。お時間宜しいですか?」

「そういえばアニエス様も監査官でしたね、すっかり忘れていました。」

「俺もだ。とりあえず何かあるらしいから聞かせてもらうとしよう。」

俺はともかくギルド協会のえらいさんが忘れるのはどうなんだ?

なんてツッコミはスルーして、再び会議室で合間見える。

「で、例の祭器がどうしたって?」

「先ほど王家に確認をしたところ、随分と前から行方不明になっていた物と確認が取れました。つきましては真贋鑑定も含め、近くに来ていた調査団が確認をしたいとのことです。それまでは厳重に保管をお願いしたいのですが・・・ここなら問題無さそうですね。」

「調査団、ですか。」

「普段は王家ゆかりの品や遺跡を調査している方々です。王家直轄機関ですので邪な考えをした者もおりません。先日の氾濫後に百穴を調べたのもこの調査団になります。」

「あ、あの人達!」

「しってるのか?」

「だって竜の巣まで案内したもの。そっか~、見た目の割りに強かったのは遺跡に潜るだけの実力があるからなのね。」

百穴を調査した人たちなら安心だ。

それに加えて王家直轄機関なのもいい。

物が物だけに悪用されないようしっかり保管してくれそうだし。

「つきましてはこの品々を発見したシロウ様に報奨金の用意があります。そちらについても調査団より伺っていただければ。」

「結構だ。」

「そういうわけには参りません。この品は前々より捜索願の出されていた危険な物、そんな重要な物を無事に見つけた功績にはそれに見合う報酬を出すことになっています。これを断れば他の方々にもご迷惑がかかりますので、ひとまず受領をお願いします。その後は寄付するなり豪遊するなり好きにしていただいて結構ですので。」

「いいじゃない、もらいなさいよ。で、みんなでお酒飲めばいいのよ。」

「お前は飲みたいだけだろ?」

「わかる?」

「まったく、他人事だと思いやがって。」

羊男が冗談で言った事がまさか現実になるとは思っていなかった。

別に報奨金とかそういうのはどうでもいい。

俺はただしかるべき場所にさっさと持っていって欲しいだけだ。

こんな物騒なもの近くに置いておきたくない。

こんなことになるのなら、見つけない方がよかったかもしれないなぁ。

はぁ、めんどくさいめんどくさい。

「でも良かったじゃない、近いうちにもっていってくれるんだから。」

「それもそうだな。」

「私も安心して家に帰れるわ。だって、責任者ってここに寝泊りしなきゃいけないのよ?ベッドは硬いし安眠できないし、ほんと参っちゃうわ。で、その人たちは何時来るの?」

「恐らく一週間ほどで。」

「・・・結構かかるのね。」

「他の調査などもありますから。つきましては到着するまでに関係する物、若しくは調査するに相応しい品があればご準備くださいとのことです。聞けば近場に遺跡もあったのだとか、さすがダンジョンのお膝元ですね。」

「わかったわ、前に発掘した物が沢山あるから用意しておくわね。はぁ、あと一週間は帰れなくなっちゃった。」

「こればっかりは仕方ないね、恨むならシロウさんを恨むと良いよ。」

「なんでだよ。」

とんだとばっちりじゃねぇか。

ものすごい目で俺を睨んでくるニアをとりあえず睨み返すと、横のエリザに脇を小突かれてしまった。

なんだよ俺は悪くねぇ。

「ともかくあと一週間の辛抱だ、頑張ってくれ。」

「他人事ねぇ。」

「あぁ、見つけたのは俺だが保管を買って出たのはそっちだからな。あぁ、差し入れぐらいは持って来てやる。」

「仕方ないからそれで我慢してあげる。」

ひとまずあのやばそうな奴を何とかできそうだ。

単なる引越しのはずがとんだことになったが、ついでに頼みたいことも増えたぞ。

折角の機会だ有効に使わせてもらうとしよう。
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